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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156264
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】高温用途のための銀コーティング
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/12 20060101AFI20231017BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C25D5/12
B32B15/01 E
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023064994
(22)【出願日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】17/718,941
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アドルフ フォイエ
(72)【発明者】
【氏名】マーギット クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル リプシュッツ
【テーマコード(参考)】
4F100
4K024
【Fターム(参考)】
4F100AB16A
4F100AB17A
4F100AB21D
4F100AB24C
4F100AB24D
4F100AB24E
4F100AB31A
4F100AB31B
4F100AB31D
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100EH712
4F100EH71B
4F100EH71C
4F100EH71D
4F100EH71E
4F100GB41
4F100YY00
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
4K024AA03
4K024AA10
4K024AA21
4K024AA24
4K024AB03
4K024AB04
4K024AB17
4K024BA09
4K024BB09
4K024DB01
4K024GA04
(57)【要約】
【課題】 高温用途のための銀コーティングを提供する。
【解決手段】 金属層間の接着不良を抑制するように配置された一連の金属層を物品が含む、物品及び物品の作製方法が開示される。金属層は、銀のトップコート、銀の中間層、銀-スズ合金層、及びニッケル層を含む。層は、銅又は銅合金を含む基材に接着する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金を含む基材と、前記基材の前記銅又は銅合金に隣接するニッケル層又はニッケル合金層と、前記ニッケル層に隣接する銀アンダーコート層と、前記銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層と、前記銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層とを含む物品。
【請求項2】
前記銀アンダーコート層の厚さは、前記銀-スズ合金層の厚さ以上である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記銀トップコート層の厚さは、前記銀-スズ層の厚さより大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記銀トップコート層と前記銀-スズ層との厚さの比は、2:1~100:1である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記銀アンダーコート層と前記銀-スズ層との厚さの比は、1:1~40:1である、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記銀アンダーコート層の厚さは、0.5μm以上である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記銀-スズ合金層の厚さは、0.1μm以上である、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記銀トップコートの厚さは、1μm以上である、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
a)銅又は銅合金を含む基材を提供する工程と、
b)前記基材の前記銅又は銅合金に隣接するニッケル層又はニッケル合金層を堆積する工程と、
c)前記ニッケル層又はニッケル合金層に隣接する銀アンダーコート層を堆積する工程と、
d)前記銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ層を堆積する工程と、
e)前記銀-スズ層に隣接する銀トップコート層を堆積する工程と、
を含む方法。
【請求項10】
