IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

特開2023-156378ルテニウム含有電極を備えるナノポアシーケンシングデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156378
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ルテニウム含有電極を備えるナノポアシーケンシングデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20231017BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
C12M1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023124241
(22)【出願日】2023-07-31
(62)【分割の表示】P 2021510203の分割
【原出願日】2019-08-26
(31)【優先権主張番号】62/723,871
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】オウ,ウィング・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】コマディナ,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ウン,マロウェン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異なるタイプのタグがナノポアの筒内に保持されるときの信号の解像度を改善する。
【解決手段】ナノポアシーケンシングデバイスであって、ルテニウム含有材料からなる電極と、参照電極または対電極のうちの少なくとも1つとを備える、ナノポアシーケンシングデバイスにおいて、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有するルテニウム含有材料などの、ルテニウム含有材料を含む電極を備えるナノポアシーケンシングデバイスである。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノポアシーケンシングデバイスであって、
(i)ルテニウム含有材料からなる電極と、
(ii)参照電極または対電極のうちの少なくとも1つと
を備える、前記ナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項2】
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項1に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項3】
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項1に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項4】
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項3に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項5】
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項3に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項6】
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項7】
前記電極が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定されるような樹枝状構造を備える、請求項6に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項8】
前記電極の表面に配置された誘電体材料をさらに備える、請求項1に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項9】
複数の個別にアドレス指定可能なナノポアを備えるチップであって、各個別にアドレス指定可能なナノポアは、ルテニウム含有材料からなる作用電極と流体連通している、チップ。
【請求項10】
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項9に記載のチップ。
【請求項11】
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項9に記載のチップ。
【請求項12】
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項11に記載のチップ。
【請求項13】
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項11に記載のチップ。
【請求項14】
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項9に記載のチップ。
【請求項15】
前記作用電極が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定されるような樹枝状構造を備える、請求項9に記載のチップ。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか一項に記載のチップを備えるナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項17】
ナノポアシーケンシングデバイスであって、ルテニウム含有材料からなる作用電極と、誘電体層であって、前記誘電体層の一部が前記作用電極に隣接して水平に配置され、前記誘電体層の一部が前記作用電極の上に配置され、前記作用電極の一部を覆い、前記誘電体層が、前記作用電極の覆われていない部分の上に開口部を有するウェルを形成する、誘電体層とを備える、前記ナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項18】
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項17に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項19】
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項17に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項20】
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項19に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項21】
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項19に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項22】
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項17に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項23】
前記電極が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定されるような樹枝状構造を備える、請求項22に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項24】
前記誘電体層の上の表面をさらに含み、膜が前記表面の上部に形成され、前記作用電極の前記覆われていない部分の上の前記ウェルの前記開口部にまたがることがある、請求項17~23のいずれか一項に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項25】
前記作用電極のベース表面積が、前記作用電極の前記覆われていない部分の上の前記開口部のベース表面積よりも大きい、請求項24に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項26】
ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行するプロセスに従って調製されたルテニウム含有膜であって、前記スパッタ堆積または前記プラズマ蒸着プロセスは、(i)10sccm~100sccmの流量で窒素を堆積チャンバに導入することと、(ii)10sccmの流量でアルゴンを前記堆積チャンバに導入することとを含み、前記堆積中に前記堆積チャンバ内の堆積圧力が5mTorr~25mTorrに維持され、前記堆積が、50ワット~250ワットの範囲の電力を使用して実行される、前記ルテニウム含有膜。
【請求項27】
前記堆積プロセスが室温で行われる、請求項26に記載のルテニウム含有膜。
【請求項28】
前記ルテニウム含有膜は、180pF/um~220pF/umの範囲の二層静電容量を備える、請求項26に記載のルテニウム含有膜。
【請求項29】
前記プロセスが、前記堆積されたルテニウム含有膜を120℃を超える温度で加熱することをさらに含む、請求項26に記載のルテニウム含有膜。
【請求項30】
加熱が、140℃~340℃の範囲の温度で行われる、請求項29に記載のルテニウム含有膜。
【請求項31】
X線光電子分光法によって測定される、前記ルテニウム含有膜の(N+O)/Ruの表面組成比が1.5~3.5の範囲である、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
【請求項32】
前記表面組成比が1.8~3.2の範囲である、請求項31に記載のルテニウム含有膜。
【請求項33】
前記堆積圧力が20mTorrであり、窒素の前記流量が90sccmであり、前記電力が200ワットであり、前記加熱が180℃~260℃で行われる、請求項32に記載のルテニウム含有膜。
【請求項34】
前記ルテニウム含有膜が、前記膜の総重量の最大15%の窒素を含む、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
【請求項35】
前記ルテニウム含有膜が、前記膜の総重量の最大10%の窒素を含むが、前記膜の総重量の5%以上の窒素を含む、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
【請求項36】
前記ルテニウム含有膜は、260pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を備える、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
【請求項37】
前記堆積圧力が20mTorrであり、窒素の前記流量が90sccmであり、前記電力が200ワットである、請求項36に記載のルテニウム含有膜。
【請求項38】
前記ルテニウム含有膜が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定される樹枝状構造を有する、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
【請求項39】
前記ルテニウム含有膜が、面心立方構造を備える、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
【請求項40】
基板上に堆積されたスタックであって、前記基板の表面に少なくとも部分的に配置された金属層と、前記金属層の表面に配置された活性層であって、請求項30~39のいずれか一項に記載のルテニウム含有膜を備える、活性層と、前記活性層の表面に少なくとも部分的に配置されたキャップ層とを備える、前記スタック。
【請求項41】
前記活性層が少なくとも部分的に誘電体材料によって囲まれている、請求項40に記載のスタック。
【請求項42】
前記キャップ層が誘電体材料からなる、請求項40に記載のスタック。
【請求項43】
複数のウェルを備え、各前記ウェルが請求項40~42のいずれか一項に記載のスタックを備える、チップ。
【請求項44】
請求項43に記載のチップを備えるシーケンシングデバイス。
【請求項45】
基板上に堆積された薄膜であって、前記薄膜は、窒化ルテニウム、酸化ルテニウム、酸
窒化ルテニウム、またはそれらの複合体または混合物を含み、前記薄膜は、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有し、前記薄膜の窒素含有量は5%以上15%以下である、前記薄膜。
【請求項46】
前記二層静電容量が260pF/um~320pF/umの範囲である、請求項45に記載の薄膜。
【請求項47】
前記二層静電容量が280pF/um~300pF/umである、請求項46に記載の薄膜。
【請求項48】
X線光電子分光法によって測定される、前記薄膜の表面組成比(N+O)/Ruが1.5~3.5の範囲である、請求項45に記載の薄膜。
【請求項49】
前記表面組成比が1.8~3.2の範囲である、請求項48に記載の薄膜。
【請求項50】
前記薄膜が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定されるような樹枝状構造を含む、請求項45に記載の薄膜。
【請求項51】
請求項45~50のいずれか一項に記載の薄膜を含む電極。
【請求項52】
電極を作製する方法であって、
(a)導電層上に配置された第1の誘電体層内に穴をエッチングすることであって、前記穴が導電層の露出面を備える、エッチングすることと、
(b)ルテニウム含有膜を含む作用電極を、少なくとも、前記穴内の前記導電層の前記露出面上に堆積させることと、
(c)前記作用電極の表面にキャップ層を堆積させることと
を含む、前記方法。
【請求項53】
前記作用電極の前記堆積が、(i)窒素雰囲気中でルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行して、前記ルテニウム含有膜を提供することと、(ii)前記提供されたルテニウム含有膜を少なくとも150℃の温度で加熱することとを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記作用電極が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記作用電極が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記作用電極が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とし、さらに、横断面の走査型電子顕微鏡法によって観察されるような柱状構造または樹枝状構造のうちの1つを有することを特徴とする、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記作用電極の前記堆積が、
(i)ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行することであって、前記スパッタ堆積または前記プラズマ蒸着プロセスは、
(i)10sccm~100sccmの流量で窒素を前記堆積チャンバに導入することと、
(ii)10sccmの流量でアルゴンを前記堆積チャンバに導入することとを含み、前記堆積中に前記堆積チャンバ内の堆積圧力が5mTorr~25mTorrに維持され
、前記堆積が、50ワット~250ワットの範囲の電力を使用して実行される、実行することと、
(ii)前記提供されたルテニウム含有膜を少なくとも150℃の温度で加熱することとを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記加熱が少なくとも200℃で行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ナノポアシーケンシングで使用するためのバイオチップを作製する方法であって、
(a)請求項52~58のいずれか一項に記載の方法に従って複数の電極を作製することと、
(b)前記複数の電極の各電極を互いに分離することと
を含む、前記方法。
【請求項60】
(i)少なくとも金属窒化物からなる電極であって、前記金属窒化物が180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有する、電極と、
(ii)参照電極または対電極のうちの少なくとも1つと
を備える、ナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項61】
前記電極がルテニウム、酸素、および窒素からなり、前記電極が5%以上15%以下の窒素を含む、請求項60および61のいずれか一項に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項62】
(a)少なくとも250ウェル/mm2の密度で複数のウェルを有する半導体基板と、(b)前記複数のウェルのそれぞれに配置された電極であって、ルテニウム含有材料からなる、電極と
を備える、バイオチップ。
【請求項63】
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項62に記載のバイオチップ。
【請求項64】
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項62に記載のバイオチップ。
【請求項65】
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項64に記載のバイオチップ。
【請求項66】
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項64に記載のバイオチップ。
【請求項67】
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項62に記載のバイオチップ。
【請求項68】
各個別の前記電極の表面に配置された疎水性コーティングをさらに備える、請求項62~67のいずれか一項に記載のバイオチップ。
【請求項69】
前記バイオチップの上に配置されたカバーをさらに備える、請求項62~68のいずれか一項に記載のバイオチップ。
【請求項70】
前記カバーが、脂質コーティングへの1つまたは複数の流体の送達を容易にするための少なくとも1つの流体入口を備える、請求項69に記載のバイオチップ。
【請求項71】
請求項62~70のいずれか一項に記載のバイオチップと、脂質溶液とを含む、キット。
【請求項72】
請求項62~70のいずれか一項に記載のバイオチップと、1つまたは複数の酵素とを含む、キット。
【請求項73】
バイオチップを調製する方法であって、
(a)半導体基板を取得することと、
