(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156250
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】熱硬化性の注型材料から正面及び裏面を備える注型品を製造するための注型用型
(51)【国際特許分類】
B29C 39/26 20060101AFI20231017BHJP
B29C 39/02 20060101ALI20231017BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20231017BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B29C39/26
B29C39/02
B29C39/24
B29C33/02
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023063810
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10 2022 108 881.2
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518429207
【氏名又は名称】ショック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Schock GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ・パーテルノステル
(72)【発明者】
【氏名】クサーヴァー・プレドル
(72)【発明者】
【氏名】アロイス・プロープスト
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AJ02
4F202AJ03
4F202AJ05
4F202AJ13
4F202AK05
4F202AK09
4F202AR06
4F202AR07
4F202AR12
4F202AR20
4F202CA09
4F202CB01
4F202CK18
4F202CK42
4F202CN01
4F202CN18
4F202CN21
4F204AA43
4F204AC05
4F204AJ09
4F204EA03
4F204EB01
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
4F204EK24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱硬化性の注型材料から正面及び裏面を備える注型品を製造するための注型用型を提供する。
【解決手段】注型用型は、正面を形成する少なくとも1つの第1の型部品2及び裏面を形成する少なくとも1つの第2の型部品3であって、共に注型キャビティ4の境界を定める第1の型部品及び第2の型部品を備え、前記第1の型部品は、前記注型キャビティの境界を定める第1の金属層5を備え、前記第2の型部品は、前記注型キャビティの境界を定める第2の金属層6を備え、少なくとも1つの金属層は、前記注型キャビティ容積を変更するために、少なくとも部分的に変形可能である。ここで、少なくとも1つの型部品は、弾性的に変形可能かつ圧縮可能な材料から成る平坦な中間層9を備え、前記型部品の前記金属層が、変形する中間層の側においてリセット力を生成させながら、前記中間層に対して移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性の注型材料から正面及び裏面を備える注型品を製造するための注型用型であって、
正面を形成する少なくとも1つの第1の型部品(2)及び裏面を形成する少なくとも1つの第2の型部品(3)であって、共に注型キャビティ(4)の境界を定める第1の型部品(2)及び第2の型部品(3)を備え、前記第1の型部品(2)は、前記注型キャビティ(4)の境界を定める第1の金属層(5)を備え、前記第2の型部品(3)は、前記注型キャビティ(4)の境界を定める第2の金属層(6)を備え、少なくとも1つの金属層(5,6)は、前記注型キャビティ容積を変更するために、少なくとも部分的に変形可能であり、
少なくとも1つの型部品(3)は、弾性的に変形可能かつ圧縮可能な材料から成る平坦な中間層(9)を備え、前記型部品(3)の前記金属層(6)が、変形する中間層(9)の側においてリセット力を生成させながら、前記中間層(9)に対して移動可能であることを特徴とする、注型用型。
【請求項2】
前記第2の型部品(3)が前記中間層(9)を備え、前記第2の金属層(6)が前記中間層(9)に対して移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の注型用型。
【請求項3】
前記中間層(9)は、弾性かつ圧縮可能なプラスチック材料から成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の注型用型。
【請求項4】
前記中間層(9)は、スポンジゴム(35)から成ることを特徴とする、請求項2に記載の注型用型。
【請求項5】
前記中間層(9)のショアA硬度は、5°~35°、好ましくは15°+/-5°であることを特徴とする、請求項3に記載の注型用型。
【請求項6】
前記中間層(9)は、2~10mm、特に3~7mm、及び、好ましくは4~6mmの厚みを有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項7】
前記中間層(9)は、前記注型キャビティ(4)の境界を定める前記金属層(5,6)の表面の少なくとも50%、好ましくは前記表面全体を覆っていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項8】
移動可能な前記金属層(6)の裏面には、前記金属層(6)を平面状に覆う加熱機構(8)が備えられており、前記加熱機構(8)は、平坦な前記中間層(9)に当接していることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項9】
前記加熱機構(8)は、弾性の物質の中に埋め込まれた、管状又は帯状の加熱素子(20)を備えていることを特徴とする、請求項7に記載の注型用型。
