(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156272
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】炭化水素処理設備における熱統合
(51)【国際特許分類】
C10G 9/36 20060101AFI20231017BHJP
F01K 23/12 20060101ALI20231017BHJP
F02C 1/00 20060101ALI20231017BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C10G9/36
F01K23/12
F02C1/00
F02C6/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101989
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2022534440の分割
【原出願日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】62/945,469
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521148164
【氏名又は名称】クールブルック オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】プロラ,ヴェリ,マティ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炭化水素処理および/または生産設備内の熱分配の再構成によって、前記設備におけるエネルギー効率を向上させ、温室効果ガス排出量を削減するためのプロセスを提供する。
【解決手段】設備は、希釈媒体の存在下で炭化水素含有原料を分解するための少なくとも1つの装置を有するクラッカーユニットを備え、装置から流出する分解ガス状流出物は、高圧蒸気を発生させながらトランスファーライン熱交換器(TLE)内で瞬時に冷却され、温室効果ガス排出量を削減するためのプロセスにおいて、炭化水素含有供給物および/または希釈媒体を加熱および/または気化すること、ボイラ供給水を加熱および/または気化すること、ならびにTLEユニット内で発生した高圧蒸気を過熱することのいずれか1つが、TLEユニットの下流側に配置された熱回収ユニット(HRU)内で行われ、該プロセスは、炭化水素処理および/または生産設備に電力を供給することを含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素処理および/または生産設備(500)内の熱エネルギー分配の再構成によって、前記設備におけるエネルギー効率を向上させ、温室効果ガス排出量を削減するためのプロセスであって、
前記設備は、希釈媒体の存在下で炭化水素含有供給物を分解するための少なくとも1つの装置(202)を有するクラッカーユニット(100)を備え、前記装置から流出する分解ガス状流出物は、高圧蒸気を発生させながらトランスファーライン熱交換器(TLE)(301)内で冷却され、
前記プロセスにおいて、前記炭化水素含有供給物および/または前記希釈媒体の加熱および/または気化、ボイラ供給水の加熱および/または気化、ならびに前記TLEユニット(301)内で発生した高圧蒸気の過熱のいずれか1つが、前記TLEユニットの下流側に配置された熱回収ユニット(HRU)(302)内で行われ、
前記プロセスは、前記炭化水素処理および/または生産設備に電力を供給することを含む、プロセス。
【請求項2】
電力は、前記分解装置(202)の駆動エンジン(201)に供給される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
電力は、前記分解装置(202)に供給される、請求項1または2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
電力は、誘導または抵抗伝達方法、プラズマプロセス、導電性発熱体による加熱、またはそれらの組み合わせのいずれか1つによって供給される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
電力は、前記クラッカーユニット(100)の下流側に配置されたデバイスまたはデバイス群に供給される、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
電力は、加熱、ポンピング、圧縮および分別、またはそれらの組み合わせのいずれか1つに適合されたデバイスまたはデバイス群に供給される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
電力は、前記炭化水素処理および/または生産設備(500)に関連するような1つまたは複数の外部電源から供給される、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記外部電源は、再生可能エネルギー源または異なる再生可能エネルギー源の組み合わせである、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記外部電源は、太陽光発電システム、風力発電システム、水力発電システム、またはそれらの組み合わせのうちのいずれか1つである、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記外部電源は、原子力発電所である、いずれかの先行する請求項1~8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記外部電源は、少なくとも1つのガスタービンおよび/または蒸気タービンなどの出力タービン、少なくとも1つのガスエンジンなどの火花点火エンジン、少なくとも1つのディーゼルエンジンなどの圧縮エンジン、化石原料から電気エネルギーを生成するように構成された発電所、ならびにそれらの任意の組み合わせのいずれか1つである、いずれかの先行する請求項1~7に記載のプロセス。
【請求項12】
前記外部電源は、蒸気および電気を生産する複合サイクル発電設備および/またはコジェネレーション設備である、いずれかの先行する請求項1~7に記載のプロセス。
【請求項13】
電力は、前記炭化水素処理および/または生産設備(500)において発電される、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記熱回収ユニット(302)は熱交換器であり、任意選択で二次トランスファーライン熱交換器として構成される、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記炭化水素含有供給物を分解するための装置は、熱分解反応などの熱的および/または熱化学的炭化水素減成反応に適合された反応器であり、任意選択で希釈蒸気などの希釈媒体によって補助される、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記炭化水素処理および/または生産設備(500)は、オレフィンプラントである、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記炭化水素処理および/または生産設備は、エチレンプラントおよび/またはプロピレンプラントである、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記炭化水素含有供給物および/または前記希釈媒体の加熱および/または気化、ボイラ供給水の加熱および/または気化、ならびに前記TLEユニット(301)内で発生した高圧蒸気の過熱、またはそれらの組み合わせのいずれか1つは、少なくとも部分的に予熱炉(101)内で行われる、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記予熱炉(101)の熱負荷は、前記炭化水素処理および/または生産設備(500)のクラッカーユニット(100)内で、前記クラッカーユニット内での熱分配の再構成によって再分配され、その結果、前記クラッカーユニットにおける前記予熱炉の設置が省略される、いずれかの先行する請求項1~17に記載のプロセス。
【請求項20】
別個の燃焼室(501)内で水素を酸素で燃焼させることによって実施される直接加熱により、前記燃焼室内で熱エネルギーを発生させることと、水素燃焼から得られ、任意選択で希釈蒸気などの前記希釈媒体と混合された蒸気生成物(29)を炭化水素供給物含有プロセス流体と混合することとを含む、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項21】
水素燃焼の温度は、希釈蒸気などの前記希釈媒体を前記燃焼室に送ることによって調節される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
外部電源または内部電源から供給される電力は、前記炭化水素処理および/または生産設備(500)内での蒸気生成を完全にまたは部分的に補償する、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記設備(500)における熱エネルギーの分配および伝達は、同一または異なるレイアウトおよび/または能力を有するいくつかのクラッカーユニット(100)間で実施される、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記設備(500)内に配置された少なくとも1つの出力タービン(203)から前記分解装置(202)に軸動力を伝導することをさらに含み、前記少なくとも1つの出力タービンは、任意選択で、前記クラッカーユニット(100)内で発生した熱エネルギーを利用する、請求項1または2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記少なくとも1つの出力タービン(203)は、蒸気タービン、ガスタービン、およびガスエクスパンダのうちのいずれか1つとして構成され、前記出力タービンは、駆動軸継手を介して前記分解装置(202)の駆動エンジン(201)に結合される、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記炭化水素含有供給物は、原油生産、蒸留および/または精製の1つまたは複数の留分である、いずれかの先行する請求項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記炭化水素含有供給物は、ガス化された前処理済みバイオマス材料、植物油および/または動物性油脂などの前処理済みグリセリド含有材料、前処理済みプラスチック廃棄物、ならびにトール油またはその任意の誘導体などの木材パルプ産業の副生成物からなる群から選択される、いずれかの先行する請求項1~25に記載のプロセス。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載のプロセスを実施するように構成された炭化水素処理および/または生産設備(500)。
【請求項29】
請求項1~27のいずれか一項に記載のプロセスを実施するように構成された炭化水素処理および/または生産設備(500)内に含まれるクラッカーユニット(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素処理における熱統合のためのシステムおよびプロセスに関する。特に、本発明は、炭化水素生産設備内の熱分配経路を再配置することによって、および/または再生可能エネルギーの利用によって、前記設備におけるエネルギー効率を最適化し、温室効果ガス排出量を削減するためのツールおよびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
熱統合は、多くのエネルギー関連用途においてエネルギー効率を向上させ、運転コストを削減するために重要である。エネルギー効率は、エネルギー消費量または関連する排出量の入力とエネルギー媒介サービスの出力との比として定義され得る。エネルギー集約型石油精製におけるエネルギー効率を向上させることにより、化石燃料などの再生不可能な資源の使用および関連する環境影響を低減することが可能になる。
【0003】
