(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156293
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電気化学デバイス用のフルオロポリマー膜
(51)【国際特許分類】
H01M 50/426 20210101AFI20231017BHJP
C08L 27/22 20060101ALI20231017BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20231017BHJP
C08F 214/18 20060101ALI20231017BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20231017BHJP
C08G 77/442 20060101ALI20231017BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20231017BHJP
【FI】
H01M50/426
C08L27/22
C08F8/42
C08F214/18
C08F220/26
C08G77/442
H01M50/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023115709
(22)【出願日】2023-07-14
(62)【分割の表示】P 2020531490の分割
【原出願日】2018-12-11
(31)【優先権主張番号】17306762.0
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベナール, ギャエル
(72)【発明者】
【氏名】グテル, エリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ルオー, エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ブルソー, セゴレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】モーザー, ジャメル
(72)【発明者】
【氏名】トマージ, ダニエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な機械的特性を備え、特に安全要件を適切に確保しながら優れた容量値を示す二次電池での使用に適する、電気化学デバイス用の膜を提供する。
【解決手段】(a)無機ドメインを含む少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体(前記ハイブリッドは、フッ素化モノマー(FM)に由来する繰り返し単位と、(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位と、を含むフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、式(I):X4-mAYmの少なくとも1つの金属化合物[化合物(M)]との反応によって得られ、前記無機ドメインは、少なくとも1つの化合物(M)の、前記(メタ)アクリルモノマー(MA)のROH基の少なくとも一部との反応を通して、前記少なくとも1つの化合物(M)を前記ポリマー(F)にグラフトすることにより得られる)と、(b)液体媒体と、を含む、電気化学デバイス用の膜とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイス用の膜であって、前記膜は、
(a)無機ドメインを含む少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(F-h)](前記ハイブリッドは、
-
(i)少なくとも1つのフッ素化モノマー(FM)に由来する繰り返し単位と、
(ii)式
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ、互いに等しく又は異なり、独立して、水素原子又はC
1~C
3炭化水素基であり、R
OHは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部位である)の少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位と、
-(iii)任意選択的にVDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー(FM2)に由来する繰り返し単位と、を含む少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]
(ここで、ポリマー(F)は、ジメチルホルムアミド中で25℃で測定される0.09l/gより高く0.6l/gより低い固有粘度を有する)と、
-式(I):
X
4-mAY
m (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、加水分解性基であり、Xは、炭化水素基であり、任意選択的に1つ以上の官能基を含む)の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M)]との反応によって得られ、
前記無機ドメインは、少なくとも1つの化合物(M)の、前記(メタ)アクリルモノマー(MA)のR
OH基の少なくとも一部との反応を通して、前記少なくとも1つの化合物(M)を前記ポリマー(F)にグラフトすることにより得られる)と、
(b)液体媒体[媒体(L)]と、を含む、好ましくは、これらからなる、電気化学デバイス用の膜。
【請求項2】
前記少なくとも1つのモノマー(FM)は、
-テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンなどのC2~C8パーフルオロオレフィン、
-フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレンなどのC2~C8水素化フルオロオレフィン、
-式CH2=CH-Rf0(式中、Rf0は、C1~C6パーフルオロアルキルである)のパーフルオロアルキルエチレン、
-クロロトリフルオロエチレンなどのクロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C2~C6フルオロオレフィン、
-CF2=CFOX0(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(式中、X0は、C1~C12アルキル基、C1~C12オキシアルキル基、又はパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基などの、1つ以上のエーテル基を有するC1~C12(パー)フルオロオキシアルキル基である)、
-式CF2=CFOCF2ORf2(式中、Rf2は、C1~C6フルオロ-又はパーフルオロアルキル基、例えば、CF3、C2F5、C3F7、又は-C2F5-O-CF3などの、1つ以上のエーテル基を有するC1~C6(パー)フルオロオキシアルキル基である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、
-式CF2=CFOY0(式中、Y0は、C1~C12アルキル基又は(パー)フルオロアルキル基、C1~C12オキシアルキル基、又は1つ以上のエーテル基を有するC1~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、Y0は、その酸、酸ハライド又は塩の形態の、カルボン酸又はスルホン酸基を含む)の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル、
-フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソールからなる群から選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記ポリマー(F)は、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つのモノマー(MA)、及び少なくとも1つのフッ素化モノマー(FM2)に由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
前記ポリマー(F)は、
-少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
-0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~3モル%の少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー(MA)、及び
-0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF1)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、及びトリフルオロエチレン(TrFE)から選択される少なくとも1つのフッ素化モノマー(FM2)に由来する繰り返し単位を含む、請求項3に記載の膜。
【請求項5】
前記フッ素化モノマー(FM2)は、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びテトラフルオロエチレン(TFE)からなる群から選択され、好ましくはHFP及びTFEからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
前記モノマー(MA)は、以下の
-式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
式:
のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
及びこれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
ポリマー(F)は、ターポリマーVDF-AA-HFPである、請求項1~6のいずれか一項に記載の膜。
【請求項8】
25℃でジメチルホルムアミド中で測定される、ポリマー(F)の固有粘度は、0.50l/g未満、より好ましくは0.45l/g未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の膜。
【請求項9】
化合物(M)のXは、RAであり、Yは、ORBであり、式中、RA及びRBは、互いに等しく又は異なり、出現ごとに、C1~C18炭化水素基から独立して選択され、RAは、任意選択的に少なくとも1つの官能基を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
化合物(M)は、官能性化合物(M1)が、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH
2=CHSi(OC
2H
4OCH
3)
3のビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、
式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミンプロピルメチルジメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミンプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレイン酸、
式HOSO
2-CH
2CH
2CH
2-Si(OH)
3の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、及びそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
式H
3C-C(O)NH-CH
2CH
2CH
2-Si(OCH
3)
3のアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(L)
t(OR)
z(式中、Lは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCH
2CH
2NH
2であり、Rはアルキル基であり、x及びyは、t+z=4である整数である)のアルカノールアミンチタネートからなる群から選択される前記官能性化合物(M1)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項11】
化合物(M)は、非官能性化合物(M2)であり、化合物(M2)は、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項12】
化合物(M)は、化合物(M’)であり、前記化合物(M’)は、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリメトキシシリルペンチルイソシアネート、トリエトキシシリルペンチルイソシアネート、トリメトキシシリルヘキシルイソシアネート及びトリエトキシシリルヘキシルイソシアネートからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項13】
本発明の膜に含まれる前記少なくとも1つのポリマー(F-h)は、
-請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの[ポリマー(F)]、
-請求項12に記載の少なくとも1つの金属化合物(M’)、及び
-請求項11に記載の少なくとも1つの金属化合物(M2)の反応によって得られる、請求項1~12のいずれか一項に記載の膜。
【請求項14】
前記液体媒体(L)は、少なくとも1つの有機カーボネートと、少なくとも1つの金属塩(MS)とを含み、前記金属塩は、好ましくはLiPF6である、請求項1~13のいずれか一項に記載の膜。
【請求項15】
(A)液体媒体(L)における請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー(F-h)の少なくとも1つの溶液を準備する工程と、
(B)工程(A)で得られた前記溶液を処理してポリマー電解質膜を形成する工程と、
(C)工程(B)で準備された前記ポリマー電解質膜を乾燥させる工程と、を含む、電気化学デバイス用の膜の製造方法。
【請求項16】
工程(B)において、液体媒体(L)におけるポリマー(F-h)の前記溶液が連続プロセスで処理される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
正極と負極の間に請求項1~14のいずれか一項に記載の少なくとも1つの膜を含む電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月13日出願の欧州出願欧州特許出願公開第17306762.0号の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電気化学デバイス用の膜、前述の膜の製造方法、及び電気化学デバイスの製造方法での前述の膜の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマー及び、特に、フッ化ビニリデンポリマーは、電気化学的用途などの多種多様の用途で使用されている。
