(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156254
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】実験動物バイタルサイン計測システム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20231017BHJP
G01S 13/536 20060101ALI20231017BHJP
G01S 17/08 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A01K29/00 C
G01S13/536
G01S17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063959
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2022065657
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302042966
【氏名又は名称】アーク・リソース株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 光鎬
(72)【発明者】
【氏名】井上 聖也
(72)【発明者】
【氏名】川辺 敏晃
(72)【発明者】
【氏名】喜多 章太
(72)【発明者】
【氏名】千田 廉
【テーマコード(参考)】
5J070
5J084
【Fターム(参考)】
5J070AB15
5J070AC02
5J070AD01
5J070AE10
5J070AF01
5J070AK13
5J084AA05
5J084AA07
5J084AB07
5J084BA03
5J084BA31
(57)【要約】
【課題】実験動物のバイタルサインを、実験動物に身体的負担を与えることなく、且つ研究者の負担を軽減しつつも、信頼性の高い測定結果を得る
【解決手段】このバイタルサイン計測システムは、実験動物が無動化したことを検知する無動化検知部と、無動化検知部の検知結果に従い、実験動物に向けて電波又は光を照射して実験動物のバイタルサインを計測する計測部とを備える。実験動物の体の少なくとも一部が進入可能とされ、前記体の少なくとも一部を無動化する無動化筐体を備え、無動化検知部は、無動化筐体に進入した体の少なくとも一部が無動化したことを検知するように構成され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験動物が無動化したことを検知する無動化検知部と、
前記無動化検知部の検知結果に従い、前記実験動物に向けて電波又は光を照射して前記実験動物のバイタルサインを計測する計測部と
を備えた実験動物バイタルサイン計測システム。
【請求項2】
前記実験動物の体の少なくとも一部が進入可能とされ、前記体の少なくとも一部を無動化する無動化筐体を更に備え、
前記無動化検知部は、前記無動化筐体に進入した前記体の少なくとも一部が無動化したことを検知するように構成された、請求項1に記載の実験動物バイタルサイン計測システム。
【請求項3】
前記無動化筐体に近接して配置され実験動物に給餌又は給水する給餌/給水器を更に備える、請求項2に記載の実験動物バイタルサイン計測システム。
【請求項4】
前記計測部は、
前記実験動物に対し電波を照射してその反射波を計測するレーダを含む、請求項3に記載の実験動物バイタルサイン計測システム。
【請求項5】
前記計測部は、
前記実験動物に対しレーザ光を照射してその反射光を計測するレーザセンサを含む、請求項3又は4に記載の実験動物バイタルサイン計測システム。
【請求項6】
前記実験動物に映像又は音声を提示する映像/音声提示装置を更に備える、請求項1に記載の実験動物バイタルサイン計測システム。
【請求項7】
前記無動化筐体は、前記実験動物が含まれるケースから移動可能に構成され、
前記計測部は、前記ケースの外部に配置される、請求項2に記載の実験動物バイタルサイン計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験動物バイタルサイン計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ラット、マウス、モルモット、ウサギ、サルなどの実験動物の生命活動を示すバイタルサイン(脈拍、呼吸、体温、血圧など)を計測するためのバイタルサイン計測システムが知られており、研究が続けられている。しかし、現状の計測システムは、実験動物のバイタルサインを非侵襲で計測することが困難であるという問題がある。
【0003】
例えば、従来のシステムでは、実験動物に麻酔を施すと共に、センサやプローブを外科手術により実験動物の体内に埋め込んで実験動物のバイタルサインの計測をするのが通例であった。このような方法は、実験動物の身体的負担が大きく、また研究者にとっても負担が大きく、且つ麻酔や外科手術を経ることから計測結果の信頼性も低下するという問題がある。ヒトのバイタルサインを非侵襲に計測する計測システムは、例えば特許文献1により知られているが、実験動物は絶えず動いていることから、特許文献1の技術を適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、実験動物のバイタルサインを、実験動物に身体的負担を与えることなく、且つ研究者の負担を軽減しつつも、信頼性の高い測定結果を得ることができる実験動物バイタルサイン計測システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係るバイタルサイン計測システムは、実験動物が無動化したことを検知する無動化検知部と、前記無動化検知部の検知結果に従い、前記実験動物に向けて電波又は光を照射して前記実験動物のバイタルサインを計測する計測部と
