(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156457
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】腫瘍処置法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231017BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231017BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231017BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20231017BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20231017BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P11/00
A61P35/00
C07K16/28
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132872
(22)【出願日】2023-08-17
(62)【分割の表示】P 2020520116の分割
【原出願日】2018-10-15
(31)【優先権主張番号】62/572,514
(32)【優先日】2017-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/650,654
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】プラブ・セシャイエル・バガヴァティースワラン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・アラン・ジョン・ボットウッド
(72)【発明者】
【氏名】ハン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェイ・ギース
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ・マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・セルヴァッジ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ダニエル・シュスタコウスキー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高腫瘍変異負荷(Tumor Mutational Burden)(TMB)状態を有する腫瘍、例えば、SCLCを有する対象を処置する方法を提供する。
【解決手段】抗PD-1抗体を含む単剤治療または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を含む組み合わせ治療を対象に投与することを含む、TMB状態を有する小細胞肺癌(SCLC)由来腫瘍を有する対象を処置する方法を提供する。本発明はまた、対象の生体試料のTMB状態を測定することを含む、抗PD-1抗体または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を含む組み合わせ治療での処置に適する対象を同定する方法も提供する。高TMB状態は、患者を、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分での処置に適するとして同定する。TMB状態は、腫瘍における核酸のシークエンシングおよびシークエンシングした核酸におけるゲノム変化、例えば、体細胞非同義変異の同定により決定され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小細胞肺癌(SCLC)由来腫瘍を有する対象の処置に使用するための、プログラム細胞死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)を含む組成物であって、ここで、腫瘍が高TMBである腫瘍変異負荷(TMB)状態を有するものである、組成物。
【請求項2】
SCLC由来腫瘍を有する対象の処置に使用するための、プログラム細胞死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)を、CTLA-4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗CTLA-4抗体」)と組み合わせて含む組成物であって、ここで、腫瘍が高TMBであるTMB状態を有するものである、組成物。
【請求項3】
TMB状態を、腫瘍における核酸をシークエンシングし、シークエンシングした核酸におけるゲノム変化を同定することにより決定する、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
ゲノム変化が
(i)1以上の体細胞変異;
(ii)1以上の非同義変異;
(iii)1以上のミスセンス変異;
(iv)塩基対置換、塩基対挿入、塩基対欠失、コピー数変化(CNA)、遺伝子再配列および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の改変;または
(v)(i)~(iv)の任意の組み合わせ
を含む、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
高TMBが少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495または少なくとも500のスコアを有する、請求項1~4の何れかに記載の使用のための組成物。
【請求項6】
対象のTMB状態が対照TMB値と比較され、ここで、対象のTMB状態が対照TMB値の最高分位点内であるかまたは対象のTMB状態が対照TMB値の最高三分位内である、請求項1~5の何れかに記載の使用のための組成物。
【請求項7】
生体サンプルが腫瘍組織生検、液体生検、血液、血清、血漿、exoRNA、循環腫瘍細胞、ctDNA、cfDNAまたは任意のこれらの組み合わせを含む、請求項1~6の何れかに記載の使用のための組成物。
【請求項8】
TMB状態が
(i)ゲノムシークエンシング、
(ii)エキソームシークエンシング、
(iii)ゲノムプロファイリングまたは
(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ
により決定される、請求項1~7の何れかに記載の使用のための組成物。
【請求項9】
ゲノムプロファイルがABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、GATA3、JAK2、MITF、PDCD1LG2、RBM10、STAT4、ABL2、BRCA1、CHEK2、FANCD2、GATA4、JAK3、MLH1、PDGFRA、RET、STK11、ACVR1B、BRCA2、CIC、FANCE、GATA6、JUN、MPL、PDGFRB、RICTOR、SUFU、AKT1、BRD4、CREBBP、FANCF、GID4(C17orf39)、KAT6A(MYST3)、MRE11A、PDK1、RNF43、SYK、AKT2、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、KDM5A、MSH2、PIK3C2B、ROS1、TAF1、AKT3、BTG1、CRLF2、FANCL、GNA11、KDM5C、MSH6、PIK3CA、RPTOR、TBX3、ALK、BTK、CSF1R、FAS、GNA13、KDM6A、MTOR、PIK3CB、RUNX1、TERC、AMER1(FAM123B)、C11orf30(EMSY)、CTCF、FAT1、GNAQ、KDR、MUTYH、PIK3CG、RUNX1T1、TERT(プロモーターのみ)、APC、CARD11、CTNNA1、FBXW7、GNAS、KEAP1、MYC、PIK3R1、SDHA、TET2、AR、CBFB、CTNNB1、FGF10、GPR124、KEL、MYCL(MYCL1)、PIK3R2、SDHB、TGFBR2、ARAF、CBL、CUL3、FGF14、GRIN2A、KIT、MYCN、PLCG2、SDHC、TNFAIP3、ARFRP1、CCND1、CYLD、FGF19、GRM3、KLHL6、MYD88、PMS2、SDHD、TNFRSF14、ARID1A、CCND2、DAXX、FGF23、GSK3B、KMT2A(MLL)、NF1、POLD1、SETD2、TOP1、ARID1B、CCND3、DDR2、FGF3、H3F3A、KMT2C(MLL3)、NF2、POLE、SF3B1、TOP2A、ARID2、CCNE1、DICER1、FGF4、HGF、KMT2D(MLL2)、NFE2L2、PPP2R1A、SLIT2、TP53、ASXL1、CD274、DNMT3A、FGF6、HNF1A、KRAS、NFKBIA、PRDM1、SMAD2、TSC1、ATM、CD79A、DOT1L、FGFR1、HRAS、LMO1、NKX2-1、PREX2、SMAD3、TSC2、ATR、CD79B、EGFR、FGFR2、HSD3B1、LRP1B、NOTCH1、PRKAR1A、SMAD4、TSHR、ATRX、CDC73、EP300、FGFR3、HSP90AA1、LYN、NOTCH2、PRKCI、SMARCA4、U2AF1、AURKA、CDH1、EPHA3、FGFR4、IDH1、LZTR1、NOTCH3、PRKDC、SMARCB1、VEGFA、AURKB、CDK12、EPHA5、FH、IDH2、MAGI2、NPM1、PRSS8、SMO、VHL、AXIN1、CDK4、EPHA7、FLCN、IGF1R、MAP2K1、NRAS、PTCH1、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、MAP2K2、NSD1、PTEN、SOCS1、WT1、BAP1、CDK8、ERBB2、FLT3、IKBKE、MAP2K4、NTRK1、PTPN11、SOX10、XPO1、BARD1、CDKN1A、ERBB3、FLT4、IKZF1、MAP3K1、NTRK2、QKI、SOX2、ZBTB2、BCL2、CDKN1B、ERBB4、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、RAC1、SOX9、ZNF217、BCL2L1、CDKN2A、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、NUP93、RAD50、SPEN、ZNF703、BCL2L2、CDKN2B、ERRFI1、FRS2、INPP4B、MDM4、PAK3、RAD51、SPOP、BCL6、CDKN2C、ESR1、FUBP1、IRF2、MED12、PALB2、RAF1、SPTA1、BCOR、CEBPA、EZH2、GABRA6、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、BCORL1、CHD2、FAM46C、GATA1、IRS2、MEN1、PAX5、RARA、STAG2、BLM、CHD4、FANCA、GATA2、JAK1、MET、PBRM1、RB1、STAT3および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の遺伝子を含む、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
(i)SCLCが小細胞癌を含む、
(ii)SCLCが混合型小細胞癌を含む、
(iii)SCLCが腫瘍を処置するための少なくとも一つの先の治療経験後再発または難治性であるまたは
(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、
請求項1~9の何れかに記載の使用のための組成物。
【請求項11】
抗PD-1抗体が0.1mg/kg~10.0mg/kg体重の範囲の体重に基づく用量または少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mgまたは少なくとも約550mgの一定用量で2週、3週または4週毎に投与される、請求項1~10の何れかに記載の使用のための組成物。
【請求項12】
抗PD-1抗体が
(i)3mg/kg体重の体重に基づく用量で2週毎;
(ii)5mg/kg体重の体重に基づく用量で3週毎;
(iii)10mg/kg体重の体重に基づく用量で3週毎;
(iv)約240mgの一定用量で2週毎;または
(v)約480mgの一定用量で4週毎
に投与される、請求項1~11の何れかに記載の使用のための組成物。
【請求項13】
抗CTLA-4抗体が約1週、2週、3週または4週毎に少なくとも約0.1mg/kg~少なくとも約10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与される、請求項2~12の何れかに記載の使用のための組成物。
【請求項14】
ゲノムプロファイルがFOUNDATIONONE(登録商標)CDXTMを含む、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
腫瘍がシークエンシングしたゲノムのメガベースあたり少なくとも約10変異のTMBを有する、請求項1~14の何れかに記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高腫瘍変異負荷(Tumor Mutational Burden)(TMB)状態を有する腫瘍、例えば、SCLCを有する対象を処置する方法であって、該対象に抗PD-1抗体単独(「単剤治療」)または抗CTLA-4抗体と組み合わせた抗PD-1抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒト癌は、多数の遺伝的および後成的変化を保有し、免疫系により認識可能である可能性があるネオ抗原を産生する(Sjoblom et al., Science (2006) 314(5797):268-274)。TおよびBリンパ球からなる適応免疫系は、強力な抗癌能を有し、多種多様な腫瘍抗原に応答する広い能力および精巧な特異性を備える。さらに、免疫系は、相当な柔軟性および記憶要素を発揮する。適応免疫系のこれら全ての特性を成功裏に利用することは、免疫療法を全癌処置モダリティの中で独特なものとする。
【0003】
最近まで、癌免疫療法は、活性化エフェクター細胞の養子移植、関連抗原に対する免疫化またはサイトカインなどの非特異的免疫刺激剤による抗腫瘍免疫応答を増強する方法に、相当な労力を集約してきた。しかしながら、ここ10年、特異的免疫チェックポイント経路阻害剤を開発する集中的試みが、プログラム細胞死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、阻害性PD-1/PD-1リガンド経路を遮断する、ニボルマブおよびペムブロリズマブ(以前はランブロリズマブ; USAN Council Statement, 2013)などの抗体の開発を含む、癌処置の新規免疫療法的アプローチを提供し始めている(Topalian et al., 2012a, b; Topalian et al., 2014; Hamid et al., 2013; Hamid and Carvajal, 2013; McDermott and Atkins, 2013)。
【0004】
PD-1は、活性化T細胞およびB細胞により発現され、免疫抑制に介在する重要な免疫チェックポイント受容体である。PD-1は、CD28、CTLA-4、ICOS、PD-1およびBTLAを含むCD28ファミリーの受容体のメンバーである。PD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンド、プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)およびプログラム細胞死リガンド-2(PD-L2)が同定されており、これらは抗原提示細胞および多数のヒト癌で発現され、PD-1への結合により、T細胞活性化とサイトカイン分泌の両方を下方制御することが示されている。PD-1/PD-L1相互作用の阻害は、前臨床モデルで強力な抗腫瘍活性に介在し(米国特許8,008,449および7,943,743)、癌処置のためのPD-1/PD-L1相互作用の抗体阻害剤の使用は、臨床治験に入っている(Brahmer et al., 2010; Topalian et al., 2012a; Topalian et al., 2014; Hamid et al., 2013; Brahmer et al., 2012; Flies et al., 2011; Pardoll, 2012; Hamid and Carvajal, 2013)。
【0005】
ニボルマブ(以前は5C4、BMS-936558、MDX-1106またはONO-4538と呼ばれた)は、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に阻止し、それにより抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害性抗体である(米国8,008,449; Wang et al., 2014)。ニボルマブは、腎細胞癌(腎臓腺癌またはグラヴィッツ腫瘍)、黒色腫および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む多様な進行型固形腫瘍に活性を示している(Topalian et al., 2012a; Topalian et al., 2014; Drake et al., 2013; WO 2013/173223)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
免疫系および免疫療法に対する応答は複雑である。さらに、抗癌剤は、特有の患者特性に基づき、有効性が変わり得る。従って、特定の抗癌剤に応答する可能性が高い患者を同定し、それによって癌と診断された患者の臨床成績を改善する標的治療戦略に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、小細胞肺癌(SCLC)由来腫瘍を有する対象を処置する方法であって、対象に、プログラム細胞死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)の治療有効量を投与することを含み、ここで、腫瘍が高腫瘍変異負荷(TMB)であるTMB状態を有するものである、方法を提供する。本発明はまた、SCLC由来腫瘍を有する対象を処置する方法であって、対象に抗PD-1抗体およびCTLA-4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗CTLA-4抗体」)の治療有効量を投与することを含み、ここで、腫瘍が高TMBであるTMB状態を有するものである、方法も提供する。ある実施態様において、方法は、さらに対象から得た生体サンプルのTMB状態の測定を含む。
【0008】
本発明はまた、SCLC由来腫瘍を有し、抗PD-1抗体での治療に適する対象を同定する方法であって、対象の生体サンプルのTMB状態を測定することを含み、ここで、TMB状態が高TMBであるものである、方法も提供する。ある実施態様において、方法は、さらに、対象に抗PD-1抗体を投与することを含む。ある実施態様において、方法は、さらに、対象に抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体を投与することを含む。
【0009】
本発明はまた、SCLC由来腫瘍を有し、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を含む組み合わせ治療に適する対象を同定する方法であって、対象の生体サンプルのTMB状態を測定することを含み、ここで、TMB状態が高TMBであるものである、方法も提供する。ある実施態様において、方法は、さらに、対象に抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体を投与することを含む。
【0010】
ある実施態様において、TMB状態を、腫瘍における核酸をシークエンシングし、シークエンシングした核酸におけるゲノム変化を同定することにより決定する。ある実施態様において、ゲノム変化は1以上の体細胞変異を含む。ある実施態様において、ゲノム変化は1以上の非同義変異を含む。特定の実施態様において、ゲノム変化は1以上のミスセンス変異を含む。他の特定の実施態様において、ゲノム変化は、塩基対置換、塩基対挿入、塩基対欠失、コピー数変化(CNA)、遺伝子再配列および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される、1以上の改変を含む。
【0011】
特定の実施態様において、TMB状態は、ゲノムシークエンシング、エキソームシークエンシングおよび/またはゲノムプロファイリングにより決定される。ある実施態様において、ゲノムプロファイルは、少なくとも300遺伝子、少なくとも305遺伝子、少なくとも310遺伝子、少なくとも315遺伝子、少なくとも320遺伝子、少なくとも325遺伝子、少なくとも330遺伝子、少なくとも335遺伝子、少なくとも340遺伝子、少なくとも345遺伝子、少なくとも350遺伝子、少なくとも355遺伝子、少なくとも360遺伝子、少なくとも365遺伝子、少なくとも370遺伝子、少なくとも375遺伝子、少なくとも380遺伝子、少なくとも385遺伝子、少なくとも390遺伝子、少なくとも395遺伝子または少なくとも400遺伝子を含む。特定の実施態様において、ゲノムプロファイルは少なくとも325遺伝子を含む。
【0012】
ある実施態様において、ゲノムプロファイルは、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、GATA3、JAK2、MITF、PDCD1LG2、RBM10、STAT4、ABL2、BRCA1、CHEK2、FANCD2、GATA4、JAK3、MLH1、PDGFRA、RET、STK11、ACVR1B、BRCA2、CIC、FANCE、GATA6、JUN、MPL、PDGFRB、RICTOR、SUFU、AKT1、BRD4、CREBBP、FANCF、GID4(C17orf39)、KAT6A(MYST3)、MRE11A、PDK1、RNF43、SYK、AKT2、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、KDM5A、MSH2、PIK3C2B、ROS1、TAF1、AKT3、BTG1、CRLF2、FANCL、GNA11、KDM5C、MSH6、PIK3CA、RPTOR、TBX3、ALK、BTK、CSF1R、FAS、GNA13、KDM6A、MTOR、PIK3CB、RUNX1、TERC、AMER1(FAM123B)、C11orf30(EMSY)、CTCF、FAT1、GNAQ、KDR、MUTYH、PIK3CG、RUNX1T1、TERT(プロモーターのみ)、APC、CARD11、CTNNA1、FBXW7、GNAS、KEAP1、MYC、PIK3R1、SDHA、TET2、AR、CBFB、CTNNB1、FGF10、GPR124、KEL、MYCL(MYCL1)、PIK3R2、SDHB、TGFBR2、ARAF、CBL、CUL3、FGF14、GRIN2A、KIT、MYCN、PLCG2、SDHC、TNFAIP3、ARFRP1、CCND1、CYLD、FGF19、GRM3、KLHL6、MYD88、PMS2、SDHD、TNFRSF14、ARID1A、CCND2、DAXX、FGF23、GSK3B、KMT2A(MLL)、NF1、POLD1、SETD2、TOP1、ARID1B、CCND3、DDR2、FGF3、H3F3A、KMT2C(MLL3)、NF2、POLE、SF3B1、TOP2A、ARID2、CCNE1、DICER1、FGF4、HGF、KMT2D(MLL2)、NFE2L2、PPP2R1A、SLIT2、TP53、ASXL1、CD274、DNMT3A、FGF6、HNF1A、KRAS、NFKBIA、PRDM1、SMAD2、TSC1、ATM、CD79A、DOT1L、FGFR1、HRAS、LMO1、NKX2-1、PREX2、SMAD3、TSC2、ATR、CD79B、EGFR、FGFR2、HSD3B1、LRP1B、NOTCH1、PRKAR1A、SMAD4、TSHR、ATRX、CDC73、EP300、FGFR3、HSP90AA1、LYN、NOTCH2、PRKCI、SMARCA4、U2AF1、AURKA、CDH1、EPHA3、FGFR4、IDH1、LZTR1、NOTCH3、PRKDC、SMARCB1、VEGFA、AURKB、CDK12、EPHA5、FH、IDH2、MAGI2、NPM1、PRSS8、SMO、VHL、AXIN1、CDK4、EPHA7、FLCN、IGF1R、MAP2K1、NRAS、PTCH1、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、MAP2K2、NSD1、PTEN、SOCS1、WT1、BAP1、CDK8、ERBB2、FLT3、IKBKE、MAP2K4、NTRK1、PTPN11、SOX10、XPO1、BARD1、CDKN1A、ERBB3、FLT4、IKZF1、MAP3K1、NTRK2、QKI、SOX2、ZBTB2、BCL2、CDKN1B、ERBB4、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、RAC1、SOX9、ZNF217、BCL2L1、CDKN2A、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、NUP93、RAD50、SPEN、ZNF703、BCL2L2、CDKN2B、ERRFI1、FRS2、INPP4B、MDM4、PAK3、RAD51、SPOP、BCL6、CDKN2C、ESR1、FUBP1、IRF2、MED12、PALB2、RAF1、SPTA1、BCOR、CEBPA、EZH2、GABRA6、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、BCORL1、CHD2、FAM46C、GATA1、IRS2、MEN1、PAX5、RARA、STAG2、BLM、CHD4、FANCA、GATA2、JAK1、MET、PBRM1、RB1、STAT3および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される、1以上の遺伝子を含む。
【0013】
ある実施態様において、方法は、さらに、ETV4、TMPRSS2、ETV5、BCR、ETV1、ETV6およびMYBの1以上のゲノム変化の同定を含む。
【0014】
ある実施態様において、高TMBは、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495または少なくとも500のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249または少なくとも250のスコアを有する。特定の実施態様において、高TMBは少なくとも243のスコアを有する。
【0015】
ある実施態様において、方法は、さらに、対象のTMB状態と対照TMB値の比較を含む。ある実施態様において、対象のTMB状態は対照TMB値の最高分位点内である。他の実施態様において、対象のTMB状態は対照TMB値の最高三分位内である。
【0016】
ある実施態様において、生体サンプルは腫瘍組織生検、例えば、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織または新鮮凍結腫瘍組織である。他の実施態様において、生体サンプルは液体生検である。ある実施態様において、生体サンプルは、血液、血清、血漿、exoRNA、循環腫瘍細胞、ctDNAおよびcfDNAの1以上を含む。
【0017】
ある実施態様において、対象は、高ネオ抗原負荷の腫瘍を有する。他の実施態様において、対象のT細胞レパートリーは増加している。
【0018】
ある実施態様において、SCLCは小細胞癌を含む。ある実施態様において、SCLCは混合型小細胞癌を含む。ある実施態様において、SCLCは再発SCLCである。
【0019】
ある実施態様において、対象は、腫瘍を処置するための少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種または少なくとも5種の先の治療経験がある。ある実施態様において、先の治療経験は化学療法を含む。ある実施態様において、化学療法は白金ベースの治療を含む。ある実施態様において、白金ベースの治療は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチンおよび任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される白金ベースの抗新生物を含む。ある実施態様において、白金ベースの治療はシスプラチンを含む。
【0020】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブと同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。特定の実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブまたはペムブロリズマブである。
【0021】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、2週、3週または4週毎に0.1mg/kg~10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、3週毎に5mg/kgまたは10mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、3週毎に5mg/kg体重の用量で投与される。さらに他の実施態様において、抗PD-1抗体は、2週毎に3mg/kg体重の用量で投与される。
【0022】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は一定用量として投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mgまたは少なくとも約550mgの一定用量として投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は約1週、2週、3週または4週毎に一定用量として投与される。
【0023】
ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、ヒトIgG1アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブと交差競合する。
【0024】
ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は約1週、2週、3週または4週毎に少なくとも約0.1mg/kg~少なくとも約10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与する。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は約1mg/kgまたは約3mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は一定用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は約2週毎に投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は約3週毎に投与される。
【0025】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は約3週毎に約3mg/kg体重の用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約3週毎に約1mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は約3週毎に約1mg/kg体重の用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約3週毎に約3mg/kg体重の用量で投与される。
【0026】
ある実施態様において、(i)4サイクルについて抗PD-1抗体は約3週毎に約1mg/kg体重の用量で投与され、抗CTLA-4抗体は約3週毎に約3mg/kg体重の用量で投与され、次いで(ii)抗PD-1抗体は約2週毎に約3mg/kg体重の用量で投与される。
【0027】
ある実施態様において、対象は、投与後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無進行生存を示す。
【0028】
他の実施態様において、対象は、投与後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の完全生存を示す。
【0029】
さらに他の実施態様において、対象は、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%の客観的応答率を示す。
【0030】
本開示の他の特徴および利点は、次の詳細な記載および実施例から明らかであり、これらは限定的に解釈してはならない。本明細書全体で引用されている科学論文、新聞報道、GenBankエントリー、特許および特許出願を含む全ての引用文献の内容は、明示的に引用により本明細書に包含させる。
【0031】
実施態様
E1. 小細胞肺癌(SCLC)由来腫瘍を有する対象を処置する方法であって、対象にプログラム細胞死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)の治療有効量を投与することを含み、ここで、腫瘍が高腫瘍変異負荷(TMB)であるTMB状態を有するものである、方法。
【0032】