【0004】
例えば、フルオロポリマーは、それらの耐化学薬品性及び耐熱老化性のために、二次電池などの電気化学デバイスでの使用に適切な電極又は膜の製造での原材料として有利に使用されている。
【0005】
アルカリ又はアルカリ土類二次電池は典型的には、正極(カソード)と、イオン伝導膜と負極(アノード)とを組み立てることによって形成される。多くの場合セパレータと言われるイオン伝導膜は、それが相対する電極間の有効な分離を確実にしながら、高いイオン伝導性を提供しなければならないので、電池において極めて重要な役割を果たしている。
【0006】
二次電池などの電気化学デバイスでの使用に適切な電解質には典型的に、液体電解質及び固体電解質が含まれる。電解質が二次電池において使用するために適しているためには、それらは、高いイオン伝導率、電極に対する高い化学的及び電気化学的安定性及び広範囲の温度にわたる高い熱安定性を示す必要がある。
【0007】
リチウムイオン二次電池での使用に適切な液体電解質は、典型的には、適切な有機溶媒に溶解したリチウム塩などの金属塩を含む。
【0008】
しかしながら、液体電解質がその引火点よりも上に加熱されるときに、重大な安全性問題が過熱から生じる場合がある。特に、カソード材料によって放出される酸素と、燃料としての有機液体電解質との化学反応によって、熱暴走が高温で生じる場合がある。
【0009】
リチウムイオン二次電池の安全性問題を解決するために、液体電解質及び固体ポリマー電解質の両方の利点を有利に組み合わせ、このようにして高いイオン伝導率と高い熱安定性とに恵まれているゲルポリマー電解質が研究されている。
【0010】
前述のゲルポリマー電解質に基づく電解質膜を調製することができる。
【0011】
二次電池で使用するための膜の調製は、連続プロセスによって適切に行われるが、膜に良好な機械的特性を与えることが必要である。
【0012】
前述の連続プロセスでは、膜は実際にコーティング機にて張力下に置かれ、場合によっては、膜を電池に取り付ける前に膜を基材から取り外す必要がある。そのプロセスでは、膜は損傷してはならず、それを行うのは簡単なプロセスでなければならない。膜の取り扱いが難しいと、膜調製の工業化が不可能になる可能性がある。
【0013】
ゲル電解質を使用して調製された当技術分野で公知の膜は、連続プロセスによる調製の際に上記の問題に直面する。
【0014】
従って、コーティング機での連続プロセスによって製造できるゲル電解質/膜電解質の必要性が感じられ、前述の膜は、良好な機械的特性を備え、電気化学デバイス、特に安全要件を適切に確保しながら優れた容量値を示すリチウムイオン電池などの二次電池での使用に適する。
【発明の概要】
【0015】
ここで驚くべきことに、電気化学デバイス、特に二次電池が、本発明の膜を使用することによって容易に製造できることが見出された。
【0016】
又、驚くべきことに、本発明の膜は、当技術分野で知られている膜の欠陥を被ることなく、コーティング機での連続プロセスで製造できることが見出された。
【0017】
第1の目的において、本発明は、電気化学デバイス用の膜を提供し、前述の膜は、
(a)無機ドメインを含む少なくとも1つのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(F-h)](前述のハイブリッド有機/無機複合体は、
-
(i)少なくとも1つのフッ素化モノマー(FM)に由来する繰り返し単位と、
(ii)式:
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ、互いに等しく又は異なり、独立して、水素原子又はC
1~C
3炭化水素基であり、R
OHは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部位である)の少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位と、
-(iii)任意選択的にVDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー(FM2)に由来する繰り返し単位と、を含む少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]
(この場合、ポリマー(F)は、ジメチルホルムアミド中で25℃で測定される0.09l/gより高く0.6l/gより低い固有粘度を有する)と、
-式(I):
X
4-mAY
m(I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、加水分解性基であり、Xは、炭化水素基であり、任意選択的に1つ以上の官能基を含む)の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M)]との反応によって得られ、
無機ドメインは、前述の少なくとも1つの化合物(M)の、(メタ)アクリルモノマー(MA)のR
OH基の少なくとも一部との反応を通して、少なくとも1つの化合物(M)をポリマー(F)にグラフトすることにより得られる)と、
(b)液体媒体[媒体(L)]と、を含む、好ましくは、これらからなる。
【0018】
第2の目的では、本発明は、電気化学デバイス用の膜の製造方法を提供する。
【0019】
第3の目的では、本発明は、正極と負極の間に本発明の少なくとも1つの膜を含む、電気化学デバイス、好ましくは二次電池を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的のために、用語「膜」は、それと接触する化学種の透過を抑える不連続の、一般に薄い界面を意味することを意図する。この界面は、均質であっても、即ち、構造が完全に一様であってもよく(稠密な膜)、又はそれは、例えば、有限の寸法の空隙、細孔又は穴(多孔質膜)を含み、化学的に又は物理的に不均一であってもよい。
【0021】
ポリマー(F)は、少なくとも1つのモノマー(FM)に由来する繰り返し単位と、少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位とを含むフルオロポリマーである。
【0022】
用語「フッ素化モノマー」とは、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0023】
用語「少なくとも1つのフッ素化モノマー」は、ポリマー(F)が1つ以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解され、即ち、それらは、上記で定義された1つ以上のフッ素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0024】
用語「少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー(MA)」は、ポリマー(F)が、1つ以上の(メタ)アクリルモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含むことができることを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「(メタ)アクリルモノマー」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解され、即ち、それらは、上記で定義された1つ以上の(メタ)アクリルモノマーの両方を意味すると理解される。
【0025】
フッ素化モノマー(FM)が少なくとも1つの水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと表される。
