(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156205
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】土質遮水層の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/00 20060101AFI20231017BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20231017BHJP
G01N 23/203 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
E02D3/00 101
E02D1/00
G01N23/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065950
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】諸富 鉄之助
(72)【発明者】
【氏名】木村 志照
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
【テーマコード(参考)】
2D043
2G001
【Fターム(参考)】
2D043AA05
2D043AC05
2G001AA02
2G001AA04
2G001BA15
2G001CA02
2G001CA04
2G001DA02
2G001NA01
(57)【要約】
【課題】従来よりも効率的且つ高精度に、土質遮水層における品質を管理することが可能な、土質遮水層の品質管理方法を提供する。
【解決手段】土質遮水層の施工範囲においてRI走査手段100を移動計測させて該土質遮水層の締固めの程度及び/又は透水係数を推定するRI走査推定工程と、前記RI走査推定工程によって得られた前記締固めの程度及び/又は前記透水係数が、RI走査品質基準を満たすか否かを判定するRI走査判定工程と、前記RI走査判定工程において、前記RI走査品質基準を満たさないと判定された場合に、砂置換法又は突砂法によって締固めの程度の推定を行う試験孔型推定工程と、前記試験孔型推定工程によって得られた前記締固めの程度が、試験孔型品質基準を満たすか否かを判定する試験孔型判定工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土質遮水層の施工範囲においてRI走査手段を移動計測させて該土質遮水層の締固めの程度及び/又は透水係数を推定するRI走査推定工程と、
前記RI走査推定工程によって得られた前記締固めの程度及び/又は前記透水係数が、RI走査品質基準を満たすか否かを判定するRI走査判定工程と、
前記RI走査判定工程において、前記RI走査品質基準を満たさないと判定された場合に、砂置換法又は突砂法によって締固めの程度の推定を行う試験孔型推定工程と、
前記試験孔型推定工程によって得られた前記締固めの程度が、試験孔型品質基準を満たすか否かを判定する試験孔型判定工程と、を少なくとも有し、
前記試験孔型判定工程において、前記試験孔型品質基準を満たさないと判定された場合に、前記土質遮水層の再締固め又は剥ぎ取り再施工を行う
ことを特徴とする土質遮水層の品質管理方法。
【請求項2】
前記試験孔型品質基準の許容限度は、前記土質遮水層に求められる規定値であるとともに、前記RI走査品質基準の許容限度は前記試験孔型品質基準の許容限度よりも安全側である
請求項1に記載の土質遮水層の品質管理方法。
【請求項3】
土質遮水層の施工範囲においてRI走査手段を移動計測させて該土質遮水層の締固めの程度及び/又は透水係数を推定するRI走査推定工程と、
前記RI走査推定工程によって得られた前記締固めの程度及び/又は前記透水係数が、RI走査品質基準を満たすか否かを判定するRI走査判定工程と、
前記RI走査判定工程において、前記RI走査品質基準を満たさないと判定された場合に、固定式のRI測定手段によって締固めの程度及び/又は透水係数の推定を行う固定RI推定工程と、
前記固定RI推定工程によって得られた前記締固めの程度及び/又は前記透水係数が、固定RI品質基準を満たすか否かを判定する固定RI判定工程と、
前記固定RI判定工程において、前記固定RI品質基準を満たさないと判定された場合に、砂置換法又は突砂法によって締固めの程度の推定を行う試験孔型推定工程と、
