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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156223
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】耐摩耗性ポリエステル材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20231017BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20231017BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20231017BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20231017BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20231017BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231017BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20231017BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K5/098
C08K5/5415
C08L23/06
C08L27/12
C08K3/013
C08K5/13
C08K5/524
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022170239
(22)【出願日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】111113817
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】鄭 文瑞
(72)【発明者】
【氏名】劉 岳欣
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB033
4J002BB072
4J002BD123
4J002CF001
4J002CF051
4J002CF281
4J002CP033
4J002DE136
4J002DE236
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002EG026
4J002EG027
4J002EH077
4J002EJ008
4J002EJ028
4J002EW028
4J002EW068
4J002EX037
4J002FD016
4J002FD078
4J002FD177
4J002FD202
4J002FD206
4J002GC00
4J002GG00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】結晶化速度が大きく、表面摩擦係数が小さく、耐摩耗性が改善された耐摩耗性ポリエステル材料を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂と、核剤と、潤滑剤と、酸化防止剤とを含む、耐摩耗性ポリエステル材料を提供する。リサイクルされた(PCR)樹脂の包含も可能とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂と、
核剤と、
潤滑剤と、
酸化防止剤とを含む、耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項2】
前記耐摩耗性ポリエステル材料の全重量に基づくと、前記PET樹脂は99.35重量%から95重量%の量で添加され、前記核剤は0.5重量%から3重量%の量で添加され、前記潤滑剤は0.05重量%から1重量%の量で添加され、前記酸化防止剤は0.1重量%から1重量%の量で添加される、請求項1に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項3】
前記耐摩耗性ポリエステル材料の全重量に基づくと、前記核剤は1重量%から2重量%の量で添加される、請求項1に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項4】
前記PET樹脂は、バージン樹脂、消費後にリサイクルされた(PCR)樹脂、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項5】
前記PET樹脂は、0.58から0.92の固有粘度を有する、請求項1に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項6】