前記銀アンダーコート層の厚さは、銀-スズ合金層の厚さ以上である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記銀トップコート層の厚さは、前記銀-スズ層の厚さより大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記銀トップコート層と前記銀-スズ層との厚さの比は、2:1~100:1である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記銀アンダーコート層と前記銀-スズ層との厚さの比は、1:1~40:1である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用途のための耐高温の銀コーティングされた基材に関する。より具体的には、本発明は、改善された接着性を有する銅又は銅合金基材に隣接する一連の銀、銀-スズ及びニッケル又はニッケル合金層を含む、高温用途のための耐高温の銀コーティングされた基材を対象とする。
【背景技術】
【0002】
銀仕上げは、導電性が高く、はんだ付け性及び耐食性が良好であるため、電子部品に広く使用されている。コネクタの用途では、銅合金が最初にニッケルでコーティングされ、その後銀仕上げ層が続く。ニッケルは、バリア層として作用し、銀における銅の拡散を防止し、銀機能層の電気的特性を維持する。この組み合わせは、約-10℃~約35℃の低温及び約36℃~約100℃の中程度の動作温度で、電子産業で長年機能してきた。電気自動車などの技術の進歩により、一部の電気コネクタでは動作温度が大幅に高くなっている。
【0003】
近年、様々な業界で、高温用途、典型的には150℃を超える温度で、銀コーティングを使用することに関心が高まっている。このような高温では、銅が銀層に急速に拡散するため、ニッケルバリア層の使用が不可欠である。加えて、このような高温条件下では、銀の下にあるニッケルの酸化が容易に起こり、ニッケルと銀の間の接着不良が生じる可能性がある。これは、図1図2の両方に示されている。図1は、約4μmの電気メッキされた銀層でコーティングされた約3μmの電気メッキされたニッケル層を有する銅基材の断面図である。ニッケル層は、約10~20nmの非常に薄い金のストライク層でコーティングされて、ニッケル層への酸素の拡散を抑制しようとしてニッケルの酸化を防止する。200℃で1000時間暴露された後、銀層とニッケル層の界面にかなりのギャップが発生し、銀層とニッケル層の間の接着性が著しく損なわれた。図2は、長時間高温に暴露された銀層とニッケル層の間の接着不良の別の例を示している。図2は、約4μmの電気メッキされた銀層でコーティングされた約3μmの電気メッキされたニッケル層を有する銅基材の断面図である。ニッケル層は、ニッケルの酸化を抑制する試みとしてまた、約10~20nmの非常に薄いパラジウムストライク層でコーティングされている。約200℃で約1000時間暴露された後、銀層とニッケル層の界面にかなりのギャップが発生し、銀層とニッケル層の間の接着性が著しく損なわれた。
【0004】
高温で銀の下にあるニッケルの酸化が加速する現象は、まだ完全には理解されていない。これは、銀の粒界を通る酸素の拡散によって引き起こされるようである。金、パラジウム、又は銀ストライク及びニッケル表面の活性化など、ニッケルへの銀の接着を強化するために使用される従来の方法では、金とパラジウムのストライク層において図1~2に示されるように、高温用途での酸化と接着の問題を克服することができていなかった。従って、高温用途のための銀層を有する改善された金属物品が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,041,255号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
物品は、銅又は銅合金を含む基材、基材の銅又は銅合金に隣接するニッケル層又はニッケル合金層、ニッケル層又はニッケル合金層に隣接する銀アンダーコート層、銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層、及び銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層を含む。
【0007】
方法は、
a)銅又は銅合金を含む基材を提供する工程、
b)基材の銅又は銅合金に隣接するニッケル層又はニッケル合金層を堆積する工程、
c)ニッケル層又はニッケル合金層に隣接する銀アンダーコート層を堆積する工程、
d)銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層を堆積する工程、並びに
e)銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層を堆積する工程を含む。
【0008】
本発明の物品は、金属層間に良好な接着特性を有し、高温でも良好な接触抵抗を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】金ストライクコーティングされたニッケル層における銀層の10,000倍のSEM断面図であり、200℃で1000時間保管した後の銀とニッケルの界面における大きなギャップを示している。
図2】パラジウムストライクコーティングされたニッケル層における銀層の10,000倍のSEM断面図であり、200℃で1000時間保管した後の銀とニッケルの界面の間の大きなギャップを示している。
図3】ニッケルバリア層に隣接する銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層を有する物品の断面図の例であり、ニッケルバリア層は、銅系基材に隣接している。
図4】銅合金基材に隣接するニッケル層に隣接する銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層の室温での15,000倍のSEM断面図である。
図5】200℃で500時間の熱老化後のニッケルからの銀層の接着不良を示す、銀層を有するニッケルコーティングされた銅基材の807倍のSEMである。