【請求項10】
前記物質は、伝熱物質(19)であることを特徴とする、請求項8に記載の注型用型。
【請求項11】
前記中間層(9)は、前記型部品(2,3)の型部品キャリア(10,11)に直接配置されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項12】
前記第1の型部品(2)は、第1の型部品キャリア(10)を備え、前記第2の型部品(3)は、第2の型部品キャリア(11)を備え、前記第1の型部品キャリア(10)及び前記第2の型部品キャリア(11)は、ポリマーコンクリートから成ることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項13】
前記第1の金属層(5)及び前記第2の金属層(6)は、ニッケルから成ることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項14】
前記第1の金属層(5)は、3~8mm、特に4~7mm、及び、好ましくは6mmの厚みを有し、前記第2の金属層(6)は、1~4mm、及び、好ましくは2.5mmの厚みを有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項15】
移動可能でない前記金属層(5)の裏面に、前記金属層(5)を平面状に覆う加熱機構(7)が設けられていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項16】
前記加熱機構(7)は、弾性の物質の中に埋め込まれた、管状又は帯状の加熱素子(17)を備えていることを特徴とする、請求項15に記載の注型用型。
【請求項17】
前記物質は、伝熱物質(18)であることを特徴とする、請求項16に記載の注型用型。
【請求項18】
前記第1の型部品又は前記第2の型部品(2,3)の前記金属層(5,6)の周縁部において、断熱素子(21)が配置されており、前記断熱素子(21)は、閉鎖位置において、他方の前記金属層(5,6)の縁部に当接し、互いに接触してない両方の金属層(5,6)を熱的に分離させることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項19】
前記断熱素子(21)は、プラスチック、特に熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、又は、エラストマーから成ることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【請求項20】
前記断熱素子(21)が閉鎖時に衝突する前記金属層(5,6)の縁領域は、階段状に実施されており、前記断熱素子(21)が最初に衝突する第1の当接領域(25)と、前記第1の当接領域(25)と前記断熱素子(21)を支持する金属層(5,6)との間で押しつぶされた断熱素子(21)が、変形後に衝突する第2の当接領域(28)と、を備えることを特徴とする、請求項18又は19に記載の注型用型。
【請求項21】
前記断熱素子(21)が閉鎖時に衝突する前記金属層(5,6)に、周方向に延びると共に閉鎖位置において前記断熱素子(21)に当接するシール要素(27)が設けられており、好ましくは、前記シール要素(27)は、前記第1の当接領域(25)と前記第2の当接領域(28)との間の溝(26)の中に収容されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の注型用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性の注型材料から正面及び裏面を備える注型品を製造するための注型用型に関する。この注型用型は、正面を形成する少なくとも1つの第1の型部品及び裏面を形成する少なくとも1つの第2の型部品であって、共に注型キャビティの境界を定める第1の型部品及び第2の型部品を備え、第1の型部品は、注型キャビティの境界を定める第1の金属層を備え、第2の型部品は、注型キャビティの境界を定める第2の金属層を備え、少なくとも1つの金属層は、注型キャビティ容積を変更するために、少なくとも部分的に変形可能である。
【背景技術】
【0002】
このような注型用型は、例えば欧州特許第1237694B1号から公知のように、熱硬化性の注型材料から注型品を製造するためのものである。熱硬化性の注型材料は、複合注型品を製造するために、好ましくはポリマーマトリクス及びこの中に挿入された充填材を含む。これによって製造可能な注型品の一例は、キッチンシンクであり、注型キャビティ、あるいは両方の金属層の形状によって型を取った、当該キッチンシンクに対応した複雑な3次元形状を有する。しかしながら、例えば洗面台、シャワートレイ等といった他の注型品も、このような注型用型によって製造可能である。
【0003】
注型品を製造するために、2つの型部品によって境界が定められた注型キャビティの中に、注型材料を挿入する。第1の型部品は、注型品の正面を形成し、第2の型部品は、裏面を形成するように機能する。ここで各型部品は、1つの金属層、つまり成形用の金属薄板を含む。金属薄板は、注型キャビティの正面及び裏面の境界を直接定める、つまり直接成形する。したがって注型材料は、これら両方の金属層に隣接する。
【0004】
注型材料とは、熱硬化性の反応物質、例えば、ポリアクリレート又はポリメタクリレートに基づく反応物質である。反応物質は、数バールの圧力下で注型キャビティの中に導入されて、注型キャビティに完全に充填され、その後、重合プロセスが開始される。このために、欧州特許第1237694B1号から公知の注型用型では、正面を形成する第1の金属層が、それに割り当てられた加熱機構によって、金属層全面にわたって加熱されるので、必然的に、上述のように第1の金属層に隣接する注型材料も加熱される。注型材料が、重合化開始温度よりも高い温度に加熱されると、熱重合反応が始まり、重合正面が、連続的に、注型材料を通って対向する第2の金属層へと順次移動していく。この場合、反応に応じて、反応して硬化した注型材料の体積は減少し、つまり、ポリマー材料は縮小あるいは収縮する。
【0005】
