(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015627
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】ショベルおよび制御システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
E02F9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119531
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 隼生
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003BA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】精度の高い旋回制御を可能とする。
【解決手段】ショベルは、旋回可能な旋回体と、旋回体を旋回させる旋回電動機と、旋回体に搭載された作業機と、旋回体の旋回動作のために操作される旋回操作装置とを備えている。ショベルはさらに、作業機の慣性を検知する慣性検知部と、コントローラとを備えている。コントローラは、旋回操作装置の操作量に応じた旋回体の旋回加速度を設定する。コントローラは、設定した旋回加速度を、慣性検知部が検知した慣性によって、補正する。コントローラは、補正された旋回加速度に従って、旋回電動機を制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回可能な旋回体と、
前記旋回体を旋回させる旋回電動機と、
前記旋回体に搭載された作業機と、
前記旋回体の旋回動作のために操作される旋回操作装置と、
前記作業機の慣性を検知する慣性検知部と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記旋回操作装置の操作量に応じた前記旋回体の旋回加速度を設定し、設定した前記旋回加速度を前記慣性検知部が検知した前記慣性によって補正し、補正された前記旋回加速度に従って前記旋回電動機を制御する、ショベル。
【請求項2】
前記コントローラは、前記旋回操作装置の操作量に応じて設定した前記旋回加速度を、前記作業機が運搬する荷の量によって補正する、請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記ショベルは、前記作業機の駆動に用いる圧油を吐出する油圧ポンプをさらに備え、
前記慣性検知部は、前記圧油の圧力を検知する圧力センサを含み、
前記コントローラは、前記圧油の圧力が閾値以上と判断すると、前記旋回操作装置の操作量に応じて設定した前記旋回加速度を減少させる、請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記旋回体の旋回動作以外の前記ショベルの動作のために操作される第2操作装置が設けられ、
前記コントローラは、前記第2操作装置の操作量が閾値以上と判断すると、前記旋回操作装置の操作量に応じて設定した前記旋回加速度を減少させる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項5】
前記作業機は、前記旋回体に回転可能に連結されたブームを含み、
前記第2操作装置は、前記ブームの動作のために操作される、請求項4に記載のショベル。
【請求項6】
前記旋回体の旋回動作の動作モードの選択入力を受け付けるモード選択入力受付部をさらに備え、
前記コントローラは、選択された前記動作モードと、前記旋回操作装置の操作量とに応じて、前記旋回加速度を設定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項7】
前記作業機の先端に複数種類のアタッチメントを選択的に取付可能であり、
前記コントローラは、取り付けられた前記アタッチメントの種類と、前記旋回操作装置の操作量とに応じて、前記旋回加速度を設定する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項8】
前記作業機の駆動源であるエンジンをさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のショベル。
【請求項9】
旋回可能な旋回体と、
前記旋回体を旋回させる旋回電動機と、
前記旋回体に搭載された作業機と、
前記旋回体の旋回動作のために操作される旋回操作装置と、
前記作業機の慣性を検知する慣性検知部と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記旋回操作装置の操作量に応じた前記旋回体の旋回加速度を設定し、設定した前記旋回加速度を前記作業機の慣性によって補正し、補正された前記旋回加速度に従って前記旋回電動機を制御する、制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルおよび制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-174447号公報(特許文献1)には、内燃機関と電動モータとを併用するハイブリッドショベルが開示されている。上記文献に記載されたハイブリッドショベルは、旋回用電動機によって旋回する旋回機構を備えている。旋回用電動機は、メインコントローラによる制御の下、発電電動機またはバッテリから供給される電気エネルギーを利用しながら、旋回操作レバーの操作量に応じて旋回機構を旋回させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
旋回体と旋回体に搭載された作業機とを備えるショベルにおいては、作業機を動かしながら旋回体を旋回させる動作をする場合に、旋回体の旋回速度の変動を少なくし、旋回を高精度に制御することが求められる。
【0005】
本開示では、旋回速度の変動が少ない精度の高い旋回制御が可能な、ショベルおよび制御システムが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うショベルは、旋回可能な旋回体と、旋回体を旋回させる旋回電動機と、旋回体に搭載された作業機と、旋回体の旋回動作のために操作される旋回操作装置とを備えている。ショベルはさらに、作業機の慣性を検知する慣性検知部と、コントローラとを備えている。コントローラは、旋回操作装置の操作量に応じた旋回体の旋回加速度を設定する。コントローラは、設定した旋回加速度を、慣性検知部が検知した慣性によって、補正する。コントローラは、補正された旋回加速度に従って、旋回電動機を制御する。
【0007】