【0026】
フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それは、パー(ハロ)フッ素化モノマーと表される。
【0027】
フッ素化モノマー(FM)は、1つ以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)を更に含み得る。
【0028】
適切なフッ素化モノマー(FM)の非限定的な例としては、特に、下記:
-テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンなどのC2~C8パーフルオロオレフィン、
-フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレンなどのC2~C8水素化フルオロオレフィン、
-式CH2=CH-Rf0(式中、Rf0は、C1~C6パーフルオロアルキルである)のパーフルオロアルキルエチレン、
-クロロトリフルオロエチレンなどのクロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C2~C6フルオロオレフィン、
-CF2=CFOX0(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(式中、X0は、C1~C12アルキル基、C1~C12オキシアルキル基又は、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基などの、1つ以上のエーテル基を有するC1~C12(パー)フルオロオキシアルキル基である)、
-式CF2=CFOY0(式中、Y0は、C1~C12アルキル基又は(パー)フルオロアルキル基、C1~C12オキシアルキル基、又は1つ以上のエーテル基を有するC1~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、Y0は、その酸、酸ハライド又は塩の形態での、カルボン酸又はスルホン酸基を含む)の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル、
-フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソールが挙げられる。
【0029】
本発明による好ましい実施形態では、ポリマー(F)は、有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマー少なくとも1つのモノマー(MA)に由来するランダムに分布した繰り返し単位の線形シーケンスを含むランダムポリマー[ポリマー(FR)]である。
【0030】
表現「ランダムに分布した繰り返し単位」は、少なくとも1つのモノマー(MA)のシーケンスの平均数であって、前記シーケンスは、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する2つの繰り返し単位の間に含まれる平均数と、少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の合計平均数との間のパーセント比を表すことを意味することを意図する。
【0031】
少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位のそれぞれが分離されている場合、即ち、モノマー(MA)に由来する繰り返し単位が、少なくとも1つのフッ素化モノマーの2つの繰り返し単位の間に含まれている場合、少なくとも1つのモノマー(MA)のシーケンスの平均数は、少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の平均総数に等しく、従って、少なくとも1つのモノマー(MA)に由来するランダムに分布した繰り返し単位の割合は、100%であり、この値は、少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の完全にランダムな分布に対応する。従って、少なくとも1つのモノマー(MA)由来の繰り返し単位の総数に対して少なくとも1つのモノマー(MA)由来の分離された繰り返し単位の数が大きいほど、少なくとも1つのモノマー(MA)由来のランダムに分布した繰り返し単位の割合のパーセント値はより高くなる。
【0032】
ポリマー(F)は、モノマー(MA)とは異なる少なくとも1つの水素化モノマーに由来する繰り返し単位を任意選択的に更に含み得る。
【0033】
用語「水素化モノマー」とは、少なくとも1つの水素原子を含みフッ素原子を含まないエチレン系不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0034】
用語「少なくとも1つの水素化モノマー」は、ポリマー(F)が1つ以上の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み得ることを意味することを意図する。本文の残りにおいて、表現「水素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解され、即ち、それらは、上記で定義された1つ以上の水素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0035】
ポリマー(F)は、非晶性又は半結晶性であり得る。
【0036】
用語「非晶質」は、ASTM D-3418-08に従って測定されるように、5J/g未満の、好ましくは3J/g未満の、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0037】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定されるように、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0038】
ポリマー(F)は好ましくは、半結晶性である。
【0039】
ポリマー(F)は、好ましくは少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、更により好ましくは少なくとも0.1モル%の少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0040】
ポリマー(F)は、好ましくは多くとも10モル%、より好ましくは多くとも5モル%、更により好ましくは多くとも3モル%の少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含む。
【0041】
ポリマー(F)における少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の平均モルパーセントの決定は、任意の適切な方法によって行うことができる。特に、酸-塩基滴定方法又はNMR方法に言及することができる。
【0042】
ポリマー(F)は、好ましくは、部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0043】
本発明の目的のために、用語「部分フッ素化フルオロポリマー」は、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位と、少なくとも1つのモノマー(MA)に由来する繰り返し単位とを含むポリマーを意味することを意図し、この場合に、フッ素化モノマーは少なくとも1つの水素原子を含む。
【0044】