エチレン、プロピレン、ブテンおよびブタジエンなどの低分子オレフィンは、石油化学工業の主要な構成要素であり、プラスチック、ポリマー、エラストマー、ゴム、発泡体、溶媒および化学中間体、ならびに炭素繊維を含む繊維およびコーティングの商業生産における基本的な構成要素の役割を果たす。低級オレフィンの生産は、主に、様々な炭化水素原料の蒸気による熱分解に基づく。このプロセスは、一般に蒸気分解と呼ばれる。典型的な原料は、ナフサおよび軽油のような中間重量炭化水素、ならびにプロパンおよびブタンを含む液化石油ガス(LPG)、さらにエタン、プロパンおよびブタンを含む天然ガス液(NGL)のような軽質原料を含む。
【0004】
分解炉は、エチレンプラントにおけるエネルギーの大部分を消費し、したがって、分解炉の熱効率は、運転の経済性における主要な要因である。原料、燃料硫黄含有量、燃焼制御、および対流部のタイプに応じて、92%~95%の真発熱量(NHV)の全体的な燃料効率が得られる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、2012年6月 Ethylene、pp.465~529。
【0005】
従来の蒸気分解炉は、2つの主要部、すなわち対流部と輻射部とからなる。輻射火室部を出る煙道ガスによって運ばれる熱は、炉の対流部で回収される。したがって、前記煙道ガスは、1000℃~1250℃の範囲内の温度で対流部に流入し、典型的には120℃~140℃の範囲内の温度で流出する。煙道ガス煙突温度(出口の温度)が低いほど、炉効率は良くなる。
【0006】
典型的には、対流部は、供給炭化水素を予熱する(HC予熱)、ボイラ供給水(BFW)を予熱する、炭化水素および希釈蒸気を予熱する、高圧蒸気を過熱する、希釈蒸気を過熱する、および炭化水素含有供給物混合物(炭化水素含有供給物および希釈蒸気)を前記混合物が輻射部に流入する前に過熱するなどの多くの役割を果たす一連の管群からなる。
対流部における管群の数および配列は、典型的には、煙道ガスからの廃熱回収を最適化し、輻射部に適切な供給混合物温度を提供するようなものである。管群は、通常、煙突内に配置され、分解炉の比較的大きなサイズを占める。
【0007】
したがって、気相でまたは液体として供給される炭化水素含有原料は、対流部に流入し、そこで、典型的には、煙道ガスとの熱交換によって、または別の管群で過熱された希釈蒸気と接触することによって、(予備)加熱され、気化される。分解炉は、通常、(予熱された)炭化水素含有供給物と過熱された希釈蒸気との混合が供給物を完全に蒸発させ、その後、気相の炭化水素供給物および希釈蒸気を含有するプロセス流が第1の炭化水素および希釈蒸気予熱管群に流入するように設計される。第2の炭化水素および希釈蒸気予熱管群において、プロセス流は、原料の初期分解温度直前の温度まで加熱される。
【0008】
炭化水素含有供給物を対流部に流入する温度(液体供給物の場合は約50℃~110℃)から輻射コイルの入力に必要な温度(原料に応じて500℃~700℃以内)まで加熱するには、エネルギーが必要である。ガス状供給物の場合にこの温度を達成するために必要とされるエネルギー入力は、気相を加熱するために必要とされるエネルギー量であり、液体供給物の場合に必要とされるエネルギー入力は、加熱エネルギーおよび気化熱に等しい。
【0009】
その後、この流れは輻射部、最も典型的には輻射コイルに流入し、前記輻射部は熱分解反応器として構成されており、そこで制御された条件下で分解反応が起こる。輻射部の入口における流れパラメータは、温度、圧力および流量のような所定の条件を満たさなければならない。高吸熱反応が起こる従来の分解条件は、約0.1~0.5秒の滞留時間、約750℃~900℃以内の温度、および制御された分圧を含む。輻射部火室(輻射コイルを囲み、バーナーを備える構造体)内の温度は、典型的には1000℃~1250℃である。
【0010】
目的オレフィンなどの目的生成物を含む分解流出物は、さらなる急冷および下流側分別のために熱分解炉から流出する。
【0011】
輻射コイルから流出する生成物は、望ましくない二次反応が起こるのを防止するために急速冷却を必要とする。ほとんどの商業的なスチームクラッカーユニット/炉において、急冷は、ボイラ供給水に接触させて分解流出物を冷却し、有用な高圧蒸気状で熱を回収するトランスファーライン熱交換器(TLE)において行われる。商業的解決策は、直列に接続された1つまたは2つの熱交換器(LTE)を備える。TLEは、分解流出ガスを約550℃~650℃に瞬時に冷却して、高反応性生成物の劣化を防止するように設計されている。熱回収を改善するために、流出物はさらに冷却され、その結果、流出物は約300℃~450℃の温度でTLEから流出する。エタンおよびプロパン分解では、分解ガスは別個の熱交換器内で約200℃までさらに冷却されて、より低い温度で熱が回収され得る。ナフサのような液体原料の場合、例えば、TLEの典型的な最低出口温度は、重質生成物の凝縮および交換器管のファウリングを回避するために、約360℃である。両方のTLE交換器は、典型的には、同じ蒸気ドラムに接続される。
【0012】
ボイラ供給水は、蒸気ドラムに流入する前にBFWエコノマイザ管群内で予熱され、そこからBFWはTLEに送られる。従来のスチームクラッカー炉において、垂直TLEユニット(単数または複数)は、炉の輻射部の上部に取り付けられる。このような種類のTLEは、高圧蒸気を発生させる際に約29%の熱の回収を可能にする。
【0013】
TLEユニット(単数または複数)内で発生した高圧蒸気は、対流部内の高圧蒸気過熱管群(単数または複数)内でさらに過熱されて高圧過熱蒸気を生成し、高圧過熱蒸気は、復水タービンおよび/または背圧蒸気タービンなどの蒸気タービン(単数または複数)内で、例えば圧縮機またはポンプ駆動装置(単数または複数)内で、またはオレフィン生産プラント内の加熱目的のために使用される。過剰の高圧蒸気もまた送出され得る。
【0014】
蒸気圧レベルは、加熱目的で蒸気の利用を可能にするように、さらに最適化され得る。
高圧蒸気は、典型的には、圧縮機およびポンプを駆動するために使用されるが、中圧蒸気および低圧蒸気(約2MPaより高い、および約2MPaより低い)は、希釈蒸気発生およびそれに応じたプロセス加熱のために使用され得る。
【0015】
しかしながら、特に蒸気分解に適合された従来の炉の解決策は、多くの障害に直面する。
【0016】
まず、クラッカー炉における蒸気分解プロセスによるオレフィン生産は、過去50年間にわたって業界標準であった成熟技術である。炉は、かなりの投資コストを伴う非常に大型の複雑なプラントである。さらに、前記従来のクラッカー炉の最適化は、主に、炉の輻射部(反応部)における熱分解反応のための最適条件を決定することを目的とする。従来のクラッカーをさらに経済的に最適化することにより、クラッカー炉のサイズは大きくなる。現在のところ、炉のサイズを小さくすることによって排出物を削減する効果的な手段は存在しない。
【0017】
クラッカー炉の性能(収率およびコークス化速度)を決定する主要因となるのは輻射部である。熱分解反応器における運転条件およびコイル設計を最適化することは、過去数十年間の広範囲にわたる研究の対象であった。
【0018】
さらに、従来の分解炉の最適化は、とりわけ輻射部加熱、輻射部の入口の温度、高圧蒸気過熱のための機器/施設、エネルギー効率、および排出物削減を含む、いくつかの相反する最適化対象によって妨げられてきた。
【0019】
輻射部への入熱(例えば、燃料の燃焼熱として供給される)は、対流部で回収される熱量を規定する。高い熱(エネルギー)効率を達成するためには、複数の加熱管群を含むかなり複雑なクラッカー炉が必要である。したがって、二酸化炭素排出量の削減は、従来のクラッカー炉においては非常に妨げられるか、または不可能でさえある。複数の管群の設置は、分解炉の比較的大きなサイズを占める(結果として、高さおよびプロット面積ならびに高い投資の観点から)。
【0020】
さらに、反応熱の入熱は分解条件によって決まるので、煙道ガスによって運ばれる熱は対流部において回収されなければならない。しかしながら、従来の分解炉では、輻射部で放出された熱を回収するために利用可能なヒートシンクの数は限られている。高い熱効率を達成するために、ボイラ供給水を予熱し、希釈蒸気を過熱し、高圧蒸気を過熱し、および/または燃焼用空気を予熱することによって、対流部においてエネルギーが節約される。他のヒートシンクは、熱損失(壁損失および煙突熱損失)によって形成される。
【0021】
TLEユニット(単数または複数)のファウリングにより、分解ガス出口温度は上昇する傾向があり、その結果、蒸気生成のために分解ガスから回収される熱が少なくなる。TLE(単数または複数)の後、前記分解ガスは、典型的には、油急冷システムなどの直接急冷に入る。急冷油は典型的には液体原料に使用されるが、軽質原料(エタンなどのガス)の場合には直接油急冷は使用されない。熱は急冷油および急冷水の状態で回収される。
【0022】
従来のオレフィン生産技術に関連する大きな課題の1つは、有意な量の二酸化炭素(CO2)および大気汚染に関連する他の温室効果ガス、例えば、窒素酸化物(NOX)および場合によっては一酸化炭素(CO)の発生である。したがって、スチームクラッカーでは、エチレン1トン当たり生成されるCO2の量は、分解に使用される原料に依存し、典型的な値は、エタンの場合、エチレン1トン当たり1.0~1.2トンのCO2量、ナフサの場合、エチレン1トン当たり1.8~2.0トンのCO2量である。既存のクラッカー炉の複雑さのために、従来技術による排出量の最小化は困難である。
【0023】
それよりも、商業的解決策は、分離部内での使用および/または送出用の高圧蒸気(HPS)を発生させることを目的とする。従来のエチレンプラントでは、加熱媒体としての高圧蒸気の必要性は限られている。したがって、高圧蒸気は、典型的には、蒸気タービン圧縮機およびポンプ駆動装置で使用される。
【0024】
高圧蒸気送出の可能性がない場合、蒸気の量は、復水式蒸気タービンを使用することによってバランスが保たれる。しかしながら、復水式蒸気タービンは、大型で複雑で高価であることに加えて、全ての排出蒸気流が冷却水によって冷却される凝縮器内で凝縮されることに起因する熱放出損失のために、つまり、放出熱の多くが凝縮時に失われるために、効率が悪い。
【0025】
実際に、加熱のための有用な過熱HPS(HPSS)およびHPSのそのような使用は、エネルギー効率的ではない。典型的には、エチレンクラッカーは、分離部において高温加熱源を必要としない。
【0026】
従来の技術は、蒸気生成による特定量のボイラ水を使用することになる。したがって、ボイラ水として使用される凝縮物の浄化には、かなりの量の化学物質が必要とされる。従来技術は、熱回収に関して既に高度に統合されているため、冷却水の使用量を大幅に削減する手段がない。冷却塔の場合、かなりの量の水が大気中に失われる。
【0027】
この点に関して、炭化水素処理、特に炭化水素分解技術の分野における更新は、温室効果ガス排出量の削減および関連設備内の熱統合の改善に関連する課題に対応することを考慮して、依然として所望されている。
【発明の概要】
【0028】
本発明の目的は、関連技術の限界および不利点から生じる問題のそれぞれを解決する、または少なくとも軽減することである。この目的は、独立請求項1において定義された内容に従って、炭化水素処理および/または生産設備においてエネルギー効率を向上させ、温室効果ガス排出量を削減するためのプロセスの様々な実施形態によって達成される。
【0029】
実施形態では、炭化水素処理および/または生産設備内の熱エネルギー分配の再構成によって、前記設備におけるエネルギー効率を向上させ、温室効果ガス排出量を削減するためのプロセスが提供され、前記設備は、希釈媒体の存在下で炭化水素含有原料を分解するための少なくとも1つの装置を有するクラッカーユニットを備え、装置から流出する分解ガス状流出物は、高圧蒸気を発生させながらトランスファーライン熱交換器(TLE)内で冷却され、該プロセスにおいて、炭化水素含有供給物および/または希釈媒体を加熱および/または気化すること、ボイラ供給水を加熱および/または気化すること、ならびにTLEユニット内で発生した高圧蒸気を過熱することのいずれか1つが、TLEユニットの下流側に配置された熱回収ユニット(HRU)内で行われ、該プロセスは、炭化水素処理および/または生産設備に電力を供給することを含む。
【0030】
実施形態では、該プロセスは、分解装置の駆動エンジンに電力を供給することを含む。
【0031】
実施形態において、該プロセスは、分解装置に電力を供給すること(例えば、前記分解装置を電気的に加熱するために)を含む。実施形態において、電力は、誘導または抵抗伝達方法、プラズマプロセス、導電性発熱体による加熱、またはそれらの組み合わせのいずれか1つによって、前記分解装置に供給される。
