(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156370
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231017BHJP
F24F 11/41 20180101ALI20231017BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20231017BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F24F11/41 240
F24F11/41 250
F25B49/02 570B
F25B13/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123171
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2021532659の分割
【原出願日】2019-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 端之
(72)【発明者】
【氏名】落合 康敬
(72)【発明者】
【氏名】市川 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水の凍結による空調装置の故障を防止する。
【解決手段】空調装置は、第1サイクルユニット(1)と、第2サイクルユニット(2)と、制御装置(3)とを備える。第1サイクルユニット(1)においては、第1冷媒が圧縮機(11)、第1熱交換器(13)、減圧装置(15)、および第2熱交換器(16)の第1循環方向に循環する。第2サイクルユニット(2)においては、水を含む第2冷媒がポンプ(21)、第2熱交換器(16)、および負荷装置(22)の順に循環する。第1サイクルユニット(1)は、圧縮機(11)の吐出口と第2熱交換器(16)との間に接続された切替弁(12)を含む。第2冷媒の凍結を示す第1条件が成立する場合、制御装置(3)は、切替弁(12)を制御して、圧縮機(11)の吐出口からの第1冷媒を第1熱交換器(13)および減圧装置(15)を介さずに第2熱交換器(16)に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷媒が圧縮機、第1熱交換器、減圧装置、および第2熱交換器の第1循環方向に循環する第1サイクルユニットと、
水を含む第2冷媒がポンプ、前記第2熱交換器、および負荷装置の順に循環する第2サイクルユニットと、
前記第1サイクルユニットおよび前記第2サイクルユニットを制御する制御装置とを備え、
前記第1サイクルユニットは、前記圧縮機の吐出口と前記第2熱交換器との間に接続された切替弁を含み、
前記第2冷媒の凍結を示す第1条件が成立する場合、前記制御装置は、前記切替弁を制御して、前記吐出口からの前記第1冷媒を前記第1熱交換器および前記減圧装置を介さずに前記第2熱交換器に供給し、
前記切替弁は、前記吐出口と、前記減圧装置および前記第2熱交換器の間の流路との間に接続され、
前記第1条件が成立する場合、前記制御装置は、前記切替弁を開放する、空調装置。
【請求項2】
前記第1条件は、前記第1熱交換器から流出する前記第2冷媒の温度が第1基準温度よりも低いという条件を含む、請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記第1条件は、前記ポンプから吐出される単位時間あたりの前記第2冷媒の量が基準量より小さいという条件を含む、請求項1に記載の空調装置。
【請求項4】
前記第1条件は、前記第2熱交換器に流入する前記第2冷媒の圧力から前記第2熱交換器に流出する前記第2冷媒の圧力を引いた圧力差が、基準値よりも大きいという条件を含む、請求項1に記載の空調装置。
【請求項5】
前記第1条件は、前記ポンプを流れる電流の値が基準電流値より大きいという条件を含む、請求項1に記載の空調装置。
【請求項6】
前記第1条件が成立している場合の前記圧縮機の駆動周波数は、前記第1条件が成立していない場合の前記圧縮機の駆動周波数よりも小さい、請求項1~5のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項7】
前記第1条件の成立後に前記第2熱交換器から流出する前記第2冷媒の温度が第2基準温度より大きいという第2条件が成立する場合、前記制御装置は、前記切替弁を制御して、前記吐出口からの前記第1冷媒を前記第1熱交換器および前記減圧装置を介さずに前記第2熱交換器に供給することを停止するとともに、前記駆動周波数を増加させる、請求項6に記載の空調装置。
【請求項8】
前記第1条件の成立後に前記第2条件が成立する場合、前記制御装置は、前記第2条件が成立してから一定時間待機する、請求項7に記載の空調装置。
【請求項9】
前記第1条件の成立後に前記第2熱交換器から流出する前記第2冷媒の温度が第2基準温度より大きいという第2条件が成立する場合、前記制御装置は、前記圧縮機を停止するとともに、前記第1熱交換器の異常をユーザに報知する、請求項1~6のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項10】