(b)少なくとも250ウェル/mmの密度で前記半導体基板内に複数のウェルを形成することと、
(c)前記複数のウェルの個々のウェルのそれぞれに電極を形成することであって、前記電極が、ルテニウム含有材料からなる、形成することと
を含む、前記方法。
【請求項74】
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項73または74に記載の方法。
【請求項79】
前記電極の表面を疎水性材料でコーティングすることをさらに含む、請求項73~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
複数の個別にアドレス指定可能なナノポアを備えるバイオチップであって、各個別にアドレス指定可能なナノポアは、請求項30~39のいずれか一項に記載のルテニウム含有薄膜からなる作用電極と流体連通している、前記バイオチップ。
【請求項81】
リザーバと、請求項62~70のいずれか一項に記載のバイオチップと、前記リザーバのバイオチップに面する表面上に配置された対電極と、を備えるアセンブリ。
【請求項82】
前記対電極が前記バイオチップに面する表面に印刷されている、請求項81に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月28日に出願された、「RUTHENIUMーCONTAINING ELECTRODE」と題する米国仮特許出願第62/723,871号に対する優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
参照による援用
本明細書で述べられるすべての刊行物、および特許出願は、各々の個々の刊行物、または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照によって同様に本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明の実施形態は、一般に電極、特に、核酸シーケンシングに使用するための電極に関する。
【背景技術】
【0004】
DNAシーケンシングの重要性は40年前の始まりから劇的に高まっている。これは、生物学および医学のほとんどの分野で重要な技術として、またパーソナライズされた精密医学の新しいパラダイムの基盤として認識されている。個人のゲノムとエピゲノムに関する情報は、病気の傾向、臨床的予後、治療への反応を明らかにするのに役立つが、医学におけるゲノムシーケンシングの日常的な適用には、タイムリーで費用効果の高い方法で提供される包括的なデータが必要である。
【0005】
ナノポアベースの核酸シーケンシングは、広く研究されてきたアプローチである。過去20年間で、ポリマーの特性評価や低コストで迅速な単一分子の方法でヌクレオチドを区別するためにナノポアを利用することに大きな関心が寄せられてきた。例えば、Kasianowiczらは、脂質二重層に埋め込まれたアルファ溶血素ナノポアを介して電気的に移動した一本鎖ポリヌクレオチドの特性を記述した(例えば、Kasianowicz,J.(1996),Characterization of Individual Polynucleotide Molecules using a Membrane Channel.Proc.Natl.Acad.Sci.,93,13770-3を参照)。ポリヌクレオチド転座の間、ナノポア開口の部分的遮断は、イオン電流の減少として測定できることが実証された。同様に、Gundlachらは、マイコバクテリウム・スメグマチス(「MspA」)に由来する低ノイズのナノポアを、二重中断シーケンシングと呼ばれるプロセスと組み合わせて使用するDNAのシーケンシング方法を示した(例えば、Derrington,I.et al.(2010),Nanopore DNA Sequencing with MspA.Proc.Natl.Acad.Sci.,107(37),16060-16065を参照)。ここでは、二本鎖を使用して、MspAくびれ部に核酸の一本鎖部分を一時的に保持した。Akesonら(例えば、PCT公開第WO/20150344945を参照)は、隣接して配置された分子モータを利用して、ナノポア開口部を通ってまたは隣接してポリヌクレオチドの転座速度を制御する、ナノポア内のポリヌクレオチドを特徴付けるための方法を開示する。
【0006】
一般に、3つのナノポアシーケンシングアプローチが追求されてきた。DNAの塩基がナノポアを順次通過するときに同定されるストランドシーケンシングと、ヌクレオチドがDNA分子から1つずつ酵素的に切断され、それらがナノポアによって捕捉されて通過するときに監視されるエキソヌクレアーゼベースのナノポアシーケンシングと、識別可能な
ポリマータグがヌクレオチドに付着し、酵素触媒DNA合成中にナノポアに登録される合成によるナノポアシーケンシング(SBS)アプローチである。これらすべての方法に共通するのは、各塩基が順番に決定されるように、反応速度を正確に制御する必要があることである。鎖シーケンシングには、ナノポアを通るDNAの通過を遅くし、チャネル内の複数の塩基を解読する方法が必要であり、この目的のために、分子モータを利用したラチェットアプローチが開発された。エキソヌクレアーゼベースのシーケンシングでは、有効なイオン電流信号を取得するのに十分遅い速度での捕捉とポアを通過することを保証するために、ポアに十分近い各ヌクレオチドの放出が必要である。さらに、これらの方法は両方とも、4つの天然塩基、2つの比較的類似したプリンと2つの類似したピリミジンの違いに依存している。ナノポアSBSアプローチは、シーケンシングのためのユニークで容易に区別できるイオン電流遮断シグネチャを生成するように特別に設計されたヌクレオチドに取り付けられた合成ポリマータグを利用する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、(i)ルテニウム含有材料からなる電極と、(ii)参照電極または対電極のうちの少なくとも1つと
を備える、ナノポアシーケンシングデバイスである。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、ルテニウム、酸素、および窒素のうちの少なくとも2つを含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、窒化ルテニウムおよび酸窒化ルテニウムのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、約1.5~約3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約1.8~約3.0の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2~約2.5の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2~約2.2の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2.1~約2.4の範囲である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約5%以上であるが約15%以下である窒素含有量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、電極は、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定される樹枝状構造を含む。いくつかの実施形態では、ナノポアシーケンシングデバイスは、電極の表面に配置された誘電体材料をさらに含む。いくつかの実施形態では、電極は金属層上に配置される。いくつかの実施形態では、ナノポアシーケンシングデバイスは、チップ上に配置された複数の電極を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、複数の個別にアドレス指定可能なナノポアを備えるチップであり、各個別にアドレス指定可能なナノポアは、ルテニウム含有材料からなる作用電極と流体連通している。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、ルテニウム、酸素、および窒素を含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、約1.5~約3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約1.8~約3.0の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2~約2.5の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2~約2.2の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2.1~約2.4の範囲である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約5%以上であるが約15%以下である窒素含有量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、作用電極は、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定される柱状構造を含む。いくつかの実施形態では、作用電極は、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定される樹枝状構造を含む。
【0009】
本開示の別の態様は、複数の個別にアドレス指定可能なナノポアを備えるチップまたはバイオチップを含むナノポアシーケンシングデバイスであり、各個別にアドレス指定可能なナノポアは、ルテニウム含有材料からなる作用電極と流体連通している。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする。
【0010】
本開示の別の態様は、ナノポアシーケンシングデバイスであり、ルテニウム含有材料からなる作用電極と、誘電体層であって、誘電体層の一部が作用電極に隣接して水平に配置され、誘電体層の一部が作用電極の上に配置され、作用電極の一部を覆い、誘電体層が、作用電極の覆われていない部分の上に開口部を有するウェルを形成する、誘電体層とを備える(例えば、米国特許第10,036,739号を参照し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、約1.5~約3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約1.8~約3.0の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2~約2.5の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2~約2.2の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2.1~約2.4の範囲である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約5%以上であるが約15%以下である窒素含有量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、電極は、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定される樹枝状構造を含む。いくつかの実施形態では、ナノポアシーケンシングデバイスは誘電体層の上の表面をさらに含み、膜が表面の上部に形成され、作用電極の覆われていない部分の上のウェルの開口部にまたがることがある。いくつかの実施形態では、作用電極のベース表面積が、作用電極の覆われていない部分の上の開口部のベース表面積よりも大きい。
【0011】
本開示の別の態様は、ルテニウムターゲット(例えば、純度95%、純度97%、または純度99%のルテニウム金属ターゲット)を使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行するプロセスに従って調製されたルテニウム含有膜であり、スパッタ堆積またはプラズマ蒸着プロセスは、(i)約10sccm~100sccmの流量で窒素を堆積チャンバに導入することと、(ii)約10sccmの流量でアルゴンを堆積チャンバに導入することとを含み、堆積中に堆積チャンバ内の堆積圧力が約5mTorr~約25mTorrに維持され、堆積が、約50ワット~約250ワットの範囲の電力を使用して実行される。いくつかの実施形態では、堆積圧力が約20mTorrであり、窒素の流量が約90sccmであり、電力が約200ワットである。いくつかの実施形態では、堆積プロセスは室温で行われる。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、約180pF/um~約220pF/umの範囲の二層静電容量を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、プロセスは、堆積されたルテニウム含有膜を120℃を超える温度で加熱することをさらに含む。いくつかの実施形態では、加熱は、140℃~約340℃の範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態では、X線光電子分光法によって測定される、ルテニウム含有膜の(N+O)/Ruの表面組成比は、約1.5~約3.5の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約1.8~約3.2の範囲である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、膜の総重量の最大15%の窒素を含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜が、膜の総重量の最大10%の窒素を含むが、膜の総重量の5%以上の窒素を含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、約260pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定される樹枝状構造を含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、面心立方構造を含む。
【0013】
本開示の別の態様は、基板上に堆積されたスタック、基板の表面上に少なくとも部分的に配置された金属層、金属層の表面上に配置された活性層、および該活性層の表面上に少なくとも部分的に配置されたキャップ層であり、活性層が、ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行するプロセスに従って調製されたルテニウム含有膜を含み、スパッタ堆積またはプラズマ蒸着プロセスは、(i)約10sccm~100sccmの流量で窒素を堆積チャンバに導入することと、(ii)約10sccmの流量でアルゴンを堆積チャンバに導入することとを含み、堆積中に堆積チャンバ内の堆積圧力が約5mTorr~約25mTorrに維持され、堆積が、約50ワット~約250ワットの範囲の電力を使用して実行される。いくつかの実施形態では、活性層は、誘電体材料によって少なくとも部分的に囲まれている。いくつかの実施形態では、キャップ層は誘電体材料から構成される。いくつかの実施形態では、スタックは熱処理され得る。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有する。いくつかの実施形態において、基板は半導体である。いくつかの実施形態では、基板は、少なくとも200ウェル/mmの密度で複数のウェルを含み、各ウェルは、スタックを含む。いくつかの実施形態では、密度は少なくとも300ウェル/mmである。いくつかの実施形態では、密度は少なくとも400ウェル/mmである。いくつかの実施形態では、密度は少なくとも500ウェル/mmである。いくつかの実施形態では、スタックは、含まれた、例えば、リザーバに収容され得る。
【0014】
本開示の別の態様は、上記で特定されたスタックを含むナノポアシーケンシングデバイスである。いくつかの実施形態では、スタックは、対電極の近くに配置され得る。いくつかの実施形態では、スタックは、リザーバ内に配置され得る。
【0015】
本開示の別の態様は、複数の個別にアドレス指定可能なナノポアを備えるバイオチップであり、各個別にアドレス指定可能なナノポアは、ルテニウム含有材料からなる作用電極と流体連通しており、ルテニウム含有材料は、ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行するプロセスに従って調製され、スパッタ堆積またはプラズマ蒸着プロセスは、(i)約10sccm~100sccmの流量で窒素を堆積チャンバに導入することと、(ii)約10sccmの流量でアルゴンを堆積チャンバに導入することとを含み、堆積中に堆積チャンバ内の堆積圧力が約5mTorr~約25mTorrに維持され、堆積が、約50ワット~約250ワットの範囲の電力を使用して実行される。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有する。
【0016】
本開示の別の態様は、基板上に堆積された薄膜であり、薄膜は、窒化ルテニウム、酸化ルテニウム、酸窒化ルテニウム、またはそれらの混合物を含み、薄膜は、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有し、薄膜の窒素含有量は約5%以上約15%以下である。いくつかの実施形態では、二層静電容量は、約260pF/um~約320pF/umの範囲である。いくつかの実施形態では、二層静電容量は、約280pF/um~約300pF/umの範囲である。いくつかの実施形態では、X線光電子分光法によって測定される、薄膜の(N+O)/Ruの表面組成比は、約1.5~約3.5の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約1.8~約3.2の範囲である。いくつかの実施形態では、薄膜は、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定される樹枝状構造を含む。
【0017】
本開示の別の態様は、上記のルテニウム含有薄膜を含む電極である。
【0018】