【0032】
実施形態において、該プロセスは、クラッカーユニットの下流側のデバイスまたはデバイス群に電力を供給することをさらに含む。
【0033】
実施形態において、電力は、加熱、ポンピング、圧縮および分別、またはそれらの組み合わせのいずれか1つに適合されたデバイスまたはデバイス群に供給される。
【0034】
実施形態において、該プロセスは、炭化水素処理および/または生産設備、1つまたは複数の供給源に関連する外部から電力を供給することを含む。実施形態では、前記外部電源は、1つの再生可能エネルギー源または異なる再生可能エネルギー源の組み合わせである。実施形態において、該プロセスは、太陽光発電システム、風力発電システム、および水力発電システム、またはそれらの組み合わせのいずれか1つから電力を供給することを含む。実施形態において、電力は原子力発電所から供給される。実施形態において、電力は、少なくとも1つのガスタービンおよび/または蒸気タービンなどの出力タービン、少なくとも1つのガスエンジンなどの火花点火エンジン、少なくとも1つのディーゼルエンジンなどの圧縮エンジン、化石原料から電気エネルギーを生成するように構成された発電所、ならびにそれらの任意の組み合わせから供給される。実施形態において、電力は、蒸気および電気を生産する複合サイクル発電設備および/またはコジェネレーション設備から供給される。
【0035】
実施形態において、電力は、炭化水素処理および/または生産設備において発電される。
【0036】
実施形態において、熱回収ユニットは熱交換器であり、任意選択で二次トランスファーライン熱交換器として構成される。
【0037】
実施形態において、炭化水素含有供給物を分解するための装置は、熱分解反応などの熱的および/または熱化学的炭化水素減成反応に適合された反応器であり、任意選択で蒸気などの希釈媒体によって補助される。
【0038】
実施形態において、炭化水素処理および/または生産設備はオレフィンプラントである。実施形態において、前記炭化水素処理および/または生産設備は、エチレンプラントおよび/またはプロピレンプラントである。
【0039】
実施形態において、炭化水素含有供給物および/または希釈媒体の加熱および/または気化、ボイラ供給水の加熱および/または気化、ならびにTLEユニット内で発生した高圧蒸気の過熱、またはそれらの組み合わせのいずれか1つは、少なくとも部分的に予熱炉内で行われる。
【0040】
実施形態において、予熱炉の熱負荷は、前記炭化水素処理および/または生産設備のクラッカーユニット内で、前記クラッカーユニット内での熱分配の再構成によって再分配され、その結果、クラッカーユニットにおける前記予熱炉の設置が省略される。
【0041】
実施形態において、該プロセスは、別個の燃焼室内で、前記燃焼室内で水素を酸素で燃焼させることによって実施される直接加熱により熱エネルギーを発生させることと、水素燃焼から得られた蒸気生成物、任意選択で希釈蒸気などの希釈媒体と混合された蒸気生成物を炭化水素供給物含有プロセス流体と混合することとを含む。実施形態において、水素燃焼の温度は、希釈蒸気などの希釈媒体を前記燃焼室に送ることによって調節される。
【0042】
実施形態において、該プロセスは、外部電源または内部電源から供給される電力が炭化水素処理および/または生産設備内での蒸気生成を完全にまたは部分的に補償するように設定される。
【0043】
実施形態において、炭化水素処理および/または生産設備における熱エネルギー分配および移動は、同じまたは異なるレイアウトおよび/または能力を有するいくつかのクラッカーユニット間で実施される。
【0044】
実施形態において、該プロセスは、炭化水素処理および/または生産設備内に配置された少なくとも1つの出力タービンから分解装置に軸動力を伝導することを含み、前記少なくとも1つの出力タービンは、任意選択で、クラッカーユニット内で発生した熱エネルギーを利用する。前記少なくとも1つの出力タービンは、蒸気タービン、ガスタービンおよびガスエクスパンダのうちのいずれか1つとして構成され得る。実施形態において、前記出力タービンは、駆動軸継手を介して分解装置の駆動エンジンに結合される。
【0045】
実施形態において、炭化水素含有供給物は、原油生産、蒸留および/または精製の1つまたは複数の留分である。実施形態において、炭化水素含有供給物は、ガス化された前処理済みバイオマス材料である。実施形態において、炭化水素含有供給物は、植物油および/または動物性油脂などの前処理済みグリセリド含有材料である。実施形態において、炭化水素含有供給物は、ガス化された前処理済みプラスチック廃棄物である。実施形態において、炭化水素含有供給物は、木材パルプ産業の副生成物、例えばトール油またはその任意の誘導体を含む。
【0046】
別の態様では、独立請求項28に定義されている内容に従って、炭化水素処理および/または生産設備が提供される。
【0047】
さらに別の態様では、独立請求項29に定義されている内容に従って、炭化水素処理および/または生産設備に含まれるクラッカーユニットが提供される。
【0048】
本発明の有用性は、その各々の特定の実施形態に応じて様々な理由から生じる。全体として、本発明は、例えば、供給炭化水素、希釈蒸気およびボイラ供給水の加熱、ならびに関連する熱回収に関連するものを含むがこれらに限定されない、いくつかの相互作用する施設間で熱エネルギーの流れを巧みに再分配することによって、オレフィンプラントなどの炭化水素処理および/または生産設備内の熱統合経路を再構成することを可能にする。
前記設備内での熱エネルギー分配の再構成は、資源(例えば、燃焼燃料)および排出効率が良く、さらに中間圧力および低圧の蒸気、急冷油、急冷水などの利用可能な低温源を利用することを可能にする。
【0049】
加えて、本発明の解決策は、熱交換器における温度差(単数または複数)の最適化の改善を可能にする。
【0050】
本明細書に開示されているプロセスにおいて、従来のプロセスと比較して、クラッカーユニット内で生成される高圧蒸気は少ない。低減された蒸気生成は、高効率外部蒸気ボイラの設置、またはガスタービン、ガスエンジンもしくは複合発電プラントにおける蒸気および電気の同時生成によって少なくとも部分的に補償され得る。したがって、過熱HPSの生成は従来のクラッカーにおけるよりも少ないが、電力は、分離部において復水HPSS蒸気タービンに取って代わることができる。このような構成により、オレフィンプラントのエネルギー効率をさらに向上させ、冷却水およびボイラ供給水の必要性を低減させることが可能になる。
【0051】
本発明によって提供される高度な熱回収および統合により、有害な温室効果ガス排出量、特に二酸化炭素および窒素酸化物(CO2/NOX)の量を、従来のスチームクラッカーユニットと比較して、少なくとも3分の1に削減することができる。したがって、本発明は、再生可能な供給源を含む様々な供給源から電力を導入する。全ての電力が再生可能な供給源からプロセスに供給されるかどうかにかかわらず、排出物はほぼ完全に除去され得る。
【0052】
本発明はさらに、(再生可能な)電気を柔軟に使用する。再生可能エネルギーの生産は、毎日、さらには1時間ごとに変動する。本発明は、例えば、高効率複合サイクルガスタービンまたはガスエンジンを採用することによって、送電網のバランスを取ることを可能にする。
【0053】
該プロセスの実施の柔軟性は、オレフィンプラントの能力のレベルを調整して最適なコストで需要の変動を満たすことを可能にする。本発明はさらに、現場の投資コストの削減を可能にする。
【0054】
「熱分解」および「分解」という用語は、本開示において、前駆体化合物中の炭素間結合の切断による、より重質の炭化水素含有前駆体化合物のより軽質の炭化水素含有化合物への熱的または熱化学的分解のプロセスに関する同義語として主に利用される。
【0055】
「いくつかの」という表現は、本明細書において、1から始まる任意の正の整数、例えば、1、2、または3を指す。「複数の」という表現は、本明細書では、2から始まる任意の正の整数、例えば、2、3、または4を指す。用語「第1の」および「第2の」は、本明細書では、明示的に別段の定めがない限り、特定の順序または重要度を示すのではなく、ある要素を別の要素と単に区別するために使用される。
【0056】
用語「流体」および「プロセス流体」は、本開示では、希釈剤の存在下または非存在下のいずれかにおいて、主に炭化水素供給物含有ガス状物質、例えば、プロセス流気相を指す。
【0057】
用語「ガス化された」という用語は、本明細書では、物質が任意の可能な手段によってガス状に変わることを示すために使用される。
【0058】
本発明の異なる実施形態は、詳細な説明および添付の図面を考慮することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1A】本発明に係る、プロセスの実施形態の概略図である。
【
図1B】本発明に係る、プロセスの実施形態の概略図である。
【
図2】本発明に係る、プロセスの実施形態の概略図である。
【
図3】本発明に係る、プロセスの実施形態の概略図である。
【
図4】本発明に係る、プロセスの実施形態の概略図である。
【
図5】本発明に係る、プロセスの実施形態の概略図である。
【
図6】一実施形態に係る、炭化水素処理および/または生産設備内の熱エネルギー流統合および再分配の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の詳細な実施形態は、添付図面を参照しながら本明細書に開示されている。符号の説明の参照番号が部材に使用される。
【0061】
図1A、
図1B、
図2~
図5は、本発明に係る、炭化水素処理および/または生産設備においてエネルギー効率を向上させ、温室効果ガス排出量を削減するためのプロセスの様々な実施形態の概略図である。
図1A、
図1B、
図2~
図5および実施例1~実施例4は、例示を目的とするものであり、本発明の概念の利用可能性を本開示で明示されたレイアウトに限定することを意図するものではないことに留意されたい。
【0062】
炭化水素処理および/または生産設備500(
図6参照)(以下、「設備」)は、オレフィン生産設備(オレフィンプラント)である。この設備は、主として、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンなど、またはそれらの任意の組み合わせのいずれか1つのような低分子量オレフィンを生産するように構成される。
【0063】
設備500は、エチレンプラントおよび/またはプロピレンプラントとして構成され得る。
【0064】
追加的または代替的に、設備500は、ペンテンおよび芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、キシレン)などの高級炭化水素を生産するように構成され得る。設備はさらに、ジオレフィンを生産するように構成され得る。
【0065】
設備500は、一般に、クラッカーユニット100と、それに続く分離部とを備える。
「分離部」という用語は、本明細書では、クラッカーユニットの下流側に設けられ、前記クラッカーユニットの下流側で所望の生成物を回収することを目的とする複数のデバイスまたはデバイス群の総称として使用される。分離部に設けられた機器には、分解ガスに含まれる熱の除去、水および重質炭化水素の凝縮、圧縮、洗浄、乾燥、分離、および特定の不飽和成分の水素化を含むがこれらに限定されない様々な機能が割り当てられる。クラッカーユニット100は、炭化水素処理および/または生産設備500の「高温部」と呼ばれ、分離部は、それに応じて「低温部」と呼ばれる場合がある。
【0066】
いくつかの構成では、設備500は、2つ以上(例えば、2~50の任意の数を含むがこれらに限定されない)のクラッカーユニット100を備える。いくつかの例示的な場合において、設備は、10個、20個、30個または40個のクラッカーユニットを備え得る。さらに、設備500は、任意の適切な数(50を超えることもある)のクラッカーユニット100を含むように構成され得る。
【0067】
クラッカーユニット100は、本発明の異なる実施形態に従って実施される熱分配および熱移動を伴う複数のデバイスおよび/またはデバイス群を備える。クラッカーユニット内および/または設備500全体内の前記デバイスおよび/またはデバイス群間の熱エネルギー分配の統合および再構成によって、熱統合の強化およびエネルギー効率の向上が実現される。実施形態に従うクラッカーユニット100内の熱エネルギー分配の前記統合および再構成は、
図1A、
図1B、および
図2-
