(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156263
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】新規分子構造であるキラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデン及びその八モリブデン酸塩、八モリブデン酸塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 39/02 20060101AFI20231017BHJP
C01G 39/00 20060101ALI20231017BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20231017BHJP
C01G 45/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C01G39/02
C01G39/00 Z
C01G49/00 A
C01G45/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064817
(22)【出願日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】202210379125.4
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518193928
【氏名又は名称】湖北中澳納米材料技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUBEI ZHONG’AO NANOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Dujiawan, Shili Industrial Park Guangshui City, Hubei 432700 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】陳方吾
(72)【発明者】
【氏名】陳洛丞
(72)【発明者】
【氏名】趙煦
(72)【発明者】
【氏名】李奇承
(72)【発明者】
【氏名】陳鎮
(72)【発明者】
【氏名】于訳清
(72)【発明者】
【氏名】姚欣韻
【テーマコード(参考)】
4G002
4G048
【Fターム(参考)】
4G002AA06
4G002AB01
4G002AB02
4G002AD04
4G002AE05
4G048AA01
4G048AA02
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB01
4G048AB02
4G048AC06
4G048AC08
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規分子構造であるキラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデン及びその八モリブデン酸塩、並びに八モリブデン酸塩の製造方法を提供する。
【解決手段】キラル八面体結晶相構造のα-MoO
3は、その分子式がMo
8O
24である。またキラル八面体結晶相構造のα-MoO
3が一価のカチオンと反応して生成する八モリブデン酸塩の一般式はMe
xMo
8O
(24+ax)であり、式中、Meは単体カチオン又はカチオン特性を示す化合物であり、axは係数であり、生成物が可溶物であるナノモリブデン酸塩の分子式はMe
18Mo
8O
33であり、生成物が不可溶物であるナノモリブデン酸塩の分子式はMe
xMo
8O
(24+ax)であり、式中、x=10、12、14、16、18であり、a=0.5である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規分子構造であるキラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンであって、
分子式は、Mo
8O
24、すなわちα-MoO
3であり、分子構造モデルは
であり、モデルにおいて、大きな球はモリブデン原子、小さな球は酸素原子であることを
特徴とする三酸化モリブデン。
【請求項2】
前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデン(以下、α-MoO3と略称)を原料と
して製造されることを特徴とする請求項1に記載の新規分子構造であるキラル八面体結晶
相構造の三酸化モリブデンで製造される八モリブデン酸塩。
【請求項3】
前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が一価のカチオンと反応して生成する八モリ
ブデン酸塩の一般式はMexMo8O(24+ax)であり、