図6】200℃で1000時間保管した後の銅合金含有基材に隣接するニッケル層に隣接する銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層の15,000倍のSEM断面図である。
図7】200℃で1000時間の熱老化後のニッケルからの銀層の接着不良を示す、銀層を有するニッケルコーティングされた銅基材の1040倍のSEMである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に渡り使用される場合、「電気メッキ」、「堆積」、及び「メッキ」という用語は、交換可能に使用される。「組成物」及び「浴」という用語は、本明細書に渡り互換的に使用される。「隣接する」という用語は、隣接する層が共通の界面を有する場所に隣接する、又はその隣にあり結合することを意味する。「銅系基材」という用語は、基材が少なくとも銅又は銅合金を含み、追加の金属、プラスチック、樹脂、又は他の有機及び誘電材料などの他の材料を含むことができることを意味する。「接触抵抗」という用語は、電気リード及び接続の接触界面に起因し得るシステムの電流フローに対する総抵抗への寄与を意味する。「ニュートン」は、力のSI単位であり、1キログラムの質量に毎秒1メートル/秒の加速度を与える力に等しく、100,000ダインに相当する。「オーム」という用語は、電気抵抗のSI単位を意味し、1ボルトの電位差を受けたときに1アンペアの電流を伝送する回路内の電気抵抗を表す。「アリコート」という用語は、大きい全体の一部、特に化学分析又はその他の処理のために採取された試料を意味する。「垂直力(normal force)」という用語は、固体物体が相互に通過するのを防止するために表面が及ぼす力を意味する。不定冠詞「a」及び「an」は、単数形と複数形の両方を含むことを意図する。
【0011】
以下の略語は、文脈上特に断りのない限り、以下の意味を有する:℃=摂氏、g=グラム、mL=ミリリットル、L=リットル、ASD=A/dm=アンペア/デシメートルの二乗、PVD=物理蒸着、CVD=化学蒸着、PCB=プリント回路基板又はプリント配線基板、SEM=走査型電子顕微鏡写真、EDX=EDS=エネルギー分散型X線分光法、ASTM=米国標準試験方法(American Standard Testing Method)、mN=ミリニュートン、mOhms=ミリオーム、cm=センチメートル、μm=ミクロン、nm=ナノメートル、Ag=銀、Sn=スズ、Ni=ニッケル、Cu=銅、EX=例、及びNA=該当なし。
【0012】
特に断りのない限り、全てのパーセントと比は、重量によるものである。全ての範囲は、包括的であり、任意の順序で組み合わせることができるが、ただし、このような数値範囲の合計が100%になるように制約されることが論理的である場合を除く。
【0013】
図3は、銅系基材5に隣接するニッケル含有バリア層4に隣接する銀アンダーコート層3に隣接する銀-スズ合金層2に隣接する銀トップコート1を有する本発明の物品を示している。任意に、銀トップコート層は、変色防止層(図示せず)を有することができる。物品は、物品が200℃などの150℃以上の温度に暴露され得てもなお金属層間の良好な接着を保持する装置など、様々な電子装置の部品として使用することができる。
【0014】
ニッケル又はニッケル合金の1つ以上の層が、銅を含む基材に堆積される。ニッケルは、バリア層として機能し、銀の最上層への銅の拡散を抑制する。基材は、実質的に全て銅であり得る、又はこれらに限定されないが、銅-スズ、銅-銀、銅-金、銅-ビスマス、銅-亜鉛、銅-ニッケル、銅-スズ-銀及び銅-スズ-ビスマスなどの1つ以上の銅合金を含むことができる。好ましくは、基材は、銅、銅-亜鉛又は銅-ビスマスである。基材は、銅又は銅合金層を有する、プラスチック又は樹脂材料などのPCB又は誘電材料であり得る。ニッケル又はニッケル合金は、層が基材の銅又は銅合金層の表面に隣接して、銅又は銅合金表面との界面を形成するように堆積される。好ましくは、ニッケル又はニッケル合金層は、少なくとも0.5μmの厚さ、又は0.5μm~10μmの厚さなど、又は1μm~5μmの厚さなどである。1つ以上のニッケル又はニッケル合金層は、基材にニッケル又はニッケル合金を堆積させるために当技術分野で使用される従来の方法によって堆積されることができる。最も好ましくは、基材の銅又は銅合金層に隣接して、ニッケル層が堆積される。このような方法には、PVD、CVD、電解及び無電解金属メッキが含まれるが、これらに限定されない。このような方法は、当技術分野及び文献において周知である。好ましくは、電解金属メッキを使用して、基材の銅又は銅合金に隣接するニッケル又はニッケル合金を堆積させる。
【0015】
好ましくは、ニッケル又はニッケル合金電気メッキは、少なくとも0.01ASDの電流密度で行うことができる。より好ましくは、電流密度は、0.1ASD~15ASDであり、更により好ましくは、0.5ASD~6ASDである。軽微な実験を用いて特定の基材の電流密度を調整することができる。使用される電気メッキプロセスは、従来のものであり得る。
【0016】
メッキ組成物におけるニッケルイオンは、任意の適切な溶液可溶性ニッケル化合物、好ましくは水溶性ニッケル塩を使用することによって提供されることができる。このようなニッケル化合物には、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、及びリン酸ニッケルが含まれるが、これらに限定されない。ニッケル化合物の混合物をメッキ組成物に使用することができる。好ましくは、ニッケル化合物は、メッキ組成物におけるニッケルイオン濃度を、0.1g/L~150g/L、又は0.5g/L~100g/Lなど、又は1g/L~70g/Lなどにするのに十分な量でメッキ組成物に添加される。