前記第1条件の成立後に前記第2条件が成立する回数が基準回数より大きい場合、前記制御装置は、前記圧縮機を停止するとともに、前記第1熱交換器の異常をユーザに報知する、請求項9に記載の空調装置。
【請求項11】
前記第1条件の成立後に前記第2熱交換器から流出する前記第2冷媒の温度が第2基準温度より大きいという第2条件が成立する場合、前記制御装置は、前記第2条件が成立してから一定時間待機した後、前記圧縮機を停止する、請求項1~6のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項12】
前記第2熱交換器は、プレート式熱交換器である、請求項1~11のいずれか1項に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒と水との間で熱交換が行われる熱交換器を備える空調装置が知られている。たとえば、特許第5492523号公報(特許文献1)には、冷媒と水とが熱交換するプレート式熱交換器内の水の凍結を防止するため、プレート式熱交換器の側面に設置された温度センサの値が予め定められた値以下となる場合に圧縮機の運転を停止する空気調和機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機を停止した場合、冷媒と水との間で熱交換が行われる熱交換器において、冷媒の分布が偏る場合がある。熱交換器内に局所的に分布する冷媒によって、当該冷媒付近の水の冷却が促進される。その結果、凝固によって水の体積が膨張することにより、熱交換器が破損する可能性がある。
【0005】
たとえば、プレート式熱交換器においては、圧縮機を停止すると、当該プレート式熱交換器内の冷媒が各プレートの冷媒の入り口近傍に溜まる場合がある。特許文献1に開示されている空気調和装置においては、圧縮機停止時の冷媒の局所的な分布による水の凍結について考慮されていない。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、水の凍結による空調装置の故障を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調装置は、第1サイクルユニットと、第2サイクルユニットと、制御装置とを備える。第1サイクルユニットにおいては、第1冷媒が圧縮機、第1熱交換器、減圧装置、および第2熱交換器の第1循環方向に循環する。第2サイクルユニットにおいては、水を含む第2冷媒がポンプ、第2熱交換器、および負荷装置の順に循環する。制御装置は、第1サイクルユニットおよび第2サイクルユニットを制御する。第1サイクルユニットは、圧縮機の吐出口と第2熱交換器との間に接続された切替弁を含む。第2冷媒の凍結を示す第1条件が成立する場合、制御装置は、切替弁を制御して、圧縮機の吐出口からの第1冷媒を第1熱交換器および減圧装置を介さずに第2熱交換器に供給する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2冷媒の凍結を示す第1条件が成立する場合に圧縮機の吐出口からの第1冷媒が第1熱交換器および減圧装置を介さずに第2熱交換器に供給されることにより、水の凍結による空調装置の故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る空調装置の構成、ならびに冷房運転における冷媒の流れおよび水の流れを併せて示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る空調装置の構成、ならびに暖房運転における冷媒の流れおよび水の流れを併せて示す図である。
【
図3】
図1の水温センサからの水温のタイムチャートである。
【
図4】
図1の流量計からの水流量のタイムチャートである。
【
図5】
図1の差圧計からの水差圧のタイムチャートである。
【
図6】
図1のポンプの電流値のタイムチャートである。
【
図7】水温のタイムチャート、四方弁の接続状態のタイムチャート、圧縮機の駆動周波数のタイムチャート、およびポンプの駆動周波数のタイムチャートを併せて示す図である。
【
図8】
図1および
図2の制御装置によって行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態1の変形例1において行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1の変形例2において行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態1の変形例3において行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態1の変形例4において行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態2に係る空調装置の構成、ならびに通常の冷房運転における冷媒の流れおよび水の流れを併せて示す機能ブロック図である。
