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特開2023-156376付加製造された耐火金属部材、付加製造方法及び粉末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156376
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】付加製造された耐火金属部材、付加製造方法及び粉末
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/057 20230101AFI20231017BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231017BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20231017BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20231017BHJP
   C22C 1/05 20230101ALI20231017BHJP
【FI】
C22C1/057
B22F1/00 P
B22F1/05
C22C1/04 D
C22C1/05 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023123621
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2021527249の分割
【原出願日】2019-10-03
(31)【優先権主張番号】GM50191/2018
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(71)【出願人】
【識別番号】390040486
【氏名又は名称】プランゼー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ライツ,カール-ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ケストラー,ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジンガー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ライヒトフリート,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】カセラー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】スタイコヴィッチ,ヤンコ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低減された欠陥、特に亀裂頻度、改善された強度、改善された破壊靭性、改善された延性、及び改善された密度を有する部材を提供する。
【解決手段】レーザー又は電子ビームによって付加製造方法で製造された、モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からのマトリックス相を有し、モリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である、部材であって、融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子を含有することを特徴とする、部材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー又は電子ビームによって付加製造方法で製造された、モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からのマトリックス相を有し、モリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である、部材であって、融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子を含有することを特徴とする、部材。
【請求項2】
前記部材の前記粒子の含有率が非常に高く、前記マトリックス相が、10000平方マイクロメートル未満、好ましくは5000平方マイクロメートル未満、特に好ましくは2500平方マイクロメートル未満の平均結晶粒面積を有する、請求項1に記載の部材。
【請求項3】
前記粒子の平均粒子サイズが5マイクロメートル未満である、請求項1から2のいずれか一項に記載の部材。
【請求項4】
前記部材中の前記粒子の体積含有率が0.05体積%と10体積%との間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の部材。
【請求項5】
前記部材が、少なくとも破壊平面において、粒内割合が破壊面積の50%超である破壊挙動を示す、請求項1から4のいずれか一項に記載の部材。
【請求項6】
前記部材が、付加製造方法で造形方向に沿って製造された、かつ平均結晶粒アスペクトが、前記造形方向に対して平行な平面において5未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の部材。
【請求項7】
前記粒子が、個別に又は任意の組み合わせで、
- 酸化物、好ましくはZrO、HfO
- 炭化物、好ましくはZrC、NbC、MoC、TiC、TaC、HfC
- 窒化物、好ましくはYN、TaN、HfN
- ホウ化物、好ましくはTaB、HfB
を含む群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の部材。
【請求項8】
前記部材(8)が、1つの合金元素又は複数の合金元素を有し、前記合金元素が、
- モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、
- タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びに
- モリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、