式中、Meは単体カチオン又はカチオン特性を示す化合物であり、axは係数であり、
生成物が可溶物であるナノモリブデン酸塩の分子式はMe18Mo8O33であり、
生成物が不可溶物であるナノモリブデン酸塩の分子式はMexMo8O(24+ax)で
あり、
式中、x=10、12、14、16、18であり、a=0.5であることを特徴とする請
求項2に記載の新規分子構造であるキラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される
八モリブデン酸塩
【請求項4】
前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が二価のカチオンと反応して生成する八モリ
ブデン酸塩の一般式は以下に示されることを特徴とする請求項2に記載の新規分子構造で
あるキラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=5、6、7、8、9、a=1)
【請求項5】
前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が三価のカチオンと反応して生成する八モリ
ブデン酸塩の一般式は以下に示されることを特徴とする請求項2に記載の新規分子構造で
あるキラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=10、12、14、16、18又は20、24、28、32、36
a=1.5)
【請求項6】
前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が四価のカチオンと反応して生成する八モリ
ブデン酸塩の一般式は以下に示されることを特徴とする請求項2に記載の新規分子構造で
あるキラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩。
MexMoO(24+ax)
(式中、x=5、6、7、8、9、a=2)
【請求項7】
前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が五価のイオンと反応して生成する八モリブ
デン酸塩の一般式は以下に示されることを特徴とする請求項2に記載の新規分子構造であ
るキラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=10、12、14、16、18又は20、24、28、32、36、a=2
.5)
【請求項8】
前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が六価のイオンと反応して生成する八モリブ
デン酸塩の一般式は以下に示されることを特徴とする請求項2に記載の新規分子構造であ
るキラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩。
MexMo8O(24+ax)
(式中x=5、6、7、8、9、a=3)
【請求項9】
前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が七価のイオンと反応して生成する八モリブ
デン酸塩の一般式は以下に示されることを特徴とする請求項2に記載の新規分子構造であ
るキラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=10、12、14、16、18、a=3.5)
【請求項10】
カチオンが可溶性(又は加水分解可能)の化合物である場合、
脱イオン水に分散剤を加えて超音波処理及び電気加熱機能付きの反応釜に投入し、超音波
処理及び電気加熱機能を起動させ、具体的には、所定量の脱イオン水を反応釜に入れて、
10mg/Lの割合で分散剤を加え、前記反応釜には撹拌及び超音波処理機能が付いてい
るので、超音波処理及び撹拌機能を順次起動させ、超音波処理と撹拌の時間比を30:1
にするステップ1と、
2時間後、水温が約60~70℃になると、α-MoO3を加えるステップ2と、
α-MoO3の添加が終了してから半時間後、アンモニウム、アルカリ金属、遷移要素な
どの水和物又は酸化物、炭酸ナトリウムのうちの1種又はこれらの組み合わせであるカチ
オン反応物を加えるステップ3と、
反応後、超音波処理を1~2時間持続して、ナノモリブデン酸塩の水溶性製品を得るステ
ップ4と、を含む請求項2~9のいずれか1項に記載のキラル八面体結晶相構造のα-M
oO3で製造される八モリブデン酸塩の製造方法。
【請求項11】
カチオンが不可溶化合物である場合、
水に不溶なカチオン酸化物又は炭酸ナトリウムとα-MoO3とをMe:α-MoO3=
x:8の混合モル比で十分にブレンドするステップ1と、
先端からの2/3箇所の温度が最も高く、ここでの温度が最高470℃である最高炉温が
470℃以下の多段電熱転炉に上記の混合物を入れて、電熱転炉内に100~120分間
滞在させるステップ2と、