収縮に応じて、注型品の形成側面あるいは表面が金属層から剥がれて、表面欠陥が生じ得ることを回避するために、欧州特許第1237694B1号に係る注型用型では、両方の金属層のうちの一方、ここでは裏面を形成する第2の金属層が、可動に搭載されており、金属層が、収縮する注型材料又は収縮する注型品に追従でき、注型材料又は注型品が可動の金属層に常に表面接触することが確保される。金属層は、このために、型部品の支持型に対してわずかな間隔を置いて配置されている。ここで、支持型と金属層との間に形成されるこの間隙の中に、対応する供給管及び外部ポンプを介して液状の圧媒体を投入可能である。両方の型部品が互いに対して固定して設置されていること、及び、支持型が定位置に配置されていることにより、金属層は、圧媒体の投入により加圧されることが可能である、つまり注型キャビティ容積が低減され得る。これによって、効果的に、注型材料又は形成される注型品が両方の金属層に永続的かつ全面的に接触することが確保され得る。同様に、この注型用型を、金属層の適合を鑑みて形成することは手間がかかる。なぜなら、このために、間隙を実現するための特殊な型部品構造が必要となるだけでなく、対応する供給管、圧媒体、及びポンプ、並びに同様のものも必要となるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、この点に関して改善された注型用型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明によれば、冒頭部分に記載した種類の注型用型であって、少なくとも1つの型部品が、弾性的に変形可能かつ圧縮可能な材料から成る平坦な中間層を備え、型部品の金属層が、変形する中間層の側においてリセット力を生成させながら、中間層に対して移動可能である、注型用型が提供される。
【0008】
本発明に係る注型用型では、両方の型部品のうちの一方に固定して一体化された構成要素として、弾性的に変形可能かつ圧縮可能な材料から成る平坦な中間層が設けられていることが特に有利である。平坦な中間層あるいは層材料は、一方では、対応する圧力で圧縮されることが可能であり、しかし他方では、圧力が解除されると再び元に戻ることが可能である。これはすなわち、圧縮時に、中間層を再び初期形状に移行させることに適したリセット力が生成されることを意味している。本発明によれば、金属層のうちの一方は、この弾性かつ圧縮可能な中間層に対して移動可能である。好ましくは、この金属層は、第2の型部品の第2の金属層である。なぜなら、第2の金属層によって、例えばキッチンシンクの取り付け位置では通常視認できない注型品の裏面が形成されるからである。記載したように、液状の注型材料は、例えば2~5バールの圧力で、注型キャビティの中に投入される。注型キャビティ内のこの高い圧力は、弾性かつ圧縮可能な中間層によって最終的には移動可能に搭載された金属層、つまり好ましくは第2の金属層を、その初期位置から移動させることになる。すなわちこの金属層は、弾性かつ圧縮可能な中間層に対して押圧され、これによって中間層は、リセット力を生成しながら圧縮される。充填工程が終了した後、多くの場合注型材料に熱を投入することにより、硬化、つまり本来の重合反応が始まる。熱の投入は、例えば、これによって加熱される第1の型部品、つまり第1の金属層を介して行われることが可能である。重合化が進むに連れて収縮が増えることにより、熱重合反応が始まる。しかしここで、反応に応じて注型材料あるいは連続的に重合化する型本体の容量が減少すると、この収縮は、可動に搭載された金属層つまり好ましくは第2の金属層が、弛緩した中間層により適合されること、すなわち、中間層が再び膨張して金属層を押圧することによって、自動的に補償される。これによって注型キャビティは、重合化する注型材料の収縮に合わせて、連続的に縮小する。こうして、注型材料が、対応する金属層に対して永続的に平面状に当接することが確保される。
【0009】
従来から公知の注型用型に対して、本発明に係る注型用型は、自動的な適合又はリセットが、型部品に一体化された手段、すなわち弾性の平坦な中間層を介して実現されているので、明らかに単純な設計となっている。これは、型部品自体に、適合又はリセット装置が一体化されていることを意味する。例えば、記載したような供給管、圧媒体、ポンプ等のいかなる外部の設定又は適合手段は、有利には必要なく、また、特定の間隙を構成する必要がないため、注型用型あるいは対応する型部品の構成も簡素化されるが、最終的には小型の型部品の形成が可能となる。
【0010】
第2の型部品が中間層を備え、第2の金属層が中間層に対して移動可能であることが好ましい。記載したように、第2の金属層は型部品の裏面を形成しており、この裏面は、注型品の取り付け位置において、通常は視認できない。したがって、この面を形成する金属層を移動可能に支持することが適切であり、正面、つまり注型品の見える側を形成する第1の金属層は不動であり、この界面でいつでも何の相対運動も行われないようにする。
【0011】
中心に配置された適合又はリセット手段は、金属層が連結された平坦な弾性かつ圧縮可能な中間層である。好ましくは、中間層の材料として、弾性かつ圧縮可能なプラスチック材料が使用される。これは、対応する弾性のリセット能力を、対応するリセット力を生成しながら、多くの作業サイクルにわたって示す材料である。
【0012】
ここで、スポンジゴムから成る弾性かつ圧縮可能な中間層が使用されることが好ましい。スポンジゴムとは、大部分が独立気泡の弾性発泡材料を意味している。このような多孔性ゴムは、例えば、クロロプレン、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-ゴム、又は、比較可能な合成ゴム、例えばスチレン-ブタジエン-ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン-ゴム、又は、同様のゴムから製造されていることが可能である。これらの例示は決してすべてを網羅している訳ではない。このような弾性のプラスチック材料、特にスポンジゴムの形のプラスチック材料は、大面積の中間層としての設計に関して特に適しており、容易に、金属層の3次元の形状に合わせて形成可能であり、結果として型部品に一体化可能である。
【0013】