【0017】
ニッケルメッキ組成物には、酸及び塩基を含む多種多様な電解質を使用することができる。酸性電解質には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びプロパンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、アルキロールスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェニルスルホン酸、及びフェノールスルホン酸などのアリールスルホン酸、アミドスルホン酸などのアミノ含有スルホン酸、スルファミン酸、鉱酸、ギ酸及びハロ酢酸などのカルボン酸、ハロゲン化水素酸、及びピロリン酸が含まれるが、これらに限定されない。酸及び塩基の塩も電解質として使用できる。更に、電解質は、酸の混合物、塩基の混合物、又は1つ以上の酸と1つ以上の塩基との混合物を含むことができる。このような電解質は、一般的に、Aldrich Chemical Company, Milwaukee, Wisconsinなどの様々な供給元から市販されている。
【0018】
任意に、多種多様な界面活性剤をニッケルメッキ組成物に使用することができる。ニッケルメッキの性能を妨げない限り、アニオン性、カチオン性、両性及び非イオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。界面活性剤は、当技術分野でよく知られている従来の量で含まれることができる。
【0019】
任意に、ニッケルメッキ組成物は、1つ以上の追加成分を含むことができる。このような追加成分には、光沢剤、結晶粒微細化剤及び延性向上剤が含まれるが、これらに限定されない。このような追加の成分は、当技術分野で周知であり、従来の量で使用される。
【0020】
ニッケルメッキ組成物は、任意に緩衝剤を含むことができる。緩衝剤の例には、ホウ酸緩衝剤(ホウ砂など)、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、及び水酸化物緩衝剤が含まれるが、これらに限定されない。使用される緩衝剤の量は、メッキ組成物のpHを所望のレベルに維持するのに十分な量であり、このような量は当業者に周知である。
【0021】
ニッケルメッキ組成物には、1つ以上の合金金属が含まれることができる。このような合金化金属には、スズ、銅、及びビスマスが含まれるが、これらに限定されない。ニッケル-リンが、好ましい合金である。このような金属は、当技術分野で周知のその溶液可溶性塩として提供される。ニッケル合金堆積物を提供するために、従来の量が、ニッケルメッキ組成物に含まれることができる。好ましくは、合金化金属は、ニッケルメッキ浴から取り除かれる。
【0022】
適切な電解ニッケルメッキ浴は、文献に開示されている多くのものと同様に市販されている。市販の電解ニッケル浴の例は、NICKEL GLEAM(商標)電解ニッケル製品及びNIKAL(商標)SC電解ニッケル製品であり、どちらもRohm and Haas Electronic Materials,LLC,Marlborough,MA,USAから入手可能である。電解ニッケルメッキ浴の更なる例は、(特許文献1)に開示されているWatts-typeの浴である。
【0023】
無電解ニッケルメッキ組成物は、還元剤を含むことができる。好ましくは、無電解ニッケルメッキ組成物は、還元剤を含む。このような還元剤には、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、チオ尿素及びチオ尿素誘導体、ヒダントイン及びヒダントイン誘導体、ヒドロキノン及びヒドロキノン誘導体、レゾルシノール、並びにホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体、DEA(n-ジエチル-アミンボラン)、水素化ホウ素ナトリウム及びヒドラジンが含まれるが、これらに限定されない。このような還元剤は、0.1g/L~40g/Lなどの従来の量で使用することができる。市販の無電解ニッケル組成物の例には、DURAPOSIT(商標)SMT88無電解ニッケル及びNIPOSIT(商標)PM980及びPM988無電解ニッケルが含まれる。全てRohm and Haas Electronic Materials, LLCから入手可能である。
【0024】
ニッケルメッキ組成物は、1~14、好ましくは1~12、より好ましくは1~8の範囲のpHを有することができる。メッキの間のニッケルメッキ組成物の作業温度は、10℃~100℃、又は例えば20℃~50℃であり得る。
【0025】
ニッケル又はニッケル合金の堆積に続いて、1つ以上の銀アンダーコート層が、1つ以上のニッケル又はニッケル合金層に隣接して堆積される。銀は、電解、無電解又は浸漬銀メッキなど、当技術分野で使用される従来の方法によって堆積されることができる。好ましくは、銀は、ニッケル又はニッケル合金に隣接して電気メッキ又は無電解メッキされる。より好ましくは、銀は、ニッケル又はニッケル合金層に隣接して電気メッキされる。銀アンダーコート層は、好ましくは、少なくとも0.01μm、又は0.05μm~2μmなど、又は0.1μm~2μmなど、又は0.1μm~1μmなどの厚さを有する。
【0026】
