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特開2023-156231海上交通混雑度予測システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156231
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】海上交通混雑度予測システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/00 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G08G3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036394
(22)【出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0045182
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518304915
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ オーシャン サイエンス テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】オ ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヘジン
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181CC14
5H181DD02
5H181DD04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF33
5H181MA48
(57)【要約】
【課題】海上交通混雑度予測システム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、分析対象海域の航跡データを用いて交通ネットワークを生成し、対象海域を分割し、分割された領域に基づいて航跡データを分類した後、時間順に整列し、整列された航跡データを設定時間単位で区分して時系列特性を抽出し、これに基づいて今後の交通量を予測し、予測された交通量を考慮して領域別混雑度を予測する、海上交通混雑度予測システム及び方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通混雑度を予測しようとする対象海域の航跡データを航跡データベースから抽出し、前記航跡データを用いて、ノード及びエッジからなる交通ネットワークを生成するように構成された交通ネットワーク生成部と、
前記交通ネットワークのノード位置情報に基づいて前記対象海域を分割するように構成された対象海域分割部と、
前記航跡データベースから抽出された航跡データを前記対象海域の分割された領域に基づいて分類し、各領域に含まれている航跡データを時間順に整列するように構成された領域別航跡データ分類部と、
前記領域別に整列された航跡データを設定時間単位で区分して、時間による交通量特性である時系列特性を抽出し、前記航跡データに対する時系列特性に基づいて交通量を予測するように構成された交通量予測部と、
予測された前記交通量を考慮して領域別混雑度を予測するように構成された領域別混雑度予測部と、を含む、海上交通混雑度予測システム。
【請求項2】
前記領域別混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を決定して、グラフの形態で電子海図上に表示するように構成された混雑度可視化部をさらに含む、請求項1に記載の海上交通混雑度予測システム。
【請求項3】
前記対象海域分割部は、前記交通ネットワークのノード位置情報に基づいてボロノイ(voronoi)法を用いて前記対象海域を均等に分割する、請求項1に記載の海上交通混雑度予測システム。
【請求項4】
前記交通量予測部は、前記航跡データに対する時系列特性に基づいてARIMA(AutoRegressive Integrated Moving Average)またはETS(ExponenTial Smoothing)の方法を用いて今後24時間の交通量を予測する、請求項1に記載の海上交通混雑度予測システム。
【請求項5】
前記交通量予測部は、前記航跡データに対する時系列特性に基づいて機械学習(machine learning)方法を用いて今後24時間の交通量を予測する、請求項1に記載の海上交通混雑度予測システム。
【請求項6】
前記領域別混雑度予測部は、予測された前記交通量を考慮して次の[数式1]を用いて領域別混雑度(
【数1】