【
図14】実施の形態2に係る空調装置の構成、ならびに凍結条件が成立した場合の冷媒の流れおよび水の流れを併せて示す機能ブロック図である。
【
図15】
図13および
図14の制御装置によって行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る空調装置100の構成、ならびに冷房運転における冷媒(第1冷媒)の流れおよび水(第2冷媒)の流れを併せて示す図である。
図2は、実施の形態1に係る空調装置100の構成、ならびに暖房運転における冷媒の流れおよび水の流れを併せて示す図である。
図1および
図2に示されように、空調装置100は、冷媒が循環する冷媒回路1(第1サイクルユニット)と、水が循環する水回路2(第2サイクルユニット)と、制御装置3とを備える。制御装置3は、冷媒回路1および水回路2を制御する。
【0012】
冷媒回路1は、圧縮機11と、四方弁12(切替弁)と、室外熱交換器13(第1熱交換器)と、室外ファン14と、減圧装置15と、熱交換器16(第2熱交換器)と、アキュムレータ17とを備える。冷媒回路1に含まれる各構成は冷媒配管によって接続されて熱源機を構成する。冷媒回路1は、室外に配置されている。熱交換器16は、ポートP1~P4を有する。
【0013】
圧縮機11は、冷媒を断熱圧縮して冷媒の圧力を高めて吐出し、冷媒回路1において冷媒を循環させる。制御装置3は、空調装置100の運転状況に応じて駆動周波数(圧縮機周波数)を変化させることにより、圧縮機11が単位時間当たりに吐出する冷媒量(運転容量)を変化させる。圧縮機11の内部のモータは、不図示のインバータによって制御される。
【0014】
アキュムレータ17は、液体の冷媒(液冷媒)と気体の冷媒(ガス冷媒)とを分離する。アキュムレータ17に余剰な液冷媒が貯留されることにより、圧縮機11に液冷媒が吸入されることが防止される。
【0015】
四方弁12は、冷媒の循環方向を暖房運転と冷房運転とで切り替える。
図1を参照しながら、冷房運転において四方弁12は、圧縮機11の吐出口を室外熱交換器13に連通させるとともに、アキュムレータ17を熱交換器16のポートP2に連通させる。
図2を参照しながら、暖房運転において四方弁12は、圧縮機11の吐出口を熱交換器16のポートP2に連通させるとともに、アキュムレータ17を室外熱交換器13に連通させる。
【0016】
室外熱交換器13は、フィンおよび伝熱管から構成されるフィンチューブ式熱交換器である。室外熱交換器13においては、冷媒と室外の空気との間で熱交換が行われる。冷房運転において室外熱交換器13は、凝縮器として機能する。暖房運転において室外熱交換器13は、蒸発器として機能する。
【0017】
室外ファン14は、モータと、当該モータによって駆動されるプロペラファンを含む。室外熱交換器13における熱交換を促進するために、室外ファン14は、室外の空気を室外熱交換器13に送風するとともに、室外熱交換器13において冷媒と熱交換した空気を冷媒回路1から室外へ排出する。
【0018】
減圧装置15は、凝縮器として機能する熱交換器からの冷媒を断熱膨張させる。減圧装置15としては、電子膨張弁またはキャピラリを挙げることができる。減圧装置15が電子膨張弁の場合、減圧装置15の開度を調整することにより、単位時間あたりに減圧装置15を通過する冷媒流量を効率よく制御することができる。減圧装置15がキャピラリの場合、当該冷媒流量は固定される。
【0019】
熱交換器16においては、冷媒回路1を循環する冷媒と、水回路2を循環する水との間で熱交換が行われる。熱交換器16は、重ねられた複数のプレートを含むプレート式熱交換器である。複数のプレートの各々は、波型である。熱交換器16は、ろう付けによって密閉された構造を有する。重ねられた複数のプレートのうち、隣接する2つのプレートの間の隙間には、各プレートの入口ノズルから冷媒または水が導かれる。重ねられた複数のプレートにおいては、冷媒が導かれる隙間と水が導かれる隙間が交互に形成される。冷房運転において熱交換器16は、蒸発器として機能する。暖房運転において熱交換器16は、凝縮器として機能する。なお、熱交換器16は、プレート式熱交換器に限定されず、たとえばシェルアンドチューブ式熱交換器であってもよい。
【0020】
水回路2は、ポンプ21と、負荷装置22と、水温センサ23と、流量計24と、差圧計25とを含む、水回路2に含まれる各構成は、水配管で接続されている。水は、ポンプ21、熱交換器16のポートP3、熱交換器16のポートP4、負荷装置22の順に循環する。なお、水回路2を循環する物質は、水を含む冷媒であればよく、たとえばブラインであってもよい。
【0021】
水温センサ23は、熱交換器16のポートP4から流出する水の温度(水温)Twoutを計測して制御装置3に出力する。水温Twoutは、熱交換器16において冷媒と熱交換した水の温度である。流量計24は、ポンプ21から単位時間あたりに吐出される水流量Qwを計測し、制御装置3に出力する。差圧計25は熱交換器16のポートP3の水圧からポートP4の水圧を引いた水圧差ΔPw(圧力差)を計測し、制御装置3に出力する。
