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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156253
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】周辺環境モデルを作成する方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/42 20100101AFI20231017BHJP
   G01S 19/22 20100101ALI20231017BHJP
【FI】
G01S19/42
G01S19/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023063886
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10 2022 203 657.3
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーカス オコナー
(72)【発明者】
【氏名】テモ ヴュッベーナ
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062BB01
5J062CC07
5J062EE01
(57)【要約】
【課題】周辺環境モデル(74)を作成する方法に関する。
【解決手段】本方法は、衛星航法システム(54)の測定データ(70)を記録するステップと、見通し線(62)に関して測定データ(70)を分類するステップと、壁部物体(72)を生成するステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺環境モデル(74)を作成する方法であって、
衛星航法システム(54)の測定データ(70)を記録するステップと、
見通し線(62)に関して前記測定データ(70)を分類するステップと、
壁部物体(72)を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記測定データ(70)を記録する際に、
受信アンテナ(60)のポジションと、
衛星のポジションと、
測定された擬似距離と、
が考慮される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PR測定値において時計誤差が考慮される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数の測定インスタンスからの前記測定データ(70)が統合される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記分類は、C/N0値の評価によって行われる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分類は、少なくとも1つのPR誤差の評価によって行われる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
壁部計算時に最適化変数が考慮される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記最適化変数として、壁部天底の北方向成分及び東方向成分が考慮される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最適化変数として、任意の壁部天底が考慮される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
周辺環境モデル(74)を作成する装置であって、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺環境モデルを作成する方法及びこの方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
周辺環境モデルは、ある1つの物体の周囲、たとえば、道路、建築物及び空き地を含むある1つの車両の周囲を記述し、特に車両周囲の描写を提供することができる。周囲モデルは、たとえば、車両において運転者支援システムをサポートするために適用される。自律走行車両の場合、かかるモデルは動作のための重要な前提条件を成している。一般的にはこの場合、3次元(3D)周辺環境モデルが適用される。
【0003】
3D周辺環境モデルは、多種多様な用途に適用されている。以下に例を挙げる:
たとえば車車間通信、GNSSに基づくポジショニングにおいて信号伝播を計算するための、3Dレイトレーシング、
車両周辺環境のセマンティック解釈。
【0004】
レイトレーシングは、可視光線及び非可視光線を写実的に計算するグラフィック技術である。これはたとえば、3次元物体の可視面を特定する際に適用される。その際に隠面計算が行われる。
【0005】
3D周辺環境モデルは今日、一般的にはOSMマップ(Open Street Map)として提供され、その際にそれらの精度は著しく大きく異なっており、品質制御は、現在のところ実現されていない。一般的には、大部分の建築物は、たしかに作成されてはいるが、関連する壁部要素のジオリファレンスは、極めて不確実なものになっている。しかも、3Dモデルの完全性及び最新性が不十分であることが多い。たとえば航空写真又はレーザ測定装置から作成される、より精度の高い3Dモデルは、無料ではなく又は自由に入手することはできず、手間をかけて又はコストをかけて作成し又は入手しなければならない。
【0006】
それゆえ、今日の3D周辺環境モデルは、特に比較的広い領域のためにこれを作成したい場合には、信頼性が低く、又は、調達に著しくコストがかかる。
【0007】
刊行物独国特許出願公開第102019211174号明細書には、少なくとも1つの周囲固有のGNSSプロフィルを記述するためのモデルを求める方法について記載されており、この方法によれば、GNSS衛星とGNSS受信機との間のGNSS信号の少なくとも1つのGNSSパラメータを記述する少なくとも1つの測定データセットが受信される。さらに、少なくとも1つの周囲固有のGNSSプロフィルを記述するためのモデルに関して、少なくとも1つのモデルパラメータが、受信された測定データセットを使用して求められる。次いで、少なくとも1つの周囲固有のGNSSプロフィルを記述するためのモデルが用意される。