0.8~1重量%の分散剤を添加した後、レゾナンスミキサに入れて十分に撹拌し、混合
すると、粉末状態のナノモリブデン酸塩製品を得るステップ3とを含む請求項2~9のい
ずれか1項に記載のキラル八面体結晶相構造のナノ三酸化モリブデン(α-MoO3)で
製造される八モリブデン酸塩の製造方法。
【請求項12】
カチオンが不可溶化合物である場合、
水に不溶なカチオン酸化物又は炭酸ナトリウムとα-MoO3とを、Me:α-MoO3
=x:8の混合モル比で十分にブレンドするステップ1と、
先端からの2/3箇所の温度が最も高く、ここでの温度が最高470℃である最高炉温が
470℃以下の多段電熱転炉に上記の混合物を入れて、電熱転炉内に100~120分間
滞在させるステップと、
脱イオン水に分散剤を加えて超音波処理及び電気加熱機能付きの反応釜に投入し、超音波
処理及び電気加熱機能を起動させ、具体的には、所定量の脱イオン水を反応釜に入れて、
10mg/Lの割合で分散剤を加え、前記反応釜には撹拌及び超音波処理機能が付いてい
るので、超音波処理及び撹拌機能を順次起動させ、超音波処理と撹拌の時間比を30:1
にするステップ3と、
2時間後、水温が約60~70℃になると、ステップ2で得られた混合物を加えるステッ
プ4と、
1~2時間超音波処理すると、ナノモリブデン酸塩の加水分解状態製品を得るステップ5
と、を含む請求項2~9のいずれか1項に記載のキラル八面体結晶相構造のα-MoO3
で製造される八モリブデン酸塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化モリブデン及びモリブデン酸塩の技術分野に関し、特に新規分子構造である
キラル八面体結晶相構造のα-MoO3及びその八モリブデン酸塩、八モリブデン酸塩の
製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデン化学工業及びモリブデン化学工業の基礎知識理論においては、三酸化モリブデ
ンは結晶相によって三酸化モリブデン、二モリブデン三酸化モリブデン、四モリブデン三
酸化モリブデン、七モリブデン三酸化モリブデンなどに分けられ、例えば、モリブデン酸
アンモニウム、二モリブデン酸アンモニウム、四モリブデン酸アンモニウム、七モリブデ
ン酸アンモニウムなどである。
【0003】
実際のモリブデン工業製品の応用において、一般的な三酸化モリブデン(又はモリブデン
酸)を用いて各種のモリブデン酸塩製品を製造するが、製品にさらに優れた物理的及び化
学的特性を持たせるために、必ずその製品を二次結晶化し、α-MoO3結晶構造に変換
し、その方法には、熱分解法、水熱法、ゾル凝固法、テンプレート法などがある。具体的
な原理は、製品を160~180℃の温度、10標準大気圧の圧力で48時間程度放置す
るか、NO3
-(又は他の酸根)を利用して水分子とMoOXの配位方式と配位強度を制
御することであるため、設備への要件が厳しく、廃水が多く発生し、時間がかかるなど多
くの不利な要素が存在し、工業的生産が実現されにくい。
【0004】
そこで、新規分子構造であるキラル八面体結晶相構造のα-MoO3及びその八モリブデ
ン酸塩、八モリブデン酸塩の製造方法を提案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠陥を解決するために、本発明は、新規分子構造であるキラル八面体結晶相構
造のα-MoO3及びその八モリブデン酸塩、八モリブデン酸塩の製造方法を提案してい
る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本発明は以下の技術案を提供する。新規分子構造である
キラル八面体結晶相構造のα-MoO
3であって、分子式はMo
8O
24であり、分子構
造モデルは
であり、モデルにおいて、大きな球はモリブデン原子、小さな球は酸素原子である。
【0007】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩
。
【0008】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が一価のカチオンと反応して生
成する可溶性八モリブデン酸塩の一般式はMexMo8O(24+ax)である。式中、
Meは単体イオン又はイオン根である。
式中、x=10、12、14、16、18、a=1である。
【0009】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が二価のカチオンと反応して生
成する八モリブデン酸塩の一般式は以下に示される。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=5、6、7、8、9、a=1)
【0010】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3が三価のカチオンと反応して生