を備える。
【0007】
このシステムは更に、好適な形態として、前記実験動物の体の少なくとも一部が進入可能とされ、前記体の少なくとも一部を無動化する無動化筐体を更に備え、前記無動化検知部は、前記無動化筐体に進入した前記体の少なくとも一部が無動化したことを検知するように構成され得る。これに加えて、本システムは、前記無動化筐体に近接して配置され前記実験動物に給餌又は給水する給餌/給水器を更に備え得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実験動物のバイタルサインを、実験動物に身体的負担を与えることなく、且つ研究者の負担を軽減しつつも、信頼性の高い測定結果を得ることができる実験動物バイタルサイン計測システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Aの全体構成を説明する概略図である。
【
図2】バイタルサイン検出用レーダ13、及び無動化検出用レーダ19の構成を説明する概略図である。
【
図3】第1の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Aの動作を説明するフローチャートである。
【
図4】バイタルサイン検出用レーダ13、及びレーザセンサ18の検出信号の一例を示すグラフである。
【
図5】レーザセンサ18の検出信号と、実験動物SBの心電図波形を別途心電図計を用いて計測した結果とを対比して示すグラフである。
【
図6】第2の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Bの全体構成を説明する概略図である。
【
図7】第3の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Cの全体構成を説明する概略図である。
【
図8】第4の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Dの全体構成を説明する概略図である。
【
図9】第4の実施の形態の変形例を示す概略図である。
【
図10】第5の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Eの全体構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0011】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1を参照して、第1の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Aの全体構成を説明する。この実験動物バイタルサイン計測システム1Aは、ケース11と、バイタルサイン検出用レーダ13と、圧力センサ14と、ブロワ16と、レーザセンサ18と、無動化検出用レーダ19と、制御用コンピュータ20と、ルータ21と、管理用コンピュータ22と、データサーバ23とを備えて構成される。
【0013】
ケース11は、その内部に実験動物SB(例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギなど)を収容するための筐体(ケージ)であり、例えば透明なアクリル板により構成され得る。ケース11の大きさは、実験動物SBが、その内部において無拘束で自由に活動が可能である限りにおいて、任意の大きさに設定し得る。本システム1は、このケース11内で行動する実験動物SBのバイタルサインを非侵襲で測定することを可能にするものである。
【0014】
バイタルサイン検出用レーダ13は、
図2に示すように、無動化した実験動物SBに対し例えば周波数24GHzの連続波の送信波(電波)T(t)=cos[2πft+Φ(t)](fは送信周波数、φ(t)は位相)を照射する。そして、その送信波T(t)の実験動物SBの体表面における反射波R(t)を検知して、実験動物SBの体表面の振動を距離d=do+x(t)として計測し、これに基づき実験動物SBのバイタルサイン(脈拍、呼吸、血圧等)を計測する。
【0015】
より具体的には、反射波R(t)は以下の式で表される。
【0016】
【数1】
ここで、cは電波の伝搬速度、λ(=c/f)は電波の波長を示す。このとき、x(t-d(t)/c)におけるd(t)/c項は微小振動であるため無視することができる。従って、反射波R(t)は次の近似式で表すことができる。
【0017】
【0018】
レーダの反射波R(t)が復調される際、基準信号RSと同位相の信号と、基準信号RSから90度遅れた信号との2つの検波信号で周波数検波することでIチャネル及びQチャネルの出力信号BI(t)、BQ(t)が得られる。この出力信号を解析することで、実験動物SBのバイタルサインを計測することが可能になる。
【0019】