図5を参照しながら以下でさらに説明するクラッカーユニット100の例示的なレイアウト100A、100A’、100B、100C、100D、100Eで示されている。
【0068】
クラッカーユニット100は、(予備)加熱炉101(以下、「炉」と呼ばれる)と、炭化水素含有原料(単数または複数)の分解などの熱的および/または熱化学的処理を行うように構成された少なくとも1つの装置202とを備える。炉101および装置202は、一般に、少なくとも機能性に関して、背景技術のセクションで説明した従来のスチームクラッカーユニットなどの従来のクラッカーユニットの対流部および輻射部に対応する。いくつかの構成では、炉101の設置は省略され得る。
【0069】
炉101に流入する炭化水素含有供給物は、液体または気体などの本質的に流体状で提供される。
【0070】
装置202は、好ましくは、熱的および/または熱化学的炭化水素処理反応、特に、熱分解反応などの熱的および/または熱化学的炭化水素減成反応に適合された反応器として構成され、全体として炭化水素含有供給原料(単数または複数)の分解をもたらし、任意選択的に希釈媒体(希釈剤)によって補助される。したがって、反応器202は、希釈媒体の有無を問わず熱分解反応に適合され得る。さらに、希釈媒体の存在は、生成物収率を向上させるので好ましい。
【0071】
本発明の設備で利用される希釈媒体は、(水)蒸気である。蒸気分解プロセスにおいて、蒸気は、ガス化反応(単数または複数)によるコークス付着物の形成を抑制または低減するために、炭化水素分圧を低下させる希釈剤として作用する。場合によっては、希釈剤は、例えば、反応物および反応生成物に対して本質的に0の反応性を有する水素(H2)、窒素(N2)またはアルゴンなどの不活性ガス状媒体である。任意の他の好適な希釈剤の利用は除外されない。
【0072】
いくつかの構成では、装置202は蒸気分解反応器である。
【0073】
(蒸気)分解プロセスを含む熱分解プロセスは、高温を必要とし、高吸熱プロセスであり、したがって、反応は、高温(750℃~1000℃、典型的には820℃~920℃)で実施され、反応ゾーンにおける滞留時間は、約0.01~1.0秒などの数分の1秒の程度である。利用される供給物に応じて、温度、質量流量などの反応器パラメータは、典型的には、収率を最適化することを考慮して調節可能であり、その結果、滞留時間はそれに応じて変動し得ることに留意されたい。したがって、滞留時間および温度は、最大収率を達成するための供給物特性に依存する。
【0074】
反応器202の実装は、一般に、米国特許第9494038号(Bushuev)および米国特許第9234140号(Seppalaら)による回転反応器(ロトダイナミック反応器(RDR)とも呼ばれる)、並びに米国特許第10744480号(Rosic&Xu)によるラジアル反応器(仮特許出願第62/743707号に基づく)の開示内容に従う。これらの開示内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0075】
回転反応器202は、軸上に取り付けられた少なくとも1つのロータユニットを有するロータシャフトを備える。ロータユニットは、ロータディスクの周囲にわたって配置された複数のロータ(作動)ブレードを備え、これらが一緒になってロータブレードカスケードを形成する。ブレードカスケードを有するロータは、有利には、ブレード付きロータディスクの両側に本質的に環状アセンブリとして設けられた固定(ステータ)ベーンカスケード間に位置決めされる。
【0076】
追加的にまたは代替的に、反応器202は、炭化水素分解のために、誘導もしくは抵抗エネルギーおよび/または熱伝達方法、プラズマプロセス、導電性加熱要素および/または加熱表面による加熱、あるいはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない他の技術の効率的利用に適合され得る。
【0077】
追加的または代替的に、反応器202は、炭化水素含有原料(単数または複数)の熱分解、特に蒸気分解に適合された任意の従来の反応器として実装され得る。工業用の管状解決策が利用され得る。
【0078】
反応器202は、駆動エンジン201を利用する。全体として、反応器202は、電気モータなどの様々な駆動エンジンを利用し得る、またはガスタービンもしくは蒸気タービンによって直接駆動され得る。本開示の目的のために、任意の適切なタイプの電気モータ(すなわち、電源から機械的負荷にエネルギーを伝達することができるデバイス)が利用され得る。電力変換器、コントローラなどのような機器についてはここでは説明しない。
好適なカップリングが、モータ駆動軸とロータ軸(図示せず)との間に配置される。
【0079】
選択された構成では、反応器202は、プロセス流体中で少なくとも1つの化学反応を行うように構成される。いくつかの例示的な実施形態では、反応器は、炭化水素含有原料(単数または複数)、特に流動炭化水素含有原料(単数または複数)を熱的または熱化学的変換するように構成される。「炭化水素含有原料(単数または複数)」とは、本明細書では、主に炭素および水素を含む流動有機原料物質を指す。
【0080】
炭化水素含有供給物は、典型的には、原油生産、蒸留および/または処理/精製の留分である。炭化水素供給物は、ナフサおよび軽油などの中間重量炭化水素(C4~C16、沸点範囲約35℃~約250℃)、ならびにエタン、プロパンおよびブタンなどの軽質炭化水素(C2~C5、好ましくはC2~C4)からなる群から選択され得る。ナフサは、35℃~90℃の沸点範囲を有する軽質ナフサ、90℃~180℃の沸点範囲を有する重質ナフサ、および35℃~180℃の沸点範囲を有するフルレンジナフサを含み得る。追加的にまたは代替的に、重質減圧軽油および残油(例えば、水素化分解残油)などの重質原油留分(C14~C20およびC20~C50、沸点範囲約250℃~約350℃および約350℃~約600℃)が利用され得る。
【0081】
追加的または代替的に、反応器202は、酸素含有炭化水素誘導体などの酸素含有原料物質を処理するように構成され得る。いくつかの構成では、反応器202は、セルロース系原料を処理するように適合され得る。いくつかの追加構成または代替構成では、反応器は、(廃)動物性油脂および/または(廃)植物油系原料を処理するように適合され得る。前記動物性油脂系および植物油系の供給物の前処理は、水素化脱酸素(酸素含有化合物からの酸素の除去)を含み得、これは(トリ)グリセリド構造の分解をもたらし、大部分が直鎖アルカンを生じる。さらなる追加構成または代替構成では、反応器202は、トール油またはその任意の誘導体などの木材パルプ産業の副生成物を処理するように適合され得る。「トール油」の定義は、木材パルプ製造において主に針葉樹をパルプ化する際に使用される、一般に知られているクラフトプロセスの副生成物(単数または複数)を指す。
【0082】
該プロセスにおいて、提供される炭化水素含有供給物としては、ナフサおよび軽油などの中間重量炭化水素、ならびにエタン、プロパンおよびブタンなどの軽質炭化水素のうちのいずれか1つが挙げられるがこれらに限定されない。プロパンおよびより重質の留分がさらに利用され得る。全体として、設備500、特にクラッカーユニット100に流入する炭化水素含有供給物は、ガス状供給物または本質的に液体供給物のいずれかである。
【0083】
場合によっては、炭化水素含有供給物は、ガス化された前処理済みバイオマス材料である。バイオマス系供給物は、実質的にガス状で反応器に供給されるセルロース由来の、または特にリグノセルロース由来の前処理済みバイオマスである。
【0084】
炭化水素含有供給物はさらに、(廃棄または残留)植物油および/または動物性油脂などの前処理済みグリセリド系材料、または前処理済みプラスチック廃棄物または残渣のいずれか1つとして提供され得る。前記(トリ)グリセリド系原料の前処理は、上記したような熱分解または脱酸素化などの異なるプロセスを含み得る。PVC材料、PE材料、PP材料、PS材料およびそれらの混合物を含む様々なプラスチック廃棄物は、新しいプラスチックを製造するための原料としてさらに使用され、および/または燃料油(単数または複数)(ディーゼル燃料等価物)に精製され得る熱分解油またはガスの回収プロセスにおいて利用され得る。
【0085】
いくつかの構成において、反応器202は、例えば、フィッシャー・トロプシュプロセスの段階の1つとして、植物油の対応するアルカンへの直接触媒水素化またはガス状炭化水素の触媒脱水素化などのプロセスにおいて再生可能燃料を生産するために、前処理済みガス化バイオマス供給物を精製するように適合され得る。
【0086】
バイオマス物質、グリセリド物質および/または高分子物質をベースとする原料を利用する場合、反応器202は、触媒プロセスにさらに適合され得る。これは、プロセス流体(単数または複数)と接触している反応器ブレードまたは内壁の触媒コーティング(単数または複数)によって形成されるいくつかの触媒表面によって達成される。場合によっては、反応器は、任意選択でモノリシックハニカム構造として実現される活性(触媒)コーティングを有するセラミックまたは金属の基板(単数または複数)または支持担体(単数または複数)によって画定されるいくつかの触媒モジュールを備え得る。
【0087】
クラッカーユニット100は、例えば、並列に配置され、共通の炉101に接続されるたいくつかの反応器ユニット202を備え得る。いくつかの構成では、設備は、複数の炉101に接続されるいくつかの反応器ユニット202を備え得る。n個の炉に接続されたn+x個の反応器のような異なる構成が想定され得、ここでnは0以上であり、xは1以上である。したがって、いくつかの構成では、設備500、特にクラッカーユニット100は、共通炉101に接続された1つ、2つ、3つまたは4つの並列反応器ユニットを備え得る(4つを超える反応器の数は除外されない)。いくつかの回転反応器202を共通炉101に並列に接続する場合、前記反応器202の1つ以上は、異なるタイプの駆動エンジンを有し得、例えば、電気モータ駆動反応器(単数または複数)は、蒸気タービン、ガスタービンおよび/またはガスエンジンによって駆動される反応器と組み合わせられ得る。
【0088】
反応器202の駆動エンジンへの電力の伝導は、出力タービンから駆動エンジンへの機械的軸動力の伝導をさらに伴い得、例えば、任意選択で、クラッカーユニット100および/または設備500内の他の場所で発生した熱エネルギーを利用する(
図1Bおよび関連する説明を参照)。例として、急冷装置(例えば、適切な構成を有するトランスファーライン熱交換器301および/または熱回収ユニット302)内で発生した蒸気は、適切なカップリングを介して回転反応器202の軸に機械的に接続された蒸気タービンでさらに使用され得る。タービンは、機械的エネルギーを反応器軸に戻し、その結果、反応器を駆動するのに必要な電力消費量が削減される。
【0089】
設備500が2つ以上のクラッカーユニット100を備えるかどうかにかかわらず、前記ユニットの各々は、他のユニットと本質的に同様の設計を有し得る、または独立して構成され得る(言い換えれば、本質的に同一または異なる施設レイアウト、機器能力などを有する)。したがって、いくつかの構成では、設備500における熱エネルギー分配および伝達は、同一または異なるレイアウトおよび/または容量を有するいくつかのクラッカーユニット100間で実施され得る。
【0090】
設備500は、いくつかの異なるクラッカーユニット100(本明細書で提示されるレイアウト100A~100E(
図1~
図5)および/またはスチームクラッカー(単数または複数)などの従来のクラッカー(単数または複数)の任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない)を含むように構成され得る。実際に、以下にさらに説明する熱統合の解決策は、例えば、高圧蒸気生成におけるエネルギーバランスを最適化するために、任意選択で従来のオレフィンプラント内に配置される従来のクラッカーにおいて一般的に適用可能である。
【0091】
炉101は、燃料(例えば、燃料ガス)および空気によって加熱され得る。追加的または代替的に、炉は、例えばガスタービンなどの少なくとも1つのタービンからクラッカーユニット100に送られる高温排ガスによって加熱され得る(
図6)。追加的または代替的に、前記排ガスは、上述したように、設備内の反応器ユニット202のうちの1つ以上のための駆動装置として使用されるガスタービンまたはガスエンジンから生じ得る。追加的または代替的に、炉101は、例えばバイオガスまたは木材ベースの固体材料などの任意の本質的にバイオベースの材料で加熱され得る。