本開示の別の態様は、電極を作製する方法であり、導電層上に配置された第1の誘電体層内に穴をエッチングすることであって、穴が導電層の露出面を備える、エッチングすることと、ルテニウム含有膜を含む作用電極を、少なくとも、穴内の導電層の露出面上に堆積させることと、作用電極の表面にキャップ層を堆積させることとを含む。いくつかの実施形態では、作用電極の堆積が、(i)ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行して、ルテニウム含有膜を提供することと、(ii)提供されたルテニウム含有膜を少なくとも約150℃の温度で加熱することとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、作用電極が、X線光電子分光法によって測定されるように、約1.5~約3.5の範囲の薄膜の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、比率は、約2~約2.5の範囲である。いくつかの実施形態では、作用電極は、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、作用電極が、約5%以上であるが約15%以下である窒素含有量を有することを特徴とし、さらに、横断面の走査型電子顕微鏡法によって観察されるような柱状構造または樹枝状構造のうちの1つを有することを特徴とする。
【0020】
いくつかの実施形態では、作用電極の堆積が、(i)ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行することであって、スパッタ堆積またはプラズマ蒸着プロセスは、(i)約10sccm~100sccmの流量で窒素を堆積チャンバに導入することと、(ii)約10sccmの流量でアルゴンを堆積チャンバに導入することとを含み、堆積中に堆積チャンバ内の堆積圧力が約5mTorr~約25mTorrに維持され、堆積が、約50ワット~約250ワットの範囲の電力を使用して実行される、実行することと、(ii)提供されたルテニウム含有膜を少なくとも約150℃の温度で加熱することとを含む。いくつかの実施形態では、加熱は少なくとも約200℃で行われる。
【0021】
本開示の別の態様は、(i)180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有する電極と、(ii)参照電極または対電極のうちの少なくとも1つとを備える、ナノポアシーケンシングデバイスである。いくつかの実施形態では、電極は、ルテニウム、酸素、および窒素からなり、電極は、約5%以上約15%以下の窒素を含む。いくつかの実施形態では、電極は金属窒化物からなる。いくつかの実施形態では、金属窒化物は窒化ルテニウムである。いくつかの実施形態では、電極は、窒化ルテニウムおよび酸窒化ルテニウムを含む。
【0022】
本開示の別の態様は、ナノポアと、ナノポアに近接した電極とを含むナノポアシーケンシングデバイスであり、電極は、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有するルテニウム含有材料を含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、ルテニウム、酸素、および窒素のうちの少なくとも2つを含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、窒化ルテニウムおよび酸窒化ルテニウムのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、ナノポアは、ナノポアシーケンシング複合体の一部である。
【0023】
本開示の別の態様は、(a)少なくとも250ウェル/mm2の密度で複数のウェルを有する半導体基板と、(b)複数のウェルのそれぞれに配置された電極であって、ルテニウム含有材料からなる、電極とを備える、バイオチップである。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、約1.5~約3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約1.8~約3.0の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2~約2.5の範囲である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約5%以上であるが、約15%以下である窒素含有量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、バイオチップは、各個別の電極の表面に配置された疎水性コーティングをさらに含む。いくつかの実施形態では、バイオチップは、バイオチップの上に配置されたカバーをさらに含む。いくつかの実施形態では、カバーは、脂質コーティングへの1つまたは複数の流体の送達を容易にするために、少なくとも1つの流体入口を含む。
【0024】
本開示の別の態様は、バイオチップ(例えば、(a)少なくとも250ウェル/mm2の密度で複数のウェルを有する半導体基板と、(b)複数のウェルのそれぞれに配置された電極であって、ルテニウム含有材料からなる、電極とからなるバイオチップ)と、第2の構成要素とを含むキットである。いくつかの実施形態では、第2の構成要素は脂質溶液である。他の実施形態では、第2の構成要素は緩衝剤である。いくつかの実施形態では、第2の構成要素は、ナノポアシーケンシング複合体を形成するために使用される構成要素(例えば、ポア、酵素、鋳型など)を含む。
【0025】
本開示の別の態様は、バイオチップを作製する方法であって、(a)半導体基板を取得することと、(b)少なくとも250ウェル/mmの密度で半導体基板内に複数のウェルを形成することと、(c)複数のウェルの個々のウェルのそれぞれに電極を形成することであって、電極が、ルテニウム含有材料からなる、形成することとを含む、方法である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、約1.5~約3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約1.8~約3.0の範囲である。いくつかの実施形態では、表面組成比は、約2~約2.5の範囲である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料が、約5%以上であるが約15%以下である窒素含有量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、方法は、電極の表面を疎水性材料でコーティングすることをさらに含む。
【0026】
本開示の別の態様は、(i)リザーバと、(ii)バイオチップ(例えば、(a)少なくとも250ウェル/mm2の密度で複数のウェルを有する半導体基板と、(b)複数のウェルのそれぞれに配置された電極であって、ルテニウム含有材料からなる、電極とからなるバイオチップ)と、(iii)リザーバのバイオチップに面する表面に配置された対電極とを含むアセンブリである。いくつかの実施形態では、対電極は、バイオチップに面する表面に印刷される。リザーバ、対電極、および他のアセンブリ構成要素は、米国特許第9,658,190号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。アセンブリに含めるためのさらに追加の構成要素は、米国特許出願公開第2017/0350859号および2017/0326550号に開示されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0027】
出願人は、驚くべきことに、二層静電容量が改善されたルテニウム含有材料が信号減衰率の低減を可能にし、最終的に、異なるタイプのタグがナノポアの筒内に保持されるときの信号の解像度の改善を可能にすることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示の特徴の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同一の要素を識別するために、全体を通して同様の参照番号が使用されている。
【0029】
図1A】二層静電容量に対するスパッタ電力の影響を示している。
【0030】
図1B】堆積された膜厚に対するスパッタ電力の影響を示している。
【0031】
図1C】50Wでスパッタリングされたルテニウム含有膜の横断面の走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0032】
図1D】100Wでスパッタリングされたルテニウム含有膜の横断面の走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0033】
図1E】200Wでスパッタリングされたルテニウム含有膜の横断面の走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0034】
図1F】50Wでスパッタリングされたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0035】
図1G】100Wでスパッタリングされたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0036】
図1H】200Wでスパッタリングされたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0037】
図2A】200W、10mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について20sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜の横断面の走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0038】
図2B】200W、10mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜の横断面の走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0039】
図2C】200W、10mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について20sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0040】
図2D】200W、10mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0041】
図2E】200W、10mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜の横断面の走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0042】
図2F】200W、10mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜の横断面の走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0043】
図2G】200W、10mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について20sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0044】
図2H】200W、20mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0045】
図3A】アルゴンについて10sccm、アルゴンについて20sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜のエネルギー分散型X線分光法の結果を示している。データは、20sccm(低窒素流量)で、生成された膜の大部分が主にルテニウムであり、膜が5%未満の窒素を含むことを示唆している。
【0046】
図3B】アルゴンについて10sccm、アルゴンについて90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜のエネルギー分散型X線分光法の結果を示している。データは、90sccm(高窒素流量)で、生成された膜の大部分が主にルテニウムであり、膜が約15%の窒素を含むことを示唆している。
【0047】
図3C】アルゴンについて10sccm、アルゴンについて20sccmの流量でスパッタリングされ、その後に熱処理されたルテニウム含有膜のエネルギー分散型X線分光法の結果を示している。データは、図3Aと比較して、酸素含有量の有意な増加が観察されることを示唆する。
【0048】
図3D】アルゴンについて10sccm、アルゴンについて90sccmの流量でスパッタリングされ、その後に熱処理されたルテニウム含有膜のエネルギー分散型X線分光法の結果を示している。データは、図3Bおよび3Cと比較して、酸素含有量のわずかな増加のみが観察されることを示唆する。
【0049】
図4A】200W、室温、20mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタ堆積され、その後に150℃で熱処理されたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0050】
図4B】200W、室温、20mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタ堆積され、その後に200℃で熱処理されたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0051】
図4C】200W、室温、20mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタ堆積され、その後に260℃で熱処理されたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0052】
図4D】200W、室温、20mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタ堆積され、その後に320℃で熱処理されたルテニウム含有膜のトップダウン走査型電子顕微鏡画像を提供する。
【0053】
図5A】200W、室温、20mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜上での様々な温度での二層静電容量への熱処理の影響を示すグラフを提供する。
【0054】
図5B】200W、室温、20mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜上での様々な温度でのルテニウム、窒素および酸素の原子比への熱処理の影響を示すグラフを提供する。
【0055】
図5C】200W、室温、20mTorr、アルゴンについて10sccmの流量、窒素について90sccmの流量でスパッタリングされたルテニウム含有膜上での様々な温度でのルテニウム、窒素および酸素の原子パーセントへの熱処理の影響を示すグラフを提供する。
【0056】
図6A】4つのルテニウム含有サンプルのX線光電子分光法データを示している(本明細書の表1も参照)。
【0057】
図6B】4つのルテニウム含有サンプルのX線光電子分光法データ(C1s)を示している。
【0058】
図6C】4つのルテニウム含有サンプルのX線光電子分光法データ(N1s)を示している。
【0059】
図6D】4つのルテニウム含有サンプルのX線光電子分光法データ(O1s)を示している。
【0060】
図7A】ルテニウム含有材料からなる(作用電極容量が高い)電極を含むセルと窒化チタンからなる(作用電極容量が比較的低い)電極との間の信号減衰率の違いを示す図を示す。信号減衰率は、ADCへのスイッチがオンになっているときの時間の関数としてADC(アナログ-デジタルコンバータ)(図10A~10Dを参照)の信号変化をプロットすることによって測定された。その間、Ncapは、図10Aに示されるように、C二層およびC二層を含む回路を通って放電する。測定はチップ上のASIC回路で行われた。
【0061】
図7B】ゆっくりと起こる減衰を示し(図7Bおよび図7Cの曲線の傾きを比較する)、さらに、4つの異なるヌクレオチドに関連する4つの異なるタグのそれぞれの減衰を示す。異なる信号減衰曲線の間に良好な分離が示され、これは、図7Cに示される減衰曲線と比較して、より良い信号分離および増加した信号分解能を提供する。
【0062】
図7C】(図7Bと比較して)速く発生する減衰を示している。図7Bと比較して、より低い信号分解能が観察される。
【0063】
図8】ポリマータグ付きヌクレオチドを有するナノポアによる単一分子DNAシーケンシングを示している(140)。4つのヌクレオチドのそれぞれが異なるタグを有している。ナノポアシーケンシング中に、ヌクレオチドの5’-リン酸を介して付着したこれらのタグは、一度に1つずつナノポア(130)に放出され、そこで固有の電流遮断シグネチャ(150)が生成される。
【0064】
図9】ナノポアベースのシーケンシングチップ内のセル100の実施形態を示している。
【0065】
図10A】ナノポアベースのシーケンシングチップのセル内の回路の実施形態を示し、ナノポアに印加される電圧は、ナノポアが特定の検出可能な状態にある期間にわたって変化するように構成することができる。
【0066】
図10B】スイッチ「1」(PRE)が閉じられ、スイッチ「2」(TRS)が開かれる回路を示している。この構成で電圧を印加すると、NCAP(電荷の蓄積および放電のためのキャパシタ)が作用電極(Vpre)に充電される。
【0067】
図10C】スイッチ「1」(PRE)が開かれ、スイッチ「2」(TRS)が閉じられる回路を示している。この構成では、NCAPが放電し、放電はNCAPから対電極(Vliq)まで発生する(矢印を参照)。放電率は、二重層静電容量に対する電極の二重静電容量に依存する。電極の二重容量の値が高いほど、減衰が遅くなる(これにより、最終的に、シーケンシング中などの信号が改善される)。高い作用電極容量(C二層)は、Vpre-Vliqの減衰が遅いことを意味する。タグが異なるナノポアは抵抗が異なり(Rpore)、減衰率に差が生じるため、信号分解能が向上すると考えられる(図7Bおよび図7Cを参照)。
【0068】
図10D】スイッチ「1」(PRE)が開かれ、スイッチ「2」(TRS)が開かれる回路を示している。この構成では、ADC(アナログ-デジタルコンバータ)はノードAの電圧を読み取ることができ、データポイントの収集を可能にする。
【0069】
図11A】導電性電極と隣接する液体電解質との間の任意の界面に形成される二層を示している。示されている例では、電極表面が負に帯電しているため、電解質に正の帯電種が蓄積する。別の例では、示されているすべての電荷の極性は、示されている例と反対であり得る。
【0070】
図11B図11Aのように、導電性電極と隣接する液体電解質との間の界面において、二層の形成と同時に形成することができる疑似容量効果を示している。
【0071】
図12】ナノポアが膜に挿入されている、ナノポア内の分子を分析するためのプロセス800の実施形態を示している。
【0072】
図13】プロセス800が実行され、3回繰り返されたときの時間に対するナノポアに印加された電圧のプロットの実施形態を示している。
【0073】
図14】ナノポアが異なる状態にあるときの時間に対するナノポアに印加された電圧のプロットの実施形態を示す。
【0074】