前記核剤は、有機核剤、無機核剤、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項7】
前記有機核剤は有機ナトリウム塩を含み、
前記有機ナトリウム塩は、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸のナトリウム塩、又はエチレン-メチルメタクリレートコポリマーのナトリウム塩を含む、請求項6に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項8】
前記無機核剤は無機マイクロ-ナノ粉体を含み、
前記無機マイクロ-ナノ粉体は、タルク、二酸化チタン、二酸化ケイ素、又は炭酸カルシウムを含む、請求項6に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項9】
前記潤滑剤は、ステアレート、ポリエチレンワックス、シロキサン変性剤、又はフッ素ベースの樹脂を含む、請求項1に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【請求項10】
前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、混合酸化防止剤、ホスファイトベースの酸化防止剤、複合酸化防止剤、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の耐摩耗性ポリエステル材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はポリエステル材料に関し、特に耐摩耗性ポリエステル材料に関する。
【背景技術】
【0002】
市場は徐々に循環経済及びプラスチックリサイクルの傾向に向かっている。このような市場の傾向の中で、製品のための単一の材料の使用及びリサイクル材料の導入は、将来の発展のための重要な目標である。リサイクル材料の導入は、機械的特性及び加工性に影響が与えられないことを前提に、環境にやさしいリサイクル材料を導入することを意味し、これは、プラスチックの削減及び省エネルギー化の目標をグローバルに達成することを促進する。単一の材料の使用は、製品が寿命に達したときにそれらが直接的にリサイクルされるように、製品の製造に使用される材料を単純化することを意味し、これは、異なる材料の混合によって生じるリサイクル可能率の低下を回避する。
【0003】
衣服及びバックパックを例に挙げると、衣服及びバックパックの生地は、通常はポリエステル材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))で作られているが、バックル及びジッパーは、通常、ポリオキシメチレン(POM)材料又はナイロン材料で作られている。これらの製品が処分された後、それらは焼却されるか、あるいはリサイクルされるように手作業で取り除くすることしかできない。カーテンなどの製品も同様の問題に直面している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単一の材料を使用するために、例えばPOM材料又はナイロン材料で作られるバックル又は周辺アクセサリーは、その代わりとしてPETポリエステル材料で作られ得る。しかし、既存のPET材料は、結晶化速度が小さく、耐熱性が不十分であり、表面摩擦係数が大きいため、POM及びナイロン製で作られる製品の射出成形に容易に使用することができず、結果的に用途が限定されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、結晶化速度が大きく、表面摩擦係数が小さく、耐摩耗性が改善された耐摩耗性ポリエステル材料を提供する。
【0006】
本開示による耐摩耗性ポリエステル材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂と、核剤と、潤滑剤と、酸化防止剤とを含む。
【0007】
本開示の一実施形態において、耐摩耗性ポリエステル材料の全重量に基づくと、PET樹脂は99.35重量%から95重量%の量で添加され、核剤は0.5重量%から3重量%の量で添加され、潤滑剤は0.05重量%から1重量%の量で添加され、酸化防止剤は0.1重量%から1重量%の量で添加される。
【0008】
本開示の一実施形態において、理想的な添加比として、耐摩耗性ポリエステル材料の全重量に基づくと、核剤は、1重量%から2重量%の量で添加される。
【0009】
本開示の一実施形態において、PET樹脂は、バージン樹脂、消費後にリサイクルされた(PCR)樹脂、又はそれらの組み合わせを含む。
【0010】
本開示の一実施形態において、PET樹脂は、0.58から0.92の固有粘度(IV)を有する。
【0011】
本開示の一実施形態において、核剤は、有機核剤、無機核剤、又はそれらの混合物を含む。
【0012】