【0092】
設備は、クラッカーユニット100内に、少なくとも1つのトランスファーライン熱交換器(TLE)301をさらに備え、ここで、反応器202から(750℃~1000℃、典型的には820℃~920℃の範囲内の温度で)流出する分解ガス状流出物は、高圧蒸気(HPS、6~12.5MP、280℃~327℃)を発生させながら冷却される。
【0093】
TLE出口における分解ガス状流出物の温度は、約450℃~約650℃の範囲内で設定される。TLE301は、分解生成物の瞬時冷却を行うことができる任意の従来のトランスファーライン熱交換器ユニットとして構成され得る。したがって、冷却は非常に短い時間間隔で、典型的には数ミリ秒以内で行われ、最高の収率を提供する。
【0094】
該プロセスは、クラッカーユニット100内でTLE301の下流側に配置された少なくとも1つの熱回収ユニット(HRU)302の利用をさらに伴う。
【0095】
本明細書によって開示されるプロセスにおいて、TLE301の下流側に設けられた熱回収ユニット302は、炭化水素含有供給物および/または希釈媒体の加熱および/または気化、ボイラ供給水の加熱および/または気化、ならびにTLEユニット内で発生した高圧蒸気の過熱のうちの少なくとも1つを実行するように構成される。
【0096】
上述したように、従来の(スチーム)クラッカーにおいて、熱分解反応器から流出する分解ガス状流出物は、場合によっては、直列に接続されたTLEユニット内で冷却され得る。一次TLE(TLE1)は、減成反応(450℃~650℃以内の出口温度)を停止させるために瞬時急冷を行うように構成されるが、二次TLE(TLE2)は、分解生成物の凝縮を回避するためにプロセス流体を約360℃までさらに冷却する。TLE1およびTLE2は、典型的には、同じ蒸気ドラムに接続される。
【0097】
熱回収ユニット302から流出する分解ガス9の温度は、従来のクラッカーに従って規定され、すなわち、その温度は、重質留分の凝縮および熱交換器のファウリングを回避するのに十分に高い温度とする。したがって、ナフサタイプの原料については、温度は約360℃にしなければならず、より軽質の原料については、より低い温度が一般的に適用され得る(例えば、300℃~450℃)。エタンおよびプロパン分解では、分解ガスはさらに約200℃まで冷却され得る。
【0098】
本明細書で開示されるプロセスでは、炭化水素処理および/または生産設備のクラッカーユニット100内の熱統合は、より少ない熱エネルギー(熱)がトランスファーライン熱交換器(単数または複数)内で回収されるように変更される。
【0099】
従来の解決策とは対照的に、本開示のプロセスでは、TLE301の下流側に配置された少なくとも1つの熱回収ユニット302に、高圧蒸気の生成以外のいくつかの機能が割り当てられる。熱統合は、トランスファーライン熱交換器(単数または複数)内で一般に回収可能な熱量が従来の設備で得られる熱量より低くなるように変更される。熱回収ユニット302内で回収された熱は、(TLE301内で生成された)HPSの過熱のために、ならびに/または炭化水素処理および/もしくは生産設備内の炭化水素含有供給物、希釈蒸気混合物、もしくは任意の他の流れを加熱するなどの一般的な加熱および予熱のために使用される。
【0100】
過熱温度を達成するために、高圧蒸気(6~12.5MPa)は、一般に、HPS 6MPa、450℃~470℃、HPS 10MPa、510℃~540℃(典型的には、530℃)、およびHPS 12MPa、530~550℃のように(過熱)加熱される。
【0101】
いくつかの構成では、熱回収ユニット302は、一般に、従来の二次TLEが蒸気発生または加熱のために使用される場合に、従来の二次TLEよりも低い圧力で動作する。HRU302内で過熱するための蒸気がTLE301内で生成されるいくつかの他の構成では、熱回収ユニット302は、従来の二次TLEユニットとほぼ同じ圧力で動作する。
【0102】
熱回収ユニット302は、熱交換器などの熱伝達ユニットとして実装され得る。熱交換器として構成される熱回収ユニットの設計は、前記熱回収ユニットに割り当てられた特定の機能、すなわち、予熱/加熱/気化の動作(供給流、希釈剤流および/もしくはBFW流などの他の流れ)またはTLE301内で生成された高圧蒸気の過熱によって決まる。
【0103】
いくつかの実施形態は、トランスファーライン熱交換器301(この文脈において、一次TLE(TLE1)として機能する)の下流側に配置されたトランスファーライン熱交換器(TLE2)として構成される熱回収ユニット302の設置を含み、前記一次TLE301内で生成された高圧蒸気は、前記二次TLE302内で過熱される(
図1Aの説明も参照)。このような構成によって、クラッカーユニット100から分離部に移送される高圧蒸気の量が低減され、クラッカーユニット100/設備500内での蒸気生成は、外部電源または内部電源から供給される電力によって部分的または完全に補償される(すなわち、補充または置換される)。同様にして、蒸気消費量はそれに応じて削減され得る。
電力は、単位時間当たりのエネルギー伝達率(ワットで測定される)として定義される。
【0104】
熱分解プロセス全体の熱負荷は、原料および希釈蒸気を、それらが炉の対流部に流入する温度からそれらが熱分解反応器から流出する温度まで加熱するのに必要とされるエネルギーであり、化学反応に必要とされる熱負荷を含む。従来の炉の対流部に典型的に割り当てられる熱負荷は、原料および希釈蒸気を熱分解反応器に流入する温度まで加熱する熱負荷、ボイラ供給水をTLEユニット(単数または複数)内での高圧蒸気生成に使用する前に加熱する熱負荷、およびTLE内で生成される飽和高圧蒸気を過熱する熱負荷である。
【0105】
本明細書に開示されるプロセスにおいて、熱回収ユニット302は、一般に、高圧蒸気の生成に使用されない(しかし、ハードウェア設計および機能性に関して、ユニット302は、HPSを十分に発生させることが可能であり得る)。したがって、予熱炉101における過熱のため、および下流側の機器(例えば、分解ガス圧縮機タービン)における発電のために利用可能な蒸気は少なくなる。
【0106】
さらに、プロセスにおいて発生した高圧蒸気は、炭化水素供給物と希釈蒸気との混合物が炉101に流入する前に過熱するために、例えば熱交換器401(
図1A、
図1B、
図2~
図5)内で使用され得る。このような構成は、飽和過熱蒸気の効率的な使用を可能にし、(任意のタイプの石油化学設備/精油所などの他の消費者への)送出用のHPSを過熱する必要性をさらに低減する。
【0107】
該プロセスでは、過熱高圧蒸気(HPSS)の生成は従来のクラッカーの解決策よりも少なくなるが、低減された蒸気生成は、電力を炭化水素処理および/または生産設備500に伝導することによって少なくとも部分的に補償され得る。低減された蒸気生成は、高効率外部蒸気ボイラなどの1つまたは複数の支援設備によって、またはガスタービン、ガスエンジンもしくは熱電併給プラントにおける蒸気および電気の同時生成によって、加熱要求を満たすようにさらに補償され得る
【0108】
明らかに、現在の技術は、分解炉および/またはTLEへの熱統合の可能性が限られている。再生可能な電気を従来の解決策に統合することは、発電用の蒸気タービンおよび/または駆動エンジン内で使用するための過熱HPSの生成のために、困難である。蒸気を平衡状態にするために、復水タービンが典型的に使用される。これらの復水タービンは、非常に効率が悪く、大量の冷却水を消費する。したがって、持続可能なエネルギー生産モジュール(例えば、複合サイクルガスタービン発電プラントなどの再生可能エネルギー生産設備および/または高効率発電設備を含むがこれらに限定されない)との統合は、それ自体の高圧蒸気生成により妨げられる。
【0109】
それに対して、本明細書で開示されるプロセスは、炭化水素処理および/または生産設備500に電力を供給することを含む。いくつかの構成では、電力は、一般にクラッカーユニット100内に位置するデバイスまたはデバイスの群に供給される。
【0110】
該プロセスでは、電力は、分解装置202の駆動エンジンに供給され得る。いくつかの構成では、電気モータ駆動装置202は、例えば、米国特許第9234140号(Seppalaら)による回転反応器として実装され得る。
【0111】
電力は、分解装置202に供給され得る。これは、装置202の回転軸を推進するために使用される電気モータに電流を供給することによって、または、例えば直接加熱を介するような代替方法によって行われ得る。直接加熱を実施するために電力が反応器202に供給されるプロセスの例示的な構成は、分解のための誘導もしくは抵抗エネルギー伝達方法、プラズマプロセス、導電性加熱要素および/もしくは加熱表面による加熱、またはそれらの組み合わせのいずれか1つを含むが、これらに限定されない。
【0112】
追加的または代替的に、電力は、一般に前記クラッカーユニットの下流側に位置するデバイスまたはデバイス群に、すなわち、分離/分別部に供給される。したがって、電力は、加熱、圧縮、ポンピングおよび分別、またはそれらの組み合わせのいずれか1つに適合されたデバイスまたはデバイス群に供給され得る。
【0113】
該プロセスでは、電力は、一般に、クラッカーユニット100((予熱)炉101、反応器ユニット(単数または複数)202および関連する下流側機器301、302、ならびに任意選択で関連する施設401~404を備える)に設けられた機器に、および/または前記クラッカーユニットの下流側に設けられた機器、すなわち、分離部に供給され得る(
図6を参照)。
【0114】
該プロセスへの電力の供給は、1つまたは複数の外部電源(炭化水素処理および/または生産設備500に関連するような)から実施され得る。追加的または代替的に、電力は、前記設備500内の内部で生成され得る。
【0115】
1つまたは複数の外部電源は、持続可能なエネルギー生産のために提供される様々な支援設備を含む。したがって、電力は、少なくとも1つの再生可能エネルギー源を利用する発電システム、または異なる再生可能エネルギー源を利用する発電システムの組み合わせから供給され得る。再生可能エネルギーの外部電源は、太陽光、風力および/または水力発電として提供され得る。したがって、電力は、太陽光発電システム、風力発電システム、および水力発電システムのうちの少なくとも1つから該プロセスに受け取られ得る。いくつかの例示的な例では、原子力発電所が外部電源として提供され得る。原子力発電所は、一般に、排出物ゼロと考えられている。「原子力発電所」という用語は、従来の原子力、および追加的または代替的に核融合電力を使用するものとして解するべきである。
【0116】
電気は、発電機を駆動するための運動エネルギー源としてタービンを利用する発電所から供給され得る。場合によっては、電力は、例えば、別置として、またはコジェネレーション設備および/または複合サイクル発電設備内に設けられた少なくとも1つのガスタービン(GT)から設備500に供給され得る。したがって、電力は、例えば、複合サイクルガスタービンプラント(CCGT)などの複合サイクル発電設備、および/または熱電併給(CHP)による熱回収および熱利用と組み合わされた電気生産のために構成されたコジェネレーション設備のうちの少なくとも1つから供給され得る。いくつかの例では、CHPプラントは、記載されているプロセスにおいて再生可能エネルギーが占める割合を増加させるためのバイオマス燃焼プラントであり得る。追加的または代替的に、電力の供給は、任意選択でエンジン発電プラントの一部として設けられる、例えばガスエンジンなどの火花点火エンジン、および/または例えばディーゼルエンジンなどの圧縮エンジンから実現され得る。さらに、石炭、石油、天然ガス、ガソリンなどの化石原料から電気エネルギーを生成するように構成され、典型的には蒸気タービンの使用によって媒介される任意の従来の発電プラントが設備500と統合され得る。
【0117】
外部電源および内部電源として実現される上述の電源の任意の組み合わせが考えられる。
【0118】
該プロセスはさらに、例えば燃料電池を使用して電気に再変換される、または予熱炉101内で燃焼される、再生可能エネルギー源として水素を利用し得る。
【0119】
該プロセスでは、上述した外部電源または内部電源から供給される電力が、炭化水素処理および/または生産設備500内での蒸気生成において発生する熱エネルギーを部分的にまたは完全に補償する。したがって、電力の使用は、分離部における復水タービンおよび/または背圧蒸気タービンにおいて生成される蒸気の熱エネルギーに少なくとも部分的に取って代わることができる。