この弾性かつ圧縮可能な中間層あるいは中間層材料のショアA硬度は、5°~35°、好ましくは15°+/-5°を有するべきである。これは、所定の注型圧力によって、対応してその全面にわたって圧縮されることが可能であり、同時に適合のために対応するリセット力も生成可能な柔軟材料であることを意味する。
【0014】
中間層の厚みは、2~10mm、特に3~7mm、及び、好ましくは4~6mmである必要がある。最終的には、実際の厚みは、選択された中間層材料の弾性特性や、補償することになる所定の収縮に依存する。
【0015】
中間層自体は、注型キャビティの境界を定める第2の金属層の面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、及び最大で表面全体を覆う。これは、弾性の中間層は、金属層が注型材料と接触する領域のほとんど、場合によっては全領域にわたって延びており、つまり、ほぼ又は完全に縁まで延びているか、あるいは、当該型部品が他方の型部品に当接する縁まで延びていることを意味する。これによって、ほぼ全て、又は、最終的には全ての領域において、対応する、生成されたリセット力に起因するいわば積極的な金属層の適合が確保される。
【0016】
記載したように、注型材料が局所的に開始温度よりも高い温度に加熱されると、重合工程が開始される。多くの場合、第1の型部品には、第1の金属層の裏面において平面状に当接した加熱機構が設けられている。この加熱機構は、物質の中に埋め込まれた管又は帯状の加熱素子を含み、この物質は、好ましくは伝熱物質、例えばポリマー物質に金属粒子、好適には銅粒子が埋め込まれたものである。重合化は、直接第1の金属層において、つまり正面において始まり、その後、重合正面が第2の金属層の方向に進む。ここで本発明のさらなる発展形態では、第2の金属層の裏面に、これを平面状に覆う加熱機構が設けられていることが可能である。加熱機構は、平坦な中間層に当接している。この第2の金属層の加熱機構によって、裏面からも狙いを定めて加熱して、重合プロセスを制御することが可能である。最大限可能な程度の加熱容量を第2の金属層に投入可能とするために、この加熱機構は、平面状に第2の金属層に当接している。ここで本発明によれば、加熱機構は、平坦な弾性かつ圧縮可能な中間層に続いている。中間層も支えられているので、中間層は、圧縮のための支えとなる。すなわち本発明によれば、第2の金属層は、加熱機構を介していわば間接的に、弾性中間層と可動連結されている。
【0017】
加熱機構自体は、伝熱性の物質の中に埋め込まれた管状又は帯状の加熱素子を含む。管状の加熱素子は、例えば、熱湯又は他の加熱流体が貫流する管状ヒータ又は加熱コイルである。代替的に、帯状の加熱素子も、電気加熱導体の形で設けられていてもよい。この加熱素子は、基本的に、対応する伝熱性の物質の中に埋め込まれており、加熱機構を、第2の金属層の3次元の形状に合わせて構成して、これを正確に適合させることを可能にする。詳細には後述するが、少なくとも、弾性中間層によって移動可能な加熱機構の加熱素子は、伝熱性及びさらに弾性の物質の中に埋め込まれていることが可能である。加熱素子は、例えば、螺旋状又は蛇行状に構成されていることが可能である。1つの加熱機構につき2つ又はそれ以上の別個の加熱回路が設けられていてもよい。これらの加熱回路は、別々に制御可能であり、熱の供給は、局所的に、及び、時間的により柔軟に行うことが可能である。
【0018】
ここで、この物質は、好ましくは伝熱物質である。この伝熱物質は、加熱素子を介して投入される熱を、表面一帯に最大限可能に均一に分散可能である。伝熱物質は、ポリマー物質に金属粒子、好適には銅粒子が埋め込まれたものであり得る。
【0019】
記載したように、弾性かつ圧縮可能な中間層、つまりスポンジゴム層は、その圧縮のために対応して支持される必要がある。このために、中間層は、好ましくは直接、第2の型部品の部品キャリアに配置されている、つまり直接この型部品キャリアに支持されている。型部品キャリアは、製造プロセス全体を通して、これら両方の型部品を閉鎖する際に、位置固定され、対応する土台を形成する。注型材料が高圧で投入される時に、及び、重合工程を開始するために加熱される際に注型材料の体積が多少拡張する時に、型部品キャリアに向かって第2の金属層が移動する。これによって、対応して高いリセット力の生成が確保される。
【0020】
さらに、第1の型部品は、第1の型部品キャリアを備え、第2の型部品は、上述した第2の型部品キャリアを備える。両方の型部品キャリアは、収縮が可能な限り少ないポリマーコンクリートから構成されていることが適切である。このようなポリマーコンクリートは、好ましくはできる限り少ない熱容量を有する、結合剤を含む充填材としてプラスチックを使用することにより特徴付けられる。したがって、プラスチックマトリクスが提供される。プラスチックマトリクスには、例えば、砂利、砂、又は岩粉といった形の岩石粒子が埋め込まれており、この粒子は、ポリマーマトリクスによって固定されている。
【0021】
両方の金属層は、ニッケル、つまり対応する大面積のニッケル薄板から成ることが有利である。ここで、第1の金属層は、3~8mm、特に4~7mm、好ましくは6mmの厚みを有していることが可能である。第2の金属層は、好ましくは多少薄く、1~4mm、好ましくは2.5mmの厚みを有している。第1の金属層は、位置固定しており、対応する金属体積により均一な熱分散が確保されるので、多少厚くなるように選択可能である。記載したように、重合工程は、通常、開始時に熱が正面から、つまり第1の金属層を介して投入されることにより、開始されるからである。これに対して第2の金属層は、可動である必要があり、つまり厚すぎてはならず、したがって硬直しすぎてはならないので、薄くなるように選択されている。
【0022】