本開示の一実施形態において、有機核剤は有機ナトリウム塩を含み、有機ナトリウム塩は、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸のナトリウム塩、又はエチレン-メチルメタクリレートコポリマー(EMAA-Na)のナトリウム塩を含む。
【0013】
本開示の一実施形態において、無機核剤は、無機マイクロ-ナノ粉体を含み、無機マイクロナノ粉体は、タルク、二酸化チタン、二酸化ケイ素、又は炭酸カルシウムを含む。
【0014】
本開示の一実施形態において、潤滑剤は、ステアレート、ポリエチレンワックス、シロキサン変性剤、又はフッ素ベースの樹脂を含む。
【0015】
本開示の一実施形態において、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、混合酸化防止剤、ホスファイトベースの酸化防止剤、複合酸化防止剤、又はそれらの組み合わせを含む。
【発明の効果】
【0016】
上記に基づくと、本開示の一実施形態による耐摩耗性ポリエステル材料は、核剤と、潤滑剤と、酸化防止剤とをPET樹脂に導入することによって変性される。核剤は、結晶化及び凝固速度を高め、PET材料の収縮速度を効果的に改善する。潤滑剤は、製品の耐摩耗性を向上させるために、PET材料の表面摩擦係数を低下させる。酸化防止剤は、PET材料の耐熱性及び加工性を向上させる。したがって、既存のPET材料の遅い結晶化速度と不十分な耐熱性は効果的に改善され、PET材料の表面摩擦係数が低下して耐摩耗性が改善されるため、本開示の耐摩耗性ポリエステル材料は、単一の材料の使用の目標を達成するために、ジッパー、バックル、カーテン部品、文房具、ケース、及び他の製品の射出成形に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、これらの実施形態は例示であり、本開示はそれに限定されない。
【0018】
本明細書において、「ある数値から別の数値」によって表される範囲は、その範囲内の数値の全てを列挙することを避ける一般的な表現である。したがって、特定の数値範囲の記載は、任意の数値及びそれより小さい数値範囲が本明細書で特定されているかのように、その数値範囲内の任意の数値及びその数値範囲の任意の数値によって定義されるそれより小さい数値に及ぶ。
【0019】
本開示によれば、耐摩耗性ポリエステル材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂と、核剤と、潤滑剤と、酸化防止剤とを含む。具体的には、耐摩耗性ポリエステル材料は、適切な量の核剤と、潤滑剤と、酸化防止剤とをPET樹脂に導入することによって変性される。いくつかの実施形態において、未変性PETポリエステル材料と比較して、変性PETポリエステル材料(すなわち、本開示の耐摩耗性ポリエステル材料)は、結晶化及び凝固速度がより大きく、耐熱性により優れ、表面摩擦係数がより小さく、あるいは耐摩耗性がより良い。したがって、変性PETポリエステル材料は、ジッパー、バックル、カーテン部品、文房具、又はケースなどの製品の射出成形に適用できるが、それに限定されない。以下に、上述の様々な構成要素について詳細に説明する。
【0020】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂
この実施形態において、PET樹脂は、バージン樹脂、消費後にリサイクルされた樹脂(PCR樹脂)、又はそれらの組み合わせを含み得る。PCR樹脂の原料は、リサイクル材料の導入を実現するために、ボトルからリサイクルされた樹脂、フィルム材料からリサイクルされた樹脂、布地からリサイクルされた樹脂、産業的にリサイクルされた環境にやさしいリサイクルポリエステル樹脂(離型フィルムなど)、又はその他のPET製品を含み得るが、それに限定されない。
【0021】
具体的には、耐摩耗性ポリエステル材料の全重量に基づくと、PET樹脂は、例えば99.35重量%から95重量%の量で添加され得るが、それに限定されない。本開示の一実施形態において、使用されるPET樹脂の固有粘度(IV)は、例えば0.58から0.92であり、好ましくは0.76から0.88であり得るが、それに限定されない。PET樹脂の固有粘度が0.58未満であると、PET樹脂の衝撃強度が低くなりすぎて、その結果、射出成形品の強度が不足し、脆化することがある。PET樹脂の固有粘度が0.92より大きいと、PET樹脂の粘度が高すぎて、PET樹脂が射出成形に適さないことがある。
【0022】
核剤