E2. SCLC由来腫瘍を有する対象を処置する方法であって、対象に抗PD-1抗体およびCTLA-4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗CTLA-4抗体」)の治療有効量を投与することを含み、ここで、腫瘍が高TMBであるTMB状態を有するものである、方法。
【0033】
E3. さらに対象から得た生体サンプルのTMB状態を測定することを含む、E1またはE2に記載の方法。
【0034】
E4. SCLC由来腫瘍を有し、抗PD-1抗体での治療に適する対象を同定する方法であって、対象の生体サンプルのTMB状態を測定することを含み、ここで、TMB状態が高TMBであるものである、方法。
【0035】
E5. SCLC由来腫瘍を有し、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を含む組み合わせ治療に適する対象を同定する方法であって、対象の生体サンプルのTMB状態を測定することを含み、ここで、TMB状態が高TMBであるものである、方法。
【0036】
E6. さらに対象に抗PD-1抗体を投与することを含む、E4に記載の方法。
【0037】
E7. さらに対象に抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体を投与することを含む、E5に記載の方法。
【0038】
E8. TMB状態を、腫瘍における核酸をシークエンシングし、シークエンシングした核酸におけるゲノム変化を同定することにより決定する、E1~E7の何れかに記載の方法。
【0039】
E9. ゲノム変化が1以上の体細胞変異を含む、E8に記載の方法。
【0040】
E10. ゲノム変化が1以上の非同義変異を含む、E8またはE9に記載の方法。
【0041】
E11. ゲノム変化が1以上のミスセンス変異を含む、E8~E10の何れかに記載の方法。
【0042】
E12. ゲノム変化が塩基対置換、塩基対挿入、塩基対欠失、コピー数変化(CNA)、遺伝子再配列および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の改変を含む、E8~E11の何れかに記載の方法。
【0043】
E13. 高TMBが少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495または少なくとも500のスコアを有する、E1~E12の何れかに記載の方法。
【0044】
E14. 高TMBが少なくとも215、少なくとも220、少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249または少なくとも250のスコアを有する、E1~E12の何れかに記載の方法。
【0045】
E15. 高TMBが少なくとも243のスコアを有する、E1~E14の何れかに記載の方法。
【0046】
E16. さらに対象のTMB状態と対照TMB値の比較を含む、E1~E15の何れかに記載の方法。
【0047】
E17. 対象のTMB状態が対照TMB値の最高分位点内である、E16に記載の方法。
【0048】
E18. 対象のTMB状態が対照TMB値の最高三分位内である、E16に記載の方法。
【0049】
E19. 生体サンプルが腫瘍組織生検試料である、E1~E18の何れかに記載の方法。
【0050】
E20. 腫瘍組織がホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織または新鮮凍結腫瘍組織である、E19に記載の方法。
【0051】
E21. 生体サンプルが液体生検試料である、E1~E18の何れかに記載の方法。
【0052】
E22. 生体サンプルが血液、血清、血漿、exoRNA、循環腫瘍細胞、ctDNAおよびcfDNAの1以上を含む、E1~E18の何れかに記載の方法。
【0053】
E23. TMB状態がゲノムシークエンシングにより決定される、E1~E22の何れかに記載の方法。
【0054】
E24. TMB状態がエキソームシークエンシングにより決定される、E1~E22の何れかに記載の方法。
【0055】
E25. TMB状態がゲノムプロファイリングにより決定される、E1~E22の何れかに記載の方法。
【0056】
E26. ゲノムプロファイルが少なくとも300遺伝子、少なくとも305遺伝子、少なくとも310遺伝子、少なくとも315遺伝子、少なくとも320遺伝子、少なくとも325遺伝子、少なくとも330遺伝子、少なくとも335遺伝子、少なくとも340遺伝子、少なくとも345遺伝子、少なくとも350遺伝子、少なくとも355遺伝子、少なくとも360遺伝子、少なくとも365遺伝子、少なくとも370遺伝子、少なくとも375遺伝子、少なくとも380遺伝子、少なくとも385遺伝子、少なくとも390遺伝子、少なくとも395遺伝子または少なくとも400遺伝子含む、E25に記載の方法。
【0057】
E27. ゲノムプロファイルが少なくとも325遺伝子含む、E25に記載の方法。
【0058】
E28. ゲノムプロファイルがABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、GATA3、JAK2、MITF、PDCD1LG2、RBM10、STAT4、ABL2、BRCA1、CHEK2、FANCD2、GATA4、JAK3、MLH1、PDGFRA、RET、STK11、ACVR1B、BRCA2、CIC、FANCE、GATA6、JUN、MPL、PDGFRB、RICTOR、SUFU、AKT1、BRD4、CREBBP、FANCF、GID4(C17orf39)、KAT6A(MYST3)、MRE11A、PDK1、RNF43、SYK、AKT2、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、KDM5A、MSH2、PIK3C2B、ROS1、TAF1、AKT3、BTG1、CRLF2、FANCL、GNA11、KDM5C、MSH6、PIK3CA、RPTOR、TBX3、ALK、BTK、CSF1R、FAS、GNA13、KDM6A、MTOR、PIK3CB、RUNX1、TERC、AMER1(FAM123B)、C11orf30(EMSY)、CTCF、FAT1、GNAQ、KDR、MUTYH、PIK3CG、RUNX1T1、TERT(プロモーターのみ)、APC、CARD11、CTNNA1、FBXW7、GNAS、KEAP1、MYC、PIK3R1、SDHA、TET2、AR、CBFB、CTNNB1、FGF10、GPR124、KEL、MYCL(MYCL1)、PIK3R2、SDHB、TGFBR2、ARAF、CBL、CUL3、FGF14、GRIN2A、KIT、MYCN、PLCG2、SDHC、TNFAIP3、ARFRP1、CCND1、CYLD、FGF19、GRM3、KLHL6、MYD88、PMS2、SDHD、TNFRSF14、ARID1A、CCND2、DAXX、FGF23、GSK3B、KMT2A(MLL)、NF1、POLD1、SETD2、TOP1、ARID1B、CCND3、DDR2、FGF3、H3F3A、KMT2C(MLL3)、NF2、POLE、SF3B1、TOP2A、ARID2、CCNE1、DICER1、FGF4、HGF、KMT2D(MLL2)、NFE2L2、PPP2R1A、SLIT2、TP53、ASXL1、CD274、DNMT3A、FGF6、HNF1A、KRAS、NFKBIA、PRDM1、SMAD2、TSC1、ATM、CD79A、DOT1L、FGFR1、HRAS、LMO1、NKX2-1、PREX2、SMAD3、TSC2、ATR、CD79B、EGFR、FGFR2、HSD3B1、LRP1B、NOTCH1、PRKAR1A、SMAD4、TSHR、ATRX、CDC73、EP300、FGFR3、HSP90AA1、LYN、NOTCH2、PRKCI、SMARCA4、U2AF1、AURKA、CDH1、EPHA3、FGFR4、IDH1、LZTR1、NOTCH3、PRKDC、SMARCB1、VEGFA、AURKB、CDK12、EPHA5、FH、IDH2、MAGI2、NPM1、PRSS8、SMO、VHL、AXIN1、CDK4、EPHA7、FLCN、IGF1R、MAP2K1、NRAS、PTCH1、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、MAP2K2、NSD1、PTEN、SOCS1、WT1、BAP1、CDK8、ERBB2、FLT3、IKBKE、MAP2K4、NTRK1、PTPN11、SOX10、XPO1、BARD1、CDKN1A、ERBB3、FLT4、IKZF1、MAP3K1、NTRK2、QKI、SOX2、ZBTB2、BCL2、CDKN1B、ERBB4、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、RAC1、SOX9、ZNF217、BCL2L1、CDKN2A、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、NUP93、RAD50、SPEN、ZNF703、BCL2L2、CDKN2B、ERRFI1、FRS2、INPP4B、MDM4、PAK3、RAD51、SPOP、BCL6、CDKN2C、ESR1、FUBP1、IRF2、MED12、PALB2、RAF1、SPTA1、BCOR、CEBPA、EZH2、GABRA6、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、BCORL1、CHD2、FAM46C、GATA1、IRS2、MEN1、PAX5、RARA、STAG2、BLM、CHD4、FANCA、GATA2、JAK1、MET、PBRM1、RB1、STAT3および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の遺伝子を含む、E25~E27の何れかに記載の方法。
【0059】
E29. さらにETV4、TMPRSS2、ETV5、BCR、ETV1、ETV6およびMYBの1以上のゲノム変化の同定を含む、E1~E28の何れかに記載の方法。
【0060】
E30. 対象が高ネオ抗原負荷の腫瘍を有する、E1~E29の何れかに記載の方法。
【0061】
E31. 対象が増加したT細胞レパートリーを有する、E1~E30の何れかに記載の方法。
【0062】
E32. SCLCが小細胞癌を含む、E1~E31の何れかに記載の方法。
【0063】
E33. SCLCが混合型小細胞癌を含む、E1~E31の何れかに記載の方法。
【0064】
E34. SCLCが再発SCLCである、E1~E33の何れかに記載の方法。
【0065】
E35. 対象が腫瘍を処置するための少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種または少なくとも5種の先の治療経験がある、E1~E34の何れかに記載の方法。
【0066】
E36. 先の治療経験が化学療法を含む、E35に記載の方法。
【0067】
E37. 化学療法が白金ベースの治療を含む、E36に記載の方法。
【0068】
E38. 白金ベースの治療がシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチンおよび任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される白金ベースの抗新生物を含む、E37に記載の方法。
【0069】
E39. 白金ベースの治療がシスプラチンを含む、E37またはE38に記載の方法。
【0070】
E40. 抗PD-1抗体がヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する、E1~E39の何れかに記載の方法。
【0071】
E41. 抗PD-1抗体がニボルマブと同じエピトープに結合する、E1~E40の何れかに記載の方法。
【0072】
E42. 抗PD-1抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分である、E1~E41の何れかに記載の方法。
【0073】
E43. 抗PD-1抗体がヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む、E1~E42の何れかに記載の方法。
【0074】
E44. 抗PD-1抗体がニボルマブである、E1~E43の何れかに記載の方法。
【0075】
E45. 抗PD-1抗体がペムブロリズマブである、E1~E43の何れかに記載の方法。
【0076】
E46. 抗PD-1抗体が2週、3週または4週毎に0.1mg/kg~E10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与される、E1~E45の何れかに記載の方法。
【0077】
E47. 抗PD-1抗体が3週毎に5mg/kgまたはE10mg/kg体重の用量で投与される、E1~E46の何れかに記載の方法。
【0078】
E48. 抗PD-1抗体が3週毎に5mg/kg体重の用量で投与される、E1~E47の何れかに記載の方法。
【0079】
E49. 抗PD-1抗体が2週毎に3mg/kg体重の用量で投与される、E1~E46の何れかに記載の方法。
【0080】
E50. 抗PD-1抗体が一定用量として投与される、E1~E45の何れかに記載の方法。
【0081】
E51. 抗PD-1抗体が少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mgまたは少なくとも約550mgの一定用量として投与される、E50に記載の方法。
【0082】
E52. 抗PD-1抗体が約1週、2週、3週または4週毎に一定用量で投与される、E50またはE51に記載の方法。
【0083】
E53. 抗CTLA-4抗体がキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である、E2、E3、E5およびE6~E52の何れかに記載の方法。
【0084】
E54. 抗CTLA-4抗体がヒトIgG1アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む、E2、E3、E5およびE6~E53の何れかに記載の方法。
【0085】
E55. 抗CTLA-4抗体がイピリムマブである、E2、E3、E5およびE6~E55の何れかに記載の方法。
【0086】
E56. 抗CTLA-4抗体がトレメリムマブである、E2、E3、E5およびE6~E55の何れかに記載の方法。
【0087】
E57. 抗CTLA-4抗体がヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブと交差競合する、E2、E3、E5およびE6~E56の何れかに記載の方法。
【0088】
E58. 抗CTLA-4抗体が約1週、2週、3週または4週毎に少なくとも約0.1mg/kg~少なくとも約10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与する、E2、E3、E5およびE6~E57の何れかに記載の方法。
【0089】
E59. 抗CTLA-4抗体が約1mg/kgまたは約3mg/kg体重の用量で投与される、E2、E3、E5およびE6~E57の何れかに記載の方法。
【0090】
E60. 抗CTLA-4抗体が一定用量で投与される、E2、E3、E5およびE6~E57の何れかに記載の方法。
【0091】
E61. 抗CTLA-4抗体が約2週毎に投与される、E2、E3、E5およびE6~E60の何れかに記載の方法。
【0092】
E62. 抗CTLA-4抗体が約3週毎に投与される、E2、E3、E5およびE6~E60の何れかに記載の方法。
【0093】
E63. 抗PD-1抗体が約3週毎に約3mg/kg体重の用量で投与され、抗CTLA-4抗体が約3週毎に約1mg/kg体重の用量で投与される、E2、E3、E5およびE6~E57の何れかに記載の方法。
【0094】
E64. 抗PD-1抗体が約3週毎に約1mg/kg体重の用量で投与され、抗CTLA-4抗体が約3週毎に約3mg/kg体重の用量で投与される、E2、E3、E5およびE6~E57の何れかに記載の方法。
【0095】
E65. (i)4サイクルについて抗PD-1抗体が約3週毎に約1mg/kg体重の用量で投与され、抗CTLA-4抗体が約3週毎に約3mg/kg体重の用量で投与され、次いで(ii)抗PD-1抗体が約2週毎に約3mg/kg体重の用量で投与される、E2、E3、E5およびE6~E57の何れかに記載の方法。
【0096】
E66. 対象が投与後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無進行生存を示す、E1~E65の何れかに記載の方法。
【0097】
E67. 対象が投与後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約14か月、少なくとも約16か月、少なくとも約18か月、少なくとも約20か月、少なくとも約22か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の全生存を示す、E1~E66の何れかに記載の方法。
【0098】
E68. 対象が少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%の客観的応答率を示す、E1~E67の何れかに記載の方法。
【0099】
E69. ゲノムプロファイルがFOUNDATIONONE(登録商標)CDXTMを含む、E25に記載の方法。
【0100】
E70. 腫瘍がシークエンシングしたゲノムのメガベースあたり少なくとも約10変異のTMBを有する、E1~E69の何れかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】
図1は、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブ、単剤治療または抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブと抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブを含む組み合わせ治療を使用するSCLCの処置に関する臨床治験プロトコールの略図である。データベースは2017年3月30日にロックされた。患者(ITT、N=401;先のデータベースロックからのデータに基づき、1mg/kg ニボルマブ+3mg/kg イピリムマブおよび3mg/kg ニボルマブ単剤治療コホートにおける患者のみをSCLCにおけるさらなる進展のために選択した)はニボルマブ単剤治療(n=245)またはニボルマブ+イピリムマブ(n=156)を受けた。DOR=応答期間;EQ-5D=EuroQoL-5ディメンション;ORR=客観的応答率;OS=全生存;PD-L1=プログラム細胞死リガンド1;PFS=無進行生存。
a中央フォローアップ23.3か月;
b中央フォローアップ28.6か月;
c中央フォローアップ10.8か月;
d中央フォローアップ11.2か月。
【0102】
【
図2】
図2は、探索的TMB分析の方法およびサンプル・フローを説明する略図である。
a生殖系列シークエンシングについて。
【0103】
【
図3】
図3A~3Dは、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブ、単剤治療(
図3Aおよび3B)または抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブと抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブを含む組み合わせ治療(
図3Cおよび3D)で処置した対象についての無進行生存(PFS;
図3Aおよび3C)および全生存(OS;
図3Bおよび3D)のグラフ表示である。ITT患者およびTMB評価可能患者のPFSおよびOSは、示されるとおり、重層される(
図3A~3D)。
【0104】
【
図4】
図4A~4Cは、ここに記載するSCLC臨床治験における対象(
図4A)、統合SCLC治験対象(
図4B)および非小細胞肺癌の処置に関する先の臨床治験からの統合対象(
図4C)についてのTMB分布のグラフ表示である。
【0105】
【
図5】
図5は、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブまたは抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブおよび抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブで処置した全TMB評価可能対象およびTMB状態により層化した(低、中または高)同じ対象の全奏効率(ORR)を示す棒グラフである。
【0106】
【
図6】
図6A~6Bは、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブ単剤治療(
図6A)または抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブと抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブを含む組み合わせ治療(
図6B)で処置された対象のTMB分布のグラフ表示であり、ここで、対象は最良総合効果により層化される。CR=完全応答;PR=部分応答;SD=疾患安定;PD=疾患進行;NE=未評価。
【0107】
【
図7A】
図7A~7Bは、示すとおり、TMB状態で層化した(低、中または高)、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブ、単剤治療(
図7A)または抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブと抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブを含む組み合わせ治療(
図7B)で処置した対象における無進行生存(PFS)を示す。1年PFSを各サンプル集団について記す。
【0108】
【
図8A】
図8A~8Bは、示すとおり、TMB状態で層化した(低、中または高)、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブ単剤治療(
図8A)または抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブと抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブを含む組み合わせ治療(
図8B)で処置した対象における全生存(OS)を示す。1年OSを各サンプル集団について記す。
【発明を実施するための形態】
【0109】
発明の詳細な記載
本発明は、高TMB状態を有する腫瘍を有する小細胞肺癌患者を処置する方法であって、該患者に抗PD-1抗体単剤治療または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を含む組み合わせ治療を施すことを含む、方法に関する。本発明はまた、抗PD-1抗体単剤治療または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を含む組み合わせ治療での治療に適する小細胞肺癌患者を同定する方法であって、患者の生体サンプルのTMB状態を測定することを含む、方法にも関する。
【0110】
用語
本発明がより容易に理解され得るように、幾つかの用語をまず定義する。本明細書で使用される限り、他に明確に断りがない限り、次の用語の各々は、下に示す意味を有する。さらなる定義は、本明細書を通して示される。
【0111】
「投与」は、当業者に知られる種々の方法および送達系の何れかを使用する、対象への治療剤を含む組成物の物理的導入をいう。抗PD-1抗体の好ましい投与経路は、例えば注射または点滴による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊椎または他の非経腸投与経路である。ここで使用する用語「非経腸投与」は、通常注射による、経腸および局所投与以外の投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管支、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外および胸骨内注射および点滴ならびにインビボエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない。TKIは、一般に非経腸ではない経路で、好ましくは経口で投与される。他の非経腸ではない経路は、局所、上皮または粘膜経路の投与、例えば、鼻腔内、膣、直腸、舌下または局所を含む。投与は、例えば、1回、複数回および/またはそれ以上の長期にわたっても実施され得る。
【0112】
ここで使用する「有害事象」(AE)は、薬物療法の使用に付随する、あらゆる不都合で、一般に意図しないまたは望ましくない徴候(検査値異常を含む)、症状または疾患である。例えば、有害事象は、処置に応答した免疫系の活性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)の増大に付随し得る。薬物療法は1以上の関連するAEを有し得て、各AEの重症度レベルは同一または異なり得る。「有害事象を変える」ことができる方法についての記載は、異なる処置レジメの使用に付随する1以上のAEの発生率および/または重症度を低減する処置レジメを意味する。
【0113】
「抗体」(Ab)は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質免疫グロブリンまたはその抗原結合部分を含むが、これらに限定されない。各H鎖は重鎖可変領域(ここではVHと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つの定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(ここではVLと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つの定常ドメイン、CLを含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端方向で次の順で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。
【0114】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むが、これらに限定されない一般に知られるアイソタイプの何れに由来してもよい。IgGサブクラスも当分野で周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むが、これらに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。用語「抗体」は、例として、天然に存在するおよび天然に存在しない抗体の両者;モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラおよびヒト化抗体;ヒトまたは非ヒト抗体;完全合成抗体;および一本鎖抗体を含む。非ヒト抗体は、ヒトにおける免疫原性を低減するために、組み換え法でヒト化され得る。明示されておらず、文脈に反しない限り、用語「抗体」は、上記免疫グロブリンの何れかの抗原結合フラグメントまたは抗原結合部分も含み、一価および二価フラグメントまたは部分および一本鎖抗体を含む。
【0115】
「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体をいう(例えば、PD-1に特異的に結合する単離抗体は、PD-1以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的にない)。しかしながら、PD-1に特異的に結合する単離抗体は、異なる種からのPD-1分子などの他の抗原と交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は他の細胞物質および/または化学物質が実質的になくてよい。
【0116】
用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、単一分子組成の抗体分子の天然に存在しない調製物、すなわち、一次配列が実質的に同一であり、特定のエピトープに単一結合特異性および親和性を示す、抗体分子をいう。モノクローナル抗体は単離抗体の一例である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組み換え、トランスジェニックまたは当業者に知られる他の技法により製造され得る。
【0117】
「ヒト抗体」(HuMAb)は、フレームワークおよびCDR領域の両者がヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である可変領域を有する抗体をいう。さらに、抗体が定常領域を含むならば、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロで無作為もしくは部位特異的変異誘発によりまたはインビボで体細胞変異により導入された変異)。しかしながら、ここで使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの他の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図しない。用語「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」は、同義的に使用される。
【0118】
「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体のCDR外のアミノ酸の一部、大部分または全てがヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置き換えられている抗体をいう。ヒト化形態の抗体のある実施態様において、CDR外のアミノ酸の一部、大部分または全ては、ヒト免疫グロブリンからのアミノ酸で置き換えられているが、1以上のCDR内のアミノ酸の一部、大部分または全ては未変化である。アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換または修飾は、抗体が特定の抗原に結合する能力を抑制しない限り、許容される。「ヒト化抗体」は、元の抗体に類似する抗原特異性を保持する。
【0119】
「キメラ抗体」は、可変領域がマウス抗体由来であり、定常領域がヒト抗体由来である抗体などの、可変領域がある種由来であり、定常領域が他の種由来である抗体をいう。
【0120】
「抗抗原抗体」は、該抗原に特異的に結合する抗体をいう。例えば、抗PD-1抗体はPD-1に特異的に結合する。
【0121】
抗体の「抗原結合部分」(「抗原結合フラグメント」とも称する)は、抗体全体により結合される抗原に対して特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントをいう。
【0122】
「癌」は、体内の異常細胞の制御されていない増殖により特徴づけられる、種々の疾患の広い群をいう。未制御の細胞分裂および増殖は、隣接組織に侵襲し、リンパ系または血流を通って体の遠位に転移もし得る、悪性腫瘍の形成をもたらす。
【0123】
用語「免疫療法」は、免疫応答を誘発、増強、抑制または他に修飾する方法による、疾患を有するまたは発症するもしくは再発するリスクを有する対象の処置をいう。対象の「処置」または「治療」は、症状、合併症もしくは状態または疾患と関連する生化学的指標の発生、進行、進展、重症度または再発を逆転、軽減、寛解、阻止、減速または予防する目的で、対象に実施されるあらゆるタイプの介入もしくは手順または活性剤の投与をいう。
【0124】
「プログラム細胞死-1」(PD-1)は、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体をいう。PD-1は、インビボで先に活性化されたT細胞で主に発現され、2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2に結合する。ここで使用する用語「PD-1」は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログならびにhPD-1と少なくとも一つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hPD-1配列は、GenBank Accession No. U64863により見ることができる。
【0125】
「プログラム細胞死リガンド-1」(PD-L1)は、PD-1への結合によりT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御するPD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの一方(他方はPD-L2)である。ここで使用する用語「PD-L1」は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログならびにhPD-L1と少なくとも一つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hPD-L1配列はGenBank Accession No. Q9NZQ7により見ることができる。
【0126】
「対象」は、あらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌおよび齧歯類、例えばマウス、ラットおよびモルモットを含むが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、対象はヒトである。用語「対象」および「患者」はここでは相互交換可能に使用される。
【0127】