【0022】
ポンプ21は、水回路2において水を循環させる。ポンプ21が単位時間当たりに吐出する水量は、制御装置3からの駆動周波数(ポンプ周波数)によって制御される。当該水量の制御方法としては、流量計24の計測値または差圧計25の計測値が目標値に近づくようにポンプインバータ(不図示)が制御されてもよい。空調装置100の性能、あるいは空調装置100の設置状況等に応じて、ポンプ21の制御方法を適宜設定することができる。
【0023】
負荷装置22においては、室内の空気と水とが熱交換を行う。負荷装置22としては、たとえば、エアハンドリングユニット、あるいはファンコイルユニットを挙げることができる。負荷装置22の数は、複数であってもよい。
【0024】
制御装置3は、圧縮機11の駆動周波数およびポンプ21の駆動周波数を制御することにより、室内空間の温度が目標温度(たとえばユーザによって設定された温度)となるように圧縮機11が単位時間あたりに吐出する冷媒量およびポンプ21が単位時間当たりに吐出する水量を制御する。制御装置3は、四方弁12を制御して、冷媒の循環方向を冷房運転と暖房運転とで切り替える。制御装置3は、ポンプ21に流れる電流値Iwを計測する。
【0025】
制御装置3は、処理回路31と、メモリ32と、入出力部33とを含む。処理回路31は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリ32に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。処理回路31が専用のハードウェアである場合、処理回路31は、たとえば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路31がCPUの場合、制御装置3の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアあるいはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ32に格納される。処理回路31は、メモリ32に記憶されたプログラムを読み出して実行する。なお、CPUは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいはDSP(Digital Signal Processor)とも呼ばれる。
【0026】
処理回路31は、空調装置100の異常コードを入出力部33に表示する。入出力部33は、たとえば制御基板上に形成されたディスプレイを含む。ユーザは、当該ディスプレイの表示を確認することにより、空調装置100の異常を知ることができる。
【0027】
メモリ32には、流量計24からの水流量Qw、差圧計25からの水圧差ΔPw、および水温センサ23からの水温Twoutが保存される。なお、メモリ32には、不揮発性または揮発性の半導体メモリ(たとえばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、あるいはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))、および磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、あるいはDVD(Digital Versatile Disc)が含まれる。
【0028】
図1を参照しながら、冷房運転において冷媒は、圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、減圧装置15、熱交換器16のポートP1、熱交換器16のポートP2、四方弁12、およびアキュムレータ17の循環方向(第1循環方向)に冷媒回路1を循環する。圧縮機11から吐出された高温かつ高圧のガス冷媒は、室外熱交換器13において凝縮されて液冷媒に変化し、凝縮熱を室外に放出する。室外熱交換器13から流出した液冷媒は、減圧装置15において断熱膨張し、液冷媒とガス冷媒とが混在する低圧の二相冷媒に変化する。減圧装置15からの二相冷媒は、熱交換器16において水回路2を循環する水から気化熱を吸収してガス冷媒に変化する。熱交換器16からの冷媒は、アキュムレータ17を通過するときに液冷媒とガス冷媒とに分離される。アキュムレータ17からのガス冷媒が圧縮機11に吸入される。
【0029】
蒸発器として機能する熱交換器16においては、冷媒の温度が水の温度よりも低い。水の熱が気化熱として冷媒に吸収されるため、水の温度が低下する。水の温度が水の凝固点(0℃)以下になると、水が凍結した氷が発生し始める。その結果、水の体積が膨張し、熱交換器16のプレートの破裂が発生し得る。プレートが破裂すると、冷媒回路1内に水が流入して空調装置100が正常に動作しなくなる。プレートの破裂の修理には、長時間を要する。
【0030】
そこで、空調装置100においては、水の凍結を示す凍結条件(第1条件)が成立する場合、制御装置3は、四方弁12を制御して、室外熱交換器13および減圧装置15を介さずに圧縮機11の吐出口からの高温の冷媒を熱交換器16に供給する。すなわち、制御装置3は、