従来の電気メッキ銀組成物を使用することができる。銀組成物は、シアン化物含有銀組成物又はシアン化物を含まない銀組成物であり得る。シアン化物含有銀組成物を使用して銀をメッキする場合、好ましくは、銀組成物は、アルカリ性である。銀イオン源には以下が含まれるが、これらに限定されない:シアン化カリウム銀、硝酸銀、チオ硫酸ナトリウム銀、グルコン酸銀、銀-システイン錯体などの銀-アミノ酸錯体、メタンスルホン酸銀などのアルキルスルホン酸銀。銀化合物の混合物を使用することができる。組成物中の銀イオンの濃度は、好ましくは2g/L~60g/Lである。このような銀化合物は、Aldrich Chemical Company, Milwaukee, Wisconsinなどの様々な供給元から市販されている。市販の銀メッキ組成物の例は、Rohm and Haas Electronic Materials, LLCによるSILVER GLO(商標)3K銀電気メッキ浴、SILVERJET(商標)300銀電気メッキ浴、SILVER GLEAM(商標)360銀電気メッキ浴、ENLIGHT(商標)銀メッキ600及び620である。
【0027】
アニオン性、カチオン性、両性及び非イオン性界面活性剤などの多種多様な従来の界面活性剤を銀メッキ組成物に使用することができる。界面活性剤は、従来の量で含まれることができる。銀メッキ組成物は、1つ以上の追加の従来の成分を含むことができる。このような追加成分には、電解質、緩衝剤、光沢剤、結晶粒微細化剤、キレート剤、錯化剤、還元剤、レベラー(leveler)及び延性増強剤が含まれるが、これらに限定されない。このような追加の成分は、当技術分野で周知であり、従来の量で使用される。
【0028】
銀メッキ組成物は、1~14、好ましくは1~12、更により好ましくは1~10の範囲のpHを有することができる。銀メッキの間の銀メッキ組成物の作業温度は、10~100℃、又は20~60℃などである。好ましい電流密度は、0.1ASD~50ASDであり、より好ましくは1ASD~20ASDである。
【0029】
好ましくは、銀アンダーコート層は、その後の銀-スズ合金層と厚さが等しい又はそれより厚い。銀アンダーコート層は、後続の銀-スズ合金層からのニッケルとスズの金属間化合物の形成を抑制する。更に、銀のアンダーコート層は、長期間使用されると物品の接着不良を引き起こす可能性があるニッケル界面での望ましくないカーケンドール空隙の形成を抑制する。好ましくは、銀アンダーコート層と銀-スズ合金層との厚さの比は、1:1~20:1以上の範囲内であり、より好ましくは1:1~40:1の範囲内である。
【0030】
銀アンダーコート層に隣接する堆積された銀-スズ合金層は、銀含有量が豊富であり、少なくとも60重量%の銀であり、残りはスズである。銀-スズ合金層は、延性があり、ニッケル表面への酸素の拡散を抑制して、腐食を防止又は軽減することができる。好ましくは、銀-スズ合金は、銀アンダーコート層において電気メッキされる。従来の銀-スズ合金電気メッキ浴を使用できる。市販の銀-スズ合金電気メッキ浴の例は、Rohm and Haas Electronic Materials LLCから入手可能なSILVERON(商標)GT-820銀-スズ合金電気メッキ浴である。
【0031】
銀-スズ合金電気メッキ浴は、1つ以上の銀イオン源を含む。銀イオン源には、ハロゲン化銀、グルコン酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、硝酸銀、硫酸銀、アルカンスルホン酸銀、及びアルカノールスルホン酸銀などの水溶性銀塩が含まれるが、これらに限定されない。ハロゲン化銀が用いられる場合、好ましくは、ハロゲン化物は塩化物である。好ましくは、銀塩は、硫酸銀、アルカンスルホン酸銀又はそれらの混合物であり、より好ましくは、硫酸銀、メタンスルホン酸銀又はそれらの混合物である。銀塩は、一般に市販品として入手可能である、又は文献に記載される方法によって調製可能である。浴中で使用される1つ以上の銀塩の量は、例えば、堆積される所望の合金組成物及び操作条件に依存する。好ましくは、浴中の銀塩は、1g/L~100g/L、好ましくは10g/L~80g/Lである。
【0032】
水溶性スズイオン源には、ハロゲン化スズ、硫酸スズ、アルカンスルホン酸スズ、アルカノールスルホン酸スズ、及び酸が含まれるが、これらに限定されない。ハロゲン化スズが使用される場合、好ましくは、ハロゲン化物は塩化物である。好ましくは、スズイオン源は、硫酸スズ、塩化スズ又はアルカンスルホン酸スズであり、より好ましくは、スズイオン源は、硫酸スズ又はメタンスルホン酸スズである。スズ化合物は、一般に市販されている、又は文献で知られている方法によって調製することができる。浴中で使用されるスズ塩の量は、堆積される合金の所望の組成物及び操作条件に依存する。好ましくは、スズ塩は、0.01g/L~80g/L、より好ましくは0.5g/L~40g/Lの範囲である。
【0033】
銀-スズ合金浴は、酸性又はアルカリ性であり得る。好ましくは、銀-スズ合金浴は酸性である。酸性電解質には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びプロパンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、フェニルスルホン酸、フェノールスルホン酸及びトルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸、硫酸、スルファミン酸、塩酸、臭化水素酸、フルオロホウ酸及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。このような酸電解質は、従来の量で含まれることができる。好ましくは、酸性電解質は、10g/L~400g/L、より好ましくは50g/L~400g/Lの量で含まれる。このような銀-スズ合金浴は、2未満、好ましくは1未満のpHを有する。