前記試験孔型推定工程によって得られた前記締固めの程度が、試験孔型品質基準を満たすか否かを判定する試験孔型判定工程と、を少なくとも有し、
前記試験孔型判定工程において、前記試験孔型品質基準を満たさないと判定された場合に、前記土質遮水層の再締固め又は剥ぎ取り再施工を行う
ことを特徴とする土質遮水層の品質管理方法。
【請求項4】
前記試験孔型品質基準の許容限度は、前記土質遮水層に求められる規定値であるとともに、前記固定RI品質基準の許容限度は前記試験孔型品質基準の許容限度よりも安全側であり、前記RI走査品質基準の許容限度は前記固定RI品質基準の許容限度よりも安全側である
請求項3に記載の土質遮水層の品質管理方法。
【請求項5】
前記RI走査推定工程は、
前記RI走査手段の測定面と前記土質遮水層の表面との離間距離を計測する離間距離計測工程と、
前記離間距離計測工程において計測された前記離間距離に基づいて、前記締固めの程度及び/又は前記透水係数の推定値を補正する補正工程を含む
請求項1乃至4のいずれかに記載の土質遮水層の品質管理方法。
【請求項6】
前記RI走査推定工程は、
前記締固めの程度及び/又は前記透水係数の推定値に基づいて前記土質遮水層の施工範囲におけるヒートマップを作成するヒートマップ作成工程を含む
請求項5に記載の土質遮水層の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質遮水層の締固め度や透水係数など、土質遮水層の品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物処分場などでは、汚染物質の漏洩・拡散を防止するために土質遮水層の設置が求められ、当該土質遮水層の遮水材としてベントナイト混合土が用いられることがある。そして、当該ベントナイト混合土の品質管理項目として、転圧機械による締固め施工後の、締固め度(密度)と透水係数がある。締固め度や透水係数には、品質上満たさなければならない規定値が品質管理基準として各関係機関によってそれぞれ定められている。
【0003】
上記締固め度は、従来型の砂置換法のほか、RI計測器によって計測され、透過型RI計測器を使用する際は、計測対象位置に深さ20cm程度の穴を削孔し、γ線源棒を挿入して測定される。そして測定後は削孔した穴をしっかりと埋め戻す必要がある。上記透水係数については、現地でブロックサンプリングを行い、試験室内で整形した後に、透水試験用のモールドに設置して透水試験を行うことによって求められる。
【0004】
また近年、散乱型RI計測器を用いて計測データを面的に取得することが提案されている(特許文献1参照)。具体的には、ロードローラに散乱型RI計測器を設置し、移動しながら連続的に地盤の密度測定をするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した砂置換法や透過型RI計測器による計測は、非常に広い範囲の施工面に対して、所定の頻度且つ所定の範囲において測定(試験)が実施されるものであり、あくまで代表的な点の管理に過ぎない。したがって、基準面の強度のばらつきや、ベントナイト混合土のばらつきによって、測定(試験)を行っていない箇所が規定値を満たしていない可能性がある。
【0007】
すなわち、土質遮水層に要求される性能は低透水性であり、一部でも基準値を満たさない箇所が存在していれば、施工範囲全体に対して要求される遮水性を担保することはできない。したがって、代表箇所での現場密度測定では、土質遮水層の施工範囲全体における締固め品質管理は不可能ということになる。
【0008】
また、サンプリングによる透水試験にあっては、1ヶ月程度の試験期間が必要であるが、その1ヶ月の間には次工程の遮水シートの敷設が始まることもある。そうなると、透水試験の結果が規定値を満たしていないことが判った段階で、土質遮水層の再施工がより困難となる場合もあり、全体工程にも大きな悪影響を及ぼすこととなる。
【0009】
さらに、特許文献1に開示された移動式の散乱型RI計測器を用いた測定方法にあっては、測定の積分時間が短く、測定値のばらつきが透過型RI計測器よりも大きくなることから、良否判定の基準値を厳し目に設定することが必要となる。その結果、移動式の散乱型RI計測器によって基準値未満と判定された箇所は、実は本来の品質管理基準値を満たしている可能性も高く、本来不要の再施工を行ってしまう可能性がある。
【0010】
