(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156269
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】テネリグリプチン含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20231017BHJP
A61K 9/26 20060101ALI20231017BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20231017BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231017BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231017BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231017BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231017BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231017BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20231017BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K9/26
A61K47/04
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/32
A61P3/10
A61K9/16
A61K9/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023071881
(22)【出願日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2022075394
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306020438
【氏名又は名称】日本ジェネリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 沙織
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 龍之助
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA41
4C076AA44
4C076AA99
4C076BB01
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4C076EE06H
4C076EE09H
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4C076FF03
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4C076GG13
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC82
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4C086GA10
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4C086GA13
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA10
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】 非晶質状態を維持したテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有してなる医薬組成物であって、非晶質テネリグリプチンが多孔性物質に担持されてなる、医薬組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有してなる医薬組成物であって、非晶質テネリグリプチンが多孔性物質に担持されてなる、医薬組成物。
【請求項2】
多孔性物質が、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、及び含水二酸化ケイ素からなる群より選択される、一または複数含まれる請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
多孔性物質が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、及び含水二酸化ケイ素からなる群より選択される、一または複数含まれる請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
多孔性物質の配合割合が、テネリグリプチン臭化水素酸塩の100質量部に対して50質量部~300質量部である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
多孔性物質の吸油量が、0.5mL/g以上である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物が錠剤である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
更に、導水性を有する物質を含有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
導水性を有する物質が、カルメロース、結晶セルロース、およびトウモロコシデンプンからなる群より選択される、一または複数含まれる請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
導水性を有する物質が、カルメロースである請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
導水性を有する物質の配合割合が、医薬組成物100質量部あたり1~60質量部である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
