(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156292
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231017BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01L29/78 614
H01M10/48 301
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115651
(22)【出願日】2023-07-14
(62)【分割の表示】P 2019540727の分割
【原出願日】2018-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2017171224
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SWIFT
2.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】楠 紘慈
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一徳
(72)【発明者】
【氏名】田島 亮太
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 英明
(72)【発明者】
【氏名】吉住 健輔
(57)【要約】
【課題】電池等の状態をモニタ可能な半導体装置を提供する。バッテリーモジュール内の複数の電池の個々の状態を簡便に取得する。
【解決手段】電池等の電極に取り付けることのできる半導体装置は、第1の基板と、素子層と、第1乃至第3の導電層を有する。素子層は、第1の回路及び第2の回路を含み、且つ、第1の基板の第1の面側に設けられる。第1の導電層と第2の導電層とは、それぞれ第1の基板の第1の面とは反対側に位置する第2の面側に設けられる。第1の導電層と第1の回路、及び第2の導電層と第1の回路とは、それぞれ第1の基板に設けられた開口を介して電気的に接続される。第3の導電層は、素子層の第1の基板とは反対側に積層して設けられ、且つ、第2の回路と電気的に接続される。第1の導電層と第2の導電層とは、それぞれ端子として機能し、第3の導電層は、アンテナとして機能する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、素子層と、第1の導電層と、第2の導電層と、第3の導電層と、を有し、
前記素子層は、第1の回路及び第2の回路を含み、且つ、前記第1の基板の第1の面側に設けられ、
前記第1の導電層と前記第2の導電層とは、それぞれ前記第1の基板の前記第1の面とは反対側に位置する第2の面側に設けられ、
前記第1の導電層と前記第1の回路、及び前記第2の導電層と前記第1の回路とは、それぞれ前記第1の基板に設けられた開口を介して電気的に接続され、
前記第3の導電層は、前記素子層の前記第1の基板とは反対側に積層して設けられ、且つ、前記第2の回路と電気的に接続され、
前記第1の導電層と前記第2の導電層とは、それぞれ端子として機能し、
前記第3の導電層は、アンテナとして機能する、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置に関する。本発明の一態様は、電池を有するバッテリーユニット、またはバッテリーモジュールに関する。本発明の一態様は、電池の制御方法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置、入出力装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。トランジスタ、半導体回路、演算装置、記憶装置等は半導体装置の一態様である。また、撮像装置、電気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、又は、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車などに用いられている。
【0005】
携帯情報端末や電気自動車などにおいては、直列接続または並列接続された複数の二次電池と、保護回路とを有する、バッテリーモジュール(電池パック、組電池ともよぶ)が使用される場合が多い。バッテリーモジュールとは、二次電池の取り扱いを容易にするため、複数個の二次電池を、所定の回路と共に容器(金属缶やフィルム外装体など)の内部に収納したものを指す。バッテリーモジュールには、動作状態を管理するために、ECU(Electronic Control Unit)が設けられる。
【0006】
バッテリーモジュールを構成する複数の二次電池が、個々の特性にバラツキがあると、充電時に過充電になる二次電池や、満充電まで充電されない二次電池が生じ、全体として、みかけの容量が減少する。
【0007】
また一つのバッテリーモジュールでは、複数個の二次電池をまとめて充電、または放電を行っているため、個々の二次電池の劣化速度が異なる場合、特性のばらつきが増大する。したがって、このようなバッテリーモジュールは、充放電を繰り返すことで寿命が短くなるという悪循環が生じてしまう。
【0008】
特許文献1は、電池セルの容量に従って、トランジスタの導通状態を制御して、放電する電池セルから充電する電池セルへの充放電を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多くの場合、バッテリーモジュールに設けられるECUなどの制御回路は、プリント基板に実装され、複数の二次電池と配線で接続される。二次電池と配線との接続には、ワイヤーボンディングや溶接、またはネジ留めなどの手法が用いられる場合が多い。そのため、1つのバッテリーモジュールあたりの二次電池の数が多いほど、接点の数が増大し、実装コストが高くなってしまう。また振動や使用温度などの外部環境によって、配線と二次電池の接続が切れてしまうことを防ぐために、接点の強度が求められる。
【0011】
本発明の一態様は、電池等の状態をモニタ可能な半導体装置を提供することを課題の一とする。または、電池等の状態の情報を信頼性高く出力可能な半導体装置を提供することを課題の一とする。または、バッテリーモジュールにおける実装コストの低減、または実装工程の削減を実現することを課題の一とする。または、バッテリーモジュール内の複数の電池の個々の状態を簡便に取得することを課題の一とする。または、軽量なバッテリーモジュールを提供することを課題の一とする。
【0012】
または、本発明の一態様は、新規な半導体装置、新規なバッテリーユニット、または新規なバッテリーモジュールを提供することを課題の一とする。または、信頼性の高い半導体装置、バッテリーユニット、またはバッテリーモジュールを提供することを課題の一とする。
【0013】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、第1の基板と、素子層と、第1の導電層と、第2の導電層と、第3の導電層と、を有する半導体装置である。素子層は、第1の回路及び第2の回路を含み、且つ、第1の基板の第1の面側に設けられる。第1の導電層と第2の導電層とは、それぞれ第1の基板の第1の面とは反対側に位置する第2の面側に設けられる。第1の導電層と第1の回路、及び第2の導電層と第1の回路とは、それぞれ第1の基板に設けられた開口を介して電気的に接続される。第3の導電層は、素子層の第1の基板とは反対側に積層して設けられ、且つ、第2の回路と電気的に接続される。第1の導電層と第2の導電層とは、それぞれ端子として機能し、第3の導電層は、アンテナとして機能する。
【0015】
また、上記において、第2の回路は、第3の導電層を介して無線通信を行う機能を有することが好ましい。
【0016】
また、上記において、第1の回路は、第1の導電層と第2の導電層の間の電圧を検知する機能、第1の導電層と第2の導電層との間に流れる電流を検知する機能、及び温度を検知する機能のうち、少なくとも一を有することが好ましい。
【0017】
また、上記において、第1の基板は、可撓性を有することが好ましい。
【0018】
また、上記において、素子層及び第3の導電層を挟んで、第1の基板と対向する第2の基板を有することが好ましい。このとき、第2の基板は、可撓性を有することが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、上記いずれかの半導体装置と、電池と、を有するバッテリーユニットである。このとき、半導体装置の第1の導電層は、電池の正極端子と接し、第2の導電層は、電池の負極端子と接する。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、上記いずれかの半導体装置と、複数の電池と、を有するバッテリーユニットである。また、複数の電池は、それぞれ直列に接続される。また半導体装置の第1の導電層は、一の電池の正極端子または負極端子と電気的に接続され、第2の導電層は、他の一の電池の正極端子または負極端子と電気的に接続される。
【0021】
また、上記において、複数の電池は、それぞれ円筒型の電池であることが好ましい。このとき、半導体装置の第1の導電層、及び第2の導電層は、それぞれ異なる電池における円筒の外装体の側面に接して設けられることが好ましい。
【0022】
また、本発明の他の一態様は、複数の上記いずれかのバッテリーユニットと、制御装置と、外装体と、を有するバッテリーモジュールである。外装体の内部に、複数のバッテリーユニットと、制御装置が設けられる。制御装置は、アンテナと、無線通信部と、制御部と、を有する。制御部は、無線通信部及びアンテナを介して、複数のバッテリーユニットと無線通信する機能を有する。また、制御部は、ニューラルネットワークを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、電池の状態をモニタ可能な半導体装置を提供できる。または、電池の状態の情報を信頼性高く出力可能な半導体装置を提供できる。または、バッテリーモジュールにおける実装コストの低減、または実装工程の削減を実現することができる。または、バッテリーモジュール内の複数の電池の個々の状態を簡便に取得することができる。
【0024】
または、本発明の一態様は、新規な半導体装置、新規なバッテリーユニット、または新規なバッテリーモジュールを提供できる。または、信頼性の高い半導体装置、バッテリーユニット、またはバッテリーモジュールを提供できる。
【0025】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図6】バッテリーユニット及びバッテリーモジュールの構成例。
【
図7】バッテリーユニット及びバッテリーモジュールの構成例。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0028】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0029】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0030】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0031】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0032】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置、バッテリーユニット、またはバッテリーモジュール等について、図面を参照して説明する。
【0033】
以下で例示する半導体装置は、電池の電圧、電流、または温度などを検知し、無線通信によりその情報を出力する機能を有する半導体装置である。そのため以下で例示する半導体装置は、情報処理装置、または情報通信装置、あるいは無線タグなどとも呼ぶことができる。
【0034】
本発明の一態様の半導体装置は、電圧、電流、または温度などの検知回路として機能する第1の回路と、無線通信を行う第2の回路と、を含む素子層を有する。素子層には、少なくとも一以上のトランジスタが設けられている。また、素子層は基板(第1の基板ともいう)上に形成されている。
【0035】
さらに、半導体装置は、基板の裏面側(素子層とは反対側)に、それぞれ端子部として機能する一対の導電層(第1の導電層、第2の導電層ともいう)を有する。端子部は外部接続端子とも言うことができ、例えば電池等の電極に接続するための端子として用いることができる。それぞれの導電層は、基板に設けられた開口を介して素子層の第1の回路と電気的に接続されている。
【0036】
また、半導体装置は、素子層上に、アンテナとして機能する導電層(第3の導電層ともいう)が設けられている。この導電層は、第2の回路と電気的に接続されている。第2の回路は、アンテナを介して外部と無線通信を行うことができる。
【0037】
なお、アンテナを構成する導電層と、端子部を構成する導電層を入れ替えてもよい。すなわち、素子層上に設けられる導電層を端子部として用い、基板の裏面側に設けられる導電層をアンテナとして用いてもよい。この場合、端子部の導電層を第1の回路と接続し、アンテナの導電層を基板に設けられた開口を介して第2の回路と接続すればよい。
【0038】
このような構成の半導体装置は、例えば一対の端子部を電池の正極端子と負極端子にそれぞれ接続することで、電池の電圧や電流を検知し、その情報を無線通信により外部に設けられる制御回路に送信することができる。また、第1の回路が温度を検知するための機能を有する場合、半導体装置を電池に貼り付ける、または電池近傍に配置することで、電池またはその近傍の温度の情報を無線通信により外部の制御装置に送信することができる。半導体装置は、当該制御装置から送信される命令に応じて、電池の充放電を制御する機能を有していてもよい。
【0039】
ここで、素子層が形成される基板には、可撓性を有する基板を適用することが好ましい。これにより、曲げることのできる半導体装置とすることができる。そのため、半導体装置を接続する電池などの部材の形状の自由度が高まり、様々な形状の表面に、半導体装置を貼り付けることができる。さらに、可撓性の基板を用いることで、ガラス基板や半導体基板を用いる場合に比べて、半導体装置を極めて軽量にすることができるため、例えば電池に適用した場合に、半導体装置を取り付けることによる重量の増加を抑えることができる。
【0040】
ここで、一以上の電池に半導体装置を接続した単位構成を、バッテリーユニットと呼ぶことができる。本発明の一態様は、バッテリーユニットごとに、個々の電池の電圧、電流、または温度などの情報を取得し、外部の制御装置に無線出力することが可能となる。
【0041】
そして、外部の制御装置は、制御部として機能する回路や、無線通信部として機能する回路が設けられたプリント基板等と、アンテナと、を有する構成とすることができる。外装体内に、この制御装置と、複数のバッテリーユニットを設けた構成を、バッテリーモジュールと呼ぶことができる。バッテリーモジュールは、各種電子機器や、自動車、または住宅設備などに用いられる設置型の大型蓄電装置等に組み込むことができる。