少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用し、前記合金元素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的な非酸化形態と酸化形態との両方で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の部材。
【請求項9】
少なくとも以下のステップ:
- モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からの出発粉末を提供するステップ、
- レーザー又は電子ビームによって前記出発粉末の前記粒子を層状に溶け合わせて、それによってマトリックス相を形成するステップであって、前記マトリックス相中のモリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である、ステップ
を有する、部材、特に、請求項1から8のいずれか一項に記載の部材を製造するための付加製造の方法であって、
前記出発粉末が、
- 融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子を含有すること、及び/又は
- 粒子の少なくとも1つの前駆物質を含有しており、前記粒子の融点が、前記マトリックス相の融点より高く、前記少なくとも1つの前駆物質からの前記粒子が、レーザー又は電子ビームによって前記出発粉末の前記粒子を層状に溶け合わせる際に生成されること、及び/又は
- レーザー又は電子ビームによって前記出発粉末の前記粒子を層状に溶け合わせる際にプロセスガス雰囲気の少なくとも1つの成分との反応において融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子を形成する少なくとも1つの成分を含有していること
を特徴とする、付加製造方法。
【請求項10】
前記出発粉末を提供するステップが、原料粉末を溶融相で球状化すること及び/又は造粒することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子の平均サイズが5マイクロメートル未満である、請求項9から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記部材中の前記粒子の体積含有率が0.05体積%と10体積%との間である、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
提供される前記出発粉末が、少なくとも1つの元素を有し、前記元素が、モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びにモリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用し、かつ提供される前記出発粉末中に少なくとも部分的な非酸化形態で存在すること、及び製造された前記部材(8)中で、前記還元元素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に酸化物として存在する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法
【請求項14】
モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からの粒子を有し、前記粒子が、マトリックス相を有し、前記マトリックス相中のモリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である粉末の使用において、前記粉末が、
- 融点が前記粒子の前記マトリックス相の融点より高い粒子を含有すること、及び/又は
- 粒子の少なくとも1つの前駆物質を含有しており、前記粒子の融点が、前記粒子の前記マトリックス相の融点より高く、前記少なくとも1つの前駆物質からの前記粒子が、レーザー又は電子ビームによって前記出発粉末の前記粒子を層状に溶け合わせる際に生成されることを特徴とする、
付加製造方法のための、特に、請求項9から13のいずれか一項に記載の付加製造方法のための、粉末の使用。
【請求項15】
前記粉末の前記粒子が、好ましくは微細な析出物の形態で前記粒子を有する、請求項14に記載の粉末の使用。
【請求項16】
前記粉末が、モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金又はモリブデン-タングステン基合金を含有する粒子と、融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子とを含有する混合物である、請求項14又は15に記載の粉末の使用。
【請求項17】
融点が前記マトリックス相の融点より高い前記粒子の前記少なくとも1つの前駆体物質が、前記粉末の前記粒子上の層として少なくとも部分的に存在する、請求項14から16のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【請求項18】
融点が前記粒子の前記マトリックス相の融点より高い前記粒子の平均粒子サイズが5マイクロメートル未満である、請求項14から17のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【請求項19】
融点が前記粒子の前記マトリックス相の融点より高い前記粒子の体積含有率が、前記粉末中で0.05体積%と10体積%との間である、請求項14から18のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【請求項20】
前記粉末が、1つの元素又は複数の元素をさらに有し、前記元素が、モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びにモリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用すること、及び少なくとも1つの還元元素が、少なくとも部分的な非酸化形態で存在する、請求項14から19のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の上位概念の特徴を有する部材、請求項9に記載の上位概念の特徴を有する部材を製造するための付加製造方法、及び付加製造方法のための粉末の使用に関する。
【0002】