本発明の方法および投与量に関連する用語「一定用量」の使用は、患者の体重または体表面積(BSA)に関係なく患者に投与される用量を意味する。一定用量は、それゆえに、mg/kg用量ではなく、薬剤(例えば、抗PD-1抗体)の絶対量として提供される。例えば、体重60kgのヒトおよび100kgのヒトが、同じ用量の抗体(例えば、240mgの抗PD-1抗体)を投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ここに記載する方法で、2週毎に約240mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ここに記載する方法で、4週毎に約480mgの一定用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、ここに記載する方法で、3週毎に約200mgの一定用量で投与される。
【0128】
本発明の方法に関連する用語「固定用量」の使用は、単一組成物に2以上の異なる抗体(例えば、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体)が、特に互いに(固定された)比の組成で存在することを意味する。ある実施態様において、固定用量は、抗体の重量(例えば、mg)に基づく。ある実施態様において、固定用量は、抗体の濃度(例えば、mg/ml)に基づく。ある実施態様において、比は少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1または約2:1であるmg第一抗体(例えば、抗PD-1抗体)対mg第二抗体(例えば、抗CTLA-4抗体)である。例えば、3:1比の抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体は、バイアルが約240mgの抗PD-1抗体および80mgの抗CTLA-4抗体または約3mg/mlの抗PD-1抗体および1mg/mlの抗CTLA-4抗体を含み得ることを意味する。
【0129】
ここでいう用語「体重に基づく用量」は、患者に投与される用量が、患者の体重に基づき計算されることを意味する。例えば、60kg体重の患者が3mg/kgの抗PD-1抗体を必要とするとき、投与のために適切な量の抗PD-1抗体(すなわち、180mg)を計算し、使用できる。
【0130】
薬物または治療剤の「治療有効量」または「治療有効投与量」は、単独でまたは他の治療剤と組み合わせて使用したとき、疾患症状の重症度低減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防により証明される、対象を疾患の発症から守る疾患退縮を促進する薬物のあらゆる量である。治療剤が疾患退縮を促進する能力は、臨床治験中のヒト対象、ヒトにおける有効性の予測的である動物モデル系においてまたはインビトロアッセイにおける薬剤の活性のアッセイによるなど熟練実施者に知られる多様な方法により評価され得る。
【0131】
例として、「抗癌剤」は、対象における癌退縮を促進する。好ましい実施態様において、薬物の治療有効量は、癌を排除する点まで癌退縮を促進する。「癌退縮の促進」は、有効量の薬物の、単独でまたは抗新生物剤と組み合わせた投与が、腫瘍増殖またはサイズの低減、腫瘍壊死、疾患症状の少なくとも一つの重症度低減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防をもたらすことを意味する。さらに、処置に関する用語「有効」および「有効性」は、薬理学的有効性および生理学的安全性の両者を含む。薬理学的有効性は、薬物が患者における癌退縮を促進する能力をいう。生理学的安全性は、薬物投与に起因する、細胞、臓器および/または生物レベルでの毒性または他の有害生理学的作用のレベル(有害作用)をいう。
【0132】
腫瘍処置に関する例として、治療有効量の抗癌剤は、好ましくは細胞増殖または腫瘍増殖を、未処置対象に比して、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%およびなおさらに好ましくは少なくとも約80%阻害する。本発明の他の好ましい実施態様において、腫瘍退縮は、少なくとも約20日、より好ましくは少なくとも約40日またはさらにより好ましくは少なくとも約60日の期間観察され、継続し得る。治療的有効性のこれらの最終的な評価にかかわらず、免疫療法薬物の評価は、免疫関連応答パターンも参酌すべきである。
【0133】
「免疫応答」は当分野で理解されているとおりであり、一般に外来因子または異常、例えば、癌細胞に対する脊椎動物内の生物学的応答をいい、この応答は、該生物をこれらの因子およびそれが原因の疾患から保護する。免疫応答は、脊椎動物身体の侵襲病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、癌もしくは他の異常細胞、または、自己免疫もしくは病理学的炎症の場合、正常ヒト細胞または組織の選択的ターゲティング、結合、損傷、破壊および/または排除をもたらす、免疫系の1以上の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞または好中球)およびこれらの細胞の何れかまたは肝臓により産生される可溶性高分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)が介在する作用である。免疫反応は、T細胞、例えば、エフェクターT細胞、Th細胞、CD4+細胞、CD8+T細胞またはTreg細胞の、例えば、活性化もしくは阻害または免疫系の何らかの他の細胞、例えば、NK細胞の活性化もしくは阻害を含む。
【0134】
「免疫関連応答パターン」は、癌特異的免疫応答の誘発または自然の免疫過程の修飾により抗腫瘍効果を生じる、免疫療法剤で処置される癌患者でしばしば観察される臨床的応答パターンをいう。この応答パターンは、伝統的化学療法剤の評価では疾患進行と分類され、薬物失敗と同義である腫瘍負荷の増加または新規病変出現後の、有利な治療効果により特徴づけられる。従って、免疫療法剤の適切な評価は、標的疾患に対するこれら薬剤の効果の長期モニタリングを必要とし得る。
【0135】
「免疫調節剤」または「免疫制御剤」は、薬剤、例えば、免疫応答の調節、制御または修飾に関与し得るシグナル伝達経路の要素を標的とする薬剤をいう。免疫応答の「調節」、「制御」または「修飾」は、細胞の免疫系またはそのような細胞(例えば、Th1細胞などのエフェクターT細胞)の活性の何らかの改変をいう。このような調節は、種々の細胞型の数の増減、これらの細胞の活性の増減または免疫系内で生じ得る何らかの他の変化により顕在化され得る、免疫系の刺激または抑制を含む。阻害性および刺激性両者の免疫調節剤が同定されており、その一部は腫瘍微小環境で機能が増強され得る。ある実施態様において、免疫調節剤は、T細胞表面上の分子を標的とする。「免疫調節性標的」または「免疫制御性標的」は、物質、薬剤、部分、化合物または分子の結合の標的であり、その、活性が結合により変えられる、分子、例えば、細胞表面分子である。免疫調節性標的は、例えば、細胞表面上の受容体(「免疫調節性受容体」)および受容体リガンド(「免疫調節性リガンド」)を含む。
【0136】
「免疫療法」は、免疫系または免疫応答の誘発、増強、抑制または他に修飾を含む方法による、疾患を有するまたは発症もしくは再発のリスクのある対象の処置をいう。ある実施態様において、免疫療法は、対象への抗体の投与を含む。他の実施態様において、免疫療法は、対象への小分子の投与をいう。他の実施態様において、免疫療法は、サイトカインまたはそのアナログ、バリアントもしくはフラグメントの投与を含む。
【0137】
「免疫刺激治療」または「免疫刺激性治療」は、例えば、癌を処置するための、対象における免疫応答の増加(誘発または増強)をもたらす治療をいう。
【0138】
「内在性の増強」は、対象における既存の免疫応答の有効性または効力の増加を意味する。この有効性および効力の増加は、例えば、内在性宿主免疫応答を抑制する機序の克服または内在性宿主免疫応答を増強する機序の刺激により達成され得る。
【0139】
薬物の治療有効量は、癌(例えば、前悪性状態を有する対象)を発症するまたは癌を再発するリスクのある対象に、単独でまたは抗新生物剤と組み合わせて投与したとき、癌の発症または再発を阻止する薬物のあらゆる量である、「予防有効量」を含む。好ましい実施態様において、予防有効量は、癌の発症または再発を完全に阻止する。癌の発症または再発の「阻止」は、癌の発症もしくは再発の可能性の低減または癌の発症もしくは再発の完全な予防を意味する。
【0140】
ここで使用する用語「腫瘍変異負荷」(TMB)は、腫瘍のゲノムにおける体細胞変異数および/または腫瘍のゲノムの領域あたりの体細胞変異数をいう。生殖系列(遺伝性)バリアントは、免疫系がこれらを自己と認識する可能性が高いため、TMBの決定のときに除外する。腫瘍変異負荷(TMB)は、「腫瘍変異荷重(tumor mutation load)」、「腫瘍変異負荷(tumor mutational burden)」または「腫瘍変異的荷重(tumor mutational load)」とも相互交換可能に使用される。
【0141】
TMBは、腫瘍のゲノムの遺伝子解析であり、従って、当業者に周知のシークエンシング法の適用により測定され得る。腫瘍DNAを、生殖系列変異または多型を排除するために患者マッチ正常組織からのDNAと比較し得る。
【0142】
ある実施態様において、TMBを、ハイスループットシークエンシング技術、例えば、次世代シークエンシング(NGS)またはNGSベースの方法を使用する腫瘍DNAのシークエンシングにより決定する。ある実施態様において、NGSベースの方法は、全ゲノムシークエンシング(WGS)、全エキソームシークエンシング(WES)またはFOUNDATIONONE CDXTMおよびMSK-IMPACT臨床試験などの癌遺伝子パネルの包括的ゲノムプロファイリング(CGP)から選択される。ある実施態様において、ここで使用するTMBは、シークエンシングしたDNAのメガ塩基対(Mb)当たりの体細胞変異数をいう。ある実施態様において、TMBを、あらゆる遺伝性生殖系列遺伝的改変を排除するために、適合腫瘍の生殖系列サンプルで標準化することにより同定された、非同義変異、例えば、ミスセンス変異(すなわちタンパク質における特定のアミノ酸を変える)および/またはナンセンス(中途終止、故にタンパク質配列の短縮をもたらす)の総数を使用して、測定する。他の実施態様において、TMBを、腫瘍におけるミスセンス変異の総数を使用して、測定する。TMBを測定するために、十分量のサンプルが必要である。ある実施態様において、組織サンプル(例えば、最低限10スライド)が評価に使用される。ある実施態様において、TMBは、メガ塩基対あたりのNsM(NsM/Mb)として表される。1メガ塩基対は100万塩基対を表す。
【0143】
TMB状態は、数値または相対値、例えば、高、中または低;対照セットの最高分位点内または最高三分位内であり得る。
【0144】
ここで使用する用語「高TMB」は、正常または平均を超える体細胞変異数である、腫瘍のゲノムにおける体細胞変異数をいう。ある実施態様において、TMBは、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495または少なくとも500のスコアを有する;他の実施態様において、高TMBは少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249または少なくとも250のスコアを有する;そして、特定の実施態様において、高TMBは少なくとも243のスコアを有する。他の実施態様において、「高TMB」は、対照TMB値の最高分位点内のTMBをいう。例えば、評価可能なTMBデータがある全対象は、TMBの分位点分布により分類される、すなわち、対象は、遺伝的改変の最高数から最低数方向で順位付けされ、規定された数の群に分割される。ある実施態様において、評価可能なTMBデータがある全対象は順位付けされ、3つに分けられ、「高TMB」は対照TMB値の最高三分位内である。特定の実施態様において、三分位値境界は、0<100遺伝的改変;100~243遺伝的改変;および>243遺伝的改変である。順位付けされたら、評価可能なTMBデータを有する対象を任意の数の群、例えば、四分位値、五分位値などに分けることができることは理解されるべきである。ある実施態様において、「高TMB」は、少なくとも約20変異/腫瘍、少なくとも約25変異/腫瘍、少なくとも約30変異/腫瘍、少なくとも約35変異/腫瘍、少なくとも約40変異/腫瘍、少なくとも約45変異/腫瘍、少なくとも約50変異/腫瘍、少なくとも約55変異/腫瘍、少なくとも約60変異/腫瘍、少なくとも約65変異/腫瘍、少なくとも約70変異/腫瘍、少なくとも約75変異/腫瘍、少なくとも約80変異/腫瘍、少なくとも約85変異/腫瘍、少なくとも約90変異/腫瘍、少なくとも約95変異/腫瘍または少なくとも約100変異/腫瘍のTMBをいう。ある実施態様において、「高TMB」は、少なくとも約105変異/腫瘍、少なくとも約110変異/腫瘍、少なくとも約115変異/腫瘍、少なくとも約120変異/腫瘍、少なくとも約125変異/腫瘍、少なくとも約130変異/腫瘍、少なくとも約135変異/腫瘍、少なくとも約140変異/腫瘍、少なくとも約145変異/腫瘍、少なくとも約150変異/腫瘍、少なくとも約175変異/腫瘍または少なくとも約200変異/腫瘍のTMBをいう。ある実施態様において、高TMBを有する腫瘍は少なくとも約100変異/腫瘍を有する。
【0145】
「高TMB」はまた、例えば、変異アッセイ、例えば、FOUNDATIONONE CDXTMアッセイで測定して、シークエンシングしたゲノムのメガ塩基対あたりの変異数としても言及され得る。ある実施態様において、高TMBは、FOUNDATIONONE CDXTMアッセイにより測定して、ゲノムのメガ塩基対あたり少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19または少なくとも約20変異をいう。特定の実施態様において、「高TMB」は、FOUNDATIONONE CDXTMアッセイでシークエンシングしたゲノムのメガ塩基対あたり、少なくとも10変異をいう。
【0146】
ここで使用する用語「中TMB」は、正常または平均であるまたはほぼ正常または平均である体細胞変異数である腫瘍のゲノムにおける体細胞変異数をいい、用語「低TMB」は、正常または平均を下回る体細胞変異数である腫瘍のゲノムにおける体細胞変異数をいう。特定の実施態様において、「高TMB」は少なくとも243のスコアを有し、「中TMB」は100~242のスコアを有し、「低TMB」は100未満(または0~100)のスコアを有する。「中または低TMB」は、例えば、FOUNDATIONONE CDXTMアッセイにより測定して、シークエンシングしたゲノムのメガ塩基対あたり9未満の変異を有する。
【0147】
ここでいう用語「対照TMB値」は、表9に示すTMB値であり得る。
【0148】
ある実施態様において、TMB状態は喫煙状態とも相関し得る。特に、現在喫煙しているまたは以前喫煙していた対象は、しばしば喫煙したことがない対象より遺伝的改変、例えば、ミスセンス変異が多い。
【0149】
高TMBを有する腫瘍はまた高ネオ抗原負荷も有し得る。ここで使用する用語「ネオ抗原」は、免疫系により先に認識されていない、新たに形成された抗原をいう。ネオ抗原は、免疫系により外来(または非自己)として認識されるタンパク質またはペプチドであり得る。体細胞変異を保持する腫瘍ゲノムにおける遺伝子の転写は変異mRNAをもたらし、これは、翻訳されたとき、変異タンパク質を生じ、これが次いで処理され、ER管腔に輸送され、MHCクラスI複合体と結合し、ネオ抗原のT細胞認識を促進する。ネオ抗原認識は、T細胞活性化、クローン増殖ならびにエフェクターおよび記憶T細胞への分化を促進できる。ネオ抗原負荷はTMBと相関し得る。ある実施態様において、TMBは、腫瘍ネオ抗原負荷測定のためのサロゲートとして評価される。腫瘍のTMB状態を、患者が特定の抗癌剤または特定のタイプの処置もしくは治療、例えば、癌免疫治療剤、例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分から李家気を受けるか否かの決定に際し、因子として、単独でまたは他の因子と組み合わせて使用できる。ある実施態様において、高TMB状態(または高TMB)は、癌免疫からの利益の可能性が高いことを示し、故に、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分の治療から利益を得る可能性がより高い患者の同定に使用できる。同様に、高腫瘍ネオ抗原負荷および高TMBを有する、例えば、SCLC由来の、腫瘍は、低ネオ抗原負荷および低TMBを有する腫瘍より免疫原性である可能性が高い。さらに、例えば、SCLC由来の、高ネオ抗原/高TMB腫瘍は、免疫系により非自己として認識される、故に免疫介在抗腫瘍応答を誘発する可能性が高い。ある実施態様において、高TMB状態および高ネオ抗原負荷は、例えば、免疫療法を用いる、癌免疫から利益を得る可能性が高いことを示す。ここで使用する用語「治療から利益を得る」は、全生存、無進行生存、部分応答、完全応答および全奏効率の1以上の改善をいい、また腫瘍増殖またはサイズの低減、疾患症状の重症度の低減、無疾患症状期間の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害もしくは身体障害の予防も含む。
【0150】
他の因子、例えば、環境的因子もTMB状態と関係し得る。例えば、NSCLCを有する患者の喫煙状態はTMB分布と相関し、ここで、現在のおよびかつての喫煙者は、喫煙経験がない患者と比較して、中央TMBが高かった。Peters et al., AACR, April 1-5, 2017, Washington, D.C.参照。NSCLC腫瘍におけるドライバー変異は若さ、女性および非喫煙者状態とも関係した。Singal et al., ASCO, June 1-5, 2017; Chicago, IL参照。EGFR、ALKまたはKRASなどのドライバー変異の存在と低いTMBを相関させる傾向が観察された(P=0.06)。Davis et al., AACR, April 1-5, 2017, Washington, D.C.。
【0151】
ここで使用する用語「体細胞変異」は、受胎後に生じるDNAの後天的改変をいう。体細胞変異は、胚細胞(精子および卵子)以外の体のどの細胞でも生じ得て、それ故に子供には継承されない。これらの改変は、常にではないが、癌または他の疾患を引き起こし得る。用語「生殖系列変異」は、子孫の体の全細胞のDNAに取り込まれることになる、体の生殖細胞(卵子または精子)における遺伝子変化をいう。生殖系列変異は、親から子孫にわたされる。「遺伝性変異」とも称される。TMBの分析において、生殖系列変異は「ベースライン」と考えられ、腫瘍内、例えば、SCLC由来の腫瘍内のTMBを決定するための腫瘍生検で見られた変異数から減じられる。生殖系列変異は体の全細胞に見られるため、その存在は、血液または唾液などの腫瘍組織診より侵襲の少ないサンプル採取により決定され得る。生殖系列変異は、ある種の癌を発症するリスクを高める可能性があり、化学療法に対する応答に役割を有する可能性がある。
【0152】
用語「測定する」または「測定」は、TMB状態と関連するとき、対象の生体サンプルにおける体細胞変異の測定可能な量の決定を意味する。測定は、サンプルにおける核酸、例えば、cDNA、mRNA、exoRNA、ctDNAおよびcfDNAのシークエンシングにより実施され得ることは認識される。測定は対象のサンプルおよび/または1つ以上の対照サンプルで実施し、例えば、新規に検出されるかまたは先の決定に対応させることができる。測定は、当業者に知られるとおり、例えば、PCR法、qPCR法、サンガーシークエンシング法、ゲノムプロファイリング法(包括的遺伝子パネルを含む)、エキソームシークエンシング法、ゲノムシークエンシング法および/またはここに開示する任意の他の方法により実施され得る。ある実施態様において、測定は、シークエンシングした核酸におけるゲノム変化を同定する。ゲノム(または遺伝子)プロファイリング法は、予め決められた一連の遺伝子、例えば、150~500遺伝子のパネルを含み得て、ある場合、遺伝子のパネルで評価されたゲノム変化は、評価した総体細胞変異と関係づけられる。
【0153】
ここで使用する用語「ゲノム変化」は、腫瘍のゲノムのヌクレオチド配列における変化(または変異)をいい、この変化は生殖系列ヌクレオチド配列に存在せず、ある実施態様において、塩基対置換、塩基対挿入、塩基対欠失、コピー数変化(CNA)、遺伝子再配列および任意のこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、非同義変異である。特定の実施態様において、生体サンプルにおいて測定されるゲノム変化はミスセンス変異である。
【0154】
ここで使用する用語「全ゲノムシークエンシング」または「WGS」は、ゲノム全体をシークエンシングする方法をいう。ここで使用する用語「全エキソームシークエンシング」または「WES」は、ゲノムのタンパク質コード領域(エクソン)全てをシークエンシングする方法をいう。
【0155】
ここで使用する「癌遺伝子パネル」、「遺伝性癌パネル」、「包括的癌パネル」または「多重遺伝子癌パネル」は、標的癌遺伝子のサブセットをシークエンシングする方法をいう。ある実施態様において、CGPは、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45または少なくとも約50標的癌遺伝子のシークエンシングを含む。
【0156】
用語「ゲノムプロファイリングアッセイ」、「包括的ゲノムプロファイリング」または「CGP」は、遺伝子のパネルを分析し、インビトロ診断のためにイントロンを選択するアッセイをいう。CGPは、既知の臨床的に関連する癌遺伝子における変異をスクリーニングするための、NGSと標的バイオインフォマティクス分析の組み合わせである。この方法を使用して、「ホットスポット」試験で見落とされる変異を捕らえることができる(例えば、BRCA1/BRCA2変異またはマイクロサテライトマーカー)。ある実施態様において、パネル内の遺伝子は癌関連遺伝子である。他の実施態様において、ゲノムプロファイリングアッセイはFOUNDATIONONE(登録商標)アッセイである。
【0157】
用語「調和」は、2以上の測定値および/または診断検査間の同等性の決定のために行われる研究をいう。調和研究は、複数診断検査をどのように互いに対比するかおよび患者の腫瘍のバイオマーカー状態の決定に使用したときのそれらの互換性についての問題に対処する体系的なアプローチを提供する。一般に、他との比較のためには、少なくとも一つのよく特徴付けられた測定値および/または診断検査を標準として使用する。調和評価が調和研究においては、しばしば同等性評価が使用される。
【0158】
ここで使用する用語「同等性(concordance)」は、2つの測定値および/または診断検査間の一致の程度をいう。同等性は、定性的および定量的両方の方法を使用して確立され得る。同等性を評価するための定量的方法は、測定のタイプに基づき異なる。特定の測定値は、1)カテゴリー的/二分変数または2)連続的変数として表し得る。「カテゴリー的/二分変数」(例えば、TMBカットオフ超または未満)は、同等性を評価するための、全体一致率(OPA)、陽性一致率(PPA)または陰性一致率(NPA)などの一致率を使用し得る。「連続的変数」(例えば、WESによるTMB)は、スピアマンの順位相関またはピアソンの相関係数(r)を使用し、これは、値のスペクトルにわたり、同等性を評価するために、値-1≦r≦+1を取る(注r=+1または-1は、変数の各々が完全に相関することを意味する)。用語「分析的同等性」は、臨床用途を支持するための、2つのアッセイまたは診断検査の実行(例えば、バイオマーカー、ゲノム変化タイプおよびゲノムシグネチャーの同定ならびに試験再現性評価)における一致の程度をいう。用語「臨床的同等性」は、2つのアッセイまたは診断検査がどのように臨床成績と相関するかの一致の程度をいう。
【0159】
用語「マイクロサテライト不安定性」または「MSI」は、マイクロサテライト(DNAの短、反復配列)の反復数が、遺伝性であったときのDNAにおける反復数と異なるものである、ある種の細胞(例えば腫瘍細胞)のDNAで生じる変化をいう。MSIは、高マイクロサテライト不安定性(MSI-H)または低マイクロサテライト不安定性(MSI-L)であり得る。マイクロサテライトは、1~6塩基対の短タンデムDNA反復配列である。これらは、ミスマッチ修復(MMR)により修復される、DNA複製エラーを受けやすい。それ故に、マイクロサテライトはゲノム不安定性、特に欠損ミスマッチ修復(dMMR)の良好な指標である。MSIは通常5つのマイクロサテライトマーカー(BAT-25、BAT-26、NR21、NR24およびNR27)のスクリーニングにより診断される。MSI-Hは、分析した5マイクロサテライトマーカー中少なくとも2つ(または大型パネルを使用したとき、マーカーの≧30%)の不安定マーカーの存在を表す。MSI-Lは、1つのMSIマーカー(または大型パネルにおけるマーカーの10%~30%)の不安定性を意味する。MSSは、不安定マイクロサテライトマーカーが存在しないことを意味する。
【0160】
ここで使用する用語「生体サンプル」は、対象から単離した生物物質をいう。生体サンプルは、例えば、腫瘍(または循環腫瘍細胞)における核酸のシークエンシングによりTMBを決定し、シークエンシングした核酸におけるゲノム変化を同定するのに適するあらゆる生物物質を含み得る。生体サンプルは、例えば、腫瘍組織、血液、血漿および血清などの任意の適当な生物学的組織または体液であり得る。ある実施態様において、サンプルは腫瘍組織生検、例えば、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織または新鮮凍結腫瘍組織などである。他の実施態様において、生体サンプルは、ある実施態様において、血液、血清、血漿、循環腫瘍細胞、exoRNA、ctDNAおよびcfDNAの1以上を含む、液体生検である。
【0161】
ここで使用する用語「約1週毎」、「約2週毎」またはあらゆる他の類似投与間隔は、おおよその数値を意味する。「約1週毎」は7日±1日毎、すなわち、6日毎~8日毎を含み得る。「約2週毎」は14日±3日毎、すなわち、11日毎~17日毎を含み得る。例えば、約3週毎、約4週毎、約5週毎、約6週毎および約12週毎にも同様の近似が当てはまる。ある実施態様において、約6週毎または約12週毎の投与間隔は、最初の用量を第1週目の任意の曜日に投与してよく、次の用量をそれぞれ6週または12週目の任意の曜日に投与してよいことを意味する。他の実施態様において、約6週毎または約12週毎の投与間隔は、最初の用量を第一種目の特定の曜日(例えば、月曜日)に投与し、次いで次の用量をそれぞれ6週または12週目の同じ曜日(すなわち、月曜日)に投与することを意味する。
【0162】
二者択一(例えば、「または」)の使用は、選択肢のいずれか一つ、両者または任意のこれらの組み合わせを意味すると理解されるべきである。ここで使用する単数表現は、任意の記載されるまたは列挙される要素の「1以上」をいうと理解されるべきである。
【0163】
用語「約」または「本質的に含む」は、当業者により決定される特定の値または組成についての許容される誤差範囲内である値または組成をいい、これは、一部どのように値または組成が測定または決定されたかによる、すなわち、測定系の限界である。例えば、「約」または「本質的に含む」は、当分野の慣例により1または1を超える標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」または「本質的に含む」は、最大10%の範囲を意味し得る。さらに、特に生物学的系または過程において、本用語は、値の最大1桁または最大5倍までを意味し得る。特定の値または組成が本明細書および特許請求の範囲に提供されるとき、特に断らない限り、「約」または「本質的に含む」の意味は、その特定の値または組成について許容される誤差範囲内であると推定される。
【0164】
ここで使用する、あらゆる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、特に断らない限り、記載される範囲内のあらゆる整数値および、適切であるならば、その分数の値(例えば整数の1/10および1/100)を含むと理解される。
【0165】
略語一覧を表1に提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【0166】
本発明の種々の態様を、次にさらに詳述する。
【0167】
本発明の方法
本発明のある態様は、SCLC由来腫瘍を有し、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-L1抗体」)での処置に適する対象を同定する方法)であって、該対象の生体サンプルの腫瘍変異負荷(TMB)状態を測定することを含む方法に関する。本発明の他の態様は、SCLC由来腫瘍を有し、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体での処置に適する対象を同定する方法であって、対象の生体サンプルの腫瘍変異負荷(TMB)状態を測定することを含む方法に関する。
【0168】
腫瘍は、増殖するに連れて生殖系列DNAに存在しない体細胞変異を蓄積する。腫瘍変異負荷(TMB)は、腫瘍のゲノムにおける体細胞変異数および/または腫瘍ゲノムの領域あたりの体細胞変異数(生殖系列バリアントDNAを考慮後)をいう。体細胞変異、故に、高TMBの獲得は、外因性変異原暴露(例えば、喫煙またはUV光暴露)およびDNAミスマッチ修復変異(例えば、結腸直腸および食道癌におけるMSI)などの異なる機序により影響を受け得る。固形腫瘍において、変異の約95%は一塩基置換である(Vogelstein et al., Science (2013) 339:1546-1558)。ここでの「非同義変異」は、タンパク質のアミノ酸配列を変えるヌクレオチド変異をいう。ミスセンス変異およびナンセンス変異は、何れも非同義変異であり得る。ここでの「ミスセンス変異」は、単一ヌクレオチド変化が異なるアミノ酸をコードするコドンをもたらす非同義点変異をいう。ここでの「ナンセンス変異」は、コドンが、得られたタンパク質の短縮に至る未成熟終止コドンに変化する非同義点変異をいう。
【0169】
ある実施態様において、体細胞変異は、RNAおよび/またはタンパク質レベルで発現し、ネオ抗原(ネオエピトープとも称する)をもたらし得る。ネオ抗原は、免疫介在抗腫瘍応答に影響し得る。例えば、ネオ抗原認識はT細胞活性化、クローン増殖およびエフェクターおよび記憶T細胞への分化を促進し得る。
【0170】
腫瘍が進展するにつれて、初期クローン変異(または「共通変異」)は、腫瘍細胞の大部分または全てが有し得るが、後期変異(または「分枝変異」)は腫瘍細胞のサブセットまたは領域でしか生じ得ない(Yap et al., Sci Tranl Med (2012) 4:1-5;Jamai-Hanjani et al., (2015) Clin Cancer Res 21:1258-1266)。その結果、クローン「共通」変異に由来するネオ抗原は、「分枝」変異より広範に腫瘍ゲノムに広がり、故に、多数のT細胞がクローンネオ抗原に対して反応性となり得る(McGranahan et al., (2016) 351:1463-1469)。一般に、高TMBを有する腫瘍は高ネオ抗原負荷も有し、これは高腫瘍免疫原性ならびにT細胞反応性および抗腫瘍応答増加に至り得る。すなわち、高TMBを有する癌は、免疫療法剤、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体での処置の応答が良好であり得る。
【0171】
シークエンシングテクノロジーの進歩は、腫瘍のゲノム変異地形の評価を可能にする。当分野で知られる任意のシークエンシング法を、(例えば、腫瘍を有する対象の生体サンプルから得た)腫瘍ゲノムからの核酸シークエンシングに使用できる。ある実施態様において、PCRまたはqPCR法、サンガーシークエンシング法または次世代シークエンシング(「NGS」)方法(例えばゲノムプロファイリング、エキソームシークエンシングまたはゲノムシークエンシング)がTMBの測定に使用され得る。ある実施態様において、TMB状態はゲノムプロファイリングを使用して測定される。ゲノムプロファイリングは、コード領域および非コード領域を含む腫瘍サンプルからの核酸の分析を含み、統合され、最適化された核酸セレクション、リードのアライメントおよび変異コーリングを有する方法を使用して実施され得る。ある実施態様において、遺伝子プロファイリングは、癌一つずつ、遺伝子一つずつおよび/または部位一つずつ基盤に最適化され得る、腫瘍の次世代シークエンシング(NGS)ベースの分析を提供する。ゲノムプロファイリングは、シークエンシング法、特に多数の多様な遺伝子における多数の多様な遺伝的事象の超並列シークエンシングを利用する方法における性能を最適化するための、複数の、個々に調整された、アライメント方法またはアルゴリズムの使用を集積し得る。ゲノムプロファイリングは、臨床グレード品質での対象の癌ゲノムの包括的分析のために提供され、遺伝子解析結果を、癌治療の品質および効率を高めるために、関連する科学的および医学的知識にあてはめ得る。
【0172】