本開示のある局面に従う制御システムは、旋回可能な旋回体と、旋回体を旋回させる旋回電動機と、旋回体に搭載された作業機と、旋回体の旋回動作のために操作される旋回操作装置とを備えている。制御システムはさらに、作業機の慣性を検知する慣性検知部と、コントローラとを備えている。コントローラは、旋回操作装置の操作量に応じた旋回体の旋回加速度を設定する。コントローラは、設定した旋回加速度を、慣性検知部が検知した慣性によって、補正する。コントローラは、補正された旋回加速度に従って、旋回電動機を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示のショベルおよび制御システムは、旋回速度の変動が少ない精度の高い旋回制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に基づくハイブリッドショベルの斜視図である。
【
図2】実施形態に基づくハイブリッドショベルのシステム構成を概念的に示す概略ブロック図である。
【
図3】ハイブリッドショベルによる掘削積込作業を示す概略図である。
【
図4】作業機に取り付けられたセンサの構成を示す、ハイブリッドショベルの側面図である。
【
図5】モーメントの釣り合いを説明するための作業機の模式図である。
【
図6】演算装置の機能構成を説明するブロック図である。
【
図7】記憶部に記憶されている複数のマップの概念図である。
【
図8】ホイスト旋回時の旋回体の旋回加速度の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図9】ダウン旋回時の旋回体の旋回加速度の制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0011】
<全体構成>
実施形態においては、ショベルの一例としてハイブリッドショベル100について説明する。
図1は、実施形態に基づくショベルの一例としてのハイブリッドショベル100の斜視図である。
【0012】
図1に示されるように、ハイブリッドショベル100は、本体1と、油圧により作動する作業機2とを有している。本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。ハイブリッドショベル100は、履帯5Crの回転により走行可能である。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。走行体5は車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0013】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能である。旋回軸RXは、旋回体3の旋回中心となる、上下方向に延びる仮想の直線である。旋回体3は、旋回軸RXを中心として地面に対して旋回可能である。
【0014】
旋回体3は、運転室4(キャブ)を有している。運転室4内には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられている。オペレータ(乗員)は、運転室4に搭乗して、作業機2の操作、走行体5に対する旋回体3の旋回操作、および走行体5によるハイブリッドショベル100の走行操作が可能である。
【0015】
旋回体3は、外装カバー9を有している。外装カバー9は、機械室を覆っている。機械室には、
図2に示されるエンジン20、油圧ポンプ25、発電電動機21、インバータ22、キャパシタ23などが配置されている。
【0016】
作業機2は、旋回体3に搭載されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。ブーム6は、本体1(走行体5および旋回体3)に回転可能に接続されている。具体的にはブーム6の基端部は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に回転可能に接続されている。
【0017】
アーム7は、ブーム6に回転可能に接続されている。具体的にはアーム7の基端部は、ブームトップピン14を支点としてブーム6の先端部に回転可能に接続されている。
【0018】
バケット8は、アーム7に回転可能に接続されている。具体的にはバケット8の基端部は、アームトップピン15を支点としてアーム7の先端部に回転可能に接続されている。バケット8は、作業機2の先端に取付可能なアタッチメントの一例である。作業の種類に応じて、アタッチメントが、ブレーカ、グラップル、またはリフティングマグネットなどに付け替えられる。ハイブリッドショベル100は、作業機2の先端に、複数種類のアタッチメントを選択的に取付可能とされている。
【0019】
実施形態のハイブリッドショベル100においては、作業機2を基準として各部の位置関係について説明する。
【0020】
作業機2のブーム6は、旋回体3に対して、ブームフートピン13を中心に回転移動する。旋回体3に対して回転するブーム6の特定の部分、たとえばブーム6の先端部が移動する軌跡は円弧状であり、その円弧を含む平面が特定される。ハイブリッドショベル100を平面視した場合に、当該平面は直線として表される。この直線の延びる方向が、本体1の前後方向、または旋回体3の前後方向であり、以下では単に前後方向ともいう。本体1の左右方向(車幅方向)、または旋回体3の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向であり、以下では単に左右方向ともいう。ブームフートピン13は、左右方向に延びている。本体1の上下方向、または旋回体3の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向であり、以下では単に上下方向ともいう。
【0021】
前後方向において、本体1から作業機2が突き出している側が前方向であり、前方向と反対方向が後方向である。前方向を視て左右方向の右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0022】
前後方向とは、キャブ4内の運転席4Sに着座したオペレータの前後方向である。左右方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの左右方向である。上下方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの上下方向である。運転席4Sに着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、運転席4Sに着座したオペレータの背後方向が後方向である。運転席4Sに着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。運転席4Sに着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0023】
作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とをさらに有している。ブームシリンダ10の一端は旋回体3に接続され、他端はブーム6に接続されている。ブーム6は、ブームシリンダ10により本体1に対して駆動可能である。この駆動により、ブーム6は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に対して上下方向に回転可能である。