【0120】
繰り返すが、従来のクラッカーユニットにおいて、主圧縮機のいくつかは、復水タービン(単数または複数)または背圧タービンによって駆動され、いくつかのポンプ(例えば、QOポンプ、QWポンプ、BFW/CWポンプの一部)は、背圧タービン(単数または複数)によって駆動される。その加熱負荷を満たすために、プロセスは、例えば、典型的には中圧蒸気(MP蒸気、1.6MPa)を必要とする希釈蒸気発生を除いて、低圧蒸気(LP蒸気、0.45MPa)を利用する。背圧蒸気タービン駆動装置を備えた前記従来のクラッカーユニットでは、例えば、蒸気抽出は、中圧蒸気レベルおよび低圧蒸気レベルの両方が平衡するように調節される(導入エネルギーと送出エネルギーとの差は本質的に0である)。過剰の蒸気は、好ましくは、高圧蒸気レベル(6.0~12.5MPa)で送出される。
【0121】
高圧蒸気送出の可能性がない場合には、蒸気量は、復水式蒸気タービンを使用することによってバランスが保たれる。しかしながら、上述したように、復水式蒸気タービンは、大型で複雑で高価であることに加えて、熱エネルギーの大部分が凝縮時で失われるために、効率が悪い。
【0122】
クラッカーユニット100は、従来のクラッカー内で発生する量よりも少ない量の高圧蒸気を発生させるように構成される。したがって、設備500において、特にその分離部において、復水タービンは、例えば背圧蒸気タービンなどのより効率的なタービン解決策に少なくとも部分的に置き換えられ得る。背圧蒸気タービンは、必要とされる蒸気圧力レベルでのエネルギー(熱)抽出を介して必要な蒸気のバランスを保つことによってエネルギー効率を高める。場合によっては、分離部における復水タービン(単数または複数)の設置は、完全に省略され得る。全ての場合において、分離部内の蒸気タービンは、例えば、電気モータに少なくとも部分的に置き換えられ得る。少なくとも部分的に設備500内の従来の復水式タービンと置き換えるために、任意の他のエネルギー効率の良い解決策が利用され得る。
【0123】
全体として、従来の復水蒸気タービンの熱効率は40%未満である。比較すると、高効率ガスタービンの熱効率は最大40%であり、複合サイクルガスタービンの熱効率は最大60%であるが、コジェネレーションプラント(蒸気および電気)の熱効率は80%を超える。
【0124】
代替(外部)電源から低排出ガス電力を導入することにより、炭化水素処理および/または生産設備のエネルギー効率がさらに向上する。
【0125】
本発明は、異なる供給源から電力を受け取るという点で柔軟性がある。電力バランスは、例えば、再生可能電気の量(1つまたは複数の再生可能な供給源から供給される電力量)および複合サイクルガスタービン設備(CCGT)から得られる電力量を調節することによって、ケースバイケースで調節され得る。設備500をいくつかの発電システムと接続する配電網(電力供給網)が設備500上に形成され得る。
【0126】
前記配電網は、蒸気生成供給網および熱生成供給網などの他の送電網に柔軟に統合され得る。電気生産網、熱生成網および/または蒸気生成網のいずれか1つを設備500内に機能的に統合することにより、エネルギー効率に関連する大幅な改善が達成され得る。
【0127】
本明細書に記載される方法で熱統合を再構成することにより、例えば、大幅に小型化された予熱炉を有するか、あるいは前記予熱炉が存在しない、エチレンプラントなどの炭化水素処理および/または生産設備を建設することが可能になる。これを従来の解決策に当てはめると、その伝統的な実現においてクラッカー炉無しでスチームクラッカーユニットが実現され得るということである。
【0128】
図6は、炭化水素処理および/または生産設備500内の熱エネルギー流の統合および再分配の概略図である。電力生産を伴わないバッテリリミットは、丸付き大文字Aで示され、電力生産を伴うバッテリリミットは、丸付き大文字Bで示される(Aが含まれる)。
Bの場合、設備500は、例示的な複合サイクルガスタービン設備(CCGT)(熱電併給設備(CHP)の特定の変更と見なされ得る)と機能的に統合される。CCGTユニットは、外部発電設備である(500に関して)。複合サイクルガスタービンは、最大60%の熱効率で動作し、したがって、前記CCGTによって生産された低排出電力を炭化水素処理および/または生成設備500に導入することにより、前記設備のエネルギー効率がさらに向上する。CCGTユニットから流出する高温の煙道ガスは、予熱炉101および/または分解装置202内で流体を(予備)加熱するためにクラッカーユニット100に送られ得る。
【0129】
CCGTによって生成される熱エネルギーに加えて、またはその代替として、低排出電力は、
図6に「再生可能」ボックスで示される再生可能な供給源から、および/または「コジェネレーション」ボックスで示されるコジェネレーション設備から設備500に供給され得る。追加的にまたは代替的に、この解決策は、蒸気および/または燃料ガスの生成システム、送達システムおよび/または消費システムを、全体的なエネルギー効率が向上した任意の種類の処理および/または生産設備(例えば、オレフィン生産プラント以外)(図示せず)にさらに統合することを可能にする。
【0130】
高度な熱回収および統合により、従来のスチームクラッカーユニットと比較して、温室効果ガス排出量、特に二酸化炭素および窒素酸化物ガス(CO
2/NO
X)の排出量を少なくとも3分の1に削減することができる。比較エネルギーおよび物質収支シミュレーション(実施例1~実施例4を参照)が、従来のナフサスチームクラッカープラントおよび設備500(
図6を参照)におけるナフサ蒸気分解について行われた。これらの実施例は、本明細書に開示されるプロセスの柔軟性を例示しており、正味エネルギー消費量の大幅な削減、ならびにCO
2排出、冷却水およびボイラ(供給)水消費量の削減を実証する。
【0131】
図1A、
図1B、
図2および
図3に示される構成に従って熱分配施設を(再)構成することにより、従来の解決策と比較して炉101の大幅な小型化が達成され得る。これは、対流部管群において通常行われる加熱負荷を個々の熱回収ユニット(単数または複数)および/または補助熱交換器などの関連する施設に割り当てることによって達成される。
【0132】
図4および
図5は、炉101無しで具現化されたプロセスを示す。
【0133】
図1Aは、100Aとして具現化されたクラッカーユニット内で行われるプロセスの一実施形態の概略図であり、ここでは、熱回収ユニット302は、HPS過熱器として使用される。分解装置202から流出する分解ガス状流出物は、TLE301内で最初の冷却を受けて、熱分解反応を停止させ、高圧蒸気を生成し、その後、最初に冷却された分解ガス状流出物からの熱は、熱交換器ユニット302に送られて、301内で発生したHPSを過熱して、上記のように所定の(過熱)温度まで過熱された高圧蒸気(HPSS、6~12.5MPa)を発生させる。
【0134】
図1Aのプロセスにおいて、炭化水素含有供給物1(典型的には、液体供給物)は、熱交換器403内で、50℃~110℃、好ましくは60℃~90℃(液体供給物の場合)の範囲内の炉入口温度まで加熱される。低温流を予熱することにより、煙道ガス煙突温度(煙道ガス出口温度)を低下させることが可能であり、このことが、炉101における熱効率の向上の要因となる。(予備)加熱に使用される流れは、例えば、急冷水、急冷油または低圧蒸気である。
【0135】
予熱された炭化水素含有供給物2は、炉101に流入し、そこで供給物は加熱管群102内で気化される。気化された供給物3は、熱回収ユニット302の下流側の専用の希釈蒸気発生ユニット(図示せず)内で発生した希釈蒸気(DS)4と混合される。その結果、炭化水素供給物(HC)と希釈蒸気(DS)との混合物として提供されたプロセス流体は、蒸気ドラム303からの飽和高圧蒸気17を加熱媒体として使用することによって熱交換器401内で加熱される。このようにして生産された(および加熱された)供給混合物5(HC+DS)は、HC+DS管群103内で反応器入口温度まで、供給物の初期分解温度よりわずかに低い温度(500℃~700℃、好ましくは、620℃~680℃)までさらに加熱される。プロセス流体6は、分解反応器202に送られる。
【0136】
流れ26は、炉101を加熱するために使用される燃料ガスであり、流れ25は、燃焼用空気である。追加的または代替的に、炉101の加熱は、分解設備のバッテリリミットの内側または外側に位置するガスタービン(単数または複数)からの排ガスを使用して実施され得る(
図6のオプションAおよびBを参照)。そのような場合には、十分な入熱を行うために、追加のバーナーが炉101内に設置される。
【0137】
熱分解反応は、装置202内で起こる。構成において、反応器202は、電気モータを有するか、または例えばガスタービンによって直接駆動され得る。反応器内の滞留時間は、有用な生成物の劣化を回避するために最小化される。分解ガス状流出物7は、対応する連絡配管を介して、TLE301に送られる。反応器出口温度は、選択された運転条件、原料の種類などに応じて変動し得る。TLE入口の温度は、約750℃~1000℃、好ましくは820℃~920℃の範囲内である。
【0138】
TLE301は、分解ガス状流出物7を約450℃~650℃まで急冷する。TLEは、高圧蒸気16(HPS、6~12.5MPa)を発生させる。TLE301から流出する冷却分解ガス8は、熱回収ユニット302に送られる。
【0139】
ボイラ供給水10は、熱交換器402内で、所定の温度まで、好ましくはHPS沸点(例えば110℃~200℃)に十分に近いか、またはそれより高い値まで予熱される。加熱媒体として、例えば中圧蒸気または急冷油などの低温媒体が使用される。飽和蒸気17の一部は、熱交換器401内でプロセス流体/供給混合物を(過熱)加熱するために使用される。
【0140】
飽和HPS13は、熱回収ユニット302内で過熱されて、過熱HPS14(HPSS、6~12.5MPa)が発生する。典型的には、熱回収ユニット302から流出するHPSS14または任意選択で分解ガス状流出物9の温度は、蒸気と水との混合による前記熱回収ユニット302の過熱低減装置(図示せず、実際には11の下流側に位置する)にボイラ供給水11を注入することによって調節され得る。
【0141】
煙道ガスから回収された過剰な熱はさらに、燃焼用空気25またはボイラ供給水(
図1Aには図示せず)を予熱するために使用され得る。
【0142】
複数の反応器ユニット202が共通炉101と共に利用されるかどうかにかかわらず、前記反応器ユニット202はさらに、共通のTLEユニット301および/または共通の熱回収ユニット302を有し得る。
【0143】
いくつかの構成では、
図1Aのレイアウト100Aから炉101の設置が省略され得る(ここでは図示)。このような場合には、炉101および炉101内部に設けられた予熱管群102、103は、例えば、電気ヒーターに置き換えられる。炉101を電気ヒーターに置き換えたレイアウト100Aのシミュレーション結果を実施例1(ケースB)に示す。
【0144】
図1Bは、
図1Aに従うプロセスの例示的な変更形態を示す。したがって、該プロセスは100A’として具現化されたクラッカーユニット内で行われる。レイアウトは、参照番号203で示されるタービン駆動装置を有する出力タービンを備える。タービンは、有利には、クラッカーユニット100A’内に配置されるが(クラッカーユニット100A’は関連設備500内に設けられる)、前記ユニット(100A’)および設備(500)の外部にも適切に配置され得る。
【0145】
提示されている構成では、出力タービンは蒸気タービン(例えば、背圧タービンまたは復水タービン)である。追加的にまたは代替的に、出力タービンは、適切な構成を有するガスタービンまたはプロセスガスエクスパンダであり得る。したがって、出力タービンは、蒸気または燃焼燃料によって生成されるエネルギーを利用するように構成され得る。異なる動力源を利用するいくつかのタービンの組み合わせが利用され得る(例えば、蒸気および燃料を動力源とするタービン)。前記少なくとも1つの出力タービン203は、有利には、駆動軸継手を介して反応器202に結合される。したがって、タービン203(例えば、蒸気タービン)は、回転反応器202の駆動装置201と同じ軸に結合されたモータ駆動装置を有する。
【0146】
図1Bは、適切な構成を有する熱回収ユニット302からの過熱蒸気30が、回転反応器202の軸に機械的に接続された駆動装置を有する蒸気タービン203上でさらに使用され得るレイアウトを示す。