【0042】
バッテリーモジュール内に、複数のバッテリーユニットを配置することで、あるバッテリーユニットに異常が検知された場合に、バッテリーユニット毎に交換することが可能となる。そのため、バッテリーモジュール単位で電圧や電流、温度などを管理する場合に比べて、電池の交換が容易となり、保守コストを大幅に低減することができる。
【0043】
また、制御装置が有する制御部にニューラルネットワークを適用し、電池の異常検知や、最適な制御方法の導出などを、ニューラルネットワークを用いた推論により実行してもよい。
【0044】
ここで、バッテリーモジュールとして、複数の電池と制御回路とを配線により接続する構成の場合、異常のある電池を交換する際に、配線の再接続が必要であるため、バッテリーモジュールごと交換する必要がある。しかしながら本発明の一態様では、バッテリーユニットと制御回路とは無線で通信するため、バッテリーユニット単位で容易に交換することができる。さらに、ユーザ側での交換も容易となり、保守コストをさらに低減することができる。
【0045】
以下では、より具体的な例について、図面を参照して説明する。
【0046】
[半導体装置の構成例]
図1(A)、(B)に、以下で例示する半導体装置10の外観図の例を示す。
図1(A)は、半導体装置10の斜視図であり、
図1(B)は、
図1(A)の裏面側から見たときの斜視概略図である。また、
図1(C)には、半導体装置10の断面概略図を示している。
【0047】
図1(A)、(B)に示すように、半導体装置10はシート状の形状を有し、一方の面側にアンテナ14を有し、他方の面側に端子13a及び端子13bを有する。
【0048】
また、
図1(C)に示すように、半導体装置10は、基板11と、素子層12と、端子13a及び端子13bと、アンテナ14と、を有する。素子層12は基板11上に設けられ、後述する第1の回路及び第2の回路を有する。アンテナ14は、素子層12上に設けられている。端子13a及び端子13bは、基板11の素子層12とは反対側の面上に設けられている。素子層12と、端子13aまたは端子13bとは、それぞれ基板11に設けられた開口に位置する接続部15によって電気的に接続されている。
【0049】
また、アンテナ14及び素子層12を覆って、保護層16が設けられていてもよい。
【0050】
また、
図2に示すように、アンテナ14及び素子層12を覆って、基板17を設けてもよい。このとき、保護層16は接着層として用いることができる。
【0051】
基板11(及び基板17)には、可撓性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、有機樹脂を含むフィルム状の基板を用いることができる。または、可撓性を有する程度に薄いガラス基板や金属基板を用いてもよい。なお、半導体装置10を被検知体に取り付ける際、半導体装置10を取り付ける部分が平坦面を有する場合には、可撓性に乏しい基板材料を用いてもよい。
【0052】
半導体装置10は、端子13a及び端子13bを被検知体の電極などに接続することで、被検知体の状態を電気的にモニタする、モニタ装置としての機能と、モニタした情報を、アンテナ14を介して無線により外部の装置に送信する、情報通信装置としての機能の2つの機能を有する。さらに半導体装置10は、外部の装置から無線で送信される命令に応じて、被検知体の動作を制御する、制御装置としての機能を有していてもよい。
【0053】
ここでは被検知体の一例として、電池に半導体装置10を適用した場合の例について説明する。半導体装置10は、電池の状態を検知し、その情報を外部に出力することができる。なお、被検知体としては電池に限られず、様々な電子デバイス、非電子デバイス、部品、部材、装置、建築物、乗り物など、あらゆるものに適用することができ、その状態管理や制御に用いることができる。また、人体に貼り付けることで、体温や脈拍、血流量、血中酸素濃度など、様々な生体情報を取得し、その情報を外部の機器に出力する装置としても用いることができる。
【0054】
[バッテリーユニットの構成例]
以下では、電池と上記半導体装置10とを組み合わせることで構成されるバッテリーユニットの例について説明する。ここでは簡単のため、半導体装置10が電池の電圧をモニタする機能を有する場合について説明する。
【0055】
図3(A1)には、1つの電池30と、1つの半導体装置10とを有するバッテリーユニット20pの例を示している。
【0056】
バッテリーユニット20pが有する電池30は、円筒型の電池であり、円筒状の負極端子31nと、凸状の正極端子31pとを有する。負極端子31nは外装体として機能する。
【0057】
半導体装置10は、一方の端子13aが正極端子31pと接し、他方の端子13bが、負極端子31nである外装体の側面に接するように、固定されている。半導体装置10の端子と、電池30の端子とは、導電テープ、導電性接着剤、導電ペーストなどにより接合されている。半導体装置10の電池30への固定方法は特に限られず、粘着テープ、接着テープまたは両面テープなどで貼りあわされていてもよいし、半導体装置10と電池30の外側に、絶縁性の外装フィルムを巻きつけてもよい。
【0058】
図3(A2)には、バッテリーユニット20pの等価回路を示している。半導体装置10は、電池30に並列接続されており、電池30の正極-負極間の電圧Vをモニタすることができる。
【0059】
図3(B1)には、2つの電池(電池30a、電池30b)と、1つの半導体装置10とを有するバッテリーユニット20の例を示している。
【0060】
電池30aと電池30bとは、直列に接続されている。半導体装置10は、2つの電池の外装体を横断するように固定されている。さらに、半導体装置10の一方の端子13aは電池30aの負極端子31nと接続され、他方の端子13bは電池30bの負極端子31nと接続されている。
【0061】
図3(B2)に、バッテリーユニット20の等価回路を示している。半導体装置10は、2つの電池のうちマイナス側に位置する電池30bに並列接続されることとなり、電池30bの電圧V
2をモニタすることができる。ここで、電池30aの電圧(電圧V
1ともいう)は、直列接続された2つの電池の電圧V
Uから、電圧V
2を差し引くことにより見積もることができる。これにより、1つの半導体装置10で電池30aと電池30bのそれぞれの電圧の状態をモニタすることが可能となる。
【0062】
図3(C1)には、3つの電池(電池30a、電池30b、電池30c)と、2つの半導体装置(半導体装置10a、半導体装置10b)とを有するバッテリーユニット20aの例を示している。
【0063】
電池30a、電池30b、及び電池30cは、この順に直列に接続されている。半導体装置10aは、電池30aと電池30bのそれぞれの外装体を横断するように固定され、半導体装置10bは、電池30bと電池30cのそれぞれの外装体を横断するように固定されている。
【0064】
さらに、半導体装置10aは、端子13aが電池30aの負極端子31nと接続され、端子13bが電池30bの負極端子31nと接続されている。半導体装置10bは、端子13aが電池30bの負極端子31nと接続され、端子13bが電池30cの負極端子31nと接続されている。
【0065】
図3(C2)に、バッテリーユニット20aの等価回路を示している。半導体装置10aは、電池30bに並列に接続され、電池30bの電圧V
2をモニタすることができる。一方、半導体装置10bは、電池30cに並列に接続され、電池30bの電圧V
3をモニタすることができる。ここで、電池30aの電圧(電圧V
1)は、直列接続された3つの電池の電圧V
Uから、電圧V
2及び電圧V
3を差し引くことにより見積もることができる。
【0066】
図3(D1)には、バッテリーユニット20aとは接続方法を異ならせた3つの電池を有するバッテリーユニット20bを示している。バッテリーユニット20bは、半導体装置10cと半導体装置10dを有する。
【0067】
半導体装置10cは、電池30aと電池30bのそれぞれの外装体を横断するように固定されている。一方、半導体装置10dは、電池30a、電池30b、及び電池30cのそれぞれの外装体を横断するように固定されている。
【0068】
半導体装置10cは、端子13aが電池30aの負極端子31nと接続され、端子13bが電池30bの負極端子31nと接続されている。半導体装置10dは、端子13aが電池30aの負極端子31nと接続され、端子13bが電池30cの負極端子31nと接続されている。
【0069】
図3(D2)に、バッテリーユニット20bの等価回路を示している。半導体装置10cは、電池30bに並列に接続され、電池30bの電圧V
2をモニタすることができる。一方、半導体装置10dは、直列接続された電池30b及び電池30cに対して並列に接続されており、電池30bの電圧V
2と、電池30cの電圧V
3の和(V
2+V
3)をモニタすることができる。電池30cの電圧V
3は、半導体装置10dでモニタされた電圧(V
2+V
3)から、半導体装置10cでモニタされた電圧V
2を差し引くことで見積もることができる。また、電池30aの電圧(電圧V
1)は、直列接続された3つの電池の電圧V
Uから、半導体装置10dでモニタされた電圧(V
2+V
3)を差し引くことで見積もることができる。
【0070】
ここで示したバッテリーユニットは、半導体装置を用いて各電池の電圧をモニタし、外部に無線通信で出力することができる。そのため、バッテリーユニットを複数有するバッテリーモジュールにおいても、個々の電池の状態を管理することができる。また、異常が生じている電池を特定することができるため、バッテリーユニット単位で交換することが可能で、バッテリーモジュールの保守のコストを削減することができる。
【0071】
[バッテリーモジュールの構成例1]
以下では、本発明の一態様の半導体装置と、電池と、これを制御する制御装置と、を有するバッテリーモジュールの構成例について説明する。
【0072】
図4(A)は、バッテリーモジュール20Mの構成を示すブロック図である。バッテリーモジュール20Mは、複数のバッテリーユニット20と、制御装置40と、を有する。制御装置40は、各バッテリーユニット20と個別に無線通信することができる。
【0073】
図4(B)に、より具体的なバッテリーモジュール20Mのブロック図を示している。ここでは簡単のため、半導体装置10と電池30をそれぞれ1つずつ有する、1つのバッテリーユニット20と、1つの制御装置40のブロック図を示している。
【0074】
半導体装置10は、第1の回路50と、第2の回路60とを有する。第1の回路50は、電圧検知回路51と、A-D変換回路55aとを有する。また、第2の回路60は、制御部61と、無線通信部62と、アンテナ63と、を有する。
【0075】
電圧検知回路51は電池30の電圧を検知する回路であり、検知信号をアナログ信号としてA-D変換回路55aに出力する。A-D変換回路55aは、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、第2の回路60の制御部61に出力する。
【0076】
制御部61は、入力された信号を解析し、処理を行うための回路を有する。制御部61は、例えば演算回路、論理回路、記憶回路等を有する構成とすることができる。また制御部61が有する記憶回路には、半導体装置10の固有番号(ID)が格納されていてもよい。
【0077】
無線通信部62は、アンテナ63を介して制御装置40から入力される信号を復調し、復調信号を生成する機能と、制御部61から入力される信号を変調し、アンテナ63に出力する信号を生成する機能を有する。無線通信部62は、例えば整流回路、復調回路、変調回路、A-D変換回路、D-A変換回路等のアナログ回路を有する構成とすることができる。
【0078】
制御部61は、制御装置40からの命令に応じて、第1の回路50を電池30の電圧の情報を取得するように制御する。また、第1の回路50から入力される電圧の情報を含む信号を生成し、無線通信部62に出力することができる。
【0079】
制御装置40は、制御部41と、無線通信部42と、アンテナ43と、を有する。無線通信部42は、上記無線通信部62と同様の構成を有する。
【0080】
制御部41は、バッテリーユニット20から入力される情報に基づいて、過充電及び過放電の監視、過電流の監視、電池劣化状態の管理、SOC(State Of Charge:残存容量率)の算出、故障検出の制御などを行うバッテリマネージメントユニット(BMU)を実現する制御回路等を設けることができる。
【0081】
また制御部41は、制御回路として、上記の他、CPU、GPUなどの演算回路、記憶回路などを有していてもよい。特に、酸化物半導体が適用されたトランジスタを有する積和演算回路を備えることが好ましい。
【0082】
また、制御部41は、ニューラルネットワークNNを有していてもよい。複数のバッテリーユニット20から入力される情報に基づいてニューラルネットワークNNを用いた推論を実行することにより、例えばバッテリーユニット20や、これが有する電池30の異常検知の精度を高めることができる。
【0083】
制御部41に入力される情報としてアナログデータを用いた場合、ニューラルネットワークNNは、アナログ演算を行う機能を有することが好ましい。例えば、ニューラルネットワークNNが積和演算回路を有し、該積和演算回路がアナログ演算を行う機能を有することが好ましい。ニューラルネットワークNNがアナログ演算を行う機能を有する場合において、ニューラルネットワークNNを構成する回路の面積を縮小できる場合がある。例えばアナログデジタル変換回路(A-D変換回路)が不要となり、制御装置40の回路面積を縮小できる場合がある。
【0084】
図示しないが、制御装置40は各バッテリーユニット20の正極端子及び負極端子に接続され、各バッテリーユニットへの充放電を制御する機能を有していることが好ましい。
【0085】
ここで、半導体装置10を駆動するための電源電圧は、これが接続される電池30から供給されていてもよい。または、制御装置40から入力される無線信号の搬送波から電源電圧を生成する構成としてもよい。このとき、第2の回路60は、整流回路や、レギュレータ回路(定電圧回路)、リセット回路などを有する構成とすることができる。
【0086】
図4(C)には、第1の回路50が、さらに電流検知回路52と、A-D変換回路55bを有する例を示している。電流検知回路52は、電池30に流れる電流を検知し、その情報をアナログ信号としてA-D変換回路55bに出力する機能を有する。
【0087】
図5(A)には、第1の回路50が、さらに温度センサ53と、A-D変換回路55cを有する例を示している。温度センサ53を電池30に接して、またはその近傍に配置することで、制御装置40は、個々のバッテリーユニット20の温度情報を取得することができる。
【0088】
図5(B)では、第1の回路50が、さらにバランス回路54を有する例を示している。バランス回路54は、複数の電池30の間で電荷のやり取りを行い、各電池30の充電残量のバランスを制御する回路である。例えば電池特性のばらつきなどにより、1つのバッテリーユニット20内の複数の電池30間で充電残量に差が生じる場合に、バランス回路54が当該複数の電池30間で充放電を行い、充電残量の均一化を図ることができる。例えば、制御装置40は、入力される各電池30の電圧などの情報に基づいて、バランス回路54を駆動させる命令をバッテリーユニット20に送信することができる。