成する八モリブデン酸塩の一般式は以下に示される。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=10、12、14、16、18、20、24、28、32、36、a=1.
5)
【0011】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンが四価のカチオンと反応し
て生成する八モリブデン酸塩の一般式は以下に示される。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=5、6、7、8、9、a=2)
【0012】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンが五価のカチオンと反応し
て生成する八モリブデン酸塩の一般式は以下に示される。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=10、12、14、16、18又は20、24、28、32、36、a=2
.5)
【0013】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンが六価のカチオンと反応し
て生成する八モリブデン酸塩の一般式は以下に示される。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=5、6、7、8、9、a=3)
【0014】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンが七価のカチオンと反応し
て生成する八モリブデン酸塩の一般式は以下に示される。
MexMo8O(24+ax)
(式中、x=10、12、14、16、18、a=3.5)
【0015】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩
の製造方法であって、カチオンが可溶性化合物(又は生成物が可溶性化合物である)であ
る場合、
【0016】
脱イオン水に分散剤を加えて超音波処理及び電気加熱機能付きの反応釜に投入し、超音波
処理及び電気加熱機能を起動させ、具体的には、所定量の脱イオン水を反応釜に入れて、
10mg/Lの割合で分散剤を加え、前記反応釜には撹拌及び超音波処理機能が付いてい
るので、超音波処理及び撹拌機能を順次起動させ、超音波処理と撹拌の時間比を30:1
にするステップ1と、
2時間後、水温が約60~70℃になると、α-MoO3を加えるステップ2と、
α-MoO3の添加が終了してから半時間後、アンモニウム、アルカリ金属、遷移要素の
水和物又は酸化物、炭酸ナトリウムのうちの1種又はこれらの組み合わせであるカチオン
反応物を加え、Me:α-MoO3モル比をx:8とするステップ3と、
反応後、超音波処理を1-2時間持続して、ナノモリブデン酸塩の加水分解状態製品を得
るステップ4と、を含む。
【0017】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO3で製造される八モリブデン酸塩
の製造方法であって、カチオンが不可溶化合物である場合、
水に不溶なカチオン酸化物又は炭酸ナトリウムとα-MoO3とを所定の割合で十分にブ
レンドするステップであって、カチオンMeが1+である場合、混合モル比はMe:α-
MoO3=x:8であり、
式中、X=5、6、7、8、9又は10、12、14、16、18又は20、24、28
、32、36であるステップ1と、
先端からの2/3箇所の温度が最も高く、ここでの温度が最高470℃である最高炉温が
470℃以下の多段電熱転炉に上記の混合物を入れて、電熱転炉内に100~120分間
滞在させるステップ2と、
0.8~1重量%の分散剤を添加した後、レゾナンスミキサに入れて十分に撹拌し、混合
すると、粉末状態のナノモリブデン酸塩製品を得るステップ3と、を含む。
【0018】
好ましくは、前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンで製造される八モリブデン
酸塩の製造方法であって、カチオンが不可溶化合物である場合、
水に不溶なカチオン酸化物又は炭酸ナトリウムとα-MoO3とをMe:α-MoO3=
x:8の混合モル比で十分にブレンドするステップであって、
式中、X=5、6、7、8、9又は10、12、14、16、18又は20、24、28
、32、36であるステップ1と、
先端からの2/3箇所の温度が最も高く、ここでの温度が最高470℃である最高炉温が
470℃以下の多段電熱転炉に上記の混合物を入れて、電熱転炉内に100~120分間
滞在させるステップ2と、
脱イオン水に分散剤を加えて超音波処理及び電気加熱機能付きの反応釜に投入し、超音波
処理及び電気加熱機能を起動させ、具体的には、所定量の脱イオン水を反応釜に入れて、
10mg/Lの割合で分散剤を加え、前記反応釜には撹拌及び超音波処理機能が付いてい