図1に示される冷房運転における冷媒の循環方向において水の凍結条件が成立した場合、四方弁12を制御して冷媒の循環方向を
図2に示される暖房運転の冷媒の循環方向に切り替える。圧縮機11から吐出される高温の冷媒を室外熱交換器13および減圧装置15を介さずに直接的に熱交換器16に導くことにより、熱交換器16内の水の温度を上昇させて水の凍結を抑制することができる。その結果、空調装置100の故障を防止することができる。
【0031】
再び
図2を参照しながら、暖房運転において冷媒は、圧縮機11、四方弁12、熱交換器16のポートP2、熱交換器16のポートP1、減圧装置15、室外熱交換器13、四方弁12、およびアキュムレータ17の循環方向(第2循環方向)に冷媒回路1を循環する。圧縮機11から吐出された高温かつ高圧のガス冷媒は、熱交換器16において凝縮されて液冷媒に変化し、凝縮熱を水に放出する。熱交換器16から流出した液冷媒は、減圧装置15において断熱膨張し、低圧の二相冷媒に変化する。減圧装置15からの二相冷媒は、室外熱交換器13において室外の空気から気化熱を吸収してガス冷媒に変化する。室外熱交換器13からの冷媒は、アキュムレータ17において液冷媒とガス冷媒とに分離される。アキュムレータ17からのガス冷媒が圧縮機11に吸入される。
【0032】
以下では、
図3~
図6を用いて、具体的な凍結条件について説明する。
図3は、
図1の水温センサ23からの水温Twoutのタイムチャートである。熱交換器16における水の凍結により、熱交換器16から流出する水の温度は低下する。そのため、
図3に示されるように、水温Twoutが基準温度T0(第1基準温度)より低い場合に水が凍結したと判定し、水温Twoutが基準温度T0以上である場合、水は凍結しておらず正常であると判定することができる。すなわち、凍結条件は、水温Twoutが基準温度T0より低いという条件とすることができる。当該凍結条件によれば、時刻tm1において水は正常と判定され、時刻tm2において水は凍結していると判定される。
【0033】
図4は、
図1の流量計24からの水流量Qwのタイムチャートである。熱交換器16における水の凍結により、熱交換16内において水が通過可能な流路が閉塞するため、熱交換器16から単位時間あたりに流出する水の量が減少する。そこで、
図4に示されるように、水流量Qwが基準量Qw0より小さい場合に水が凍結したと判定し、水流量Qwが基準量Qw0以上である場合、水は凍結しておらず正常であると判定することができる。すなわち、凍結条件は、水流量Qwが基準量Qw0より小さいという条件とすることができる。当該凍結条件によれば、時刻tm3において水は正常と判定され、時刻tm4において水は凍結していると判定される。
【0034】
図5は、
図1の差圧計25からの水差圧ΔPwのタイムチャートである。熱交換器16における水の凍結により、熱交換器16内において水が通過可能な流路が閉塞し、熱交換器16に流入する単位時間あたりの水流量が減少する。そのため、ポンプ21から熱交換器16の流路を流れる水の圧力が増加する。また、熱交換器16から流出する単位時間あたりの水流量が減少するため、熱交換器16と負荷装置22との間を流れる水の圧力が減少する。その結果、熱交換器16に流入する水の圧力から熱交換器16から流出する水の圧力を引いた水圧差ΔPwは増加する。そこで、
図5に示されるように、水圧差ΔPwが基準値ΔPw0より大きい場合に水が凍結したと判定し、水圧差ΔPwが基準値ΔPw0以下である場合、水は凍結しておらず正常であると判定することができる。すなわち、凍結条件は、水圧差ΔPwが基準値ΔPw0より大きいという条件とすることができる。当該凍結条件によれば、時刻tm5において水は正常と判定され、時刻tm6において水は凍結していると判定される。
【0035】
図6は、
図1のポンプ21の電流値Iwのタイムチャートである。熱交換器16における水の凍結により、熱交換器16から流出する単位時間あたりの水流量が減少するため、負荷装置22を単位時間あたりに通過する水流量が減少する。負荷装置22を通過する水流量を増加させるため、ポンプ21から吐出される水流量が増加するようにポンプ21が制御される。ポンプ21への負荷が大きくなり、電流値Iwが増加する。そこで、
図6に示されるように、電流値Iwが基準電流値Iw0より大きい場合に水が凍結したと判定し、電流値Iwが基準電流値Iw0以下である場合、水は凍結しておらず正常であると判定することができる。すなわち、凍結条件は、電流値Iwが基準電流値Iw0より大きいという条件とすることができる。当該凍結条件によれば、時刻tm7において水は正常と判定され、時刻tm8において水は凍結していると判定される。
【0036】
なお、水の凍結条件は、
図3~
図6に示される条件以外の条件でもよいし、複数の条件を含んでいてもよい。
【0037】
図7は、水温Twoutのタイムチャート、四方弁12の接続状態のタイムチャート、圧縮機11の駆動周波数のタイムチャート、およびポンプ21の駆動周波数のタイムチャートを併せて示す図である。