そこで本願発明は、上記した種々の問題点等に鑑み、従来よりも効率的且つ高精度に、土質遮水層における品質を管理することが可能な、土質遮水層の品質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)に係る発明は、土質遮水層の施工範囲においてRI走査手段を移動計測させて該土質遮水層の締固めの程度及び/又は透水係数を推定するRI走査推定工程と、前記RI走査推定工程によって得られた前記締固めの程度及び/又は前記透水係数が、RI走査品質基準を満たすか否かを判定するRI走査判定工程と、前記RI走査判定工程において、前記RI走査品質基準を満たさないと判定された場合に、砂置換法又は突砂法によって締固めの程度の推定を行う試験孔型推定工程と、前記試験孔型推定工程によって得られた前記締固めの程度が、試験孔型品質基準を満たすか否かを判定する試験孔型判定工程と、を少なくとも有し、前記試験孔型判定工程において、前記試験孔型品質基準を満たさないと判定された場合に、前記土質遮水層の再締固め又は剥ぎ取り再施工を行うことを特徴とする土質遮水層の品質管理方法である。
【0012】
上記(1)に係る発明によれば、RI走査手段による連続した移動計測により、土質遮水層の品質を面的にスクリーニングし、RI走査品質基準を満たさないと判定された場合に、砂置換法又は突砂法によって締固めの程度を判定する。そして判定結果に応じて土質遮水層の再締固め又は剥ぎ取り再施工を行うので、施工不良箇所をピックアップして、不必要な再施工などを行うことなく、効率的に再締固めや剥ぎ取り再施工を行うことができる。
【0013】
(2)に係る発明は、前記試験孔型品質基準の許容限度は、前記土質遮水層に求められる規定値であるとともに、前記RI走査品質基準の許容限度は前記試験孔型品質基準の許容限度よりも安全側である上記(1)に記載の土質遮水層の品質管理方法である。
【0014】
上記(2)に係る発明によれば、RI走査品質基準の許容限度を、試験孔型品質基準の許容限度よりも安全側に設定することで、施工範囲全体の要求性能をより確実に担保することが可能となる。
【0015】
(3)に係る発明は、土質遮水層の施工範囲においてRI走査手段を移動計測させて該土質遮水層の締固めの程度及び/又は透水係数を推定するRI走査推定工程と、前記RI走査推定工程によって得られた前記締固めの程度及び/又は前記透水係数が、RI走査品質基準を満たすか否かを判定するRI走査判定工程と、前記RI走査判定工程において、前記RI走査品質基準を満たさないと判定された場合に、固定式のRI測定手段によって締固めの程度及び/又は透水係数の推定を行う固定RI推定工程と、前記固定RI推定工程によって得られた前記締固めの程度及び/又は前記透水係数が、固定RI品質基準を満たすか否かを判定する固定RI判定工程と、前記固定RI判定工程において、前記固定RI品質基準を満たさないと判定された場合に、砂置換法又は突砂法によって締固めの程度の推定を行う試験孔型推定工程と、前記試験孔型推定工程によって得られた前記締固めの程度が、試験孔型品質基準を満たすか否かを判定する試験孔型判定工程と、を少なくとも有し、前記試験孔型判定工程において、前記試験孔型品質基準を満たさないと判定された場合に、前記土質遮水層の再締固め又は剥ぎ取り再施工を行うことを特徴とする土質遮水層の品質管理方法である。
【0016】
上記(3)に係る発明によれば、RI走査手段による連続した移動計測により、土質遮水層の品質を面的にスクリーニングし、RI走査品質基準を満たさないと判定された場合は、固定式のRI測定手段による判定、さらに、砂置換法又は突砂法による判定と、段階的な締固めの程度及び/又は透水係数の推定及びその判定により、施工不良箇所をピックアップして、不必要な再施工などを行うことなく、効率的に再締固めや剥ぎ取り再施工を行うことができる。
【0017】
(4)に係る発明は、前記試験孔型品質基準の許容限度は、前記土質遮水層に求められる規定値であるとともに、前記固定RI品質基準の許容限度は前記試験孔型品質基準の許容限度よりも安全側であり、前記RI走査品質基準の許容限度は前記固定RI品質基準の許容限度よりも安全側である上記(3)に記載の土質遮水層の品質管理方法である。
【0018】
上記(4)に係る発明によれば、固定RI品質基準の許容限度を試験孔型品質基準の許容限度よりも安全側に設定し、さらにRI走査品質基準の許容限度を固定RI品質基準の許容限度よりも安全側に設定することで、施工範囲全体の要求性能をより確実に担保することが可能となる。
