(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156213
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】低締付力複合メタルシール
(51)【国際特許分類】
F16J 15/06 20060101AFI20231017BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20231017BHJP
F16J 15/08 20060101ALI20231017BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
F16J15/06 H
F16J15/10 C
F16J15/08 H
F16J15/10 G
C23C16/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022073777
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】509083692
【氏名又は名称】株式会社EM応用技術研究所
(72)【発明者】
【氏名】三木 正晴
【テーマコード(参考)】
3J040
4K030
【Fターム(参考)】
3J040BA02
3J040BA03
3J040EA05
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA25
3J040FA02
3J040FA06
3J040HA07
3J040HA15
4K030KA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】信頼性が高く、かつ低締付力のメタルシールを提供する。
【解決手段】耐高温腐食ガス特性を持つ低締付力メタルシールを耐高温特性を持つゴムO-リングシールの内周側に配し、被シール部材表面とシール表面間におけるシール性能はゴムO-リングシールは従来通りにし、シール性の信頼性をゴムO-リングシールで確保し、ゴムO-リングシールよりシール性の信頼性は劣るが確実に耐高温腐食ガス特性を持つ低締付力メタルシールでゴムO-リングシール側に高温腐食ガスが侵入するのを防ぐ低締付力複合メタルシール構造とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
O-リングシール溝に挿入可能な形状のメタルシールの外周側にゴムO-リングシールを一体化した低締付力複合メタルシール
【請求項2】
請求項1記載のゴムO-リングシールが耐高温特性に特化したパーフルオロエラストマーあるいは弾性補強材を含有したパーフルオロエラストマーである低締付力複合メタルシール
【請求項3】
請求項1記載のメタルシールが概略純Ni製である低締付力複合メタルシール
【請求項4】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3記載の低締付力複合メタルシールがゴムO-リングシールの一部がメタルシールに内包されその形状がメタルシールの弾性力を規定する低締付力複合メタルシール
【請求項5】
請求項4のゴムO-リングシールの一部の表面がメタルシールと接触する面積の割合でメタルシール全体の弾性力を最適化した低締付力複合メタルシール
【請求項6】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5記載の低締付力複合メタルシールを用いた成膜装置
【請求項7】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5記載の低締付力複合メタルシールを用いたエッチング装置
【請求項8】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5記載の低締付力複合メタルシールを用いた分析装置
【請求項9】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5記載の低締付力複合メタルシールを用いた排気ガス除害装置
【請求項10】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5記載の低締付力複合メタルシールを用いたガス排気ポンプ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低締付力の複合メタルシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置、あるいは、そのガス排気ポンプおよび排気ガス除害装置において、近年の半導体製造プロセスにおける更なる微細化、3次元化等により、大量の高温腐食ガス、あるいは、クリーニングガスを導入、排気する必要性が高まってきている。そのため、それらの装置に使用するシールは耐高温性能と耐腐食ガス性能の両方を合わせ持つことが要求され、ゴムO-リングシールを用いていた箇所にゴムO-リングシールとほぼ同等の締付力でシール可能な低締付力メタルシールが求められるようになってきている。しかしながら、既存の低締付力メタルシールは、シール表面の状態変化や温度変化によるシール面のずれ、更には、シール材と被シール材や締付ボルト材の熱膨張率の差からくる締付力の変動等に対応するには、被シール面の高精度表面仕上げやゴムO-リングシールに比べ大きな締付力を要求するため、文字通りの高温腐食ガス向けの高信頼性かつゴムO-リングシールと同等な低締付力メタルシールは実現できていない。