【0089】
ここで、上記では、第1の回路50は、A-D変換回路55a等により、デジタル信号を制御部61に出力する構成としたが、制御部61がアナログ信号を処理する機能を有する場合、第1の回路50は、各A-D変換回路を設けない構成としてもよい。
【0090】
[バッテリーモジュールの構成例2]
以下では、バッテリーモジュールのより具体的な構成例について説明する。
【0091】
〔構成例1〕
図6(A)には、円筒型の電池30a及び電池30b、ならびに半導体装置10を有するバッテリーユニット20の外観図を示す。また、
図6(B)には、6つのバッテリーユニット20を有するバッテリーモジュール20Mの外観図を示している。
【0092】
バッテリーユニット20は、導電部材34によって2つの電池が直列に接続されている。電池30aの正極端子、及び電池30bの負極端子には、それぞれリード線33が接合されている。また、半導体装置10は、2つの電池の外装体に巻きつけるように固定されている。半導体装置10のアンテナ14は、電池30aの側面に沿って配置されている。また図示しないが、半導体装置10の端子13aは電池30aの外装体に、端子13bは電池30bの外装体に、それぞれ電気的に接続されている。
【0093】
バッテリーモジュール20Mは、外装体21a、外装体21b、プリント基板22、IC23、アンテナ24、コネクタ配線25、一対の導電部材(導電部材26p、26n)、一対の配線(配線27p、27n)等を有する。なお、
図6(B)において、外装体21aと外装体21bは、輪郭のみ破線で示している。
【0094】
バッテリーモジュール20Mは、2つの電池が直列に接続されたバッテリーユニット20を、6つ並列に接続した構成となっている。片側6つの電池30の正極端子31pと、導電部材26pとは、それぞれリード33によって接合されている。また、他方の片側6つの電池30の負極端子31nと導電部材26nとは、それぞれリード33によって接合されている。導電部材26p、導電部材26nは、それぞれ配線27p、配線27nと電気的に接続されている。配線27p及び配線27nは、それぞれ外装体21bに設けられた孔から外部に取り出されている。
【0095】
プリント基板22には、IC23が実装されている。IC23は、上記制御装置40の制御部41や、無線通信部42等に相当する。なお、異なる機能の複数のICを実装してもよい。プリント基板22と、アンテナ24が設けられる基板(破線で示す)とは、コネクタ配線25により接続されている。
【0096】
アンテナ24は、各バッテリーユニット20のアンテナ14と対向するように、外装体21aに固定して設けられている。
【0097】
〔構成例2〕
図7(A)には、箱型の電池30dと、半導体装置10を有するバッテリーユニット20の外観図を示す。また、
図7(B)には、4つのバッテリーユニット20を有するバッテリーモジュール20Mの外観図を示している。
図7(B)に示すバッテリーモジュール20Mは、4つの電池30dが直列に接続された構成を有する。
【0098】
バッテリーユニット20は、外装体35の上部に、正極端子31pと負極端子31nが設けられている。また、正極端子31pと負極端子31nには、それぞれねじ切り加工が施された接続端子36pと接続端子36nが設けられている。
【0099】
半導体装置10は、正極端子31pと負極端子31nとを横断するように固定されている。半導体装置10のアンテナ14はバッテリーユニット20の上方に位置している。また図示しないが、半導体装置10の端子13aは正極端子31pに、端子13bは負極端子31nに、それぞれ電気的に接続されている。
【0100】
図7(B)に示すバッテリーモジュール20Mは、外装体21a、外装体21b、プリント基板22、IC23、アンテナ24、コネクタ配線25、導電部材26、配線27p、配線27n等を有する。導電部材26は、2つの電池30dの異なる極性の接続端子にネジ留めされ、これらを電気的に接続している。配線27p、配線27nはそれぞれ電池30dの接続端子にネジ留めされ、電気的に接続されている。
【0101】
アンテナ24が設けられた基板は、4つのバッテリーユニット20のアンテナ14と対向するように、外装体21b側に設けられている。アンテナ24が設けられた基板は、コネクタ配線25を介してプリント基板22と電気的に接続されている。
【0102】
図7(B)に示すバッテリーモジュール20Mはバッテリーユニット20あたりの容量を大きくできるため、家庭用の蓄電設備や無停電電源装置などの設置型の蓄電装置、または電気自動車、ハイブリッド自動車などの自動車に好適に用いることができる。
【0103】
[半導体装置の構成例2]
以下では、半導体装置10のより具体的な構成例と、作製方法例について図面を参照して説明する。
【0104】
〔構成例〕
図8(A)に、
図2で例示した半導体装置10の断面概略図を示す。
図8(A)では、半導体装置10の接続部15を含む領域、第1の回路50を含む領域、及び第2の回路60を含む領域における断面概略図を示している。
図8(A)では、第1の回路50、第2の回路60として、それぞれトランジスタ80a、トランジスタ80bが設けられている例を示している。
【0105】
図8(A)で例示した半導体装置10は、基板11、基板17、トランジスタ80a、トランジスタ80b、複数の導電層88、導電層89等を有する。さらに、絶縁層91、絶縁層92、絶縁層93、保護層16、接着層90等を有する。なお、
図8(A)において、基板17を除いた構成が、
図1(C)に示す半導体装置10に対応する。
【0106】
複数の導電層88はそれぞれ端子(外部接続端子)として機能し、
図2等における端子13aまたは端子13bに相当する。また、導電層89はアンテナとして機能し、
図2等におけるアンテナ14に相当する。
【0107】
基板11は、接着層90を介して絶縁層91の一方の面に貼りあわされている。絶縁層91の他方の面上には、トランジスタ80a、トランジスタ80b等が設けられている。また、トランジスタ80a、トランジスタ80b等を覆って、絶縁層93が設けられている。
【0108】
トランジスタ80a、トランジスタ80bはそれぞれ、半導体層81、ゲート絶縁層として機能する絶縁層82、ゲート電極として機能する導電層83、並びに、ソース電極及びドレイン電極として機能する、一対の導電層(導電層84a、導電層84b)を有する。
【0109】
図8(A)で示したトランジスタ80a及びトランジスタ80bはそれぞれ、半導体層81上にゲート電極を有する、いわゆるトップゲート型のトランジスタである。半導体層81の、導電層83と重畳する部分はチャネル形成領域として機能する。また半導体層81の、導電層84aまたは導電層84bと接する部分は、低抵抗領域として機能する。
【0110】
アンテナとして機能する導電層89は、絶縁層93上に設けられている。導電層89は、絶縁層93に設けられた開口を介して、トランジスタ80bの導電層84bと電気的に接続されている。
【0111】
端子として機能する導電層88は、基板11の裏面側に設けられている。接続部15において、導電層84cと導電層88とが電気的に接続されている。導電層84cは、導電層84a等と同一の導電膜を加工して得られた配線である。また、導電層84cのうち、絶縁層92及び絶縁層91に設けられた開口を覆って設けられる部分が、導電層88との接触面として機能する。また、導電層84cの当該接触面と重なる領域において、接着層90と基板11は部分的に開口されており、導電層88は当該開口を介して、導電層84cと電気的に接続されている。
【0112】
図8(A)において、絶縁層91から絶縁層93までの積層構造が、上記素子層12に相当する。半導体装置10は、素子層12を挟んで一方にアンテナとして機能する導電層89が、他方に端子として機能する導電層88が、それぞれ設けられる構成となっている。端子とアンテナを背中合わせに有することで、これらを同じ面側に設けた場合に比べて、半導体装置10の小型化が容易となる上に、無線通信の応答性を大幅に高めることができる。
【0113】
また、基板11として可撓性を有する基板を用いることで、半導体装置10を被検知体の曲面に沿って貼り付けることができる。これにより、被検知体の形状や、半導体装置10を貼り付ける位置などの自由度が高まり、より利便性、汎用性を高めることができる。また半導体装置10自体を軽量化することが容易であるため、モバイル用途や、生体情報端末機器などにも適している。
【0114】
図8(B)には、トランジスタ80a及びトランジスタ80bの構成が
図8(A)とは異なる場合の例を示している。
【0115】
トランジスタ80a及びトランジスタ80bは、半導体層81と絶縁層91との間に、絶縁層86を有する。また、絶縁層86と絶縁層91との間に、半導体層81及び導電層83と重なる導電層85が設けられている。導電層85は第2のゲート電極として機能し、絶縁層86の一部は第2のゲート絶縁層として機能する。
【0116】
例えば、一方のゲート電極に所定の電位を与えることで、他方のゲート電極でトランジスタを駆動した場合のしきい値電圧を制御することができる。また、一対のゲート電極に同じ電位を与えてトランジスタを駆動することにより、トランジスタが流すことのできる電流(オン電流ともいう)を増大させることができる。
【0117】
また、接続部15において、導電層85と同一の導電膜を加工して得られた導電層85aと導電層88とが電気的に接続されている。また導電層85aは、絶縁層86及び絶縁層92に設けられた開口を介して、導電層84cと電気的に接続されている。
【0118】
図8(A)、(B)で例示したトランジスタ80a及びトランジスタ80bには、チャネルが形成される半導体層81に、シリコン、ゲルマニウムまたは酸化物半導体などの半導体材料を用いることができる。
【0119】
シリコンとしては、アモルファス(非晶質)シリコンを用いてもよいが、単結晶シリコン、多結晶シリコン等の結晶性シリコンを用いると、信頼性が高く、且つ大きな電流を流すことのできるトランジスタとすることができ、好ましい。
【0120】
特に、トランジスタ80a及びトランジスタ80bには、酸化物半導体(半導体特性を有する金属酸化物)が適用されたトランジスタを用いることが好ましい。特に、結晶性を有する酸化物半導体を用いると、信頼性が高く、且つ高い電界効果移動度が実現されたトランジスタとすることができる。また特に、キャリア濃度が十分に低減された酸化物半導体を用いることで、オフ状態におけるリーク電流(オフ電流)が極めて低いトランジスタを実現できるため、半導体装置10の待機電力を低減でき好ましい。
【0121】
〔作製方法例〕
以下では、半導体装置の作製方法の例として、
図8(B)に示す半導体装置10を例に挙げて説明する。
【0122】
図9~12に示す各図は、以下で説明する作製方法に係る、工程の各段階における断面概略図である。
【0123】
なお、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulse Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成することができる。CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法や、熱CVD法などがある。また、熱CVD法のひとつに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0124】
また、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等の方法により形成することができる。
【0125】
また、半導体装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いて加工することができる。それ以外に、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0126】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。一つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう一つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0127】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外光(EUV:Extreme Ultra-violet)やX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0128】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0129】
まず、支持基板71を準備し、支持基板71上に剥離層72と、絶縁層91とを積層して形成する(
図9(A))。
【0130】
支持基板71としては、装置内または装置間における搬送が容易な程度に剛性を有する基板を用いることができる。また、作製工程にかかる熱に対して耐熱性を有する基板を用いる。例えば、半導体基板、金属基板、またはガラス基板などの絶縁性基板を用いることができる。例えば、厚さ0.3mm以上1mm以下のガラス基板を用いることができる。
【0131】
剥離層72及び絶縁層91に用いる材料としては、剥離層72と絶縁層91の界面、または剥離層72中で剥離が生じるような材料を選択することができる。
【0132】
例えば、剥離層72としてタングステンなどの高融点金属材料を含む層と、当該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、絶縁層91として、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどの無機絶縁材料の層を積層して用いることができる。剥離層72に高融点金属材料を用いると、その後の工程において、高い温度での処理が可能となるため、材料や形成方法の選択の自由度が高まるため好ましい。
【0133】
剥離層72として、タングステンと酸化タングステンの積層構造を用いた場合では、タングステンと酸化タングステンの界面、酸化タングステン中、または酸化タングステンと絶縁層91の界面で剥離することができる。
【0134】
または剥離層72として、有機樹脂を用い、支持基板71と剥離層72との界面、または剥離層72中、または剥離層72と絶縁層91の界面で剥離する構成としてもよい。
【0135】
剥離層72としては、代表的にはポリイミド樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂は、耐熱性に優れるため好ましい。なお、剥離層72としては、このほかにアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。
【0136】