【0034】
アニオン性、カチオン性、両性及び非イオン性界面活性剤などの従来の界面活性剤は、銀-スズ合金メッキ組成物に含まれることができる。界面活性剤は、従来の量で含まれることができる。銀-スズ合金メッキ組成物は、1つ以上の追加の従来の成分を含むことができる。このような追加成分には、電解質、緩衝剤、光沢剤、結晶粒微細化剤、キレート剤、錯化剤、還元剤、レベラー及び延性増強剤が含まれるが、これらに限定されない。このような追加の成分は、当技術分野で周知であり、従来の量で使用される。
【0035】
好ましくは、銀-スズ合金を堆積させるための電流密度は、0.05ASD以上であり、より好ましくは1ASD~25ASDである。銀-スズ合金は、室温~55℃、室温~40℃など、又は室温~30℃の温度などで電気メッキされることができる。
【0036】
浴は、様々な組成物の銀が豊富な銀-スズ合金を堆積させるために使用できる。好ましくは、銀-スズ合金は、60重量%~95%の銀含有量を有し、残りはスズであり、より好ましくは、銀含有量は、70重量%~90重量%の範囲であり、残りはスズであり、最も好ましくは、銀含有量は、75重量%~85重量%であり、残りはスズである。
【0037】
次いで、銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層が堆積される。銀トップコート層は、好ましくは、少なくとも1μmの厚さ、又は1μm~20μmの厚さなど、又は1μm~10μmの厚さなど、又は1μm~5μmの厚さなどである。銀トップコート層により、200℃以上の高温に1000時間以上などの長時間に渡り暴露された後でさえも、低い接触抵抗で物品の良好な導電性が可能になる。
【0038】
銀アンダーコート層を堆積するための上記の従来の銀堆積組成物及び方法を使用して、銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層を堆積することができる。好ましくは、銀トップコート層は、上記の銀電気メッキ組成物を使用して銀を電気メッキすることによって、銀-スズ合金層に隣接して堆積される。銀組成物は、シアン化物含有銀組成物又はシアン化物を含まない銀組成物であり得る。銀電気メッキは、銀のアンダーコート層において上記の温度及び電流密度の同じパラメータの下で行われる。銀電気メッキは、トップコート層に銀の望ましい厚さが得られるまで行われる。好ましくは、銀トップコート層と銀-スズ合金層との厚さの比が2:1~100:1の範囲内、より好ましくは3:1~30:1の範囲内、更により好ましくは6:1~12:1の範囲内になるまで、銀電気メッキが行われる。
【0039】
任意に、変色防止層は、銀トップコート層に堆積されることができる。従来の変色防止組成物を使用することができる。このような変色防止材料の市販例は、NO-TARN(商標)PM3変色防止配合物、PORE BLOCKER(商標)100変色防止配合物、及びPORE BLOCKER(商標)200変色防止配合物(Rohm and Haas Electronic Materials,LLCから入手可能)である。
【0040】
好ましくは、本発明の物品の銀トップコート層には、金、パラジウム、又は他の金属層、例えばフラッシュ層などが存在しない。銀トップコートは、このような追加の金属層又はフラッシュ層の必要性を取り除く。更に好ましくは、本発明の物品は、銅系の基材に隣接するニッケル含有バリア層に隣接する銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層、及び任意に銀トップコート層に隣接する変色防止層からなる。より好ましくは、本発明の物品は、銅系の基材に隣接するニッケル含有バリア層に隣接する銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層、及び任意に銀トップコート層に隣接する変色防止層からなり、この場合、銀トップコート層は、銀-スズ層よりも厚く、銀アンダーコート層は、銀-スズ合金層と厚さが等しい又はそれより厚い。更により好ましくは、本発明の物品は、銅系の基材に隣接するニッケル含有バリア層に隣接する銀アンダーコート層に隣接する銀-スズ合金層に隣接する銀トップコート層、及び任意に銀トップコート層に隣接する変色防止層からなり、この場合、銀トップコート層と銀-スズ合金層の厚さとの厚さの比は、2:1~100:1であり、銀アンダーコート層と銀-スズ合金層との厚さの比は、好ましくは1:1~20:1以上、より好ましくは1:1~40:1である。
【0041】
銀-スズ層の厚さに対して2:1~100:1の厚さの比を有する銀トップコート層は、物品の低い接触抵抗を可能にし、従って導電率を改善し、銀-スズ層の厚さに対する、好ましくは1:1~20:1以上、より好ましくは1:1~40:1の厚さの比を有する銀アンダーコート層は、カーケンドール空隙及びNiSn金属間化合物の形成を抑制し、物品の金属層の接着を改善する。更に、0.05μm以上の厚さを有する銀-スズ合金層は、ニッケル又はニッケル合金層への望ましくない酸素の拡散を防止すると考えられる。ニッケル又はニッケル合金層の酸化は、当技術分野で周知の標準のEDS又はEDX分析法を使用して測定することができる。
【0042】