【0019】
(5)に係る発明は、前記RI走査推定工程は、前記RI走査手段の測定面と前記土質遮水層の表面との離間距離を計測する離間距離計測工程と、前記離間距離計測工程において計測された前記離間距離に基づいて、前記締固めの程度及び/又は前記透水係数の推定値を補正する補正工程を含む上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の土質遮水層の品質管理方法である。
【0020】
上記(5)に係る発明によれば、RI走査手段の測定面と土質遮水層の表面との離間距離によって生じる測定誤差を低減して、より高精度に締固めの程度及び/又は透水係数を推定することが可能となる。
【0021】
(6)に係る発明は、前記RI走査推定工程は、前記締固めの程度及び/又は前記透水係数の推定値に基づいて前記土質遮水層の施工範囲におけるヒートマップを作成するヒートマップ作成工程を含む上記(5)に記載の土質遮水層の品質管理方法である。
【0022】
上記(6)に係る発明によれば、締固めの程度及び/又は透水係数の推定値に基づいて、土質遮水層の施工範囲におけるヒートマップが作成されるので、施工不良箇所の存在を可視化することができ、効率的に品質確認のための計測や試験、再締固めや剥ぎ取り再施工などを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態におけるRI走査手段の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるRI走査手段の上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における品質管理のシステム構成を説明する構成図である。
【
図4】本発明の一実施形態における品質管理方法のフロー図が図示されている。
【
図5】本発明の一実施形態における透水係数の推定方法を説明する図であって、(a)には有効ベントナイト間隙比と透水係数の関係グラフが、(b)には有効ベントナイト間隙比の算出式が示されている。
【
図6】(a)には本発明の一実施形態におけるRI走査手段の移動計測手順を説明する平面図が、(b)には、本発明の一実施形態におけるヒートマップの表示態様を説明する図が図示されている。
【
図7】(a)には本発明の一実施形態におけるクリアランスと換算湿潤密度の関係グラフが、(b)には、本発明の一実施形態におけるクリアランスと換算含水量の関係グラフが示されている。
【
図8】本発明の一実施形態におけるRI走査手段の移動計測手順を説明する平面図が図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の土質遮水層の品質管理方法の一実施形態について説明する。
【0025】
図1には、本発明の実施形態におけるRI走査手段100の側面図が、
図2にはRI走査手段100の上面図がそれぞれ図示されている。
【0026】
本実施形態のRI走査手段100は図示されるように、上部フレーム102から延びる柱部104に、車軸108を回転軸とする4つの車輪106が設けられており、土質遮水層の表面を走行することが可能となっている。
【0027】
加えて、前述した上部フレーム102から上下方向に伸縮可能なバンド116によって懸垂される下部フレーム110が設けられ、当該下部フレーム110には、車軸114を回転軸とする4つの補助車輪112が設けられている。
【0028】
そして、前述した下部フレーム110には、γ線や中性子線を放射する線源118と、当該γ線や中性子線を検出する検出器120と、
図1に示されるように、RI走査手段100の測定面(下部フレーム110の底面)と土質遮水層の表面との離間距離(クリアランス)を計測するレーザ計測器122とが、それぞれ設けられている。
【0029】
上記したような構成により、土質遮水層の表面の起伏に対応して、前述した補助車輪112を走行させることが可能となり、RI走査手段100を移動させながら、土中を透過するγ線や中性子線を連続して検出することが可能となっている。
【0030】
また、上部フレーム102上には、GNSS受信機から成る位置検出部124と、RI走査手段100における計測制御を実行可能な管理/制御部126とが、それぞれ設けられている。
【0031】