さらに、第1又は第2の型部品の金属層の周縁部において、断熱素子が配置されていることが可能であり、断熱素子は、閉鎖位置において他方の金属層の縁部に当接し、互いに接触していない両方の金属層を熱的に分離させる。本発明によれば、両方の金属層のうちの一方に、閉鎖位置において両方の金属層を熱的に互いに分離させる、つまり断熱する、周縁部に設けられた断熱素子が設けられている。金属層は、本発明に係る注型用型では、隣接しては配置されておらず、むしろ、断熱素子を介して断熱平面が一体化されており、これによって、有利にも、加熱された第1の金属層の熱が第2の金属層に排出されることが、縁部及び当接領域において回避される。有利な断熱が作用し、縁領域においても対応する不良を生じさせず、時間的に整合した重合反応を生じさせることが可能である。これは、加熱された金属層によって、重合化を開始させるために十分な熱の投入が可能だからである。押圧された中間層によって実現される収縮補償により、縁領域でも注型材料が常に存在することが確保されるので、最適な重合化が可能であり、穴や艶消失といった不良個所が縁部においても形成されることはない。例えば周方向に延びる四角形の断熱素子は、幾つかの要素区域が互いに連続して周方向に延びることにより構成することが可能であり、断熱素子が配置されている金属層の縁表面において多少突出しているので、型部品を閉鎖する際に、必然的に他方の金属要素の縁部の当接面に向かって衝突し、同時に両方の型部品を互いに対して支持することが可能である。
【0023】
断熱素子自体は、好ましくはプラスチックから成る。必然的にある程度の弾性あるいは柔軟性又は柔らかさを備えるプラスチックを使用することは、プラスチックが断熱性能を有することに加えて、このプラスチックの断熱素子を介して、金属層の縁部の不均一性を補うことが可能であるという利点を有する。こうして、断熱素子は、注型キャビティを、完全かつ絶対的に隙間を生じさせずに閉鎖することを可能にする。すなわち、欧州特許第1237694B1号に係る注型用型の場合に生じ得るような、後処理で除去しなければならないスプルー不良をもたらす微細隙間が、縁領域に形成されることはない。断熱素子が一体化されていることにより、両方の金属層が接触することが阻止されるので、このような直接的な層の接触時に生じる、目に見える接触縁部の損傷リスクも低減可能である。
【0024】
断熱素子として、好ましくは熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、又は、エラストマーが使用される。例えば、断熱素子は、ポリオキシメチレン(POM)、又は、例えば商品名「Vulkollan(登録商標)」として入手可能なポリエステル-ウレタン-ゴム又はポリウレタン-エラストマーで作ることができるが、これは、単なる一例である。当然ながら、所望の特性を有しているならば、他のプラスチックを使用することも可能である。この特性のうちの1つは、断熱素子あるいは使用されている材料の硬度である。この材料のショアA硬度、80~100、特に90であることが望ましい。
【0025】
さらに、断熱素子は、反応物質に対して非粘着特性を有していることが可能である。これによって、反応物質つまり注型材料だけでなく、重合化された型本体も断熱素子に接着されないことが確保される。接着は、場合によっては不良個所を形成し得る。この非粘着特性は、例えば、断熱素子自体の材料により提供可能であるか、又は、例えば断熱素子に対応する表面コーティングを施すことによって提供可能である。
【0026】
断熱素子自体は、好ましくは棒状であり、四角形の断面を有している。両方の金属層は、対応する平坦な当接面を有しているので、このような棒状の幅広の断熱素子を使用することにより、双方に大きく十分な当接面が得られ、当接面を介して負荷も十分に分散される。その結果、表面圧力を適切に低減することができる。断熱素子の固定は、例えば金属層に接着させることによって、容易に実現可能である。代替的又は追加的に、この固定は、棒状クランプ等の1つ又は複数のさらなるクランプ要素によって行うこともできる。
【0027】
本発明の構成は、さらに、閉鎖時に断熱素子が当接する金属層の縁領域が階段状に構成されており、断熱素子が最初に衝突する第1の当接領域と、第1の当接領域と断熱素子を支持する金属層との間で押しつぶされた断熱素子が、変形後に衝突する第2の当接領域と、を有している。すなわち、最終的に、当接領域における1つの金属層は、階段状に形成された2つの別々の当接面を備え、これら両方の当接面又は当接領域は、0.2~2mm、特に約0.5mmだけ互いにずらして配置されている。したがって閉鎖時に、断熱素子はまず、いわば突出した第1の当接領域に対して衝突する。閉鎖運動を進めて負荷を増やすことにより、断熱素子は多少押しつぶされ、すなわち表面圧力が増大する。さらに閉鎖運動を続け負荷が上昇すると、断熱素子は平坦な第2の当接領域に衝突し、そこで追加的に支持され、表面圧力全体は、両方の支持領域又は支持面を介して十分に低減される。
【0028】
注型キャビティの縁部における全体的な密封を、記載したように好ましくはプラスチックから成り、対応する弾性又は柔軟性を有する断熱素子によって実現することは、基本的に想定可能であるが、閉鎖時に断熱素子が当接する金属層に、周方向に延びると共に閉鎖位置において断熱素子に当接するシール要素が設けられることも想定可能である。すなわち、断熱素子が当接する金属層の露出した当接面が、追加的なシール要素を備えており、この要素が、断熱素子に対して追加的なシール面を実現する。シール要素自体は、第1の当接領域と第2の当接領域との間に形成された溝の中に収容されていることが好ましい。シール要素は、例えば、対応するプラスチック材料、好ましくはエラストマー、から成るシールゴムである。したがって閉鎖時に、断熱素子がこのシール要素に衝突するので、シール要素は、圧力により断熱素子に当接する。
【0029】
このように、第1の金属層に割り当てられるか、又は、設けられている場合、第2の金属層に割り当てられた平面状の加熱機構を介して、金属層の全面にわたって大面積で、熱が投入される。これをできる限り高効率に行うために、当該又は各平面状の加熱機構を、各金属層のすぐ裏面に配置し、裏面を縁側の重複領域の中まで覆うことが可能である。すなわち、加熱機構は、両方の金属層が縁部において重複し断熱素子によって熱的に互いに分離される領域にも延びている。これによって、必然的に注型キャビティのすぐ縁領域においても、そして場合によっては、金属層の縁部においても、多少積極的な熱の伝導が行われることが可能である。
【0030】