)を予測する、請求項1に記載の海上交通混雑度予測システム。
【数2】

[ここで、
【数3】

は予測された交通量を示し、
【数4】


【数5】

領域での交通量平均を示し、
【数6】

は流入する交通量を示し、
【数7】

は交通ネットワークのノードに入るエッジの数を示す]
【請求項7】
海上交通混雑度予測システムを用いた海上交通混雑度予測方法であって、
交通ネットワーク生成部が、交通混雑度を予測しようとする対象海域の航跡データを航跡データベースから抽出し、前記航跡データを用いて、ノード及びエッジからなる交通ネットワークを生成するステップと、
対象海域分割部が前記交通ネットワークのノード位置情報に基づいて前記対象海域を分割するステップと、
領域別航跡データ分類部が、前記航跡データベースから抽出された航跡データを前記対象海域の分割された領域に基づいて分類し、各領域に含まれている航跡データを時間順に整列するステップと、
交通量予測部が、前記領域別に整列された航跡データを設定時間単位で区分して、時間による交通量特性である時系列特性を抽出し、前記航跡データに対する時系列特性に基づいて交通量を予測するステップと、
領域別混雑度予測部が、予測された前記交通量を考慮して領域別混雑度を予測するステップと、を含む、海上交通混雑度予測方法。
【請求項8】
混雑度可視化部が、前記領域別混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を決定して、グラフの形態で電子海図上に表示するステップをさらに含む、請求項7に記載の海上交通混雑度予測方法。
【請求項9】
前記対象海域分割ステップは、前記交通ネットワークのノード位置情報に基づいてボロノイ法を用いて前記対象海域を均等に分割する、請求項7に記載の海上交通混雑度予測方法。
【請求項10】
前記交通量予測ステップは、前記航跡データに対する時系列特性に基づいてARIMA(AutoRegressive Integrated Moving Average)またはETS(ExponenTial Smoothing)の方法を用いて今後24時間の交通量を予測する、請求項7に記載の海上交通混雑度予測方法。
【請求項11】
前記交通量予測ステップは、前記航跡データに対する時系列特性に基づいて機械学習方法を用いて今後24時間の交通量を予測する、請求項7に記載の海上交通混雑度予測方法。
【請求項12】
前記領域別混雑度予測ステップは、予測された前記交通量を考慮して次の[数式1]を用いて領域別混雑度(
【数8】