【0024】
アームシリンダ11の一端はブーム6に接続され、他端はアーム7に接続されている。アーム7は、アームシリンダ11によりブーム6に対して駆動可能である。この駆動により、アーム7は、ブームトップピン14を支点としてブーム6に対して上下方向または前後方向に回転可能である。
【0025】
バケットシリンダ12の一端はアーム7に接続され、他端はバケットリンク17に接続されている。バケット8は、バケットシリンダ12によりアーム7に対して駆動可能である。この駆動により、バケット8は、アームトップピン15を支点としてアーム7に対して上下方向に回転可能である。
【0026】
ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12の各々は、油圧シリンダであり、油圧により駆動する。
【0027】
<システム構成>
図2は、実施形態に基づくハイブリッドショベル100のシステム構成を概念的に示す概略ブロック図である。
図2に示されるように、ハイブリッドショベル100は、エンジン20、発電電動機21、インバータ22、キャパシタ23、旋回電気モータ24、油圧ポンプ25、コントロールバルブ28、およびコントローラ30を備えている。
【0028】
エンジン20は、作業機2の動作の駆動源である。エンジン20は、走行体5によるハイブリッドショベル100の走行の駆動源である。エンジン20は、内燃機関であり、たとえばディーゼルエンジンである。エンジン20の出力の制御は、シリンダ内に噴射する燃料量を調整することで行われる。この調整は、エンジン20の燃料噴射ポンプに付設されたガバナ20Aがコントローラ30によって制御されることで行われる。エンジン20の出力軸は、発電電動機21の駆動軸に連結されている。
【0029】
発電電動機21は、エンジン20で発生した駆動力で発電する発電機として作動する。発電電動機21は、キャパシタ23への蓄電補充と、旋回加速時の旋回電気モータ24への電力供給とを行う。また、発電電動機21は、キャパシタ23に蓄えられた電気エネルギーで駆動される電動機(モータ)として作動する。発電電動機21は、キャパシタ23から放電された電気エネルギーを、作業中にエンジン20を加速するときのアシストに活用する。発電電動機21は、たとえば、構造が簡素で耐熱性に優れるSR(Switched Reluctance)モータであってもよい。
【0030】
インバータ22は、発電電動機21、キャパシタ23および旋回電気モータ24間の電流および電圧を変換し制御する。インバータ22は、コントローラ30から出力される制御指令値に従って、発電電動機21、キャパシタ23および旋回電気モータ24を制御する。インバータ22は、直流電源線を介して、キャパシタ23に電気的に接続されている。
【0031】
キャパシタ23は、電力を蓄える蓄電装置である。キャパシタ23は、たとえば電気二重層キャパシタである。キャパシタ23は、発電電動機21が発電した電力を蓄電し、また発電電動機21に電力を供給する。電気エネルギーを効率よく瞬時に蓄電および放電することを可能にするために、キャパシタ23が採用されている。蓄電装置は、ニッケル水素電池、リチウム水素電池などの二次電池であってもよい。
【0032】
インバータ22は、キャパシタ23から放電される電力を、旋回電気モータ24に供給する。旋回電気モータ24は、キャパシタ23に蓄えられた電気エネルギーで、旋回体3を駆動する。キャパシタ23に蓄えられた電気エネルギー、および発電電動機21で発生した電力で、旋回体3を駆動している。旋回電気モータ24は、旋回体3の旋回が減速するときに発生するエネルギーを電気エネルギーとして回収し、キャパシタ23に蓄電する。旋回電気モータ24は、たとえば、PM(Permanent Magnet)モータであってもよい。旋回電気モータ24は、実施形態の旋回電動機に相当する。
【0033】
油圧ポンプ25の駆動軸は、発電電動機21を介して、エンジン20の出力軸に連結されている。エンジン20で発生した駆動力により、油圧ポンプ25が駆動する。油圧ポンプ25は、圧油を吐出する。油圧ポンプ25は、作業機2の駆動および走行体5の走行に用いる作動油を供給する。油圧ポンプ25は、駆動源としてのエンジン20に接続され、エンジン20によって駆動される油圧機器の一例である。油圧機器はまた、
図1にも示されるブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12および走行モータ5Mを含んでいる。
【0034】
油圧ポンプ25は、可変容量型油圧ポンプであってもよい。油圧ポンプ25は、可変斜板を有する斜板式油圧ポンプであってもよい。可変斜板の角度は、コントローラ30から出力される制御指令値に従って、斜板駆動部25Aにより無段階で連続的に制御される。斜板駆動部25Aは、たとえばソレノイドである。
【0035】
タンク26は、油圧ポンプ25が利用する油を蓄えるタンクである。タンク26内に貯留された油が、油圧ポンプ25の駆動によってタンク26から吸い出され、コントロールバルブ28に供給される。圧力センサ27は、油圧ポンプ25の吐出する作動油の圧力(ポンプ吐出圧)を検知する。圧力センサ27の検知したポンプ吐出圧を示す検知信号が、圧力センサ27からコントローラ30に入力される。
【0036】
コントロールバルブ28は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12および走行モータ5Mのそれぞれの作動油の供給量を調整するそれぞれの操作弁を有している。コントローラ30から出力される制御指令値に従って各操作弁が作動することにより、油圧アクチュエータ、すなわちブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12および走行モータ5Mに対する作動油の供給量が調整される。作動油は、油圧アクチュエータを作動するために、その油圧アクチュエータに供給される油である。
【0037】
ハイブリッドショベル100は、オペレータによって操作される操作装置を備えている。具体的には、操作装置は、旋回操作装置41と、作業機操作装置42と、走行操作装置43とを含んでいる。旋回操作装置41と、作業機操作装置42と、走行操作装置43とは、運転室4内に配置されている。
【0038】
旋回操作装置41は、旋回体3の旋回動作のために操作される。旋回操作装置41は、たとえば操作レバーである。旋回操作検出部41Aは、旋回操作装置41の操作量を検出する。旋回操作装置41が操作レバーの場合、旋回操作検出部41Aは、操作レバーの中立位置からの傾きの方向および角度を検出する。旋回操作検出部41Aは、検出信号をコントローラ30に出力する。検出信号に基づいてコントローラ30がインバータ22を制御することにより、旋回電気モータ24が駆動して、旋回体3が旋回動作する。