本発明の物品は、金属層の接着不良に対する懸念を最小限に抑えて、低温及び高温環境で使用することができる。この物品は、PCB、電気コネクタ、発光ダイオード(LED)、電気自動車、及び銀層が150℃以上の温度に暴露される可能性があるその他の用途における部品又は構成要素として使用できる。
【0043】
以下の実施例は、本発明を例示するために含まれるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例0044】
実施例1~7
電気メッキされた銀層及び銀-スズ合金層の厚さは、Fischerから入手可能なFisherscope model XDV-SD X-Ray蛍光光度計(XRF)を使用して測定した。XRFは、Bowmanの銀とスズの純元素厚さ標準を使用して校正し、純元素標準とXRF取扱説明書の基本パラメータ(FP)計算を組み合わせて、銀と銀-スズ合金の組成と厚さを計算した。
【0045】
クロスハッチ接着試験は、テープとの接着を測定するための標準試験方法であるASTM D3359に従って行った。この試験では、ナイフ又はカミソリの刃などの適切なツールによってフィルムに作成されたカットに渡り感圧テープを貼り付け剥がすことにより、フィルムコーティングの金属基材への接着性を評価する。金属層の接着性を評価するために、標準ではないピン曲げ方法(生産ラインで頻繁に適用される)も使用した。この方法では、ピンを約90度の角度に曲げ、次いで曲げたピンの外側(材料の膨張が発生する場所)と内側(材料の圧縮が発生する場所)を光学顕微鏡で観察して、層のいかなる剥離をも特定することを伴った。
【0046】
WSK Mess-und Datentechnik GmbH, Germanyから入手可能なKOWI 3000商用接触抵抗測定装置を使用して、熱老化前後の接触抵抗を評価した。デジタルフォースゲージ(digital force gauge)には、直径2.5mmの半球状の先端を備えた金メッキされた銅合金プローブが装備されていた。KOWI3000統合電流源(integrated current source)を使用して、接触力の関数として、金メッキされた銅合金プローブと、銀トップコート/銀-スズ合金/銀アンダーコート/ニッケルの金属層で電気メッキされた複数の真鍮パネル(OSSIAN Lagerqvist AB,Swedenから入手可能)との間の接触の電気抵抗を自動的に測定した。接触抵抗は、10mN、20mN、30mN、40mN、50mN、60mN、70mN、及び80mNで測定した。熱老化は、200℃で500時間、200℃で1000時間行った。熱老化には、従来の対流式オーブンを使用した。
【0047】
パネルの断面を撮影し、EDXを備えたZEISS SEM走査型電子顕微鏡で10,000倍又は15,000倍で調べた。
【0048】
各真鍮パネルは、2~3μmのニッケルでコーティングした。銀アンダーコート及び銀トップコートは、SILVERJET(商標)300SD銀電気メッキ浴を使用して電気メッキした。銀-スズ合金層は、SILVERON(商標)GT-820銀-スズ合金電気メッキ浴を使用して電気メッキした。
【0049】
比較例6は、2gm/Lの銀イオン及び100g/Lの遊離シアン化カリウムを含むシアン化カリウム銀ストライク浴を使用して、銀アンダーコート層の代わりに約20nmの銀ストライク層で電気メッキし、比較例7は、シアン化物を含まない銀メッキ浴であるSILVERON(商標)GT-101ストライク浴を使用して、銀アンダーコート層の代わりにまた約20nmの銀ストライク層で電気メッキした。全ての浴は、Rohm and Haas Electronic Materials,LLCから入手できる。
【0050】
真鍮パネルは、整流器に接続され、対向電極は、白金メッキされたチタン電極であった。銀及び銀-スズ合金浴の温度は、電気メッキの間、45℃であった。浴は、従来の攪拌装置を使用して電気メッキの間に攪拌された。電流密度は、約1~5ASDの範囲であった。銀及び銀-スズ合金の所望の厚さが達成されるまで、電気メッキを行った。表1は、ニッケルコーティングされた真鍮パネルにおいて電気メッキされた銀及び銀-スズ合金の厚さを開示している。パネルをメッキ浴から取り出し、脱イオン水で室温にて濯いだ。
【0051】
【表1】
【0052】
表2に示されるように、ミリオームで測定された室温の接触抵抗を、様々な垂直力の下でメッキされた真鍮パネルについて評価した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示されるように、実施例1~4において本発明の金属層でメッキされ、室温で500時間又は1000時間保管された真鍮パネルの接触抵抗は、様々な加えられた垂直力で減少した接触抵抗を有した。比較例5及び6の接触抵抗もまた、それらのパネルが銀の最上層を有していたことから低かった。対照的に、最上層として銀-スズ合金を有する比較例7は、合金中に存在するスズの酸化のために、室温で保存した後に高い接触抵抗を有した。
【0055】
実施例1~4のメッキされた真鍮パネルのアリコートを切断し、エポキシアミン成形ポリマーに埋め込んだ。アリコートの試料は、当技術分野で知られている従来の研磨及びエッチングプロセスを使用して研磨及びエッチングし、所望の断面を得た。断面と金属層は、ZEISS SEM走査型電子顕微鏡で検査した。図4は、室温でのメッキされた真鍮パネルの1つのSEMである。各金属層が、はっきりとわかることができ、銅合金含有基材(5)に隣接するニッケルバリア層(4)に隣接する銀アンダーコート層(3)に隣接する銀-スズ合金層(2)に隣接する銀トップコート(1)。ニッケル界面では金属層の分離は観察されなかった。室温で500時間保管したパネルの結果は、室温で1000時間保管したパネルと同じであった。