図7においては、凍結条件として、水温Twoutが基準温度T0より低いという条件が用いられる。制御装置3は、サンプリングタイムst1およびst2において水温Twoutに対する凍結条件判定処理を行う。なお、四方弁12のON状態とは、
図2に示されるように圧縮機11の吐出口が熱交換器16のポートP2に連通している接続状態である。四方弁12のOFF状態とは、
図1に示されるように圧縮機11の吐出口が室外熱交換器13に連通している接続状態である。
【0038】
図7に示されるように、サンプリングタイムst11において水温Twoutは基準温度T0より低い。そのため、制御装置3は、水が凍結していると判定し、サンプリングタイムst1において四方弁12をOFF状態からON状態に切り替える。圧縮機11から吐出された高温かつ高圧のガス冷媒が熱交換器16に導かれるため、熱交換器16の温度が上昇し、凍結した水が融解する。
【0039】
サンプリングタイムst1までは、ユーザの設定により、空調装置100は冷房運転を行っている。サンプリングタイムst1において四方弁12が切り替えられることにより、空調装置100は、自動的に暖房運転を開始する。当該暖房運転は、負荷装置を暖めることではなく、熱交換器16において凍結した水を融解することを目的としている。そこで、制御装置3は、凍結条件が成立した場合、冷房運転を求めるユーザの快適性をできるだけ低下させないため、圧縮機11の駆動周波数を通常運転の場合(凍結条件が成立していない場合)の駆動周波数よりも低下させる。凍結条件が成立した場合の圧縮機11の駆動周波数は、最低周波数に設定されてもよい。
図7においては、制御装置3は、サンプリングタイムst1において、圧縮機11の駆動周波数を、f2からf1に低下させる。
【0040】
凍結条件が成立した場合にポンプ21を停止すると、熱交換器16内を水が流れなくなり、水の凍結が拡大する可能性がある。そこで、制御装置3は、凍結条件が成立してもポンプ21の駆動周波数を変更しない。
図7においては、制御装置3は、サンプリングタイムst1以降もポンプ21の駆動周波数をf3に維持している。
【0041】
水温Twoutが基準温度T1(第2基準温度)より高いという凍結解消条件(第2条件)が成立する場合、制御装置3は、熱交換器16における水の凍結が解消されたとして、四方弁12を切り替えて、冷房運転を再開する。
図7においては、サンプリングタイムst2において水温Twoutが基準温度T1(>T0)より高い。制御装置3は、サンプリングタイムst2において四方弁12の接続状態をON状態からOFF状態に切り替えるとともに、圧縮機11の駆動周波数をf1からf2に戻して、冷房運転を再開する。
【0042】
図8は、
図1および
図2の制御装置3によって行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示される処理は、空調装置100を統合的に制御する不図示のメインルーチンによってサンプリングタイム毎に実行される。以下ではステップを単にSと記載する。
【0043】
図8に示されるように、制御装置3は、S101において凍結条件が成立したか否かを判定する。凍結条件が成立していない場合(S101においてNO)、制御装置3は、処理をメインルーチンに返す。凍結条件が成立している場合(S101においてYES)、制御装置3は、S102において四方弁12を切り替えて、処理をS103に進める。制御装置3は、S103において圧縮機11の駆動周波数を低下させて、処理をS104に進める。制御装置3は、S104において一定時間待機した後、処理をS105に進める。制御装置3は、S105において水温Twoutが基準温度T1より大きいか否かを判定する。水温Twoutが基準温度T1以下である場合(S105においてNO)、制御装置3は、処理をS104に戻す。水温Twoutが基準温度T1より大きい場合(S105においてYES)、制御装置3は、S106において四方弁12を切り替えて、処理をS107に進める。制御装置3は、S107において圧縮機11の駆動周波数を増加させて処理をメインルーチンに返す。
【0044】
以下では、
図9~
図12を用いて、凍結解消条件が成立した場合(
図8のS105においてYES)に行われる処理の変形例1~4についてそれぞれ説明する。
【0045】
図9は、実施の形態1の変形例1において行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示されるフローチャートは、
図8のフローチャートのS106およびS107がS116およびS117にそれぞれ置き換えられたフローチャートである。
図9に示されるように、S105においてYESの場合、制御装置3は、S116において圧縮機11を停止した後、S117において異常コードをユーザに報知して、処理をメインルーチンに返す。
【0046】
図10は、実施の形態1の変形例2において行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