【0039】
作業機操作装置42は、作業機2の動作のために操作される。作業機操作装置42は、たとえば操作レバーである。作業機操作検出部42Aは、作業機操作装置42の操作量を検出する。作業機操作装置42が操作レバーの場合、作業機操作検出部42Aは、操作レバーの中立位置からの傾きの方向および角度を検出する。作業機操作検出部42Aは、検出信号をコントローラ30に出力する。検出信号に基づいてコントローラ30がコントロールバルブ28を制御することにより、ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12が適宜伸縮して、作業機2が動作する。
【0040】
走行操作装置43は、走行体5の動作のために操作される。走行操作装置43は、たとえば操作ペダルである。走行操作検出部43Aは、走行操作装置43の操作量を検出する。走行操作装置43が操作ペダルの場合、走行操作検出部43Aは、操作ペダルの踏み込み量を検出する。走行操作検出部43Aは、検出信号をコントローラ30に出力する。検出信号に基づいてコントローラ30がコントロールバルブ28を制御することにより、走行モータ5Mが駆動して、走行体5が走行する。
【0041】
作業機操作装置42と走行操作装置43とは、旋回体3の旋回制御以外のハイブリッドショベル100の動作のために操作される第2操作装置を構成している。第2操作装置は、作業機2、すなわちブーム6、アーム7およびバケット8の動作のために操作される。第2操作装置は、走行体5の動作のために操作される。
【0042】
運転室4内において、運転席4Sの右方に右側操作レバーが配置され、運転席4Sの左方に左側操作レバーが配置される。右側操作レバーの前後方向への操作に応じてブーム6の下げ動作および上げ動作が行われ、右側操作レバーの左右方向への操作に応じてバケット8の掘削方向およびダンプ方向への動作が行われてもよい。左側操作レバーの左右方向への操作に応じてアーム7のダンプ方向および掘削方向への動作が行われ、左側操作レバーの前後方向への操作に応じて旋回体3の右旋回および左旋回が行なわれてもよい。
【0043】
1つの操作レバーが、旋回操作装置41としての機能と、作業機操作装置42の一部機能とを有していてもよい。旋回操作装置41と作業機操作装置42とは、別々の操作装置であってもよく、一体の操作装置であってもよい。つまり、旋回操作装置41と、第2操作装置とは、必ずしも別々の操作装置として設けられなくてもよい。同じ一つの操作装置が、旋回体3の旋回動作のために操作され、かつ、旋回体3の旋回以外の動作のために操作されてもよい。
【0044】
旋回操作検出部41A、作業機操作検出部42Aおよび走行操作検出部43Aは、たとえばポテンショメータなどの変位センサであってもよい。旋回操作装置41、作業機操作装置42および走行操作装置43は、
図2においては電気方式の操作装置として例示されるが、パイロット油圧方式の操作装置であってもよい。
【0045】
入力部45は、オペレータによって操作される。入力部45の操作により生成された信号は、コントローラ30に出力される。入力部45は、操作ボタン、操作スイッチ、タッチパネルなどを有していてもよい。入力部45に入力される情報は、たとえば、作業機2の先端に取り付けられたアタッチメントの種類を含み、また、旋回体3の旋回動作の動作モードを含む。旋回動作の動作モードには、作業効率を向上させるために高速で旋回するモードと、吊り荷の揺れを低減させるために低速で旋回するモードとが含まれる。
【0046】
コントローラ30は、ハイブリッドショベル100全体の動作を制御するコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリ、タイマなどを含んで構成されている。コントローラ30は、ハイブリッドショベル100に搭載されている。コントローラ30は、ハイブリッドショベル100の外部に配置されていてもよい。コントローラ30は、ハイブリッドショベル100の作業現場に配置されてもよく、ハイブリッドショベル100の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。ハイブリッドショベル100と、ハイブリッドショベル100の外部に配置されたコントローラ30とが、ハイブリッドショベル100の制御システムを構成してもよい。
【0047】
<掘削積込作業>
次に、ショベルによって実行される代表的な作業である、掘削積込作業について説明する。
図3は、ハイブリッドショベル100による掘削積込作業を示す概略図である。
【0048】
ハイブリッドショベル100は、土砂などの掘削対象物をバケット8内に掬い取る掘削動作を実行する。
図3に示される点P10は、掘削動作が終了した時点でのバケット8の位置を示す。すなわち点P10は、旋回動作を開始する位置を示す。
【0049】
掘削動作の終了後、ハイブリッドショベル100は、ブーム6を上げながら旋回体3が旋回し、バケット8内の掘削対象物を排土する、ホイスト旋回動作を実行する。
図3に示される点P13は、旋回動作を終了する時点でのバケット8の位置を示す。すなわち点P13は、ダンプトラック200の荷台202にバケット8内の掘削対象物を排土する位置を示す。旋回体3が旋回を停止した姿勢で、ダンプトラック200の荷台202に、作業機2が向いている。点P10から点P13まで、旋回体3の旋回動作が実行される。点P13は、ホイスト旋回動作を終了する時点でのバケット8の位置を示す。点P10から点P13まで、ホイスト旋回動作が実行される。
【0050】
ハイブリッドショベル100は、旋回体3を旋回動作させながら、バケット8が排土する高さに到達するまでブーム6を上昇させ、その後、旋回体3に対する作業機2の相対移動を停止して、旋回体3を旋回動作させて、バケット8を排土位置に到達させる。
図3中に破線で示される掘削動作のときの旋回体3の位置から、
図3中に実線で示される旋回動作の終了時の旋回体3の位置まで、旋回体3は、90°旋回している。掘削動作を実行するとき、作業機2は、履帯5Crの延びる方向と平行に延びるように配置されている。旋回動作を終了する時点で、作業機2は、履帯5Crの延びる方向と直交する方向に延びている。
【0051】
バケット8が排土位置まで移動した後、ハイブリッドショベル100は、排土位置において、バケット8に抱え込まれた掘削対象物をダンプトラック200の荷台202に排土する排土動作を実行する。
【0052】
掘削対象物をバケット8から排土した後、ハイブリッドショベル100は、ブーム6を下げながら旋回体3が旋回するダウン旋回動作を実行する。ハイブリッドショベル100は、ホイスト旋回動作時のバケット8の軌跡を逆向きに辿って、点P13から点P10まで、バケット8を移動させる。ハイブリッドショベル100は、旋回体3に対する作業機2の相対移動を停止した状態で旋回体3を旋回動作させ、その後、旋回体3を旋回動作させながらブーム6を下降させて、排土動作後の空になったバケット8を掘削動作の開始位置、すなわち点P10まで移動させる。