【0056】
クロスハッチ接着試験及び曲げ試験は、室温で500時間又は1000時間保管した後、実施例1~7のメッキされた真鍮パネルのアリコートで行った。金属層の分離は、アリコートにおいて観察されなかった。
【0057】
次いで、実施例1及び3~7からのメッキされた真鍮パネルのアリコートを200℃で500時間加熱した。500時間後、パネルの接触抵抗を測定し、結果を以下の表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例1、3及び4の本発明の金属層でメッキされた真鍮パネルの接触抵抗は、様々な垂直力で低い接触抵抗を有した。純銀仕上げの比較例6は、アニーリング後も低い接触抵抗を維持していた。対照的に、厚い銀-スズ合金中間層を含んだ比較例5及び7は、200℃で500時間アニーリングした後、高い接触抵抗を示した。実施例1、3、4及び比較例5は、アニーリング後に低い接触抵抗を維持するために、銀の最上層の厚さは、銀-スズ合金中間層より厚くする必要があることを実証した。
【0060】
クロスハッチ接着試験及び曲げ試験は、200℃で500時間熱老化させた後、実施例1~4及び比較例6のメッキされた真鍮パネルのアリコートに対して行った。比較例6の試料は全て、両方の試験に不合格であり、熱老化後のニッケルにおける銀層の接着が不十分であることを示した。図5は、807倍での実施例6のアリコートからのメッキされたパネルの1つのSEMであり、クロスハッチ領域でニッケル層から分離した銀層を示している。実施例1~4のアリコートからのメッキされたパネルは全て、クロスハッチ試験及び曲げ試験の両方で良好な接着性を有した。どの試料についても、観察可能な接着不良はなかった。
【0061】
厚さ2~3μmのニッケル層を有し、実施例1~4及び7の表1にある金属メッキされた層を有する、複数の電気メッキされた真鍮パネル及び銅ピン(OSSIAN Lagerqvist AB, Swedenから入手可能)を、従来の対流式オーブンにて200℃で1,000時間保管した。1000時間後、真鍮パネルとピンをオーブンから取り出し、室温まで放冷した。クロスハッチ接着試験及び曲げ試験は、実施例1~4のアリコートに対して行った。真鍮パネルと銅ピンにおいて層の目に見える分離はなかった。
【0062】
銅ピンのアリコートを切断し、金属層を金属層における接着性能と空隙について検査した。金属層の分離は観察されなかった。図6は、実施例1のメッキされた銅ピンの1つの15000倍でのSEMである。全ての金属層は、いかなる分離も観察されることなく一緒に結合されているように見え、カーケンドール空隙は観察されなかった。銀-スズ合金層(図では区別できない)は、銀トップコート層(1)及び銀アンダーコート層(3)の一部と反応し、結果、銀-スズ層の境界は、明確に画定されなかった。ニッケルバリア層(4)と銅合金含有層(5)の境界が明確に画定されている。図6の上部にある銀トップコート(1)との界面にある暗いギャップは、その特定の位置での銀におけるエポキシアミン成形ポリマーの不十分な接着である。
【0063】
銀-スズ合金層からのスズは、銀層(1)及び(3)と部分的に反応して、銀-スズ金属間化合物を形成した。銀-スズ合金層の粒界は、銀層(1)及び(3)の粒界と整列していないため、銀-スズ金属間化合物は、銀層(1)の粒界を通る酸素拡散経路を遮断し、酸化が生じる可能性のあるニッケル表面に酸素が移動するのを妨げると考えられる。理論に拘束されるわけではないが、銀トップコートから銀の下層及びニッケルに至る直接的なチャンネル又は粒界はなかった。これは、銀-スズ合金の粒子配向と粒子サイズが、銀層の銀とは異なるためであった。直接的な経路のこの欠如は、酸素原子がニッケル表面に移動するのを妨げた。
【0064】
実施例1~4のアリコートとは対照的に、銀-スズ合金層とニッケル層との間に約20nmの非常に薄い銀層しか含まない比較例7の断面では、カーケンドール空隙が観察された。カーケンドール空隙は、長期間使用すると接着不良を引き起こす可能性がある。本発明は、銀の下層の層の厚さを増加させて、銀-スズ合金層のスズとニッケル層との反応後のこのような空隙形成を防止する。
【0065】
従来のオーブンにて200℃で1000時間保管した後、比較例6のアリコートからの真鍮パネル及び銅ピンに対してクロスハッチ接着試験及び曲げ試験を行った。全ての試料は、200℃で1000時間の熱老化後のニッケルにおける銀層の接着不良を示し、両方の試験に不合格であった。図7は、メッキされたパネルの1つの1040倍でのSEMであり、ニッケル層から分離した銀層を示している。
【0066】
200℃で1000時間加熱された実施例1~4及び7のメッキされた真鍮パネルのアリコートの接触抵抗を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
実施例1~4の本発明の金属層でメッキされた真鍮パネルの接触抵抗では、比較例7とは対照的に、様々な加えられた垂直力で接触抵抗が減少した。接触抵抗は、ニッケルに隣接する銀ストライク層、及び銀ストライク層に隣接する最上部銀-スズ層を含むが銀トップコートを取り除いた比較例7では、非常に高かった。高い接触抵抗は、銀-スズ層に存在するスズの酸化によるものである。これはまた、200℃の温度で1000時間、低い接触抵抗を維持するには、厚い純銀の最上層が必要であることを実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】