【0147】
したがって、HRU302からの過熱蒸気30は、出力タービン203(この実施例では蒸気タービンとして構成される)へと案内されて、(回転)反応器202に機械的軸動力を提供する。軸動力は、1つの回転要素から別の回転要素に伝達される機械力として定義され、トルクと軸の回転速度との合計として算出される。機械力は、単位時間当たりの仕事量またはエネルギー量(ワットで測定される)として定義される。
【0148】
機械的軸動力は、動力入力機械(ここではタービン203)から反応器202(の軸)へ伝導され得る。軸動力の供給は、電気駆動エンジン201への入力としての電力で少なくとも部分的に補償(すなわち、補充または置換)され得る。したがって、電気モータ201および(蒸気)タービン203のいずれか1つを使用して反応器202を駆動することができる。全体として、蒸気タービンおよび電気モータからの軸動力は、それらのうちのいずれか1つが全軸動力またはその一部を提供することができるように、分割され得る。
【0149】
例えば、タービン203を介して反応器軸に機械力(軸動力)を伝導することにより、反応器を駆動するために必要とされる電力消費量を削減することができる。このことにより、他の動力源に関して電力使用を最適化することができる。
【0150】
HRU302とは別に、代替構成または追加構成では、過熱蒸気30は、クラッカーユニット100/設備500内に配置された任意の他のデバイスから、または前記設備500の外部の供給源から得られる。
【0151】
クラッカーユニット100内で利用される出力(蒸気)タービンのタイプに応じて、流れ31は、蒸気背圧タービンからの蒸気または復水タービンからの凝縮物のいずれかであり得る。蒸気31から抽出された熱はクラッカーユニット100(高温部)または分離部におけるプロセス加熱目的で利用され得るので、背圧タービンが好ましい場合がある。
【0152】
場合によっては、電気モータ201は、プロセスが十分に安定化した後に出力タービン203(例えば、蒸気タービンおよび/またはガスタービンとして構成される)の連動によって、反応器装置202を最初に始動させるための補助具として使用される。したがって、反応器202および/またはその駆動エンジン(201)に電力が供給され、追加的にまたは代替的に、出力タービン203からの機械的軸動力が供給され、出力タービン203は、任意選択で、クラッカーユニット100(例えば、トランスファーライン熱交換器301、熱回収ユニット302、および/または燃焼室、以下参照)内で発生した加圧蒸気30から抽出された熱エネルギーを利用するように構成される。
【0153】
図2は、
図1Aに従うプロセスの別の例示的な変更形態を示す。したがって、このプロセスは100Bとして具現化されたクラッカーユニット内で行われる。熱回収ユニット302から流出する高圧蒸気24は、所定の温度に過熱されるために炉101(管群105)に送られる。
図2に示されるようなプロセスレイアウトは、TLEユニット301が過熱に十分な熱エネルギーを発生しない場合、または熱回収ユニット302が使用されていない場合に特に適用可能である。
【0154】
図3は、100Cとして具現化されたクラッカーユニットにおいて行われるプロセスの一実施形態の概略図であり、ここでは、熱回収ユニット302は、プロセス流体(HC+DS)が炉101に流入する前に前記プロセス流体用の加熱器として使用される。加熱に必要な熱エネルギーは、TLE301内で冷却された分解ガス状流出物から熱回収ユニット302内で回収される。
【0155】
図3のプロセスにおいて、炭化水素含有供給物1(典型的には、液体供給物)は、
図1Aのプロセスについて開示されているのと同様に、熱交換器403内で、50℃~110℃、好ましくは60℃~90℃の範囲内の炉入口温度まで加熱される。予熱された炭化水素含有液体供給物2は、炉101に流入し、そこで供給物は加熱管群102内で気化される。気化された供給物3は、熱回収ユニット302の下流側の専用の希釈蒸気発生ユニット(図示せず)内で発生する希釈蒸気(DS)4と混合される。得られたプロセス流体(HC+DS)は、蒸気ドラム303からの飽和高圧蒸気17を加熱媒体として使用することによって熱交換器401内で過熱される。
【0156】
熱分解反応は、装置202内で起こる。構成において、反応器202は、電気モータを有するか、または例えばガスタービンによって直接駆動され得る。分解ガス状流出物7は、対応する連絡配管を介して、TLE301に送られる。TLE入口の温度は、約750℃~1000℃、好ましくは820℃~920℃の範囲内である。TLE301は、分解ガス状流出物7を約450℃~650℃まで急冷する。TLEは、HPS16(6~12.5MPa)を発生させる。TLE301から流出する流出物8は、熱回収ユニット302に送られる。
【0157】
ボイラ供給水10は、加熱管群104(炉101)内で、所定の温度まで、好ましくはHPS沸点(例えば110℃~200℃)に十分に近いか、またはそれより高い値まで予熱される。ボイラ供給水は、急冷水、急冷油または蒸気(
図3には図示せず)によっても加熱され得る。飽和蒸気17の一部は、熱交換器401内でプロセス流体/供給混合物を(過熱)加熱するために使用される。
【0158】
飽和HPS13は、他の施設(例えば、下流側の分別部内、図示せず)に送出される。
飽和HPSはさらに、炉101内で過熱され得る(
図3には図示せず)。
【0159】
図4は、100Dとして具現化されたクラッカーユニット内で行われるプロセスの一実施形態の概略図であり、ここでは、炭化水素処理および/または生産設備内の予熱炉101の設置は省略されている。
【0160】
図4のプロセスにおいて、炭化水素含有供給物1(典型的には、液体供給物)は、熱交換器403内で、例えば、急冷水、急冷油または低圧蒸気によって、50℃~110℃、好ましくは60℃~90℃の範囲内の温度まで予熱される。予熱された液体供給物2は、熱交換器404内で飽和高圧蒸気27に接触して気化される。気化された供給物3は、熱回収ユニット302の下流側の専用の希釈蒸気発生ユニット(図示せず)内で発生する希釈蒸気(DS)4と混合される。得られたプロセス流体(HC+DS)は、蒸気ドラム303からの飽和高圧蒸気17を加熱媒体として使用することによって熱交換器401内で予熱される。
【0161】
このようにして生成された過熱プロセス流体5は、この構成では熱交換器として実装された熱回収ユニット302内で加熱され、次いで熱分解反応器202に送られる。熱回収ユニット302の出口の温度は、利用可能な熱含量およびTLE301から流出するプロセス流体の温度に依存する。したがって、HRU302は、TLE流出ガス(単数または複数)を加熱媒体として利用する。反応器202の入口温度は、400℃~570℃、より典型的には450℃~500℃の範囲である。代替として、1つまたは複数の電気ヒーター(図示せず)が反応器202(図示せず)の入口に隣接して配置されて、反応器供給物が反応器入口における典型的な温度まで予熱される。
【0162】
熱分解反応は、反応器202内で起こる。いくつかの構成では、反応器202は、好ましくは、電気モータを有する。分解ガス状流出物7は、対応する連絡配管を介して、TLE301に送られる。反応器出口温度は、選択された運転条件、原料の種類などに応じて変動し得る。TLE入口の温度は、約750℃~1000℃、好ましくは820℃~920℃の範囲内である。
【0163】
TLE301は、分解ガス状流出物7を約550℃~650℃まで急冷する。TLEは、高圧蒸気16(HPS、6~12.5MPa)を発生させる。
【0164】
飽和蒸気17の一部は、熱交換器401内でプロセス流体/供給混合物を(過熱)加熱するために使用される。飽和HPS13は、他の施設に送出される。
【0165】
該プロセスは、水素(水素ガス)の直接加熱、任意選択で燃焼によって、別個の燃焼室501(
図5)内で熱エネルギーを発生させることをさらに含み得る。好ましくは、酸素による水素の燃焼が実施される。場合によっては、水素燃焼の温度は、燃焼室501内に希釈蒸気を送ることによって調節される。したがって、希釈蒸気を燃焼室501に送ることによって、水素燃焼温度が低減され得る。
【0166】
好ましくは、高純度の酸素23および水素28が利用される。高純度ガスを使用することによって、下流側における炭素酸化物(CO、CO2)および窒素(N2)のような不純物の存在が回避され得る、または少なくとも最小限に抑えられ得る。水素は、90~99.9体積%の範囲内、より好ましくは99.9体積%の純度を有することが好ましい。
水素精製ユニット(図示せず)から高純度の水素が得られる。酸素濃度は、90~99体積%の範囲内、好ましくは95体積%超で提供される。燃焼中の炭素酸化物(CO、CO2)の形成を回避するためには、炭化水素不純物の含有量も最小限に抑えるべきである。
【0167】
図5は、100Eとして具現化されたクラッカーユニット内で行われるプロセスの一実施形態の概略図であり、ここでは、加熱は、直接加熱(任意選択で水素を酸素で燃焼させることによって実施される)によって実現される。この文脈において、直接加熱とは、高温プロセス流から低温プロセス流への(直接)熱供給のプロセス(典型的には、前記プロセス流の混合によって実現される)を指す。したがって、
図5は、
図4のレイアウトへの前記直接加熱の利用可能性の概念を示す。図示されていないが、前記直接加熱は、炉101内の(予備)加熱を最小限に抑えるために、
図1A、
図1B、
図2および
図3に示されている構成にも適用され得る。
【0168】
図5のプロセスにおいて、炭化水素含有供給物1(典型的には、液体供給物)は、低温熱源(廃熱と呼ばれることもある)からの熱回収を最大化するたに、熱交換器403または一連の熱交換器において、例えば、急冷水、急冷油または低圧蒸気によって予熱される。予熱された液体供給物2は、熱交換器404内で、例えば、飽和高圧蒸気(
図4において参照番号27で示される)または設備500もしくは外部供給源からの任意の他の利用可能な高温熱源に接触して気化される。流れ27の代わりに任意の他の適切な蒸気流が利用され得るので、流れ27は
図5から省略されている。気化された供給物3は、希釈蒸気(DS)と混合される。希釈蒸気4は、熱回収ユニット302の下流側の専用の希釈蒸気発生ユニット(図示せず)内で発生する。水素燃焼の温度を調節するために、希釈流22の一部が燃焼室501に送られ得る。得られたプロセス流体(HC+DS)は、蒸気ドラム303からの飽和高圧蒸気17を加熱媒体として使用することによって熱交換器401内で予熱される。
【0169】
このようにして生成された過熱プロセス流体5は、この構成では熱交換器として実装された熱回収ユニット302内で加熱され、次いで燃焼室501からの高温流と混合される(本開示の文脈では、直接加熱と呼ばれるプロセス)。熱回収ユニット302の出口の温度は、利用可能な熱含量およびTLE301から流出するプロセス流体の温度に依存する。流れ21(反応器202に流入するプロセス流体)の温度は、400℃~570℃、より典型的には450℃~500℃の範囲である。
【0170】
水素28は、燃焼室501内で酸素23によって燃焼される。したがって、水素と酸素は発熱反応に入り、水分子を生成する。燃焼室において確立された高温条件下で、水は蒸気(気相)として現れる。このようにして発生した蒸気29(水素燃焼から生じる蒸気生成物)の温度を低下させるために、希釈蒸気22は、反応器202に流入する炭化水素含有プロセス流体と混合する前に燃焼室に送られ得る。冷却しなければ、高温蒸気生成物29は、炭化水素含有プロセス流体と混合されたときにコークス化を引き起こす可能性がある。さらに、燃焼室への希釈蒸気噴射は前記燃焼室内の温度を低下させ、より安価な材料の利用を可能にする。混合は、好ましくは、反応器入口に近接して実施される。
【0171】
熱分解反応は、反応器202内で起こる。構成において、反応器202は、好ましくは、電気モータを有する。反応器内および連通管内の滞留時間は、有用な生成物の劣化を回避するために最小限に抑えられる。分解ガス状流出物7は、対応する連絡配管を介して、TLE301に送られる。反応器出口温度は、選択された運転条件、原料の種類などに応じて変動し得る。TLE入口の温度は、約750℃~1000℃、好ましくは820℃~920℃の範囲内である。
【0172】
TLE301は、分解ガス状流出物7を約450℃~650℃まで急冷する。TLEは、高圧蒸気16(HPS、6~12MPa)を発生させる。
【0173】