)を予測する、請求項7に記載の海上交通混雑度予測方法。
【数9】

[ここで、
【数10】

は予測された交通量を示し、
【数11】


【数12】

領域での交通量平均を示し、
【数13】

は流入する交通量を示し、
【数14】

は交通ネットワークのノードに入るエッジの数を示す]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上交通混雑度予測システム及び方法に関し、特に、分析対象海域の航跡データを用いて交通ネットワークを生成し、対象海域を分割し、分割された領域に基づいて航跡データを分類した後、時間順に整列し、整列された航跡データを設定時間単位で区分して時系列特性を抽出し、これに基づいて今後の交通量を予測し、予測された交通量を考慮して領域別混雑度を予測する海上交通混雑度予測システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、海上交通管制システム(Vessel Traffic Service system)は、海上交通量の暴走や危険貨物の増加、潜在的な環境汚染の危険などから港湾安全または港湾運営の効率性を高めるために通航サービスを提供するシステムであって、VTS区域内で周辺状況及び海上交通状況を適時に提供して船舶での航海意思決定に役立つように情報サービスを提供する。
【0003】
海上交通管制士は、対象管制区域で今後発生する可能性のある交通状況を予め予測して船舶の交通流を効率よく管理する役割を果たす。海上交通管制士は、個別船舶の運航経路を予測して衝突リスクに対する管制を行ったり、対象海域全体の交通量または混雑度を予測して入港、出港、停泊、接岸スケジュールを調整したりする。
【0004】
しかし、海上交通管制士が対象海域の交通量を予測するためには、港内施設使用の現況、季節、時間、天気、海域の交通特性などを複合的に分析しなければならないので、交通量の予測は、多年間の管制経験が求められる、難しくて複雑なことである。特に、交通混雑度は単に交通量の多い状況を意味しないため、海上交通管制の観点から交通混雑度を定義し、これを予測することができなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許10-2017-0034254号公報(発明の名称:海上風力団地内の船舶管理方法)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、かかる点に着目してなされたもので、その目的は、海上交通管制士に対象海域に対する交通量を予測するのに役立つことができ、交通混雑度情報を容易に認知することができるようにする海上交通混雑度予測システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態による海上交通混雑度予測システムは、交通混雑度を予測しようとする対象海域の航跡データを航跡データベースから抽出し、前記航跡データを用いて、ノード及びエッジからなる交通ネットワークを生成するように構成された交通ネットワーク生成部と、前記交通ネットワークのノード位置情報に基づいて前記対象海域を分割するように構成された対象海域分割部と、前記航跡データベースから抽出された航跡データを前記対象海域の分割された領域に基づいて分類し、各領域に含まれている航跡データを時間順に整列するように構成された領域別航跡データ分類部と、前記領域別に整列された航跡データを設定時間単位で区分して、時間による交通量特性である時系列特性を抽出し、前記航跡データに対する時系列特性に基づいて交通量を予測するように構成された交通量予測部と、予測された前記交通量を考慮して領域別混雑度を予測するように構成された領域別混雑度予測部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記実施形態による海上交通混雑度予測システムは、前記領域別混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を決定して、グラフの形態で電子海図上に表示するように構成された混雑度可視化部をさらに含むことができる。
【0009】
前記実施形態による海上交通混雑度予測システムにおいて、前記対象海域分割部は、前記交通ネットワークのノード位置情報に基づいてボロノイ(voronoi)法を用いて前記対象海域を均等に分割することができる。
【0010】
前記実施形態による海上交通混雑度予測システムにおいて、前記交通量予測部は、前記航跡データに対する時系列特性に基づいてARIMA(AutoRegressive Integrated Moving Average)またはETS(ExponenTial Smoothing)の方法を用いて今後24時間の交通量を予測することができる。
【0011】
前記実施形態による海上交通混雑度予測システムにおいて、前記交通量予測部は、前記航跡データに対する時系列特性に基づいて機械学習(machine learning)方法を用いて今後24時間の交通量を予測することができる。
【0012】
前記実施形態による海上交通混雑度予測システムにおいて、前記領域別混雑度予測部は、予測された前記交通量を考慮して次の[数式1]を用いて領域別混雑度(
【0013】
【数1】
【0014】
)を予測することができる。
【0015】
【数2】
【0016】
[ここで、
【0017】
【数3】
【0018】
は予測された交通量を示し、