この実施形態において、核剤は、有機核剤、無機核剤、又はそれらの混合物を含み得る。有機核剤は、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸のナトリウム塩、又はエチレン-メチルメタクリレートコポリマー(EMAA-Na)のナトリウム塩などの有機ナトリウム塩を含み得るが、それに限定されない。無機核剤は、タルク、二酸化チタン、二酸化ケイ素、又は炭酸カルシウムなどの無機マイクロ-ナノ粉体を含み得るが、それに限定されない。核剤の導入は、結晶化及び凝固速度を大きくして、PET材料の収縮速度を効果的に改善し、それにより加工性を改善する。この実施形態において、耐摩耗性ポリエステル材料の全重量に基づくと、核剤は、例えば、0.5重量%から3重量%、好ましくは1重量%から2重量%の量で添加されるが、それに限定されない。添加される核剤の量が0.5重量%未満であると、PETの結晶化及び凝固速度の増大効果が顕著に現れないことがある。添加される核剤の量が3重量%よりも多いと、核生成速度の増大が限界に達し、過剰な添加が費用を増大させ、材料を脆化させることがある。さらに、添加される核剤の量が1重量%から2重量%であると、材料は比較的バランスの取れた機械的特性(衝撃強度)と結晶化速度とを有する。
【0023】
潤滑剤
この実施形態において、潤滑剤は、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなど)、ポリエチレンワックス、シロキサン変性剤(例えば、シロキサン)、又はフッ素ベースの樹脂(例えば、PEFE)を含み得る。潤滑剤の導入は、PET材料の表面摩擦係数を低下させ、それによって製品の耐摩耗性が向上する。この実施形態において、耐摩耗性ポリエステル材料の全重量に基づくと、潤滑剤は、例えば、0.05重量%から1重量%、好ましくは0.1重量%から0.3重量%の量で添加されるが、それに限定されない。添加される潤滑剤の量が0.05重量%未満であると、摩擦係数を低くする効果が小さくなり、PETの耐摩耗性の向上効果が顕著に現れないことがある。添加される潤滑剤の量が1重量%を超えると、材料の流動性が高すぎることがあり、その結果、射出の間にフラッシングが発生しやすくなり、条件を制御することが難しくなる。さらに、潤滑剤の過剰な添加は、材料の脆化を生じさせ、衝撃強度を低下させることがある。
【0024】
酸化防止剤
この実施形態において、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(例えば、AO-1010、AO-1076、AO-1315など)、混合酸化防止剤(例えば、B225、B215、B220、B911など)、リン酸系酸化防止剤(例えば、AO-168、AO-618、TNPPなど)、複合酸化防止剤、又はそれらの組み合わせを含み得る。酸化防止剤は、材料の耐熱性及び加工性を向上させる。この実施形態において、耐摩耗性ポリエステル材料の全重量に基づくと、酸化防止剤は、例えば、0.1重量%から1重量%、好ましくは0.3重量%から0.5重量%の量で添加されるが、それに限定されない。添加される酸化防止剤の量が0.1重量%よりも少ないと、高温加工中のPET材料の耐熱性の改善効果はあまり改善せず、材料が黄変しやすい。添加される酸化防止剤の量が1重量%よりも多いと、改善効果が限界に達し、過剰な添加は費用の増大につながることがある。
【0025】
本開示の耐摩耗性ポリエステル材料の変性プロセスは、以下の工程を含む。まず、PET樹脂と、核剤と、酸化防止剤と、潤滑剤とを、230℃から250℃の主供給温度で押出機に投入する。次に、溶融段階において樹脂材料を260℃から280℃のスクリュー温度で溶融して、核剤、酸化防止剤、及び潤滑剤などの変性剤と十分に混練する。それから、245℃から265℃の真空温度で、水蒸気及び低分子オリゴマーを真空及び低圧方法で除去し、それによって本開示の耐摩耗性ポリエステル材料を得る。
【0026】
以下に、実験例を参照して、本発明の耐摩耗性ポリエステル材料を詳細に説明する。ただし、以下の実験例は、本開示を限定することを意図するものではない。
【実施例0027】
本開示による耐摩耗性ポリエステル材料が優れた機械的特性を有し、したがって優れた耐摩耗性を有することを証明するために、以下の実験例を実施した。
【0028】
試験サンプル
試験サンプルは、POM材料、未変性PET材料、及び本開示の一実施形態による耐摩耗性ポリエステル材料(すなわち、変性PET材料)とした。POM材料はPoly M90であった。未変性PET材料は配合によって製造した。耐摩耗性ポリエステル材料の製造方法については上記説明を参照し、ここで、PET樹脂は98.5重量%であり、核剤は1重量%であり、酸化防止剤は0.3重量%であり、潤滑剤は0.2重量%であった。
【0029】
試験方法
衝撃強度:ASTM D256規格に従って試験を行った。得られた値(kg-cm/cm)は、試験片が壊れるときに試験片が耐えられる総エネルギーを示す。値が大きいほど、試験サンプルは大きな衝撃強度(又は試験サンプルの抵抗強度)に耐えられることを示す。
【0030】
引張強度:ASTM D638規格に従って試験を行った。得られた値は、試験サンプルが引張変形に耐えられる総エネルギーを示す。値が大きいほど、試験サンプルの耐引張強度が高いことを示す。
【0031】