タングステン、モリブデン及びそれらの合金は、融点が高く、熱膨張係数が低く、かつ熱伝導率が高いことを理由に、例えば、X線アノード、ヒートシンク、高温加熱ゾーン、スラスタ、押出ダイ、射出成形用金型部品、ホットランナーノズル、抵抗溶接電極又はイオン注入装置用構成要素のような様々な高性能用途に使用される。さらに、これらの元素は高密度を有するので、結果的に、電磁放射線及び粒子放射線に対して良好な遮蔽挙動が保証されている。室温での延性が比較的低く、かつDBTT(延性脆性遷移温度:Ductile-Brittle-Transition-Temperature)が高いことから、切削加工及び非切削加工の方法のどちらについても、加工特性は好ましくない。さらに、モリブデン-レニウム及びタングステン-レニウムを除いて、これらの材料の溶接性は悪い。これらの材料からの部材を製造するための大規模で工業的な方法は、対応する出発粉末が圧縮及び焼結され、通常、続いて高温(DBTTより高い温度)で再成形される、粉末冶金的な製造ルートである。
【0003】
付加製造方法によって達成可能な幾何学的な部材構成の可能性は、従来の方法の可能性をはるかに上回る。特に、モリブデン、タングステン及びそれらの合金のような材料の場合、付加製造方法は特に有利である。というのも、これらの材料は、他の金属材料と比較して、一般的な従来の製造法では加工が著しく難しいからである。金属材料の付加製造では、多くの場合、出発材料として粉末が使用され、またワイヤーも使用されるがそれほど多くはない。金属材料の場合、層状に施用された粉末がレーザービームによって局所的に焼結される選択的レーザー焼結(SLS)、層状に施用された粉末が局所的に溶融される選択的レーザービーム溶融(SLM)及び選択的電子ビーム溶融(SEBM)、並びにノズルを通して供給された粉末が溶融されるレーザー金属堆積(LMD)のような複数のプロセスが確立されている。
【0004】
付加製造方法では、切削工具又は成形工具が必要とされず、それによって、より少ない個数で部材の低コスト製造が可能になる。さらに、溶け合わさっていない又は一緒に焼結されていない粉末粒子を再利用することができるので、高い資源効率が得られる。これらの方法の欠点は、現在、造形速度がまだ非常に低いことである。
【0005】
さらに、ビームに基づく付加製造方法の場合、鋳造又は焼結のような従来の固結方法と比較して、他の金属物理学的な機構が効果的であることを考慮する必要がある。焼結時に表面拡散及び粒界拡散によって圧縮度が決定されるが、SLM、SEBM及びLMDのような、局所的な溶融と高い冷却速度での凝固とを含む方法では、作用機構は、異なり、より非常に複雑であり、また未だ完全には理解されていない。ここでは、濡れ挙動、マランゴニ対流、気化による反跳効果、偏析、エピタキシャル結晶粒成長、凝固時間、熱流、熱流方向、及び凝固収縮の結果としての内部応力が言及される。従来の方法で成功を収めている材料概念では、多くの場合、ビームに基づく付加製造において、欠陥のない部材はもたらされない。
【0006】
選択的レーザービーム溶融による純タングステンの製造は、学術論文Dianzheng Wang等(Appl. Sei. 2007, 7, 430)に記載されており、選択的レーザービーム溶融によるモリブデンの製造は、学術論文D. Faidel等(Additive Manufacturing 8 (2015) 88-94)に記載されている。国際公開第2012/055398号には、耐火金属用の選択的レーザービーム溶融プロセスが開示されており、ここでは、材料の組成が、部材の造形中に大気中に含まれる反応性ガスとの反応によって変化し得る。中国特許出願公開第103074532号明細書の公報及び関連する学術論文であるDongdong Gu等の"Selective Laser Melting Additive Manufacturing of Hard-to-Process Tungsten-Based Alloy Parts With Novel Crystalline Growth Morphology and Enhanced Performance", Journal of Manufacturing Science and Engineering, August 2016, Vol. 138, 081003には、メカニカルアロイングされたタングステン-TiC粉末のレーザー溶融が記載されている。S. K. Makineni等は、"Synthesis and stabilization of a new phase regime in a Mo-Si-B based alloy by laser-based additive manufacturing", Acta Materialia 151 (2018), 31 40で、結晶粒微細化酸化ランタンナノ粒子を使用したモリブデン基合金の製造を記載している。
【0007】
米国特許出願公開第2018/0214949号明細書及び国際公開第2018/144323号は、アルミニウム合金製の粒子を含有する付加製造用の粉末を製造するための結晶粒微細化ナノ粒子の使用を示す。
【0008】
最も広まっている付加製造方法は、選択的レーザービーム溶融法(SLM)である。この場合、スキージによって粉末層が基材に施用される。続いて、レーザービームがこの粉末層の上に誘導される。これによって、粉末粒子が局所的に溶融し、結果的に、個々の粉末粒子が、互いにかつ事前に施用された層と一緒に溶け合う。したがって、製造すべき部材の層は、粉末粒子の連続的な局所溶融と、それに続く凝固とによって形成される。続いて、さらなる粉末層が、すでに加工された粉末層に施用され、プロセスが再開される。したがって、部材は、それぞれの新しい粉末層によってさらに造形され、造形方向は、粉末層のそれぞれの平面に対して垂直に配置されている。付加製造方法によって特徴的な微細構造が形成されるので、当業者は、部材が従来のプロセスによって製造されているのか、又は付加製造方法によって製造されているのかを認識することができる。
【0009】
モリブデン及びタングステンは、高い融点を有し、固相では高い熱伝導率を有し、また液相では高い表面張力及び粘度を有する。これらの材料は、付加製造方法によって加工するのが極めて難しい材料に分類される。高い熱伝導率に起因する溶融相における短い時間は、高い表面張力及び高い粘度と組み合わさってボーリング効果を促進するが、このボーリング効果は、今度は細孔を形成するので、亀裂を引き起こす欠陥及び低い密度を生じさせる。ボーリング効果はまた、表面品質、特に表面粗さにも悪影響を及ぼす。モリブデン及びタングステンは非常に低い破壊靭性を有するので、局所的な欠陥は、プロセスに内在する内部の熱誘起応力と組み合わさって亀裂を生じさせる。