圧力センサ14は、ケース11の底面に配置され、その上に乗った実験動物SBからの圧力に従い、実験動物SBの重量を示す信号を生成する。圧力センサ14の設置位置に関しては特定の位置には限定されないが、無動化状態が得られると想定される位置に設置されることが好適である。ブロワ16は、制御用コンピュータ20からの制御信号に従い、圧縮空気を噴射する。圧縮空気の噴射によりケース11の底部の敷料やゴミ等を掃引したり、不適切な位置に居座る実験動物SBの後退を促したりすることができる。
【0020】
カメラ17は、ケース11の内部を動画又は静止画で撮像するための撮像装置であり、実験動物SBの状況を把握するために用いられる。カメラ17の撮像画像を制御用コンピュータ20等において解析することにより、実験動物SBが活動中か、それとも無動化状態にあるかを判定することができる。ここで、「無動化状態」とは、実験動物のバイタルサインを非拘束・非侵襲状態で計測可能な状態、という程度の意味である。一例としては、3~5秒の間に亘り実験動物SBが静止している場合、無動化状態であると判定することができるが、これに限定されるものではない。カメラ17は、無動化状態の判定には使用せず、単に撮像画像を図示しないディスプレイに表示するのみとすることもできる。カメラ17は、可視光像を撮像するものであってもよいし、赤外画像を撮像するものであってもよい。また、カメラ17をサーモグラフィカメラとし、実験動物SBの体温データを取得することも可能である。
【0021】
レーザセンサ18は、例えばケース11の上面に設置されてレーザ光を所定の範囲内で走査して、その反射光を検出することで、実験動物SBの状態を示す信号を取得する。レーザセンサ18の検出信号は、実験動物SBが活動中であるか、それとも睡眠など無動化状態にあるのかを判定するために用いられると共に、実験動物SBのバイタルサインの検出にも用いられ得る。また、レーザセンサ18の検出信号により活動中の実験動物SBの活動量(移動距離、移動速度、その他)を併せて計測することも可能である。
【0022】
無動化検出用レーダ19は、レーザセンサ18と同様にケース11の上面に設置されてケース11の内部において例えば10GHzの電波を所定の範囲内で走査して、その反射波を検出することで、実験動物SBの所在位置、及びその活動状態(無動化を含む)を示す信号を取得する。無動化検出用レーダ19の構成は、
図2に示すように、バイタルサイン検出用レーダ13と同様でよい。ただし、無動化検出用レーダ19が照射する電波の周波数は、干渉防止のため、バイタルサイン検出用レーダ13の電波の周波数(24GHz)とは異なる周波数(例えば10GHz)にするのが好適である。周波数を異なるものにすることに加え、又はこれに替えて、バイタルサイン検出用レーダ13と無動化検出用レーダ19とが時分割動作(一方が動作中は、他方は停止中とする)とすることもできる。なお、無動化検出用レーダ19の検出信号を、実験動物SBのバイタルサインの計測に用いることも可能である。
【0023】
制御用コンピュータ20は、ブロワ16、カメラ17等を制御すると共に、バイタルサイン検出用レーダ13、圧力センサ14、レーザセンサ18、無動化検出用レーダ19等の検出器からの検出信号を受信する機能を有する。制御用コンピュータ20は、図示しない通信制御部を備えることにより、外部のルータ21を介して、管理用コンピュータ22と無線通信を行う。また、管理用コンピュータ22は、データサーバ23に格納される各種データに基づいて、得られた検出信号に従い、バイタルサインの計測などのための各種演算を実行する。
【0024】
図3のフローチャートを参照して、第1の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Aの動作を説明する。ケース11に実験動物SBを収容し、例えばカメラ17、レーザセンサ18、及び/又は無動化検出用レーダ19の検出信号に基づき、実験動物SBが無動化状態に入ったか否かを判定する(ステップS11)。
【0025】
無動化状態に入ったと判定された場合(Yes)、無動化状態中において、バイタルサイン検出用レーダ13(及び/又はレーザセンサ18、無動化検出用レーダ19)による検出信号を取得し(ステップS12)、その検出信号を制御用コンピュータ20に送信する。制御用コンピュータ20は、検出信号をデジタルデータに変換すると共に、そのデジタルデータ(検出信号データ)を、実験動物SBの個体番号、計測時間と共に管理用コンピュータ22に送信する。管理用コンピュータ22は、検出信号データを解析してバイタルサインの演算を実行すると共に、その結果をデータサーバ23に保存する(ステップS13)。
【0026】
図4の波形図は、バイタルサイン検出用レーダ13、及びレーザセンサ18の検出信号の一例を示す。バイタルサイン検出用レーダ13の検出信号は、前述のように、直交関係にあるIチャネル及びQチャネルの出力信号B
I(t)、B
Q(t)を含んでいる。出力信号B
I(t)、B
Q(t)は、送信波T(t)の周波数fに起因する振動を有しているが、実験動物の心拍数、呼吸数に応じた振幅の振動を有している。このため、出力信号B
I(t)、B
Q(t)の周波数や振幅を解析することにより、実験動物SBのバイタルサインを取得することができる。
図5は、レーザセンサ18の検出信号と、実験動物SBの心電図波形を別途心電図計を用いて計測した結果とを対比して示すグラフである。