【0053】
実施形態に基づくハイブリッドショベル100は、掘削動作、ホイスト旋回動作、排土動作、ダウン旋回動作の一連の処理を繰り返し実行することで、ダンプトラック200へ掘削対象物を積み込む作業を実行する。
【0054】
<計算荷重値Wの演算>
次に、バケット8内の現在の荷の重量を求める手法の一例について説明する。
図4は、作業機2に取り付けられたセンサの構成を示す、ハイブリッドショベル100の側面図である。
【0055】
ブームシリンダ10のヘッド側には、シリンダ圧センサ10Aが取り付けられている。シリンダ圧センサ10Aは、ブームシリンダ10のシリンダヘッド側油室内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。ブームシリンダ10のボトム側には、シリンダ圧センサ10Bが取り付けられている。シリンダ圧センサ10Bは、ブームシリンダ10のシリンダボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。
【0056】
ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12のそれぞれには、ストロークセンサ(検知部)18A,18B,18Cが取り付けられている。
【0057】
ストロークセンサ18A,18B,18Cと、シリンダ圧センサ10A,10Bとの各々は、コントローラ30の演算装置31に電気的に接続されている。
【0058】
演算装置31は、ブームシリンダ10におけるストロークセンサ18Aのセンサ出力に基づいて、ブーム角θ1を算出する。演算装置31は、アームシリンダ11におけるストロークセンサ18Bのセンサ出力に基づいて、アーム角θ2を算出する。演算装置31は、バケットシリンダ12におけるストロークセンサ18Cのセンサ出力に基づいて、バケット角θ3を算出する。ブーム角θ1、アーム角θ2およびバケット角θ3は、ブーム6、アーム7、バケット8に取り付けた慣性計測装置(IMU:inertial measurement unit)を用いて算出されてもよく、または、ブームフートピン13、ブームトップピン14、アームトップピン15に取り付けた角度センサ、たとえばポテンショメータ、ロータリーエンコーダなど、を用いて算出されてもよい。
【0059】
演算装置31は、ブームシリンダ10のヘッド圧およびボトム圧と、ブーム角θ1と、アーム角θ2と、バケット角θ3とを取得する。
【0060】
コントローラ30は、演算装置31に加えて、記憶部32を有している。記憶部32には、ブーム6、アーム7、バケット8の重量、形状などの情報が記憶されている。これらの情報は、記憶部32に当初から記憶されていてもよく、またオペレータによる入力部45(
図2)の操作によって記憶部32に入力されてもよい。
【0061】
コントローラ30(演算装置31)は、ブームシリンダ10の負荷に基づいてバケット8内の現在の荷の重量の値(計算荷重値)Wを演算する機能を有している。具体的には、コントローラ30(演算装置31)は、ブーム6、アーム7およびバケット8のモーメントの釣り合いから、計算荷重値Wを演算する。ブームシリンダ10の負荷とは、ブームシリンダ10のヘッド圧およびボトム圧から得られる、いわゆる軸力である。
【0062】
図5は、計算荷重値Wを演算するためのモーメントの釣り合いを説明するための作業機2の模式図である。
【0063】
図5に示されるように、実施形態においては、ブームフートピン13回りの各モーメントの釣り合いからバケット8内の現在の計算荷重値Wが演算される。ここで、ブームフートピン13回りの各モーメントの釣り合いは以下の式(1)により表される。
【0064】
Mboomcyl=Mboom+Marm+Mbucket+W×L ・・・式(1)
式(1)において、Mboomcylは、ブームシリンダ10の負荷によるブームフートピン13回りのモーメントである。Mboomcylは、ブームシリンダ10の負荷(ヘッド圧およびボトム圧)から算出される。シリンダ圧センサ10Aによりブームシリンダ10のヘッド圧が検出される。シリンダ圧センサ10Bによりブームシリンダ10のボトム圧が検出される。このブームシリンダ10のヘッド圧とボトム圧とに基づいて、ブームシリンダ10の負荷によるブームフートピン13回りのモーメントMboomcylが算出される。
【0065】
Mboomは、ブーム6の自重によるブームフートピン13回りのモーメントである。Mboomは、ブーム6の重心C1の位置およびブームフートピン13の間の距離r1と、ブーム6の重量M1との積(r1×M1)により算出される。ブーム6の重心C1の位置は、ブーム角θ1などから算出される。ブーム6の重量M1などは、記憶部32に記憶されている。
【0066】
Marmは、アーム7の自重によるブームフートピン13回りのモーメントである。Marmは、アーム7の重心C2の位置およびブームフートピン13の間の距離r2と、アーム7の重量M2との積(r2×M2)により算出される。アーム7の重心C2の位置は、アーム角θ2などから算出される。アーム7の重量M2などは、記憶部32に記憶されている。
【0067】
Mbucketは、バケット8の自重によるブームフートピン13回りのモーメントである。Mbucketは、バケット8の重心C3の位置およびブームフートピン13の間の距離r3と、バケット8の重量M3との積(r3×M3)により算出される。バケットの重心C3の位置は、バケット角θ3などから算出される。バケット8の重量M3などは、記憶部32に記憶されている。
【0068】
Wは、バケット8内の現在の荷の重量の値である。Lは、ブームフートピン13からアームトップピン15(バケット8がアーム7に支持される部分)までの水平方向の距離である。算出されたブーム角θ1、アーム角θ2、ブーム6の長さおよびアーム7の長さに基づいて、ブームフートピン13からアームトップピン15までの水平方向の距離Lが算出される。
【0069】
上記により算出された各モーメントMboomcyl、Mboom、Marm、Mbucketおよび距離Lを上式(1)に代入することにより、計算荷重値Wがコントローラ30(演算装置31)により算出される。
【0070】
上記のように、計算荷重値Wは、各シリンダ10,11,12の変位量、ヘッド圧、ボトム圧などを用いて算出される。
【0071】
<旋回加速度制御>
以下に、実施形態に基づくハイブリッドショベル100における、旋回体3の旋回加速度の制御について説明する。
図6は、演算装置31の機能構成を説明するブロック図である。実施形態に基づく演算装置31は、
図6に示されるように、旋回加速度設定部52と、旋回加速度補正部54と、旋回動作制御部56と、荷重演算部58とを含んでいる。
【0072】