ここで具体的には、縁部の重複領域では、他の重複領域よりも、当該又は各加熱機構の加熱素子が、狭い間隔で配置されていることが考えられる。記載したように、縁領域に、収縮を埋め合わせるための可動の金属層が設けられている場合は、金属層の支持により金属層に重要な可動性が提供されないので、記載したように、補償されていない重合収縮によって、艶消失又は収縮マークといった材料不良が生じ得る。これは、既に重合化された体積からなる対応する注型材料の応力が欠如しているからである。この材料不良は、記載したように、一方では断熱素子の一体化によって阻止されるが、他方でそれに加えて、縁領域内に加熱素子を狭い間隔で配置することによって、縁領域においてエネルギー入力を高めることを可能とすることによっても阻止される。すなわち、管状ヒータ又は加熱導体は、両方の金属層が重なって配置され断熱素子によって支持されている縁領域において、加熱素子の他の面よりも、狭い間隔で隣接した状態で延びている。これによって、縁領域内の注型材料が、他の体積分におけるよりも、多少早く硬化されるようになる。そのため対応する応力が、周辺にある、加圧下のまだ液状の注型材料によって生じ、これによって縁領域においても、場合によっては生じる収縮補償が可能となる。また、縁領域において、周方向に延びる別々の加熱回路が設けられている場合、縁部において局所的に、特殊な熱の投入が行われ、縁部における重合化がより早く開始されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明のさらなる利点、特徴、及び詳細を、以下に記載する実施形態に基づき、添付の図面を参照することにより説明する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明に係る注型用型1の原理図を示すものであり、注型用型1は、複合原材料から成るキッチンシンクの形の、正面及び裏面を備える注型品を製造するためのものである。注型用型は、製造される注型品の正面を形成あるいは規定する第1の型部品2と、製造される注型品の裏面を形成あるいは規定する第2の型部品3とを備える。両方の型部品は、縁部において互いに接触して隣接し、注型キャビティ4を区画する。注型キャビティ4の中には、熱硬化性のポリマー物質、つまり例えば珪砂等の粒子状の充填材が挿入された反応物質、から成る注型材料が投入される。通常、第1の型部品2は位置固定されているが、第2の型部品3は垂直に移動可能であり、つまり注型キャビティ4を閉じるために、下方の第1の型部品2の上に設置される。
【0033】
注型キャビティ4自体は、第1の型部品2に配置された第1の金属層5と、第2の型部品3に配置された第2の金属層6とによって、区切られる。投入された注型材料は、これら両方の金属層5、6に接触する、すなわち、これら両方の金属層5、6に平面状に接触する。この場合、第1の金属層5の裏面に、第1の金属層5の裏面をほぼ全面的に覆う第1の加熱機構7が配置される。この加熱機構によって、第1の金属層5の温度調節が可能であり、これによって、注型材料の正面からの加熱が可能である。第2の型部品3も、第2の加熱機構8を有している。第2の加熱機構8は、第2の金属層6の裏面において、これを最終的に全面的に覆った状態で配置されている。第2の加熱機構8を介して、第2の金属層6の温度調節を行うことが可能であり、第2の金属層6を介して注型材料の温度調節を行うことが可能である。つまり、注型材料への裏面からの熱の投入が制御される。第2の加熱機構8には、好ましくはスポンジゴムから成る弾性かつ圧縮可能な中間層9が続いている。この弾性かつ圧縮可能な中間層9は、リセット手段又はリセット要素として機能しており、これによって、第2の金属層6がある程度動くことが可能になると同時に、第2の金属層6が規定の初期位置に再び戻ることが可能である。弾性かつ圧縮可能な中間層9のこの機能に関しては、後で
図2を参照しながらより詳細に説明する。
【0034】
さらに、第1の型部品2は、第1の加熱機構7が隣接する第1の型部品キャリア10を備える。第2の型部品3も、弾性中間層9が隣接する第2の型部品キャリア11を備える。両方の型部品キャリア10、11は、これらに金属層が支持される場合、好ましくは少なくとも部分的にポリマーコンクリートから成る。
【0035】
図2は、
図1の領域IIを示す拡大図であり、注型キャビティ4を形成する、互いに対向した第1の型部品2及び第2の型部品3の領域を示している。右側には、ポリマーコンクリートから成る型部品キャリア10を備える第1の型部品2が示されている。ポリマーコンクリートは、ポリマーマトリクス13とその中に埋め込まれた、例えば砂利又は砂粒子等の充填材とから成る。型部品キャリア10には、管状の加熱素子17から成る第1の加熱機構7が続いている。管状の加熱素子17は、例えば蛇行状に、又は、加熱コイル等として構成され、伝熱物質18の中に埋め込まれている。この場合、加熱素子17を通って、例えば湯等の温度調節された加熱流体が流れる。あるいは、加熱素子17として、配管用電気ヒータなどが設けられていてもよい。
【0036】
加熱機構7には、これに直接接触して、厚みが例えば6mmのニッケル薄板である第1の金属層5が配置されている。この第1の金属層5は、注型キャビティ4に直接隣接していることが分かる。
【0037】
さらに、型部品キャリア11を備える第2の型部品3も部分的に示されている。型部品キャリア11も、同じくポリマーマトリクス15と、その中に埋め込まれた、砂利又は砂粒子等の形状をした充填材16とから成る。この型部品キャリア11には、弾性かつ圧縮可能な中間層9が続いている。中間層9は、スポンジゴム35、つまりスポンジ状の弾性プラスチック材料から形成されている。スポンジゴム35とは、広範囲の独立気泡の弾性かつ圧縮可能な発泡材料、つまり発泡性天然ゴムから成る多孔性ゴムを指す。この弾性中間層9は、好ましくは約4mmの厚みを有し、ショアA硬度が5°~35°、好ましくは15°+/-5°である。この弾性かつ圧縮可能な中間層9を介して、一方側において、第2の加熱機構8が型部品キャリア11に接続される。ここでも第2の加熱機構8は、伝熱物質19とその中に埋め込まれた管状ヒータの形の加熱素子20とから成る。加熱素子20は、管状の加熱素子17と同様に、例えば銅管であり、同じく加熱流体が貫流する。少なくとも伝熱物質19の場合、場合によっては両方の伝熱物質18、19は、これらが弾性を有し、つまり柔軟であるので、平面状又はマット状の加熱機構7、8は、各型部品キャリア10、11の3次元形状に追従して容易に敷設することができ、特に、弾性中間層の動きを、第2の加熱機構8側から行うことができる。