図15】電気化学容量が増加したTiN作用電極を含む、ナノポアベースのシーケンシングチップの非ファラデー電気化学セル1100の実施形態を示している。
【0075】
図16A】ルテニウム含有材料を含むナノポアベースのシーケンシングチップの電極を製造するプロセスの実施形態を示す。
図16B】ルテニウム含有材料を含むナノポアベースのシーケンシングチップの電極を製造するプロセスの実施形態を示す。
図16C】ルテニウム含有材料を含むナノポアベースのシーケンシングチップの電極を製造するプロセスの実施形態を示す。
図16D】ルテニウム含有材料を含むナノポアベースのシーケンシングチップの電極を製造するプロセスの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
反対に明確に示されない限り、複数のステップまたは行為を含む本明細書で請求される方法において、方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも方法のステップまたは行為が記載されている順序に限定されないことも理解されたい。
【0077】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という単語は、文脈が明確に別のことを示さない限り、「および」を含むことを意図している。「含む」という用語は、「AまたはBを含む」がA、B、またはAおよびBを含むことを意味するように、包括的に定義される。
【0078】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は包括的であると解釈されるものとする。つまり、要素の数またはリストの少なくとも1つ、および、オプションで、追加のリストされていないアイテムを含むが、複数を含むと解釈される。「ただ1つまたは「正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」など、反対に明確に示される用語のみが、数または要素のリストの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「いずれか」、「のみ」、「正確にいずれか」などの排他性の用語が前に付いている場合、排他的な代替案を示すものとしてのみ解釈されるものとする(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)。「本質的にからなる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0079】
「備えている」、「含んでいる」、「有している」などの用語は、交換可能に使用され、同じ意味を有する。同様に、「備える」、「含む」、「有する」などは同じ意味で使用され、同じ意味を有する。具体的には、各用語は、「含む」という一般的な米国特許法の定義と一致して定義されているため、「少なくとも以下を」を意味するオープンな用語として解釈され、また追加の特徴、制限、側面などを排除しないものとして解釈される。したがって、例えば、「構成要素a、b、およびcを有するデバイス」は、デバイスが少なくとも構成要素a、b、およびcを含むことを意味する。同様に、「ステップa、b、およびcを含む方法」という句は、その方法が少なくともステップa、b、およびcを含むことを意味する。さらに、ステップおよびプロセスは、本明細書において特定の順序で概説され得るが、当業者は、順序付けのステップおよびプロセスが変化し得ることを認識するであろう。
【0080】
本明細書の明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つまたはそれ以上の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という句は、要素のリストの任意の1つまたはそれ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきである。ただし、要素のリスト内に具体的にリストされているすべての要素の少なくとも1つを含む必要はなく、要素のリスト内の要素の組み合わせを除外するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が参照する要素のリスト内で具体的に識別される要素以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するかどうかにかかわらず、任意選択で存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で2つまたはそれ以上のAを含み、Bが存在しない(および任意選択でB以外の要素を含む)ことを指すことができ、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で2つまたはそれ以上のBを含み、Aが存在しない(および任意選択でA以外の要素を含む)ことを指し、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で2つまたはそれ以上のAを含み、少なくとも1つ、任意選択で2つまたはそれ以上のBを含む(および任意選択で他の要素を含む)、等を指すことができる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「二層静電容量」という用語は、電気二層効果による電気エネルギーの貯蔵を指す。この電気現象は、導電性電極と隣接する液体電解質との間の界面に現れる。この境界では、電圧を印加すると、極性が反対の2層のイオンが形成される。2層のイオンは、電極の表面に付着し、従来のキャパシタの誘電体のように機能する溶媒分子の単層によって分離されている。
【0082】
本明細書で使用される場合、「導入」という用語は、ガス(またはガスの混合物)の濃
度の追加または変更を意味する。ガスは、当技術分野で知られている任意の手段によって導入され得る。例えば、追加量の反応性ガスは、スパッタチャンバまたはガス流へのその特定の反応性ガス(またはガスの混合物)の流れを増加させることによって、スパッタチャンバまたは不活性ガス流に加えられることができる(例えば、追加されたガスの量は、付属の流量計または他の流量コントローラを監視することによって決定され得る)。
【0083】
本明細書で使用される場合、「スパッタチャンバ」という用語は、スパッタチャンバ全体、その一部、またはスパッタターゲットの特定の領域を取り囲む領域を指し得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、「ナノポア」という用語は、膜に形成された、またはそうでなければ提供された孔、チャネル、または通路を指す。ナノポアは、膜内の分子(タンパク質など)によって定義され得る。膜は、脂質二重層などの有機膜、または高分子材料で形成された膜などの合成膜であり得る。ナノポアは、例えば相補型金属酸化膜半導体(complementary metal-oxide semiconductor:CMOS)回路もしくは電界効果トランジスタ(field effect transistor:FET)回路などのセンシング回路に隣接してまたは近接して配置され得る。ナノポアは、0.1ナノメートル(nm)から約1000nmのオーダーの特徴的な幅または直径を有し得る。いくつかのナノポアはタンパク質である。アルファ溶血素はタンパク質ナノポアの一例である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「ナノポアシーケンシング複合体」という用語は、酵素、例えば、ポリメラーゼに連結または結合されたナノポアを指し、これは、次に、ポリマー、例えば、ポリヌクレオチド鋳型と関連している。ナノポアシーケンシング複合体は、膜、例えば脂質二重層に配置され、そこでポリマー成分、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸を同定するように機能する。
【0086】
本明細書で使用される場合、「ナノポアシーケンシング」または「ナノポアベースのシーケンシング」という用語は、ナノポアの助けを借りてポリヌクレオチドの配列を決定する方法を指す。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドの配列は、鋳型依存的に決定される。本明細書に開示される方法は、ナノポアシーケンシング方法、システム、またはデバイスに限定されない。
【0087】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、1つまたは複数の核酸サブユニットを含む分子を指す。核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)から選択される1つまたは複数のサブユニット(塩基)を含むことができる。これらの塩基の誘導体は、PCRシステム、試薬および消耗品(Perkin Elmer Catalog 1996-1997、Roche Molecular Systems、Inc.、Branchburg、N.J.、USA)に例示されており、これは参照により全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの例において、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、あるいはそれらの誘導体である。核酸は、例えば、一本鎖または二本鎖であり得る。核酸は、DNA、RNA、およびそれらのハイブリッドまたは変異体を含むがこれらに限定されない、任意の核酸分子を含むことができる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「シーケンシング」という用語は、核酸中の塩基の順序および位置の決定を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「タグ」という用語は、原子もしくは分子、または原子もしくは分子の集合体であり得る検出可能な部分を指す。タグは、光学的、電気化学的、磁気的、または静電的(例えば、誘導性、容量性)シグネチャを提供することがあり、これ
は、ナノポアの助けを借りて検出され得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、「タグ付きヌクレオチド」という用語は、その末端リン酸にタグが付いているヌクレオチドを指す。
【0091】
出願人は、従来技術の電極と比較して予想外に優れた二層静電容量を有する電極を含む改良されたナノシーケンシングデバイスを開発し、比較的速い信号減衰を可能にした。これらおよび他の実施形態は、本明細書に開示されている。
【0092】
ルテニウム含有材料
【0093】
本開示の一態様は、ルテニウム含有材料である。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、ルテニウム、窒素、および酸素のうちの少なくとも2つを含む。いくつかの実施形態において、ルテニウム含有材料は、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、酸窒化ルテニウムなど、ならびにそれらの任意の複合体または混合物(例えば、窒化ルテニウムおよび酸窒化ルテニウムを含む複合体、または窒化ルテニウムおよび酸窒化ルテニウムを含む混合物)を含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料を電極に使用し得る。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、複数の個別にアドレス指定可能なウェルなどの複数のウェルを含むチップまたはバイオチップの電極として使用され得る。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、ナノポアシーケンシングデバイスなどのシーケンシングデバイスで使用するために電極に取り込まれ得る。本明細書でさらに詳細に説明するように、本開示のルテニウム含有材料は、窒化チタンなどの他の金属窒化物と比較して、改善された物理的および/または化学的特性を有し、例えば、ルテニウム含有材料は、窒化チタン材料と比較して増加した二層静電容量を提供し、また、比較的増強された信号減衰率を可能にする。
【0094】
いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料は、ルテニウム含有材料を基板上に堆積させることによって調製される。スパッタ堆積、プラズマ蒸着、化学蒸着、中間周波数反応性スパッタリング、DCスパッタリング、および磁気スパッタリングを含むがこれらに限定されない適切な堆積システムを利用し得る。スパッタリングは、基板上に材料の薄膜を堆積するために広く使用されている。一般に、このようなプロセスには、イオン化ガス雰囲気でスパッタリングされる材料(「ターゲット」)の平面または回転可能なプレートにイオンボンバード処理を与えることが含まれる。プラズマから出るガスイオンは、堆積される材料で構成されるターゲットに向かって加速される。材料はターゲットから分離(「スパッタリング」)され、その後、近くの基板に堆積される。このプロセスは、堆積が始まる前に真空ベース圧力までポンプダウンされる密閉チャンバ内で実現される。プロセス中は真空が維持され、ターゲット材料の粒子が移動され、コーティングされる基板上に薄膜として堆積される。
【0095】
いくつかの実施形態では、基板上にスパッタリングされる材料は、ターゲットプレート上のコーティングとして存在する(プレート自体は、回転するターゲットプレートまたは平面のターゲットプレートであり得る)。他の実施形態では、ターゲット全体は、基板上にスパッタリングされる材料から構成され得る。この目的には、純金属や混合金属など、任意の材料を使用し得る。
【0096】
適切なスパッタシステムは、(i)平面または回転ターゲット(例えば、ルテニウムターゲット)をスパッタリングするように構成されたチャンバと、(ii)チャンバと流体連通している1つまたは複数のガスマニホールド(または混合ガスマニホールド)(例えば、窒素を導入するための第1のガスマニホールド、およびアルゴンなどの不活性ガスを導入するための第2のガスマニホールド)と、(iii)混合ガスマニホールドと流体連通する反応性ガスおよび不活性ガス源とを含む。いくつかの実施形態では、反応性ガスは、第1のガスマニホールドによってチャンバの一部に導入される。いくつかの実施形態では、反応性ガスは窒素である。いくつかの実施形態では、不活性ガスはアルゴンである。いくつかの実施形態では、導入された反応性ガスと導入された不活性ガスとの比は、約9:1~約1:1の範囲である。いくつかの実施形態では、反応性ガスは、スパッタチャンバ内の大気全体に加えられる。他の実施形態では、反応性ガスは、スパッタチャンバの特定の領域にわたって、またはターゲットの特定の部分を取り囲む領域に導入される。
【0097】
いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料を基板上に堆積するプロセスは、第1のステップとして、基板およびターゲット(例えば、ルテニウムターゲット)をスパッタチャンバに導入することを含む。いくつかの実施形態では、基板は金属、例えばアルミニウムである。他の実施形態では、基板は、金属基板(例えば、チタン膜)上に堆積された薄膜などの既存の薄膜である。いくつかの実施形態では、既存の薄膜は、ルテニウム含有材料の成長のための種層として機能する。いくつかの実施形態では、既存の薄膜は、リチウムまたはリチウム含有材料を含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、堆積中に供給される電力は、50ワット~約250ワットの範囲である。他の実施形態では、堆積中に供給される電力は、50ワット~約200ワットの範囲である。さらに他の実施形態では、堆積中に供給される電力は、100ワット~約200ワットの範囲である。いくつかの実施形態では、出願人は、窒化ルテニウムの膜などのルテニウム含有膜の二層静電容量が、スパッタ電力が増加するにつれて直線的に増加することを発見した(図1Aを参照)。例えば、二層静電容量は、50ワットのスパッタ電力での4500uF/cm2から200ワットのスパッタ電力での15000uF/cmに増加した。いくつかの実施形態では、出願人は、窒化ルテニウムの膜などのルテニウム含有膜の厚さが、スパッタ電力が増加するにつれて直線的に増加することを発見した(図1Bを参照)。図1C図1D、および図1Eはさらに、スパッタ電力が増加するにつれて(例えば、50ワット(図1C)から100ワット(図1D)、次いで200ワット(図1E))、ルテニウム含有膜が増加した。(より薄い膜と比較して)より厚い膜が堆積された場合、二層静電容量の劣化はないと考えられる。
【0099】
さらに、出願人は、スパッタ電力が増加すると(例えば、50ワット(図1F)から100ワット(図1G)、次いで200ワット(図1H))、膜の構造が変化することを発見し、例えばスパッタ電力が増加するにつれて、構造は本質的により円柱状になった(スパッタチャンバの全圧ならびに導入された反応性および不活性ガスの分圧を一定に保つ)。いくつかの実施形態では、樹枝状構造は、一般に、柱状構造よりもコンパクトでなく、配向性が低いと考えられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、堆積は、窒素の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、窒素は、約5sccm~約150sccmの速度で導入される。他の実施形態では、窒素は、約5sccm~約120sccmの速度で導入される。さらに他の実施形態では、窒素は、約5sccm~約100sccmの速度で導入される。別の実施形態では、窒素は、約5sccm~約90sccmの速度で導入される。他の実施形態では、窒素は、約5sccm~約80sccmの速度で導入される。他の実施形態では、窒素は、約10sccm~約50sccmの速度で導入される。他の実施形態では、窒素は、約10sccm~約20sccmの速度で導入される。他の実施形態では、窒素は、約50sccm~約100sccmの速度で導入される。他の実施形態では、窒素は、約80sccm~約100sccmの速度で導入される。さらに他の実施形態では、窒素は約90sccmの速度で導入される。
【0101】
いくつかの実施形態では、不活性ガス(例えば、アルゴン)がスパッタチャンバに導入
される。いくつかの実施形態では、不活性ガスは、窒素と同じマニホールドを通して(すなわち、混合ガスマニホールドを使用して)導入される。他の実施形態では、不活性ガスは、別個のマニホールド、すなわち、窒素を導入するために使用されるマニホールドとは別の別個のマニホールドを通して導入される。いくつかの実施形態では、不活性ガスは、約1~約15sccmの速度で導入される。他の実施形態では、不活性ガスは、約5~約10sccmの速度で導入される。さらに他の実施形態では、不活性ガスは約5sccmの速度で導入される。別の実施形態では、不活性ガスは約10sccmの速度で導入される。