医薬組成物が薬物含有顆粒である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
薬物含有顆粒の配合割合が、錠剤100質量部に対して30質量部~95質量部である請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項13】
錠剤が口腔内崩壊錠である請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項14】
錠剤がフィルムコーティング基剤を含有してなるフィルムコーティング錠である請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項15】
口腔内崩壊錠がフィルムコーティング基剤を含有してなるフィルムコーティング錠である請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
フィルムコーティング基剤がヒプロメロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、及びポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーからなる群より選択される請求項14、15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
アルミピロー包装品である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有してなる医薬組成物であって、非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩が多孔性物質に担持されてなる、医薬組成物の製造方法。
【請求項19】
乾式造粒工程を含む請求項18に記載の医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テネリグリプチン臭化水素酸塩は、化学名{(2S,4S)-4-[4-(3-Methyl-1-phenyl-1H-pyrazol-5-yl)piperazin-1-yl]pyrrolidin-2-yl}(1,3-thiazolidin-3-yl)methanone hemipentahydrobromideであり、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物を有効成分とする錠剤は2型糖尿病の治療剤であることが知られており、テネリア錠20mg等として販売されている。通常、成人にはテネリグリプチンとして20mgを1日1回経口投与される薬剤である(非特許文献1、2)。
【0003】
また、特許文献1には、非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩と軽質無水ケイ酸とを単に物理混合して打錠された錠剤、並びに非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩、及び軽質無水ケイ酸を含む混合物が湿式造粒され、当該造粒物が打錠された錠剤が記載されている。
【0004】
しかしながら、非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩と多孔性物質とを含有してなる医薬組成物であって、非晶質テネリグリプチンが多孔性物質に担持されてなる、医薬組成物の記載はない。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】添付文書「テネリア錠20mg/40mg」、2019年6月改訂(第1版)
【非特許文献2】添付文書「テネリアOD錠20mg/40mg」、2021年7月改訂(第4版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、非晶質状態を維持したテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、また類縁物質の増加を抑制したテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、また溶出率低下を抑制したテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、また安定した質量のテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、また良好な崩壊性を有するテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の多孔性物質を使用することで、非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩の非晶質状態を維持すること、類縁物質の増加を抑制すること、溶出率低下を抑制すること、また、非晶質状態を維持するための固体分散体だけでは、粒子径が小さく嵩高く流動性も悪いため、錠剤質量分を臼内に供給できず、安定した質量の医薬組成物を得ることができず、顆粒化することが必要であったところ、非晶質状態を維持するための固体分散体と他の医薬添加剤とで乾式造粒することで、ある程度の大きさ(例えば、目開き75μmのふるいを通した際、ふるいを通る顆粒の割合20%以下)を有する顆粒を製造することで安定した質量のテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を製造できること、また、導水性を有する物質を配合することにより、本発明の医薬組成物が良好な崩壊性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有してなる医薬組成物であって、非晶質テネリグリプチンが多孔性物質に担持されてなる、医薬組成物、
(2)多孔性物質が、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、及び含水二酸化ケイ素からなる群より選択される、一または複数含まれる前記(1)に記載の医薬組成物、
(3)多孔性物質が、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、及び含水二酸化ケイ素からなる群より選択される、一または複数含まれる前記(1)に記載の医薬組成物、