【0019】
【数4】
【0020】
【0021】
【数5】
【0022】
領域での交通量平均を示し、
【0023】
【数6】
【0024】
は流入する交通量を示し、
【0025】
【数7】
【0026】
は交通ネットワークのノードに入るエッジの数を示す。]
上記目的を達成するために、本発明の他の実施形態による海上交通混雑度予測方法は、交通ネットワーク生成部が、交通混雑度を予測しようとする対象海域の航跡データを航跡データベースから抽出し、前記航跡データを用いて、ノード及びエッジからなる交通ネットワークを生成するステップと、対象海域分割部が前記交通ネットワークのノード位置情報に基づいて前記対象海域を分割するステップと、領域別航跡データ分類部が、前記航跡データベースから抽出された航跡データを前記対象海域の分割された領域に基づいて分類し、各領域に含まれている航跡データを時間順に整列するステップと、交通量予測部が、前記領域別に整列された航跡データを設定時間単位で区分して、時間による交通量特性である時系列特性を抽出し、前記航跡データに対する時系列特性に基づいて交通量を予測するステップと、領域別混雑度予測部が、予測された前記交通量を考慮して領域別混雑度を予測するステップと、を含むことを特徴とする。
【0027】
前記他の実施形態による海上交通混雑度予測方法は、混雑度可視化部が、前記領域別混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を決定して、グラフの形態で電子海図上に表示するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の実施形態による海上交通混雑度予測システム及び方法によれば、交通混雑度を予測しようとする対象海域の航跡データを航跡データベースから抽出し、当該航跡データを用いて交通ネットワークを生成し、交通ネットワークのノード位置情報に基づいて対象海域を分割し、航跡データベースから抽出された航跡データを対象海域の分割された領域に基づいて分類し、各領域に含まれている航跡データを時間順に整列し、領域別に整列された航跡データを設定時間単位で区分して時間による交通量特性である時系列特性を抽出し、航跡データに対する時系列特性に基づいて交通量を予測し、予測された交通量を考慮して領域別混雑度を予測するように構成されることにより、海上交通管制士に、対象海域に対する交通量を予測するのに役立つという優れた効果がある。
【0029】
また、上記で予測された領域別混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を決定して、グラフの形態で電子海図上に表示するように構成されることにより、海上交通管制士に対象海域に対する交通混雑度情報を容易に認知することができるようにするという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態による海上交通混雑度予測システムのブロック構成図である。
図2図1の交通ネットワーク生成部によって生成された交通ネットワークの例示図である。
図3図1の対象海域分割部がボロノイ法を用いて分割した対象海域の例示図である。
図4図1の領域別混雑度予測部によって予測された領域別混雑度を示す例示図である。
図5図1の混雑度可視化部によってエッジの色が決定されてグラフの形態で表示されることを示す図である。
図6図1の混雑度可視化部によって領域別混雑度に応じてグラフの形態で電子海図上に表示される混雑時間帯のユーザインターフェースの例示図である。
図7図1の海上交通混雑度予測システムを用いた海上交通混雑度予測方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態を説明するにあたり、本発明による公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不要にぼやけるおそれのあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であり、これは、ユーザ、運用者の意図または慣例などによって変わり得る。このため、その定義は、本明細書全般にわたった内容に基づいて下されるべきである。詳細な説明で使用される用語は、本発明の実施形態を記述するためのものに過ぎず、決して制限的に解釈されてはならない。特に明記しない限り、単数形の表現は複数形の意味を含む。本説明において、「含む」または「具備」などの表現は、ある特性、数字、ステップ、動作、要素、これらの一部または組み合わせを指すためのものであり、記述されたもの以外に1つまたはそれ以上の他の特性、数字、ステップ、動作、要素、これらの一部または組み合わせの存在または可能性を排除すると解釈されてはならない。
【0032】
図面に示されている各システムにおいて、いくつかの場合における要素は、それぞれ同じ参照番号または異なる参照番号を有し、表現された要素が異なるまたは類似する可能性があることを示唆することができる。しかし、要素は、異なる実現を有し、本明細書に見られる或いは記述されたシステムのうちの幾つかまたは全部と作動することができる。図面に示されている要素は、同じでも異なってもよい。どれが第1の要素と呼ばれるか、及びどれが第2の要素と呼ばれるかは任意である。
【0033】
本明細書において、ある一つの構成要素が他の構成要素へデータまたは信号を「伝送」、「伝達」または「提供」するというのは、ある一つの構成要素が他の構成要素へ直接データ又は信号を伝送するのはもとより、少なくとも一つの別の構成要素を介してデータまたは信号を他の構成要素へ伝送することを含む。