【0102】
いくつかの実施形態では、スパッタチャンバ内の圧力は、5mTorr~約30mTorrに維持される。他の実施形態では、スパッタチャンバ内の圧力は、5mTorr~約25mTorrに維持される。他の実施形態では、スパッタチャンバ内の圧力は、10mTorr~約20mTorrに維持される。さらに他の実施形態では、スパッタチャンバ内の圧力は、約10mTorrに維持される。さらに他の実施形態では、スパッタチャンバ内の圧力は、約15mTorrに維持される。さらに他の実施形態では、スパッタチャンバ内の圧力は、約20mTorrに維持される。
【0103】
いくつかの実施形態では、スパッタリング中の温度は、約25℃~約150℃に維持される。いくつかの実施形態では、スパッタリング中の温度は、約25℃~約100℃に維持される。いくつかの実施形態では、スパッタリング中の温度は、約25℃~約80℃に維持される。いくつかの実施形態では、スパッタリング中の温度は、約25℃~約60℃に維持される。いくつかの実施形態では、スパッタリング中の温度は、約25℃~約50℃に維持される。いくつかの実施形態では、スパッタリング中の温度は、約25℃~約40℃に維持される。
【0104】
いくつかの実施形態では、堆積は、約2mTorr~約30mTorrの範囲の全圧、約0sccm~約200sccmの範囲の窒素流量、約0sccm~約200sccmの範囲のアルゴン流量、約50ワット~約300ワットの範囲のスパッタ電力、および約25℃~約150℃の範囲の温度の処理パラメータを利用することを含む。いくつかの実施形態では、堆積は、10mTorrの全圧、20sccmの窒素流量、および100ワットのスパッタ電力処理パラメータを利用することを含む。他の実施形態では、堆積は、20mTorrの全圧、20sccmの窒素流量、および100ワットのスパッタ電力の処理パラメータを利用することを含む。他の実施形態では、堆積は、10mTorrの全圧、90sccmの窒素流量、および100ワットのスパッタ電力の処理パラメータを利用することを含む。他の実施形態では、堆積は、20mTorrの全圧、90sccmの窒素流量、および100ワットのスパッタ電力の処理パラメータを利用することを含む。いくつかの実施形態では、堆積は、10mTorrの全圧、20sccmの窒素流量、および200ワットのスパッタ電力の処理パラメータを利用することを含む。他の実施形態では、堆積は、20mTorrの全圧、20sccmの窒素流量、および200ワットのスパッタ電力の処理パラメータを利用することを含む。他の実施形態では、堆積は、10mTorrの全圧、90sccmの窒素流量、および200ワットのスパッタ電力を利用することを含む。他の実施形態では、堆積は、20mTorrの全圧、90sccmの窒素流量、および200ワットのスパッタ電力を利用することを含む。
【0105】
出願人は、導入された窒素の分圧が、導入された不活性ガス(例えば、アルゴン)の分圧に対して増加するにつれて、形成された膜の構造が柱状構造から樹枝状構造に変化することを予期せず発見した。出願人はまた、導入された窒素の分圧が、導入された不活性ガスの分圧に対して増加するにつれて、形成された膜の多孔性が増加することを予期せず発見した。図2A図2B図2C、および図2Dは、導入された窒素の分圧が不活性ガスの分圧に対して増加するときの、多孔性の増加および柱状構造から樹枝状構造への変化を
示す(スパッタチャンバ内のスパッタ電力および全圧チャンバは一定に保たれる)。具体的には、図2Aおよび図2Bは、横断面の走査型電子顕微鏡法による、多孔性の増加および柱状構造から樹枝状構造への変化を比較して示している。同様に、図2Cおよび図2Dは、横断面の走査型電子顕微鏡法による、多孔性の増加および柱状構造から樹枝状構造への変化を再び比較して示している。
【0106】
さらに、出願人は、スパッタチャンバの全圧が、例えば、10mTorrから20mTorrまで増加するにつれて、膜の樹枝状構造がさらに増加し、同時に膜の多孔性が増加する(図2E図2F図2G、および図2Hを参照)。特定の理論に拘束されることを望まないが、ルテニウムおよび窒素からの窒化ルテニウムの形成は、エネルギー的に好ましいプロセスではないと考えられる。いくつかの実施形態では、20mTorrでのより高い窒素の分圧は(10mTorrなどのより低い全圧に対して)、窒化ルテニウムの形成に有利に働く。いくつかの実施形態では、これは、より多くの樹枝状構造および/またはより高い多孔性を有する形成を可能にすると考えられる。例えば、図2Eおよび図2Fは、全圧が10mTorrから20mTorrに増加するにつれて、(走査型電子顕微鏡法に基づいて)構造の樹枝状の性質の増加が観察される2つの膜の断面を比較する。図2Gおよび図2Hは、同じ2つの膜の上面図を示しており、全圧が増加した後の膜の構造の樹枝状の性質の増加を再び示す。
【0107】
いくつかの実施形態では、堆積されたルテニウム含有膜は、約1重量%~約20重量%の窒素を含む。他の実施形態では、堆積されたルテニウム含有膜は、約5重量%~約15重量%の窒素を含む。他の実施形態では、堆積されたルテニウム含有膜は、約10重量%~約15重量%の窒素を含む。出願人は、低窒素流量、例えば20sccmの流量で、堆積された膜の大部分がルテニウムを含み、膜の5%未満が窒素を構成することを発見した(図3Aを参照)。しかし、窒素の流量が、例えば90sccmの流量まで増加するにつれて、堆積された膜の大部分が依然としてルテニウムを含んでいる間に、窒素の量は約15%に増加したと考えられる(図3Bを参照)。
【0108】
いくつかの実施形態では、形成されたルテニウム含有膜の二層静電容量は、約170pF/um~約220pF/umの範囲である他の実施形態では、形成されたルテニウム含有膜の二層静電容量は、約180pF/um~約220pF/umの範囲である他の実施形態では、形成されたルテニウム含有膜の二層静電容量は、約180pF/um~約200pF/umの範囲である。
【0109】
ルテニウム含有膜を基板上に堆積させた後、ルテニウム含有膜を熱処理し得る。いくつかの実施形態では、熱処理ステップは、120℃~約400℃の範囲の温度でルテニウム含有膜をベーク処理することを含む。他の実施形態では、熱処理ステップは、150℃~約350℃の範囲の温度でルテニウム含有膜をベーク処理することを含む。他の実施形態では、熱処理ステップは、150℃~約300℃の範囲の温度でルテニウム含有膜をベーク処理することを含む。他の実施形態では、熱処理ステップは、150℃~約250℃の範囲の温度でルテニウム含有膜をベーク処理することを含む。他の実施形態では、熱処理ステップは、180℃~約200℃の範囲の温度でルテニウム含有膜をベーク処理することを含む。さらに他の実施形態では、熱プロセスは、約200℃の温度で実施される。4つのルテニウム含有膜の形態に対する温度の影響を図4A(150℃)、図4B(200℃)、図4C(260℃)、および図4D(320℃)に示す。特に、約150℃の温度での熱処理は、約55%の原子状酸素および約45%の原子状窒素を示す表面を提供する。比較すると、その後のより高い温度(例えば、260℃および320℃)での熱処理は、酸素原子パーセントの増加および窒素原子パーセントの減少を示した。いくつかの実施形態では、熱処理は、熱処理されていないルテニウム含有材料と比較して、熱処理された材料の二層静電容量が増加するような温度および期間で行われる。いくつかの実施形態では、二層静電容量のパーセンテージ増加は、約110%~約160%の範囲である(例えば、図5Aを参照のこと)。いくつかの実施形態では、パーセンテージの増加は、約120%~約150%の範囲である。いくつかの実施形態では、熱処理は、材料の二層静電容量が約200pF/um~約320pF/umの範囲であるように、140℃を超える温度で十分な時間(例えば、15分~120分)にわたって行われる。他の実施形態では、熱処理されたルテニウム含有膜の二層静電容量は、約200pF/um~約300pF/umの範囲である。他の実施形態では、熱処理されたルテニウム含有膜の二層静電容量は、約200pF/um~約280pF/umの範囲である。他の実施形態では、熱処理されたルテニウム含有膜の二層静電容量は、約200pF/um~約260pF/umの範囲である。他の実施形態では、熱処理されたルテニウム含有膜の二層静電容量は、約220pF/um~約240pF/umの範囲である。
【0110】
いくつかの実施形態では、熱処理後のルテニウム含有材料は、ルテニウム、酸素、および窒素を含む。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料の後処理に取り込まれる酸素の量は、膜成長中に導入される窒素の量に依存する。例えば、大量の窒素(例えば、約15%)を含むそれらの膜は、少量の窒素(例えば、約5%)を有するそれらの膜よりも、熱処理時に少ない酸素を取り込んだ。図3Cは、初期窒素量が少ないルテニウム含有膜の熱処理前後のエネルギー分散型X線分光法(EDS)データを比較する(図3Cを、熱処理前のスペクトルを示す図3Aと比較する)。他方、図3Dは、初期窒素量が多いルテニウム含有膜の熱処理前後のEDSデータを比較する(図3Dを、熱処理前のスペクトルを示す図3Bと比較する)。
【0111】
いくつかの実施形態では、熱処理されたルテニウム含有膜が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されるように、約1.5~約3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有する。他の実施形態では、表面組成比は、約1.8~約3.2の範囲である。さらに他の実施形態では、表面組成比は、約2~約3の範囲である。さらに他の実施形態では、表面組成比は、約2~約2.5の範囲である。さらに他の実施形態では、表面組成比は、約2.1~約2.4の範囲である。
【0112】
以下の表1は、4つの異なる熱処理されたサンプルの(XPS)データ(図6Aから図6Dを参照)を要約している。サンプル1、2、および3では、窒素は主に窒化物の形であり、酸窒化物の量は少ないと考えられる。比較すると、サンプル4のN1sスペクトルの窒化物成分は、サンプル1、2、および3の表面の窒化物成分よりも少なかった。一方、XPSデータは、酸素が主に酸化ルテニウム、水酸化物、および酸窒化物として存在することを示している。酸化物の相対的寄与は、一般に、より高いアニーリング温度のサンプルでより高かったが、より低いアニーリング温度のサンプルは、酸窒化物およびおそらく水酸化物により大きく寄与したと考えられる。図5Bおよび図5Cは、アニーリング温度の関数としての1つの特定のサンプルのルテニウム、窒素、および酸素の相対量をさらに示す(200ワット、20mTorr、10sccm Ar、および90sccm窒素で堆積されたサンプルを使用)。
【表1】
【0113】
ナノポアシーケンシングの概要
【0114】
ポリヌクレオチドのナノポアシーケンシング、例えばDNAまたはRNAは、ポリヌクレオチド配列の鎖シーケンシングおよび/またはエキソシーケンシングによって達成し得る。いくつかの実施形態において、鎖シーケンシングは、ポリヌクレオチド鋳型のヌクレオチドがナノポアに通されるときに、サンプルポリヌクレオチド鎖のヌクレオチド塩基が直接決定される方法を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、それを膜の微細な細孔に通すことによってシーケンシングされ得る。塩基は、膜の一方の側からもう一方の側に細孔を通って流れるイオンに影響を与える方法によって同定され得る。いくつかの実施形態では、1つのタンパク質分子は、DNAらせんを2つの鎖に「展開」することができる。第2のタンパク質は、膜に細孔を作り、「アダプタ」分子を保持することができる。細孔を通るイオンの流れは電流を生成することができ、それによって各塩基はイオンの流れを異なる程度に遮断し、電流を変化させ得る。アダプタ分子は、塩基を電子的に同定するのに十分な長さの位置に保つことができる(PCT公開第WO/2018/034745号、および米国特許出願公開第2018/0044725号および2018/0201992号を参照し、それらの開示は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、シーケンシングは、Oxford Nanopore(オックスフォード、英国)、Illumina(サンディエゴ、カリフォルニア)のヘリカーゼおよびエキソヌクレアーゼベースの方法、またはStratos Genomics(シアトル、ワシントン)のナノポアsequencing-by-expansion方法に従って実行され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、ナノポアは、核酸分子を間接的に配列決定するために使用され得る、すなわち、間接シーケンシングは、重合された核酸分子がシーケンシング中にナノポアを通過しない任意の方法を含み得る。これらの実施形態において、核酸分子は、ナノポアの前庭に少なくとも部分的に位置し得るが、ナノポアのポア(すなわち、最も狭い部分)には位置し得ない。核酸分子は、ナノポアから任意の適切な距離内および/またはナノポアに近接して通過することができ、任意選択で、ヌクレオチド取り込みイベントから放出される副産物(例えば、以下に記載されるようにタグ付けされたヌクレオチドから切断されるタグ)がナノポアで検出されるような距離内を通過し得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、ナノポアベースのシーケンシングは、成長中のポリヌク
レオチド鎖にヌクレオチドを取り込む、ナノポアの近くに位置する酵素などの酵素を利用し、成長中のポリヌクレオチド鎖は、対応する鋳型核酸鎖に相補的である。ヌクレオチド取り込みイベントは、DNAポリメラーゼまたはその突然変異体もしくは変異体などの酵素によって触媒され、鋳型分子との塩基対相互作用を使用して、各位置での取り込みに利用可能なヌクレオチドの中から選択する。「ヌクレオチド取り込みイベント」は、成長中のポリヌクレオチド鎖へのヌクレオチドの取り込みである。ヌクレオチド取り込みイベントの副産物は、ナノポアによって検出される場合がある。いくつかの実施形態では、副産物は、所与のタイプのヌクレオチドの取り込みと相関し得る。いくつかの実施形態では、副産物は、ナノポアを通過し、および/またはナノポアで検出可能な信号を生成する。放出されたタグ分子(以下に説明)は、ヌクレオチド取り込みイベントの副産物の例である。例として、図8は、ナノポア(130)に近接して結合したDNAポリメラーゼ(120)を示している。シーケンシングされるポリヌクレオチド鋳型(170)がプライマーとともに加えられる(鋳型は酵素に関連している)。このナノポアシーケンシング複合体(プライマーを含む)に、4つの異なるタグが付けられたヌクレオチド(140)がバルク水相に追加される。ポリメラーゼが触媒する正しいヌクレオチドの取り込み後、タグは解放され、ナノポア(130)を通過して、固有のイオン電流遮断信号(150)を生成し、これにより、タグのそれぞれが異なる化学構造を持っているため、追加された塩基を電子的に識別する。そのようなナノポアベースのシーケンシングシステムおよび方法に関する追加の詳細は、米国特許第9,605,309号および第9,557,294号に記載されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0117】
いくつかの実施形態では、核酸分子を配列決定するための方法は、(a)タグ付きヌクレオチドを重合すること(例えば、鋳型として第1の核酸分子を使用して、一度に1つのタグ付きヌクレオチドを取り込む酵素を使用する)を含み、タグは個々のヌクレオチドに関連する重合時に放出され、(b)ナノポアの助けを借りて放出されたタグを検出することを含む。いくつかの実施形態では、酵素は、タグ付けされたヌクレオチドのプールから引き出す。本明細書に記載されるように、各タイプのヌクレオチドは、タグが放出されてナノポアの近くまたはナノポアを通過するときに、生成される信号に基づいて互いに区別され得るように、異なるタグ分子に結合される(例えば、図8を参照)。いくつかの実施形態では、各タグは、例えば、異なる信号強度、異なる信号振幅など異なる検出可能な信号を有することがあり、これらは、塩基呼び出しアルゴリズムなどによって解釈される場合がある。
【0118】
いくつかの実施形態では、取り込まれたヌクレオチドはタグ付けされたヌクレオチドである。タグ付けされたヌクレオチドの例は、米国特許出願公開第2015/0368710号および2018/0073071号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる(Kumarら、PEG-Labeled Nucleotides and Nanopore Detection for Single Molecule DNA Sequencing by Synthesis,Sci Rep.2012;2:684もまた参照)。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド取り込みイベントは、タグ付けされたヌクレオチドからタグを放出し、放出されたタグが検出される(図8を参照)。このようにして、特有のタグが各タイプのヌクレオチドから放出されるため(すなわち、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、またはウラシル)、取り込まれた塩基を同定し得る(すなわち、A、C、G、T、またはU)。
【0119】
いくつかの実施形態では、放出されたタグは、ナノポアを通過するか、またはナノポアの近くを通過するときに、感知回路がタグに関連する電気信号を検出するように、ナノポアを通ってまたはナノポアに近接して流れる(図8を参照)。検出された信号(すなわち、シーケンシングデータ)は、収集され、メモリ位置に保存されることがあり、後で、核酸の配列を構築するために使用され得る。収集された信号は、エラーなど、検出された信号の異常を説明するために処理される場合がある。適切なナノポア検出器は、米国特許出願公開第2011/0193570号および2018/0073071号に記載されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。同様に、米国特許第9,377,437号および第8,324,914号は、ナノポアベースのシーケンシングシステムからの電気信号の収集および分析を記載しており、その開示もまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0120】