図3には、本実施形態における品質管理のシステム構成の概略が図示されている。前述した検出器120内には、γ線を検出して湿潤密度を計測することが可能な密度測定部1201と、中性子線を検出して含水比を計測することが可能な水分測定部1202とが設けられ、これらの測定部から出力された計測データは、当該計測データを記録・解析・演算・出力する管理/制御部126へと送信されている。加えて、管理/制御部126と位置検出部124は接続されており、計測データと計測位置情報とを紐付けて記録することが可能となっている。
【0032】
なお、管理/制御部126は、必ずしもRI走査手段100に搭載されるものではなく、例えば、RI走査手段100の搭載機器と無線又は有線接続して計測データを記録・解析・演算・出力するように構成してもよい。
【0033】
また、RI走査手段100は車両等によって牽引するように構成してもよいし、RI走査手段100に動力装置を付加して自走するように構成してもよい。加えて、RI走査手段100にステアリング機構を付加して方向転換可能に構成してもよい。さらに、補助車輪112及び/又は車輪106を設けることなく、RI走査手段100を牽引して、土質遮水層の表面を滑りながら移動できるように構成してもよい。
【0034】
(品質管理フロー)
一般的に、管理型廃棄物処分場における、土質遮水層の品質管理基準として定められた規定値として、厚さ50cm以上、透水係数は1×10-8m/s以下であることが求められている。加えて、通常は締固め度の規定値として、現場乾燥密度が最大乾燥密度の90%以上(締固め度)であることが求められる。
【0035】
そこで、本実施形態の品質管理方法では、土質遮水層の構築に際して、所定のまき出し厚(例えば、25~30cm)ごとに、
図4に示されたフロー図に基づいて品質管理を行っている。以下、
図4のフロー図に基づいて、本実施形態の品質管理方法を説明する。
【0036】
土質遮水層における、ある層の転圧機械による締固めが完了すると、例えば、
図6(a)に示されるように、土質遮水層の施工範囲においてRI走査手段100による移動計測を実施する(ステップS100)。そして、RI走査手段100によって計測された計測データを演算し、湿潤密度及び含水率を算出する(ステップS101)。
【0037】
本実施形態では、ステップS101の湿潤密度及び含水率の算出に際し、レーザ計測器122によって計測された、RI走査手段100の測定面(下部フレーム110の底面)と土質遮水層の表面との離間距離(クリアランス)に基づいて、実測された湿潤密度及び含水率を補正し、上記離間距離(クリアランス)による測定誤差の低減を図っている。
【0038】
より詳細に説明すると、予め試験的なRI走査手段100による計測を行い、上記離間距離(クリアランス)と、換算湿潤密度及び換算含水量の関係を調査している。例えば、
図7(a)には、上記離間距離(クリアランス)と換算湿潤密度の関係グラフが、
図7(b)には、上記離間距離(クリアランス)と換算含水量の関係グラフが示され、各試料の締固め度(図示Dc)と最適含水比(Wopt)におけるデータがプロットされている。これらの関係グラフから判るように、離間距離(クリアランス)と、換算湿潤密度及び換算含水量は略直線関係にあることから、これらの関係式を求め、離間距離(クリアランス)が「0mm」にあるときの湿潤密度及び含水率を演算して算出している。
【0039】
続いて、事前に準備した透水係数の推定式に基づいて、土質遮水層の透水係数を推定する(ステップS102)。より詳細に説明すると、
図5(a)に示されるように、有効ベントナイト間隙比と透水係数は高い相関性を有している。そこで、遮水材(ベントナイト混合土)の性状及びRI走査手段100の計測データに基づいて、
図5(b)に示された関係式によって有効ベントナイト間隙比を求めて、透水係数の推定を行うことができる。なお、締固め度の推定に際しては、室内試験において予め求められた最大乾燥密度と、RI走査手段100で計測した乾燥密度によって推定することができる。
【0040】
以上のようにして、RI走査推定工程として、土質遮水層の締固め度及び透水係数を推定するとともに、本実施形態では、
図6(b)に示されるような土質遮水層の施工範囲におけるヒートマップ10が出力可能に構成されている(ステップS103)。
【0041】