旋回加速度設定部52は、旋回操作装置41の操作量に応じた旋回体3の旋回加速度を設定する。旋回加速度補正部54は、旋回加速度設定部52が設定した旋回体3の旋回加速度を、作業機2の慣性によって補正する。旋回動作制御部56は、旋回加速度補正部54により補正された旋回体3の旋回加速度に従って、旋回電気モータ24を制御する。荷重演算部58は、たとえば
図4,5を参照して説明した手法により、計算荷重値Wを算出する。旋回体3の旋回加速度を制御することにより、旋回体3の旋回速度の変動を少なくして旋回体3を滑らかに増減させることができ、また旋回体3の旋回速度の単位時間当たりの増加量を任意に設定することが可能である。
【0073】
図7は、記憶部32に記憶されている複数のマップMP1~MP3の概念図である。記憶部32には、時間に対する旋回体3の旋回加速度の変化と、時間に対する旋回電気モータ24の回転数の変化とを示す、複数のマップMP1~MP3が記憶されている。
図7には3通りのマップMP1~MP3が例示されているが、実際には記憶部32には、4通り以上の多数のマップが記憶されている。
【0074】
各マップMP1~MP3において、旋回体3の旋回加速度が、ゼロから次第に増加して最大値に至り、最大値から次第に減少してゼロに戻る。各マップMP1~MP3において、旋回体3の旋回加速度がゼロから増加を開始する時刻t1から、旋回体3の旋回加速度が減少してゼロに戻る時刻t2までの時間は、同じになっている。マップMP2における旋回体3の旋回加速度の最大値g2が、マップMP3における旋回体3の旋回加速度の最大値g3より大きい。マップMP1における旋回体3の旋回加速度の最大値g1が、マップMP2における旋回体3の旋回加速度の最大値g2より大きい。
【0075】
マップMP1~MP3のうち、マップMP1における旋回電気モータ24の回転数の最大値v1が最も大きい。マップMP1~MP3のうち、マップMP3における旋回電気モータ24の回転数の最大値v3が最も小さい。マップMP2における旋回電気モータ24の回転数の最大値v2は、マップMP1における最大値v1とマップMP3における最大値v3との間の値となっている。
【0076】
図7に示される例では、旋回体3の旋回加速度が増加または減少するときの単位時間あたりの加速度の変化率(すなわち、加加速度)が、各マップMP1~MP3で等しくなっている。加加速度は、横軸を時間、縦軸を加速度とするグラフの傾きで示される。各マップMP1~MP3における、旋回加速度が増加するときの加加速度Ja1が互いに等しくなっている。各マップMP1~MP3における、旋回加速度が減少するときの加加速度Ja2が互いに等しくなっている。
【0077】
旋回体3が旋回するときの加加速度が、各マップMP1~MP3で異なっていてもよい。たとえば、旋回加速度の最大値が最も大きいマップMP1において、他のマップMP2,MP3よりも加加速度を大きくしてよい。旋回加速度の最大値が最も小さいマップMP3において、他のマップMP1,MP2よりも加加速度を小さくしてよい。
【0078】
図8は、ホイスト旋回時の旋回体3の旋回加速度の制御の一例を示すフローチャートである。
図8に示されるように、ステップS1において、作業機2の先端に取り付けられるアタッチメントの選択が行われる。ハイブリッドショベル100を操作するオペレータが、現時点で作業機2の先端に取り付けられている、または、今後の作業のために作業機2の先端に付け替えられるアタッチメントを選択する。
【0079】
オペレータは、入力部45(
図2)を用いて、アタッチメントの選択をコントローラ30に入力する。入力部45は、作業機2の先端に取り付け可能な複数種類のアタッチメントのうち、どの種類のアタッチメントが作業機2の先端に取り付けられるのかの選択入力を受け付ける、アタッチメント選択入力部としての機能を有している。
【0080】
ステップS2において、旋回体3の旋回動作に係る動作モードの選択が行われる。旋回体3の旋回動作に係る複数の動作モードが記憶部32に記憶されており、作業の内容に応じて複数の動作モードからいずれか1つの動作モードを選択可能である。旋回動作の動作モードは、たとえば、旋回電気モータ24の発生する旋回トルクを増大させて旋回動作を高速で行う第1の動作モードと、旋回電気モータ24の発生する旋回トルクを減少させて旋回動作を低速で行う第2の動作モードとを含んでいる。
【0081】
たとえば、ハイブリッドショベル100が掘削積込作業をするときに第1の動作モードを選択して、高速で旋回することで、サイクルタイムを短縮でき、作業性を向上できる。ハイブリッドショベル100が吊り荷作業をするときに第2の動作モードを選択して、低速で旋回することで、荷を揺らさずに旋回できるので安全性を向上できる。また第2の動作モードを選択することで、旋回動作中の作業機2の操作性を向上できる。
【0082】
オペレータは、入力部45を用いて、動作モードの選択をコントローラ30に入力する。入力部45は、旋回体の旋回動作の動作モードの選択入力を受け付けるモード選択入力受付部としての機能を有している。
【0083】
ステップS3において、オペレータが、旋回操作装置41を操作する。旋回操作装置41の操作量は、旋回操作検出部41Aにより検出され、コントローラ30に入力される。
【0084】
ステップS4において、旋回加速度設定部52が、旋回操作装置41の操作量に応じた旋回体3の旋回加速度を設定する。
図7に示されるマップMP1は、たとえば、旋回操作装置41の操作量が比較的大きい場合のマップに相当する。典型的にはマップMP1は、旋回操作装置41の操作量が最大の場合のマップに相当する。マップMP2は、たとえば、旋回操作装置41の操作量が中程度のマップに相当する。マップMP3は、たとえば、旋回操作装置41の操作量が比較的小さい場合のマップに相当する。
【0085】
旋回加速度設定部52は、旋回操作装置41の操作量に応じた適切なマップを記憶部32から読み出す。旋回加速度設定部52は、その読み出したマップに従った旋回加速度を、旋回体3を旋回動作させるときの加速度の指令値として設定する。
【0086】
旋回加速度設定部52は、ステップS2で選択された旋回体3の旋回動作の動作モードと、旋回操作装置41の操作量とに応じて、旋回体3の旋回加速度を設定してもよい。たとえば、旋回動作を低速で行う第2の動作モードが選択されている場合には、旋回加速度設定部52は、旋回操作装置41の操作量が最大のときに、
図7に示されるマップMP2を読み出してマップMP2に従った旋回加速度を設定し、旋回操作装置41の操作量が中程度のときに、マップMP3を読み出してマップMP3に従った旋回加速度を設定してもよい。
【0087】
旋回加速度設定部52は、ステップS1で選択されたアタッチメントの種類と、旋回操作装置41の操作量とに応じて、旋回体3の旋回加速度を設定してもよい。たとえば、旋回操作装置41の操作量がある所定の値のときに、旋回加速度設定部52は、アタッチメントがバケット8である場合と、ハイブリッドショベル100が解体仕様車であってアタッチメントが小割機またはグラップルなどである場合とで、異なるマップを記憶部32から読み出して、旋回体3の旋回加速度を設定してもよい。