【0010】
選択的レーザー溶融又は電子ビーム溶融によってモリブデン及びタングステンから製造された部材は、柱状結晶組織を示し、平均結晶粒アスペクト比(英:Grain Aspect Ratio(GAR値);結晶粒長と結晶粒幅との比)は、造形方向において、典型的には8超である。造形方向に対して垂直な平面には、レーザービーム又は電子ビームの溶融痕跡である粒界亀裂ネットワークが形成される。これらの亀裂は、主に粒界熱間亀裂及び冷間亀裂である。これらは、部分的に互いに連結しており、それによって、部材は、多くの場合、開放細孔を有し、気体及び液体に対して密封性がなくなる。部材の破壊をもたらす荷重では、通常、塑性変形は生じず、主に粒界破壊挙動が観察される。粒界破壊挙動とは、主に粒界に沿った亀裂によって引き起こされる破壊であると理解される。この破壊挙動によって、そのように製造された部材は、低い破壊強度、低い破壊靭性及び低い延性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2012/055398号
【特許文献2】中国特許出願公開第103074532号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0214949号明細書
【特許文献4】国際公開第2018/144323号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Dianzheng Wang等,Appl. Sei. 2007, 7, 430
【非特許文献2】D. Faidel等,Additive Manufacturing 8 (2015) 88-94
【非特許文献3】Dongdong Gu等、"Selective Laser Melting Additive Manufacturing of Hard-to-Process Tungsten-Based Alloy Parts With Novel Crystalline Growth Morphology and Enhanced Performance", Journal of Manufacturing Science and Engineering, August 2016, Vol. 138, 0810031
【非特許文献4】S. K. Makineni等、"Synthesis and stabilization of a new phase regime in a Mo-Si-B based alloy by laser-based additive manufacturing", Acta Materialia 151 (2018), 31 40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、以下のものを提供することである:
- モリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超であり、先に論じた問題が回避される、一般的な部材、
- モリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である出発粉末を使用して、前述の特性を有する部材をプロセスで確実に製造するための一般的な付加製造方法、
- 及び付加製造方法での使用について最適化された挙動を示す粉末であって、該粉末が、モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からの粒子を有し、該粒子が、マトリックス相を有し、モリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である、粉末。
【0014】
特に、本発明の課題は、以下の特性を有する部材を提供することである:
- 低減された欠陥、特に亀裂頻度
- 改善された強度
- 改善された破壊靭性
- 改善された延性
- 改善された密度
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、請求項1の特徴を有する部材、請求項9の特徴を有する付加製造方法、及び請求項14の特徴を有する粉末の使用によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項において定義されている。
【0016】
粉末とは、本開示において、粒子の集合体であると理解される。粒子は、例えば、粉末の粒子の体積成分として(特に、例えば、析出物の形態で)、粉末の粒子の表面に付着している粒子として、又は粒子とは別に存在する粉末成分として存在し得る。
【0017】
モリブデン基合金とは、少なくとも50原子%のモリブデンを含有する合金であると理解される。本発明において使用するためのモリブデン基合金は、少なくとも85、90、95又は99原子%のモリブデンを有する。タングステン基合金は、少なくとも50原子%のタングステンを含有している。本発明において使用するためのタングステン基合金は、少なくとも85、90、95又は99原子%のタングステンを有する。モリブデン-タングステン合金とは、合計で少なくとも50原子%のモリブデン及びタングステン、特に、合計で少なくとも80、90、95又は99原子%のモリブデン及びタングステンを有する合金であると理解される。モリブデン-タングステン合金は、全ての濃度範囲において、好ましい実施形態である。
【0018】
典型的には、ビームに基づく付加製造方法によってモリブデン、タングステン、モリブデン基合金及びタングステン基合金から製造された部材は、0.25原子%と0.6原子%との間の酸素含有率を有する。メカニカルアロイングされた出発粉末を使用すると、2原子%以上の著しくより高い酸素含有率が生じる場合もある。酸素含有率は、例えば選択的レーザー溶融又は電子ビーム溶融のような付加製造方法では低下しない。例えば走査型電子顕微鏡法又は透過型電子顕微鏡法のような高解像度の検査方法を用いると、従来技術による部材では、酸素が主に粒界に酸化モリブデン又は酸化タングステンの形態で析出していることが示される。これらの析出物は、粒界破壊挙動の原因となり、結果として、モリブデン、タングステン及びそれらの合金製の付加製造された部材の破壊強度及び破壊靭性が低下する。酸素含有率が高いと、熱間亀裂及び冷間亀裂の両方が生ずる場合がある。熱間亀裂は、製造中に粒界強度が低下することによって生じる。このような場合、熱の影響を受けた溶融痕跡ゾーンでは、粒界強度は、粒界に析出した酸化物の溶融によって悪影響を受ける。冷間亀裂は、亀裂核として作用する欠陥(細孔、微細亀裂)と組み合わさった熱誘起応力に起因する。ここで、粒界強度が結晶粒内部の強度より著しく低いと、従来技術の場合のように、粒界亀裂経路が生じる。