図6(b)に示されるヒートマップ10は、推定した土質遮水層の透水係数の情報を示したものであるが、左側にはRI走査手段100による走査速度が速い場合のヒートマップ10が、右側にはRI走査手段100による走査速度が遅い場合のヒートマップ10がそれぞれ示されている。図示されるように、走査速度を遅くすることによってグリッド間隔をより細かくして、各セルにおける透水係数を高精度に推定することが可能となる。
【0042】
続いて、上記RI走査推定工程によって推定された各セルにおける締固め度及び透水係数が、RI走査判定工程(ステップS104)において、RI走査品質基準を満たすか否かが判定される。本実施形態では、品質管理基準として定められた締固め度の規定値に対して、「規定値+2%以上」の安全側の値を上記RI走査品質基準としている。また、透水係数については、品質管理基準として定められた透水係数の規定値に対して、「規定値-2オーダー以下」の安全側の値を上記RI走査品質基準としている。
【0043】
そして、推定された締固め度及び透水係数が、いずれも上記RI走査品質基準を満たす場合は、次工程(次の締固め層の形成工程や、遮水シートの敷設工程など)へ進むことが可能となる。
【0044】
一方、上記RI走査判定工程(ステップS104)において、推定された締固め度又は透水係数のいずれかが上記RI走査品質基準を満たさいないと判定された場合は、固定RI推定工程として、該当するセルに対応する位置の土質遮水層に対して、固定式のRI測定手段を用いた計測が行われる(ステップS105)。固定式のRI測定手段としては、透過型RI計測器又は散乱型RI計測器を使用することができる。
【0045】
そして、計測データの演算処理を経て、再び土質遮水層の締固め度及び透水係数が推定され(ステップS106)、固定RI判定工程(ステップS107)において固定RI品質基準を満たすか否かが判定される。本実施形態では、品質管理基準として定められた締固め度の規定値に対して、「規定値+1%以上」の安全側の値を上記固定RI品質基準としている。また、透水係数については、品質管理基準として定められた透水係数の規定値に対して、「規定値-1オーダー以下」の安全側の値を上記固定RI品質基準としている。
【0046】
そして、固定式のRI測定手段で測定された締固め度及び透水係数が、いずれも上記固定RI品質基準を満たす場合は、次工程(次の締固め層の形成工程や、遮水シートの敷設工程など)へ進むことが可能となる。
【0047】
一方、上記固定RI判定工程(ステップS107)において、測定された締固め度又は透水係数のいずれかが上記固定RI品質基準を満たさいないと判定された場合は、試験孔型推定工程として、該当するセルに対応する位置の土質遮水層に対して、従来型の品質管理手法を用いた試験が行われる(ステップS108)。従来型の品質管理手法としては、試験孔を掘って行われる砂置換法又は突砂法が適用可能である。
【0048】
そして、上記従来型の品質管理手法によって求めた締固め度が、試験孔型判定工程(ステップS109)において試験孔型品質基準を満たすか否かが判定される。本実施形態では、品質管理基準として定められ、土質遮水層に求められる締固め度の規定値を上記試験孔型品質基準値としている。上記従来型の品質管理手法によって求めた締固め度が、上記試験孔型品質基準を満たす場合は、次工程(次の締固め層の形成工程や、遮水シートの敷設工程など)へ進むことが可能となる。
【0049】
一方、上記試験孔型判定工程(ステップS109)において、求められた締固め度が上記試験孔型品質基準を満たさいないと判定された場合は、再施工工程(ステップS110)として、該当する範囲における土質遮水層の再締固め、又は施工した層の剥ぎ取りを行って再施工を実施する。再締固め又は再施工後は、確認のために再び従来型の品質管理手法を用いて締固め度の確認が行われる(ステップS108)。
【0050】
ない、
図4のフロー図に示された実施形態は、RI走査判定工程(ステップS104)と、固定RI判定工程(ステップS107)と、試験孔型判定工程(ステップS109)とが段階的に実施されるものである。しかし、これに限らず、RI走査判定工程(ステップS104)において、RI走査品質基準を満たさないと判定された場合に、砂置換法又は突砂法によって締固めの程度の推定を行う試験孔型推定工程を実施し、試験孔型品質基準を満たすか否かを判定する試験孔型判定工程(ステップS109)へと遷移するように構成することも可能である。
【0051】