本発明の第1の実施形態によれば、ポリマー(F)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つのモノマー(MA)、及び少なくとも1つのフッ素化モノマー(FM2)に由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0045】
本発明のこの第1の実施形態のポリマー(F)は、より好ましくは、
-少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
-0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~3モル%の少なくとも1つのモノマー(MA)、及び
-0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF1)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、及びトリフルオロエチレン(TrFE)から選択される少なくとも1つのモノマー(FM2)に由来する繰り返し単位を含む。
【0046】
少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含むモノマー(MA)の非限定的な例には、特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0047】
モノマー(MA)は、以下から好ましくは選択される。
-式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
式:
のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
-及びこれらの混合物。
【0048】
ポリマー(F)は、典型的には、少なくとも1つのフッ素化モノマー、上記で定義された少なくとも1つのモノマー(MA)、及び任意選択的にフッ素化モノマー(FM2)の重合によって得られることができる。
【0049】
ポリマー(F)は、典型的には乳化重合又は懸濁重合によって得られることができる。
【0050】
好ましくは、25℃でジメチルホルムアミド中で測定されたポリマー(F)の固有粘度は、0.50l/g未満、より好ましくは0.45l/g未満である。
【0051】
ポリマー(F-h)は、典型的にはフルオロポリマードメイン及び無機ドメインを含み、好ましくはこれらからなる。
【0052】
ポリマー(F-h)は、例として、国際公開第2015/169834号パンフレットに記載されている手順に従って調製することができる。
【0053】
特に、ポリマー(F-h)は、
-液体媒体[媒体(L)]の存在下で、ポリマー(F)のモノマー(MA)のROHにおける少なくとも一部の少なくとも1つのヒドロキシル基を、少なくとも一部の化合物(M)と反応させ、式、-Ym-1AX4-mのペンダント基を含むポリマー(F)をもたらす第1の工程であって、
m、Y、A、及びXは、上記で詳述された同じ意味を有する第1の工程と、
-化合物(M)及び/又は第1の工程で得られたポリマー(F)の少なくとも1つのペンダント基を加水分解及び/又は縮合する第2の工程と、を含む方法によって調製されることができる。
【0054】
ポリマー(F-h)は、液体媒体(L)における溶液の形態で都合よく得られる。
【0055】
第2の工程では、方法は、上記で詳述されたように、化合物(M)及び/又はペンダント-Ym-1AX4-m基を加水分解及び/又は重縮合して、ポリマー(F-h)を生成する工程を含む。
【0056】
加水分解/重縮合は、第1の工程でポリマー(F)のヒドロキシル基と化合物(M)を反応させる工程と同時に実施することができ、又は前述の反応が起こった後に実施することができる。
【0057】
典型的には、特にA=Siの化合物の場合、この加水分解/重縮合は、適切な触媒/反応物を添加することにより開始される。一般に、この反応を促進するために水又は水と酸との混合物を使用することができる。
【0058】
酸の選択は特に制限されず、有機及び無機酸の両方を使用することができる。本発明の方法に使用することができる好ましい酸は、塩酸及びギ酸である。
【0059】
ポリマー(F)と化合物(M)を溶融状態で反応させる場合、加水分解/重縮合を促進するために、水蒸気を、任意選択的に揮発性酸と組み合わせて注入することが好ましい方法であろう。
【0060】
ポリマー(F)と化合物(M)の反応を溶液中で行う場合は、加水分解/重縮合を促進するために、水性媒体、好ましくは酸を含む水性媒体を添加することが好ましい方法であろう。
【0061】
この加水分解/重縮合は室温で行うこともできるが、一般的にはこの工程を50℃を超える温度に加熱して行うことが好ましい。
【0062】
溶融状態での反応の場合、温度は、ポリマー(F)の融点に関して150~250℃の範囲になり、溶液での反応の場合、温度は溶媒の沸点を考慮して選択される。一般的には50~150℃、好ましくは60℃~120℃の温度が好ましいであろう。
【0063】
この工程では、化合物(M)の加水分解性基が反応して、ポリマー(F)の鎖からなるポリマードメインと、化合物(M)に由来する残基からなる無機ドメインとを含むハイブリッド複合体が生成されることが理解される。
【0064】
無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体は、標準的な方法で取り出す(recover)ことができ、これは各種反応工程に用いられる技術に応じて異なるであろう。
【0065】
上記で定義された式(I)の化合物(M)の加水分解性基Yの選択は、特に限定されないが、但し、適切な条件下で、化合物(M)のAとモノマー(MA)のROHのヒドロキシル基に属する-O-原子との間に-O-A≡結合の形成を可能にするという条件である。上記で定義された化合物(M)の加水分解性基Yは、典型的には、ハロゲン原子からなる群から選択され、好ましくは塩素原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基及びヒドロキシル基である。
【0066】
好ましい実施形態によれば、化合物(M)のXは、RAであり、Yは、ORBであり、式中、RA及びRBは、互いに等しく又は異なり、出現ごとに、C1~C18炭化水素基から独立して選択され、RAは、任意選択的に少なくとも1つの官能基を含む。
【0067】
上記で定義された化合物(M)がXに少なくとも1つの官能基を含む場合、それは官能性化合物(M1)と表され、上記で定義された化合物(M)のXのいずれも官能基を含まない場合、化合物(M)は非官能性化合物(M2)と表される。
【0068】
Xにあり得る官能基の非限定的な例としては、特に、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハロゲン化物の形態)、スルホン基(その酸、エステル、塩又はハロゲン化物の形)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、又はハロゲン化物の形態)、チオール基、アミン基、4級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、有機-シラン基、芳香族基が挙げられる。
【0069】
より好ましい実施形態によれば、化合物(M)は、mが1~3の整数である化合物(M1)であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Xは、RA’であり、Yは、ORB’であり、式中、RA’は、少なくとも1つの官能基を含むC1~C12炭化水素基であり、RB’は、C1~C5直鎖又は分岐アルキル基であり、好ましくはメチル又はエチル基である。
【0070】