有機樹脂を含む剥離層72は、まずスピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等の方法により、樹脂前駆体と溶媒の混合材料を支持基板71上に形成する。その後、加熱処理を行うことにより、溶媒等を除去しつつ、材料を硬化させ、有機樹脂を含む剥離層72を形成することができる。
【0137】
例えば、剥離層72にポリイミドを用いる場合には、脱水によりイミド結合が生じる樹脂前駆体を用いることができる。または、可溶性のポリイミド樹脂を含む材料を用いてもよい。
【0138】
剥離層72に有機樹脂を用いる場合、感光性、または非感光性のいずれの樹脂を用いてもよい。感光性のポリイミドは、平坦化膜等に好適に用いられる材料であるため、形成装置や材料を共有することができる。そのため本発明の一態様の構成を実現するために新たな装置や材料を必要としない。また、感光性の樹脂材料を用いることにより、露光及び現像処理を施すことで、剥離層72を加工することが可能となる。例えば、開口を形成することや、不要な部分を除去することができる。さらに露光方法や露光条件を最適化することで、表面に凹凸形状を形成することも可能となる。例えば多重露光技術や、ハーフトーンマスクやグレートーンマスクを用いた露光技術などを用いればよい。
【0139】
剥離層72に有機樹脂を用いた場合、剥離層72を局所的に加熱することにより、剥離性を向上させることができる場合がある。例えば、加熱方法としてレーザ光を照射することが挙げられる。このとき、レーザ光に線状のレーザを用い、これを走査することにより、レーザ光を照射することが好ましい。これにより、支持基板の面積を大きくした際の工程時間を短縮することができる。レーザ光としては、波長308nmのエキシマレーザを好適に用いることができる。
【0140】
レーザ光などの光を照射することにより剥離性を向上させる場合、剥離層72と重ねて発熱層を設けてもよい。当該発熱層は、光を吸収して発熱する機能を有する層である。発熱層は、支持基板71と剥離層72との間に設けることが好ましいが、剥離層72上に配置してもよい。発熱層としては、レーザ光等に用いる光の一部を吸収しうる材料を用いることができる。例えば、レーザ光として308nmのエキシマレーザを用いる場合、発熱層としては、金属や酸化物等を用いることができる。例えば、チタンやタングステンなどの金属、酸化チタン、酸化タングステン、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物などの酸化物導電体材料、または、インジウムを含む酸化物半導体材料などを用いることができる。
【0141】
また、剥離層72に接して、酸素、水素、または水などを含む層を設け、加熱処理により剥離層72中、または剥離層72と当該層との界面に酸素、水素、または水などを供給することにより、剥離性を向上させてもよい。または、支持基板71に酸素、水素または水などを供給してもよい。または、剥離層72に酸素、水素、または水などを供給してもよい。酸素、水素または水などを含む雰囲気下で加熱処理やプラズマ処理を行うことで、これらを支持基板71や剥離層72に供給することができる。これにより、レーザ装置等を用いる必要が無いため、より低コストで半導体装置を作製することができる。
【0142】
また、剥離後に剥離層72の一部が残存する場合がある。残存した剥離層72が導電性を有する場合には、電気的なショートを引き起こす恐れがあるためこれをエッチングにより除去することが好ましい。なお、剥離層72をそのまま残存させておいてもよい。
【0143】
続いて、絶縁層91の一部をエッチングにより除去し、剥離層72を露出させる(
図9(B))。
【0144】
続いて、絶縁層91上に導電膜85fを成膜する(
図9(C))。導電膜85fの一部は、上記絶縁層91に設けた開口を覆って設けられる。
【0145】
続いて、導電膜85fを加工し、導電層85及び導電層85aを形成する(
図9(D))。導電層85及び導電層85aは、導電膜85f上にレジストマスクを形成し、導電膜85fの一部をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成することができる。
【0146】
続いて、絶縁層91、導電層85、及び導電層85aを覆って、絶縁層86を形成する(
図9(E))。
【0147】
続いて、絶縁層86上に半導体層81を形成する(
図9(F))。半導体層81は、絶縁層86上に半導体膜(図示しない)を成膜し、半導体膜上にレジストマスクを形成し、当該半導体膜の一部をエッチングにより除去した後に、レジストマスクを除去することにより形成できる。
【0148】
続いて、半導体層81上に、絶縁層82と導電層83とを形成する(
図10(A))。絶縁層82及び導電層83は、例えば半導体層81を覆って絶縁膜と導電膜とを積層して成膜し、導電膜上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて導電膜と絶縁膜とをエッチングすることにより形成することができる。これにより、上面形状が概略一致した絶縁層82と導電層83を形成することができる。
【0149】
なお、本明細書等において「上面形状が概略一致」とは、積層した層と層との間で少なくとも輪郭の一部が重なることをいう。例えば、上層と下層とが、同一のマスクパターン、または一部が同一のマスクパターンにより加工された場合を含む。ただし、厳密には輪郭が重なり合わず、上層が下層の内側に位置することや、上層が下層の外側に位置することもあり、この場合も「上面形状が概略一致」という。
【0150】
なお、導電層83となる導電膜のみをエッチングし、絶縁層82となる絶縁膜をエッチングしない構成としてもよい。このとき、例えば絶縁層82は基板全体に亘って設けられ、半導体層81の端部や、絶縁層86を覆って設けられる。
【0151】
続いて、絶縁層86、半導体層81、絶縁層82、導電層83等を覆って、絶縁層92を形成する(
図10(B))。その後、絶縁層92の一部をエッチングすることにより、半導体層81に達する開口を形成する。このとき同時に、導電層85a上に位置する絶縁層92及び絶縁層86の一部をエッチングし、導電層85aに達する開口を形成する。
【0152】
続いて、導電膜を成膜し、その一部をエッチングにより除去することにより、導電層84a、導電層84b、及び導電層84c等を形成する(
図10(C))。
【0153】
この段階で、トランジスタ80a及びトランジスタ80bを形成することができる。
【0154】
続いて、トランジスタ80a及びトランジスタ80b等を覆って、トランジスタ80bの導電層84bに達する開口を有する絶縁層93を形成する(
図10(D))。絶縁層93に感光性の材料を用いることで、フォトリソグラフィ法等により開口を形成することができる。特に絶縁層93に有機絶縁膜を用いると、その表面の平坦性が高まるため好ましい。なお、開口を有さない絶縁層93を形成した後に、レジストマスクを用いてエッチングにより絶縁層93に開口を形成してもよい。
【0155】
続いて、絶縁層93の開口を介して導電層84bと接する導電層89を形成する。導電層89は、導電層83等と同様の方法により形成できる。
【0156】
続いて、接着層として機能する保護層16により、基板17を貼り合せる(
図11(A))。保護層16としては、硬化性の有機樹脂を用いることが好ましい。また、基板17としては、可撓性を有する材料を用いることが好ましい。
【0157】
なお、保護層16のみを設け、基板17を有さない構成としてもよい。
【0158】
続いて、絶縁層91及び導電層85aと、剥離層72との間で剥離することにより、支持基板71及び剥離層72を除去する(
図11(B))。
【0159】
剥離方法としては、機械的な力を加えることや、剥離層をエッチングすること、または液体を滴下する、または液体に含浸させるなどし、剥離界面に液体を浸透させることなどが、一例として挙げられる。または、剥離界面を形成する2層の熱膨張率の違いを利用し、加熱または冷却することにより剥離を行ってもよい。
【0160】
また、剥離性を向上させるための熱処理を行ってもよい。当該熱処理は、絶縁層91を形成した後であればいつでも行うことができるが、剥離を行う直前に行うことが好ましい。加熱処理として、レーザアニールまたはランプアニールなど、瞬間的且つ局所的に加熱できる方法を用いると、トランジスタや配線等が熱により劣化してしまうことを抑制できる。
【0161】
また、剥離を行う前に、剥離界面の一部を露出させる処理を行ってもよい。例えばレーザや鋭利な部材などにより、剥離層72上の絶縁層91の一部を除去する。これにより、絶縁層91が除去された部分を出発点(起点)として、剥離を進行させることができる。
【0162】
剥離を終えた後、剥離層72の一部が残存している場合がある。その場合、残存した剥離層72を洗浄、エッチング、プラズマ処理、または拭き取り処理などにより、除去することが好ましい。特に、剥離層72が導電性を有する場合には、除去することが好ましい。また、導電層85aの表面が酸化等により絶縁化することを防ぐため、剥離層72を除去した後に、還元処理を行うことが好ましい。
【0163】
図11(C)に、支持基板71及び剥離層72を除去し、導電層85aの一部が露出した状態を示している。
【0164】
続いて、接着層90により、絶縁層91と基板11とを貼り合せる(
図12(A))。この時、基板11として、導電層85aの露出した部分と重なる部分が切りかかれた、または開口を有する基板を用いることが好ましい。また、接着層90は、導電層85aが露出した部分に付着しないように形成することが好ましい。
【0165】
その後、基板11の裏面側に、導電層85aと接するように、導電層88を形成する(
図12(B))。
【0166】
以上の工程により、半導体装置10を作製することができる。
図12(B)に示す図は、
図8(B)と同じ図である。
【0167】
以上が半導体装置10の作製方法例の説明である。
【0168】
[付記]
本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介してソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0169】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0170】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0171】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0172】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0173】
本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。
【0174】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。従って、トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、または、十分に低減されたオフ電流が得られるVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0175】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10-13Aであり、Vgsが-0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-19Aであり、Vgsが-0.8Vにおけるドレイン電流が1×10-22Aであるようなnチャネル型トランジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが-0.5Vにおいて、または、Vgsが-0.5V乃至-0.8Vの範囲において、1×10-19A以下であるから、当該トランジスタのオフ電流は1×10-19A以下である、と言う場合がある。当該トランジスタのドレイン電流が1×10-22A以下となるVgsが存在するため、当該トランジスタのオフ電流は1×10-22A以下である、と言う場合がある。
【0176】
また、本明細書等では、チャネル幅Wを有するトランジスタのオフ電流を、チャネル幅Wあたりを流れる電流値で表す場合がある。また、所定のチャネル幅(例えば1μm)あたりを流れる電流値で表す場合がある。後者の場合、オフ電流の単位は、電流/長さの次元を持つ単位(例えば、A/μm)で表される場合がある。
【0177】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、室温、60℃、85℃、95℃、または125℃におけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、室温、60℃、85℃、95℃、125℃、当該トランジスタが含まれる半導体装置の信頼性が保証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0178】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V,3V、3.3V、10V、12V、16V、または20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V,3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含まれる半導体装置の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0179】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0180】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0181】
また、本明細書等において、トランジスタのしきい値電圧とは、トランジスタにチャネルが形成されたときのゲート電圧(Vg)を指す。具体的には、トランジスタのしきい値電圧とは、ゲート電圧(Vg)を横軸に、ドレイン電流(Id)の平方根を縦軸にプロットした曲線(Vg-√Id特性)において、最大傾きである接線を外挿したときの直線と、ドレイン電流(Id)の平方根が0(Idが0A)との交点におけるゲート電圧(Vg)を指す場合がある。あるいは、トランジスタのしきい値電圧とは、チャネル長をL、チャネル幅をWとし、Id[A]×L[μm]/W[μm]の値が1×10-9[A]となるゲート電圧(Vg)を指す場合がある。
【0182】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が十分に低い場合は、「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書等に記載の「半導体」と、「絶縁体」とは、互いに言い換えることが可能な場合がある。