【0038】
次に、加熱機構8には、第2の金属層6が配置される。第2の金属層6も、同じくニッケル薄板である。しかしながら、第2の金属層6は可動であり、つまり本来の製造工場においてその位置を変えるので、約2.5mmの厚みさえ有していればよい。第2の金属層6がその位置を変えることは、第2の金属層6を第2の加熱機構8と共に、弾性中間層9によって第2の型部品キャリア11に対して移動可能とすることによって、つまりその位置を変更可能とすることによって、実現可能である。
【0039】
注型工程が始まると、第2の金属層6はその初期位置にあり、注型キャビティ4は、規定の初期容積を有する。第2の金属層6は、第1の金属層5に対して所定の間隔を置いて配置されており、中間層9は、弛緩され、全く又はほとんど圧縮されていない。注型工程の開始時に、ポリアクリレート又はポリメタクリレートに基づく十分に流動性を有する物質である注型材料を、注型キャビティ4の中に加圧により投入する。注型圧力は、約2~5バールの範囲である。注型材料が注型キャビティ4全体に分散されることを確保するために必要な極めて高い圧力が注型キャビティ4の中に生じることにより、対応して高い表面圧力が両方の金属層5、6に対して生成される。第1の金属層5は、直接、第1の型部品キャリア10に支持されているので、その位置を変化させない。これに対して第2の金属層6は、生成される圧力で退避する。ここで、圧力に応じて弾性中間層9の圧縮が生じ、弾性中間層9はその全面にわたって加圧される。これは、弾性中間層9が位置固定された第2の型部品キャリア11に支持されているために起こり得ることである。すなわち、高い射出圧力によって注型キャビティ容積が拡大され得る。これは、第2の金属層6が、弾性かつ圧縮可能な中間層9又はリセット力を生成しながら圧縮されるスポンジゴム35に対して移動することに起因する。
【0040】
そして、重合プロセスが開始される。これは通常、第1の加熱機構7を駆動させ、これによって加熱流体が加熱素子17を通って循環することによって行われる。こうして加熱機構7の均一な加熱が行われ、これによって第1の金属層5の均一な加熱が行われる。次にこれによって、注型キャビティ4内の注型材料が加熱され、注型材料は、この時の温度に応じて体積が多少拡大する。この注型材料の体積拡大によって、注型キャビティ4の内部圧力が上昇するため、弾性中間層9はさらに圧縮される。
【0041】
第1の金属層5との境界面が、重合化開始温度に達する程度まで局所的に加熱されると、この界面で熱重合反応が開始される、すなわち、ポリマーマトリクスが重合化される。この際、重合正面は、連続的に注型材料の中に移動する、すなわち第2の金属層6の方向に移動する。所定の時点で、第2の金属層6も、第2の加熱機構8を介して温度調節され、この面からも重合反応が制御される。すなわちこの面からも、所定の時間スキームの後に重合反応が開始される。上述のように、重合反応は発熱性であるので、重合反応は自発的に体積全体において継続する。
【0042】
しかし、重合化と共に、注型材料あるいは得られる重合化された注型品の収縮、つまり体積縮小も生じる。しかしながら、注型材料、あるいは注型品の重合化された外表面が、第1の金属層5だけでなく第2の金属層6にも常に接触することを確保するために、弾性中間層9の圧縮により事前にその初期位置から動いていた第2の金属層6は、圧縮された弾性中間層9が弛緩又は拡大することにより、自動的に再び元の状態に戻る、つまり重合収縮に適合する。中間層9は、記載したように、圧縮の間にリセット力を生成する。ここで、注型キャビティ4内の内圧が、この物質の縮小に起因して低下すると、圧縮された弾性中間層9は、再び弛緩し、拡大し、つまり再びその体積を拡大させることが可能であり、連続的に第2の金属層6を押圧して、再びその初期位置の方向に戻すので、第2の金属層6と注型材料又は注型品との持続的な接触が形成される。
【0043】
したがって、第2の型部品3は、弾性かつ圧縮可能な中間層9との一体化により、自動的又は自己調節式に実施されており、第2の金属層6を動かすために必要な何らかの追加的な外部要素は必要ない。むしろ、動くために制御手段や他の要素を全く必要としない自動的なリセット装置が、一体化された弾性かつ圧縮可能な中間層9、つまりスポンジゴム層によって提供される。むしろ、注型キャビティ4内の内圧を介して、ひいては、注型材料あるいはその重合工程自体を介して固有の制御が行われるだけである。
【0044】
両方の加熱機構7、8の加熱あるいは動作は、製造方法の範囲内で対応して制御される。重合化は、記載したように、可視側つまり第1の型部品2から、第1の加熱機構7を介して開始される。この場合、管状の加熱素子17は、まず加熱が注型キャビティ4の周縁部において行われ、そこで重合反応が始まるように、配置されるか又は対応して別々に加熱可能なグループに分割される。これは、すぐ縁部では、第2の金属層6が全くあるいはほとんど移動しないので、ポリマーの収縮を埋め合わせることができないからである。しかし、キャビティ容積内については埋め合わせが可能である。注型材料は、キャビティ容積内においてはまだ液状であるが、縁部では既に重合化が始まっているので、キャビティ容積内の注型材料により、収縮の埋め合わせを行うことが可能である。すなわち、最終的に、第1の加熱機構7を介して、局所的に異なって温度制御を行うことが可能である。
【0045】
第2の加熱機構8を介した加熱、つまり第2の型半体からの加熱を、時間遅延して行われ得る。つまり、既に縁部側で及び場合によっては第1の金属層5の側でも重合化が始まった時から、例えば数分後、例えば約5分後に行われ得る。すなわち、反応速度に応じて、局所的な加熱プロファイルだけでなく時間的な加熱プロファイルも、個別に形成可能である。
【0046】
図3は、
図1の領域IIIを示す拡大部分図である。この領域は、正面を形成する下方の型部品2が、裏面を形成する上方の型部品3に当接した領域を示している。各型部品キャリア10、11と、各加熱機構7、8と、
図2に示される縁領域において上下に重ねられた両方の金属層5、6とが、部分的に示されている。この重複領域、つまり両方の金属層5、6が隣接し、垂直方向に見て重なり合っている領域において、注型キャビティ4が延びている。