(4)多孔性物質の配合割合が、テネリグリプチン臭化水素酸塩の100質量部に対して50質量部~300質量部である前記(1)に記載の医薬組成物、
(5)多孔性物質の吸油量が、0.5mL/g以上である前記(1)に記載の医薬組成物、
(6)医薬組成物が錠剤である前記(1)に記載の医薬組成物、
(7)更に、導水性を有する物質を含有する前記(1)に記載の医薬組成物、
(8)導水性を有する物質が、カルメロース、結晶セルロース、およびトウモロコシデンプンからなる群より選択される、一または複数含まれる前記(7)に記載の医薬組成物、
(9)導水性を有する物質が、カルメロースである前記(7)に記載の医薬組成物、
(10)導水性を有する物質の配合割合が、医薬組成物100質量部あたり1~60質量部である前記(7)に記載の医薬組成物、
(11)医薬組成物が薬物含有顆粒である前記(1)に記載の医薬組成物、
(12)薬物含有顆粒の配合割合が、錠剤100質量部に対して30質量部~95質量部である前記(6)に記載の医薬組成物、
(13)錠剤が口腔内崩壊錠である前記(6)に記載の医薬組成物、
(14)錠剤がフィルムコーティング基剤を含有してなるフィルムコーティング錠である前記(6)に記載の医薬組成物、
(15)口腔内崩壊錠がフィルムコーティング基剤を含有してなるフィルムコーティング錠である前記(13)に記載の医薬組成物、
(16)フィルムコーティング基剤がヒプロメロース、ポリビニルアルコール,ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、及びポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーからなる群より選択される前記(14)、(15)のいずれかに記載の医薬組成物、
(17)アルミピロー包装品である、前記(1)に記載の医薬組成物、
(18)非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有してなる医薬組成物であって、非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩が多孔性物質に担持されてなる、医薬組成物の製造方法、
(19)乾式造粒工程を含む前記(18)に記載の医薬組成物の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非晶質状態を維持したテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、また類縁物質の増加を抑制したテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、また溶出率低下を抑制したテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、また良好な崩壊性を有するテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1の25℃、相対湿度75%及び60℃、相対湿度75%の保存開始時及び7日間保存後の粉末X線回折図である。
【
図2】実施例2の25℃、相対湿度75%及び60℃、相対湿度75%の保存開始時及び7日間保存後の粉末X線回折図である。
【
図3】実施例3の25℃、相対湿度75%及び60℃、相対湿度75%の保存開始時及び7日間保存後の粉末X線回折図である。
【
図4】実施例4の25℃、相対湿度75%及び60℃、相対湿度75%の保存開始時及び7日間保存後の粉末X線回折図である。
【
図5】比較例1の25℃、相対湿度75%及び60℃、相対湿度75%の保存開始時及び7日間保存後の粉末X線回折図である。
【
図6】実施例5(造粒顆粒)、実施例6(造粒顆粒2)、実施例7(造粒顆粒2)の粉体物性を示す図である。
【
図7】実施例8~12の溶出試験結果を示す図である。
【
図8】実施例14の保存安定性試験検体を用いた溶出試験結果を示す図である。
【
図9】実施例15の保存安定性試験検体を用いた溶出試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩及び特定の多孔性物質を含む医薬組成物に関する。
【0014】
本発明に用いられる非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩とは、特許第4208938号に記載されている、テネリグリプチン臭化水素酸塩結晶由来の回折ピーク(2θ=5.4°±0.2°、13.4°±0.2°、14.4°±0.2°)を実質的に認めない状態であることを意味する。
【0015】
本発明に用いられる非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩は、例えば、粉末X線回折測定法により、確認することができる。また非晶質状態の維持については、例えば、25℃、相対湿度75%RH、7日間保存後のテネリグリプチン臭化水素酸塩含有医薬組成物について、確認する等して評価することができる。
【0016】
以下に、本発明のテネリグリプチン臭化水素酸塩を含有する医薬組成物に関して説明する。
【0017】
本発明に用いられるテネリグリプチン臭化水素酸塩は、WO02/14271に記載された方法等に従って製造される。
【0018】
本発明に用いられるテネリグリプチン臭化水素酸塩の態様としては、すなわち、医薬組成物に含まれる前、原料(原薬ともいう)として、結晶状態、非晶質状態のいずれであってもよいが、医薬組成物に含まれる場合にあっては、非晶質状態である。
【0019】
非晶質状態は、本発明の目的が達成されるのであれば、いずれの方法で非晶質状態に存してもよく、例えば、非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩を加えることや、結晶状態のテネリグリプチン臭化水素酸塩を溶媒に溶解し多孔性物質に担持されることで非晶質状態にあってもよい。
【0020】
本発明に用いられる非晶質のテネリグリプチン臭化水素酸塩の配合割合としては、1単位医薬組成物あたり、テネリグリプチンとしてある態様として3~40重量%、ある態様として5~35重量%、ある態様として10~25重量%である。
【0021】