【0088】
ステップS5において、油圧ポンプ25の吐出する圧油の圧力が閾値以上であるか否かの判断が行われる。圧油の圧力は、圧力センサ27により検知され、コントローラ30に入力される。コントローラ30は、圧油の圧力が増大したことを示す検知信号の入力を、圧力センサ27から受ける。
【0089】
圧油の圧力が増加して油圧ポンプ25の負荷が増加しているときには、バケット8内の現在の荷の重量が大きいと想定される。圧油の圧力が大きいと、作業機2が運搬する荷の重量が大きく、したがって作業機2の慣性が大きいと想定される。圧力センサ27は、作業機2の慣性を検知する実施形態の慣性検知部に相当する。
図4,5を参照して説明した計算荷重値Wの増加に従って油圧ポンプ25の吐出する圧油の圧力が増加する関係を示すマップまたはテーブルが、記憶部32に予め記憶されていてもよい。
【0090】
図3を参照して説明した通り、ホイスト旋回時には、旋回体3を旋回させながら、作業機2を上昇させる動作が行われる。作業機2が運搬する荷の重量が大きく、作業機2の慣性が大きいと、バケット8内が空のときと比較して、作業機2を上昇させる動作が遅くなる。このような作業機2の動作速度の低下に関わらず旋回体3を設定された旋回加速度で旋回させると、旋回体3の旋回に比べて作業機2の上昇が遅れ、バケット8内の掘削対象物をバケット8から排土する位置である点P13(
図3)にバケット8を到達させられないことがある。
【0091】
そのため、ステップS5の判断において油圧ポンプ25の吐出する圧油の圧力が閾値以上であると判断されると(ステップS5においてYES)、ステップS6において、旋回加速度補正部54が、旋回加速度設定部52が設定した旋回加速度を補正する。具体的には、圧力センサ27が検知した圧油の圧力が閾値以上であると判断されると、旋回加速度補正部54は、旋回操作装置41の操作量に応じて設定された旋回加速度を減少させる。
【0092】
ステップS4における設定で、
図7に示されるマップMP1に従った旋回加速度が設定された場合に、ステップS6における補正によって、
図7に示されるg1よりも小さい旋回加速度の最大値が再設定されてもよい。たとえば、ステップS4における設定で、
図7に示されるマップMP1に従った旋回加速度が設定された場合に、ステップS6における補正によって、マップMP2に従った旋回加速度に再設定されてもよい。
【0093】
作業機2が運搬する荷の量によって旋回加速度を低下させ、ハイブリッドショベル100ではない従来の油圧ショベルと同様のホイスト旋回が実現できるようにされている。これにより、オペレータの違和感なく作業が可能になる。
【0094】
ステップS7において、旋回動作制御部56は、旋回加速度補正部54が補正した旋回加速度に従って、旋回電気モータ24を制御する。ステップS5の判断において油圧ポンプ25の吐出する圧油の圧力が閾値未満であると判断されると(ステップS5においてNO)、ステップS6の処理はスキップされ、旋回動作制御部56は、ステップS4で旋回加速度設定部52が設定した旋回加速度に従って、旋回電気モータ24を制御する。そして、処理を終了する(エンド)。
【0095】
図9は、ダウン旋回時の旋回体3の旋回加速度の制御の一例を示すフローチャートである。
図9に示されるステップS11~ステップS14の処理は、
図8を参照して説明したステップS1~ステップS4と同じであるので、その説明を省略する。
【0096】
ステップS15において、ブーム6の下げ動作のために操作される作業機操作装置42の操作量が閾値以上であるか否かの判断が行われる。作業機操作装置42の操作量は、作業機操作検出部42Aにより検出され、コントローラ30に入力される。
【0097】
ハイブリッドショベル100ではない従来の油圧ショベルにおいては、油圧ポンプから供給される作動油が、ブームシリンダ10と旋回油圧モータとに分流する。作業機2が動作せずに旋回体3の旋回動作のみを行うときに旋回油圧モータに供給される作動油の流量と、ダウン旋回を行うときに旋回油圧モータに供給される作動油の流量とを比較すると、後者のほうが、旋回油圧モータに供給される作動油の流量が小さくなることがある。そのため、従来の油圧ショベルでは、ダウン旋回を行うときに旋回体の速度が低下することがある。実施形態のハイブリッドショベル100において、ダウン旋回時に、旋回操作装置41の操作量に応じた旋回加速度で旋回体3を旋回させると、旋回体3の旋回速度が大きいことで掘削の開始位置である点P10(
図3)にバケット8を到達させられないことがある。
【0098】
そのため、ステップS15の判断においてブーム6の動作のために操作される作業機操作装置42の操作量が閾値以上であると判断されると(ステップS15においてYES)、ステップS16において、旋回加速度補正部54が、旋回加速度設定部52が設定した旋回加速度を補正する。具体的には、作業機操作装置42の操作量が閾値以上であると判断されると、旋回加速度補正部54は、旋回操作装置41の操作量に応じて設定された旋回加速度を減少させる。
【0099】
ステップS14における設定で、
図7に示されるマップMP1に従った旋回加速度が設定された場合に、ステップS16における補正によって、
図7に示されるg1よりも小さい旋回加速度の最大値が再設定されてもよい。たとえば、ステップS14における設定で、
図7に示されるマップMP1に従った旋回加速度が設定された場合に、ステップS16における補正によって、マップMP2に従った旋回加速度に再設定されてもよい。
【0100】
旋回加速度を低下させることで、ハイブリッドショベル100ではない従来の油圧ショベルと同様のダウン旋回を実現できるようにされている。これにより、オペレータの違和感なく作業が可能になる。
【0101】
ステップS17において、旋回動作制御部56は、旋回加速度補正部54が補正した旋回加速度に従って、旋回電気モータ24を制御する。ステップS15の判断において作業機操作装置42の操作量が閾値未満であると判断されると(ステップS15においてNO)、ステップS16の処理はスキップされ、旋回動作制御部56は、ステップS14で旋回加速度設定部52が設定した旋回加速度に従って、旋回電気モータ24を制御する。そして、処理を終了する(エンド)。
【0102】
図9を参照した上記の説明では、作業機操作装置42の操作、典型的にはブーム6を下げる動作のための作業機操作装置42の操作に応じて、旋回体3の旋回加速度を下げることとした。アーム7またはバケット8の動作のために作業機操作装置42が操作される場合においても同様に、旋回体3の旋回加速度を低下させる制御が行われる。走行体5の走行のために走行操作装置43が操作される場合においても、旋回体3の旋回加速度を低下させる制御が行われる。したがって、旋回体3の旋回動作以外のハイブリッドショベル100の動作のために操作される第2操作装置の操作量が閾値以上と判断されると、旋回加速度を低下させる制御が行われる。