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態による海上交通混雑度予測システムのブロック構成図である。
本発明の実施形態による海上交通混雑度予測システムは、図1に示すように、交通ネットワーク生成部100、対象海域分割部200、領域別航跡データ分類部300、交通量予測部400、領域別混雑度予測部500、及び混雑度可視化部600を含む。
【0036】
交通ネットワーク生成部100は、交通混雑度を予測しようとする対象海域(以下、対象海域という)の航跡データを航跡データベースDから抽出し、抽出された航跡データを用いて交通ネットワークを生成する役割を果たす。
【0037】
航跡データベースDは、船舶の航跡が累積格納されたデータベースであり、主にAIS(Automatic Identification System)及びレーダー(RADAR)から受信された物標(水路測量及び航海の目標となる顕著な地形と地物)情報を用いる。
【0038】
航跡データは、下記[表1]の情報を含み、受信された時間に応じて船舶識別番号と共に航跡データベースに格納されている。
【0039】
【表1】
【0040】
生成される交通ネットワークは、図2に示すように、船舶の運航経路及びパターンをグラフの形態で表現するものであって、ノード(node)とエッジ(edge)から構成される。
【0041】
ノードは、緯度と経度で表示され、航跡データから前処理(航跡分類、航跡単純化)された船舶の変針点位置である。
【0042】
船舶の運航経路に基づいて、ノードを連結するエッジの情報を決定することができ、エッジは方向性を有し、重みはノード間の連結頻度で表す。
【0043】
対象海域分割部200は、交通ネットワーク生成部100で生成された交通ネットワークのノード位置情報に基づいて対象海域を分割する役割を果たす。対象海域を分割する方法は、ボロノイ(voronoi)法を使用し、図3に示すように、周囲ノードの位置を考慮して領域を均等に分割することができる。
【0044】
領域別航跡データ分類部300は、航跡データベースDから抽出された航跡データを、対象海域分割部200によって分割された対象海域の領域に基づいて分類し、各領域に含まれている航跡データを時間順に整列する役割を果たす。
【0045】
交通量予測部400は、領域別航跡データ分類部300によって領域別に整列された航跡データを設定時間(例えば10分)単位で区分して時間による交通量特性である時系列特性を抽出し、航跡データに対する時系列特性に基づいて、例えば今後24時間の交通量を予測する役割を果たす。
【0046】
交通量予測は、航跡データに対する時系列特性に基づいて時系列予測方法であるARIMA(AutoRegressive Integrated Moving Average)又はETS(ExponenTial Smoothing)の方法を用いるか、或いはLSTM(Long Short-Term Memory)などの機械学習方法を用いることができる。
【0047】
機械学習方法を用いて交通量を予測する場合、航跡データに対する時系列データ及び交通量データのデータセットによって機械学習された、人工ニューラルネットワークに抽出された航跡データに対する時系列特性データを入力させれば、交通量予測データを抽出することができる。
【0048】
領域別混雑度予測部500は、交通量予測部400によって予測された交通量を考慮して、次の[数式1]を用いて領域別混雑度
【0049】
【数8】
【0050】
を予測する役割を果たす。
【0051】
【数9】
【0052】
[ここで、
【0053】
【数10】
【0054】
は予測された交通量を示し、
【0055】
【数11】
【0056】
【0057】
【数12】
【0058】
領域での交通量平均を示し、
【0059】
【数13】
【0060】
は流入する交通量を示し、
【0061】
【数14】
【0062】
は交通ネットワークのノードに入るエッジの数を示す。]
図4は、図1の領域別混雑度予測部500によって予測された領域別混雑度を示す例示図である。
【0063】
混雑度は、海上交通管制士の観点から単純に交通量が増加する状況ではなく、遭遇する船舶(すなわち、管制が必要な船舶)が多くなる状況を意味する。
【0064】
図4では、C領域における混雑度を計算することが例示されている。
【0065】
C領域は、船舶がA領域とB領域から入り、D領域へ出る交通特性を持つ。
【0066】
左右両側の図では、任意の時間に対してC領域での交通量が50隻であると仮定する。
【0067】
左側の図は、大部分の船舶がA領域からD領域へ進む状況を示し、右側の図は、船舶がA領域とB領域からC領域に合わせられた後、D領域へ出る状況を示す。
【0068】
したがって、右側の図の交通状況は、C領域で船舶間遭遇の可能性が高いため、管制が必要な場合が多いと予想され、より混雑な状況と判断することができる。
【0069】
このような状況は、同じ領域でも、時間帯によって交通特性が異なる可能性があり、これを考慮して混雑度を計算しなければならず、上記の[数式1]に詳細に示されている。
【0070】
混雑度可視化部600は、領域別混雑度予測部500によって予測された領域別混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を決定して、グラフの形態で電子海図上に表示する役割を果たす。