図10に示されるフローチャートは、
図8のフローチャートのS105とS106との間にS110が追加されたフローチャートである。
図10に示されるように、S105においてYESの場合、制御装置3は、S110において一定時間待機した後、S106およびS107の順に処理を行って処理をメインルーチンに返す。制御装置3がS110において一定時間待機している間、圧縮機11から吐出された高温の冷媒の熱交換器16への供給が継続している。S110において一定時間待機した後、
図11に示される変形例3のフローチャートのように、S111において圧縮機11を停止してもよい。
【0047】
図12は、実施の形態1の変形例4において行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
図12に示されるフローチャートは、
図8のフローチャートにS114~S117が追加されたフローチャートである。
図12のS116およびS117は、
図9のS116およびS117と同様である。
図12に示されるように、S105においてYESの場合、制御装置3は、S114において、S101の凍結条件の成立後にS105の条件が成立した回数である凍結回数を1だけ増加させて処理をS115に進める。なお、凍結回数は、ユーザによって冷房運転が開始される度に0に設定される。
【0048】
制御装置3は、S115において凍結回数が基準回数N1より大きいか否かを判定する。凍結回数が基準回数N1以下である場合(S115においてNO)、制御装置3は、
図8と同様にS106およびS107を実行した後、処理をメインルーチンに戻す。凍結回数が基準回数N1より大きい場合(S115においてYES)、制御装置3は、
図9と同様にS116およびS117を実行した後、処理をメインルーチンに戻す。
【0049】
以上、実施の形態1に係る空調装置によれば、水の凍結による空調装置の故障を防止することができる。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態1においては、冷房運転および暖房運転が切り替え可能な空調装置について説明した。実施の形態2においては、冷房運転用の空調装置について説明する。
【0051】
図13は、実施の形態2に係る空調装置200の構成、ならびに通常の冷房運転における冷媒の流れおよび水の流れを併せて示す機能ブロック図である。
図14は、実施の形態2に係る空調装置200の構成、ならびに凍結条件が成立した場合の冷媒の流れおよび水の流れを併せて示す機能ブロック図である。空調装置200の構成は、
図1の冷媒回路1および制御装置3が、冷媒回路1Aおよび制御装置3Aにそれぞれ置き換えられた構成である。冷媒回路1Aの構成は、
図1の冷媒回路1の構成から四方弁12が除かれるとともに、操作弁18(切替弁)が追加された構成である。これら以外は同様であるため、説明を繰り返さない。
【0052】
図13に示されるように、操作弁18は、圧縮機11の吐出口と、減圧装置15および熱交換器16の間の流路との間に接続されている。通常の冷房運転において、制御装置3Aは、操作弁18を閉止する。凍結条件が成立した場合、
図14に示されるように、制御装置3は、操作弁18を開放する。その結果、圧縮機11から吐出された高温かつ高圧のガス冷媒が熱交換器16に供給される。
【0053】
図15は、
図13および
図14の制御装置3Aによって行われる凍結判定処理の流れを示すフローチャートである。
図15に示される処理は、空調装置200を統合的に制御する不図示のメインルーチンによってサンプリングタイム毎に実行される。
図15に示されるフローチャートは、
図8に示されるフローチャートのS102およびS106がS202およびS206にそれぞれ置き換えられたフローチャートである。
【0054】
図15に示されるように、制御装置3Aは、S101において凍結条件が成立している場合(S101においてYES)、S202において操作弁18を開放し、処理をS103に進める。制御装置3Aは、実施の形態1と同様にS103からS105を実行する。S105において水温Twoutが基準温度T1より大きい場合(S105においてYES)、制御装置3Aは、S206において操作弁18を開放して、S107を実行した後、処理をメインルーチンに返す。
【0055】
なお、実施の形態2においても、S105においてYESである場合に
図9~
図12に示される処理が行われてもよい。
【0056】
以上、実施の形態2に係る空調装置によれば、水の凍結による空調装置の故障を防止することができる。
【0057】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1,1A 冷媒回路、2 水回路、3,3A 制御装置、11 圧縮機、12 四方弁、13 室外熱交換器、14 室外ファン、15 減圧装置、16 熱交換器、17 アキュムレータ、18 操作弁、21 ポンプ、22 負荷装置、23 水温センサ、24 流量計、25 差圧計、31 処理回路、32 メモリ、33 入出力部、100,200 空調装置、P1~P4 ポート。