るので、超音波処理及び撹拌機能を順次起動させ、超音波処理と撹拌の時間比を30:1
にするステップ3と、
2時間後、水温が約60~70℃になると、ステップ2で得られた混合物を加えるステッ
プ4と、
1~2時間超音波処理すると、ナノモリブデン酸塩の加水分解状態製品を得るステップ5
と、を含む。
【発明の効果】
【0019】
従来技術と比べて、本発明は、新規分子構造であるキラル八面体結晶相構造の三酸化モリ
ブデン及びその八モリブデン酸塩、八モリブデン酸塩の製造方法を提供し、以下の有益な
効果を有する。
本発明は、八モリブデン酸根に基づく新規なモリブデン酸塩を生産することができ、無機
塩化学工業においてメンバーを追加し、その使用は私たちの日常生活のあらゆる面を変え
ることが期待でき、例えば消毒機能を有するとともに水に不溶なナノモリブデン酸塩は、
農業における農作物の産量増加及び品質向上、淡水・海水養殖、衛生に関する消毒殺菌、
各種の微生物抑制、各種腫瘍の抑制、電池や各種のエネルギー貯蔵、半導体、生化学兵器
抵抗、スマートマテリアルなどのさまざまな分野に利用することができる。水に不溶であ
るため損失しにくく、数年間にわたって耐久性に優れる。ある面では無制限のグリーンリ
サイクルを実現しやすい。本発明の前記八モリブデン酸塩の製造方法は簡単的で効率が高
い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面は本発明をさらに理解するために提供されるものであり、明細書の一部を構成し、本
発明の実施例とともに本発明を解釈するために使用され、本発明を制限するものではない
。
【
図1】本発明の前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンの分子構造モデル図である。
【
図2】本発明の前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンで製造される八モリブデン酸塩の第1製造方法の概略図である。
【
図3】本発明の前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンで製造される八モリブデン酸塩の第2製造方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例の図面を参照して、本発明の実施例における技術案を明確かつ完全
に説明するが、明らかに、説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実
施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の
すべての実施例は本発明の特許範囲に属する。
【0022】
図1に示すように、本発明は、技術形態として、新規分子構造であるキラル八面体結晶相
構造のα-MoO
3を提供し、その分子式はMo
8O
24であり、その分子構造モデルは
である。モデルにおいて、大きな球はモリブデン原子、小さな球は酸素原子である。
【0023】
前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデン、すなわちα-MoO3は、異形のキラ
ル八面体結晶相を有し、分子式がMo8O24であり、分子にはMoO6構造体が含まれ
ており、三酸化モリブデンの量子単位がα-MoO3であると理解してもよく、この三酸
化モリブデンで合成されるモリブデン酸塩α-MeMOO4も同様な物理的及び化学的特
性を持つ。
【0024】
試験を通じて研究した結果、α-MoO3は結晶相構造が最も安定的で、他の三酸化モリ
ブデンはすべて準安定相構造であり、準安定相の三酸化モリブデンは所定の物理化学的方
法によって二次結晶化してα-MoO3結晶構造に変換することができる。ただし、今ま
で研究していたα-MoO3及びα-WO3は極めて少なく、特定の分野についての研究
及び記載である場合が多い。
湖北省の中澳ナノ材料技術有限公司が発明して生産した高純度ナノスケール三酸化モリブ
デンは、「昇華-空気クエンチング」のプロセスを採用しており、その結晶相がα-Mo
O3構造で、すでに工業的な量産が実現されており、粒子径30ナノの球状(0次元)高
純度ナノ三酸化モリブデンの製造が実現される。
【0025】
α-MoO3を原料として製造された各種の八モリブデン酸塩(又はナノスケール)は、
八モリブデン酸根のイオン式が[Mo8O(24+ax)]y-であり、すなわち、10
-、12-、14-、16-、18-という計5つの原子価が存在する。これは八モリブ
デン酸根と呼ばれてもよく、各種の八モリブデン酸塩の基本的な「量子」単位となる。
【0026】
一価のカチオンとα-MoO3とが反応して生成する八モリブデン酸塩の一般式はMex
Mo8O(24+ax)、例えばK18Mo8O33、(NH4)18Mo8O33であ
り、
二価のカチオンとα-MoO3とが反応して生成する八モリブデン酸塩の一般式は、Me