【0071】
図5は、図1の混雑度可視化部によってエッジの色が決定されてグラフの形態で表示されることを示す図である。
【0072】
領域別混雑度予測部500によって予測された各領域の時間による混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を異ならせてグラフの形態で電子海図上に表示される。
【0073】
混雑度グラフは、方向性グラフ(directed graph)であり、混雑度(例えば、-1.0~1.0)によって色を異ならせて表示する。
【0074】
すなわち、混雑:混雑度0.3~1.0、赤
正常:混雑度-0.3~0.3、緑
閑散:混雑度-1.0~-0.3、青
ユーザは、混雑度予測対象時間を今後24時間内でスライドバーを用いて選択することができ、混雑度結果可視化用のユーザインターフェースの例は、図6に示されている。
【0075】
以下、上述したように構成された本発明の実施形態による海上交通混雑度予測システムを用いた海上交通混雑度予測方法について説明する。
【0076】
図7は、図1の海上交通混雑度予測システムを用いた海上交通混雑度予測方法を説明するためのフローチャートであり、ここで、Sはステップ(step)を意味する。
【0077】
まず、交通ネットワーク生成部100が、交通混雑度を予測しようとする対象海域の航跡データを航跡データベースDから抽出し、抽出された航跡データを用いて、ノード及びエッジからなる交通ネットワークを生成する(S10)。
【0078】
次に、対象海域分割部200が、ステップS10で生成された交通ネットワークのノード位置情報に基づいてボロノイ(voronoi)法を用いて対象海域を均等に分割する(S20)。
【0079】
次に、領域別航跡データ分類部300が、航跡データベースDから抽出された航跡データを対象海域の分割された領域に基づいて分類し(S30)、各領域に含まれている航跡データを時間順に整列する(S40)。
【0080】
次に、交通量予測部400が、ステップS40で領域別に整列された航跡データを設定時間単位で区分して時間による交通量特性である時系列特性を抽出し(S50)、航跡データに対する時系列特性に基づいてARIMA、ETS及び機械学習のうちの1つの方法を用いて例えば今後24時間の交通量を予測する(S60)。
【0081】
次に、領域別混雑度予測部500が、ステップS60で予測された交通量を考慮して次の[数式1]を用いて領域別混雑度を予測する(S70)。
【0082】
【数15】
【0083】
[ここで、
【0084】
【数16】
【0085】
は予測された交通量を示し、
【0086】
【数17】
【0087】
【0088】
【数18】
【0089】
領域での交通量平均を示し、
【0090】
【数19】
【0091】
は流入する交通量を示し、
【0092】
【数20】
【0093】
は交通ネットワークのノードに入るエッジの数を示す。]
次に、混雑度可視化部600が、ステップS70で予測された領域別混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を決定して、グラフの形態で電子海図上に表示する(S80)。
【0094】
本発明の実施形態による海上交通混雑度予測システム及び方法によれば、交通混雑度を予測しようとする対象海域の航跡データを航跡データベースから抽出し、当該航跡データを用いて交通ネットワークを生成し、交通ネットワークのノード位置情報に基づいて対象海域を分割し、航跡データベースから抽出された航跡データを対象海域の分割された領域に基づいて分類し、各領域に含まれている航跡データを時間順に整列し、領域別に整列された航跡データを設定時間単位で区分して時間による交通量特性である時系列特性を抽出し、航跡データに対する時系列特性に基づいて交通量を予測し、予測された交通量を考慮して領域別混雑度を予測するように構成されることにより、海上交通管制士に、対象海域に対する交通量を予測するのに役立つことができる。
【0095】
また、上記で予測された領域別混雑度に応じて、周囲ノードに連結されるエッジの色を決定して、グラフの形態で電子海図上に表示するように構成されることにより、海上交通管制士に対象海域に対する交通混雑度情報を容易に認知することができるようにする。
【0096】
図面及び明細書には最適な実施形態が開示されており、特定の用語が使用されたが、これは、本発明の実施形態を説明するための目的で使用されたものであり、意味を限定するか、或いは特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために使用されたものではない。したがって、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、これから様々な変形及び均等な他の実施形態が可能であることを理解することができるであろう。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0097】
100 交通ネットワーク生成部
200 対象海域分割部
300 領域別航跡データ分類部
400 交通量予測部
500 領域別混雑度予測部
600 混雑度可視化部
D 航跡データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7