ゲノムプロファイリングは、わずか5つの遺伝子または1000もの遺伝子、約25遺伝子~約750遺伝子、約100遺伝子~約800遺伝子、約150遺伝子~約500遺伝子、約200遺伝子~約400遺伝子、約250遺伝子~約350遺伝子を含む予め決められたセットの遺伝子のパネルを含む。ある実施態様において、ゲノムプロファイルは少なくとも300遺伝子、少なくとも305遺伝子、少なくとも310遺伝子、少なくとも315遺伝子、少なくとも320遺伝子、少なくとも325遺伝子、少なくとも330遺伝子、少なくとも335遺伝子、少なくとも340遺伝子、少なくとも345遺伝子、少なくとも350遺伝子、少なくとも355遺伝子、少なくとも360遺伝子、少なくとも365遺伝子、少なくとも370遺伝子、少なくとも375遺伝子、少なくとも380遺伝子、少なくとも385遺伝子、少なくとも390遺伝子、少なくとも395遺伝子または少なくとも400遺伝子を含む。他の実施態様において、ゲノムプロファイルは少なくとも325遺伝子を含む。特定の実施態様において、ゲノムプロファイルは、少なくとも315癌関連遺伝子および28遺伝子におけるイントロン(FOUNDATIONONE(登録商標))または406遺伝子の完全DNAコード配列、再配列された31遺伝子におけるイントロンおよび265遺伝子のRNA配列(cDNA)(FOUNDATIONONE(登録商標)Heme)を含む。他の実施態様において、ゲノムプロファイルは、26遺伝子および1000随伴変異を含む(EXODX(登録商標)Solid Tumor)。さらに他の実施態様において、ゲノムプロファイルは、76遺伝子を含む(Guardant360)。さらに他の実施態様において、ゲノムプロファイルは73遺伝子を含む(Guardant360)。他の実施態様において、ゲノムプロファイルは、354遺伝子および再配列のための28遺伝子におけるイントロンを含む(FOUNDATIONONE(登録商標)CDXTM)。ある実施態様において、ゲノムプロファイルは、FOUNDATIONONE(登録商標)F1CDxである。他の実施態様において、ゲノムプロファイルは、468遺伝子を含む(MSK-IMPACTTM)。1以上の遺伝子を、より多くの遺伝子が腫瘍学と関連すると同定されるように、ゲノムプロファイルに加えてよい。
【0173】
FOUNDATIONONE(登録商標)アッセイ
FOUNDATIONONE(登録商標)アッセイは、肺、結腸および乳房の固形腫瘍、黒色腫および卵巣癌を含むが、これらに限定されない固形腫瘍用の包括的ゲノムプロファイリングアッセイである。FOUNDATIONONE(登録商標)アッセイは、ハイブリッドキャプチャー、ゲノム変化(塩基置換、挿入および欠失、コピー数改変および再配列)を同定するための次世代シークエンシング試験およびゲノムシグネチャー(例えば、TMBおよびマイクロサテライト不安定性)選択を使用する。本アッセイは、315の癌関連遺伝子のコード領域全体および28遺伝子からの選択イントロンを含む、322の特有遺伝子をカバーする。FOUNDATIONONE(登録商標)アッセイ遺伝子の完全リストを表2および3に提供する。全体を引用により本明細書に包含させる、FoundationMedicine.com(最終アクセス2018年3月16日)で入手可能なFOUNDATIONONE: Technical Specifications, Foundation Medicine, Inc.参照。
【表2】
【表3】
【0174】
EXODX(登録商標)固形腫瘍アッセイ
ある実施態様において、TMBをEXODX(登録商標)固形腫瘍アッセイを使用して測定する。EXODX(登録商標)固形腫瘍アッセイは、癌経路におけるアクショナブル変異を検出するexoRNAおよびcfDNAベースのアッセイである。EXODX(登録商標)固形腫瘍アッセイは、組織サンプルを必要としない血漿ベースのアッセイである。EXODX(登録商標)固形腫瘍アッセイは26遺伝子および1000変異をカバーする。EXODX(登録商標)固形腫瘍アッセイによりカバーされる特異的遺伝子を表4に示す。exosomedx.com(最終アクセス2018年3月16日)で入手可能なPlasma-Based Solid Tumor Mutation Panel Liquid Biopsy, Exosome Diagnostics, Inc.参照。
【表4】
【0175】
FOUNDATIONONE(登録商標)液体アッセイ
ある実施態様において、TMBをFOUNDATIONONE(登録商標)液体アッセイを使用して測定する。FOUNDATIONONE(登録商標)液体アッセイは、循環腫瘍DNA(ctDNA)を検出するcfDNAベースのアッセイである。本アッセイは、固体組織サンプルを必要としない血漿ベースのアッセイである。FOUNDATIONONE(登録商標)液体アッセイは70遺伝子をカバーする。FOUNDATIONONE(登録商標)液体アッセイによりカバーされる特異的遺伝子を表5A~5Cに示す。assets.ctfassets.net/vhribv12lmne/3SPYAcbGdqAeMsOqMyKUog/d0eb51659e08d733bf39971e85ed940d/F1L_TechnicalInformation_MKT-0061-04.pdf(最終アクセス2018年10月6日)で入手可能なFOUNDATIONONE(登録商標) Liquid, Technical Specifications, Foundation Medicne参照。
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【0176】
Guardant360アッセイ
ある実施態様において、TMB状態をGuardant360アッセイを使用して決定する。Guardant360アッセイは、少なくとも73遺伝子(表6)、23インデル(表7)、18CNV(表8)および6融合遺伝子(表9)における変異を測定する。GuardantHealth.com(最終アクセス2018年3月16日)参照。ある実施態様において、TMB状態をGUARDANTOMNI
TMアッセイを使用して決定する。GUARDANTOMNI
TMアッセイは、500遺伝子パネルを含む包括的ゲノムプロファイリングツールである。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0177】
ILLUMINA(登録商標)TruSightアッセイ
ある実施態様において、TMBをTruSight腫瘍170アッセイ(ILLUMINA)を使用して決定する。TruSight腫瘍170アッセイは、DNAおよびRNAを同時に解析する、一般的な固形腫瘍に関連する170遺伝子をカバーする次世代シークエンシングアッセイである。TruSight腫瘍170アッセイは、融合、スプライスバリアント、挿入/欠失、単一ヌクレオチドバリアント(SNV)および増幅を評価する。TruSight腫瘍170アッセイ遺伝子一覧を表10~12に示す。
【表10】
【表11】
【表12】
【0178】
FOUNDATIONONE(登録商標)F1CDxアッセイ
FOUNDATIONONE(登録商標)CDXTM(「F1CDx」)は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織検体から単離されたDNAを使用する、324遺伝子および選択遺伝子再配列における置換、挿入および欠失改変(インデル)およびコピー数改変(CNA)ならびにマイクロサテライト不安定性(MSI)および腫瘍変異負荷(TMB)を含むゲノムシグネチャーの検出のための、次世代シークエンシングベースのインビトロ診断装置である。F1CDxは、NSCLC、黒色腫、乳癌、結腸直腸癌および卵巣癌を含む数腫瘍適用について、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。
【0179】
F1CDxアッセイは、日常的FFPE生検または外科切除検体からの単一DNA抽出方法を用い、その50~1000ngが、309癌関連遺伝子からの全コーディングエクソン、34(その21はコーディングエクソンでもある)の一般に再配列される遺伝子からの1プロモーター領域、1非コーディング(ncRNA)および選択イントロン領域のホールゲノムショットガンライブラリー構築およびハイブリダイゼーションベースの捕獲に付される。表13Aおよび13Bは、F1CDxに含まれる遺伝子の完全一覧を提供する。合計で、本アッセイは計324遺伝子の改変を検出する。ILLUMINA(登録商標)HiSeq 4000プラットホームを使用して、ハイブリッド捕獲-選択ライブラリーを高い均一の深さ(目標>500×中央適用範囲と適用範囲>100×でエクソンの>99%)までシークエンシングする。次いで配列データを、塩基置換、インデル、コピー数改変(増幅およびホモ接合遺伝子欠失)および選択ゲノム再配列(例えば、遺伝子融合)を含む全クラスのゲノム変化を検出するように設計したカスタマイズした分析パイプラインを使用して処理する。さらに、マイクロサテライト不安定性(MSI)および腫瘍変異負荷(TMB)を含むゲノムシグネチャーが報告される。
【表13A】
【表13B】
【0180】
F1CDxアッセイは、置換、挿入/欠失およびCNAを含む、遺伝子および/またはイントロン配列における種々の改変を同定する。F1CDxアッセイは、外部検証されたNGSアッセイおよびFOUNDATIONONE(登録商標)(F1 LDT)アッセイとコンコーダンスを有するとして以前同定された。全体を引用により本明細書に包含させる、FoundationMedicine.com(最終アクセス2018年3月16日)で入手可能なFOUNDATIONONE(登録商標)CDXTM: Technical Information, Foundation Medicine, Inc.参照。
【0181】
MSK-IMPACT
TM
ある実施態様において、TMB状態をMSK-IMPACT
TMアッセイを使用して評価する。MSK-IMPACT
TMアッセイは、468遺伝子の変異状態を分析するために次世代シークエンシングを使用する。標的遺伝子は、ILLUMINA HISEQ
TM装置で捕獲され、シークエンシングされる。MSK-IMPACT
TMアッセイは、固形悪性新生物における体細胞変異およびマイクロサテライト不安定性の検出について、USFDAにより承認されている。MSK-IMPACT
TMアッセイにより分析される468遺伝子の完全リストを表14に示す。accessdata.fda.govで入手可能なEvaluation of Automatic Class III Designation for MSK-IMPACT (Integrated Mutation Profiling of Actionable Cancer Targets): Decision Summary, United States Food and Drug Administration, November 15, 2017参照。
【表14-1】
【表14-2】
【0182】
NEOGENOMICS(登録商標)NEOTYPETMアッセイ
ある実施態様において、TMBを、NEOGENOMICS(登録商標)NEOTYPETMアッセイを使用して決定する。ある実施態様において、TMBを、NEOTYPETM Discoveryプロファイルを使用して決定する。ある実施態様において、TMBをNEOTYPE固形腫瘍プロファイルを使用して決定する。NEOGENOMICSアッセイは、シークエンシングしたDNAのメガ塩基対あたりの非同義DNAコード配列変化数を測定する。
【0183】
ONCOMINETM腫瘍変異負荷アッセイ
ある実施態様において、TMBをTHERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)ONCOMINETM腫瘍変異アッセイを使用して決定する。ある実施態様において、TMBをTHERMOFISHER SCIENTIFIC(登録商標)ION TORRENTTM ONCOMINETM腫瘍変異アッセイを使用して決定する。ION TORRENTTM ONCOMINETM腫瘍変異アッセイは、腫瘍変異負荷を決定するために体細胞変異を定量する標的NGSアッセイである。アッセイは、1.7MbのDNAをカバーする。
【0184】
NOVOGENETM NOVOPMTMアッセイ
ある実施態様において、TMBをNOVOGENETM NOVOPMTMアッセイを使用して決定する。ある実施態様において、TMBを、NOVOGENETM NOVOPMTM癌パネルアッセイを使用して決定する。NOVOGENETM NOVOPMTM癌パネルアッセイは、約1.5MbのDNAを表す548遺伝子の完全コード領域および21遺伝子のイントロンを分析し、全米総合癌センターネットワーク(NCCN)ガイドラインおよび医学文献によると固形腫瘍の診断および/または処置に関係する、包括的NGS癌パネルである。アッセイは、SNV、InDel、融合およびコピー数変動(CNV)ゲノム異常を検出する。
【0185】
他のTMBアッセイ
ある実施態様において、TMBを、CARIS(登録商標)Life Sciencesにより提供されるTMBアッセイを使用して決定する。ある実施態様において、TMBを、PESONALIS(登録商標)ACE ImmunoIDアッセイを使用して決定する。ある実施態様において、TMBをPGDX(登録商標)CANCERXOMETM-Rアッセイを使用して決定する。
【0186】
さらに他の特定の実施態様において、ゲノムプロファイリングは全変異型、すなわち、単一ヌクレオチドバリアント、挿入/欠失(インデル)、コピー数変動および再配列、例えば、転座、発現および後成的マーカーを検出する。
【0187】
包括的遺伝子パネルは、しばしば、分析する腫瘍のタイプに基づき選択された予め決定された遺伝子を含む。従って、TMB状態の測定に使用されるゲノムプロファイルは、対象が有する腫瘍のタイプに基づき選択され得る。ある実施態様において、ゲノムプロファイルは、固形腫瘍に特定の一連の遺伝子を含み得る。他の実施態様において、ゲノムプロファイルは、血液系腫瘍および肉腫に特定の一連の遺伝子を含み得る。
【0188】
ある実施態様において、ゲノムプロファイルは、ABL1、BRAF、CHEK1、FANCC、GATA3、JAK2、MITF、PDCD1LG2、RBM10、STAT4、ABL2、BRCA1、CHEK2、FANCD2、GATA4、JAK3、MLH1、PDGFRA、RET、STK11、ACVR1B、BRCA2、CIC、FANCE、GATA6、JUN、MPL、PDGFRB、RICTOR、SUFU、AKT1、BRD4、CREBBP、FANCF、GID4(C17orf39)、KAT6A(MYST3)、MRE11A、PDK1、RNF43、SYK、AKT2、BRIP1、CRKL、FANCG、GLI1、KDM5A、MSH2、PIK3C2B、ROS1、TAF1、AKT3、BTG1、CRLF2、FANCL、GNA11、KDM5C、MSH6、PIK3CA、RPTOR、TBX3、ALK、BTK、CSF1R、FAS、GNA13、KDM6A、MTOR、PIK3CB、RUNX1、TERC、AMER1(FAM123B)、C11orf30(EMSY)、CTCF、FAT1、GNAQ、KDR、MUTYH、PIK3CG、RUNX1T1、TERT(プロモーターのみ)、APC、CARD11、CTNNA1、FBXW7、GNAS、KEAP1、MYC、PIK3R1、SDHA、TET2、AR、CBFB、CTNNB1、FGF10、GPR124、KEL、MYCL(MYCL1)、PIK3R2、SDHB、TGFBR2、ARAF、CBL、CUL3、FGF14、GRIN2A、KIT、MYCN、PLCG2、SDHC、TNFAIP3、ARFRP1、CCND1、CYLD、FGF19、GRM3、KLHL6、MYD88、PMS2、SDHD、TNFRSF14、ARID1A、CCND2、DAXX、FGF23、GSK3B、KMT2A(MLL)、NF1、POLD1、SETD2、TOP1、ARID1B、CCND3、DDR2、FGF3、H3F3A、KMT2C(MLL3)、NF2、POLE、SF3B1、TOP2A、ARID2、CCNE1、DICER1、FGF4、HGF、KMT2D(MLL2)、NFE2L2、PPP2R1A、SLIT2、TP53、ASXL1、CD274、DNMT3A、FGF6、HNF1A、KRAS、NFKBIA、PRDM1、SMAD2、TSC1、ATM、CD79A、DOT1L、FGFR1、HRAS、LMO1、NKX2-1、PREX2、SMAD3、TSC2、ATR、CD79B、EGFR、FGFR2、HSD3B1、LRP1B、NOTCH1、PRKAR1A、SMAD4、TSHR、ATRX、CDC73、EP300、FGFR3、HSP90AA1、LYN、NOTCH2、PRKCI、SMARCA4、U2AF1、AURKA、CDH1、EPHA3、FGFR4、IDH1、LZTR1、NOTCH3、PRKDC、SMARCB1、VEGFA、AURKB、CDK12、EPHA5、FH、IDH2、MAGI2、NPM1、PRSS8、SMO、VHL、AXIN1、CDK4、EPHA7、FLCN、IGF1R、MAP2K1、NRAS、PTCH1、SNCAIP、WISP3、AXL、CDK6、EPHB1、FLT1、IGF2、MAP2K2、NSD1、PTEN、SOCS1、WT1、BAP1、CDK8、ERBB2、FLT3、IKBKE、MAP2K4、NTRK1、PTPN11、SOX10、XPO1、BARD1、CDKN1A、ERBB3、FLT4、IKZF1、MAP3K1、NTRK2、QKI、SOX2、ZBTB2、BCL2、CDKN1B、ERBB4、FOXL2、IL7R、MCL1、NTRK3、RAC1、SOX9、ZNF217、BCL2L1、CDKN2A、ERG、FOXP1、INHBA、MDM2、NUP93、RAD50、SPEN、ZNF703、BCL2L2、CDKN2B、ERRFI1、FRS2、INPP4B、MDM4、PAK3、RAD51、SPOP、BCL6、CDKN2C、ESR1、FUBP1、IRF2、MED12、PALB2、RAF1、SPTA1、BCOR、CEBPA、EZH2、GABRA6、IRF4、MEF2B、PARK2、RANBP2、SRC、BCORL1、CHD2、FAM46C、GATA1、IRS2、MEN1、PAX5、RARA、STAG2、BLM、CHD4、FANCA、GATA2、JAK1、MET、PBRM1、RB1、STAT3および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の遺伝子を含む。他の実施態様において、TMB分析は、さらにETV4、TMPRSS2、ETV5、BCR、ETV1、ETV6およびMYBの1以上におけるゲノム変化の同定を含む。
【0189】
他の実施態様において、ゲノムプロファイルは、ABL1、12B、ABL2、ACTB、ACVR1、ACVR1B、AGO2、AKT1、AKT2、AKT3、ALK、ALOX、ALOX12B、AMER1、AMER1(FAM123BまたはWTX)、AMER1(FAM123B)、ANKRD11、APC、APH1A、AR、ARAF、ARFRP1、ARHGAP26(GRAF)、ARID1A、ARID1B、ARID2、ARID5B、ARv7、ASMTL、ASXL1、ASXL2、ATM、ATR、ATRX、AURKA、AURKB、AXIN1、AXIN2、AXL、B2M、BABAM1、BAP1、BARD1、BBC3、BCL10、BCL11B、BCL2、BCL2L1、BCL2L11、BCL2L2、BCL6、BCL7A、BCOR、BCORL1、BIRC3、BLM、BMPR1A、BRAF、BRCA1、BRCA2、BRD4、BRIP1、BRIP1(BACH1)、BRSK1、BTG1、BTG2、BTK、BTLA、C11orf30(EMSY)、C11orf30、C11orf30(EMSY)、CAD、CALR、CARD11、CARM1、CASP8、CBFB、CBL、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CCT6B、CD22、CD274、CD274(PD-L1)、CD276、CD36、CD58、CD70、CD79A、CD79B、CDC42、CDC73、CDH1、CDK12、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2Ap14ARF、CDKN2Ap16INK4A、CDKN2B、CDKN2C、CEBPA、CENPA、CHD2、CHD4、CHEK1、CHEK2、CIC、CIITA、CKS1B、CPS1、CREBBP、CRKL、CRLF2、CSDE1、CSF1R、CSF3R、CTCF、CTLA-4、CTNN B1、CTNNA1、CTNNB1、CUL3、CUL4A、CUX1、CXCR4、CYLD、CYP17A1、CYSLTR2、DAXX、DCUN1D1、DDR1、DDR2、DDX3X、DH2、DICER1、DIS3、DNAJB1、DNM2、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DOT1L、DROSHA、DTX1、DUSP2、DUSP4、DUSP9、E2F3、EBF1、ECT2L、EED、EGFL7、EGFR、EIF1AX、EIF4A2、EIF4E、ELF3、ELP2、EML4、EML4-ALK、EP300、EPAS1、EPCAM、EPHA3、EPHA5、EPHA7、EPHB1、EPHB4、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERF、ERG、ERRFI1、ERRFl1、ESR1、ETS1、ETV1、ETV4、ETV5、ETV6、EWSR1、EXOSC6、EZH1、EZH2、FAF1、FAM175A、FAM46C、FAM58A、FANCA、FANCC、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCL、FAS、FAS(TNFRSF6)、FAT1、FBXO11、FBXO31、FBXW7、FGF1、FGF10、FGF12、FGF14、FGF19、FGF2、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FH、FHIT、FLCN、FLI1、FLT1、FLT3、FLT4、FLYWCH1、FOXA1、FOXL2、FOXO1、FOXO3、FOXP1、FRS2、FUBP1、FYN、GABRA6、GADD45B、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、GEN1、GID4(C17orf 39)、GID4(C17orf39)、GLI1、GLl1、GNA11、GNA12、GNA13、GNAQ、GNAS、GPR124、GPS2、GREM1、GRIN2A、GRM3、GSK3B、GTSE1、H3F3A、H3F3B、H3F3C、HDAC1、HDAC4、HDAC7、ヘッジホッグ、HER-2/NEU;ERBB2、HGF、HIST1H1C、HIST1H1D、HIST1H1E、HIST1H2AC、HIST1H2AG、HIST1H2AL、HIST1H2AM、HIST1H2BC、HIST1H2BD、HIST1H2BJ、HIST1H2BK、HIST1H2BO、HIST1H3A、HIST1H3B、HIST1H3C、HIST1H3D、HIST1H3E、HIST1H3F、HIST1H3G、HIST1H3H、HIST1H3I、HIST1H3J、HIST2H3C、HIST2H3D、HIST3H3、HLA-A、HLA-B、HNF1A、HOXB13、HRAS、HSD3B1、HSP90AA1、ICK、ICOSLG、ID3、IDH1、IDH2、IFNGR1、IGF1、IGF1R、IGF2、IKBKE、IKZF1、IKZF2、IKZF3、IL10、IL7R、INHA、INHBA、INPP4A、INPP4B、INPP5D(SHIP)、INPPL1、INSR、IRF1、IRF2、IRF4、IRF8、IRS1、IRS2、JAK1、JAK2、JAK3、JARID2、JUN、K14、KAT6A(MYST 3)、KAT6A(MYST3)、KDM2B、KDM4C、KDM5A、KDM5C、KDM6A、KDR、KEAP1、KEL、KIF5B、KIT、KLF4、KLHL6、KMT2A、KMT2A(MLL)、KMT2B、KMT2C、KMT2C(MLL3)、KMT2D、KMT2D(MLL2)、KNSTRN、KRAS、LAMP1、LATS1、LATS2、LEF1、LMO1、LRP1B、LRRK2、LTK、LYN、LZTR1、MAF、MAFB、MAGED1、MAGI2、MALT1、MAP2K1、MAP2K1(MEK1)、MAP2K2、MAP2K2(MEK2)、MAP2K4、MAP3、MAP3K1、MAP3K13、MAP3K14、MAP3K6、MAP3K7、MAPK1、MAPK3、MAPKAP1、MAX、MCL1、MDC1、MDM2、MDM4、MED12、MEF2B、MEF2C、MEK1、MEN1、MERTK、MET、MGA、MIB1、MITF、MKI67、MKNK1、MLH1、MLLT3、MPL、MRE 11A、MRE11A、MSH2、MSH3、MSH6、MSI1、MSI2、MST1、MST1R、MTAP、MTOR、MUTYH、MYC、MYCL、MYCL(MYC L1)、MYCL(MYCL1)、MYCL1、MYCN、MYD88、MYO18A、MYOD1、NBN、NCOA3、NCOR1、NCOR2、NCSTN、NEGR1、NF1、NF2、NFE2L2、NFKBIA、NKX2-1、NKX3-1、NOD1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、NPM1、NRAS、NRG1、NSD1、NT5C2、NTHL1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NUF2、NUP93、NUP98、P2RY8、PAG1、PAK1、PAK3、PAK7、PALB2、PARK2、PARP1、PARP2、PARP3、PASK、PAX3、PAX5、PAX7、PBRM1、PC、PCBP1、PCLO、PDCD1、PDCD1(PD-1)、PDCD11、PDCD1LG2、PDCD1LG2(PD-L2)、PDGFRA、PDGFRB、PDK1、PDPK1、PGR、PHF6、PHOX2B、PIK3C2B、PIK3C2G、PIK3C3、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CD、PIK3CG、PIK3R1、PIK3R2、PIK3R3、PIM1、PLCG2、PLK2、PMAIP1、PMS1、PMS2、PNRC1、POLD1、POLE、POT1、PPARG、PPM1D、PPP2、PPP2R1A、PPP2R2A、PPP4R2、PPP6C、PRDM1、PRDM14、PREX2、PRKAR1A、PRKCI、PRKD1、PRKDC、PRSS8、PTCH1、PTEN、PTP4A1、PTPN11、PTPN2、PTPN6(SHP-1)、PTPRD、PTPRO、PTPRS、PTPRT、QKI、R1A、RAB35、RAC1、RAC2、RAD21、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD52、RAD54L、RAF1、RANBP2、RARA、RASA1、RASGEF1A、RB1、RBM10、RECQL、RECQL4、REL、RELN、RET、RFWD2、RHEB、RHOA、RICTOR、RIT1、RNF43、ROS1、RPS6KA4、RPS6KB1、RPS6KB2、RPTOR、RRAGC、RRAS、RRAS2、RTEL1、RUNX1、RUNX1T1、RXRA、RYBP、S1PR2、SDHA、SDHAF2、SDHB、SDHC、SDHD、SERP2、SESN1、SESN2、SESN3、SETBP1、SETD2、SETD8、SF3B1、SGK1、SH2B3、SH2D1A、SHOC2、SHQ1、SLIT2、SLX4、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMARCA1、SMARCA4、SMARCB1、SMARCD1、SMC1A、SMC3、SMO、SMYD3、SNCAIP、SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOS1、SOX10、SOX17、SOX2、SOX9、SPEN、SPOP、SPRED1、SPTA1、SRC、SRSF2、STAG2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、STK11、STK19、STK40、SUFU、SUZ12、SYK、TAF1、TAP1、TAP2、TBL1XR1、TBX3、TCEB1、TCF3、TCF3(E2A)、TCF7L2、TCL1A(TCL1)、TEK、TERC、TERT、TERTプロモーター、TET1、TET2、TFRC、TGFBR1、TGFBR2、TIPARP、TLL2、TMEM127、TMEM30A、TMPRSS2、TMSB4XP8(TMSL3)、TNFAIP3、TNFRSF11A、TNFRSF14、TNFRSF17、TOP1、TOP2A、TP53、TP53BP1、TP63、TRAF2、TRAF3、TRAF5、TRAF7、TSC1、TSC2、TSHR、TUSC3、TYK2、TYRO3、U2AF1、U2AF2、UPF1、VEGFA、VHL、VTCN1、WDR90、WHSC1、WHSC1(MMSETまたはNSD2)、WHSC1L1、WISP3、WT1、WWTR1、XBP1、XIAP、XPO1、XRCC2、YAP1、YES1、YY1AP1、ZBTB2、ZFHX3、ZMYM3、ZNF217、ZNF24(ZSCAN3)、ZNF703、ZRSR2および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の遺伝子を含む。
【0190】