【0019】
さらに、酸素含有率が高いと、ボーリング効果も強くなる。酸素は溶融ゾーンのエッジ領域で濃縮され、そこで表面張力を低下させる。そうなることで、マランゴニ対流によって、エッジ領域から溶融ゾーンの中心への材料の流れが促進され、結果的に、プラトー・レイリー不安定性によって引き起こされるボーリングがさらに著しく強くなる。
【0020】
本発明の基本思想は、融点がマトリックス相の融点より高く、したがって、溶融マトリックス相の結晶化核として作用して部材の微細な結晶粒組織を達成することができる粒子を使用することである。微細な結晶粒組織では、部材中の粒界の総面積は、粗い結晶粒組織より大きいので、モリブデン又はタングステンによって形成された酸化物は、より大きな面積にわたって分布しており、そのようにするために部材の酸素含有率を削減する必要はないであろう。このようにして、粒界の脆化を回避することができる。さらに、微細な結晶粒組織によって靭性が増加する。
【0021】
基本的に、結晶粒微細化は、組成的過冷却によっても調整可能である。しかしながら、十分な効果を得るためには、組成的過冷却をもたらす高い含有率の合金元素が必要である。これらの高い含有率は、例えば混晶形成又は析出によって、強度増加を引き起こし、結果的に、例えば破壊靭性によって表される延性が著しく低下する。マトリックス相の融点より高い融点を有する粒子を本発明によって設けることによって、組成的過冷却なしで、又は組成的過冷却をもたらす合金元素の含有率をより低くして、結晶粒微細化効果を得ることが可能である。
【0022】
本発明による部材は、融点がマトリックス相の融点より高い粒子を含有する点で優れている。これらの粒子は、すでに記載したように、部材中で微細な結晶粒組織を形成することで、強度及び靭性を増加させるように作用する。
【0023】
部材を製造する使用材料は、好ましくは粉末である。
【0024】
粒子が存在することは、通常の金属組織学的な方法、例えば、走査型電子顕微鏡法又は透過型電子顕微鏡法によって証明される。
【0025】
本発明による付加製造方法は、出発粉末が、
- 融点がマトリックス相の融点より高い粒子を含有する点、及び/又は
- 粒子の少なくとも1つの前駆物質(例えば、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、チタン、ニオブ、バナジウム)を含有しており、粒子の融点が、マトリックス相の融点より高く、この前駆物質からの粒子が、レーザー又は電子ビームによって出発粉末の粒子を層状に溶け合わせる際に生成される点、
- レーザー又は電子ビームによって出発粉末の粒子を層状に溶け合わせる際にプロセスガス雰囲気の少なくとも1つの成分(例えば、窒素)との反応において融点がマトリックス相の融点より高い粒子を形成する少なくとも1つの成分(例えば、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、チタン、ニオブ、バナジウム)を含有している点
で優れている。
【0026】
好ましくは、出発粉末を提供するステップは、原料粉末を溶融相で球状化すること及び/又は造粒することを含むことが意図されている。
【0027】
従来技術によって知られている全ての付加製造方法、特に、多数の個々の粉末粒子が高エネルギービーム(レーザービーム又は電子ビーム)によって溶け合わさって立体構造にされる付加製造方法を本発明において使用することができる。
【0028】
付加製造方法、特に本発明による付加製造方法での本発明による使用のための粉末は、
- 融点が粒子のマトリックス相の融点より高い粒子を含有する点、及び/又は
- 粒子の少なくとも1つの前駆物質を含有しており、粒子の融点が、粒子のマトリックス相の融点より高く、この前駆物質からの粒子が、レーザー又は電子ビームによって出発粉末の粒子を層状に溶け合わせる際に生成される点
で優れている。
【0029】
好ましくは、個々の粉末粒子は、付加製造方法によって溶融され、その際、有利には、SLM(選択的レーザービーム溶融)又はSEBM(選択的電子ビーム溶融)が使用される。
【0030】
ここで、部材は、好ましくは層状に造形される。例えば、スキージによってベースプレートに粉末層が供給される。粉末層は、通常10~150μmの高さを有する。
【0031】
SEBMでは、粉末粒子はまず、導電性になるように、デフォーカスされた電子ビームによって互いに焼結される。続いて、電子ビームでのエネルギー導入によって粉末が局所的に溶融される。SLMの場合、レーザービームでの粉末の局所的な溶融をすぐに行うことができる。
【0032】
ビームは、典型的には線幅30マイクロメートル~200マイクロメートルの線形の溶融浴を形成する。レーザービーム又は電子ビームは、粉末層の上に誘導される。適切なビーム誘導によって、粉末層全体又は粉末層の一部のみを溶融し、その後、固化することができる。粉末層の溶融及び固化した領域は、完成部材の一部である。未溶融の粉末は、製造された部材の構成要素ではない。続いて、さらなる粉末層がスキージによって供給され、レーザービーム又は電子ビームが再びこの粉末層の上に誘導される。このようにして、層状の造形及び特徴的な部材構造が出来上がる。電子ビーム又はレーザービームを誘導することによって、各粉末層中に、いわゆる走査構造が形成される。さらに、新しい粉末層の供給によって決定される造形方向に、同様に典型的な層構造が形成される。走査構造及び個々の層の両方が、完成部材において認識可能である。
【0033】
高エネルギービーム(好ましくはレーザービーム又は電子ビーム)での付加製造方法によって溶け合わさって選択的に立体構造にされた粉末粒子の組織は、他の方法、例えば溶射によって製造された組織とは著しく異なる。例えば、溶射では、個々の溶射粒子がガス流中で加速され、コーティングすべき部材の表面に打ち付けられる。ここで、溶射粒子は、溶融若しくは部分溶融形態(プラズマ溶射)又は固体形態(冷却ガス溶射)にあり得る。個々の溶射粒子が、部材表面に衝突して平らになり、主に機械的な噛み合いによって付着し続け、層状に溶射層を造形するので、層が形成される。ここで、板状の層構造が形成される。このようにして形成された層は、造形方向に対して平行な平面において、2を著しく上回る平均結晶粒アスペクト比(英:Grain Aspect Ratio(GAR値);結晶粒長と結晶粒幅との比)で、造形方向に対して垂直な結晶粒の伸びを示すので、造形方向に対して平行な平面において同様に2を著しく上回る平均結晶粒アスペクト比を有するが結晶粒の伸びが造形方向に対して平行である、選択的レーザー溶融又は電子ビーム溶融によって製造された層/部材とは著しく異なる。