このような構成により、RI走査手段による連続した移動計測により、土質遮水層の品質を面的にスクリーニングし、RI走査品質基準を満たさないと判定された場合に、砂置換法又は突砂法によって締固めの程度が判定される。そして判定結果に応じて土質遮水層の再締固め又は剥ぎ取り再施工を行うことができるので、施工不良箇所をピックアップして、不必要な再施工などを行うことなく、効率的に再締固めや剥ぎ取り再施工を行うことが可能となる。
【0052】
(別実施形態他)
以上、本発明の土質遮水層の品質管理方法の一実施形態について説明したが、本発明は必ずしも前述した実施形態に限定されるものではなく、以下のような変更が可能である。
【0053】
図8には、RI走査手段100による移動計測態様の一例が示されている。すなわち、A地点からB地点、C地点、D地点へと順に連続して移動計測する態様が示されており、(1)ではA地点からB地点へRI走査手段100による移動計測を行い、(2)ではRI走査手段100を後進させ、(3)ではRI走査手段100を前進させて隣の走行レーンに配置させる。そして(4)では計測開始位置となるC地点までRI走査手段100を後進させ、(5)ではC地点からD地点へRI走査手段100による移動計測を行う。
【0054】
上記のような態様でRI走査手段100による移動計測を連続して行った場合、走行レーンの移動に伴う(2)~(4)で計測された計測データが繁雑となる。このような場合は、各計測データはGNSS受信機による位置情報と紐付いているので、同一セル内の計測データを平均化することにより、セル内の締固め度及び透水係数を精度良く推定することが可能となる。
【0055】
前述した実施形態では、ベントナイト混合土を遮水材とした土質遮水層の品質管理方法を例に説明したが、本発明の土質遮水層の品質管理方法は、必ずしもベントナイト混合土に限定されるものではなく、例えば、天然粘土系遮水材や、セメント系土質遮水材を使用した土質遮水層においても有効に適用することが可能である。
【0056】
前述した実施形態では、RI走査判定工程(ステップS104)及び固定RI判定工程(ステップS107)において、土質遮水層の締固め度及び透水係数の判定を行っているが、必ずしもこのような態様に限定されるものではなく、締固め度と透水係数とのうちのいずれかを判定対象としてもよい。
【0057】
前述した実施形態では、試験孔型品質基準の許容限度は、土質遮水層に求められる規定値とするとともに、固定RI品質基準の許容限度は試験孔型品質基準の許容限度よりも安全側に、RI走査品質基準の許容限度は上記固定RI品質基準の許容限度よりも安全側とした。すなわち、締固め度(%)の下限値や、透水係数の上限値の範囲を段階的に設定し、土質遮水層の品質の確保を図った。ここで、各品質基準における規定値に対する許容限度は、必ずしも前述した数値範囲に限定されるものではなく、適宜、許容範囲を変更することが可能である。
【0058】
また、前述した実施形態では、品質管理項目として「締固め度」の推定及び判定を行ったが、必ずしもこれに限定されるものではなく、「締固めの程度」を管理すべく、前述の「締固め度」の他、「乾燥密度」、「間隙比」、「湿潤密度」などを品質基準の管理項目とすることが可能である。
【0059】
また、前述した実施形態では、RI走査手段100によって移動計測することで締固め度を推定したが、計測原理として必ずしもRIに限定されるものではなく、電磁波や弾性波を利用して締固めの程度を推定するようにしてもよい。すなわち、これらの伝搬速度等を計測することによって密度測定を行い、土質遮水層の締固めの程度を判定することも可能である。
【0060】
前述した実施形態では、RI走査手段100にレーザ計測器122を搭載したが、必ずしもレーザによるものに限定されるものではなく、超音波など、他の検出原理による計測器を搭載してもよい。
【0061】
また、本発明の範囲は、上記した各実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施形態に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 ヒートマップ
100 RI走査手段
102 上部フレーム
104 柱部
106 車輪
108 車軸
110 下部フレーム
112 補助車輪
114 車軸
116 バンド
118 線源
120 検出器
122 レーザ計測器
124 位置検出部
126 管理/制御部
1201 密度測定部
1202 水分測定部