【先行技術文献】
【0003】
既存の低締付力メタルシールは、製品カタログ1、2、3に示すように、特殊な形状、あるいはシール面に接触するシール部の面積を狭くしたりして、低締付力でシール可能なメタルシールを製品化している。しかしながら、メタル表面の狭い部分でシールする機構で、しかも締付力が弱いため、シール表面の状態変化や温度変化によるシール面のずれ、更には、シール材と被シール材や締付ボルト材の熱膨張率の差からくる締付力の変動により、そのシール性能の信頼性はゴムO-リングシールに比べるとはるかに低くなっている。
【文献】
【0004】
【製品カタログ1】
【製品カタログ2】
TechneticsグループのE形状メタルシール
【製品カタログ3】
三菱電線工業株式会社のU形状メタルシール
【出願特許文献1】
特願2020-100469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の低締付力メタルシールの信頼性が低いのは、低締付力にするためにメタル表面の突出した狭い領域のみを被シール面に接触させてシールしているからである。ゴムO-リングシールの場合は、被シール面の凹凸にゴムO-リングシール表面がならい、しかもシール面が広い領域になるため、多少のシール表面の凹凸や温度変化によるシール面のずれ、更には、シール材と被シール材や締付ボルト材の熱膨張率の差からくる締付力等の変動に関わらずシール性能を維持できる。そこで、メタルシールとゴムO-リングシールそれぞれの長所である耐高温腐食ガスに対応可能なメタルシールと多少のシール表面の凹凸や温度変化によるシール面のずれ、更には、シール材と被シール材や締付ボルト材の熱膨張率の差からくる締付力の変動に関わらずシール性能を維持できるゴムO-リングシールの信頼性とを複合するシールを考える。ここで、高温腐食ガスに接触する側に高温腐食ガス耐性のある低締付力メタルシールを配置し、その外側を高温耐性のある素材でできた信頼性あるゴムO-リングシールとする低締付力複合メタルシールとし、低締付力メタルシールに多少のガス漏洩があっても低締付力複合メタルシール全体でシール性能の信頼性を維持する。そこで、課題はいかにコンパクトに従来のシール溝に適用できる低締付力複合メタルシールを実現するかである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために耐高温腐食ガス特性を持つ低締付力メタルシールを耐高温特性を持つゴムO-リングシールの内周側(高温腐食ガス側)に配し、被シール部材表面とシール表面間におけるシール性能はゴムO-リングシールは従来通りにし、シール性の信頼性をゴムO-リングシールで確保し、ゴムO-リングシールよりシール性の信頼性は劣るが確実に耐高温腐食ガス特性を持つ低締付力メタルシールでゴムO-リングシール側に高温腐食ガスが侵入するのを防ぐ低締付力複合メタルシール構造とする。低締付力メタルシールの弾性力は外側のゴムO-リングシールの一部がその内側の低締付力メタルシールに内包される構造とし、その低締付力メタルシール全体の弾性力をゴムO-リングシールとほぼ同等に設定する。ここで、内側の低締付力メタルシールのシール性能の信頼性が低いために時間経過とともに高温腐食ガスがゴムO-リングシール側に漏洩するが、そのガス漏洩量は高温腐食ガスに直接触れている低締付力メタルシールに比べると実質上零に等しく、ゴムO-リングシール部の信頼性に影響しない低締付力複合メタルシールとなる。
【発明の効果】
【0007】
低締付力メタルシールとゴムO-リングシールとの低締付力複合メタルシールが、従来のゴムO-リングシール溝に収まるような形状であるため、従来のシール部構造を設計変更する必要がなく、既存装置の耐高温腐食ガス特性のアップグレイド用シールとして使える。
【0008】
従来のゴムO-リングシールの内側、すなわち高温腐食ガスが流れる側に耐高温性と耐腐食性に優れた低締付力メタルシールを配することにより、高温腐食ガスと低締付力メタルシール表面との反応やそのシール表面から発生するガスによる悪影響はない。
【0009】
また、従来のゴムO-リングシールの内側に低締付力メタルシールを配することにより、ゴムO-リングシールから発生するガスのチャンバー内への放出量も低減するため、ゴムO-リングシールから発生する高分子ガスの侵入を嫌う半導体製造装置や分析装置のシールとしても使える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】製品カタログ2のE形状低締付力メタルシール
【
図3】製品カタログ3のU形状低締付力メタルシール
【
図4】本発明の第一の実施例の低締付力複合メタルシール
【
図5】本発明の第二の実施例の低締付力複合メタルシール
【
図6】本発明の第三の実施例の低締付力複合メタルシール
【
図7】本発明の第四の実施例の低締付力複合メタルシール
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
以下、本発明の実施例を各図に基づき説明する。
図1、
図2、
図3はC(+
耐高温腐食ガスに対応するシールも製品化されているが、被シール面との接触部分が非常に狭く締付力が弱いため、シール表面の状態変化や温度変化によるシール面のずれ、更には、シール材と被シール材や締付ボルト材の熱膨張率の差からくる締付力の変動により、そのシール性能の信頼性はゴムO-リングシールに比べるとはるかに低くなっている。
【0012】