xMo8O(24+ax)、例えば、Zn7Mo8O31、Zn9Mo8O33であり、
三価のカチオンとα-MoO3とが反応して生成する八モリブデン酸塩の一般式はMex
Mo8O(24+ax)、例えばBi6Mo8O33、Fe6Mo8O33、Bi18M
o8O51であり、
四価のカチオンとα-MoO3とが反応して生成する八モリブデン酸塩の一般式はMex
Mo8O(24+ax)、例えばMn9Mo8O42、Mn5Mo8O34である。
【0027】
図2に示すように、前記キラル八面体結晶相構造の三酸化モリブデンで製造される八モリ
ブデン酸塩の製造方法では、カチオンが可溶性化合物である場合、
脱イオンナノ水及び分散剤を超音波処理及び電気加熱機能付きの反応釜2に投入し、超音
波処理及び電気加熱機能を起動させ、具体的には、所定量の脱イオン水を反応釜2に入れ
て、10mg/Lの割合で分散剤を加え、前記反応釜2には撹拌及び超音波処理機能が付
いているので、超音波処理及び撹拌機能を順次起動させ、超音波処理と撹拌の時間比を3
0:1にするステップ1と、
2時間後、水温が約60~70℃になると、ナノ三酸化物α-MoO
3を加えるステップ
2と、
α-MoO
3の添加が終了してから半時間後、アンモニウム、アルカリ金属、各種の遷移
要素の水和物又は酸化物、炭酸ナトリウムのうちの1種又はこれらの組み合わせであるカ
チオン反応物を加え、Me:α-MoO
3モル比を18:8とし、例えばK
18Mo
8O
33であるステップ3と、
反応後、超音波処理を1~2時間持続して、ナノモリブデン酸塩の加水分解状態製品を得
るステップ4と、を含む。
【0028】
図3に示すように、前記キラル八面体結晶相構造のα-MoO
3で製造される八モリブデ
ン酸塩の製造方法では、カチオンが不可溶化合物、例えば酸化物、炭酸ナトリウムである
場合、以下のステップを含む。
ステップ1:水に不溶なカチオン酸化物又は炭酸ナトリウムとα-MoO
3とを所定の割
合で十分にブレンドし、高速ミキサ1にて十分に混合後、混合材料を多段電熱転炉2にゆ
っくりと加える。
ステップ2:多段電熱転炉2の最高炉温は470℃以下であり、多段電熱転炉2内の滞在
時間は100~120分間であり、多段電熱転炉2の先端からの2/3箇所の温度が最も
高く、ここでの温度が最高470℃である。
ステップ2-1:製品が粉体状である場合、ステップ2の反応物に0.8~1重量%の分
散剤を加えた後、レゾナンスミキサ4に入れて十分に撹拌し、混合すると、粉末状態のナ
ノモリブデン酸塩製品を得る。
ステップ2-2:製品が加水分解状態である場合、ステップ2の反応物を
図2に示す方法
に付すると、ナノモリブデン酸塩の加水分解状態製品を得る。
図2及び
図3における合成反応はいずれも
図3に示す乾式方法により実施できるが、反応
物又は生成物のうちの一方が可溶性物質である場合、
図2に示す湿式方法により製造する
ことができ、湿式方法の方は生産コストが低い。
加水分解状態α-MeMoO
4を粉末状態製品にする場合、さまざまな乾燥プロセスが利
用できるが、特にナノ状態のモリブデン酸塩製品の場合、凍結乾燥は厳禁である。
【0029】
本発明で製造さえる八モリブデン酸塩は、制御可能な粒子径が10ナノよりも小さく、各
種のα-MeMoO4モリブデン酸塩の粒子径は100ナノよりも小さい。
【0030】
従来技術と比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0031】
本発明は、八モリブデン酸根に基づく新規なモリブデン酸塩を生産することができ、無機
塩化学工業においてメンバーを追加し、その使用は私たちの日常生活のあらゆる面を変え
ることが期待でき、例えば消毒機能を有するとともに水に不溶なナノモリブデン酸塩は、
農業における農作物の産量増加及び品質向上、淡水・海水養殖、衛生に関する消毒殺菌、
各種の微生物抑制、各種腫瘍の抑制、電池や各種のエネルギー貯蔵、半導体、生化学兵器
抵抗、スマートマテリアルなどのさまざまな分野に利用することができる。水に不溶であ
るため損失しにくく、数年間にわたって耐久性に優れる。ある面では無制限のグリーンリ
サイクルを実現しやすい。本発明の前記八モリブデン酸塩の製造方法は簡単的で効率が高
い。
【0032】
上記の実施例は本発明の技術的構造及び特徴を説明するものに過ぎず、当業者が本発明の
内容を理解して実施できるようにすることを意図しており、本発明の特許範囲はこれらに
より限定されず、本発明の趣旨に基づいて行われる等価変化又は修飾であれば、本発明の
特許範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0033】
図1では、大きな球はモリブデン原子、小さな球は酸素原子である。
図2では、3は反応釜である。
図3では、1は高速ミキサであり、2は多段電熱転炉であり、3は反応釜であり、4はレ
ゾナンスミキサである。