【0034】
本発明による部材の一実施形態では、部材の粒子の含有率が非常に高く、マトリックス相は、10000平方マイクロメートル未満、好ましくは5000平方マイクロメートル未満、特に好ましくは2500平方マイクロメートル未満の平均結晶粒面積を有することが意図されている。
【0035】
本発明による部材、及び/又は本発明による製造法、及び/又は本発明による使用の一実施形態では、粒子の平均サイズは、5マイクロメートル未満、好ましくは1マイクロメートル未満であることが意図されている。好ましくは、粒子の平均サイズは10ナノメートル超である。
【0036】
本発明による部材及び/又は本発明による製造法の一実施形態では、部材中の粒子の体積含有率は、0.05体積%と10体積%との間であることが意図されている。0.05体積%未満では、結晶粒微細化効果は不十分であり、10体積%超では、粒子数/体積(生じる粒径に関与する)がわずかに増加するだけであるので、10体積%より高い体積含有率では、実質的に粒子の粗化だけが起こるが、さらなる粒径の低下は起こらない。しかしながら、このより高い体積含有率では、延性の損失が生じる。
【0037】
体積含有率は、様々な手法で測定することができ、これらについては、以下のものが例として挙げられるだろう:
- XRD、SEM/EDX、TEM/EDX、マイクロプローブのような適切な分析方法による、粒子の組成及び場合によって粒子形成元素の溶解割合の決定、
- ICP-OES、ICP-MS又はXRFのような適切な方法による、粒子形成元素の総含有率の決定、
- 粒子の含有率の計算(ここで、粒子形成元素の溶解割合は考慮しない)
【0038】
本発明による部材の一実施形態では、部材は、少なくとも破壊平面において、粒内割合が破壊面積の50%超、好ましくは80%超、特に好ましくは90%超である破壊挙動を示すことが意図されている。
【0039】
本発明による部材の一実施形態では、部材は、造形方向に層状に製造されており、かつ好ましくは、造形方向に対して平行な平面で、5未満、好ましくは3未満の平均結晶粒アスペクトを有することが意図されている。結晶粒アスペクトが小さいことによって、通常必要とされる使用特性とって十分な機械的特性の等方性が保証されている。
【0040】
本発明による部材、及び/又は本発明による付加製造方法、及び/又は粉末の本発明による使用の一実施形態では、粒子は、個別に又は任意の組み合わせで、
- 酸化物、好ましくはZrO
- 炭化物、好ましくはZrC、NbC、MoC、TiC、TaC、HfC
- 窒化物、好ましくはYN、TaN、HfN
- ホウ化物、好ましくはTaB、HfB
を含む群から選択されることが意図されている。
【0041】
どのタイプの粒子が好ましく使用されるかは、部材のマトリックス相が何からなるかによって異なる。ここで、粒子の融点が部材のマトリックス相の融点より高くなるようにすることが重要である。
【0042】
先に挙げた化合物の溶融温度:
YN(T=2670℃)、MoC(T=2687℃)、ZrO(T=2715℃)、Ta(T=2996℃)、TaN(T=3090℃)、TaB(T=3140℃)、TiC(T=3160℃)、Re(T=3180℃)、HfB(T=3250℃)、HfN(T=3305℃)、TaC(T=3880℃)、HfC(T=3900℃)、ZrC(T=3540℃)、NbC(T=3500℃)
は、モリブデンの溶融温度(T=2623℃)及び部分的にタングステンの溶融温度(T=3422℃)を上回る。
【0043】
粉末の本発明による使用に関して、粉末は、好ましくは、100マイクロメートル未満の粒径を有することが意図されている。
【0044】
粉末の本発明による使用に関して、一実施形態では、粉末の粒子は、好ましくは微細な析出物の形態で粒子を有することが意図されている。その利点は、粉末層をスキージで施用する際に、不利な分離が生じ得ないことである。
【0045】
粉末の本発明による使用に関して、一実施形態では、粉末は、モリブデン及び/又はタングステンを含有する粒子と、融点がマトリックス相の融点より高い粒子とを含有する混合物であることが意図されている。ここでの利点は、出発材料が容易に入手可能なことである。
【0046】
粉末の本発明による使用に関して、一実施形態では、融点がマトリックス相の融点より高い粒子の少なくとも1つの前駆体物質が、粉末の粒子上の層として少なくとも部分的に存在することが意図されている。
【0047】
本発明による部材の一実施形態では、部材は、1つの合金元素又は複数の合金元素を有し、該合金元素が、
- モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、
- タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びに
- モリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、
少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用し、該合金元素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的な非酸化形態と酸化形態との両方で存在することが意図されている。
【0048】
本発明による付加製造方法の一実施形態では、提供される出発粉末は、少なくとも1つの元素を有し、該元素が、モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びにモリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用し、かつ提供される出発粉末中に少なくとも部分的な非酸化形態で存在すること、及び製造された部材中で、該還元元素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に酸化物として存在することが意図されている。