他の実施態様において、ゲノムプロファイリングアッセイは、ABL1、12B、ABL2、ACTB、ACVR1、ACVR1B、AGO2、AKT1、AKT2、AKT3、ALK、ALOX、ALOX12B、AMER1、AMER1(FAM123BまたはWTX)、AMER1(FAM123B)、ANKRD11、APC、APH1A、AR、ARAF、ARFRP1、ARHGAP26(GRAF)、ARID1A、ARID1B、ARID2、ARID5B、ARv7、ASMTL、ASXL1、ASXL2、ATM、ATR、ATRX、AURKA、AURKB、AXIN1、AXIN2、AXL、B2M、BABAM1、BAP1、BARD1、BBC3、BCL10、BCL11B、BCL2、BCL2L1、BCL2L11、BCL2L2、BCL6、BCL7A、BCOR、BCORL1、BIRC3、BLM、BMPR1A、BRAF、BRCA1、BRCA2、BRD4、BRIP1、BRIP1(BACH1)、BRSK1、BTG1、BTG2、BTK、BTLA、C11orf30(EMSY)、C11orf30、C11orf30(EMSY)、CAD、CALR、CARD11、CARM1、CASP8、CBFB、CBL、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CCT6B、CD22、CD274、CD274(PD-L1)、CD276、CD36、CD58、CD70、CD79A、CD79B、CDC42、CDC73、CDH1、CDK12、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2Ap14ARF、CDKN2Ap16INK4A、CDKN2B、CDKN2C、CEBPA、CENPA、CHD2、CHD4、CHEK1、CHEK2、CIC、CIITA、CKS1B、CPS1、CREBBP、CRKL、CRLF2、CSDE1、CSF1R、CSF3R、CTCF、CTLA-4、CTNN B1、CTNNA1、CTNNB1、CUL3、CUL4A、CUX1、CXCR4、CYLD、CYP17A1、CYSLTR2、DAXX、DCUN1D1、DDR1、DDR2、DDX3X、DH2、DICER1、DIS3、DNAJB1、DNM2、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DOT1L、DROSHA、DTX1、DUSP2、DUSP4、DUSP9、E2F3、EBF1、ECT2L、EED、EGFL7、EGFR、EIF1AX、EIF4A2、EIF4E、ELF3、ELP2、EML4、EML4-ALK、EP300、EPAS1、EPCAM、EPHA3、EPHA5、EPHA7、EPHB1、EPHB4、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERF、ERG、ERRFI1、ERRFl1、ESR1、ETS1、ETV1、ETV4、ETV5、ETV6、EWSR1、EXOSC6、EZH1、EZH2、FAF1、FAM175A、FAM46C、FAM58A、FANCA、FANCC、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FANCI、FANCL、FAS、FAS(TNFRSF6)、FAT1、FBXO11、FBXO31、FBXW7、FGF1、FGF10、FGF12、FGF14、FGF19、FGF2、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FH、FHIT、FLCN、FLI1、FLT1、FLT3、FLT4、FLYWCH1、FOXA1、FOXL2、FOXO1、FOXO3、FOXP1、FRS2、FUBP1、FYN、GABRA6、GADD45B、GATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA6、GEN1、GID4(C17orf 39)、GID4(C17orf39)、GLI1、GLl1、GNA11、GNA12、GNA13、GNAQ、GNAS、GPR124、GPS2、GREM1、GRIN2A、GRM3、GSK3B、GTSE1、H3F3A、H3F3B、H3F3C、HDAC1、HDAC4、HDAC7、ヘッジホッグ、HER-2/NEU;ERBB2、HGF、HIST1H1C、HIST1H1D、HIST1H1E、HIST1H2AC、HIST1H2AG、HIST1H2AL、HIST1H2AM、HIST1H2BC、HIST1H2BD、HIST1H2BJ、HIST1H2BK、HIST1H2BO、HIST1H3A、HIST1H3B、HIST1H3C、HIST1H3D、HIST1H3E、HIST1H3F、HIST1H3G、HIST1H3H、HIST1H3I、HIST1H3J、HIST2H3C、HIST2H3D、HIST3H3、HLA-A、HLA-B、HNF1A、HOXB13、HRAS、HSD3B1、HSP90AA1、ICK、ICOSLG、ID3、IDH1、IDH2、IFNGR1、IGF1、IGF1R、IGF2、IKBKE、IKZF1、IKZF2、IKZF3、IL10、IL7R、INHA、INHBA、INPP4A、INPP4B、INPP5D(SHIP)、INPPL1、INSR、IRF1、IRF2、IRF4、IRF8、IRS1、IRS2、JAK1、JAK2、JAK3、JARID2、JUN、K14、KAT6A(MYST 3)、KAT6A(MYST3)、KDM2B、KDM4C、KDM5A、KDM5C、KDM6A、KDR、KEAP1、KEL、KIF5B、KIT、KLF4、KLHL6、KMT2A、KMT2A(MLL)、KMT2B、KMT2C、KMT2C(MLL3)、KMT2D、KMT2D(MLL2)、KNSTRN、KRAS、LAMP1、LATS1、LATS2、LEF1、LMO1、LRP1B、LRRK2、LTK、LYN、LZTR1、MAF、MAFB、MAGED1、MAGI2、MALT1、MAP2K1、MAP2K1(MEK1)、MAP2K2、MAP2K2(MEK2)、MAP2K4、MAP3、MAP3K1、MAP3K13、MAP3K14、MAP3K6、MAP3K7、MAPK1、MAPK3、MAPKAP1、MAX、MCL1、MDC1、MDM2、MDM4、MED12、MEF2B、MEF2C、MEK1、MEN1、MERTK、MET、MGA、MIB1、MITF、MKI67、MKNK1、MLH1、MLLT3、MPL、MRE 11A、MRE11A、MSH2、MSH3、MSH6、MSI1、MSI2、MST1、MST1R、MTAP、MTOR、MUTYH、MYC、MYCL、MYCL(MYC L1)、MYCL(MYCL1)、MYCL1、MYCN、MYD88、MYO18A、MYOD1、NBN、NCOA3、NCOR1、NCOR2、NCSTN、NEGR1、NF1、NF2、NFE2L2、NFKBIA、NKX2-1、NKX3-1、NOD1、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、NPM1、NRAS、NRG1、NSD1、NT5C2、NTHL1、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NUF2、NUP93、NUP98、P2RY8、PAG1、PAK1、PAK3、PAK7、PALB2、PARK2、PARP1、PARP2、PARP3、PASK、PAX3、PAX5、PAX7、PBRM1、PC、PCBP1、PCLO、PDCD1、PDCD1(PD-1)、PDCD11、PDCD1LG2、PDCD1LG2(PD-L2)、PDGFRA、PDGFRB、PDK1、PDPK1、PGR、PHF6、PHOX2B、PIK3C2B、PIK3C2G、PIK3C3、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CD、PIK3CG、PIK3R1、PIK3R2、PIK3R3、PIM1、PLCG2、PLK2、PMAIP1、PMS1、PMS2、PNRC1、POLD1、POLE、POT1、PPARG、PPM1D、PPP2、PPP2R1A、PPP2R2A、PPP4R2、PPP6C、PRDM1、PRDM14、PREX2、PRKAR1A、PRKCI、PRKD1、PRKDC、PRSS8、PTCH1、PTEN、PTP4A1、PTPN11、PTPN2、PTPN6(SHP-1)、PTPRD、PTPRO、PTPRS、PTPRT、QKI、R1A、RAB35、RAC1、RAC2、RAD21、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD52、RAD54L、RAF1、RANBP2、RARA、RASA1、RASGEF1A、RB1、RBM10、RECQL、RECQL4、REL、RELN、RET、RFWD2、RHEB、RHOA、RICTOR、RIT1、RNF43、ROS1、RPS6KA4、RPS6KB1、RPS6KB2、RPTOR、RRAGC、RRAS、RRAS2、RTEL1、RUNX1、RUNX1T1、RXRA、RYBP、S1PR2、SDHA、SDHAF2、SDHB、SDHC、SDHD、SERP2、SESN1、SESN2、SESN3、SETBP1、SETD2、SETD8、SF3B1、SGK1、SH2B3、SH2D1A、SHOC2、SHQ1、SLIT2、SLX4、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMARCA1、SMARCA4、SMARCB1、SMARCD1、SMC1A、SMC3、SMO、SMYD3、SNCAIP、SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOS1、SOX10、SOX17、SOX2、SOX9、SPEN、SPOP、SPRED1、SPTA1、SRC、SRSF2、STAG2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、STK11、STK19、STK40、SUFU、SUZ12、SYK、TAF1、TAP1、TAP2、TBL1XR1、TBX3、TCEB1、TCF3、TCF3(E2A)、TCF7L2、TCL1A(TCL1)、TEK、TERC、TERT、TERTプロモーター、TET1、TET2、TFRC、TGFBR1、TGFBR2、TIPARP、TLL2、TMEM127、TMEM30A、TMPRSS2、TMSB4XP8(TMSL3)、TNFAIP3、TNFRSF11A、TNFRSF14、TNFRSF17、TOP1、TOP2A、TP53、TP53BP1、TP63、TRAF2、TRAF3、TRAF5、TRAF7、TSC1、TSC2、TSHR、TUSC3、TYK2、TYRO3、U2AF1、U2AF2、UPF1、VEGFA、VHL、VTCN1、WDR90、WHSC1、WHSC1(MMSETまたはNSD2)、WHSC1L1、WISP3、WT1、WWTR1、XBP1、XIAP、XPO1、XRCC2、YAP1、YES1、YY1AP1、ZBTB2、ZFHX3、ZMYM3、ZNF217、ZNF24(ZSCAN3)、ZNF703、ZRSR2および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、少なくとも約200、少なくとも約210、少なくとも約220、少なくとも約230、少なくとも約240、少なくとも約250、少なくとも約260、少なくとも約270、少なくとも約280、少なくとも約290または少なくとも約300遺伝子を含む。
【0191】
他の実施態様において、ゲノムプロファイルは、表2~14に挙げた遺伝子から選択される、1以上の遺伝子を含む。
【0192】
ある実施態様において、ゲノムプロファイリングに基づくTMB状態は、全エクソームまたは全ゲノムシークエンシングに基づくTMB状態と高度に相関する。F1CDxアッセイなどのゲノムプロファイリングアッセイの使用は、全エクソームおよび/または全ゲノムシークエンシングアッセイと同等性を有することを示す証拠がある。これらのデータは、TMB状態の予後品質を失うことなく、TMB状態を測定するより効率的手段としてのゲノムプロファイリングアッセイの使用を支持する。
【0193】
TMBは、組織生検サンプル、あるいは、循環腫瘍DNA(ctDNA)、cfDNA(無細胞DNA)および/または液体生検サンプルを使用して測定され得る。ctDNAは、利用可能な方法、例えば、GRAIL, Inc.を使用して、全エクソームまたは全ゲノムシークエンシングまたはゲノムプロファイリングによりTMB状態の測定に使用され得る。
【0194】
SCLC由来腫瘍を有する対象は、TMB状態の測定および高TMBの同定に基づき、抗PD-1抗体単剤治療または抗PD-1/抗CTLA-4組み合わせ治療での治療に適するとして同定される。ある実施態様において、TMBスコアを、全エキソームシークエンシングまたは全ゲノムシークエンシングにより測定される、腫瘍における非同義ミスセンス変異の総数として計算する。ある実施態様において、高TMBは、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、少なくとも400、少なくとも405、少なくとも410、少なくとも415、少なくとも420、少なくとも425、少なくとも430、少なくとも435、少なくとも440、少なくとも445、少なくとも450、少なくとも455、少なくとも460、少なくとも465、少なくとも470、少なくとも475、少なくとも480、少なくとも485、少なくとも490、少なくとも495または少なくとも500のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも221、少なくとも222、少なくとも223、少なくとも224、少なくとも225、少なくとも226、少なくとも227、少なくとも228、少なくとも229、少なくとも230、少なくとも231、少なくとも232、少なくとも233、少なくとも234、少なくとも235、少なくとも236、少なくとも237、少なくとも238、少なくとも239、少なくとも240、少なくとも241、少なくとも242、少なくとも243、少なくとも244、少なくとも245、少なくとも246、少なくとも247、少なくとも248、少なくとも249または少なくとも250のスコアを有する。特定の実施態様において、高TMBは少なくとも243のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは少なくとも244のスコアを有する。ある実施態様において、高TMBは少なくとも245のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは少なくとも246のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは少なくとも247のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは少なくとも248のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは少なくとも249のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは少なくとも250のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは、200~300またはそれより高い任意の整数のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは、210~290またはそれより高い任意の整数のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは、220~280またはそれより高い任意の整数のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは、230~270またはそれより高い任意の整数のスコアを有する。他の実施態様において、高TMBは、235~265またはそれより高い任意の整数のスコアを有する。
【0195】
あるいは、高TMBは、絶対値ではなく相対値であり得る。ある実施態様において、対象のTMB状態は対照TMB値と比較される。ある実施態様において、対象のTMB状態は対照TMB値の最高分位点内である。他の実施態様において、対象のTMB状態は対照TMB値の最高三分位内である。
【0196】
ある実施態様において、TMB状態は、サンプル、細胞、エクソームまたはDNA長(例えば、Mb)あたりの変異数として表される。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約50変異/腫瘍、少なくとも約55変異/腫瘍、少なくとも約60変異/腫瘍、少なくとも約65変異/腫瘍、少なくとも約70変異/腫瘍、少なくとも約75変異/腫瘍、少なくとも約80変異/腫瘍、少なくとも約85変異/腫瘍、少なくとも約90変異/腫瘍、少なくとも約95変異/腫瘍、少なくとも約100変異/腫瘍、少なくとも約105変異/腫瘍、少なくとも約110変異/腫瘍、少なくとも約115変異/腫瘍または少なくとも約120変異/腫瘍を有するならば、その腫瘍は高TMB状態である。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約125変異/腫瘍、少なくとも約150変異/腫瘍、少なくとも約175変異/腫瘍、少なくとも約200変異/腫瘍、少なくとも約225変異/腫瘍、少なくとも約250変異/腫瘍、少なくとも約275変異/腫瘍、少なくとも約300変異/腫瘍、少なくとも約350変異/腫瘍、少なくとも約400変異/腫瘍または少なくとも約500変異/腫瘍を有するならば、その腫瘍は高TMB状態である。ある特定の実施態様において、腫瘍が少なくとも約100変異/腫瘍を有するならば、その腫瘍は高TMB状態である。
【0197】
ある実施態様において、腫瘍が遺伝子、例えば、TMBアッセイによりシークエンシングしたゲノム、例えば、FOUNDATIONONE(登録商標)CDXTMアッセイによりシークエンシングしたゲノムのメガ塩基対あたり少なくとも約5変異(変異/Mb)、少なくとも約6変異/Mb、少なくとも約7変異/Mb、少なくとも約8変異/Mb、少なくとも約9変異/Mb、少なくとも約10変異/Mb、少なくとも約11変異/Mb、少なくとも約12変異/Mb、少なくとも約13変異/Mb、少なくとも約14変異/Mb、少なくとも約15変異/Mb、少なくとも約20変異/Mb、少なくとも約25変異/Mb、少なくとも約30変異/Mb、少なくとも約35変異/Mb、少なくとも約40変異/Mb、少なくとも約45変異/Mb、少なくとも約50変異/Mb、少なくとも約75変異/Mbまたは少なくとも約100変異/Mb有するならば、その腫瘍は高TMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約5変異/Mbを有するならば、その腫瘍は高TMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約10変異/Mbを有するならば、その腫瘍は高TMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約11変異/Mbを有するならば、その腫瘍は高TMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約12変異/Mbを有するならば、その腫瘍は高TMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約13変異/Mbを有するならば、その腫瘍は高TMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約14変異/Mbを有するならば、その腫瘍は高TMB状態を有する。ある実施態様において、腫瘍が少なくとも約15変異/Mbを有するならば、その腫瘍は高TMB状態を有する。
【0198】
変異が腫瘍タイプおよび他の点で異なり得るため(Q4およびQ5参照)、「TMB高」および「TMB低」に関連する値は、腫瘍タイプで異なり得る。
【0199】
PD-L1状態
TMB状態は、治療、特に、抗PD-1抗体または抗CTLA-4抗体などの癌免疫治療剤での処置に対する腫瘍の応答の予測手段として、単独でまたは他の因子と組み合わせて、使用され得る。ある実施態様において、腫瘍のTMB状態のみを、抗PD-1抗体単剤治療または抗PD-1/抗CTLA-4抗体組み合わせ治療での治療に応答する可能性の高い腫瘍を有する患者の同定に使用する。他の実施態様において、PD-L1状態およびTMB状態を、抗PD-1抗体単剤治療または抗PD-1/抗CTLA-4抗体組み合わせ治療での治療に応答する可能性の高い腫瘍を有する患者の同定に使用する。
【0200】
対象における腫瘍のPD-L1状態を、ここに開示する何らかの組成物の投与または何らかの方法の使用前に測定し得る。PD-L1発現は、当分野で知られる任意の方法により決定され得る。
【0201】
PD-L1発現を評価するために、ある実施態様において、試験組織サンプルを、治療を必要とする患者から得てよい。他の実施態様において、PD-L1発現の評価を、試験組織サンプルを得ることなく達成し得る。ある実施態様において、適当な患者の選択は、(i)所望により組織の癌を有する患者から得た、腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤性炎症性細胞を含む試験組織サンプルを準備し;そして(ii)試験組織サンプル中の細胞表面にPD-L1を発現する細胞の割合が予め決定された閾値レベルより高いとの評価に基づき、試験組織サンプル中の細胞表面にPD-L1を発現する細胞の割合を評価することを含む。
【0202】
しかしながら、試験組織サンプル中のPD-L1発現の測定を含む方法の何れにおいても、患者から得た試験組織サンプルの準備を含む工程は、任意工程であることは理解されるべきである。また、ある実施態様において、試験組織サンプル中の細胞表面にPD-L1を発現する細胞の数または割合を同定または決定する「測定」または「評価」工程を、PD-L1発現をアッセイする斬新な方法、例えば逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイまたはIHCアッセイの実施により、実施する。ある他の実施態様において、斬新な工程は含まれず、PD-L1発現は、例えば、臨床検査結果報告の審査により評価される。ある実施態様において、PD-L1発現の評価までのおよびそれを含む工程までの方法は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体治療の適当な候補の選択に使用するために医師または他の医療従事者に提供され得る中間結果を提供する。ある実施態様において、中間結果を提供する工程は、医師または医師の指示の下に作用する者により行われる。他の実施態様において、これらの工程は、独立した研究所または検査技師などの独立した人物により実施される。
【0203】
本方法の何れかのある実施態様において、PD-L1を発現する細胞の割合を、PD-L1 RNAの存在を決定するアッセイの実施により行う。さらなる実施態様において、PD-L1 RNAの存在を、RT-PCR、インサイチュハイブリダイゼーションまたはRNase保護により決定する。他の実施態様において、PD-L1を発現する細胞の割合を、PD-L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイの実施により行う。さらなる実施態様において、PD-L1ポリペプチドの存在を、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、インビボ造影またはフローサイトメトリーにより決定する。ある実施態様において、PD-L1発現をIHCによりアッセイする。これらの方法全ての他の実施態様において、PD-L1の細胞表面発現を、例えば、IHCまたはインビボ造影を使用してアッセイする。
【0204】
造影技法は、癌研究および処置に重要なツールを提供している。陽電子放出断層撮影(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、蛍光反射率造影(FRI)、蛍光介在断層撮影(FMT)、生物発光造影(BLI)、共焦点レーザー走査型顕微鏡(LSCM)および多光子顕微鏡(MPM)を含む分子造影系の最近の発展は、癌研究におけるこれらの技法のより大きな使用の布告である可能性がある。これらの分子造影系のいくつかにより、医師が体のどこに腫瘍が位置しているかを見るだけでなく、腫瘍行動および/または治療薬に対する応答性に影響する特異的分子、細胞および生物学的過程の発現および活性を可視化するこも可能とする(Condeelis and Weissleder, "In vivo imaging in cancer," Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 2(12):a003848 (2010))。PETの感受性および解像度と結びついた抗体特異性は、組織サンプルにおける抗原発現のモニタリングおよびアッセイのためのimmunoPET造影を特に魅力的とする(McCabe and Wu, "Positive progress in immunoPET-not just a coincidence," Cancer Biother. Radiopharm. 25(3):253-61 (2010); Olafsen et al., "ImmunoPET imaging of B-cell lymphoma using 124I-anti-CD20 scFv dimers (diabodies)," Protein Eng. Des. Sel. 23(4):243-9 (2010))。本方法の何れかのある実施態様において、PD-L1発現はimmunoPET造影によりアッセイされる。本方法の何れかのある実施態様において、試験組織サンプル中のPD-L1を発現する細胞の割合は、試験組織サンプル中の細胞の表面でのPD-L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイの実施により評価する。ある実施態様において、試験組織サンプルはFFPE組織サンプルである。他の実施態様において、PD-L1ポリペプチドの存在はIHCアッセイにより決定される。さらなる実施態様において、IHCアッセイは自動処理を使用して実施する。ある実施態様において、IHCアッセイをPD-L1ポリペプチドに結合する抗PD-L1モノクローナル抗体を使用して実施する。ある実施態様において、抗PD-L1モノクローナル抗体は、28-8、28-1、28-12、29-8、5H1および任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される。全体を引用により本明細書に包含させる、WO/2013/173223参照。
【0205】
本方法のある実施態様において、自動化IHC方法を使用して、FFPE組織検体の細胞表面上のPD-L1発現をアッセイする。ヒトPD-L1抗原の存在は、試験サンプルおよび陰性対照サンプル(例えば、正常組織)とヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体を、該抗体またはその一部とヒトPD-L1が複合体を形成できる条件下接触させることにより、試験組織サンプルにおいて測定され得る。ある実施態様において、試験および対照組織サンプルはFFPEサンプルである。次いで、複合体の形成を検出し、ここで、試験サンプルと陰性対照サンプルの間の複合体形成の差異は、サンプル中のヒトPD-L1抗原の存在の指標である。種々の方法がPD-L1発現の定量に使用される。
【0206】
特定の実施態様において、自動化IHC方法は、(a)自動染色装置でマウントされた組織切片を脱パラフィンおよび再水和し;(b)デクローキングチャンバーおよびpH6緩衝液を使用して、110℃で10分間加熱して抗原を回収し;(c)自動染色装置に試薬を配置し;そして(d)組織検体中の内在性ペルオキシダーゼ中和し;スライドの非特異的タンパク質結合部位遮断;スライドと一次抗体のインキュベーション;一次後遮断試薬とのインキュベーション;NovoLinkポリマーとのインキュベーション;色素原基質添加および展開;およびヘマトキシリンで対比染色の工程を含むように、自動染色装置を稼働させることを含む。
【0207】
腫瘍組織サンプルにおけるPD-L1発現評価について、病理担当者は、顕微鏡の各視野内の膜PD-L1+腫瘍細胞数を試験し、陽性である細胞のパーセンテージを暗算で見積もり、次いでそれらを平均化して最終パーセンテージを導く。種々の染色強度は0/陰性、l+/弱、2+/中および3+/強として定義される。一般に、パーセンテージ値をまず0バケットと3+バケットに割り当て、次いで中間1+および2+強度強度が検討される。高度に不均質の組織について、検体をゾーンに分け、各ゾーンを別々に採点し、次いで一組のパーセンテージ値にまとめる。陰性細胞および種々の染色強度で陽性の細胞のパーセンテージを各領域から決定し、各ゾーンについて中央値を得る。最終パーセンテージ値を、陰性、1+、2+および3+の各染色強度カテゴリーの組織について得る。全染色強度の合計は100%でなければならない。ある実施態様において、PD-L1陽性であるために必要な細胞数の閾値は少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175または少なくとも約200細胞である。ある実施態様において、PD-L1陽性であるために必要な細胞数の閾値は少なくとも約100細胞である。
【0208】
染色をマクロファージおよびリンパ球などの腫瘍浸潤性炎症性細胞でも評価する。ほとんどの場合、マクロファージの大部分で染色が観察されるため、マクロファージは内部陽性対照として役立つ。3+強度で染色される必要はないが、マクロファージが染色されないことは、何らかの技術的失敗を除外するために考慮に入れるべきである。マクロファージおよびリンパ球は原形質膜染色について評価され、全サンプルを、各細胞カテゴリーについて陽性または陰性とのみ記録する。染色はまた外部/内部腫瘍免疫細胞指定によっても特徴づけられる。「内部」は、免疫細胞が腫瘍組織内および/または腫瘍細胞との間に物理的介在なく腫瘍領域境界上にあることを意味する。「外部」は、腫瘍との間に物理的関係がなく、免疫細胞は結合組織または何らかの関連隣接組織と関連した末梢に見られることを意味する。
【0209】
これらのスコアリング方法のある実施態様において、サンプルは、2人の独立して作業する病理担当者により採点され、続いてスコアは統合される。ある他の実施態様において、陽性および陰性細胞の同定を適切なソフトウエアを使用して採点する。
【0210】
ヒストスコアが、IHCデータのより定量的尺度として使用される。ヒストスコアは、次のとおり計算される。
ヒストスコア=[(%腫瘍×1(低強度))+(%腫瘍×2(中強度))+(%腫瘍×3(高強度)]
【0211】
ヒストスコアを決定するために、病理担当者は、検体内の各強度カテゴリーの染色細胞のパーセンテージを見積もる。大部分のバイオマーカーの発現が不均質であるため、ヒストスコアは、発現全体を真に表す。最終ヒストスコア範囲は0(発現無)~300(最大発現)である。
【0212】
試験組織サンプルIHCにおけるPD-L1発現を定量する別の手段は、腫瘍浸潤性炎症性細胞によるPD-L1発現パーセントを乗じた炎症の密度として定義されるスコアである、調整炎症スコア(AIS)である(Taube et al., "Colocalization of inflammatory response with B7-h1 expression in human melanocytic lesions supports an adaptive resistance mechanism of immune escape," Sci. Transl. Med. 4(127):127ra37 (2012))。
【0213】
ある実施態様において、腫瘍のPD-L1発現レベルは、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または約100%である。他の実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は少なくとも約1%である。他の実施態様において、対象のPD-L1状態は少なくとも約5%である。ある実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は少なくとも約10%である。ある実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は少なくとも約25%である。特定の実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は少なくとも約50%である。
【0214】
ここで使用する「PD-L1陽性」は、「少なくとも約1%のPD-L1発現」と相互交換可能に使用され得る。ある実施態様において、PD-L1陽性腫瘍は、故に、自動化IHCにより測定して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または約100%のPD-L1を発現する腫瘍細胞を有し得る。ある実施態様において、「PD-L1陽性」は、細胞表面にPD-L1を発現する少なくとも100細胞があることを意味する。
【0215】
ある実施態様において、PD-L1陽性高TMBを有する腫瘍は、高TMBのみ、PD-L1陽性発現のみまたは何れもない腫瘍より、抗PD-1抗体での治療に応答する大きな可能性を有する。ある実施態様において、腫瘍は少なくとも約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%または約50%PD-L1発現を有する。特定の実施態様において、≧50%PD-L1発現および高TMB状態の腫瘍は、高TMBのみ、≧50%PD-L1発現のみまたは何れもない腫瘍より、抗PD-1抗体での治療に応答する可能性が高い。
【0216】
ある実施態様において、本発明における免疫療法、例えば、抗PD-1抗体処置に適する対象における腫瘍はPD-L1を発現しない(1%未満、2%未満、3%未満、4%未満または5%未満の膜性PD-L1)。ある実施態様において、本発明の方法は、PD-L1発現と無関係である。
【0217】
MSI状態
TMB状態を、治療、特に、抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体などの癌免疫治療剤での処置に対する腫瘍の応答を予測する手段として、単独でまたは他の因子、例えば、MSI状態と組み合わせて使用できる。ある実施態様において、MSI状態はTMB状態の一部である。他の実施態様において、MSI状態はTMB状態と別に測定される。
【0218】
マイクロサテライト不安定性は、障害されたDNAミスマッチ修復(MMR)に起因する遺伝的高変異性の状態である。MSIの存在は、MMRが正常に機能していないとの表現型証拠を表す。ほとんどの場合、MSI腫瘍における不安定性の遺伝的基盤は、MSH2、MLH1、MSH6、PMS2およびPMS1の5つのヒトMMR遺伝子の何れか一つの遺伝性生殖系列変化である。ある実施態様において、腫瘍(例えば、結腸腫瘍)処置を受けている対象は、高度なマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有し、遺伝子MSH2、MLH1、MSH6、PMS2またはPMS1に少なくとも1変異有する。他の実施態様において、対照群内の腫瘍処置を受けている対象はマイクロサテライト不安定性を有さず(MSSまたはMSI安定)、遺伝子MSH2、MLH1、MSH6、PMS2およびPMS1に変異がない。
【0219】
ある実施態様において、免疫療法に適する対象は、高TMB状態およびMSI-H腫瘍を有する。ここで使用するMSI-H腫瘍は、少なくとも約30%より大きい不安定MSIバイオマーカーを有する腫瘍を意味する。ある実施態様において、腫瘍は結腸直腸癌由来である。ある実施態様において、腫瘍生殖系列変化が少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5MMR遺伝子で検出されるとき、MSI-Hの結腸直腸癌である。他の実施態様において、腫瘍は、生殖系列変化が5以上のMMR遺伝子の少なくとも30%で検出されるとき、MSI-Hの結腸直腸癌である。ある実施態様において、MMR遺伝子の生殖系列変化は、ポリメラーゼ連鎖反応により測定される。他の実施態様において、腫瘍DNA MMR遺伝子によりコードされる少なくとも一つのタンパク質が腫瘍で検出されないとき、MSI-Hの結腸直腸癌である。ある実施態様において、DNA MMR遺伝子によりコードされる少なくとも一つのタンパク質は免疫組織化学により検出される。
【0220】
本発明の処置方法
本発明のある態様は、高腫瘍変異負荷(TMB)状態を有するSCLC由来腫瘍を有する対象を処置する方法であって、該対象に抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を投与することを含む方法に関する。本発明の他の態様は、SCLC由来腫瘍を有する対象を処置する方法であって、該対象に治療有効量の抗PD-1抗体(または抗PD-L1抗体)およびCTLA-4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗CTLA-4抗体」)を投与することを含む方法に関し、ここで、腫瘍が高TMBであるTMB状態を有する。方法は、さらに対象から得た生体サンプルのTMB状態の測定を含み得る。さらに、本発明は、例えば、高TMBの測定に基づき、このような処置に適すると同定された対象への抗PD-1または抗PD-L1抗体の投与を考慮する。
【0221】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブと同じエピトープに結合する。特定の実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。他の特定の実施態様において、抗PD-1抗体はペムブロリズマブである。さらなる抗PD-1抗体は、本明細書の他の箇所に記載される。他の実施態様において、本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体は、本明細書の他の箇所に記載される。
【0222】
ある実施態様において、抗PD-1抗体(または抗PD-L1抗体)および/または抗CTLA-4抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。他の実施態様において、抗PD-1抗体(または抗PD-L1抗体)および抗CTLA-4抗体は、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。