【0008】
刊行物独国特許出願公開第102019210659号明細書から、GNSS測定値を使用して3次元周辺環境モデルを生成する方法が公知である。この方法の場合、GNSS衛星とGNSS受信機との間のGNSS信号の伝播経路をそれぞれ記述する多数の測定データセットが受信される。次いで、これらの測定データセットのうち第1の選択基準を満たすいくつかの測定データセットが選択され、この場合、第1の選択基準は、GNSS信号の伝播経路に沿って物体境界が存在していることに特有のものである。これに続き、選択された測定データセットを使用して、少なくとも1つのGNSS受信機の周辺環境内における1つの物体の物体境界が捕捉される。
【0009】
ここで留意されたいことは、モデルに含まれているデータから、さらにデータを処理することによって、広い地域にわたる建築物モデルも、付加価値として生成することができる、ということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102019211174号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102019210659号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の開示
このような背景を前提として、請求項1の特徴を有する方法及び請求項10による装置が提示される。従属請求項及び明細書から実施形態が明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
提示された方法は、周辺環境モデル、特に3次元周辺環境モデルを作成又は生成するために用いられ、以下のステップ、即ち、測定データ、特に全地球衛星航法システム(GNSS)の測定データを記録するステップと、見通し線に関して測定データを分類するステップと、壁部物体を生成するステップと、を含む。
【0013】
見通し線に関して測定データを分類するとは、データが記録又は受信されたのは、直接的な見通し線が存在していたときなのか又は存在していなかったときなのかという趣旨で、データを整理する分類が行われる、ということを意味する。
【0014】
したがって、提示された方法の場合、周辺環境モデリングが、GNSS測定値を使用して、特に自律型車両に関連して行われる。
【0015】
本明細書において使用される用語及び略語のいくつかについて、以下において説明する:
C/N0 Carrier to Noise-density ratio、即ち、受信された信号の信号強度に対する尺度。
GNSS 全地球衛星航法システム、たとえば、GPS(Global Positioning System)又はGalileo。
LOS Line of Sight、即ち、直接的な見通し線が存在している。
NLOS Non-Line of Sight、即ち、直接的な見通し線が存在していない。
OSM Open Street Map、即ち、無料で入手可能な地理データ。
PR Pseudorange、即ち、擬似距離。
SV Satellite Vehicle、即ち、GNSS衛星。
【0016】
提示された方法によって、以下のような新しいアプローチが実現される。即ち、このアプローチによれば、自身のポジション又は自己ポジションが既知であるときに、GNSS測定値に基づき、3D周辺環境モデル又は建築物モデルを生成することができる。
【0017】
明細書及び添付の図面から、本発明のさらに他の利点及び実施形態が明らかになる。
【0018】
自明のとおり、これまで挙げてきた特徴及び以下においてこれから説明する特徴は、それぞれ記載された組合せに限定されるものではなく、他の組合せにおいても又は単独の形態においても、本発明の範囲を逸脱することなく適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】提示された方法の可能な流れをフローチャートで示す図である。
図2】この方法を実施する装置の1つの実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の実施形態
図面には、実施形態に基づき本発明が概略的に描かれており、以下においては、それらの図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【0021】
図1には、提示された方法の可能な流れがフローチャートで示されている。
【0022】
I)第1のステップ10において、測定データの記録が行われる。ここでは、以下の点に留意されたい:
【0023】
a.受信アンテナのポジション。
【0024】
b.SVの衛星ポジション。項目a及びbと共に、SVと受信機アンテナとの間のLOS距離も既知である。
【0025】
c.測定された擬似距離。項目a,b及びcと共に、PR誤差又は距離剰余も既知である:
【0026】
PR誤差=測定されたPR-LOS距離
【0027】
PR測定値は、GNSS受信機の時計誤差を補正する目的で使用され、任意選択的にGNSS補正が適用され、この補正によって付加的に、たとえば衛星ポジション及び/又は大気の作用の不正確さが補正される。
【0028】
d.測定された信号強度又はC/N0。
【0029】
GNSS受信機において、衛星から受信機までの衛星信号の伝播時間が測定される。このために、衛星により放射されたとき及び受信機において信号が受信されたときの信号の時刻が利用される。GNSS衛星における時計は非常に精度が高いのに対し、GNSS受信機内の時計は一般に比較的精度が低く、したがって、これには時計誤差、たとえばオフセットが付随している。その結果として、衛星と受信機との間の伝播時間に基づく距離測定値には、時計誤差に応じてオフセットが付随している。このことから擬似距離という用語も生じている。これは本当の距離ではなく、時計誤差が付随した距離測定値である。受信機において、時計誤差はポジション計算の際に共に推定される。推定された時計誤差は、時計誤差の影響分だけ擬似距離の距離測定値を補正する目的で利用される。
【0030】
好適には測定データは、最初に比較的長い期間にわたって、たとえば10日間にわたって、クラウドソーシングを利用して集められる。つまり、このことは、種々の測定インスタンスの測定値が寄せ集められる、ということを意味する。
【0031】
II)第2のステップ12において、LOS/NLOSに関して測定データの分類が行われる。その際に以下のことを考慮されたい:
【0032】
a.アプローチa:分類はC/NO値の評価によって行われる。
【0033】
i.C/N0閾値が定義される。
1.C/N0閾値は、たとえば、受信された信号の衛星の仰角に依存させることができる。
2.C/N0閾値は、GNSS受信機のタイプに依存させることができる。
【0034】
ii.受信された信号のC/N0値が閾値以上である場合には、LOS状態又はLOS信号であることが前提とされる。
【0035】
iii.受信された信号のC/N0値が閾値よりも小さい場合には、NLOS状態又はNLOS信号であることが前提とされる。
【0036】
b.アプローチb:PR誤差の評価によって分類が行われる。
【0037】
i.距離剰余閾値が定義される。
1.この閾値は、たとえば、受信された信号に関連する衛星の仰角に依存させることができる。
2.この閾値は、GNSS受信機のタイプに依存させることができる。
【0038】
ii.受信された信号のPR誤差が閾値以上である場合には、NLOS状態又はNLOS信号であることが前提とされる。
【0039】
iii.受信された信号のPR誤差が閾値よりも小さい場合には、LOS状態又はLOS信号であることが前提とされる。
【0040】
iv.PR測定値におけるノイズを低減する目的で一例として、たとえばハッチフィルタリングのようないわゆる平滑化アプローチを利用することができる。
【0041】
c.アプローチaとbとの組合せ。
【0042】
III)第3のステップ14において、壁部物体が生成される:
【0043】
a.壁部モデルの作成。この目的で以下の壁部モデル特性を基礎とすることができる:
【0044】
i.壁部は、3D空間における幾何学形状であり、たとえば、3D空間内の矩形状面である。
【0045】
ii.壁部は垂直であり、即ち、その法線ベクトルは、3D空間内において水平に配向されている。このことは、方法のロバスト性を高めるものであるが、必須ではない。
【0046】
iii.壁部は、複数のサブ幾何学形状、たとえば、複数の矩形状面に分割することができる。
【0047】
iv.壁部によって反射させられた信号は反射特性に従う。
1.信号入射角度=信号出射角度又は壁部の法線ベクトルの角度。
2.入射信号ビーム及び反射させられた信号ビームは、1つの平面内にある。
【0048】
b.壁部計算
【0049】
i.最適化問題の定義
1.最適化変数。以下に例を挙げる:
a.壁部天底の北方向成分及び東方向成分;壁部天底は、壁部モデルの同一平面内における1つの点であるが、壁部天底は、必ずしも壁部モデルの構成部分でなくてもよい。壁部天底の高さは、たとえば、アンテナ高さと同一であると仮定される。基本的に、これは、任意の高さを有し得る。よって、高さは、最適化変数ではない。
b.任意の3D壁部天底、即ち、3つの座標成分すべてにわたって最適化される。
2.最適化の目的関数
a.たとえば、2次元の最小二乗誤差最適化問題として定式化。誤差は、NLOS信号の測定されたPR誤差と、壁部モデルに基づく予測されたPR誤差との間の差として定義されている。
【0050】
ii.壁部の配向を特定するため:壁部法線ベクトルは、壁部天底とアンテナポジションとの差である。
【0051】
iii.壁部の大きさを特定するため:壁部モデルの平面上の反射点の凸包絡は、壁部モデルを用いて反射点のポジションを特定する測定値の衛星ポジション及び受信ポジションに基づく。
【0052】
iv.適当な最適化アルゴリズム。たとえば、
1.ネルダー・ミード法
2.ガウス・ニュートン法
3.レーベンバーグ・マーカート法
【0053】
c.最適化の可能性
【0054】
i.最適化問題において異常値を引き起こす、即ち、極めてより大きい目的関数を供給する測定データのクラスタリング。その結果として、これらの測定値が他の壁部に関連しているのか否かのチェックが行われ、即ち、これらの測定値によってさらに別の壁部が計算される。
【0055】
ii.たとえば、目的関数が関連する測定値の最適条件において依然として小さい場合には又は有意には増加していない場合には、小さい壁部モデル要素を結合して、より大きい壁部とすることができる。
【0056】
図2には、本明細書において提示された方法を実施する装置が、著しく簡略化されて専ら概略的な図で示されている。この図には、上述の方法を実施する装置を備えた車両50が示されており、この装置は、全体として参照符号52によって表されている。さらに、衛星航法システム54(GNSS)が示されており、この衛星航法システム54のうち、この図には例示的な衛星の送信アンテナ56が描かれている。
【0057】
車両50は、受信アンテナ60を有し、この受信アンテナ60は、データ、特に測定データを交換するために、見通し線62を介して、即ち、遮られることなく、送信アンテナ56と結ばれている。ただし、この場合、見通し線62に限定されるものではなく、したがって、送信アンテナ56が受信アンテナ60の視野から直接見えている状態ではなく、送信アンテナ56から放射された衛星信号が、たとえば、建築物の壁部における反射を介して、受信アンテナ60に間接的に到達する場合であっても、受信アンテナ60を介して測定データを受信することができる。
【0058】
装置52において、衛星航法システム54からの測定データ70が記録されて分類される。次いで、それらから壁部物体72が求められる。その後、この壁部物体72に基づき、3次元周辺環境モデル74が作成される。
【0059】
選択的な実施形態において、装置52をさらに分割することができ、この場合には、測定データ70がサーバシステムに伝達され、そこにおいて、様々な車両の測定データ70が統合されるその際に、分類を、引き続き車両50内において行うことができ、又は、測定値若しくは測定データ70をサーバシステムに伝達した後、サーバシステムにおいて行うことができる。壁部物体72の算出及び周辺環境モデルの作成は、サーバシステムにおいて、そこにおいて統合された測定データ70に基づき行われる。次いで、周辺環境モデル74を、たとえば、サーバシステム上にアップデータが用意されている車両側周辺環境モデルの要素に関して、たとえばダウンロードを介して、車両50に再び供給することができる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
a.アプローチa:分類はC/N0値の評価によって行われる。
【外国語明細書】