曲げ強度:ASTM D790規格に従って試験を行った。得られた値は、試験サンプルが曲げ変形に抵抗する能力を示す。値が大きいほど、試験サンプルの耐曲げ強度が高いことを示す。
【0032】
曲げ弾性率:ASTM D790規格に従って試験を行った。得られた値は、試験サンプルが曲げ変形に耐えられる総エネルギーを示す。値が大きいほど、試験サンプルの剛性が高いことを示す。
【0033】
材料冷却結晶化温度(Thc(℃)):ASTM D3418規格に従って試験を行った。得られた値は、材料が結晶化をし始める初期温度を示す。値が大きいほど、材料の結晶化速度が大きいことを示す。
【0034】
表面硬度:鉛筆硬度を意味する。柔らかいものから硬いものへの鉛筆硬度グレードは、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、7H、8H、及び9Hである。鉛筆硬度試験は、硬度の仕様に従って柔らかいものから硬いものまで行い、鉛筆にかけた荷重は500グラムであった。傷を残した最初の鉛筆の硬さが試験結果である。
【0035】
ロックウェル硬度:ASTM D785規格に従ってを試験を行った。硬度値を決める指標は、押し込み塑性変形の深さである。値が大きいほど、材料の硬度が大きいことを示す。
【0036】
動的/静的摩擦係数:ASTM D1894規格に従って試験を行った。摩擦係数は、常圧に対する2つの固体表面間の摩擦力の比率を示す。摩擦係数が大きいほど、物体は滑るときに大きな抵抗を受けることを示す
【0037】
加熱ひずみ温度:ASTMD648規格に従って試験を行った。得られた値は、加熱ひずみに対する試験サンプルの抵抗を示す。値が大きいほど、試験サンプルは大きな熱抵抗を有することを示す。
【0038】
摩耗損失重量:H-22ホイール、荷重1kg、2000回。初めにサンプルの初期重量を測定し、荷重が1kgのH-22ホイールを使用してサンプル上で2000回繰り返し転がして、サンプルの残りの重量を測定した。初期の重量と残りの重量との差が、サンプルの摩耗損失重量である。値が小さいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0039】
結果
以下の表1から分かるように、本開示の耐摩耗性ポリエステル材料は、未変性PET材料と比較して、射出成形による結晶化速度が大きく(未変性PET材料は、結晶化するまでに約186.7℃に冷却する必要があり、一方で、本開示の耐摩耗性ポリエステル材料は、約208.7℃に冷却すると結晶化され得)、耐熱性により優れ(未変性PET材料の加熱ひずみ温度が68℃であり、一方で、本開示の耐摩耗性ポリエステル材料の加熱ひずみ温度が76℃であり)、表面摩擦係数がより小さく(未変性PET材料の動的/静的摩擦係数は0.48/0.40であり、一方で、本開示の耐摩耗性ポリエステル材料の動的/静的摩擦係数は0.40/0.34であり)、耐摩耗性により優れ(未変性PET材料の摩耗損失重量は381.7mgであり、一方で、本開示の耐摩耗性ポリエステル材料の摩耗損失重量は298.6mgであり)、優れた機械的特性を有する。
【0040】
【表1】
【0041】
本開示の一実施形態による耐摩耗性ポリエステル材料は、核剤と、潤滑剤と、酸化防止剤とをPET樹脂に導入することによって変性される。核剤は、結晶化及び凝固速度を大きくし、PET材料の収縮速度を効果的に改善する。潤滑剤は、PET材料の表面摩擦係数を低下させて、製品の耐摩耗性を向上させる。酸化防止剤は、PET材料の耐熱性及び加工性を向上させる。したがって、既存のPET材料の遅い結晶化速度と不十分な耐熱性が効果的に改善され、PET材料の表面摩擦係数が低下して耐摩耗性が改善されるため、本開示の耐摩耗性ポリエステル材料は、単一の材料の使用の目標を達成するために、ジッパー、バックル、カーテン部品、文房具、及びケースなどの射出成形に適用可能である。加えて、PETバージン樹脂のほかに、本開示の実施形態で使用されたPET原材料は環境にやさしいリサイクルPET(PCR-PET)であり得、これはバージン樹脂と同等の機械的特性及び表面平滑性を有する。したがって、本開示はリサイクル材料の導入の要求に適合しており、循環経済の傾向により合致している。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示の耐摩耗性ポリエステル材料は、単一の材料の使用の目標を達成するために、ジッパー、バックル、カーテン部品、文房具、ケース、及び他の製品の射出成形に適用可能である。
【0043】
上記の実施形態を参照して本開示を説明したが、実施形態は本開示を限定することを意図していない。当業者は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、変更及び修正を行うことができる。したがって、開示の保護範囲は、特許請求の範囲によって定義されるべきである。
【外国語明細書】