図5から明らかなように、レーザセンサ18の波形に見られる微小振動は、実験動物SBの心拍と一致している。
【0027】
以上説明したように、第1の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Aは、実験動物SBが無動化状態になったことを検出し、無動化状態にある実験動物SBに対しバイタルサイン検出用レーダ13(及び/又はレーザセンサ18、無動化検出用レーダ19)を用いてバイタルサインの計測を非侵襲に実行することができる。これにより、
実験動物に身体的負担を与えることなく、実験動物のバイタルサインを計測することができる。
【0028】
麻酔や電極挿入のための手術等は、実験動物に苦痛やストレスを与え、動物福祉の観点から出来るだけ回避したいという要請がある。また、麻酔や電極挿入により、正確なバイタルサインの計測が妨げられる虞がある。本実施の形態によれば、実験動物に対する身体的負担が軽減されると共に、正確なバイタルサインの計測が可能になる。
【0029】
また、麻酔や電極挿入のための手術は、実験動物にだけでなく、研究者の負担も大きい。本実施の形態のシステムによれば、麻酔や手術が不要となるので、研究者の負担も少なくなり、また、麻酔や手術の技術を持たない研究者であっても、実験動物SBのバイタルサインの計測が可能になる。従って、本実施の形態のシステムによれば、研究者の負担を軽減しつつも、信頼性の高い測定結果を得て、創薬開発に要する期間を短縮することができる。
【0030】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Bを、
図6を参照して説明する。
図6において、
図1と同一の構成要素については、
図1と同一の参照符号を付しているので、重複する説明は省略する。
【0031】
この第2の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Bは、実験動物SBが進入し、その内部において無動化状態を促すための無動化筐体12を備えており、この点において第1の実施の形態と異なっている。無動化筐体12は、実験動物SBが進入するための開口部を備えると共に、その内部に、実験動物SBが静止することが出来る程度の空間を有する。マウスやラットなどの小動物は、一般に狭く暗いところに身を置くことを好む傾向がある。このため、上記のような無動化筐体12をシステム1B内に設けることで、実験動物SBが無動化状態になるよう誘導することができる。
【0032】
無動化筐体12は、例えば
図6に示すような円筒形状のものであってよいが、特定の形状に限られず、例えば、三角柱、四角柱の他、ドーム形状、かまぼこ型等であってもよい。その他、実験動物SBの大きさや習性等に応じ、様々な形態とすることができる。無動化筐体12は、その内部に実験動物SBが進入し、無動化状態となることを促すことが出来る限りにおいて、任意の形状であってよい。また、無動化筐体12は、アクリルなどの透明な材料から構成され得るが、無動化の検出やバイタルサインの計測が可能であれば、半透明や不透明な材料であってもよい。なお、本実施の形態において、バイタルサイン検出用レーダ13、及び圧力センサ14は、無動化筐体12内で無動化した実験動物SBの計測を可能にするため、それぞれ無動化筐体12の内壁上部、内壁下部に設けることが好適である。
【0033】
以上説明したように、第2の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Bによれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。加えて、第2の実施の形態のシステム1Bによれば、無動化筐体12が設けられることで、実験動物SBを無動化状態に誘導することが可能になり、より効率的にバイタルサインの計測を実行することが可能になる。なお、無動化筐体12は、1のケース11内に複数個設けることも可能である。
【0034】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Cを、
図7を参照して説明する。
図7において、
図6と同一の構成要素については、
図6と同一の参照符号を付しているので、重複する説明は省略する。
【0035】
この第3の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Cは、無動化筐体12に加え、この無動化筐体12と近接して配置される給餌/給水器15を備えており、この点で前述の実施の形態と異なっている。給餌/給水器15は、定期的に、又は何らかのトリガに従って、無動化筐体12の内部に餌や液体(水を含む)を吐出することが可能に構成されている。給餌/給水器15が無動化筐体12に併設されることで、より実験動物SBを無動化筐体12の内部に侵入させて無動化状態を作り出すことが容易になる。
【0036】
第3の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Cによれば、第1及び第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。加えて、第3の実施の形態のシステム1Cによれば、無動化筐体12に併設して給餌/給水器15が設けられることで、実験動物SBを無動化状態に誘導することが一層容易になり、より効率的にバイタルサインの計測を実行することが可能になる。