【0183】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が十分に高い場合は、「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書等に記載の「半導体」と、「導電体」とは、互いに言い換えることが可能な場合がある。
【0184】
また、本明細書等において、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍であるとは、In、Ga及びZnの原子数の総和に対するInの比を4としたときに、Gaの比が1以上3以下であり、Znの比が2以上4以下であるとする。また、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍であるとは、In、Ga及びZnの原子数の総和に対するInの比を5としたときに、Gaの比が0.1より大きく2以下であり、Znの比が5以上7以下であるとする。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍であるとは、In、Ga及びZnの原子数の総和に対するInの比を1としたときに、Gaの比が0.1より大きく2以下であり、Znの比が0.1より大きく2以下であるとする。
【0185】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。また、「OS FET」と記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0186】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0187】
また、本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
【0188】
また、本明細書等において、CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0189】
また、本明細書等において、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0190】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0191】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0192】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0193】
金属酸化物の結晶構造の一例について説明する。なお、以下では、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法にて成膜された金属酸化物を一例として説明する。上記ターゲットを用いて、基板温度を100℃以上130℃以下として、スパッタリング法により形成した金属酸化物をsIGZOと呼称し、上記ターゲットを用いて、基板温度を室温(R.T.)として、スパッタリング法により形成した金属酸化物をtIGZOと呼称する。例えば、sIGZOは、nc(nano crystal)及びCAACのいずれか一方または双方の結晶構造を有する。また、tIGZOは、ncの結晶構造を有する。なお、ここでいう室温(R.T.)とは、基板を意図的に加熱しない場合の温度を含む。
【0194】
なお、CAAC構造とは、複数のナノ結晶(最大径が10nm未満である結晶領域)を有する薄膜などの結晶構造の一つであり、各ナノ結晶はc軸が特定の方向に配向し、かつa軸及びb軸は配向性を有さずに、ナノ結晶同士が粒界を形成することなく連続的に連結しているといった特徴を有する結晶構造である。特にCAAC構造を有する薄膜は、各ナノ結晶のc軸が、薄膜の厚さ方向、被形成面の法線方向、または薄膜の表面の法線方向に配向しやすいといった特徴を有する。
【0195】
ここで、結晶学において、単位格子を構成するa軸、b軸、及びc軸の3つの軸(結晶軸)について、特異的な軸をc軸とした単位格子を取ることが一般的である。特に層状構造を有する結晶では、層の面方向に平行な2つの軸をa軸及びb軸とし、層に交差する軸をc軸とすることが一般的である。このような層状構造を有する結晶の代表的な例として、六方晶系に分類されるグラファイトがあり、その単位格子のa軸及びb軸は劈開面に平行であり、c軸は劈開面に直交する。例えばYbFe2O4型の結晶構造をとるInGaZnO4の結晶は六方晶系に分類することができ、その単位格子のa軸及びb軸は層の面方向に平行となり、c軸は層(すなわちa軸及びb軸)に直交する。
【0196】
本実施の形態で例示した構成例、作製方法例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、作製方法例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0197】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0198】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様のバッテリーモジュールにおける、ニューラルネットワークを用いた制御方法の例について説明する。
【0199】
なお、本明細書においてニューラルネットワークとは、生物の神経回路網を模し、学習によってニューロン同士の結合強度を決定し、問題解決能力を持たせるモデル全般を指す。ニューラルネットワークは入力層、中間層(隠れ層ともいう)、出力層を有する。
【0200】
また、本明細書において、ニューラルネットワークについて述べる際に、既にある情報からニューロンとニューロンの結合強度(重み係数とも言う)を決定することを「学習」と呼ぶ場合がある。
【0201】
また、本明細書において、学習によって得られた結合強度を用いてニューラルネットワークを構成し、そこから新たな結論を導くことを「推論」と呼ぶ場合がある。
【0202】
本発明の一態様のニューラルネットワークを用いたシステムは、たとえばチャネル形成領域に酸化物半導体または金属酸化物を用いたトランジスタを用いた回路で実現することができる。
【0203】
また、本発明の一態様のニューラルネットワークを用いたシステムは、ソフトウェアおよびハードウェアにより構成することもできる。このときハードウェアのうちメモリにはチャネル形成領域に酸化物半導体または金属酸化物を用いたトランジスタが搭載されているものを用いてもよいし、他の公知のものを用いてもよい。ソフトウェアのオペレーティングシステムには、Windows(登録商標)、UNIX(登録商標)、macOS(登録商標)等の各種オペレーティングシステムを用いることができる。ソフトウェアのアプリケーションは、Python(登録商標)、Go、Perl、Ruby、Prelog、Visual Basic(登録商標)、C、C++、Swift、Java(登録商標)、.NETなどの各種プログラミング言語で記述できる。また、アプリケーションをChainer(登録商標)(Pythonで利用できる)、Caffe(PythonおよびC++で利用できる)、TensorFlow(C、C++、およびPythonで利用できる)等のフレームワークを使用して作成してもよい。
【0204】
上記実施の形態で例示したバッテリーモジュール20Mは、電池30のパラメータをニューラルネットワークへNN入力し、電池30の状態の解析を行うことができる。
【0205】
電池の内部において、充電及び放電の可逆な反応以外に例えば、電池の安全性を低下させる現象が生じる場合がある。例えば、電解液の分解などの副反応、電極表面への金属析出、等があげられる。これらの現象は、電池の容量を低下させるだけでなく、電池の安全性を低下させる場合がある。
【0206】
また、電池の充放電を行う際、温度上昇を伴う場合があるが、電池の充放電特性は、その温度に依存して変化する。そのため、電池の温度を精密に制御することが重要となる。
【0207】
本発明の一態様のバッテリーモジュールは、電池の充電、及び放電の過程において、例えば、電圧、電流、温度等のパラメータの測定を行うことにより、電池の状態を解析し、電池の状態に応じて電池の動作条件を決定することができる。例えば、充電カーブ、あるいは放電カーブを解析する。ここで充電カーブは、充電過程における電圧または容量の推移等を指す。また放電カーブは、放電過程における電圧または容量等の推移を指す。
【0208】
ニューラルネットワークへの入力パラメータとして、電池に関する測定データを用いることが好ましい。例えば、電池の電流と電圧の組を一定時間ごとに同時にサンプリングして読み込み、所定個数記憶し、入力パラメータとして用いることができる。あるいは入力パラメータとして例えば、時刻と、各時刻における電池の電流と電圧の組のデータと、を用いることができる。ここで電池の電圧は例えば、電池の両端の電位差である。
【0209】
また、入力パラメータとして、電池の容量と電圧の組、を用いることができる。電池の容量は例えば、電池の電流と時間の積で求められる。クーロンカウンタCCを用いて電池の容量を求めてもよい。
【0210】
また入力パラメータとして、電池のSOCを用いてもよい。電池のSOCは例えば、電池の充電容量の絶対値から、放電容量の絶対値を差し引いた値を求め、満充電容量に対する比率として表される。あるいは電池のSOCを、電池の電圧から推測して求めてもよい。
【0211】
電池の充電及び放電では一般的に、電流値の大きさに依存して電圧が変化する。例えば、電池の抵抗による電圧降下が電流値の大きさにより変化する。よって、電流値の大きさと電圧との関係から、電池の抵抗を算出できる場合がある。このように算出される抵抗値を入力パラメータとして用いてもよい。
【0212】
また入力パラメータとして、電池の開路電圧(OCV:open circuit voltage、開放電圧と呼ぶ場合がある)を用いてもよい。電池の開路電圧とは例えば、電池に電流を流さない状態における電池の両端の電位差である。ここで電池に電流を流さない状態とは例えば、電池に負荷を与えない状態、及び電池に充電回路が電気的に接続されない状態を指す。開路電圧と、電池に顕著な電流が流れる状態における電圧と、を比較することにより例えば、電池の抵抗を算出できる場合がある。
【0213】
本発明の一態様のバッテリーモジュールは、あらかじめ学習されたニューラルネットワークを備える制御装置を有し、バッテリーユニット毎に電池の電圧、電流、温度、またはその他の測定値が無線通信により制御装置に入力される。バッテリーモジュールは、ニューラルネットワークにその情報を入力し、推論を実行することにより、特性異常とみなす電池を特定することができる。または、推論を実行することにより、バッテリーユニット毎に、最適な充放電の制御を実行することができる。
【0214】
以下では、本発明の一態様のバッテリーモジュールに用いることのできるニューラルネットワーク、及び積和演算回路の構成例について、図面を参照して説明する。
【0215】
図13(A)に示すように、ニューラルネットワークNNは入力層IL、出力層OL、中間層(隠れ層)HLによって構成することができる。入力層IL、出力層OL、中間層HLはそれぞれ、1又は複数のニューロン(ユニット)を有する。なお、中間層HLは1層であってもよいし2層以上であってもよい。2層以上の中間層HLを有するニューラルネットワークはDNN(ディープニューラルネットワーク)と呼ぶこともでき、ディープニューラルネットワークを用いた学習は深層学習と呼ぶこともできる。
【0216】
入力層ILの各ニューロンには入力データが入力され、中間層HLの各ニューロンには前層又は後層のニューロンの出力信号が入力され、出力層OLの各ニューロンには前層のニューロンの出力信号が入力される。なお、各ニューロンは、前後の層の全てのニューロンと結合されていてもよいし(全結合)、一部のニューロンと結合されていてもよい。
【0217】
図13(B)に、ニューロンによる演算の例を示す。ここでは、ニューロンNと、ニューロンNに信号を出力する前層の2つのニューロンを示している。ニューロンNには、前層のニューロンの出力x
1と、前層のニューロンの出力x
2が入力される。そして、ニューロンNにおいて、出力x
1と重みw
1の乗算結果(x
1w
1)と出力x
2と重みw
2の乗算結果(x
2w
2)の総和x
1w
1+x
2w
2が計算された後、必要に応じてバイアスbが加算され、値a=x
1w
1+x
2w
2+bが得られる。そして、値aは活性化関数hによって変換され、ニューロンNから出力信号y=h(a)が出力される。
【0218】
このように、ニューロンによる演算には、前層のニューロンの出力と重みの積を足し合わせる演算、すなわち積和演算が含まれる(上記のx1w1+x2w2)。この積和演算は、プログラムを用いてソフトウェア上で行ってもよいし、ハードウェアによって行われてもよい。積和演算をハードウェアによって行う場合は、積和演算回路を用いることができる。この積和演算回路としては、デジタル回路を用いてもよいし、アナログ回路を用いてもよい。積和演算回路にアナログ回路を用いる場合、積和演算回路の回路規模の縮小、又は、メモリへのアクセス回数の減少による処理速度の向上及び消費電力の低減を図ることができる。
【0219】
積和演算回路は、チャネル形成領域にシリコン(単結晶シリコンなど)を含むトランジスタ(以下、Siトランジスタともいう)によって構成してもよいし、チャネル形成領域に酸化物半導体を含むトランジスタ(以下、OSトランジスタともいう)によって構成してもよい。特に、OSトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、積和演算回路のメモリを構成するトランジスタとして好適である。なお、SiトランジスタとOSトランジスタの両方を用いて積和演算回路を構成してもよい。以下、積和演算回路の機能を備えた半導体装置の構成例について説明する。
【0220】
<半導体装置の構成例>
図14に、ニューラルネットワークの演算を行う機能を有する半導体装置MACの構成例を示す。半導体装置MACは、ニューロン間の結合強度(重み)に対応する第1のデータと、入力データに対応する第2のデータの積和演算を行う機能を有する。なお、第1のデータ及び第2のデータはそれぞれ、アナログデータ又は多値のデジタルデータ(離散的なデータ)とすることができる。また、半導体装置MACは、積和演算によって得られたデータを活性化関数によって変換する機能を有する。
【0221】
半導体装置MACは、セルアレイCA、電流源回路CS、カレントミラー回路CM、回路WDD、回路WLD、回路CLD、オフセット回路OFST、及び活性化関数回路ACTVを有する。
【0222】
セルアレイCAは、複数のメモリセルMC及び複数のメモリセルMCrefを有する。
図14には、セルアレイCAがm行n列(m,nは1以上の整数)のメモリセルMC(MC[1,1]乃至[m,n])と、m個のメモリセルMCref(MCref[1]乃至[m])を有する構成例を示している。メモリセルMCは、第1のデータを格納する機能を有する。また、メモリセルMCrefは、積和演算に用いられる参照データを格納する機能を有する。なお、参照データはアナログデータ又は多値のデジタルデータとすることができる。
【0223】