図4は本発明の実施例で、耐高温性に特化しその耐高温特性が十分なパーフルオロエラストマーあるいは弾性補強材を含有したパーフルオロエラストマーによるゴムO-リングシール401の内側(高温腐食ガス側)に耐高温腐食性を持つ金属、例えば概略純Ni製低締付力メタルシール402を配した低締付力複合メタルシール400となっている。概略純Ni製低締付力メタルシール402の表面と被シール部材403の表面間におけるシール性能の信頼性は低いとは言え、その低締付力メタルシール402からのゴムO-リングシール401側への高温腐食ガスの漏洩量が本低締付力メタルシール402の表面に接触する高温腐食ガス量に比較すると無視できる量なので、ゴムO-リングシール401のシール性能の信頼性に影響しない。また低締付力メタルシール全体の弾性力を低締付力メタルシール402に内包されるゴムO-リングシール401の一部401aの形状によりゴムO-リングシール401の弾性力とほぼ同等に設定する。具体的には低締付力メタルシール402とゴムO-リングシールの一部401aとの接触部401bの面積を最適化した形状にする。
【0013】
図5は本発明の実施例で、耐高温性に特化しその耐高温特性が十分なパーフルオロエラストマーあるいは弾性補強材を含有したパーフルオロエラストマーによるゴムO-リングシール501の内側(高温腐食ガス側)に耐高温腐食性を持つ金属、例えば概略純Ni製低締付力メタルシール502を配した複合メタルシール500となっている。概略純Ni製低締付力メタルシール502の表面と被シール部材503の表面間におけるシール性能の信頼性は低いとは言え、その低締付力メタルシール502からのゴムO-リングシール501側への高温腐食ガスの漏洩量が本低締付力メタルシール502の表面に接触する高温腐食ガス量に比較すると無視できる量なので、ゴムO-リングシール501のシール性能の信頼性に影響しない。また低締付力メタルシール全体の弾性力を低締付力メタルシール502に内包されるゴムO-リングシール501の一部501aの形状によりゴムO-リングシール501の弾性力とほぼ同等に設定する。具体的には低締付力メタルシール502とゴムO-リングシールの一部501aとの接触部501bの面積を最適化した形状にする。
【0014】
図6は本発明の実施例で、耐高温性に特化しその耐高温特性が十分なパーフルオロエラストマーあるいは弾性補強材を含有したパーフルオロエラストマーによるゴムO-リングシール601の内側(高温腐食ガス側)に耐高温腐食性を持つ金属、例えば概略純Ni製低締付力メタルシール602を配した複合メタルシール600となっている。概略純Ni製低締付力メタルシール602の表面と被シール部材603の表面間におけるシール性能の信頼性は低いとは言え、その低締付力メタルシール602からのゴムO-リングシール601側への高温腐食ガスの漏洩量が本低締付力メタルシール602の表面に接触する高温腐食ガス量に比較すると無視できる量なので、ゴムO-リングシール601のシール性能の信頼性に影響しない。また低締付力メタルシール全体の弾性力を低締付力メタルシール602に内包されるゴムO-リングシール601の一部601aの形状によりゴム0-リングシール601の弾性力とほぼ同等に設定する。具体的には低締付力メタルシール602とゴムO-リングシールの一部601aとの接触部601bの面積を最適化した形状にする。
【0015】
図7は本発明の実施例で、耐高温性に特化しその耐高温特性が十分なパーフルオロエラストマーあるいは弾性補強材を含有したパーフルオロエラストマーによるゴムO-リングシール701の内側(高温腐食ガス側)に耐高温腐食性を持つ金属、例えば概略純Ni製低締付力メタルシール702を配した複合メタルシール700となっている。概略純Ni製低締付力メタルシール702の表面と被シール部材703の表面間におけるシール性能の信頼性は低いとは言え、その低締付力メタルシール702からのゴムO-リングシール701側への高温腐食ガスの漏洩量が本低締付力メタルシール702の表面に接触する高温腐食ガス量に比較すると無視できる量なので、ゴムO-リングシール701のシール性能の信頼性に影響しない。また低締付力メタルシール全体の弾性力を低締付力メタルシール702に内包されるゴムO-リングシール701の一部701aの形状によりゴムO-リングシール701の弾性力とほぼ同等に設定する。具体的には低締付力メタルシール702とゴムO-リングシールの一部701aとの接触部701bの面積を最適化した形状にする。ここで低締付力メタルシール702は、その径方向幅704と同等の厚みのシート状の金属シートを短冊形状にカットし、その表面にゴムO-リングシールの一部701aを内包するくぼみ部を切削した低締付力メタルシール702でもリング形状の低締付力メタルシール702と同等の性能が得られることは特願2020-100469で示されている。
低締付力メタルシールとゴムO-リングシールからなる低締付力複合メタルシールが、従来のO-リングシール溝に収まるような形状であるため、従来のシール部構造を設計変更する必要がなく、既存装置の耐高温腐食ガス特性のアップグレイド用シールとして使えるので、腐食性プロセスガスやクリーニングガスが従来より大流量に更には高温になる場合の新規あるいは中古の成膜装置やエッチング装置用のシールとして有用である。
また、従来のゴムO-リングシールの内側にメタルシールを配することにより、ゴムO-リングシールから発生するガスのチャンバー内への放出量も低減するので、ゴムO-リングシールからの高分子量のガス侵入を嫌う半導体製造装置や分析装置のシールとしても使える。