いくつかの実施形態では、ナノポアに結合または接合された酵素には、ポリヌクレオチドプロセシング酵素、例えば、DNAおよびRNAポリメラーゼ、逆転写酵素、エキソヌクレアーゼ、およびアンフォールダーゼが含まれる。いくつかの実施形態において、酵素はヘリカーゼである。いくつかの実施形態において、酵素は、野生型酵素であり得るか、または、野生型酵素の変異体であり得る。いくつかの実施形態では、酵素はポリメラーゼ変異体である。例えば、ポリメラーゼ変異体は、配列番号2(Pol6(Hisタグ付き)のH223、N224、Y225、H227、I295、Y342、T343、I357、S360、L361、I363、S365Q、S366、Y367、P368、D417、E475、Y476、F478、K518、H527、T529、M531、N535、G539、P542、N545、Q546、A547、L549、I550、N552、G553、F558、A596、G603、A610、V615、Y622、C623、D624、I628、Y629、R632、N635、M641、A643、I644、T647、I648、T651、I652、K655、W656、D657、V658、H660、F662、およびL690に対応する位置に少なくとも1つの改変を含み得る。他の適切なポリメラーゼ変異体は、米国特許出願公開第2016/0222363号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに他の適切な酵素は、米国特許第9,797,009号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに適切な酵素は、米国特許出願公開第2016/0257942号に開示されている。
【0121】
いくつかの実施形態において、ナノポアシーケンシング複合体のナノポアは、限定されないが、生物学的ナノポア、固体ナノポア、およびハイブリッド生物学的固体ナノポアを含む。ナノポアシーケンシング複合体の生物学的ナノポアには、E.coli菌種、Salmonella菌種、Shigella菌種、およびPseudomonas菌種からのOmpG、ならびにS.aureus菌種からのアルファ溶血素、M.smegmatis菌種からのMspAが含まれる。ナノポアは、野生型ナノポア、変異型ナノポア、または修飾された変異型ナノポアであり得る。これらのステップは、米国特許出願公開第2017/0088588号明細書に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ナノポアシーケンシング複合体の変異体ナノポアは、それが由来するナノポアのイオン電流ノイズを低減するように操作される。さらに他のナノポアは、米国特許出願公開第2017/0268052号、2017/0356037号および2018/0201993号に記載されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。現在知られている、または後で発見された任意のナノポア変異体は、1つまたは複数の酵素変異体のスクリーニングと同時に(例えば、望ましい特性を提供するナノポア変異体および酵素変異体の対を同定するために)、本明細書に記載の方法に従ってスクリーニングされ得る。
【0122】
ナノポアは、集積回路などの感知回路の感知電極に隣接して配置された膜に形成されるか、そうでなければ埋め込まれ得る。集積回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)であり得る。いくつかの例では、集積回路は、電界効果トランジスタまたは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)である。感知回路は、ナノポアを有するチップまたは他のデバイス内に、またはオフチップ構成などのチップまたはデバイスの外に配置し得る。半導体は、第IV族(例えば、シリコン)および第III-V族半導体(例えば、ガリウムヒ素)を
含むがこれらに限定されない任意の半導体であり得る。ナノポアシーケンシング複合体を組み立てるための方法は、米国特許出願公開第2017/0268052号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。異なる鋳型のそれぞれをナノポア-酵素複合体に複合体化するための他の適切な方法は、PCT公開第WO2014/074727、WO2006/028508、およびWO2012/083249に記載されている方法を含み、それぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0123】
核酸サンプルを配列決定するためのチップは、複数の個別にアドレス指定可能なナノポアを含むことができる。複数の個別にアドレス指定可能なナノポアは、集積回路に隣接して配置された膜に形成された少なくとも1つのナノポアを含むことができる。いくつかの実施形態では、個別にアドレス指定可能な各ナノポアは、個々のヌクレオチドに関連するタグを検出することができることがある。
【0124】
複数のナノポアセンサは、チップまたはバイオチップ上に存在するアレイなどのアレイとして提供され得る。ナノポアのアレイは、任意の適切な数のナノポアを有し得る。場合によっては、アレイは、約200個、約400個、約600個、約800個、約1000個、約1500個、約2000個、約3000個、約4000個、約5000個、約10000個、約15000個、約20000個、約40000個、約60000個、約80000個、約100000個、約200000個、約400000個、約600000個、約800000個、約1000000個などのナノポアを含む。これらのおよび他の方法は、PCT公開である国際公開第2015/061511号パンフレットに記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。複数のナノポアを含むさらに適切なバイオチップは、米国特許出願公開第2017/0268052号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに他の適切なナノポアアレイは、米国特許第8,986,928号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
ナノポアシーケンシングセルおよび回路
【0126】
本開示はまた、少なくとも300pF/umの二層静電容量を有する材料を含む電極または作用電極を含む、ナノポアシーケンシングセル、チップ、および/またはナノポアシーケンシングデバイスに関する。出願人は、そのような材料の使用が、例えば、窒化チタン材料などの、より低い二層静電容量を有する従来技術の材料と比較して、改善された信号減衰率を容易にすることを予期せず発見した。実際、高い二層静電容量を有する材料(例えば、ルテニウム含有材料)は、比較的低い二層静電容量を有する材料(例えば、窒化チタン)と比較して、より速い信号減衰を有すると考えられる(図7A図7Cを参照)。改善された信号減衰率により、ナノポアの筒内に様々なタイプのタグを保持した場合に、信号の解像度が向上する。シーケンシングデバイスに含まれる回路は、データ収集中に、二重層のナノポア全体で電圧降下が発生し、電極/電解質界面で電気二層静電容量全体で電圧降下が発生するという意味で機能すると考えられる。より高い電気二層静電容量は、信号のより速い減衰(より短い半減期)を可能にすると考えられる(図7A図7Cを参照)。異なるタグを有するヌクレオチド(A、T、C、G)は、適用された波形Vに基づいてナノポアにねじ込むことができるため、信号の高速減衰により、タグに対応する異なる信号レベルの解像度が向上すると考えられる(A、T、C、G)。いくつかの実施形態では、タグは、異なる信号が取得されることを可能にするように、それらが異なる方法でポアを遮断するように設計されている。
【0127】
図9は、ナノポアベースのシーケンシングチップ内のセル160の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、膜102が細胞の表面上に形成される。いくつかの実施形態では
、膜102は脂質二重層である。タンパク質ナノポア膜貫通分子複合体(PNTMC)および目的の分析物を含み得るバルク電解質114は、セルの表面上に直接配置される。いくつかの実施形態において、単一のPNTMC104は、電気穿孔によって膜102に挿入される。いくつかの実施形態では、アレイ内の個々の膜は、化学的にも電気的にも互いに接続されていない。したがって、アレイ内の各セルは、独立したシーケンシングマシンであり、PNTMCに関連付けられた単一の重合体分子に固有のデータを生成する。いくつかの実施形態では、PNTMC104は、分析物上で動作し、そうでなければ不浸透性の二重層を介してイオン電流を変調する。
【0128】
図9を引き続き参照すると、アナログ測定回路112は、電解質108の薄膜で覆われた金属電極170(例えば、ルテニウム、酸素、および窒素からなる電極)に接続されている。いくつかの実施形態では、電解質108の薄膜は、イオン不透過膜102によってバルク電解質114から隔離されている。PNTMC104は、膜102と交差し、イオン電流がバルク液体から作用電極170に流れるための唯一の経路を提供する。いくつかの実施形態では、セルはまた、電気化学電位センサである対電極(CE)116を含む。いくつかの実施形態では、セルはまた、参照電極117を含むことができる。
【0129】
図10A図10Dは、ナノポアベースのシーケンシングチップのセル内の回路の実施形態を示し、ナノポアに印加される電圧は、ナノポアが特定の検出可能な状態にある期間にわたって変化するように構成することができる。ナノポアの可能な状態の1つは、タグが取り付けられたポリホスフェートがナノポアの筒に存在しない場合、開放チャネル状態である。ナノポアの別の4つの可能な状態は、タグが取り付けられたポリホスフェートの4つの異なるタイプ(A、T、G又はC)がナノポアの筒内に保持されるときの状態に対応する。ナノポアのさらに別の可能な状態は、膜が断裂するときである。図10B図10Cは、ナノポアベースのシーケンシングチップのセル内の回路の追加の実施形態を示し、ナノポアに印加される電圧は、ナノポアが特定の検出可能な状態にある期間にわたって変化するように構成することができる。
【0130】
図10A図10Dはさらに、膜に挿入されるナノポアを示し、ここで、ナノポアおよび膜は、電圧がナノポア全体に印加され得るように、作用電極(Vpre)と対電極(Vliq)との間に位置する。いくつかの実施形態では、ナノポアはまた、バルク液体/電解質と接触している。本明細書で使用される場合、「セル」という用語は、少なくとも膜、ナノポア、作用セル電極、および関連する回路を含むことを意味する。いくつかの実施形態では、対電極(Vliq)は、複数のセル間で共有され、したがって、共通電極とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、共通電極は、測定セル内のナノポアと接触しているバルク液体に共通電位を印加するように構成され得る。いくつかの実施形態では、共通電位および共通電極は、すべての測定セルに共通である。いくつかの実施形態では、各測定セル内に作用電極が存在し、共通電極とは対照的に、作用セル電極は、他の測定セルの作用セル電極から独立した明確な電位を適用するように構成可能である。
【0131】
図10A図10Dにさらに示されるように、回路は、膜(C二重層)に関連する静電容量をモデル化するキャパシタ(NCAP)と、異なる状態(例えば、開放チャネル状態またはナノポア内に異なるタイプのタグまたは分子を有することに対応する状態)のナノポアに関連する抵抗をモデル化する抵抗とを含む。この回路は、作用電極に関連する静電容量をモデル化するキャパシタを含む。作用電極に関連する静電容量は、電気化学的静電容量(C二層)とも呼ばれる。作用電極に関連する電気化学的静電容量C二層は、二層静電容量を含み、さらに疑似静電容量を含み得る。
【0132】
図11Aは、導電性電極と、隣接する液体電解質との間の任意の界面に形成される二層を示している。電圧が印加されると、導電性電極と、隣接する液体電解質との間の界面で
、電荷(正または負)が電極に蓄積する。電極内の電荷は、双極子の再配向と、界面近くの電解質における反対の電荷のイオンの蓄積とによってバランスが取られる。電極と電解質の間の界面の両側に蓄積された電荷は、電解質中の帯電種と溶媒分子のサイズが有限であるためにわずかな距離で分離され、従来のキャパシタの誘電体のように機能する。「二層」という用語は、電極と電解質との間の界面の近くでの電子およびイオン電荷分布の集合を指す。
【0133】
図11Bは、図10A~10Dのように、導電性電極と隣接する液体電解質との間の界面において、二層の形成と同時に形成され得る疑似容量効果を示している。疑似キャパシタは、電極と電解質との間の電子電荷移動によって電気エネルギーを広範囲に蓄積する。これは、電気吸着、還元-酸化反応、またはインタカレーションプロセスによって実現される。
【0134】
図12は、ナノポアが膜に挿入されている、ナノポア内の分子を分析するためのプロセス800の実施形態を示している。プロセス800は、図10A図10Dに示される回路を使用して実行され得る。図13は、プロセス800が実行され、3回繰り返されたときの時間に対するナノポアに印加された電圧のプロットの実施形態を示している。いくつかの実施形態では、ナノポアの両端の電圧は時間とともに変化する。電圧減衰の速度(つまり、ナノポア全体の電圧の傾きの急峻さ対時間のプロット)は、セルの抵抗に依存する。より詳しくは、異なる状態(例えば、ナノポア内に異なるタイプの分子を有することに対応する状態)のナノポアに関連付けられた抵抗が、分子の別個の化学構造に起因して異なるので、異なる対応する電圧減衰率は、観察され得るようになり、したがってナノポアの分子を識別するために用いられ得る。
【0135】
図14は、ナノポアが異なる状態にあるときの時間に対するナノポアに印加された電圧のプロットを示している。曲線1002は、開放チャネル状態の間の電圧減衰の速度を示している。いくつかの実施形態では、開放チャネル状態にあるナノポアに関連付けられた抵抗は、100Mオーム~20Gオームの範囲内にある。曲線1004、1006、1008、および1010は、4つの異なるタイプのタグ付きポリリン酸塩(A、T、G、またはC)がナノポアの筒に保持されているとき、4つの捕捉状態に対応する異なる電圧減衰率を示している。いくつかの実施形態では、捕捉状態にあるナノポアに関連付けられた抵抗は、200Mオーム~40Gオームの範囲内にある。いくつかの実施形態では、プロットのそれぞれの傾きは、互いに区別可能である。
【0136】
ナノポアベースのシーケンシングチップのセル性能の向上は、作用電極に関連する電気化学的静電容量(図10A図10DのC二層を参照)を最大化することによって達成できる。いくつかの実施形態では、C二層を最大化することによって、図10A図10Dに示される回路によって測定された情報信号がより安定し、情報信号の上の複雑なスプリアス信号が最小限に抑えられる。いくつかの実施形態では、C二層に関連するインピーダンスが、C二重層に関連するインピーダンスと比較して、AC(交流)短絡に近くなるように、C二層が最大化される(C二重層図10A図10Dを参照)。
【0137】
図15は、TiNと比較して電気化学容量が増加した作用電極を含む、ナノポアベースのシーケンシングチップの電気化学セル1100の実施形態を示している。いくつかの実施形態では、TiNと比較して電気化学容量が増加した作用電極は、ルテニウム、酸素、および窒素のうちの少なくとも2つを含む材料である。いくつかの実施形態では、材料は、窒化ルテニウム、酸窒化ルテニウム、酸化ルテニウム、またはそれらの任意の複合体もしくは混合物を含む。77pF/um2の二層静電容量を有するTiNと比較して、本開示のルテニウム含有材料は、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有する。これは、TiN材料と比較して、ルテニウム含有材料の二層静電容量
が少なくとも4倍増加することを表している。本明細書でさらに詳細に記載されるように、ルテニウム含有作用電極は、高い二層静電容量、高い多孔性、面心立方構造、および/または樹枝状構造を含む望ましい特性を有するように形成され得る。実際、これらの特性は、ルテニウム含有材料の堆積パラメータを変えることによって調整し得る。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有材料の多孔質構造は、以下に記載されるように、電解質と接触して大きな有効表面積を作り出す(図2Fおよび図2Hも参照)。
【0138】
いくつかの実施形態では、セル1100は、導電性または金属層1101を含む。金属層1101は、セル1100をナノポアベースのシーケンシングチップの残りの部分に接続する。いくつかの実施形態では、金属層1101は、アルミニウムまたはアルミニウムの合金である。セル1100は、ルテニウム含有材料1102と、金属層1101の上の誘電体層1103とからなる作用電極をさらに含む。いくつかの実施形態では、作用電極1102は、形状が円形または八角形であり、誘電体層1103は、作用電極1102を取り囲む壁を形成する。セル1100は、作用電極1102および誘電体層1103の上の誘電体層1104をさらに含む。いくつかの実施形態では、誘電体層1104は、ウェル1105を取り囲む絶縁壁を形成する。いくつかの実施形態では、誘電体層1103および誘電体層1104は一緒に単一の誘電体片を形成する。いくつかの実施形態では、誘電体層1103は、作用電極1102に隣接して水平に配置される部分であり、誘電体層1104は、作用電極の一部の上に配置され、それを覆う部分である。いくつかの実施形態では、誘電体層1103および誘電体層1104は、別個の誘電体片であり、それらは別々に成長させることができる。ウェル1105は、作用電極の覆われていない部分の上に開口部を有する。
【0139】
ウェル1105の内部で、食塩水/電解質1106の膜が作用電極1102の上に堆積される。食塩水1106は、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、グルタミン酸リチウム、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、塩化カルシウム(CaCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化マンガン(MnCl)、および塩化マグネシウム(MgCl2)のうちの1つを含み得る。いくつかの実施形態では、食塩水1106の膜は、約3ミクロン(μm)の厚さを有する。食塩水1106の膜の厚さは、0~5ミクロンの範囲であり得る。
【0140】
誘電体層1103および1104を形成するために使用される誘電体材料には、ガラス、酸化物、一窒化ケイ素(SiN)などが含まれる。誘電体層1104の上面はシリル化され得る。シリル化は、誘電体層1104の上面の上に疎水性層1120を形成する。いくつかの実施形態では、疎水性層1120は、約1.5ナノメートル(nm)の厚さを有する。あるいは、酸化ハフニウムなどの疎水性である誘電体材料を使用して、誘電体層1104を形成し得る。
【0141】