メモリセルMC[i,j](iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、配線WL[i]、配線RW[i]、配線WD[j]、及び配線BL[j]と接続されている。また、メモリセルMCref[i]は、配線WL[i]、配線RW[i]、配線WDref、配線BLrefと接続されている。ここで、メモリセルMC[i,j]と配線BL[j]間を流れる電流をIMC[i,j]と表記し、メモリセルMCref[i]と配線BLref間を流れる電流をIMCref[i]と表記する。
【0224】
メモリセルMC及びメモリセルMCrefの具体的な構成例を、
図15に示す。
図15には代表例としてメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]を示しているが、他のメモリセルMC及びメモリセルMCrefにも同様の構成を用いることができる。メモリセルMC及びメモリセルMCrefはそれぞれ、トランジスタTr11、Tr12、容量素子C11を有する。ここでは、トランジスタTr11及びトランジスタTr12がnチャネル型のトランジスタである場合について説明する。
【0225】
メモリセルMCにおいて、トランジスタTr11のゲートは配線WLと接続され、ソース又はドレインの一方はトランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続され、ソース又はドレインの他方は配線WDと接続されている。トランジスタTr12のソース又はドレインの一方は配線BLと接続され、ソース又はドレインの他方は配線VRと接続されている。容量素子C11の第2の電極は、配線RWと接続されている。配線VRは、所定の電位を供給する機能を有する配線である。ここでは一例として、配線VRから低電源電位(接地電位など)が供給される場合について説明する。
【0226】
トランジスタTr11のソース又はドレインの一方、トランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続されたノードを、ノードNMとする。また、メモリセルMC[1,1]、[2,1]のノードNMを、それぞれノードNM[1,1]、[2,1]と表記する。
【0227】
メモリセルMCrefも、メモリセルMCと同様の構成を有する。ただし、メモリセルMCrefは配線WDの代わりに配線WDrefと接続され、配線BLの代わりに配線BLrefと接続されている。また、メモリセルMCref[1]、[2]において、トランジスタTr11のソース又はドレインの一方、トランジスタTr12のゲート、及び容量素子C11の第1の電極と接続されたノードを、それぞれノードNMref[1]、[2]と表記する。
【0228】
ノードNMとノードNMrefはそれぞれ、メモリセルMCとメモリセルMCrefの保持ノードとして機能する。ノードNMには第1のデータが保持され、ノードNMrefには参照データが保持される。また、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]、[2,1]のトランジスタTr12には、それぞれ電流IMC[1,1]、IMC[2,1]が流れる。また、配線BLrefからメモリセルMCref[1]、[2]のトランジスタTr12には、それぞれ電流IMCref[1]、IMCref[2]が流れる。
【0229】
トランジスタTr11は、ノードNM又はノードNMrefの電位を保持する機能を有するため、トランジスタTr11のオフ電流は小さいことが好ましい。そのため、トランジスタTr11としてオフ電流が極めて小さいOSトランジスタを用いることが好ましい。これにより、ノードNM又はノードNMrefの電位の変動を抑えることができ、演算精度の向上を図ることができる。また、ノードNM又はノードNMrefの電位をリフレッシュする動作の頻度を低く抑えることが可能となり、消費電力を削減することができる。
【0230】
トランジスタTr12は特に限定されず、例えばSiトランジスタ又はOSトランジスタなどを用いることができる。トランジスタTr12にOSトランジスタを用いる場合、トランジスタTr11と同じ製造装置を用いて、トランジスタTr12を作製することが可能となり、製造コストを抑制することができる。なお、トランジスタTr12はnチャネル型であってもpチャネル型であってもよい。
【0231】
電流源回路CSは、配線BL[1]乃至[n]及び配線BLrefと接続されている。電流源回路CSは、配線BL[1]乃至[n]及び配線BLrefに電流を供給する機能を有する。なお、配線BL[1]乃至[n]に供給される電流値と配線BLrefに供給される電流値は異なっていてもよい。ここでは、電流源回路CSから配線BL[1]乃至[n]に供給される電流をIC、電流源回路CSから配線BLrefに供給される電流をICrefと表記する。
【0232】
カレントミラー回路CMは、配線IL[1]乃至[n]及び配線ILrefを有する。配線IL[1]乃至[n]はそれぞれ配線BL[1]乃至[n]と接続され、配線ILrefは、配線BLrefと接続されている。ここでは、配線IL[1]乃至[n]と配線BL[1]乃至[n]の接続箇所をノードNP[1]乃至[n]と表記する。また、配線ILrefと配線BLrefの接続箇所をノードNPrefと表記する。
【0233】
カレントミラー回路CMは、ノードNPrefの電位に応じた電流I
CMを配線ILrefに流す機能と、この電流I
CMを配線IL[1]乃至[n]にも流す機能を有する。
図14には、配線BLrefから配線ILrefに電流I
CMが排出され、配線BL[1]乃至[n]から配線IL[1]乃至[n]に電流I
CMが排出される例を示している。また、カレントミラー回路CMから配線BL[1]乃至[n]を介してセルアレイCAに流れる電流を、I
B[1]乃至[n]と表記する。また、カレントミラー回路CMから配線BLrefを介してセルアレイCAに流れる電流を、I
Brefと表記する。
【0234】
回路WDDは、配線WD[1]乃至[n]及び配線WDrefと接続されている。回路WDDは、メモリセルMCに格納される第1のデータに対応する電位を、配線WD[1]乃至[n]に供給する機能を有する。また、回路WDDは、メモリセルMCrefに格納される参照データに対応する電位を、配線WDrefに供給する機能を有する。回路WLDは、配線WL[1]乃至[m]と接続されている。回路WLDは、データの書き込みを行うメモリセルMC又はメモリセルMCrefを選択するための信号を、配線WL[1]乃至[m]に供給する機能を有する。回路CLDは、配線RW[1]乃至[m]と接続されている。回路CLDは、第2のデータに対応する電位を、配線RW[1]乃至[m]に供給する機能を有する。
【0235】
オフセット回路OFSTは、配線BL[1]乃至[n]及び配線OL[1]乃至[n]と接続されている。オフセット回路OFSTは、配線BL[1]乃至[n]からオフセット回路OFSTに流れる電流量、及び/又は、配線BL[1]乃至[n]からオフセット回路OFSTに流れる電流の変化量を検出する機能を有する。また、オフセット回路OFSTは、検出結果を配線OL[1]乃至[n]に出力する機能を有する。なお、オフセット回路OFSTは、検出結果に対応する電流を配線OLに出力してもよいし、検出結果に対応する電流を電圧に変換して配線OLに出力してもよい。セルアレイCAとオフセット回路OFSTの間を流れる電流を、Iα[1]乃至[n]と表記する。
【0236】
オフセット回路OFSTの構成例を
図16に示す。
図16に示すオフセット回路OFSTは、回路OC[1]乃至[n]を有する。また、回路OC[1]乃至[n]はそれぞれ、トランジスタTr21、トランジスタTr22、トランジスタTr23、容量素子C21、及び抵抗素子R1を有する。各素子の接続関係は
図16に示す通りである。なお、容量素子C21の第1の電極及び抵抗素子R1の第1の端子と接続されたノードを、ノードNaとする。また、容量素子C21の第2の電極、トランジスタTr21のソース又はドレインの一方、及びトランジスタTr22のゲートと接続されたノードを、ノードNbとする。
【0237】
配線VrefLは電位Vrefを供給する機能を有し、配線VaLは電位Vaを供給する機能を有し、配線VbLは電位Vbを供給する機能を有する。また、配線VDDLは電位VDDを供給する機能を有し、配線VSSLは電位VSSを供給する機能を有する。ここでは、電位VDDが高電源電位であり、電位VSSが低電源電位である場合について説明する。また、配線RSTは、トランジスタTr21の導通状態を制御するための電位を供給する機能を有する。トランジスタTr22、トランジスタTr23、配線VDDL、配線VSSL、及び配線VbLによって、ソースフォロワ回路が構成される。
【0238】
次に、回路OC[1]乃至[n]の動作例を説明する。なお、ここでは代表例として回路OC[1]の動作例を説明するが、回路OC[2]乃至[n]も同様に動作させることができる。まず、配線BL[1]に第1の電流が流れると、ノードNaの電位は、第1の電流と抵抗素子R1の抵抗値に応じた電位となる。また、このときトランジスタTr21はオン状態であり、ノードNbに電位Vaが供給される。その後、トランジスタTr21はオフ状態となる。
【0239】
次に、配線BL[1]に第2の電流が流れると、ノードNaの電位は、第2の電流と抵抗素子R1の抵抗値に応じた電位に変化する。このときトランジスタTr21はオフ状態であり、ノードNbはフローティング状態となっているため、ノードNaの電位の変化に伴い、ノードNbの電位は容量結合により変化する。ここで、ノードNaの電位の変化をΔVNaとし、容量結合係数を1とすると、ノードNbの電位はVa+ΔVNaとなる。そして、トランジスタTr22のしきい値電圧をVthとすると、配線OL[1]から電位Va+ΔVNa-Vthが出力される。ここで、Va=Vthとすることにより、配線OL[1]から電位ΔVNaを出力することができる。
【0240】
電位ΔVNaは、第1の電流から第2の電流への変化量、抵抗素子R1、及び電位Vrefに応じて定まる。ここで、抵抗素子R1と電位Vrefは既知であるため、電位ΔVNaから配線BLに流れる電流の変化量を求めることができる。
【0241】
上記のようにオフセット回路OFSTによって検出された電流量、及び/又は電流の変化量に対応する信号は、配線OL[1]乃至[n]を介して活性化関数回路ACTVに入力される。
【0242】
活性化関数回路ACTVは、配線OL[1]乃至[n]、及び、配線NIL[1]乃至[n]と接続されている。活性化関数回路ACTVは、オフセット回路OFSTから入力された信号を、あらかじめ定義された活性化関数に従って変換するための演算を行う機能を有する。活性化関数としては、例えば、シグモイド関数、tanh関数、softmax関数、ReLU関数、しきい値関数などを用いることができる。活性化関数回路ACTVによって変換された信号は、出力データとして配線NIL[1]乃至[n]に出力される。
【0243】
<半導体装置の動作例>
上記の半導体装置MACを用いて、第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。以下、積和演算を行う際の半導体装置MACの動作例を説明する。
【0244】
図17に半導体装置MACの動作例のタイミングチャートを示す。
図17には、
図15における配線WL[1]、配線WL[2]、配線WD[1]、配線WDref、ノードNM[1,1]、ノードNM[2,1]、ノードNMref[1]、ノードNMref[2]、配線RW[1]、及び配線RW[2]の電位の推移と、電流I
B[1]-I
α[1]、及び電流I
Brefの値の推移を示している。電流I
B[1]-I
α[1]は、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]、[2,1]に流れる電流の総和に相当する。
【0245】
なお、ここでは代表例として
図15に示すメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]に着目して動作を説明するが、他のメモリセルMC及びメモリセルMCrefも同様に動作させることができる。
【0246】
[第1のデータの格納]
まず、時刻T01-T02において、配線WL[1]の電位がハイレベルとなり、配線WD[1]の電位が接地電位(GND)よりもVPR-VW[1,1]大きい電位となり、配線WDrefの電位が接地電位よりもVPR大きい電位となる。また、配線RW[1]、及び配線RW[2]の電位が基準電位(REFP)となる。なお、電位VW[1,1]はメモリセルMC[1,1]に格納される第1のデータに対応する電位である。また、電位VPRは参照データに対応する電位である。これにより、メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]が有するトランジスタTr11がオン状態となり、ノードNM[1,1]の電位がVPR-VW[1,1]、ノードNMref[1]の電位がVPRとなる。
【0247】
このとき、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[1,1],0は、次の式で表すことができる。ここで、kはトランジスタTr12のチャネル長、チャネル幅、移動度、及びゲート絶縁膜の容量などで決まる定数である。また、VthはトランジスタTr12のしきい値電圧である。
【0248】
IMC[1,1],0=k(VPR-VW[1,1]-Vth)2 (E1)
【0249】
また、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[1],0は、次の式で表すことができる。
【0250】
IMCref[1],0=k(VPR-Vth)2 (E2)
【0251】
次に、時刻T02-T03において、配線WL[1]の電位がローレベルとなる。これにより、メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]が有するトランジスタTr11がオフ状態となり、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位が保持される。
【0252】
なお、前述の通り、トランジスタTr11としてOSトランジスタを用いることが好ましい。これにより、トランジスタTr11のリーク電流を抑えることができ、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位を正確に保持することができる。
【0253】
次に、時刻T03-T04において、配線WL[2]の電位がハイレベルとなり、配線WD[1]の電位が接地電位よりもVPR-VW[2,1]大きい電位となり、配線WDrefの電位が接地電位よりもVPR大きい電位となる。なお、電位VW[2,1]はメモリセルMC[2,1]に格納される第1のデータに対応する電位である。これにより、メモリセルMC[2,1]及びメモリセルMCref[2]が有するトランジスタTr11がオン状態となり、ノードNM[2,1]の電位がVPR-VW[2,1]、ノードNMref[2]の電位がVPRとなる。
【0254】