官能性化合物(M1)の例は、特に、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH
2=CHSi(OC
2H
4OCH
3)
3のビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、
式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミンプロピルメチルジメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミンプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレイン酸、式HOSO
2-CH
2CH
2CH
2-Si(OH)
3の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、及びそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、式H
3C-C(O)NH-CH
2CH
2CH
2-Si(OCH
3)
3のアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(L)
X(OR)
Y(式中、Lは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCH
2CH
2NH
2であり、Rはアルキル基であり、x及びyは、t+y=4である整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0071】
非官能性化合物(M2)の例は、特には、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0072】
別の好ましい実施形態によれば、化合物(M)のXは、少なくとも1つの-N=C=O官能基を含むC1~C12炭化水素基であり、A及びYは、上記で定義されたとおりであり、この場合、化合物(M)は化合物(M’)と表される。
【0073】
更により好ましい実施形態によれば、化合物(M’)において、Yは、ORDであり、式中、RDは、C1~C5直鎖又は分岐アルキル基であり、好ましくはRDはメチル又はエチル基である。
【0074】
この実施形態による適切な化合物(M’)の非限定的な例としては、以下:トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリメトキシシリルペンチルイソシアネート、トリエトキシシリルペンチルイソシアネート、トリメトキシシリルヘキシルイソシアネート及びトリエトキシシリルヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0075】
好ましい実施形態によれば、本発明の膜に含まれる少なくとも1つのポリマー(F-h)は、
-上記で定義された少なくとも1つの[ポリマー(F)]、
-上記で定義された少なくとも1つの金属化合物(M’)、及び
-上記で定義された少なくとも1つの金属化合物(M2)の反応によって得られる。
【0076】
本発明の目的のために、用語「液体媒体[媒体(L)]」は、大気圧下にて20℃で液体状態にある1つ以上の物質を含む媒体を意味することを意図する。
【0077】
媒体(L)は、少なくとも1つの金属塩(MS)を含む。
【0078】
媒体(L)は典型的には、1つ以上の溶媒(S)を含まない。
【0079】
媒体(L)の選択は、それが金属塩(MS)を可溶化するのに適切であることを条件として特に限定されない。
【0080】
本発明の膜中の媒体(L)の量は、前述の媒体(L)と少なくとも1つのポリマー(F-h)との総重量を基準として、典型的には少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。
【0081】
本発明の好ましい実施形態によれば、液体媒体(L)は、少なくとも1つの有機カーボネートを含む。
【0082】
適切な有機カーボネートの非限定的な例としては、特に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート及びそれらの混合物が挙げられる。
【0083】
他の適切な液体媒体(L)は、エステル、好ましくは、エチルプロピオネート又はプロピルプロピオネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、ジメチルエーテル、1,2ジメトキシエタン及びフルオロカーボネートを含み得る。
【0084】
金属塩(MS)は、典型的には、
(a)MeI、Me(PF
6)
n、Me(BF
4)
n、Me(ClO
4)
n、Me(ビス(オキサラト)ボレート)
n(「Me(BOB)
n」)、MeCF
3SO
3、Me[N(CF
3SO
2)
2]
n、Me[N(C
2F
5SO
2)
2]
n、Me[N(CF
3SO
2)(R
FSO
2)]
n(式中、R
Fは、C
2F
5、C
4F
9又はCF
3OCF
2CF
2である)、Me(AsF
6)
n、Me[C(CF
3SO
2)
3]
n、Me
2S
n(式中、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくは、Meは、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、及びAlであり、更により好ましくは、MeはLiであり、nは前述の金属の原子価である)、
(b)
(式中、R’
Fは、F、CF
3、CHF
2、CH
2F、C
2HF
4、C
2H
2F
3、C
2H
3F
2、C
2F
5、C
3F
7、C
3H
2F
5、C
3H
4F
3、C
4F
9、C
4H
2F
7、C
4H
4F
5、C
5F
11、C
3F
5OCF
3、C
2F
4OCF
3、C
2H
2F
2OCF
3及びCF
2OCF
3からなる群から選択される)、並びに
(c)それらの組み合わせからなる群から選択される。
【0085】
好ましくは、金属塩は、LiPF6である。
【0086】
本発明の膜の媒体(L)における金属塩(MS)の濃度は、有利には少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0087】
本発明の膜の媒体(L)における金属塩(MS)の濃度は、有利には多くとも5M、好ましくは多くとも2M、より好ましくは多くとも1Mである。
【0088】
第2の目的では、本発明は、電気化学デバイス用の膜の製造方法を提供し、前述の方法は、
(A)液体媒体(L)で定義されたポリマー(F-h)の少なくとも1つの溶液を準備する工程と、
(B)工程(A)で得られた溶液を処理してポリマー電解質膜を形成する工程と、
(C)工程(B)で準備されたポリマー電解質膜を乾燥させる工程と、を含む。
【0089】
工程(B)では、液体媒体(L)におけるポリマー(F-h)の溶液は、連続プロセス又は非連続プロセスで処理できる。
【0090】
連続プロセスでは、溶液は、ロールツーロール(roll-to-roll)スロットダイコーティング機など、シート材料を配置できるコーティング機に供給される。
【0091】
コーティング機での連続プロセスは、好ましくは、制御された環境において室温で行われる。
【0092】
非連続プロセスでは、乾燥室でドクターブレードなどのテープキャスティング機を使用して、溶液を不活性基材に一定の厚さで適切に流延される。
【0093】
本発明の電気化学デバイス用の膜は、本発明のこの第2の目的による方法によって有利に得ることができる。
【0094】
本発明の膜は、電気化学デバイスでの、特に二次電池での使用に特に適切である。
【0095】