【0223】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、2週、3週または4週毎に0.1mg/kg~10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、3週毎に5mg/kgまたは10mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、3週毎に5mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、2週毎に3mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、3週毎に2mg/kg体重の用量で投与される。
【0224】
ある実施態様において、抗PD-1抗体(または抗PD-L1抗体)および/または抗CTLA-4抗体は一定用量として投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体は、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mgまたは少なくとも約550mgの一定用量として投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体は約1週、2週、3週または4週毎に一定用量として投与される。
【0225】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、3週毎に1mg/kgの用量で投与され、抗CTLA-4抗体は、3週毎に3mg/kgの用量で投与される。他の実施態様において、1mg/kg用量の抗PD-1抗体および3mg/kg用量の抗CTLA-4抗体は、それぞれ1回で、それぞれ2回で、それぞれ3回で、それぞれ4回で、それぞれ5回で、それぞれ6回で、それぞれ7回で、それぞれ8回で、それぞれ9回でまたはそれぞれ10回で投与される。さらなる実施態様において、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせ治療の後に例えば、3mg/kgの用量で2週毎の抗PD-1抗体の単剤治療が続く。
【0226】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は治療量以下の用量で投与される。ある他の実施態様において、抗CTLA-4抗体は治療量以下の用量で投与される。さらなる実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体両者は各々治療量以下の用量で投与される。
【0227】
本発明は、対象に抗PD-1抗体を投与することを含む、SCLC由来腫瘍を有する対象を処置する方法を提供する。この発明は、さらに対象に(a)抗PD-1抗体;および(b)抗CTLA-4抗体の組み合わせを投与することを含む、SCLC由来腫瘍を有する対象を処置する方法を提供する。ある実施態様において、対象はヒト患者である。
【0228】
ある実施態様において、対象は化学療法未処置患者である(例えば、以前にどんな化学療法も受けていない患者)。他の実施態様において、対象は他の癌治療(例えば、化学療法)を受けているが、そのような他の癌治療に抵抗性または難治性である。ある特定の実施態様において、SCLCは再発SCLCである。ある実施態様において、対象は、腫瘍を処置するための少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種または少なくとも5種の先の治療経験がある。ある実施態様において、対象は腫瘍を処置するための1種の先の治療経験がある。他の実施態様において、対象は腫瘍を処置するための2種の先の治療経験がある。他の実施態様において、対象は腫瘍を処置するための3種の先の治療経験がある。他の実施態様において、対象は腫瘍を処置するための4種の先の治療経験がある。他の実施態様において、対象は腫瘍を処置するための5種の先の治療経験がある。他の実施態様において、対象は腫瘍を処置するための5種を超える先の治療経験がある。
【0229】
ある実施態様において、先の治療経験は化学療法を含む。ある実施態様において、化学療法は白金ベースの治療を含む。ある実施態様において、白金ベースの治療は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチンおよび任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される白金ベースの抗新生物を含む。ある特定の実施態様において、白金ベースの治療はシスプラチンを含む(例えば、エトポシドと組み合わせたシスプラチン)。ある実施態様において、対象は先の放射線療法を受けている。他の実施態様において、先の治療は抗体治療を含む。
【0230】
ある特異的実施態様において、対象は、EGFRまたはKRAS遺伝子の変異形を発現する癌細胞を有する。ある実施態様において、対象は、PD-L1陽性である癌細胞を有する。ある実施態様において、対象は、PD-L1陰性である癌細胞を有する。ある実施態様において、対象は喫煙したことがない。ある実施態様において、対象は以前喫煙していた。ある実施態様において、対象は現在喫煙している。ある実施態様において、SCLCは小細胞癌を含む。ある実施態様において、SCLCは混合型小細胞癌を含む。
【0231】
あるタイプの癌は、高頻度の変異を有し、故に、高TMBを有する(Alexandrov et al., Nature (2013) 500:415-421)。高TMBを有する癌の非限定的例は、黒色腫、肺、膀胱および消化器癌を含む。ある実施態様において、腫瘍は肺癌である。ある実施態様において、肺癌は小細胞肺癌(SCLC)である。ある実施態様において、NSCLCは扁平上皮組織学を有する。他の実施態様において、NSCLCは非扁平上皮組織学を有する。他の実施態様において、腫瘍は腎細胞癌、卵巣癌、結腸直腸癌、消化器癌、食道癌、膀胱癌、肺癌および黒色腫から選択される。ここに開示する方法は固形腫瘍ならびに血液癌を包含することは理解されるべきである。
【0232】
ここに開示する処置方法は、腫瘍を有する対象、特に、高TMBを有する腫瘍を有する対象の臨床的応答および/または臨床的利益を改善し得る。高TMBは、ネオ抗原負荷、すなわち、ネオ抗原数およびT細胞反応性、故に、免疫介在抗腫瘍応答と相関し得る。従って、高TMBは、例えば、現在の標準治療と比較して、抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体での治療から利益を得る可能性が高い腫瘍(およびこのような腫瘍を有する患者)を同定するために、単独でまたは他の因子と組み合わせて使用できる、因子である。
【0233】
ある実施態様において、対象は、投与後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無進行生存を示す。他の実施態様において、対象は、投与後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の全生存を示す。さらに他の実施態様において、対象は、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%の客観的応答率を示す。
【0234】
抗PD-1処置
本発明のある態様は、高腫瘍変異負荷(TMB)状態を有するSCLC由来腫瘍を有する対象を処置する方法であって、該対象に抗PD-1抗体(または抗PD-L1抗体)単独または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を含む免疫療法剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0235】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブと同じエピトープに結合する。他の実施態様において、本発明の方法に有用な抗PD-1抗体は、本明細書の他の箇所に記載される。他の実施態様において、抗PD-L1抗体を抗PD-1抗体の代わりに使用できる。抗PD-L1抗体の非限定的例は、本明細書の他の箇所に開示される。
【0236】
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはその抗原結合部分である。他の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、ヒトIgG1アイソタイプまたはヒトIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。
【0237】
本発明に有用な抗PD-1抗体
当分野で知られる抗PD-1抗体が、ここに記載される組成物および方法に使用され得る。高親和性でPD-1に特異的に結合する種々のヒトモノクローナル抗体は、米国8,008,449に開示される。米国8,008,449に開示される抗PD-1ヒト抗体は、次の特性の1以上を示すことが示されている:(a)Biacoreバイオセンサー系を使用する表面プラズモン共鳴により決定して、ヒトPD-1に1×10-7M以下のKDで結合する;(b)ヒトCD28、CTLA-4またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン-γ産生を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させる;(f)ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1に結合する;(g)PD-L1および/またはPD-L2のPD-1への結合を阻害する;(h)抗原特異的記憶応答を刺激する;(i)抗体応答を刺激する;および(j)インビボで腫瘍細胞増殖を阻害する。本発明において有用な抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合し、先の特性の少なくとも1つ、ある実施態様において、少なくとも5つを示すモノクローナル抗体である。
【0238】
他の抗PD-1モノクローナル抗体は、例えば、米国特許6,808,710、7,488,802、8,168,757および8,354,509、US公開2016/0272708およびPCT公開WO2012/145493、WO2008/156712、WO2015/112900、WO2012/145493、WO2015/112800、WO2014/206107、WO2015/35606、WO2015/085847、WO2014/179664、WO2017/020291、WO2017/020858、WO2016/197367、WO2017/024515、WO2017/025051、WO2017/123557、WO2016/106159、WO2014/194302、WO2017/040790、WO2017/133540、WO2017/132827、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/106061、WO2017/19846、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825およびWO2017/133540に記載され、この各々は、全体を引用により本明細書に包含させる。
【0239】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標)、5C4、BMS-936558、MDX-1106およびONO-4538としても知られる)、ペムブロリズマブ(Merck;キイトルーダ(登録商標)、ランブロリズマブおよびMK-3475としても知られる;WO2008/156712参照)、PDR001(Novartis;スパルタリズマブとしても知られる;WO2015/112900参照)、MEDI-0680(AstraZeneca;AMP-514としても知られる;WO2012/145493参照)、セミプリマブ(Regeneron;REGN-2810としても知られる;WO2015/112800参照)、JS001(TAIZHOU JUNSHI PHARMA;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)参照)、BGB-A317(チスレリズマブ;Beigene;WO2015/35606およびUS2015/0079109参照)、INCSHR1210(Jiangsu Hengrui Medicine;SHR-1210としても知られる;WO2015/085847;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)参照)、TSR-042(Tesaro Biopharmaceutical;ANB011としても知られる;WO2014/179664参照)、GLS-010(Wuxi/Harbin Gloria Pharmaceuticals;WBP3055としても知られる;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)参照)、AM-0001(Armo)、STI-1110(Sorrento Therapeutics;WO2014/194302参照)、AGEN2034(Agenus;WO2017/040790参照)、MGA012(Macrogenics、WO2017/19846参照)、IBI308(Innovent;WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825およびWO2017/133540参照)およびBCD-100(Biocad)からなる群から選択される。
【0240】
ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。ニボルマブは、選択的にPD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を阻止し、それにより抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国8,008,449;Wang et al., 2014 Cancer Immunol Res. 2(9):846-56)。
【0241】
他の実施態様において、抗PD-1抗体はペムブロリズマブである。ペムブロリズマブは、ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム細胞死-1または計画細胞死-1)に対するヒト化モノクローナルIgG4(S228P)抗体である。ペムブロリズマブは、例えば、米国特許8,354,509および8,900,587に記載される。
【0242】
開示する組成物および方法に有用な抗PD-1抗体はまた、ヒトPD-1に特異的に結合し、ここに開示する任意の抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブとヒトPD-1への結合について交差競合する単離抗体である(例えば、米国8,008,449および8,779,105;WO2013/173223参照)。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ここに記載する抗PD-1抗体の何れか、例えば、ニボルマブと同じエピトープに結合する。抗体が抗原への結合について交差競合する能力は、これらのモノクローナル抗体が該抗原の同じエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域への他の交差競合抗体の結合を立体的に妨害することを示す。これらの交差競合抗体は、PD-1の同じエピトープ領域への結合により、対照抗体、例えば、ニボルマブと極めて類似する機能的性質を有することが予測される。交差競合抗体は、Biacore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなどの標準PD-1結合アッセイにおいてニボルマブと交差競合する能力に基づき、容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223参照)。
【0243】
ある実施態様において、ヒトPD-1抗体、ニボルマブとヒトPD-1への結合について交差競合するまたは同じエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体、改変抗体またはヒト化またはヒト抗体である。このようなキメラ、改変、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により調製および単離され得る。
【0244】
本発明の組成物および方法において有用な抗PD-1抗体は上記抗体の抗原結合部分も含む。抗体の抗原結合機能が完全長抗体のフラグメントにより実施され得ることは十分に証明されている。
【0245】
開示する組成物および方法への使用に適する抗PD-1抗体は、PD-1と高特異性および親和性で結合し、PD-L1およびまたはPD-L2の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制性効果を阻害する抗体である。ここに開示する組成物または方法の何れにおいても、抗PD-1「抗体」は、PD-1受容体に結合し、リガンド結合阻害および免疫系上方制御について抗体全体と類似する機能的性質を示す、抗原結合部分またはフラグメントを含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。
【0246】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、2週、3週、4週、5週、6週、7週または8週毎に0.1mg/kg~20.0mg/kg体重、例えば、2週、3週または4週毎に0.1mg/kg~10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、2週毎に約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kgまたは10mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、3週毎に約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kgまたは10mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は約3週毎に約5mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブは約2週毎に約3mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブは約3週毎に約2mg/kg体重の用量で投与される。
【0247】
本発明に有用な抗PD-1抗体は、一定用量で投与され得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体は約100~約1000mg、約100mg~約900mg、約100mg~約800mg、約100mg~約700mg、約100mg~約600mg、約100mg~約500mg、約200mg~約1000mg、約200mg~約900mg、約200mg~約800mg、約200mg~約700mg、約200mg~約600mg、約200mg~約500mg、約200mg~約480mgまたは約240mg~約480mgの一定用量で投与され、ある実施態様において、抗PD-1抗体は約1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週または10週の投与間隔で少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、少なくとも約520mg、少なくとも約540mg、少なくとも約550mg、少なくとも約560mg、少なくとも約580mg、少なくとも約600mg、少なくとも約620mg、少なくとも約640mg、少なくとも約660mg、少なくとも約680mg、少なくとも約700mgまたは少なくとも約720mgの一定用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は約1週、2週、3週または4週の投与間隔で、約200mg~約800mg、約200mg~約700mg、約200mg~約600mg、約200mg~約500mgの一定用量で投与される。
【0248】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は約3週の1回の約200mgの一定用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は約2週の1回の約200mgの一定用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体は約2週の1回の約240mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は約4週の1回の約480mgの一定用量で投与される。
【0249】
本発明で有用な抗PD-L1抗体
抗PD-1および抗PD-L1が同じシグナル伝達経路を標的とし、臨床治験で腎細胞癌を含む多様な癌で類似レベルの効果を示すことが示されているため(Brahmer et al. (2012) N Engl J Med 366:2455-65; Topalian et al. (2012a) N Engl J Med 366:2443-54;WO2013/173223参照)、抗PD-L1抗体は、ここに開示する治療方法の何れにおいても抗PD-1抗体の代わりであり得る。従って、本発明のある態様は、
高TMB状態を有する腫瘍、例えば、SCLCを有する対象を処置する方法であって、該対象に抗PD-L1抗体単独(「単剤治療」)または抗CTLA-4抗体と組み合わせた抗PD-L1抗体を投与することを含む、方法に関する。当分野で知られる抗PD-L1抗体が本発明の組成物および方法において使用され得る。本発明の組成物および方法において有用な抗PD-L1抗体の例は、US特許9,580,507に開示の抗体を含む。米国9,580,507に開示の抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体は、次の特性の1以上を示すことが示されている:(a)Biacoreバイオセンサー系を使用する表面プラズモン共鳴により決定して、ヒトPD-L1に1×10-7M以下のKDで結合する;(b)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(c)MLRアッセイにおいてインターフェロン-γ産生を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させる;(e)抗体応答を刺激する;および(f)T細胞エフェクター細胞および/または樹状細胞に対するT制御細胞の影響を逆転させる。本発明において有用な抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合し、先の特性の少なくとも1つ、ある実施態様において、少なくとも5つを示すモノクローナル抗体を含む。
【0250】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(12A4、MDX-1105としても知られる;例えば、米国7,943,743およびWO2013/173223参照)、アテゾリズマブ(Roche;テセントリク(登録商標);MPDL3280A、RG7446としても知られる;US8,217,149参照;Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000もまた参照)、デュルバルマブ(AstraZeneca;イミフィンジTM、MEDI-4736としても知られる;WO2011/066389参照)、アベルマブ(Pfizer;バベンチオ(登録商標)、MSB-0010718Cとしても知られる;WO2013/079174参照)、STI-1014(Sorrento;WO2013/181634参照)、CX-072(Cytomx;WO2016/149201参照)、KN035(3D Med/Alphamab;Zhang et al., Cell Discov. 7:3 (March 2017)参照)、LY3300054(Eli Lilly Co.;例えば、WO2017/034916参照)およびCK-301(Checkpoint Therapeutics;Gorelik et al., AACR:Abstract 4606 (Apr 2016)参照)からなる群から選択される。
【0251】
ある実施態様において、PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(テセントリク(登録商標))である。アテゾリズマブは完全ヒト化IgG1モノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0252】
ある実施態様において、PD-L1抗体は、デュルバルマブ(イミフィンジTM)である。デュルバルマブは、ヒトIgG1カッパモノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0253】
ある実施態様において、PD-L1抗体は、アベルマブ(バベンチオ(登録商標))である。アベルマブはヒトIgG1ラムダモノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0254】
開示する組成物および方法において有用な抗PD-L1抗体はまた、ヒトPD-L1に特異的に結合し、ヒトPD-L1への結合について、ここに開示する任意の抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブと交差競合する、単離抗体も含む。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、ここに記載する任意の抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブと同じエピトープに結合する。抗体が抗原への結合について交差競合する能力は、これらの抗体が該抗原の同じエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域への他の交差競合抗体の結合を立体的に妨害することを示す。これらの交差競合抗体は、PD-L1の同じエピトープ領域への結合により、対照抗体、例えば、アテゾリズマブおよび/またはアベルマブと極めて類似する機能的性質を有することが予測される。交差競合抗体は、Biacore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなどの標準PD-L1結合アッセイにおいてアテゾリズマブおよび/またはアベルマブと交差競合する能力に基づき、容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223参照)。
【0255】
ある実施態様において、アテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブなどのヒトPD-L1抗体とヒトPD-L1への結合について交差競合するまたは同じエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体、改変抗体またはヒト化またはヒト抗体である。このようなキメラ、改変、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により調製および単離され得る。
【0256】
本発明の組成物および方法において有用な抗PD-L1抗体は上記抗体の抗原結合部分も含む。抗体の抗原結合機能が完全長抗体のフラグメントにより実現され得ることは十分に証明されている。
【0257】
開示する組成物および方法への使用に適する抗PD-L1抗体は、PD-L1に高い特異性および親和性で結合し、PD-1の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制性効果を阻害する抗体である。ここに開示する組成物または方法の何れにおいても、抗PD-L1「抗体」は、PD-L1に結合し、受容体結合阻害および免疫系上方制御において抗体全体と類似する機能的性質を示す、抗原結合部分またはフラグメントを含む。ある実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-L1への結合についてアテゾリズマブ、デュルバルマブおよび/またはアベルマブと交差競合する。
【0258】
本発明において有用な抗PD-L1抗体は、PD-L1と特異的に結合するあらゆるPD-L1抗体、例えば、ヒトPD-1への結合についてデュルバルマブ、アベルマブまたはアテゾリズマブと交差競合する抗体、例えば、デュルバルマブ、アベルマブまたはアテゾリズマブと同じエピトープに結合する抗体であり得る。特定の実施態様において、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブである。他の実施態様において、抗PD-L1抗体は、アベルマブである。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。
【0259】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は、約2週、3週、4週、5週、6週、7週または8週毎に、約0.1mg/kg~約20.0mg/kg体重、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kgまたは約20mg/kgの範囲の用量で投与される。
【0260】
ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約3週毎に約15mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-L1抗体は約2週毎に約10mg/kg体重の用量で投与される。
【0261】
他の実施態様において、本発明に有用な抗PD-L1抗体は一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約200mg~約1600mg、約200mg~約1500mg、約200mg~約1400mg、約200mg~約1300mg、約200mg~約1200mg、約200mg~約1100mg、約200mg~約1000mg、約200mg~約900mg、約200mg~約800mg、約200mg~約700mg、約200mg~約600mg、約700mg~約1300mg、約800mg~約1200mg、約700mg~約900mgまたは約1100mg~約1300mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は少なくとも約240mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約400mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、少なくとも約560mg、少なくとも約600mg、少なくとも約640mg、少なくとも約700mg、少なくとも720mg、少なくとも約800mg、少なくとも約880mg、少なくとも約900mg、少なくとも960mg、少なくとも約1000mg、少なくとも約1040mg、少なくとも約1100mg、少なくとも約1120mg、少なくとも約1200mg、少なくとも約1280mg、少なくとも約1300mg、少なくとも約1360mgまたは少なくとも約1400mg、約1週、2週、3週または4週の投与間隔での一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約1000mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約1100mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約1200mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約1300mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約1400mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約1500mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体は約3週毎に約1200mgの一定用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-L1抗体は約2週毎に約800mgの一定用量で投与される。
【0262】
抗CTLA-4抗体
当分野で知られる抗CTLA-4抗体が本発明の組成物および方法において使用され得る。本発明の抗CTLA-4抗体は、CTLA-4とヒトB7受容体の相互作用を妨害するように、ヒトCTLA-4に結合する。CTLA-4とB7の相互作用が、CTLA-4受容体を担持するT細胞を不活性化させるシグナルを伝達するため、相互作用の妨害は、このようなT細胞の活性化を効果的に誘発、増強または延長し、それにより免疫応答を誘発、増強または延長する。
【0263】