このとき、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[2,1],0は、次の式で表すことができる。
【0255】
IMC[2,1],0=k(VPR-VW[2,1]-Vth)2 (E3)
【0256】
また、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[2],0は、次の式で表すことができる。
【0257】
IMCref[2],0=k(VPR-Vth)2 (E4)
【0258】
次に、時刻T04-T05において、配線WL[2]の電位がローレベルとなる。これにより、メモリセルMC[2,1]及びメモリセルMCref[2]が有するトランジスタTr11がオフ状態となり、ノードNM[2,1]及びノードNMref[2]の電位が保持される。
【0259】
以上の動作により、メモリセルMC[1,1]、[2,1]に第1のデータが格納され、メモリセルMCref[1]、[2]に参照データが格納される。
【0260】
ここで、時刻T04-T05において、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流を考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流が供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。電流源回路CSから配線BLrefに供給される電流をICref、配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,0とすると、次の式が成り立つ。
【0261】
ICref-ICM,0=IMCref[1],0+IMCref[2],0 (E5)
【0262】
配線BL[1]には、電流源回路CSからの電流が供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。また、配線BL[1]からオフセット回路OFSTに電流が流れる。電流源回路CSから配線BL[1]に供給される電流をIC,0、配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,0とすると、次の式が成り立つ。
【0263】
IC-ICM,0=IMC[1,1],0+IMC[2,1],0+Iα,0 (E6)
【0264】
[第1のデータと第2のデータの積和演算]
次に、時刻T05-T06において、配線RW[1]の電位が基準電位よりもVX[1]大きい電位となる。このとき、メモリセルMC[1,1]、及びメモリセルMCref[1]のそれぞれの容量素子C11には電位VX[1]が供給され、容量結合によりトランジスタTr12のゲートの電位が上昇する。なお、電位Vx[1]はメモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]に供給される第2のデータに対応する電位である。
【0265】
トランジスタTr12のゲートの電位の変化量は、配線RWの電位の変化量に、メモリセルの構成によって決まる容量結合係数を乗じた値となる。容量結合係数は、容量素子C11の容量、トランジスタTr12のゲート容量、及び寄生容量などによって算出される。以下では便宜上、配線RWの電位の変化量とトランジスタTr12のゲートの電位の変化量が同じ、すなわち容量結合係数が1であるとして説明する。実際には、容量結合係数を考慮して電位Vxを決定すればよい。
【0266】
メモリセルMC[1,1]及びメモリセルMCref[1]の容量素子C11に電位VX[1]が供給されると、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位がそれぞれVX[1]上昇する。
【0267】
ここで、時刻T05-T06において、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[1,1],1は、次の式で表すことができる。
【0268】
IMC[1,1],1=k(VPR-VW[1,1]+VX[1]-Vth)2 (E7)
【0269】
すなわち、配線RW[1]に電位VX[1]を供給することにより、配線BL[1]からメモリセルMC[1,1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMC[1,1]=IMC[1,1],1-IMC[1,1],0増加する。
【0270】
また、時刻T05-T06において、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[1],1は、次の式で表すことができる。
【0271】
IMCref[1],1=k(VPR+VX[1]-Vth)2 (E8)
【0272】
すなわち、配線RW[1]に電位VX[1]を供給することにより、配線BLrefからメモリセルMCref[1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMCref[1]=IMCref[1],1-IMCref[1],0増加する。
【0273】
また、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流について考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流ICrefが供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,1とすると、次の式が成り立つ。
【0274】
ICref-ICM,1=IMCref[1],1+IMCref[2],1 (E9)
【0275】
配線BL[1]には、電流源回路CSから電流ICが供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。さらに、配線BL[1]からオフセット回路OFSTにも電流が流れる。配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,1とすると、次の式が成り立つ。
【0276】
IC-ICM,1=IMC[1,1],1+IMC[2,1],1+Iα,1 (E10)
【0277】
そして、式(E1)乃至式(E10)から、電流Iα,0と電流Iα,1の差(差分電流ΔIα)は次の式で表すことができる。
【0278】
ΔIα=Iα,1-Iα,0=2kVW[1,1]VX[1] (E11)
【0279】
このように、差分電流ΔIαは、電位VW[1,1]とVX[1]の積に応じた値となる。
【0280】
その後、時刻T06-T07において、配線RW[1]の電位は接地電位となり、ノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位は時刻T04-T05と同様になる。
【0281】
次に、時刻T07-T08において、配線RW[1]の電位が基準電位よりもVX[1]大きい電位となり、配線RW[2]の電位が基準電位よりもVX[2]大きい電位となる。これにより、メモリセルMC[1,1]、及びメモリセルMCref[1]のそれぞれの容量素子C11に電位VX[1]が供給され、容量結合によりノードNM[1,1]及びノードNMref[1]の電位がそれぞれVX[1]上昇する。また、メモリセルMC[2,1]、及びメモリセルMCref[2]のそれぞれの容量素子C11に電位VX[2]が供給され、容量結合によりノードNM[2,1]及びノードNMref[2]の電位がそれぞれVX[2]上昇する。
【0282】
ここで、時刻T07-T08において、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流IMC[2,1],1は、次の式で表すことができる。
【0283】
IMC[2,1],1=k(VPR-VW[2,1]+VX[2]-Vth)2 (E12)
【0284】
すなわち、配線RW[2]に電位VX[2]を供給することにより、配線BL[1]からメモリセルMC[2,1]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMC[2,1]=IMC[2,1],1-IMC[2,1],0増加する。
【0285】
また、時刻T05-T06において、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流IMCref[2],1は、次の式で表すことができる。
【0286】
IMCref[2],1=k(VPR+VX[2]-Vth)2 (E13)
【0287】
すなわち、配線RW[2]に電位VX[2]を供給することにより、配線BLrefからメモリセルMCref[2]のトランジスタTr12に流れる電流は、ΔIMCref[2]=IMCref[2],1-IMCref[2],0増加する。
【0288】
また、配線BL[1]及び配線BLrefに流れる電流について考える。配線BLrefには、電流源回路CSから電流ICrefが供給される。また、配線BLrefを流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMCref[1]、[2]へ排出される。配線BLrefからカレントミラー回路CMへ排出される電流をICM,2とすると、次の式が成り立つ。
【0289】
ICref-ICM,2=IMCref[1],1+IMCref[2],1 (E14)
【0290】
配線BL[1]には、電流源回路CSから電流ICが供給される。また、配線BL[1]を流れる電流は、カレントミラー回路CM、メモリセルMC[1,1]、[2,1]へ排出される。さらに、配線BL[1]からオフセット回路OFSTにも電流が流れる。配線BL[1]からオフセット回路OFSTに流れる電流をIα,2とすると、次の式が成り立つ。
【0291】
IC-ICM,2=IMC[1,1],1+IMC[2,1],1+Iα,2 (E15)
【0292】
そして、式(E1)乃至式(E8)、及び、式(E12)乃至式(E15)から、電流Iα,0と電流Iα,2の差(差分電流ΔIα)は次の式で表すことができる。
【0293】
ΔIα=Iα,2-Iα,0=2k(VW[1,1]VX[1]+VW[2,1]VX[2]) (E16)
【0294】
このように、差分電流ΔIαは、電位VW[1,1]と電位VX[1]の積と、電位VW[2,1]と電位VX[2]の積と、を足し合わせた結果に応じた値となる。
【0295】
その後、時刻T08-T09において、配線RW[1]、[2]の電位は接地電位となり、ノードNM[1,1]、[2,1]及びノードNMref[1]、[2]の電位は時刻T04-T05と同様になる。
【0296】
式(E9)及び式(E16)に示されるように、オフセット回路OFSTに入力される差分電流ΔIαは、第1のデータ(重み)に対応する電位VXと、第2のデータ(入力データ)に対応する電位VWの積を足し合わせた結果に応じた値となる。すなわち、差分電流ΔIαをオフセット回路OFSTで計測することにより、第1のデータと第2のデータの積和演算の結果を得ることができる。
【0297】
なお、上記では特にメモリセルMC[1,1]、[2,1]及びメモリセルMCref[1]、[2]に着目したが、メモリセルMC及びメモリセルMCrefの数は任意に設定することができる。メモリセルMC及びメモリセルMCrefの行数mを任意の数とした場合の差分電流ΔIαは、次の式で表すことができる。
【0298】
ΔIα=2kΣiVW[i,1]VX[i] (E17)
【0299】
また、メモリセルMC及びメモリセルMCrefの列数nを増やすことにより、並列して実行される積和演算の数を増やすことができる。
【0300】
以上のように、半導体装置MACを用いることにより、第1のデータと第2のデータの積和演算を行うことができる。なお、メモリセルMC及びメモリセルMCrefとして
図15に示す構成を用いることにより、少ないトランジスタ数で積和演算回路を構成することができる。そのため、半導体装置MACの回路規模の縮小を図ることができる。
【0301】
半導体装置MACをニューラルネットワークにおける演算に用いる場合、メモリセルMCの行数mは一のニューロンに供給される入力データの数に対応させ、メモリセルMCの列数nはニューロンの数に対応させることができる。例えば、
図13(A)に示す中間層HLにおいて半導体装置MACを用いた積和演算を行う場合を考える。このとき、メモリセルMCの行数mは、入力層ILから供給される入力データの数(入力層ILのニューロンの数)に設定し、メモリセルMCの列数nは、中間層HLのニューロンの数に設定することができる。
【0302】
なお、半導体装置MACを適用するニューラルネットワークの構造は特に限定されない。例えば半導体装置MACは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、オートエンコーダ、ボルツマンマシン(制限ボルツマンマシンを含む)などに用いることもできる。
【0303】
以上のように、半導体装置MACを用いることにより、ニューラルネットワークの積和演算を行うことができる。さらに、セルアレイCAに
図15に示すメモリセルMC及びメモリセルMCrefを用いることにより、演算精度の向上、消費電力の削減、又は回路規模の縮小を図ることが可能な集積回路を提供することができる。
【0304】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0305】
(実施の形態3)
本実施の形態では、車両に本発明の一態様であるバッテリーモジュールを搭載する例を示す。車両として例えば自動車、二輪車、自転車、等が挙げられる。
【0306】
バッテリーモジュールを車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
【0307】
図18において、本発明の一態様であるバッテリーモジュールを用いた車両を例示する。
図18(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。自動車8400はバッテリーモジュールを有する。バッテリーモジュールは電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
【0308】
また、バッテリーモジュールは、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、バッテリーモジュールは、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどに電力を供給することができる。
【0309】
図18(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有するバッテリーモジュールにプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。