ボイラ供給水10は、熱交換器402内で、所定の温度まで、好ましくはHPS沸点(例えば110℃~200℃)に十分に近いか、またはそれより高い値まで予熱される。急冷水、急冷油または蒸気が、加熱媒体として利用され得る。
【0174】
飽和蒸気17の一部は、熱交換器401内でプロセス流体/供給混合物を(過熱)加熱するために使用される。飽和HPS13は、他の消費者に送出される。
【0175】
図1A、
図1B、
図2~
図5のプロセス構成は、ガス状供給物にも適用可能である。このようなガス供給物が液体の代わりに利用されるかどうかにかかわらず、予熱器403は不要であり得る。そのような場合、ガス状供給物は気化する必要がないので、加熱管群102内で供給物を気化するために割り当てられる熱負荷はより小さくなる。ガス状原料が利用される場合、熱回収ユニット302の出口におけるプロセス流体温度は、交換器管のコークス化および凝結のリスクが低いため、液体原料を利用する場合に必要な関連温度値と比較して、結果的に大幅に低くなり得る。したがって、飽和蒸気の消費レベルに応じて、プロセス中に発生する過熱高圧蒸気の量が最適化され得る。
【0176】
設備500の異なる構成を実施するいくつかの実施形態では、加熱のために中圧蒸気(MPS)を導入することが有利である。導入された中圧蒸気は、例えば、複合発電ユニットで生成され得る、および/またはエネルギー効率を向上させるために他の支援ユニットまたは設備から過剰エネルギーとして導入され得る。中圧蒸気は、例えば、クラッカーユニット100/設備500内に設けられた蒸気ボイラ内で意図的に生成され得る。
【0177】
以下の実施例1~実施例4は、従来のナフサスチームクラッカープラントおよび設備500(
図6を参照)におけるナフサ蒸気分解に対して行われた比較エネルギーおよび物質収支シミュレーションを示す。前記実施例では、設備500は、回転反応器202を利用するエチレン製造プラントとして構成されており、したがって、このプラントは、さらに回転反応器プラントと呼ばれる。シミュレーションでは、反応器202は、米国特許第9234140号(Seppalaら)内で設定されたガイドラインに従って実装された回転反応器(RDR)である。短い滞留時間(炭化水素原料含有プロセス流体が反応空間内で費やす時間)およびより高い温度により、回転反応器は、より高い収率およびより低い原料消費量を有する。
【0178】
従来のプラントおよびRDRプラントは共に、1000キロトン/年(年間運転時間8400時間)のエチレン生産能力を有するものとした。両方のプラントにおいて、分離部は同じ構成および同じ蒸気/ナフサ比(蒸気/ナフサ比=0.5)を有するものとした。
原料は同様の原料(ナフサ供給物)とし、バッテリリミット条件は両方のプラントについて同じとした。
【0179】
シミュレーションにおいて、蒸気収支は、全ての生成された中圧および低圧蒸気が消費され、過剰の過熱高圧蒸気(HPSS、10MPa/100bara(絶対圧)、530℃)が送出され、エネルギークレジットとして採用されるように調整された。HPSSは、背圧タービン駆動装置および復水蒸気タービン駆動装置内で消費された。回転反応器プラント内で消費される電力は、CO2を排出しないものとする。
【0180】
実施例1 従来のプラントと、
図1Aの概念に従って実装された(回転)クラッカーユニット100を備える回転反応器プラント(500)との比較。
【0181】
表1は、従来のプラント(従来)、燃料ガス運転炉101を有する回転反応器プラント500(ケースA、回転反応器プラント)および
図1に示される反応器供給物予熱(炉101)が電気ヒーターで置き換えられた回転反応器プラント500(ケースB、回転反応器プラント)のエネルギーおよび物質収支シミュレーションの概要を示す。
【表1】
【0182】
したがって、クラッカーユニット100が回転反応器202を有する
図1Aのレイアウト100Aに従って実装された場合、ケースAおよびケースBの回転反応器プラント構成では、従来のクラッカーと比較して、正味のエネルギー消費量が21%および22%減少した。明確にするために、正味のエネルギー消費量は、高圧蒸気送出(クレジット)を差し引いた総エネルギー消費量(図示せず)として定義されている(表1の「クレジットHP蒸気送出」の行を参照)。
【0183】
ケースBのクラッカーユニットのレイアウトは、
図1Aに関して上述されている(注: ケースBは図示されていない)。
【0184】
したがって、設備500における二酸化炭素の発生量(予熱のために燃焼された燃料当たりの計算値、バッテリリミット内)は、従来のスチームクラッカーで得られた値の約27.5%および0%(ケースAおよびケースB)となった(約72.5%および100%の減少)。したがって、構成Bでは、再生可能な電気の量を100%まで増加させることが可能である。このような場合、利用される他のプロセスパラメータに応じて、二酸化炭素排出量はほぼ完全に削減される(0kg/h)。当然、NOX排出量はCO2排出量に伴って減少する。
【0185】
上記の実施例はまた、設備500における冷却負荷の低減を示す。このことにより、冷却負荷が約25%低下する。ボイラ供給水消費量の削減は、50%減少するので、さらに顕著である。
【0186】
従来の解決策と比較して特にケースAに関して、従来の(蒸気)分解炉内の輻射コイルを回転反応器202に置き換えることによって、および追加的にまたは代替的に熱回収ユニット302を設けることによって、炉101の熱負荷も従来の分解炉対流部の熱負荷と比較して約30%低減され得ることが観察され得る。このような場合、固有の正味のエネルギー消費量(燃料および電気、GJ/t)もまた、エチレン生産(図示せず)について計算すると、約20.5%減少し得る。この値は、炉サイズの小型化を反映している。
【0187】
実施例2 従来のプラントと、
図1Aの概念に従って実装された(回転)クラッカーユニット100を備える回転反応器プラント(500)との比較(収率は一致している)。
【0188】
実施例1で説明したような構成について、比較エネルギーおよび物質収支シミュレーションを行った。実施例1との違いは、回転反応器202の運転条件がその収率(ここでは、エチレン収率)が従来の炭化水素(ナフサ)クラッカー内で得られる(エチレン)収率と本質的に一致するように選択されていることである。このシミュレーションは、設備500において従来のクラッカーユニット100を回転反応器クラッカーユニット100と置き換えた場合に、同じ生成物分配を維持することが有利である状況を実証する。シミュレーションの結果を表2にまとめる。
【表2】
【0189】
これらの場合においても、エネルギー消費量およびCO2排出量は、有意に低下する。
それに応じて、回転反応器プラント構成A、Bについて、正味のエネルギー消費量が16.5%および18.5%減少する。CO2排出の減少は、回転プラントケースA、Bについてそれぞれ64%および100%となる。さらに、収支は、冷却負荷の低減(11%)およびボイラ供給水の使用量の低減(43%)を実証している。
【0190】
【0191】
実施例では、回転式クラッカーユニット100の構成は、
図4のレイアウト100Dに従って実装されている。実際には、炭化水素含有原料と希釈剤との混合物(例えば、ナフサ/蒸気混合物)は、熱交換器401内で飽和高圧蒸気によって予熱される。次いで、過熱されたプロセス流体は、回転反応器202に送られる前に熱回収ユニット302内で加熱される。HRU302は、この構成では、TLE(301)出口ガスが加熱媒体として使用される熱交換器として実装される。
【0192】
設備500において加熱を実施するために、この計算例において、中圧蒸気(1.6MPa/16bar)がプロセスに導入された。追加的または代替的に、中圧蒸気に加えてまたはその代わりに、電力が加熱に利用され得る。中圧蒸気を導入することにより、電力消費量が削減され得る。中圧蒸気発生は、正味のエネルギー消費量およびCO2排出量の計算に含まれる。
【表3】
【0193】
この計算例は、反応器部において異なる熱統合構成を使用することによって総電力消費量をさらに削減することができる方法を示す。実施例1では、100%通電概念(回転反応器構成B)の正味のエネルギー消費量は、531MWとなるが、本開示の実施例では、わずか445.2MWである。したがって、実施例1のレイアウトと比較した電力消費量の減少は約16%である。
【0194】
【0195】
この実施例では、回転式クラッカーユニット100の構成は、
図5のレイアウト100Eに従って実装されている。
【0196】
この概念では、生成された水素は、燃焼チャンバ501内で酸素によって燃焼され、供給ナフサ/蒸気混合物(HC+DS)と混合する前に(希釈)蒸気で希釈される。表4は、クラッカーユニット100E(
図5)を備える回転反応器プラント(500)の2つの構成についてのエネルギーおよび物質収支シミュレーション結果を示す。ケースAにおいて、プロセスに供給される全ての熱エネルギーは電気エネルギーから変換される(すなわち、加熱は完全に電気加熱である)。ケースBにおいて、加熱は、中圧蒸気(1.6MPa/16bar)をプロセスに導入することによって実施される。中圧蒸気を導入することにより、電力消費量が削減され得る。特に、
図5のレイアウトは、他のプラントでは有用でないエネルギーの需要者を有するコンビナートにおいて全体的なエネルギー効率を向上させる。水素燃料エネルギーは、エネルギー消費量計算に含まれない。中圧蒸気発生は、正味のエネルギー消費計算量に含まれる。
【表4】
【0197】
提示されている計算例は、燃焼室501内で水素を酸素で燃焼させ、水素燃焼から得られた高温蒸気生成物(29、
図5)を炭化水素供給物含有プロセス流体流と混合することによって実現される直接加熱を介して、総電力消費量をさらに削減することができる方法を示す。蒸気生成物29を炭化水素供給物含有プロセス流体と混合する前に、蒸気生成物29に希釈蒸気などの希釈媒体が混合され得る。実施例1では、100%通電概念(回転反応器構成B)の正味のエネルギー消費量は、水素燃焼概念における421MWおよび389MWと比較して、531MWとなった。中圧蒸気をプロセスに導入する場合(ケースB、表4)、電力消費量の減少は約26%である。
【0198】
さらなる態様では、クラッカーユニット100(100A~100E)ならびに炭化水素処理および/または生産設備500は、独立して設けられ、上記の実施形態に従うプロセスを実施するように構成される。
【0199】
技術の進歩に伴って、本発明の基本概念が様々な方法で実施され、組み合わされ得ることは、当業者には明らかである。したがって、本発明およびその実施形態は、本明細書における上述の実施例に限定されず、添付の特許請求の範囲内で概ね変化し得る。
【符号の説明】
【0200】
1 炭化水素供給物(HC)
2 予熱された炭化水素供給物
3 気化された供給物または加熱されたガス状供給物(加熱管群102から流出する)
4 希釈蒸気(DS)
5 (過熱)加熱された供給混合物(HC+DS)
6 分解反応器202(
図1~
図3)に流入する供給混合物/プロセス流体
7 分解されたガス状流出物
8 TLE301から流出する冷却された分解ガス状流出物
9 熱回収ユニット302から流出する分解ガス状流出物
10、11、12 ボイラ供給水(BFW)
13 蒸気ドラム303からの飽和高圧蒸気(HPS)
14 熱回収ユニット302内で発生した過熱HPS
15 TLE301への水
16 TLE301からの水/蒸気混合物
17 蒸気ドラム303内で発生した飽和蒸気(の一部)
18 凝縮物
19 炉101から流出する煙道ガス(単数または複数)
21 プロセス流体
22 燃焼室501に送られるDS
23 酸素流
24 302から炉101に送られるHPS
25 燃焼用空気
26 炉101を加熱するための燃料ガス
27 飽和HPS
28 水素流
29 水素燃焼から得られた蒸気生成物(任意選択で希釈蒸気と混合される(
図5))
30 出力タービンへの過熱蒸気
31 出力タービンからの蒸気/凝縮物
100、100A、100B、100C、100D、100E クラッカーユニット
101 炉
102、103、104、105 加熱管群
201 装置/反応器(202)のための駆動装置
202 分解反応器などの炭化水素含有原料(単数または複数)を処理するための装置
203 タービン駆動装置を備えた出力タービン
301 トランスファーライン熱交換器(TLE)
302 熱回収ユニット(HRU)
303 蒸気ドラム
401、402、403、404 (追加の)熱交換器
500 炭化水素処理および/または生産設備
501 燃焼室
【外国語明細書】