図15に示されているように、膜は、誘電体層1104の上に形成され、ウェル1105にまたがることがある。例えば、膜は、疎水性層1120の上に形成された脂質単層1118を含み、膜がウェル1105の開口部に到達すると、脂質単層は、ウェルの開口部にまたがる脂質二重層1114に移行する。疎水性層1120は、誘電体層1104上の脂質単層1118の形成、および脂質単層から脂質二重層への移行を容易にする。タンパク質ナノポア膜貫通分子複合体(PNTMC)および目的の分析物を含むバルク電解質1108は、ウェルの真上に配置される。単一のPNTMC/ナノポア1116は、電気穿孔によって脂質二重層1114に挿入される。ナノポア1116は、脂質二重層1114と交差し、バルク電解質1108から作用電極1102へのイオン流のための唯一の経路を提供する。バルク電解質1108は、塩化リチウム(LiCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、グルタミン酸リチウム、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、塩化カルシウム(CaCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化マンガン(MnCl)、および塩化マグネシウム(MgCl)のうちの1つをさらに含み得る。
【0142】
セル1100は、対電極(CE)1110を含む。セル1100はまた、電気化学電位センサとして作用する参照電極1112を含む。いくつかの実施形態では、対電極1110は、複数のセル間で共有され、したがって、共通電極とも呼ばれる。共通電極は、測定セル内のナノポアと接触しているバルク液体に共通電位を印加するように構成され得る。共通電位および共通電極は、すべての測定セルに共通である。
【0143】
図16A図16Eは、本開示のいくつかの実施形態による作用電極を形成する方法を示す。第1のステップでは、誘電体層(例えばSiO)が導電層(例えば、金属6アルミニウムを含む金属層)の表面に堆積される。導電層自体は、セルからチップの残りの部分に信号を送達する回路を含み得る。いくつかの実施形態では、誘電体層の厚さは、約400nm~約800nmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、誘電体層をエッチングして穴を作成し、それによって金属層の表面を露出させる。穴は、ルテニウム含有膜を堆積または成長させるためのスペースを提供する。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、本明細書に記載のスパッタリングプロセスまたは物理蒸着プロセスを使用して、穴に、すなわち露出した金属層の表面に堆積され得る。図16Aは、金属層と通信するエッチングされた誘電体層を示している。
【0144】
次に、ルテニウム含有薄膜が、露出した金属層の表面上の穴に堆積される。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有膜は、約180pF/um~約320pF/umの範囲の二層静電容量を有して提供される。ルテニウム薄膜の堆積は、本明細書に記載のプロセスのいずれかに従って実行し得る。例えば、ルテニウム含有膜は、ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行することによって堆積されることがあり、スパッタ堆積またはプラズマ蒸着プロセスは、(i)約10sccm~100sccmの流量で窒素を堆積チャンバに導入することと、(ii)約10sccmの流量でアルゴンを堆積チャンバに導入することとを含み、堆積中に堆積チャンバ内の堆積圧力が約5mTorr~約25mTorrに維持され、堆積が、約50ワット~約200ワットの範囲の電力を使用して実行される。いくつかの実施形態では、ルテニウム薄膜は、約1時間~約2時間の範囲の期間成長する。いくつかの実施形態では、ルテニウム含有薄膜の厚さは、約500nm~約1000nmの範囲である。いくつかの実施形態では、ルテニウム薄膜は、図16Bに示されるように、穴を満たし、また、酸化物層を少なくとも部分的に覆う。
【0145】
いくつかの実施形態では、種層は、ルテニウム含有薄膜の堆積の前に、最初に金属層の露出面に導入される。いくつかの実施形態では、種層は、チタンなどの金属を含む。いくつかの実施形態では、任意の種層の厚さは、約15nm~約30nmの範囲である。いくつかの実施形態では、種層はスパッタ堆積される。
【0146】
ルテニウム含有薄膜の堆積に続いて、SiOからなる誘電体キャップまたはチタンからなる金属キャップなどのキャップ層が堆積される。いくつかの実施形態では、キャップは、さらなる処理ステップ中にルテニウム含有薄膜を保護することを目的としている。いくつかの実施形態では、キャップ層は、化学的蒸着、スパッタ堆積、または物理蒸着によって堆積され得る。図16Cは、キャップ層の堆積後の中間電極を示している。
【0147】
最後に、バイオチップ内のある電極を別の電極から分離するために、フォトリソグラフィ技術が採用されている。例えば、レジストをキャップ層上に堆積させることがあり、それによってキャップの一部が露出され、次にレジストが現像される。露光なしのレジストパターンは、現像液で現像される。次に、セルは、プラズマエッチングプロセスで、またはCl、BCl、または他の塩素ベースの試薬を使用したエッチング化学を使用してエッチングされる。ルテニウムは塩素および酸素と反応して揮発性のRuClおよび/またはRuO生成物を形成し、これらはスパッタチャンバ内にポンプで送られる。キャップ層を含む最終的なパターン化された電極の例が図16Dに示されている。
【0148】
本明細書中で言及される、および/または出願データシートにリスト化されたすべての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は、参考によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願、および刊行物の概念を使用してさらに別の実施形態を提供するように修正することができる。
【0149】
本開示は、いくつかの例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本開示の原理の精神および範囲内に入るであろう多くの他の修正および実施形態が当業者によって考案され得ることを理解されたい。より具体的には、合理的な変形および修正は、開示の精神から逸脱することなく、前述の開示、図面、および添付の特許請求の範囲内の主題の組み合わせ配置の構成部品および/または配置において可能である。構成部品および/または配置の変形および修正に加えて、代替の使用法も当業者には明らかであろう。
【0150】
本明細書において、特徴または要素が他の特徴または要素上に「ある」と称される場合、それは、他の特徴または要素上に直接存在してもよく、または、介在する特徴および/または要素も存在してもよい。対照的に、ある特徴または要素が他の特徴または要素の上に「直接」あると言及されている場合、介在する特徴または要素は存在しない。また、特徴または要素が他の特徴または要素に「接続されている」、「取り付けられている」、または「結合されている」と言及される場合、他の特徴または要素に直接接続、取り付け、または結合されていてもよく、または介在する特徴または要素が存在していてもよいことが理解されるであろう。対照的に、特徴または要素が、別の特徴または要素に「直接接続されている」、「直接取り付けられている」、または「直接結合されている」と称される場合、介在する特徴または要素は存在しない。一実施形態に関して記載または示されているが、そのように記載または示された特徴および要素は、他の実施形態にも適用することができる。別の特徴に「隣接して」配置された構造または特徴への言及は、隣接する特徴と重複するか、またはその下にある部分を有し得ることも当業者には理解されるであろう。
【0151】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図していない。例えば、本明細書で使用されるように、単数形「一つ」および「この」は、文脈が明確に別のことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。本明細書で使用される場合、「含む」および/または「含んでいる」という用語は、記載された特徴、工程、操作、要素、および/または構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、工程、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことが、さらに理解されるべきである。本明細書で使用されるように、用語「および/または」は、関連する記載事項のうちの1つ以上の任意のおよびすべての組み合わせを含み、「/」と略されることがある。
【0152】
空間的相対性を表す用語、「下方」、「その下」、「より下」、「上方」、「より上」などは、図示されているように、1つの要素または特徴と他の要素または特徴との関係を説明するために、説明を容易にするために、本明細書で使用されてもよい。空間的相対性を表す用語は、図に描かれている向きに加えて、使用中または操作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図されていることが理解すべきである。例えば、図中のデバイスが反転されている場合、他の要素または特徴の「下方」または「下に」と記載された要素
は、その後、他の要素または特徴の「上方」に配向されることになる。したがって、例示的な用語「下」は、上方の方向と下方の方向の両方を包含することができる。デバイスは、他の方法で方向付けられ(例えば、90度回転または他の方向に)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子がそれに応じて解釈され得る。同様に、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」等の用語は、特に断りのない限り、本明細書では説明の目的でのみ使用される。
【0153】
本明細書では、「第1」および「第2」という用語が、様々な特徴/要素(工程を含む)を説明するために使用されることがあるが、これらの特徴/要素は、文脈が別段のことを示さない限り、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素と別の特徴/要素を区別するために使用されることがある。したがって、以下で説明される第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と呼ばれることができ、同様に、以下でで説明される第2の特徴/要素は、本発明の教示から逸脱することなく、第1の特徴/要素と呼ばれることができる。
【0154】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通して、文脈が他に要求しない限り、「含む」という語、および「含む」および「含んでいる」の変形型は、様々な構成要素が、方法および物品(例えば、デバイスおよび方法を含む組成物および装置)に共役で採用され得ることを意味する。例えば、用語「含んでいる」は、記載された任意の要素または工程を含むことを意味するが、他の要素または工程を除外することを意味しないと理解されるべきである。
【0155】
実施例で使用されるものを含め、本明細書で本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、特に明示的に指定されない限り、すべての番号は、その用語が明示的に表示されない場合でも、「約」または「およそ」という単語で始まるかのように読むことができる。「約」または「およそ」という句は、大きさおよび/または位置を説明するときに使用され、説明される数値および/または位置が、値および/または位置の合理的に予想される範囲内にあることを示すために使用されてもよい。例えば、数値は、記載値(または値の範囲)の±0.1%、記載値(または値の範囲)の±1%、記載値(または値の範囲)の±2%、記載値(または値の範囲)の±5%、記載値(または値の範囲)の±10%などの値を有していてもよい。本明細書で与えられる数値はまた、文脈が別段の指示をしない限り、おおよそまたはほぼその値を含むと理解されるべきである。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書に記載されている任意の数値範囲は、そこに含まれるすべての副範囲を含むことを意図している。また、当業者が適切に理解するように、値が「以下」であると開示される場合、「値以上」および値間の可能な範囲もまた開示されることも理解されたい。例えば、値「X」が開示される場合、「X以下」ならびに「X以上」(例えば、Xは数値である)もまた開示される。また、本出願全体で、データは様々な形式で提供され、このデータは終点と開始点、およびデータポイントの任意の組み合わせの範囲を表すことも理解されたい。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント「15」が開示される場合、10~15と同様に、10および15より大きい、以上、より小さい、以下、および等しいことが開示されていると見なされる。2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されていることも理解されたい。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14も開示される。
【0156】
様々な例示的な実施形態が上に記載されているが、特許請求の範囲に記載されているように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態にいくつかの変更を加えることができる。例えば、説明された様々な方法工程が実行される順序は、代替的な実施形態ではしばしば変更されてもよく、他の代替的な実施形態では、1つまたは複数の方法工程が完全にスキップされてもよい。様々なデバイスおよびシステムの実施形態のオプション
機能は、いくつかの実施形態に含まれ、他の実施形態には含まれないことがある。したがって、上記の説明は、主に例示的な目的のために提供されるものであり、特許請求で述べられているように本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0157】
本明細書に含まれる例示および図示は、例示のためのものであり、限定するものではないが、主題が実施され得る特定の実施形態を示している。上述したように、他の実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更を行うことができるように、利用され、そこから派生し得る。本発明の主題のそのような実施形態は、2つ以上が実際に開示される場合、単に便宜のために、そして本出願の範囲を任意の単一の発明または発明の概念に自発的に限定することを意図することなく、本明細書において個別にまたは集合的に「発明」という用語によって言及され得る。したがって、特定の実施形態が図示され、本明細書に記載されているが、同じ目的を達成するために計算された任意の配置が、示された特定の実施形態に代えられてもよい。本開示は、様々な実施形態の任意のおよびすべての適応または変形をカバーすることを意図している。上記の実施形態、および本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態の組み合わせは、上記の説明を検討すると、当業者には明らかであろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を作製する方法であって、
(a)導電層上に配置された第1の誘電体層内に穴をエッチングすることであって、前記穴が導電層の露出面を備える、エッチングすることと、
(b)ルテニウム含有膜を含む作用電極を、少なくとも、前記穴内の前記導電層の前記露出面上に堆積させることと、
(c)前記作用電極の表面にキャップ層を堆積させることと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記作用電極の前記堆積が、(i)窒素雰囲気中でルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行して、前記ルテニウム含有膜を提供することと、(ii)前記提供されたルテニウム含有膜を少なくとも150℃の温度で加熱することとを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記作用電極が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記作用電極が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記作用電極が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とし、さらに、横断面の走査型電子顕微鏡法によって観察されるような柱状構造または樹枝状構造のうちの1つを有することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記作用電極の前記堆積が、
(i)ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行することであって、前記スパッタ堆積または前記プラズマ蒸着プロセスは、
(i)10sccm~100sccmの流量で窒素を前記堆積チャンバに導入することと、
(ii)10sccmの流量でアルゴンを前記堆積チャンバに導入することとを含み、前記堆積中に前記堆積チャンバ内の堆積圧力が5mTorr~25mTorrに維持され、前記堆積が、50ワット~250ワットの範囲の電力を使用して実行される、実行することと、
(ii)前記提供されたルテニウム含有膜を少なくとも150℃の温度で加熱することと
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱が少なくとも200℃で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ナノポアシーケンシングで使用するためのバイオチップを作製する方法であって、
(a)請求項1~7のいずれか一項に記載の方法に従って複数の電極を作製することと、
(b)前記複数の電極の各電極を互いに分離することと
を含む、前記方法。
【請求項9】
(i)少なくとも金属窒化物からなる電極であって、前記金属窒化物が180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有する、電極と、
(ii)参照電極または対電極のうちの少なくとも1つと
を備える、ナノポアシーケンシングデバイス。
【請求項10】
前記電極がルテニウム、酸素、および窒素からなり、前記電極が5%以上15%以下の窒素を含む、請求項に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0157
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0157】