【0049】
本発明による粉末の一実施形態では、粉末は、さらに、1つの元素又は複数の元素を有し、該元素が、モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びにモリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用すること、及び少なくとも1つの還元元素が、少なくとも部分的な非酸化形態で存在することが意図されている。
【0050】
上記の措置を通じて、還元的に作用する少なくとも1つの合金元素又は還元元素の形態で酸素に対してより魅力的な反応物を提供することによって、特に粒界での酸化モリブデン又は酸化タングステンの形成を減少させることが可能である。すなわち、部材の酸素含有率は低下するのではなく、酸素は、少なくとも部分的に、好ましくは大部分が、合金元素によって形成された(室温で)固体の酸化物形態で存在する。そのように結合した酸素は、もはや粒界強度に悪影響を及ぼし得ない。
【0051】
還元的に作用する適切な合金元素又は還元元素は、当業者であれば、表から容易に見つけることができる。例えば、ギブスエネルギー(自由エンタルピー)を用いて、又はリチャードソン-エリンガムダイアグラムを用いて、酸化モリブデン又は酸化タングステンに対して還元的に作用する元素を、それらの標準生成自由エンタルピー間の差異に基づいて見つけることができる。それによって、酸化モリブデン又は酸化タングステンに対する還元剤として適した元素を見つけることが容易に可能になる。ここで好ましくは、合金元素は、それらの化学量論に関係なく、全ての酸化モリブデン(例えば、MoO、MoO)又は全ての酸化タングステン(例えば、WO、WO)に対して還元的に作用する。合金元素が酸化物の形態で酸素を確実に結合できるように、合金元素は、少なくとも≧1500℃の温度範囲において酸化モリブデン及び/又は酸化タングステンに対して還元的に作用する必要がある。1500℃未満の温度では、反応速度が低過ぎるので、モリブデン又はタングステンの逆酸化はもはや起こらない。好ましくは、合金元素は、室温から液相線温度までの温度範囲で、酸化モリブデン及び/又は酸化タングステンに対して還元的に作用する。
【0052】
好ましくは、合金元素のうちの少なくとも1つは、周期表の第2、3又は4族の元素、好ましくは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであることが意図されている。例えば、部材は、HfC、ZrO又はHfOを含有することが意図され得る。
【0053】
合金元素が部材中で少なくとも部分的な非酸化形態と酸化形態とで存在することは、例えば、XRD、マイクロプローブ、ICP-OES、ICP-MS、XRF、SEM/EDX、TEM/EDX及びキャリアガス熱抽出(Traegergasheissextraktion)のような一般的な方法によって証明することができる。ここで、合金元素含有率の定量測定は、例えばICP-OES又はICP-MSによって行われ、酸素含有率の定量測定は、キャリアガス熱抽出又はXRFによって行われる。ここで、合金元素が酸化形態と非酸化形態との両方で存在するかどうかは、XRDによって、また含有率が低い場合は、例えば、マイクロプローブ、SEM/EDX又はTEM/EDXのような空間分解法によって行うことができる。
【0054】
好ましくは、融点がマトリックス相の融点より高い粒子は、それ自体がこれらの合金元素又は還元元素として作用すること、すなわち、これらが二重の役割を果たすことが意図され得る。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー又は電子ビームによって付加製造方法で製造された、モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からのマトリックス相を有し、モリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である、部材であって、融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子を含有することを特徴とする、部材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
好ましくは、融点がマトリックス相の融点より高い粒子は、それ自体がこれらの合金元素又は還元元素として作用すること、すなわち、これらが二重の役割を果たすことが意図され得る。
なお、本出願は、少なくとも以下の構成について開示している。
[1]
レーザー又は電子ビームによって付加製造方法で製造された、モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からのマトリックス相を有し、モリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である、部材であって、融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子を含有することを特徴とする、部材。
[2]
前記部材の前記粒子の含有率が非常に高く、前記マトリックス相が、10000平方マイクロメートル未満、好ましくは5000平方マイクロメートル未満、特に好ましくは2500平方マイクロメートル未満の平均結晶粒面積を有する、上記構成[1]に記載の部材。
[3]
前記粒子の平均粒子サイズが5マイクロメートル未満である、上記構成[1]から[2]のいずれか一項に記載の部材。
[4]
前記部材中の前記粒子の体積含有率が0.05体積%と10体積%との間である、上記構成[1]から[3]のいずれか一項に記載の部材。
[5]
前記部材が、少なくとも破壊平面において、粒内割合が破壊面積の50%超である破壊挙動を示す、上記構成[1]から[4]のいずれか一項に記載の部材。
[6]
前記部材が、付加製造方法で造形方向に沿って製造された、かつ平均結晶粒アスペクトが、前記造形方向に対して平行な平面において5未満である、上記構成[1]から[5]のいずれか一項に記載の部材。
[7]
前記粒子が、個別に又は任意の組み合わせで、
- 酸化物、好ましくはZrO、HfO
- 炭化物、好ましくはZrC、NbC、MoC、TiC、TaC、HfC
- 窒化物、好ましくはYN、TaN、HfN
- ホウ化物、好ましくはTaB、HfB
を含む群から選択される、上記構成[1]から[6]のいずれか一項に記載の部材。