【0103】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0104】
図8,9に示されるように、コントローラ30は、旋回加速度に従って旋回電気モータ24を制御する。これにより、旋回体3の旋回速度の変動を少なくして旋回体3を波打たせず滑らかに増減させることができ、また旋回体3の旋回速度の単位時間当たりの増加量を任意に設定することが可能である。
【0105】
図8に示されるように、コントローラ30は、旋回操作装置41の操作量に応じた旋回体3の旋回加速度を設定する。コントローラ30は、慣性検知部が検知した作業機2の慣性によって、設定した旋回加速度を補正する。作業機2の慣性が大きいと、作業機2を上昇させる動作が遅くなる。旋回加速度を補正することによって、ハイブリッドショベル100が、従来の油圧ショベルと同様の動作をすることが可能となる。これによりオペレータの違和感なく作業が可能になるので、精度の高い旋回制御が可能になる。
【0106】
図8に示されるように、コントローラ30は、旋回操作装置41の操作量に応じて設定した旋回体3の旋回加速度を、作業機2が運搬する荷の量によって補正する。作業機2が運搬する荷の量が大きいと、作業機2を上昇させる動作が遅くなる。旋回加速度を補正することによって、ハイブリッドショベル100が、従来の油圧ショベルと同様の動作をすることが可能となる。これによりオペレータの違和感なく作業が可能になるので、精度の高い旋回制御が可能になる。
【0107】
図2に示されるように、圧力センサ27は、油圧ポンプ25の吐出する圧油の圧力を検知する。
図8に示されるように、コントローラ30は、油圧ポンプ25の吐出する圧油の圧力が閾値以上と判断すると、旋回操作装置41の操作量に応じて設定した旋回加速度を減少させる。圧油の圧力が増加して油圧ポンプ25の負荷が増加しているときには、バケット8内の現在の荷の重量が大きいと想定される。旋回加速度を減少させることによって、ハイブリッドショベル100が、従来の油圧ショベルと同様の動作をすることが可能となる。これによりオペレータの違和感なく作業が可能になるので、精度の高い旋回制御が可能になる。
【0108】
図9に示されるように、コントローラ30は、作業機操作装置42の操作量が閾値以上と判断すると、旋回操作装置41の操作量に応じて設定した旋回加速度を減少させる。従来の油圧ショベルにおいては、油圧ポンプから供給される作動油が、ブームシリンダ10と旋回油圧モータとに分流する。ハイブリッドショベル100が、従来の油圧ショベルを模した動作をすることが可能となることで、オペレータの違和感なく作業が可能になるので、精度の高い旋回制御が可能になる。
【0109】
図9に示されるように、コントローラ30は、ブーム6の動作のための作業機操作装置42の操作量が閾値以上と判断すると、旋回操作装置41の操作量に応じて設定した旋回加速度を減少させる。ハイブリッドショベル100が、従来の油圧ショベルを模した動作をすることが可能となることで、オペレータの違和感なく作業が可能になるので、精度の高い旋回制御が可能になる。
【0110】
図8,9に示されるように、コントローラ30は、旋回体3の旋回動作の動作モードと、旋回操作装置41の操作量とに応じて、旋回加速度を設定する。旋回体3を高速で旋回させるか低速で旋回させるかの動作モードに応じた適切な旋回加速度の設定をすることで、作業性を向上することができる。
【0111】
図8,9に示されるように、コントローラ30は、作業機2の先端に取り付けられたアタッチメントの種類と、旋回操作装置41の操作量とに応じて、旋回加速度を設定する。アタッチメントの種類に応じた適切な旋回加速度の設定をすることで、作業性を向上することができる。
【0112】
図2に示されるように、ハイブリッドショベル100は、作業機2の駆動源であるエンジン20をさらに備えている。旋回体3を旋回電気モータ24で旋回させ、作業機2をエンジンで駆動させるハイブリッドショベル100が、ホイスト旋回動作時に従来の油圧ショベルと同様の動作をすることが可能となるので、オペレータの違和感なく作業が可能になり、精度の高い旋回制御が可能になる。
【0113】
上記の実施形態では、油圧ポンプ25の吐出する圧油の圧力を検知する圧力センサ27が作業機2の慣性を検知する慣性検知部としての機能を有する例について説明した。この例に限られず、作業機2の慣性を任意の構成で検知してもよい。たとえば、作業機シリンダの圧力を検知して、作業機2の慣性を判断してもよい。
図4に示されるシリンダ圧センサ10A,10Bが、慣性検知部としての機能を有してもよい。またたとえば、作業機2の姿勢を検知して、作業機2の慣性を判断してもよい。
図4を参照して説明した、ブーム6、アーム7、バケット8に取り付けた慣性計測装置、または、ブームフートピン13、ブームトップピン14、アームトップピン15に取り付けた角度センサが、慣性検知部としての機能を有してもよい。
【0114】
上記の実施形態では、ショベルの一例として、油圧機器の駆動源としてエンジン20を備えるとともに旋回体3を旋回電気モータ24で駆動させるハイブリッドショベル100について説明した。ショベルは、エンジン(内燃機関)を備えなくてもよい。ショベルは、旋回体3の旋回、走行体5による走行、および作業機2の動作の駆動源がいずれも電動機であり、当該電動機はバッテリに蓄えられた電気エネルギーにより駆動される、電動ショベルであってもよい。
【0115】
以上のように実施形態について説明を行ったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 本体、2 作業機、3 旋回体、4 運転室、4S 運転席、5 走行体、5Cr 履帯、5M 走行モータ、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、9 外装カバー、10 ブームシリンダ、10A,10B シリンダ圧センサ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、13 ブームフートピン、14 ブームトップピン、15 アームトップピン、17 バケットリンク、18A,18B,18C ストロークセンサ、20 エンジン、20A ガバナ、21 発電電動機、22 インバータ、23 キャパシタ、24 旋回電気モータ、25 油圧ポンプ、25A 斜板駆動部、26 タンク、27 圧力センサ、28 コントロールバルブ、30 コントローラ、31 演算装置、32 記憶部、41 旋回操作装置、41A 旋回操作検出部、42 作業機操作装置、42A 作業機操作検出部、43 走行操作装置、43A 走行操作検出部、45 入力部、52 旋回加速度設定部、54 旋回加速度補正部、56 旋回動作制御部、58 荷重演算部、100 ハイブリッドショベル、200 ダンプトラック、202 荷台。