【0037】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Dを、
図8を参照して説明する。
図8において、
図1と同一の構成要素については、
図1と同一の参照符号を付しているので、重複する説明は省略する。このシステム1Dは、前述の実施の形態とは異なり、実験動物SBとして比較的大型のもの(例えばサル、イヌ、ミニブタ等)をケース11に収容することを意図している。
【0038】
このシステム1Dの無動化筐体12Dは、大型の実験動物SBの少なくとも体の一部(例えばサルの腕)を挿入可能に構成されている。無動化筐体12Dの近傍には、第3の実施の形態と同様の給餌/給水器15が設置されており、餌等を無動化筐体12Dの内部に吐出可能とされている。無動化筐体12Dに、実験動物SBが体の一部を挿入すると、無動化筐体12Dの内部において当該体の一部を大きく動かすことはできないので、無動化状態が得られる。この無動化状態とされた体の一部に対し、バイタルサイン検出用レーダ13(及び/又はレーザセンサ18、無動化検出用レーダ19)を用いてバイタルサインの計測を非侵襲に実行することができる。なお、大型動物を実験動物SBとしたシステムにおいても、前述の実施の形態と同様に、実験動物SBがその体の全体が進入可能な程度の無動化筐体を設けることが可能である。
【0039】
実験動物SBがサルのような学習能力が高い動物である場合、無動化筐体12Dに体の一部を入れてしばらく静止すると餌が給餌/給水器15から吐出される構造を採用することができる。この場合、学習をした実験動物SBは、餌をもらうため、無動化筐体12Dに体の一部を入れて、しばらく静止し、餌をもらう。静止中(無動化状態)であることが検出された場合に、バイタルサインをバイタルサイン検出用レーダ13等により計測することができる。
【0040】
なお、サル等の知能レベルが高い実験動物SBにおいては、
図9に示すように、給餌/給水器15により無動化の誘引に用いることに加え、又はこれに替えて、実験動物SBが興味を引くような映像及び/又は音声を映像/音声提示装置(例えばディスプレイ装置24、スピーカ25など)から提示するようにしてもよい。このような映像/音声提示装置を設けることにより、実験動物SBの興味を引き、無動化を誘引し易くすることができる。
【0041】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態の実験動物バイタルサイン計測システム1Eを、
図10を参照して説明する。
図10において、
図1と同一の構成要素については、
図6と同一の参照符号を付しているので、重複する説明は省略する。
【0042】
このシステム1Eは、無動化筐体12を備えている点で第2の実施の形態と共通している。しかし、この第5の実施の形態は、無動化筐体12がケース11-1から移動(取出し)可能にされている点で第2の実施の形態と異なっている。無動化筐体12には、第2の実施の形態と同様に、バイタルサイン検出用レーダ13、圧力センサ14が設置されている。
【0043】
カメラ17、レーザセンサ18、及び無動化検出用レーダ19、並びに制御用コンピュータ20からなる計測部は、ケース11-1の外部に設置されている。ケース11-1の外に無動化筐体12が取り出された場合、バイタルサイン検出用レーダ13及び圧力センサ14は、制御用コンピュータ20と接続される。
【0044】
実験動物SBのバイタルサインを計測する場合、オペレータは、実験動物SBを無動化筐体12の中に誘導又は追い込み、無動化筐体12を図示しない閉鎖手段により閉鎖した後、ケース11-1から無動化筐体12を、内部に捕獲された実験動物SBと共に取り出す。取り出された無動化筐体12は、カメラ17、レーザセンサ18及び無動化検出用レーダ19の検出範囲に移動され、さらにバイタルサイン検出用レーダ13及び圧力センサ14が接続端子を介して制御用コンピュータ20に接続される。これにより、第2の実施の形態と同様にして実験動物SBのバイタルサインを計測することが可能になる。
【0045】
計測の終了後は、無動化筐体12を、所定時間使用されて汚れたケース11-1ではなく、新しいケース11-2に移動させることができる。このように、この第5の実施の形態では、無動化筐体12がケース11-1から移動可能とされており、バイタルサインの計測装置がケース11-1の外部に設置されていることにより、ケース11-1の外でバイタルサインの計測が可能とされている。元のケース11-1は清掃の対象とすることができ、また、新たなケース11-2へ移動することが容易になり、オペレータの負担が軽減され、実験動物SBのストレスも軽減することができる。なお、汚れたケース11-1をバイタルサインの計測中に清掃し、再び無動化筐体12をケース11-1に戻すことも勿論可能である。
【0046】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1A、1B、1C、1D…バイタルサイン計測システム
11…ケース
12…無動化筐体
13…バイタルサイン検出用レーダ
14…圧力センサ
15…給餌/給水器
16…ブロワ
17…カメラ
18…レーザセンサ
19…無動化検出用レーダ
20…制御用コンピュータ
21…ルータ
22…管理用コンピュータ
23…サーバ
24…ディスプレイ装置
25…スピーカ