[8]
前記部材(8)が、1つの合金元素又は複数の合金元素を有し、前記合金元素が、
- モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、
- タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びに
- モリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、
少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用し、前記合金元素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的な非酸化形態と酸化形態との両方で存在する、上記構成[1]から[7]のいずれか一項に記載の部材。
[9]
少なくとも以下のステップ:
- モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からの出発粉末を提供するステップ、
- レーザー又は電子ビームによって前記出発粉末の前記粒子を層状に溶け合わせて、それによってマトリックス相を形成するステップであって、前記マトリックス相中のモリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である、ステップ
を有する、部材、特に、上記構成[1]から[8]のいずれか一項に記載の部材を製造するための付加製造の方法であって、
前記出発粉末が、
- 融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子を含有すること、及び/又は
- 粒子の少なくとも1つの前駆物質を含有しており、前記粒子の融点が、前記マトリックス相の融点より高く、前記少なくとも1つの前駆物質からの前記粒子が、レーザー又は電子ビームによって前記出発粉末の前記粒子を層状に溶け合わせる際に生成されること、及び/又は
- レーザー又は電子ビームによって前記出発粉末の前記粒子を層状に溶け合わせる際にプロセスガス雰囲気の少なくとも1つの成分との反応において融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子を形成する少なくとも1つの成分を含有していること
を特徴とする、付加製造方法。
[10]
前記出発粉末を提供するステップが、原料粉末を溶融相で球状化すること及び/又は造粒することを含む、上記構成[1]に記載の方法。
[11]
前記粒子の平均サイズが5マイクロメートル未満である、上記構成[1]から[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12]
前記部材中の前記粒子の体積含有率が0.05体積%と10体積%との間である、上記構成[1]から[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]
提供される前記出発粉末が、少なくとも1つの元素を有し、前記元素が、モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びにモリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用し、かつ提供される前記出発粉末中に少なくとも部分的な非酸化形態で存在すること、及び製造された前記部材(8)中で、前記還元元素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に酸化物として存在する、上記構成[1]から[12]のいずれか一項に記載の方法
[14]
モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金及びモリブデン-タングステン基合金を含む群から選択される少なくとも1つの材料からの粒子を有し、前記粒子が、マトリックス相を有し、前記マトリックス相中のモリブデン含有率、タングステン含有率、又はモリブデンとタングステンとの総含有率が85原子%超である粉末の使用において、前記粉末が、
- 融点が前記粒子の前記マトリックス相の融点より高い粒子を含有すること、及び/又は
- 粒子の少なくとも1つの前駆物質を含有しており、前記粒子の融点が、前記粒子の前記マトリックス相の融点より高く、前記少なくとも1つの前駆物質からの前記粒子が、レーザー又は電子ビームによって前記出発粉末の前記粒子を層状に溶け合わせる際に生成されることを特徴とする、
付加製造方法のための、特に、上記構成[1]から[13]のいずれか一項に記載の付加製造方法のための、粉末の使用。
[15]
前記粉末の前記粒子が、好ましくは微細な析出物の形態で前記粒子を有する、上記構成[14]に記載の粉末の使用。
[16]
前記粉末が、モリブデン、モリブデン基合金、タングステン、タングステン基合金又はモリブデン-タングステン基合金を含有する粒子と、融点が前記マトリックス相の融点より高い粒子とを含有する混合物である、上記構成[14]又は[15]に記載の粉末の使用。
[17]
融点が前記マトリックス相の融点より高い前記粒子の前記少なくとも1つの前駆体物質が、前記粉末の前記粒子上の層として少なくとも部分的に存在する、上記構成[14]から[16]のいずれか一項に記載の粉末の使用。
[18]
融点が前記粒子の前記マトリックス相の融点より高い前記粒子の平均粒子サイズが5マイクロメートル未満である、上記構成[14]から[17]のいずれか一項に記載の粉末の使用。
[19]
融点が前記粒子の前記マトリックス相の融点より高い前記粒子の体積含有率が、前記粉末中で0.05体積%と10体積%との間である、上記構成[14]から[18]のいずれか一項に記載の粉末の使用。
[20]
前記粉末が、1つの元素又は複数の元素をさらに有し、前記元素が、モリブデン及びモリブデン基合金の場合はMoO及び/又はMoOに対して、タングステン及びタングステン基合金の場合はWO及び/又はWOに対して、並びにモリブデン-タングステン基合金の場合はMoO、MoO、WO及びWOの群の少なくとも1つの酸化物に対して、少なくとも≧1500℃の温度範囲において還元的に作用すること、及び少なくとも1つの還元元素が、少なくとも部分的な非酸化形態で存在する、上記構成[1]から[19]のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【外国語明細書】