本発明の目的のために、用語「二次電池」は、再充電可能な電池を意味することを意図する。
【0096】
本発明の二次電池は、好ましくは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)及びイットリウム(Y)のいずれかに基づく二次電池である。
【0097】
本発明の二次電池は、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0098】
第3の目的では、本発明は、正極と負極の間に本発明の少なくとも1つの膜を含む、電気化学デバイス、好ましくは二次電池を提供する。
【0099】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0100】
本発明をこれから以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、その目的は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例0101】
原材料
ポリマー1:25℃にてDMF中で0.30l/gの固有粘度を有するVDF-AA(0.9モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
ポリマー2-比較:25℃にてDMF中で0.077l/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.8モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
ポリマー(F-A):25℃にてDMF中で0.097l/gの固有粘度を有するVDF-HEA(0.6モル%)-HFP(2.5モル%)ポリマー。
LiPF6:リチウムヘキサフルオロホスフェート塩。
NMC:Umicoreから市販されている、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2。
液体媒体(L-A):ビニレンカーボネート(VC)を含む(2重量%)エチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)(体積で1/1)におけるLiPF6(1モル/L)の溶液。
黒鉛:75%のSMG HE2-20(Hitachi Chemical Co.,Ltd.)/25%のTIMREX(登録商標)SFG6。
DBTDL:ジブチルスズジラウレート。
TEOS:テトラエトキシシラン。
TSPI:3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート。
【0102】
ポリマー1の合成(本発明によらない):
速度250rpmで回転するインペラーを備えた80リットルの反応器に、50.4kgの脱塩水と0.6g/kgのMnTのエチルヒドロキシエチルセルロース誘導体(AkzoNobelからBermocoll(登録商標)E230 FQとして市販されている)を順に導入した。反応器を一連の真空(30mmHg)でパージし、20℃で窒素をパージした。次いで、イソドデカンにおける3.0g/kgのMnTのt-アミル-ペルピバレート(t-アミル-ペルピバレートの75重量%溶液、Arkemaから市販されている)を加えた。攪拌速度は300rpmで上昇した。最後に、アクリル酸(AA、初期量)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを反応器に導入し、続いてフッ化ビニリデン(VDF)を導入した。モノマーの量及び温度条件を表1に示す。反応器を、表に記載される固定温度での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。表1に示されたAAの濃度の水溶液(水中の[AA])で希釈した一定量のAA(供給量)を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。次いで、このように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0103】
【0104】
ポリマー2-比較の合成:
速度300rpmで回転するインペラーを備えた80リットル反応器に、58242gの脱塩水及び11.1gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤(Dowから市販されている)を順に導入した。反応器を、一連の真空(30mmHg)でパージし、14℃で窒素をパージした。次いで、イソドデカンにおけるt-アミルパーピバレート開始剤の75重量%溶液149.9gを反応器に導入し、続いて21.6gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び1873gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを導入した。最後に、16597gのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を57℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を110バールに固定した。重合中、240.6gのHEAを含む13kgの水溶液を供給することによって、圧力を110バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は80バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、モノマーのほぼ75%の変換が得られた。次いで、このように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0105】
ポリマー(F-A)の合成:
速度250rpmで回転するインペラーを備えた80リットル反応器に、49992gの脱塩水及び15.2gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を順に導入した。反応器を一連の真空(30mmHg)でパージし、20℃で窒素をパージした。次いで、イソドデカンにおけるt-アミルペルピバレート開始剤の75重量%溶液204.4gを導入した。攪拌速度は300rpmで上昇した。最後に、20.4gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び2555gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを反応器に導入し、続いて22735gのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を55℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。重合中、235gのHEAを含む16.9kgの水溶液を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は90バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、モノマーのほぼ76%の変換が得られた。次いで、このように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0106】
機械的特性の手順
機械的特性は、「Shimadzu Autograph AG-X Plus」を用いて、室温でダンベル試験片において50mm/分の速度試験で測定される。
【0107】
ポリマー(F)の固有粘度の決定