【0047】
しかしながら、従来技術とは異なり、ここでは両方の金属層5、6は互いに直接接触して配置されていない。その代わりに、両方の金属層5、6は、互いに熱的に分離されている。これは、第2の金属層6に、断熱素子21が配置されていることにより実現される。断熱素子21は、棒状に設計され、プラスチック材料、好ましくは熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、又は、エラストマー、及び特に、POM又はポリウレタンエラストマーから成る。実施例では、金属層6には、断面が四角形の棒状の断熱素子を把持する階段状の当接面22が形成されている。当接面22には、断熱素子21が例えば接着されている。断熱素子21は、縁部全体の周りに延びており、互いに隣接した複数の要素区域から構成されていてもよい。断熱素子21を収容するために、当接面22は階段状に形成されており、当接へり23が形成されている。この当接へり23に、断熱素子21が注型キャビティ4の方向に当接している。
【0048】
第1の型部品2は、第1の金属層5に、同じく階段状に形成された当接面24を有する。一方では、断熱素子21が当接した第1の隆起領域を形成する第1の当接領域25が実現される。シール紐又はシールゴムの形のシール要素27又は同様のものが収容される周囲溝26を介して分離された状態で、第2の当接領域28が続いている。第2の当接領域28は、第1の当接領域25と同様に平坦であるが、第1の当接領域25よりも少し低い位置に形成されている。したがって、当接面24には、規定の高さプロファイルが形成される。第1の当接領域25と第2の当接領域28との間の高さの違いは、例えば1mmである。
【0049】
図3に示されるように、第2の金属層6は、さらなる縁部に沿って屈折して形成されており、第2の型部品キャリア11の支持台29に、断熱層30を介して載置されており、これに棒状クランプ31によって留められている。この棒状クランプ31には、図示される例では1つのさらなる棒状クランプ32が固定されており、この棒状クランプ32によって、断熱素子21が縁部において、場合によってはさらなる接着のために留められている。
【0050】
対応して、第1の金属層5も、さらなる縁領域において屈折して形成されており、第1の型部品キャリア10の支持台33に、断熱部34を介して載置されている。
【0051】
注型用型1を閉じる場合、上方の第2の型部品3を、垂直に下方に向けて、下方の第1の型部品2の方向に移動させる。縁領域においてのみ、両方の型部品2、3が接触し、ここでは、周方向に延びる断熱素子21と下方の金属層5との間だけが接触する。記載したように、断熱素子21は、当接面22から、第1の金属層5の当接面24の方向に突出している。徐々に押下することにより、断熱素子21は、まず第1の当接領域25に衝突し、同時にシール要素27にも衝突する。さらに押下して断熱素子21に作用する負荷を増やすと、断熱素子21は少し変形する。これは、記載したように、断熱素子21がある程度柔軟性又は弾性を有するプラスチック材料から成るからである。そして、この変形により、第2の当接領域28に当接する。すなわち、断熱素子21は、周方向に広範囲にわたって、両方の当接領域25、28の上に載置及び支持されるので、大きな支持面が得られ、これによって面圧力が低下する。圧縮されたシール要素27は、さらに、断熱素子21自体を介して注型キャビティ4を密閉するためのさらなるシール面を形成する。
【0052】
したがって閉鎖位置では、
図3に示すように、両方の金属層5、6が互いに接触する箇所はない。両方の型部品2、3は、単に断熱素子21を介して、互いに接続されている、あるいは互いに支持及び密封されている。ここで、断熱素子21も、わずかに注型キャビティ4の中に突入し、又は、これの境界を定めているので、略水平方向にも、両方の金属層5、6間の対応する間隔が形成される。
【0053】
熱的分離により、両方の金属層5、6の間では熱伝導あるいは温度補正が行われず、むしろこれらは、割り当てられた加熱機構7、8によって個別に加熱可能である。このため、重合工程及びその制御に必要な、正面及び裏面における個別の温度プロファイルを形成可能である。
【0054】
しかしながら、断熱素子21は、熱的分離だけでなく、場合によっては生じる当接面あるいは当接領域の不均一を補償するように機能する。記載したように、断熱素子は十分に弾性あるいは柔軟性を有しているので、当接領域、特に第1の当接領域25の注型キャビティ4までの各形状に正確に適合させることが可能である。また、断熱素子21は押しつぶされるので、完全に隙間の無い当接が提供される。すなわち、この領域には、後処理で除去しなければならないスプルーエッジ等を形成し得る微細隙間は、形成されない。
【0055】
図3にさらに示すように、加熱素子17又は20は、第1の加熱機構7及び第2の加熱機構8の縁部側において、これに隣接する加熱機構7、8の領域よりも、狭い間隔で配置されている。これによって、臨界の縁領域において、より大量のエネルギー、つまりより多くの熱をポリマー物質の中に投入することが可能になる。これはすなわち、他の面と比べて、金属層5、6が速く加熱され、これによって注型材料も早く加熱されることを意味している。したがって重合化が、他のキャビティ容積部分よりも、縁部においてより早くかつより急速に行われる。縁部では、中間層9の圧縮に起因して第2の金属層6は移動しないので、そこでは、場合によっては生じる収縮を、金属層6の適合により埋め合わせることはできない。しかしながら、縁部では既に重合が始まっているが、他のキャビティ容積内の注型材料はまだ液状であるので、液状の注型材料が縁領域の中に押し込まれ、そこで生じる収縮は後続の注型材料によって直ちに補填される。そのため、不良のない縁部を製造可能である。
【0056】
この特殊な縁部加熱は、加熱素子を密集させて配置することだけでなく、そこに配置された加熱素子に、別個の加熱サイクルとして、個別に加熱流体が供給されるか、又は、流動させることが可能なように、個別に構成してもよい。これによって、時間的に異なる加熱動作を行うことが可能であり、又は、例えばより熱い液体を貫流させること、又は、より強く流動させること等が可能になる。
【外国語明細書】