図18(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載されたバッテリーモジュール8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載されたバッテリーモジュール8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0310】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両同士で電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時にバッテリーモジュールの充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0311】
また、
図18(C)は、本発明の一態様のバッテリーモジュールを用いた二輪車の一例である。
図18(C)に示すスクータ8600は、バッテリーモジュール8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。バッテリーモジュール8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
【0312】
また、
図18(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、バッテリーモジュール8602を収納することができる。バッテリーモジュール8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
【0313】
また、
図19(A)は、本発明の一態様のバッテリーモジュールを用いた電動自転車の一例である。
図19(A)に示す電動自転車8700に、本発明の一態様のバッテリーモジュールを適用することができる。
【0314】
電動自転車8700は、電池パック8702を備える。電池パック8702は、運転者をアシストするモーターに電気を供給することができる。また、電池パック8702は、持ち運びができ、
図19(B)に自転車から取り外した状態を示している。また、電池パック8702は、本発明の一態様のバッテリーモジュールが有する蓄電池8701が複数内蔵されており、そのバッテリー残量などを表示部8703で表示できるようにしている。また電池パック8702に、保護回路、ニューラルネットワーク、等が搭載されることが好ましい。
【0315】
また、
図19(C)は、本発明の一態様のバッテリーモジュールを用いた電動二輪車8710である。
図19(C)に示す電動二輪車8710に、本発明の一態様のバッテリーモジュールを適用することができる。
【0316】
電動二輪車8710は、蓄電池8711、表示部8712、ハンドル8713を備える。蓄電池8711は、動力となるモーターに電気を供給することができる。表示部8712は、蓄電池8711の残量、電動二輪車8710の速度、水平状態等を表示することができる。蓄電池8711には、保護回路、ニューラルネットワーク、等が付属していることが好ましい。
【0317】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【0318】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で示したバッテリーモジュールを電子機器に実装する例を説明する。
【0319】
図20(A)および
図20(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。
図20(A)および
図20(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。表示部9631には、可撓性を有するパネルを用いることで、より広い表示部を有するタブレット端末とすることができる。
図20(A)は、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、
図20(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
【0320】
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
【0321】
表示部9631は、一部をタッチパネルの領域とすることができ、表示された操作キーにふれることでデータ入力をすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタンが表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631にキーボードボタン表示することができる。
【0322】
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0323】
図20(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634を有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係るバッテリーモジュールを用いることができる。
【0324】
先の実施の形態に示す通り、本発明の一態様のバッテリーモジュールは蓄電池と、保護回路と、制御回路と、ニューラルネットワークと、を有することが好ましい。ここで、本発明の一態様のバッテリーモジュールが有する制御回路、ニューラルネットワーク、保護回路、等の集積回路は例えば、表示部9631を制御する回路、例えば駆動回路等、と共にICチップ上に設けられてもよい。あるいは、充放電制御回路9634と共にICチップ上に設けられてもよい。
【0325】
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631を保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。
【0326】
また、この他にも
図20(A)および
図20(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0327】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。
【0328】
また、
図20(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について
図20(C)にブロック図を示し説明する。
図20(C)には、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図20(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0329】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
【0330】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0331】
図21(A),(B)に、他のバッテリーモジュールおよび電子機器の例を示す。
図21(A)に、本発明の一態様であるバッテリーモジュール8300と、ソーラーパネル8230を有する住宅の例を示す。住宅には、地上設置型の充電装置8240が備えられているとより好ましい。またバッテリーモジュール8300は、保護回路と、制御回路と、ニューラルネットワークと、を有していることが好ましい。
【0332】
バッテリーモジュール8300と、ソーラーパネル8230と、充電装置8240は配線8231等を介して電気的に接続されている。ソーラーパネル8230で得た電力は、バッテリーモジュール8300に充電することができる。バッテリーモジュール8300に蓄えられた電力は、自動車8250が有する蓄電池8251に充電することができる。なお自動車8250は電気自動車またはプラグインハイブリッド自動車である。
【0333】
バッテリーモジュール8300に蓄えられた電力は、他の電子機器にも電力を供給することができる。たとえば
図21(B)に示すように、バッテリーモジュール8300と据え付け型の照明装置8100を電気的に接続し、照明装置8100に電力を供給することができる。照明装置8100は、筐体8101、光源8102、制御回路8103等を有する。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、バッテリーモジュール8300に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係るバッテリーモジュール8300と無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
【0334】
なお、
図21(B)では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係るバッテリーモジュール8300は、天井8104以外、例えば側壁、床、窓等に設けられた据え付け型の照明装置に電力を供給してもよいし、卓上型の照明装置などに電力を供給してもよい。
【0335】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0336】
同様に、バッテリーモジュール8300は表示装置8000に電力を供給することができる。表示装置8000は、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、制御回路8004等を有する。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、バッテリーモジュール8300に蓄積された電力を用いることもできる。表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、表示装置を用いることができる。
【0337】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0338】
同様に、バッテリーモジュール8300は室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーに電力を供給することができる。室内機8200は、筐体8201、送風口8202、制御回路8203等を有する。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、バッテリーモジュール8300に蓄積された電力を用いることもできる。
【0339】
なお、
図21(B)では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係るバッテリーモジュールから電力を供給してもよい。
【0340】
また、バッテリーモジュール8300は充電装置8301を有していることが好ましい。充電装置8301を有すると、バッテリーモジュール8300から各種電子機器に充電を行うことができる。充電装置8301は、有線充電用であってもよいし、無線充電(非接触充電、ワイヤレス電力伝送ともいう)用の充電装置であってもよい。バッテリーモジュール8300が無線充電用の充電装置を有すると、無線充電システムを搭載したスマートフォン8302等を充電することができる。
【0341】
本発明の一態様のバッテリーモジュールを電子機器に実装する例を
図22(A)乃至(F)に示す。本発明の一態様のバッテリーモジュールを適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0342】
図22(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、本発明の一態様のバッテリーモジュールを有する。本発明の一態様のバッテリーモジュールは例えば、蓄電池7407と、保護回路と、制御回路と、ニューラルネットワークと、を有している。
【0343】
図22(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電池7407も湾曲される場合がある。このような場合には、蓄電池7407として、可撓性を有する蓄電池を用いることが好ましい。可撓性を有する蓄電池の曲げられた状態を
図22(C)に示す。
【0344】
また、フレキシブルな形状を備える蓄電池を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0345】
図22(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び本発明の一態様のバッテリーモジュールを有する。本発明の一態様のバッテリーモジュールは例えば、蓄電池7104と、保護回路と、制御回路と、ニューラルネットワークと、を有する。
【0346】
図22(E)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
【0347】
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0348】
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0349】
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
【0350】
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0351】
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0352】
携帯情報端末7200は、本発明の一態様のバッテリーモジュールを有する。
【0353】
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
【0354】
図22(F)は、複数のローター7302を有する無人航空機7300である。無人航空機7300は、本発明の一態様である蓄電池システム7301と、カメラ7303と、アンテナ(図示しない)を有する。無人航空機7300はアンテナを介して遠隔操作することができる。
【0355】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0356】
10:半導体装置、10a~d:半導体装置、11:基板、12:素子層、13a~b:端子、14:アンテナ、15:接続部、16:保護層、17:基板、20:バッテリーユニット、20a~b:バッテリーユニット、20p:バッテリーユニット、20M:バッテリーモジュール、21a~b:外装体、22:プリント基板、23:IC、24:アンテナ、25:コネクタ配線、26:導電部材、26n:導電部材、26p:導電部材、27n:配線、27p:配線、30:電池、30a~d:電池、31n:負極端子、31p:正極端子、33:リード、34:導電部材、35:外装体、36n:接続端子、36p:接続端子、40:制御装置、41:制御部、42:無線通信部、43:アンテナ、50:回路、51:電圧検知回路、52:電流検知回路、53:温度センサ、54:バランス回路、55a~c:A-D変換回路、60:回路、61:制御部、62:無線通信部、63:アンテナ、71:支持基板、72:剥離層、80a~b:トランジスタ、81:半導体層、82:絶縁層、83:導電層、84a~c:導電層、85:導電層、85a:導電層、85f:導電膜、86:絶縁層、88:導電層、89:導電層、90~93:絶縁層