本明細書における「固体分散体」とは、薬物が非晶質の形態で、多孔性物質に、薬物が分子レベルの状態で分散された分散物を意味する。非晶質状態としては、例えば、粉末X線回折法により、薬物の結晶由来のピークが認められない状態である態様と規定される。
【0022】
本発明に用いられる多孔性物質としては、製薬学的に許容されるものであれば特に制限されない。特性的には、本発明に用いられる多孔性物質としては、吸油量として1mL/g以上であり、ある態様として2.5mL/g以上であり、ある態様として3mL/g以上である。上限値としては、4.6mL/g以下であり、それぞれの態様の上限値として規定することができる。具体的には、例えば、ケイ酸カルシウム(吸油量:4.6mL/g)、合成ケイ酸アルミニウム(吸油量:0.55~2.03mL/g)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(吸油量:1.05mL/g)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(吸油量:2.7~3.4mL/g)、軽質無水ケイ酸(吸油量:3.1mL/g)、含水二酸化ケイ素(吸油量:3.3mL/g)などを包含する。
【0023】
本発明に用いられる多孔性物質としては、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、及び含水二酸化ケイ素からなる群より選択される、1種または2種以上の物質を含む。ある態様としてケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素であり、ある態様としてケイ酸カルシウム、含水二酸化ケイ素である。
【0024】
本発明に用いられる多孔性物質の配合割合は、テネリグリプチン臭化水素酸塩100質量部に対して多孔性物質が、ある態様として50質量部~300質量部、ある態様として75質量部~200質量部、ある態様として100質量部~150質量部である。
【0025】
本明細書における「溶出率低下を抑制」とは、本発明の医薬組成物について、例えば、保存安定性試験において、安定性試験途中あるいは安定性試験終了時に、安定性試験開始時と比較して、溶出率の差が小さいことを意味する。本明細書の医薬組成物からのテネリグリプチンの溶出率は、例えば、日本薬局方に記載されている溶出試験法により評価することができる。具体的には、例えば、安定性試験開始時と、安定性試験途中あるいは安定性試験終了時の検体を使用し、パドル法毎分50回転で試験液に水を用いて溶出試験を行うとき、溶出試験液中におけるテネリグリプチンの溶出率の差が、いずれの検体も、ある様態として、安定性試験途中あるいは安定性試験終了時に、安定性試験開始時と比較して、溶出試験開始後30分で20%以下であり、ある様態として溶出試験開始後30分で15%以下であることをいう。
【0026】
本明細書における「崩壊性」とは、本発明の医薬組成物について、例えば、本発明の医薬組成物が錠剤(例えば、口腔内崩壊錠)であるとき、例えば、口腔内を模した測定装置を用いて試験を行うとき、錠剤が崩壊することを意味する。口腔内を模した装置には、具体的には、例えば、トリコープテスタ(岡田精工製)、ODT-101(富山産業製)、OD-mate(樋口商会製)などが挙げられる。「良好な崩壊性」とは、例えば、当該装置を用いた崩壊性試験において、ある態様として崩壊時間が50秒未満、ある態様として30秒未満と規定される。
【0027】
本発明に用いられる導水性を有する物質としては、製薬学的に許容され、医薬組成物に良好な崩壊性を付与する機能を有するものであれば特に制限されない。具体的には、例えば、カルメロース、結晶セルロース、およびトウモロコシデンプン等が挙げられ、ある態様として、カルメロースが挙げられる。導水性を有する物質については、吸水速度と崩壊剤の体積変化を併せた結果に照らし分類することができ、濡れ性特性評価測定装置(ベネトアナライザPNT-N:ホソカワミクロン(株))により評価することができる。
【0028】
導水性を有する物質の配合割合は、医薬組成物100質量部あたり、ある態様として1~60質量部、ある態様として10~50質量部、ある態様として20~40質量部である。
【0029】
本発明に用いられる薬物含有顆粒は、非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有する顆粒であって、非晶質テネリグリプチンが多孔性物質に担持されてなる顆粒である。当該薬物含有顆粒には、更に、医薬品添加剤を含んでもよく、当該薬物顆粒は、医薬品添加剤により、被覆されてもよい。例えば、乾式造粒法を用いて製造する場合、非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有する固体分散体を医薬品添加剤と混合し、造粒して得られた顆粒が薬物含有顆粒であり、湿式造粒法を用いた場合、非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有する固体分散体と結合剤を用いて湿式造粒して得られた顆粒が薬物含有顆粒であり、溶融造粒法を用いた場合は、非晶質テネリグリプチン臭化水素酸塩、及び多孔性物質を含有する固体分散体と、低融点物質を用いて溶融造粒して得られた顆粒が薬物含有顆粒である。
【0030】
薬物含有顆粒の配合割合は、例えば、乾式造粒法を用いて製造する場合、錠剤100質量部に対して、ある態様として30質量部~95質量部、ある態様として40質量部~85質量部、ある態様として50質量部~75質量部である。
【0031】
本発明における乾式造粒とは、高圧がかかるロールなどで粉体を圧密、成形し、更にこれを整粒して造粒物を得る方法である。例えば、ローラーコンパクター(フロイント産業株式会社製)を使用し、ロール回転数はある態様として1~4rpm、にて造粒する方法が挙げられる。
【0032】
本発明の医薬組成物には、必要に応じて、更に医薬品添加物を配合することができる。具体的には、例えば、賦形剤、崩壊剤、界面活性剤、結合剤、コーティング剤、酸味料、発泡剤、甘味剤、香料、着色剤、緩衝剤、光安定化剤、滑沢剤等が挙げられる。
【0033】
賦形剤としては、例えば、無水リン酸水素カルシウム、D-ソルビトール、乳糖、白糖、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、D-マンニトール、部分アルファー化デンプン、バレイショデンプン等が挙げられる。