高親和性でCTLA-4に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は、米国特許6,984,720に開示されている。他の抗CTLA-4モノクローナル抗体は、例えば、米国特許5,977,318、6,051,227、6,682,736および7,034,121および国際公開WO2012/122444、WO2007/113648、WO2016/196237およびWO2000/037504に記載されており、この各々を、全体を引用により本明細書に包含させる。米国6,984,720に開示の抗CTLA-4ヒトモノクローナル抗体は、次の特性の1以上を示すことが示されている:(a)ヒトCTLA-4に、Biacore分析により決定して、少なくとも約107M-1または約109M-1または約1010M-1~1011M-1以上の平衡結合定数(Ka)により反映される結合親和性で特異的に結合する;(b)少なくとも約103、約104または約105m-1s-1の結合速度定数(ka);(c)少なくとも約103、約104または約105m-1s-1の結合解離定数(kd);および(d)CTLA-4のB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)への結合を阻害する。本発明で有用な抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4に特異的に結合し、先の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つを示す、モノクローナル抗体である。
【0264】
ある実施態様において、CTLA-4抗体は、イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標)、MDX-010、10D1としても知られる;米国6,984,720参照)、MK-1308(Merck)、AGEN-1884(Agenus Inc.;WO2016/196237参照)およびトレメリムマブ(AstraZeneca;チシリムマブ、CP-675,206としても知られる;WO2000/037504およびRibas, Update Cancer Ther. 2(3): 133-39 (2007))からなる群から選択される。特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。
【0265】
特定の実施態様において、CTLA-4抗体は、ここに開示する組成物および方法において使用するためのイピリムマブである。イピリムマブは、CTLA-4のそのB7リガンドへの結合を遮断し、それにより進行型黒色腫を有する患者におけるT細胞活性化を刺激し、全生存(OS)を改善する、完全ヒト、IgG1モノクローナル抗体である。
【0266】
特定の実施態様において、CTLA-4抗体はトレメリムマブである。
【0267】
特定の実施態様において、CTLA-4抗体は、MK-1308である。
【0268】
特定の実施態様において、CTLA-4抗体は、AGEN-1884である。
【0269】
開示する組成物および方法において有用な抗CTLA-4抗体はまた、ヒトCTLA-4に特異的に結合し、ヒトCTLA-4への結合についてここに開示する任意の抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブと交差競合する、単離抗体も含む。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、ここに記載する抗CTLA-4抗体の何れか例えば、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブと同じエピトープに結合する。抗体が抗原への結合について交差競合する能力は、これらの抗体が該抗原の同じエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域への他の交差競合抗体の結合を立体的に妨害することを示す。これらの交差競合抗体は、CTLA-4の同じエピトープ領域への結合により、対照抗体、例えば、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブと極めて類似する機能的性質を有することが予測される。交差競合抗体は、Biacore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなどの標準CTLA-4結合アッセイにおいてイピリムマブおよび/またはトレメリムマブと交差競合する能力に基づき、容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223参照)。
【0270】
ある実施態様において、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブなどのヒトCTLA-4抗体とヒトCTLA-4への結合について交差競合するまたは同じエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体、改変抗体またはヒト化またはヒト抗体である。このようなキメラ、改変、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により調製および単離され得る。
【0271】
本発明の組成物および方法において有用な抗CTLA-4抗体は上記抗体の抗原結合部分も含む。抗体の抗原結合機能が完全長抗体のフラグメントにより実施され得ることは十分に証明されている。
【0272】
開示する方法または組成物における使用に適する抗CTLA-4抗体は、CTLA-4に高い特異性および親和性で結合し、CTLA-4の活性を遮断し、CTLA-4とヒトB7受容体の相互作用を妨害する抗体である。ここに開示する組成物または方法の何れにおいても、抗CTLA-4「抗体」は、CTLA-4に結合し、CTLA-4とヒトB7受容体の相互作用の阻害および免疫系上方制御について抗体全体と類似する機能的性質を示す、抗原結合部分またはフラグメントを含む。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブおよび/またはトレメリムマブと交差競合する。
【0273】
ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、2週、3週、4週、5週、6週、7週または8週毎に0.1mg/kg~10.0mg/kg体重の範囲の用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、3週、4週、5週または6週毎に1mg/kgまたは3mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、2週毎に3mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、6週毎に1mg/kg体重の用量で投与される。
【0274】
ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は一定用量として投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は約10~約1000mg、約10mg~約900mg、約10mg~約800mg、約10mg~約700mg、約10mg~約600mg、約10mg~約500mg、約100mg~約1000mg、約100mg~約900mg、約100mg~約800mg、約100mg~約700mg、約100mg~約100mg、約100mg~約500mg、約100mg~約480mgまたは約240mg~約480mgの一定用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は少なくとも約60mg、少なくとも約80mg、少なくとも約100mg、少なくとも約120mg、少なくとも約140mg、少なくとも約160mg、少なくとも約180mg、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mg、少なくとも約520mg、少なくとも約540mg、少なくとも約550mg、少なくとも約560mg、少なくとも約580mg、少なくとも約600mg、少なくとも約620mg、少なくとも約640mg、少なくとも約660mg、少なくとも約680mg、少なくとも約700mgまたは少なくとも約720mgの一定用量で投与される。他の実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、約1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週または8週毎に一定用量として投与される。
【0275】
サイトカイン
ある実施態様において、方法は、(a)抗PD-1抗体およびサイトカインまたは(b)抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体およびサイトカインを含む組み合わせ治療の投与を含む。サイトカインは、当分野で知られるあらゆるサイトカインまたはそのバリアントであり得る。ある実施態様において、サイトカインは、インターロイキン-2(IL-2)、IL-1β、IL-6、TNF-α、RANTES、単球化学誘引物質タンパク質(MCP-1)、単球炎症性タンパク質(MIP-1αおよびMIP-1β)、IL-8、リンホタクチン、フラクタルカイン、IL-1、IL-4、IL-10、IL-11、IL-13、LIF、インターフェロン-アルファ、TGF-ベータおよび任意のこれらの組み合わせからなる群から選択される。ある実施態様において、サイトカインはCD122アゴニストである。ある実施態様において、サイトカインはIL-2またはそのバリアントを含む。
【0276】
ある実施態様において、サイトカインは、野生型サイトカインアミノ酸配列と比較して1以上のアミノ酸置換、欠失または挿入を含む。ある実施態様において、サイトカインは、野生型サイトカインのアミノ酸配列と比較して少なくとも1アミノ酸、少なくとも2アミノ酸、少なくとも3アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸または少なくとも10アミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む。
【0277】
ある実施態様において、サイトカインは、例えば、活性および/または半減期増大のために、修飾される。ある実施態様において、サイトカインは、サイトカインへの異種部分の融合により修飾される。異種部分は、ポリペプチド、ポリマー、小分子、ヌクレオチドまたはそのフラグメントもしくはアナログを含む、任意の構造であり得る。ある実施態様において、異種部分はポリペプチドを含む。ある実施態様において、異種部分は、アルブミンまたはそのフラグメント、アルブミン結合ポリペプチド(ABP)、XTEN、Fc、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)または任意のこれらの組み合わせを含む。
【0278】
ある実施態様において、サイトカインは、サイトカインへのポリマーの融合により修飾される。ある実施態様において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)または任意のこれらの組み合わせを含む。ここで使用する「PEG」または「ポリエチレングリコール」は、あらゆる水可溶性ポリ(エチレンオキシド)を含む。特に断らない限り、「PEGポリマー」またはポリエチレングリコールは、実質的に全て(好ましくは全て)の単量体サブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものであるが、ポリマーは、例えば、コンジュゲーションのために、異なる末端キャッピング部分または官能基を含み得る。本発明において使用するためのPEGポリマーは、末端酸素が、例えば、合成変換中に置換されているかいないかによって、次の2つの構造「-(CH2CH2O)n-nまたは「-(CH2CH2O)n-1CH2CH2-」の一つを含む。上記のとおり、PEGポリマーについて、変数(n)は約3~4000の範囲であり、末端基およびPEGの全体的構造が変わり得る。
【0279】
ある実施態様において、本発明の方法は、高TMB状態を有する対象に(a)抗PD-1抗体およびCD122アゴニストまたは(b)抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体およびCD122アゴニストを投与することを含む。ある実施態様において、免疫療法は、(1)抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体または任意のこれらの組み合わせおよび(2)CD122アゴニストの投与を含む。ある実施態様において、CD122アゴニストは、IL-2またはそのバリアントを含む。ある実施態様において、CD122アゴニストは、野生型IL-2と比較して少なくとも1アミノ酸置換を有するIL-2バリアントを含む。ある実施態様において、CD122アゴニストは、PEGに融合したIL-2を含む。ある実施態様において、CD122アゴニストは、野生型IL-2と比較して少なくとも1アミノ酸置換を有するIL-2バリアントを含み、ここで、該IL-2バリアントはPEGに融合する。
【0280】
他の免疫療法
本発明のある態様において、ここに開示する方法は、さらにさらなる抗癌治療の投与を含む。ある実施態様において、さらなる抗癌治療は免疫療法を含む。ある実施態様において、さらなる抗癌治療は、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、MICA、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、GITRまたは任意のこれらの組み合わせに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分の投与を含む。
【0281】
抗LAG-3抗体
本発明のある態様は、対象に免疫療法剤を投与することを含む、高TMB状態を有する腫瘍を有する対象を処置する方法であって、該免疫療法剤が抗LAG-3抗体またはその抗原結合部分を含むものである、方法に関する。方法は、さらに対象から得た生体サンプルのTMB状態の測定を含み得る。さらに、本発明は、抗LAG-3抗体またはその抗原結合部分の、例えば、高TMBの測定に基づき、このような処置に適すると同定された対象への投与を考慮する。
【0282】
本開示の抗LAG-3抗体は、ヒトLAG-3に結合する。LAG-3に結合する抗体は、国際公開WO/2015/042246および米国公開2014/0093511および2011/0150892に開示される。本発明で有用なLAG-3抗体の例は、25F7(米国公開2011/0150892に記載)である。本発明において有用なさらなる例示的LAG-3抗体は、BMS-986016である。ある実施態様において、組成物に有用な抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016と交差競合する。他の実施態様において、組成物に有用な抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016と同じエピトープに結合する。他の実施態様において、抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016の6個のCDRを含む。
【0283】
抗CD137抗体
本発明のある態様は、対象に免疫療法剤を投与することを含む、高TMB状態を有する腫瘍を有する対象を処置する方法であって、該免疫療法剤が抗CD137抗体またはその抗原結合部分を含むものである、方法に関する。方法は、さらに対象から得た生体サンプルのTMB状態の測定を含み得る。さらに、本発明は、抗CD137抗体またはその抗原結合部分の、例えば、高TMBの測定に基づき、このような処置に適すると同定された対象への投与を考慮する。
【0284】
抗CD137抗体は、CD137発現免疫細胞に特異的に結合し、活性化し、腫瘍細胞に対する免疫応答、特に細胞毒性T細胞応答を刺激する。CD137に結合する抗体は、米国公開2005/0095244および米国特許7,288,638、6,887,673、7,214,493、6,303,121、6,569,997、6,905,685、6,355,476、6,362,325、6,974,863および6,210,669に開示されている。
【0285】
ある実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許7,288,638(20H4.9-IgG4[10C7またはBMS-663513])に記載されるウレルマブ(BMS-663513)である。ある実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許7,288,638に記載されるBMS-663031(20H4.9-IgG1)である。ある実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許6,887,673に記載される4E9またはBMS-554271である。ある実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許7,214,493;6,303,121;6,569,997;6,905,685;または6,355,476に開示される抗体である。ある実施態様において、抗CD137抗体は、1D8またはBMS-469492;3H3またはBMS-469497;または米国特許6,362,325に記載される3E1である。ある実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許6,974,863に開示される抗体である(例えば53A2)。ある実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許6,210,669に開示される抗体である(例えば1D8、3B8または3E1)。ある実施態様において、抗体は、PfizerのPF-05082566(PF-2566)である。他の実施態様において、本発明で有用な抗CD137抗体は、ここに開示する抗CD137抗体と交差競合する。ある実施態様において、抗CD137抗体は、ここに開示する抗CD137抗体と同じエピトープに結合する。他の実施態様において、本発明で有用な抗CD137抗体は、ここに開示する抗CD137抗体の6個のCDRを含む。
【0286】
抗KIR抗体
本発明のある態様は、対象に免疫療法剤を投与することを含む、高TMB状態を有する腫瘍を有する対象を処置する方法であって、該免疫療法剤が抗KIR抗体またはその抗原結合部分を含むものである、方法に関する。方法は、さらに対象から得た生体サンプルのTMB状態の測定を含み得る。さらに、本発明は、抗KIR抗体またはその抗原結合部分の、例えば、高TMBの測定に基づき、このような処置に適すると同定された対象への投与を考慮する。
【0287】
KIRに特異的に結合する抗体は、NK細胞上のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)とそのリガンドの相互作用を遮断する。これらの受容体の遮断は、NK細胞活性化を、そして潜在的に、後者による腫瘍細胞の破壊を促進する。抗KIR抗体の例は、国際公開WO/2014/055648、WO2005/003168、WO2005/009465、WO2006/072625、WO2006/072626、WO2007/042573、WO2008/084106、WO2010/065939、WO2012/071411およびWO/2012/160448に開示されている。
【0288】
本発明において有用な一つの抗KIR抗体は、国際公開WO2008/084106で最初に記載された、リリルマブ(BMS-986015、IPH2102または1-7F9のS241Pバリアントとも称される)である。本発明において有用なさらなる抗KIR抗体は、国際公開WO2006/003179に記載の1-7F9(IPH2101とも称する)である。ある実施態様において、本組成物のための抗KIR抗体は、KIRへの結合について、リリルマブまたはI-7F9と交差競合する。他の実施態様において、抗KIR抗体は、リリルマブまたはI-7F9と同じエピトープに結合する。他の実施態様において、抗KIR抗体は、リリルマブまたはI-7F9の6個のCDRを含む。
【0289】
抗GITR抗体
本発明のある態様は、対象に免疫療法剤を投与することを含む、高TMB状態を有する腫瘍を有する対象を処置する方法であって、該免疫療法剤が抗GITR抗体またはその抗原結合部分を含むものである、方法に関する。方法は、さらに対象から得た生体サンプルのTMB状態の測定を含み得る。さらに、本発明は、抗GITR抗体またはその抗原結合部分の、例えば、高TMBの測定に基づき、このような処置に適すると同定された対象への投与を考慮する。
【0290】
抗GITR抗体は、ヒトGITR標的に特異的に結合し、グルココルチコイド誘発腫瘍壊死因子受容体(GITR)を活性化する、あらゆる抗GITR抗体であり得る。GITRは、制御T細胞、エフェクターT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および活性化樹状細胞を含む、複数のタイプの免疫細胞の表面で発現されるTNF受容体スーパーファミリーのメンバーである(「抗GITRアゴニスト抗体」)。特に、GITR活性化はエフェクターT細胞の増殖および機能を増大し、活性化T制御細胞による抑制を消失させる。さらに、GITR刺激は、NK細胞、抗原提示細胞およびB細胞などの他の免疫細胞の活性増加により、抗腫瘍免疫を促進する。抗GITR抗体の例は、国際公開WO/2015/031667、WO2015/184,099、WO2015/026,684、WO11/028683およびWO/2006/105021、米国特許7,812,135および8,388,967および米国公開2009/0136494、2014/0220002、2013/0183321および2014/0348841に開示されている。
【0291】
ある実施態様において、本発明で有用な抗GITR抗体は、TRX518である(例えば、Schaer et al. Curr Opin Immunol. (2012) Apr;24(2): 217-224およびWO/2006/105021に記載)。他の実施態様において、抗GITR抗体は、MK4166、MK1248およびWO11/028683および米国8,709,424に記載され、例えば、配列番号104を含むVH鎖および配列番号105を含むVL鎖(ここで、配列番号はWO11/028683または米国8,709,424に基づく)を含む、抗体から選択される。ある実施態様において、抗GITR抗体は、WO2015/031667に開示の抗GITR抗体、例えば、それぞれWO2015/031667の配列番号31、71および63を含むVH CDR 1~3およびそれぞれWO2015/031667の配列番号5、14および30を含むVL CDR 1~3を含む、抗体である。ある実施態様において、抗GITR抗体は、WO2015/184099に開示の抗GITR抗体、例えば、抗体Hum231#1またはHum231#2またはそのCDRもしくはその誘導体(例えば、pab1967、pab1975またはpab1979)である。ある実施態様において、抗GITR抗体は、JP2008278814、WO09/009116、WO2013/039954、US20140072566、US20140072565、US20140065152またはWO2015/026684に開示の抗GITR抗体であるかまたはINBRX-110(INHIBRx)、LKZ-145(Novartis)またはMEDI-1873(MedImmune)である。ある実施態様において、抗GITR抗体は、PCT/US2015/033991に記載の抗GITR抗体である(例えば、28F3、18E10または19D3の可変領域を含む抗体)。例えば、抗GITR抗体は、次のVHおよびVL鎖またはそのCDRを含む抗体であり得る。
【0292】
VH:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGSMVRGDYYYGMDVWGQGTTVTVS(配列番号1)および
【0293】
VL:
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号2);または
【0294】
VH:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGFHWVRQAPGKGLEWVAVIWYAGSNKFYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGQLDYYYYYVMDVWGQGTTVTVSS(配列番号3)および
【0295】
VL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号4);または
【0296】
VH:
VQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYAGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGRIAVAFYYSMDVWGQGTTVTVSS(配列番号5)および
【0297】
VL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号6)。
【0298】
ある実施態様において、上記VH重鎖およびVL軽鎖またはそのCDRを含む抗体は、例えば、エフェクターレスとするために、野生型または変異されたIgG1アイソタイプの重鎖定常領域を含む。ある実施態様において、抗GITR抗体は、次の重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0299】
重鎖:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGSMVRGDYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号7)および
【0300】
軽鎖:
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号8)または
【0301】
重鎖:
qvqlvesgggvvqpgrslrlscaasgftfssygmhwvrqapgkglewvaviwyegsnkyyadsvkgrftisrdnskntlylqmnslraedtavyycarggsmvrgdyyygmdvwgqgttvtvssastkgpsvfplapsskstsggtaalgclvkdyfpepvtvswnsgaltsgvhtfpavlqssglyslssvvtvpssslgtqtyicnvnhkpsntkvdkrvepkscdkthtcppcpapeaegapsvflfppkpkdtlmisrtpevtcvvvdvshedpevkfnwyvdgvevhnaktkpreeqynstyrvvsvltvlhqdwlngkeykckvsnkalpssiektiskakgqprepqvytlppsreemtknqvsltclvkgfypsdiavewesngqpennykttppvldsdgsfflyskltvdksrwqqgnvfscsvmhealhnhytqkslslspg(配列番号9)および
【0302】
軽鎖:
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)。
【0303】
ある実施態様において、抗GITR抗体は、ここに記載する抗GITR抗体、例えば、TRX518、MK4166またはここに記載するVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体と交差競合する。ある実施態様において、抗GITR抗体は、ここに記載する抗GITR抗体、例えば、TRX518、MK4166またはここに記載するVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗GITR抗体は、TRX518、MK4166またはここに記載するVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体の6個のCDRを含む。
【0304】
さらなる抗体
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗TGFβ抗体を含む。ある実施態様において、抗TGFβ抗体は、国際公開WO/2009/073533に開示の抗TGFβ抗体である。
【0305】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗IL-10抗体を含む。ある実施態様において、抗IL-10抗体は、国際公開WO/2009/073533に開示の抗IL-10抗体である。
【0306】
ある他の実施態様において、免疫療法剤は、抗B7-H4抗体を含む。ある実施態様において、抗B7-H4抗体は、国際公開WO/2009/073533に開示の抗B7-H4抗体である。
【0307】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗Fasリガンド抗体を含む。ある実施態様において、抗Fasリガンド抗体は、国際公開WO/2009/073533に開示の抗Fasリガンド抗体である。
【0308】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗CXCR4抗体を含む。ある実施態様において、抗CXCR4抗体は、米国公開2014/0322208(例えば、ウロクプルマブ(BMS-936564))に開示の抗CXCR4抗体である。
【0309】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗メソテリン抗体を含む。ある実施態様において、抗メソテリン抗体は、米国特許8,399,623に開示の抗メソテリン抗体である。
【0310】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗HER2抗体を含む。ある実施態様において、抗HER2抗体は、ハーセプチン(米国特許5,821,337)、トラスツズマブまたはado-トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ、例えば、WO/2001/000244)である。
【0311】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗CD27抗体を含む。ある実施態様において、抗CD-27抗体は、例えば、米国9,169,325に開示の、ヒトCD27のアゴニストであるヒトIgG1抗体である、バルリルマブ(「CDX-1127」および「1F5」としても知られる)である。
【0312】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗CD73抗体を含む。ある実施態様において、抗CD73抗体は、CD73.4.IgG2C219S.IgG1.1fである。
【0313】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗MICA抗体を含む。ここで使用する抗MICA抗体は、MHCクラスIポリペプチド関連配列Aに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある実施態様において、抗MICA抗体は、MICAに加えてMICBに結合する。ある実施態様において、抗MICA抗体は、膜結合MICAの阻害および可溶性MICA放出を阻害する。ある実施態様において、抗MICA抗体は、米国公開2014/004112A1、米国公開2016/046716A1または米国公開2017/022275A1に開示の抗MICA抗体である。
【0314】
ある実施態様において、免疫療法剤は、抗TIM3抗体を含む。ここで使用する抗TIM3抗体は、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)としても知られるT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM3)に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある実施態様において、抗TIM3抗体は、免疫応答、例えば、抗原特異的T細胞応答を刺激できる。ある実施態様において、抗TIM3抗体は、可溶性もしくは膜結合ヒトまたはcyno TIM3に結合する。ある実施態様において、抗TIM3抗体は、全体を引用により本明細書に包含させる、国際公開WO/2018/013818に開示の抗TIM3抗体である。
【0315】
SCLCに対する標準治療
ある実施態様において、対象は、1以上のSCLCに対する標準治療で先に処置されている。ある実施態様において、対象は、1以上のSCLCに対する標準治療に難治性である。ある実施態様において、対象は、1以上のSCLCに対する標準治療後疾患進行を示している。ある実施態様において、対象は、1以上のSCLCに対する標準治療後疾患安定を示している。ある実施態様において、対象は、1以上のSCLCに対する標準治療に難治性ではない。ある実施態様において、対象は、1以上のSCLCに対する標準治療後再発している
【0316】
種々のタイプの癌のための標準治療は、当業者に周知である。例えば、米国の21の主要な癌センターの協定である、全米総合癌センターネットワーク(NCCN)は、NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCNガイドライン(登録商標))を発行しており、これは多種多様な癌のための標準治療の詳細な最先端情報を提供する(http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/f_guidelines.asp(最終アクセス2016年6月2日)で利用可能なNCCNガイドライン(登録商標)(2014)参照)。
【0317】
手術、放射線療法(RT)および化学療法は、SCLC患者の処置に一般に使用される3つのモダリティである。最も一般に使用される初期化学療法レジメンは、EPとして知られる、エトポシド(TOPOSAR(登録商標)またはベプシド(登録商標))とシスプラチン(プラチノール(登録商標))で併用ある。進展期小細胞肺癌のヒトには、EPレジメンを使用する化学療法単独が標準処置である。しかしながら、使用し得る他のレジメンは、カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))とイリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標))併用である。