本明細書に含まれる例示および図示は、例示のためのものであり、限定するものではないが、主題が実施され得る特定の実施形態を示している。上述したように、他の実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更を行うことができるように、利用され、そこから派生し得る。本発明の主題のそのような実施形態は、2つ以上が実際に開示される場合、単に便宜のために、そして本出願の範囲を任意の単一の発明または発明の概念に自発的に限定することを意図することなく、本明細書において個別にまたは集合的に「発明」という用語によって言及され得る。したがって、特定の実施形態が図示され、本明細書に記載されているが、同じ目的を達成するために計算された任意の配置が、示された特定の実施形態に代えられてもよい。本開示は、様々な実施形態の任意のおよびすべての適応または変形をカバーすることを意図している。上記の実施形態、および本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態の組み合わせは、上記の説明を検討すると、当業者には明らかであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
ナノポアシーケンシングデバイスであって、
(i)ルテニウム含有材料からなる電極と、
(ii)参照電極または対電極のうちの少なくとも1つと
を備える、前記ナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項2]
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項1に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項3]
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項1に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項4]
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項3に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項5]
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項3に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項6]
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項7]
前記電極が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定されるような樹枝状構造を備える、請求項6に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項8]
前記電極の表面に配置された誘電体材料をさらに備える、請求項1に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項9]
複数の個別にアドレス指定可能なナノポアを備えるチップであって、各個別にアドレス指定可能なナノポアは、ルテニウム含有材料からなる作用電極と流体連通している、チップ。
[請求項10]
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項9に記載のチップ。
[請求項11]
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項9に記載のチップ。
[請求項12]
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項11に記載のチップ。
[請求項13]
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項11に記載のチップ。
[請求項14]
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項9に記載のチップ。
[請求項15]
前記作用電極が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定されるような樹枝状構造を備える、請求項9に記載のチップ。
[請求項16]
請求項9~15のいずれか一項に記載のチップを備えるナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項17]
ナノポアシーケンシングデバイスであって、ルテニウム含有材料からなる作用電極と、誘電体層であって、前記誘電体層の一部が前記作用電極に隣接して水平に配置され、前記誘電体層の一部が前記作用電極の上に配置され、前記作用電極の一部を覆い、前記誘電体層が、前記作用電極の覆われていない部分の上に開口部を有するウェルを形成する、誘電体層とを備える、前記ナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項18]
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項17に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項19]
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項17に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項20]
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項19に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項21]
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項19に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項22]
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項17に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項23]
前記電極が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定されるような樹枝状構造を備える、請求項22に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項24]
前記誘電体層の上の表面をさらに含み、膜が前記表面の上部に形成され、前記作用電極の前記覆われていない部分の上の前記ウェルの前記開口部にまたがることがある、請求項17~23のいずれか一項に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項25]
前記作用電極のベース表面積が、前記作用電極の前記覆われていない部分の上の前記開口部のベース表面積よりも大きい、請求項24に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項26]
ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行するプロセスに従って調製されたルテニウム含有膜であって、前記スパッタ堆積または前記プラズマ蒸着プロセスは、(i)10sccm~100sccmの流量で窒素を堆積チャンバに導入することと、(ii)10sccmの流量でアルゴンを前記堆積チャンバに導入することとを含み、前記堆積中に前記堆積チャンバ内の堆積圧力が5mTorr~25mTorrに維持され、前記堆積が、50ワット~250ワットの範囲の電力を使用して実行される、前記ルテニウム含有膜。
[請求項27]
前記堆積プロセスが室温で行われる、請求項26に記載のルテニウム含有膜。
[請求項28]
前記ルテニウム含有膜は、180pF/um~220pF/umの範囲の二層静電容量を備える、請求項26に記載のルテニウム含有膜。
[請求項29]
前記プロセスが、前記堆積されたルテニウム含有膜を120℃を超える温度で加熱することをさらに含む、請求項26に記載のルテニウム含有膜。
[請求項30]
加熱が、140℃~340℃の範囲の温度で行われる、請求項29に記載のルテニウム含有膜。
[請求項31]
X線光電子分光法によって測定される、前記ルテニウム含有膜の(N+O)/Ruの表面組成比が1.5~3.5の範囲である、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
[請求項32]
前記表面組成比が1.8~3.2の範囲である、請求項31に記載のルテニウム含有膜。
[請求項33]
前記堆積圧力が20mTorrであり、窒素の前記流量が90sccmであり、前記電力が200ワットであり、前記加熱が180℃~260℃で行われる、請求項32に記載のルテニウム含有膜。
[請求項34]
前記ルテニウム含有膜が、前記膜の総重量の最大15%の窒素を含む、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
[請求項35]
前記ルテニウム含有膜が、前記膜の総重量の最大10%の窒素を含むが、前記膜の総重量の5%以上の窒素を含む、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
[請求項36]
前記ルテニウム含有膜は、260pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を備える、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
[請求項37]
前記堆積圧力が20mTorrであり、窒素の前記流量が90sccmであり、前記電力が200ワットである、請求項36に記載のルテニウム含有膜。
[請求項38]
前記ルテニウム含有膜が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定される樹枝状構造を有する、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
[請求項39]
前記ルテニウム含有膜が、面心立方構造を備える、請求項30に記載のルテニウム含有膜。
[請求項40]
基板上に堆積されたスタックであって、前記基板の表面に少なくとも部分的に配置された金属層と、前記金属層の表面に配置された活性層であって、請求項30~39のいずれか一項に記載のルテニウム含有膜を備える、活性層と、前記活性層の表面に少なくとも部分的に配置されたキャップ層とを備える、前記スタック。
[請求項41]
前記活性層が少なくとも部分的に誘電体材料によって囲まれている、請求項40に記載のスタック。
[請求項42]
前記キャップ層が誘電体材料からなる、請求項40に記載のスタック。
[請求項43]
複数のウェルを備え、各前記ウェルが請求項40~42のいずれか一項に記載のスタックを備える、チップ。
[請求項44]
請求項43に記載のチップを備えるシーケンシングデバイス。
[請求項45]
基板上に堆積された薄膜であって、前記薄膜は、窒化ルテニウム、酸化ルテニウム、酸窒化ルテニウム、またはそれらの複合体または混合物を含み、前記薄膜は、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有し、前記薄膜の窒素含有量は5%以上15%以下である、前記薄膜。
[請求項46]
前記二層静電容量が260pF/um~320pF/umの範囲である、請求項45に記載の薄膜。
[請求項47]
前記二層静電容量が280pF/um~300pF/umである、請求項46に記載の薄膜。
[請求項48]
X線光電子分光法によって測定される、前記薄膜の表面組成比(N+O)/Ruが1.5~3.5の範囲である、請求項45に記載の薄膜。
[請求項49]
前記表面組成比が1.8~3.2の範囲である、請求項48に記載の薄膜。
[請求項50]
前記薄膜が、横断面の走査型電子顕微鏡法によって決定されるような樹枝状構造を含む、請求項45に記載の薄膜。
[請求項51]
請求項45~50のいずれか一項に記載の薄膜を含む電極。
[請求項52]
電極を作製する方法であって、
(a)導電層上に配置された第1の誘電体層内に穴をエッチングすることであって、前記穴が導電層の露出面を備える、エッチングすることと、
(b)ルテニウム含有膜を含む作用電極を、少なくとも、前記穴内の前記導電層の前記露出面上に堆積させることと、
(c)前記作用電極の表面にキャップ層を堆積させることと
を含む、前記方法。
[請求項53]
前記作用電極の前記堆積が、(i)窒素雰囲気中でルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行して、前記ルテニウム含有膜を提供することと、(ii)前記提供されたルテニウム含有膜を少なくとも150℃の温度で加熱することとを含む、請求項52に記載の方法。
[請求項54]
前記作用電極が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項53に記載の方法。
[請求項55]
前記作用電極が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項53に記載の方法。
[請求項56]
前記作用電極が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とし、さらに、横断面の走査型電子顕微鏡法によって観察されるような柱状構造または樹枝状構造のうちの1つを有することを特徴とする、請求項53に記載の方法。
[請求項57]
前記作用電極の前記堆積が、
(i)ルテニウムターゲットを使用してスパッタ堆積またはプラズマ蒸着のうちの1つを実行することであって、前記スパッタ堆積または前記プラズマ蒸着プロセスは、
(i)10sccm~100sccmの流量で窒素を前記堆積チャンバに導入することと、
(ii)10sccmの流量でアルゴンを前記堆積チャンバに導入することとを含み、前記堆積中に前記堆積チャンバ内の堆積圧力が5mTorr~25mTorrに維持され、前記堆積が、50ワット~250ワットの範囲の電力を使用して実行される、実行することと、
(ii)前記提供されたルテニウム含有膜を少なくとも150℃の温度で加熱することと
を含む、請求項52に記載の方法。
[請求項58]
前記加熱が少なくとも200℃で行われる、請求項57に記載の方法。
[請求項59]
ナノポアシーケンシングで使用するためのバイオチップを作製する方法であって、
(a)請求項52~58のいずれか一項に記載の方法に従って複数の電極を作製することと、
(b)前記複数の電極の各電極を互いに分離することと
を含む、前記方法。
[請求項60]
(i)少なくとも金属窒化物からなる電極であって、前記金属窒化物が180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有する、電極と、
(ii)参照電極または対電極のうちの少なくとも1つと
を備える、ナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項61]
前記電極がルテニウム、酸素、および窒素からなり、前記電極が5%以上15%以下の窒素を含む、請求項60および61のいずれか一項に記載のナノポアシーケンシングデバイス。
[請求項62]
(a)少なくとも250ウェル/mmの密度で複数のウェルを有する半導体基板と、
(b)前記複数のウェルのそれぞれに配置された電極であって、ルテニウム含有材料からなる、電極と
を備える、バイオチップ。
[請求項63]
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項62に記載のバイオチップ。
[請求項64]
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項62に記載のバイオチップ。
[請求項65]
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項64に記載のバイオチップ。
[請求項66]
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項64に記載のバイオチップ。
[請求項67]
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項62に記載のバイオチップ。
[請求項68]
各個別の前記電極の表面に配置された疎水性コーティングをさらに備える、請求項62~67のいずれか一項に記載のバイオチップ。
[請求項69]
前記バイオチップの上に配置されたカバーをさらに備える、請求項62~68のいずれか一項に記載のバイオチップ。
[請求項70]
前記カバーが、脂質コーティングへの1つまたは複数の流体の送達を容易にするための少なくとも1つの流体入口を備える、請求項69に記載のバイオチップ。
[請求項71]
請求項62~70のいずれか一項に記載のバイオチップと、脂質溶液とを含む、キット。
[請求項72]
請求項62~70のいずれか一項に記載のバイオチップと、1つまたは複数の酵素とを含む、キット。
[請求項73]
バイオチップを調製する方法であって、
(a)半導体基板を取得することと、
(b)少なくとも250ウェル/mmの密度で前記半導体基板内に複数のウェルを形成することと、
(c)前記複数のウェルの個々のウェルのそれぞれに電極を形成することであって、前記電極が、ルテニウム含有材料からなる、形成することと
を含む、前記方法。
[請求項74]
前記ルテニウム含有材料が、180pF/um~320pF/umの範囲の二層静電容量を有することを特徴とする、請求項73に記載の方法。
[請求項75]
前記ルテニウム含有材料が、X線光電子分光法によって測定されるように、1.5~3.5の範囲の(N+O)/Ruの表面組成比を有することを特徴とする、請求項73または74に記載の方法。
[請求項76]
前記表面組成比が1.8~3.0の範囲である、請求項75に記載の方法。
[請求項77]
前記表面組成比が2~2.5の範囲である、請求項75に記載の方法。
[請求項78]
前記ルテニウム含有材料が、5%以上15%以下の窒素含有量を有することを特徴とする、請求項73または74に記載の方法。
[請求項79]
前記電極の表面を疎水性材料でコーティングすることをさらに含む、請求項73~78のいずれか一項に記載の方法。
[請求項80]
複数の個別にアドレス指定可能なナノポアを備えるバイオチップであって、各個別にアドレス指定可能なナノポアは、請求項30~39のいずれか一項に記載のルテニウム含有薄膜からなる作用電極と流体連通している、前記バイオチップ。
[請求項81]
リザーバと、請求項62~70のいずれか一項に記載のバイオチップと、前記リザーバのバイオチップに面する表面上に配置された対電極と、を備えるアセンブリ。
[請求項82]
前記対電極が前記バイオチップに面する表面に印刷されている、請求項81に記載のアセンブリ。
【外国語明細書】