【0034】
崩壊剤としては、例えば、バレイショデンプン、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、部分アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。
【0035】
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0036】
結合剤としては、例えば、ヒプロメロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールやポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、カルメロースナトリウム、プルラン、デキストリン等が挙げられる。
【0037】
コーティング剤としては、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、コポリビドン、酸化チタン、タルク等が挙げられる。
【0038】
酸味料としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0039】
発泡剤としては、例えば、重層等が挙げられる。
【0040】
甘味剤としては、例えば、スクラロース、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等が挙げられる。
【0041】
香料としては、例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、メントール等が挙げられる。
【0042】
着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色3号等が挙げられる。
【0043】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸又はその塩類等が挙げられる。
【0044】
抗酸化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0045】
滑沢剤としては、例えば、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0046】
本発明のテネリグリプチン含有医薬組成物には、本発明の所望の効果が達成される範囲で更なる各種医薬品添加物が適宜使用される。
【0047】
本発明のテネリグリプチン含有医薬組成物に配合される上記更なる各種医薬品添加物は、適宜組合せることができる。
【0048】
配合量は、本発明の所望の効果の達成に影響を与えない量であれば特に制限されない。
【0049】
本発明の錠剤には、口腔内崩壊錠も含まれ、素錠、フィルムコーティング錠であってもよい。
【0050】
本発明の医薬組成物の製造方法は、本発明の目的を達することができればいずれの製造方法でもよく、例えば、ある態様としてテネリグリプチン臭化水素酸塩を溶媒(例えば水)に溶解し、溶解した溶液を多孔性物質に対して噴霧して、乾燥させることで、製造することができる。また、ある態様としてテネリグリプチン臭化水素酸塩及び多孔性物質を溶媒に溶解(一部懸濁を含む)して溶媒を留去(例えば、噴霧して、乾燥)させる等して、製造することができる。
【0051】
固体分散体を含有する錠剤に関する製造方法は、本発明の目的を達することができればいずれの製造方法でもよく、例えば、ある態様として固体分散体に医薬品添加剤を加え、直接打錠法により錠剤を製造してもよく、ある態様として固体分散体に医薬品添加剤を加え、造粒し、打錠して錠剤を製剤してもよい。
【0052】
薬物含有顆粒を含有する錠剤に関する製造方法は、本発明の目的を達することができればいずれの製造方法でもよく、例えば、本発明の薬物含有顆粒は乾式造粒法によって、製造される。具体的には、例えば、テネリグリプチン臭化水素酸塩を溶媒(例えば水)に溶解し、溶解した溶液を多孔性物質に対して噴霧し、乾燥させ、固体分散体を製造し、該固体分散体に、医薬品添加剤を加えて混合し、ローラーコンパクターで板状に圧密し、得られた圧密体を整粒機で粉砕し、薬物含有顆粒を製造する。次に製造された該薬物含有顆粒に、医薬品添加剤を加えて混合し、打錠用顆粒を製剤してもよい。該打錠用顆粒を打錠機で打錠し、錠剤を製造してもよい。さらに、必要に応じて該錠剤にフィルムコーティング液を噴霧し、乾燥して、フィルムコーティング錠を製造することもできる。例えば、本発明の医薬組成物が口腔内崩壊錠であるとき、フィルムコーティングされてなる口腔内崩壊錠が得られることになる。
【0053】
本発明の医薬組成物は、さらに医薬品用の包装材料を用いて包装することができる。用いられる包装材料としては、経口固形製剤を密封されうるものであればよく、例えば、アルミピロー包装、PTP包装、アルミブリスター包装、SP包装、スティック包装、ガラス瓶包装、プラスチックボトル包装が挙げられる。PTP包装としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)を単層または複合シートとしたものが挙げられる。また、プラスチックボトル包装としては、例えば、医薬品の劣化原因となる酸素の外部からの侵入を防ぐオキシバリアボトル包装が挙げられる。ある態様として、アルミピロー包装、PTP包装、プラスチックボトル包装であり、ある態様として、アルミピロー包装、オキシバリアボトル包装である。
【0054】
特に限定されないが、本発明の医薬組成物は、医療用の包装材料を用いて包装された包装体内に、乾燥剤を入れても良い。そのような乾燥剤としては、従来の公知のものを使用できるが、例えば、シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、合成ゼオライト、天然ゼオライト、塩化カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(モンモリロナイト)、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。ある態様として、塩化カルシウムである。
【実施例0055】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。