固有粘度(η)[dl/g]は、Ubbelhode粘度計を用い、ポリマー(F)を約0.2g/dlの濃度でN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させることによって得られた溶液の、25℃での滴下時間に基づいて、以下の方程式:
(式中、cは、ポリマー濃度[g/dl]であり、η
rは、相対粘度、即ち、試料溶液の滴下時間と、溶媒の滴下時間との間の比であり、η
spは、比粘度、即ち、η
r-1であり、Γは、ポリマー(F)については3に相当する、実験因子である)
を用いて測定した。
【0108】
液体媒体(L-A)を使用してパイロット規模で連続プロセスによって電極を製造するための一般手順。
アノード:ポリマー1のアセトン溶液を60℃で調製し、次いでアルゴングローブボックス(O2<2ppm、H2O<2ppm)中で室温にした。次の工程で、液体媒体(L-A)を、こうして得られた溶液に加えた。重量比[m媒体(L-A)/(m媒体(L-A)+mポリマー1)]×100は75%であった。黒鉛をこのように得られた溶液に重量比90/10(黒鉛/ポリマー1)で添加した。
カソード:液体媒体(LA)をポリマー1のアセトン溶液に加え、重量比[mm媒体(LA)/(m媒体(LA)+mポリマー1)]×100は76.7%であった。
【0109】
50重量%のC-NERGY(登録商標)SUPER C65カーボンブラックと50重量%のVGCF(登録商標)炭素繊維(CF)とNMCのブレンドを含む組成物を、このように得られた溶液に重量比92.8/7.2((CF+LFP)/ポリマー1)で添加した。CF/NMC重量比は7.7/92.3であった。
【0110】
電極コーティングの手順
溶液混合物を、制御された乾燥環境(22℃で-20℃の露点)にてロールツーロールスロットダイコーティング機(Ingecal-オーダーメイド)に供給した。使用時のこの機のパラメータは次のとおりであった:
-ライン速度:0.5m/分
-乾燥セクション:40℃の第1及び第2ゾーン、50℃の第3ゾーンと60℃の第4ゾーン
【0111】
スロットダイ:Cu基材に堆積されるアノードでは平均195ミクロン、Al基材に堆積されるカソードでは平均390ミクロン。
【0112】
電極高密度化の手順
次いで、電極はカレンダー処理によって高密度化される。従って、アノードの最終的な厚さは71μm、一方カソードの厚さは76μmである。
【0113】
液体媒体(L-A)を使用して実験室規模で非連続プロセス(バッチ式)によって膜を製造するための一般手順。
1.5gのポリマー2-比較又はポリマー(F-A)を8.5gのアセトンに60℃で溶解し、これにより15重量%の前述のポリマーを含む溶液を得た。溶液は、室温での均質化後に均質であり透明であった。次いで、DBTDL(0.015g)を添加した。溶液を60℃で均質化した。TSPI(0.060g)をそれに添加した。溶液を、TSPIのイソシアネート官能基をポリマーのヒドロキシル基と反応させるために約90分60℃に保った。次の工程で、液体媒体(L-A)をこうして得られた溶液に加えた。重量比[m媒体(L-A)/(m媒体(L-A)+mポリマー))]は80%であった。60℃での均質化後に、ギ酸を添加した。次いで、TEOSをそれに加えた。TEOSがSiO2に完全に変換すると仮定して、TEOSの量を重量比(mSiO2/mポリマー)から計算した。この比は10%であった。ギ酸の量は、次式:nギ酸/nTEOS=7.8から計算した。全ての成分を、アルゴン雰囲気下でこうして得られた溶液混合物に供給した。溶液の混合物を、乾燥室(露点:-40℃)でテープキャスティング機(ドクターブレード)を使用して、一定の厚さでPET基材に流延した。40℃)。厚さは、ナイフとPETフィルムの間の距離によって制御された。溶媒は溶液混合物から急速に蒸発され、膜が得られた。数時間後、膜がPET基材から取り外された。このようにして得られた膜は、32μmの一定の厚さを有した。
【0114】
液体媒体(L-A)を使用してパイロット規模で連続プロセスによって膜を製造するための一般手順。
溶液の調製
10gのポリマー2又はポリマー(F-A)を、60℃で67gのアセトンに溶解し、これにより13重量%の前述のポリマーを含む溶液を得た。溶液は、室温での均質化後に均質であり透明であった。次いで、DBTDL(0.10g)を添加した。溶液を60℃で均質化した。TSPI(0.40g)をそれに添加した。溶液を、TSPIのイソシアネート官能基をポリマーのヒドロキシル基と反応させるために約90分60℃に保った。次の工程で、液体媒体(L-A)をこうして得られた溶液に加えた。重量比[m媒体(L-A)/(媒体(L-A)+mポリマー)]は80%であった。60℃での均質化後に、ギ酸を添加した。次いで、TEOSをそれに加えた。TEOSがSiO2に完全に変換すると仮定して、TEOSの量を重量比(mSiO2/mポリマー)から計算した。この比は10%であった。ギ酸の量は、次式:nギ酸/nTEOS=3.27から計算した。全ての成分を、アルゴン雰囲気下でこうして得られた溶液混合物に供給した。
【0115】
ロールツーロールスロットダイコーティング機(Ingecal-オーダーメイド)
上記で調製した溶液混合物を室温でコーティング機に供給した。La機(La machine)は制御された環境にある(22℃で露点-20℃)。使用時の機械のパラメータ:
-ライン速度:1m/分
-乾燥セクション:40℃の第1及び第2ゾーン、50℃の第3ゾーンと60℃の第4ゾーン。
-スロットダイ:PET基材に堆積される約50ミクロンの膜を生成する平均300ミクロン。
【0116】
実施例1:
本発明のポリマー(F-A)を使用してパイロット規模で連続プロセスによって作製された膜は、上記の手順に従って調製される。得られた膜の厚さは60ミクロンで、基材から簡単に取り外され、膜の良好な機械的特性によりその取り扱いが容易である。両方向の機械的特性が記録された。MD(縦方向)及びTD(横方向)を表2に示す。
【0117】
実施例2:
ポリマー2-比較を使用してパイロット規模で連続プロセスによって作製された膜は、上記の手順に従って調製される。得られた膜は55ミクロンの厚さを有し、基材から困難さを持って取り外される。その取り扱いも困難であり、良好な機械的特性がないために簡単に損傷する可能性がある。
【0118】
実施例3:
本発明のポリマー(F-A)を使用して実験室規模でバッチ式の非連続プロセスによって作製された膜は、上記の手順に従って調製される。得られた膜は41ミクロンの厚さを有し、基材から容易に取り外される。膜の機械的特性を表2に示す。
【0119】
比較例4:
ポリマー2-比較を使用して実験室規模でバッチ式の非連続プロセスによって作製された膜は、上記の手順に従って調製される。得られた膜は48ミクロンの厚さを有し、いかなる損傷をも回避するために困難さを持って基材から取り外される。膜の機械的特性を表2に示す。
【0120】
【0121】
実施例5:
実施例1の膜を有するリチウムイオン電池の製造。
ポーチセル(pouch cell)(4×4cm)は、上記詳述した一般手順に従って調製した膜をカソード(2.2mAh/cm2)とアノード(2.8mAhcm2)の間に配置することによって調製した。ポーチセルの容量は35.3mA/時である。ポーチセルを、2.8Vと4.15Vの間でサイクルさせた。C/20-D/20での2サイクルの工程後に、試験プロトコルを、C/10-D/10、C/5-D/5、C/2-D/2、C/2―D、C/2-2Dでの連続シリーズの5サイクルに従って実施した。異なる放電率でこのようにして得られたポーチセルの放電容量値を本明細書で下の表3に示す。
【0122】
【0123】
本発明の二次電池は適切に機能することが見出された。