【0318】
SCLCは化学療法および/または放射線療法を含む初期処置には高度に感受性であるが、患者の大部分は、最終的にSCLCの再発により死亡する。それ故に、第一選択治療後の有効処置がないため、再発SCLCを有する患者において特定の満たされていない要望がある。
【0319】
医薬組成物および投与量
本発明の治療剤は、組成物、例えば、抗体および/またはサイトカインおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を構成できる。ここで使用する「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性である任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。ある実施態様において、抗体を含む組成物用の担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊椎または表皮投与(例えば、注射または点滴による)に適するものであり、一方抗体および/またはサイトカインを含む組成物用の担体は、非経腸ではない、例えば、経口投与に適するものである。ある実施態様において、皮下注射は、Halozyme TherapeuticsのENHANZE(登録商標)薬物送達テクノロジーに基づく(全体を引用により本明細書に包含させる、米国7,767,429参照)。ENHANZE(登録商標)は、抗体と組み換えヒトヒアルロニダーゼ酵素(rHuPH20)の共製剤であり、これは、細胞外マトリクスによって、生物製剤および薬物の従来の体積的制約を取り除き、皮下送達を可能にする(米国7,767,429参照)。本発明の医薬組成物は、1以上の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性および非水性担体および/またはアジュバント、例えば防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。それ故に、ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、さらに組み換えヒトヒアルロニダーゼ酵素、例えば、rHuPH20を含む。
【0320】
投与レジメンは、最適な所望の応答、例えば、最大治療応答および/または最小有害作用を提供するように調節される。ある実施態様において、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および/または抗CTLA-4抗体は、体重に基づく用量で投与される。単剤治療または他の抗癌剤との組み合わせ(例えば、抗CTLA-4抗体との組み合わせ)としての抗PD-1抗体の投与のために、投与量は、約0.01~約20mg/kg、約0.1~約10mg/kg、約0.1~約5mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、約1~約5mg/kg、約2~約5mg/kg、約1~約3mg/kg、約7.5~約12.5mg/kgまたは約0.1~約30mg/対象の体重kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、約0.1mg/kg体重、約0.3mg/kg体重、約1mg/kg体重、約2mg/kg体重、約3mg/kg体重、約5mg/kg体重または約10mg/kg体重およびより好ましくは、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、2mg/kg体重、3mg/kg体重または5mg/kg体重であり得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体の投与量は3mg/kg体重である。投与スケジュールは、一般に抗体の典型的薬物動態に基づき、持続的受容体占有(RO)をもたらす暴露を達成するよう設計される。処置レジメの例は、約週1回、約2週毎、約3週毎、約4週毎、約1月毎、約3~6か月毎またはそれより長い間隔での投与を含む。ある実施態様において、ニボルマブなどの抗PD-1抗体は、対象に約2週毎に投与される。他の実施態様において、抗体は約3週毎に投与される。投与量およびスケジューリングは、処置中に変わり得る。例えば、抗PD-1単剤治療のための投与スケジュールは、抗体の(i)約6週サイクルで約2週毎;(ii)約6回は約4週毎、次いで約3か月毎;(iii)約3週毎;(iv)約3mg/kg~約10mg/kgを1回、続いて約1mg/kgを約2~3週毎での投与を含み得る。IgG4抗体は、一般に2~3週の半減期を有することを考慮に入れる。
【0321】
ある実施態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の投与レジメンは、約0.3~1mg/kg体重、約5mg/kg体重、1~5mg/kg体重または約1~約3mg/kg体重の静脈内投与を含み、該抗体は、完全応答または確定疾患進行まで、最大約6週または約12週サイクルで約14~21日毎に投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体単剤治療は、疾患進行または許容されない毒性まで、3mg/kgを2週毎で投与される。ある実施態様において、ここに開示する抗体処置または何れかの組み合わせ処置は、少なくとも約1か月、少なくとも約3か月、少なくとも約6か月、少なくとも約9か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約24か月、少なくとも約3年、少なくとも約5年または少なくとも約10年継続される。
【0322】
他の癌剤(例えば、抗CTLA-4抗体との組み合わせ)と組み合わせて使用するとき、抗PD-1抗体の投与量は、単剤治療用量と比較して低減され得る。典型的に3mg/kgより低いが、0.001mg/kgを上回るニボルマブの投与量は、治療量以下の投与量である。ここでの方法に使用する抗PD-1抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgより高く、かつ3mg/kgより低い。ある実施態様において、治療量以下の用量は、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kgまたは約0.001mg/kg~約0.1mg/kg体重である。ある実施態様において、治療量以下の用量は、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kgまたは少なくとも約1.0mg/kg体重である。0.3mg/kg~10mg/kgのニボルマブ投与を受けた15対象からの受容体占有データは、この用量範囲でPD-1占有が用量非依存的であると考えられることを示す。全用量にわたり、平均占有率は、85%(範囲、70%~97%)であり、平均プラトー占有率は72%(範囲、59%~81%)であった。ある実施態様において、0.3mg/kg投与は、最大生物活性をもたらすのに十分な暴露を可能とし得る。0.3mg/kg~10mg/kgのニボルマブ投与を受けた15対象からの受容体占有データは、この用量範囲でPD-1占有が用量非依存的であると考えられることを示す。全用量にわたり、平均占有率は85%(範囲、70%~97%)であり、平均プラトー占有率72%(範囲、59%~81%)であった(Brahmer et al., J Clin Oncol 28:3167-75 2010)。従って、0.3mg/kg投与は、最大生物活性をもたらすのに十分な暴露を可能とし得る。
【0323】
2週間毎に最大10mg/kgを投与する高ニボルマブ単剤治療が最大耐量(MTD)に達することなく達成されているが、チェックポイント阻害剤と抗血管形成治療併用の他の治験で報告されている相当な毒性(例えば、Johnson et al. (2013) Cancer Immunol Res 1:373-77; Rini et al. (2011) Cancer 117:758-67参照)が、10mg/kg未満のニボルマブ用量の選択を支持する。
【0324】
ある実施態様において、抗PD-1抗体(または抗PD-L1抗体)の用量は、医薬組成物での固定用量である。他の実施態様において、本発明の方法を一定用量(患者の体重と無関係に患者に与えられる用量)で使用し得る。例えば、ニボルマブの一定用量は約240mgであり得る。例えば、ペムブロリズマブの一定用量は約200mgであり得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、約240mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、約360mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、約480mgの用量で投与される。ある実施態様において、360mgの抗PD-1抗体は、3週毎に投与される。他の実施態様において、480mgの抗PD-1抗体は、4週毎に投与される。
【0325】
イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))は、黒色腫の処置に、静脈内で3週毎、3mg/kgを4回で承認されている。従って、ある実施態様において、約3mg/kgは、抗PD-1抗体と組み合わせて使用するイピリムマブの最高投与量であるが、ある実施態様において、ニボルマブと組み合わせたとき、イピリムマブなどの抗CTLA-4抗体を、約2週または3週毎に約0.3~約10mg/kg、約0.5~約10mg/kg、約0.5~約5mg/kgまたは約1~約5mg/kg体重の範囲内で投与し得る。他の実施態様において、イピリムマブは、ニボルマブと異なる投与スケジュールで投与される。ある実施態様において、イピリムマブは、約毎週、約2週間毎、約3週毎、約4週毎、約5週毎、約6週毎、約7週毎、約8週毎、約9週毎、約10週毎、約11週毎、約12週毎または約15週毎に投与される。典型的に3mg/kgを3週毎より低いが、0.001mg/kgを上回るイピリムマブの投与量は、治療量以下の投与量である。ここでの方法に使用する抗CTLA-4抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgより高く、かつ3mg/kgより低い。ある実施態様において、治療量以下の用量は、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kgまたは約0.001mg/kg~約0.1mg/kg体重である。ある実施態様において、治療量以下の用量は、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kgまたは少なくとも約1.0mg/kg体重である。ニボルマブを3mg/kgおよびイピリムマブを3mg/kgの組み合わせ投与は、黒色腫集団におけるMTDを超えるが、ニボルマブを1mg/kgとイピリムマブを3mg/kgまたはニボルマブを3mg/kgとイピリムマブを1mg/kgの組み合わせは、黒色腫患者で許容できることが判明したことが示されている(Wolchok et al., N Engl JMed 369(2):122-33(2013))。従って、ニボルマブは、最大10mg/kgを2週毎に静脈内投与が耐容性であるが、ある実施態様において、イピリムマブと組み合わせたとき、抗PD-1抗体の用量は、約3mg/kgを超えない。ある実施態様において、リスク-利益およびPK-PD評価に基づき、使用する投与量は、ニボルマブを約1mg/kgとイピリムマブを約3mg/kg、ニボルマブを約3mg/kgとイピリムマブを約1mg/kgまたはニボルマブを約3mg/kgとイピリムマブを約3mg/kgの組み合わせを含み、各々、約2~4週毎、ある実施態様において、約2週毎または約3週毎の投与頻度で投与される。ある他の実施態様において、ニボルマブを、約2週毎、約3週毎または約4週毎に、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kgまたは約5mg/kgの投与量で投与されるイピリムマブと組み合わせて、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kgまたは約5mg/kgの投与量で投与される。
【0326】
ある実施態様において、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせを、約2週または3週毎に1回、2回、3回または4回、誘導期の対象に静脈内投与する。ある実施態様において、ニボルマブとイピリムマブの組み合わせを、約2週または3週毎に約4回、誘導期の対象に静脈内投与する。誘導期の後に維持期があり、その間抗PD-1抗体のみを、対象に、処置が有効であると示される限りまたは管理不能な毒性または疾患進行が生じるまで、約2週または3週毎に約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgの投与量で投与する。ある実施態様において、ニボルマブを、維持期の間、約2週毎に約3mg/体重kgの用量で投与する。ある実施態様において、抗PD-1抗体を、約2週毎に約3mg/kgの用量(または240mgの一定用量)で投与し、抗CTLA-4抗体を、約6週毎に1mg/kgの用量で投与する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は一定用量(例えば、240mgまたは480mg)で投与され、抗CTLA-4抗体は、体重に基づく用量(例えば、1mg/kgまたは3mg/kg)で投与される。
【0327】
ここに開示する抗体は、「処置サイクル」または「サイクル」(これら用語は、ここでは相互交換可能に使用する)に従い、投与され得る。ここで使用する用語「サイクル」は、規則的スケジュールで繰り返され、間に休薬期がある、一連の処置をいう。例えば、1週間投与され、続いて3週間の休薬がある処置は処置サイクルである。ある実施態様において、抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10サイクル投与される。特定の実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の投与は、4回(4サイクル)繰り返された。
【0328】
ある実施態様において、抗PD-1抗体(または抗CTLA-4抗体)および抗CTLA-4抗体は単一組成物として製剤され、ここで、抗PD1抗体の用量および抗CTLA-4抗体の用量は、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:5、1:3、1:1、3:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1または50:1の比で組み合わされる。他の実施態様において、抗CTLA-4抗体の用量は固定用量である。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体対抗CTLA-4抗体の比は、少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1または約2:1である。
【0329】
ある実施態様において、抗CTLA-4抗体の用量は、体重と無関係に患者に投与される、一定用量である。特定の実施態様において、一定用量の抗CTLA-4抗体は約80mgである。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は一定用量で単剤治療として投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、抗CTLA-4抗体との組み合わせで一定用量として投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の一定用量は、少なくとも約100~600mg、例えば、少なくとも約200~300mg、少なくとも約400~500mgまたは少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mg、例えば少なくとも約60mg、少なくとも約80mg、少なくとも約100mg、少なくとも約120mg、少なくとも約140mg、少なくとも約160mg、少なくとも約180mg、少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約320mg、少なくとも約360mg、少なくとも約400mg、少なくとも約440mg、少なくとも約480mg、少なくとも約520mg、少なくとも約560mg、少なくとも約600mgまたは少なくとも約660mgまたは少なくとも約720mgの用量である。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の一定用量は、少なくとも約600~1200mgの用量である。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の一定用量は、少なくとも約600mg、少なくとも約640mg、少なくとも約680mg、少なくとも約720mg、少なくとも約760mg、少なくとも約800mg、少なくとも約840mg、少なくとも約880mg、少なくとも約920mg、少なくとも約960mg、少なくとも約1000mg、少なくとも約1040mg、少なくとも約1080mg、少なくとも約1120mg、少なくとも約1160mgまたは少なくとも約1200mgの用量である。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約2週または4週毎に少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分は、約2週または4週毎に少なくとも約240mgまたは少なくとも約480mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、少なくとも約720mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、少なくとも約960mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、少なくとも約1200mgの用量で投与される。
【0330】
他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約240mgより高い、すなわち、少なくとも約240mgの用量で投与される。他の抗癌剤と組み合わせて使用されるとき、抗PD-1抗体の投与量は、単剤治療用量と比較して低減され得る。例えば、ニボルマブの典型的な3週毎に3mg/kgより顕著に低い投与量、例えば0.1mg/kgまたは3週もしくは4週毎より低頻度が治療量以下の投与量と見なされる。
【0331】
ある実施態様において、組み合わせにおける抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の一定用量は、抗PD-1抗体について約60mg~約80mg、例えば、約60mg、約65mg、約70mg、約75mgまたは約80mgおよび抗CTLA-4抗体について約180mg~約240mg、例えば、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mgまたは約240mgである。他の実施態様において、組み合わせにおける抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の一定用量は、抗PD-1抗体について約80mgおよび抗CTLA-4抗体について約240mgである。抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体は、同じ製剤中でも別々の製剤でもよい。
【0332】
ニボルマブと他の抗癌剤の組み合わせについて、これら薬剤は、好ましくはそれらの承認された投与量で投与される。処置は、臨床的利益が観察される限りまたは許容されない毒性または疾患進行が生じるまで続ける。それにも関わらず、ある実施態様において、投与されるこれらの抗癌剤の投与量は、承認された投与量より顕著に低く、すなわち、薬剤の治療量以下の投与量が抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される。抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、臨床治験で単剤治療として最高有効性を生じることが示されている投与量で、例えば、ニボルマブを3週毎に約3mg/kgで(Topalian et al., N Engl JMed 366:2443-54 (2012a); Topalian et al., Curr Opin Immunol 24:207-12 (2012b))または顕著に低い用量、すなわち、治療量以下の用量で投与し得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、約3週毎に約3mg/kgで投与される。
【0333】
投与量および頻度は、対象における抗体の半減期により変わる。一般に、ヒト抗体が最長の半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体と続く。投与量および投与頻度は、処置が予防的か治療的かにより変わり得る。予防適用において、比較的低投与量が、一般に比較的低頻度の間隔で長期にわたり投与される。一部患者は、生きている間処置を受け続ける。治療適用において、比較的短い間隔で、比較的高投与量が、疾患の進行が低減するかまたは終了するまで、好ましくは患者が疾患症状の部分的または完全改善を示すまで必要であることがある。その後、患者に予防レジメで投与し得る。
【0334】
ある実施態様において、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせで処置した対象を、さらに抗PD-1抗体単剤治療で処置し得る。ある実施態様において、対象は、抗PD-1抗体について約60mg~約80mg、例えば、約60mg、約65mg、約70mg、約75mgまたは約80mgおよび抗CTLA-4抗体について約180mg~約240mg、例えば、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mgまたは約240mgである組み合わせでの一定用量の抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体、続いて抗PD-1単剤治療、例えば、約3mg/kgまたは約60~約80mg、例えば、約60mg、約65mg、約70mg、約75mgまたは約80mgで処置される。他の実施態様において、対象は、抗PD-1について約80mgおよび抗CTLA-4抗体について約240mgである組み合わせでの一定用量の抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体、続いて抗PD-1抗体単剤治療、約3mg/kgまたは約60mg~約80mg、例えば、約60mg、約65mg、約70mg、約75mgまたは約80mgで処置される。
【0335】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者に過度の毒性とならずに、特定の患者、組成物および投与方法について所望の治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るために変わり得る。選択投与量レベルは、用いる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排泄率、処置の期間、他の薬物、用いる特定の組成物と組み合わせて使用される化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および病歴ならびに医薬分野で周知の同様の因子を含む、多様な薬物動態因子による。本発明の組成物は、当分野で周知の多様な方法の1以上を使用して、1以上の投与経路で投与され得る。当業者には認識されるとおり、経路および/または投与方法は、所望の結果による。
【0336】
キット
また本発明の範囲内にあるのは、治療用途のための、抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体を含むキットである。キットは、一般にキットの内容物の意図する用途および使用指示を含むラベルを含む。用語ラベルは、キット上にもしくはキットと共に提供されるまたは他の方法でキットに付随するあらゆる文書または記録媒体を含む。従って、本発明は、腫瘍を有する対象を処置するためのキットを提供し、該キットは、(a)0.1~10mg/kg体重の範囲の投与量のPD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」);および(b)ここに開示する方法において該抗PD-1抗体を使用するための指示を含む。本発明は、さらにSCLC由来腫瘍を有する対象を処置するためのキットを提供し、該キットは、(a)0.1~10mg/kg体重範囲の投与量の抗PD-1抗体、(b)0.1~10mg/kg体重の範囲の投与量の抗CTLA-4抗体および(c)ここに開示する方法において該抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体を使用するための指示を含む。ある実施態様において、本発明は、SCLC由来腫瘍を有する対象を処置するためのキットを提供し、該キットは、(a)200mg~800mgの範囲の投与量の抗PD-1抗体または200mg~1800mgの範囲の投与量の抗PD-L1抗体;(b)ここに開示する方法において該抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を使用するための指示を含む。ある実施態様において、本発明は、SCLC由来腫瘍を有する対象を処置するためのキットを提供し、該キットは、(a)200mg~800mgの範囲の投与量の抗PD-1抗体または200mg~1800mgの範囲の投与量の抗PD-L1抗体;(b)80mg~800mgの範囲の投与量の抗CTLA-4抗体;(c)ここに開示する方法において(a)抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体および(b)抗CTLA-4抗体を使用するための指示を含む。ある実施態様において、腫瘍は、肺癌、例えば、SCLCである。
【0337】
ある好ましい実施態様において、ヒト患者の処置のために、キットは、ここに開示する抗ヒトPD-1抗体、例えば、ニボルマブまたはペムブロリズマブを含む。ある好ましい実施態様において、ヒト患者の処置のために、キットは、ここに開示する抗ヒトPD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブまたはアベルマブを含む。ある好ましい実施態様において、ヒト患者の処置のために、キットは、ここに開示する抗ヒトCTLA-4抗体、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ、MK-1308またはAGEN-1884を含む。
【0338】
ある実施態様において、キットは、さらにサイトカインまたはそのバリアントを含む。ある実施態様において、キットは、(a)抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体、(b)抗CTLA-4抗体および(c)CD122アゴニストを含む。
【0339】
ある実施態様において、キットは、さらにここに開示する包括的ゲノムプロファイリングアッセイを含む。ある実施態様において、キットは、FOUNDATIONONE(登録商標)CDXTMゲノムプロファイリングアッセイを含む。ある実施態様において、キットは、さらに免疫療法剤、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体および/またはサイトカインを、ここに開示する方法により、高TMB状態を有するとして同定された対象に投与するための指示を含む。他の実施態様において、キットは、さらに(a)抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体、(b)抗CTLA-4抗体および(c)サイトカイン、例えば、CD122アゴニストを、ここに開示する方法により、高TMB状態を有するとして同定された対象に投与するための指示を含む。
【0340】
上記の全ての引用文献ならびにここに引用する全ての引用文献は、それら全体を引用により本明細書に包含させる。
【0341】
次の実施例は、説明のために提供され、限定のためではない。
【実施例0342】
実施例1。
再発SCLCを有する患者の処置選択肢は限られ、生存率は低い。SCLCを有する患者の臨床治験からの初期結果は、ニボルマブ単独またはイピリムマブとの組み合わせ、持続性応答および励みになる生存を示した。ニボルマブとイピリムマブの組み合わせの投与を受けた患者の26%が、2年を超える全生存率を有し、これに対して、ニボルマブ単剤治療を受けている患者では14%であった。これらのデータは、SCLCの処置のためのNCCNガイドラインへの、イピリムマブとの併用または非併用のニボルマブの採用を支持した。
【0343】
腫瘍細胞のPD-L1発現は、SCLCでは稀であり、PD-L1の状態にかかわりなく応答は観察されている。改善されたバイオマーカーが、SCLCの免疫療法のために必要である。先に、高TMBを有する対象は、低または中TMBを有する対象と比較して、ニボルマブ単剤治療での処置後、無進行生存(PFS)の率が高いことが判明していた。SCLCは、喫煙歴のある患者にほぼ排他的に見られ、高TMBにより特徴づけられる。TMBと有効性の相関が、NSCLCおよび膀胱癌でのニボルマブならびに黒色腫でのイピリムマブで見られている。高TMBは、SCLCのニボルマブ±イピリムマブでの利益の増大を伴い得る。本治験は、SCLCにおける、イピリムマブと併用または非併用のニボルマブに対する予測的バイオマーカーとしての腫瘍変異負荷(TMB)の使用を検討する。
【0344】
治験設計
先にSCLCと診断されており、先に少なくとも一つの先の白金含有レジメンを受けている、対象を選択した(
図23)。非無作為化および無作為化(3:2)患者は、(1)疾患進行または許容されない毒性出現まで、2週間毎の3mg/kg ニボルマブIV投与を含むニボルマブ単剤治療;または(2)3週毎の1mg/kg ニボルマブおよび3mg/kg イピリムマブIV投与を含むニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療を4サイクル、続いて疾患進行または許容されない毒性出現まで、2週間毎の3mg/kg ニボルマブIV投与を含むニボルマブ単剤治療を受けた。
【0345】
主目標は、RECIST v1.1による客観的応答率(ORR)の測定であった。二次目標は、安全性、全生存(OS)、無進行生存(PFS)および応答期間(DOR)のモニタリングを含んだ。事前に決められた検討目標は、バイオマーカー分析およびEQ-5D方式を使用する健康状態を含んだ。
【0346】
TMBを、2×100bpペアエンドリードを使用するIllumina HiSeq 2500を使用する全エキソームシークエンシングにより決定し、腫瘍における非同義ミスセンス変異の総数として計算した。検討分析のために、患者を、TMB三分位に基づき、3サブグループに分けた。
【0347】
ベースライン
計245対象が、ニボルマブ単剤治療に含まれ(ITT)、その中の133名がTMB評価可能であった(表15および
図2)。計156対象が、ニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療に含まれ(ITT)、その中の78名がTMB評価可能であった(表15および
図2)。
【表15】
【0348】
結果
無進行生存(PFS;
図3Aおよび3C)および全生存(OS;
図3Bおよび3D)は、ITT患者と、ニボルマブ単剤治療(
図3Aおよび3B)およびニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療(
図3Cおよび3D)についてTMB評価可能であったサブセットでそれぞれ同等であった。ITTおよびTMB評価可能患者におけるORRは、それぞれ、ニボルマブ単剤治療で11.4%および11.3%ならびにニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療で21.8%および28.2%であった。ニボルマブ単剤治療またはニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療を受けている患者のTMB分布を
図4Aに示す。統合したとき(
図4B)、SCLCコホートにおける総ミスセンス変異の分布は、最近の非小細胞肺癌(NSCLC)治験における総ミスセンス変異の分布と同等であった(
図4C)。
【0349】
全奏効率(ORR)は、ニボルマブ単剤治療を投与された対象(11.3%)より、ニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療を投与されたTMB評価可能対象(28.2%)で高かった(
図5)。TMBを層化したとき、最大効果が高TMBを有する対象で観察された。ニボルマブ単剤治療またはイピリムマブ単剤治療で処置された低TMBの対象は、それぞれ約4.8%および22.2%のORRを示した。ニボルマブ単剤治療またはイピリムマブ単剤治療で投与された中TMBの対象は、それぞれ約6.8%および16.0%のORRを示した。ニボルマブ単剤治療またはイピリムマブ単剤治療で処置された高TMBを有する対象は、それぞれ約21.3%および46.2%のORRを示した。
【0350】
一般に、良好な応答を経験する対象は、有するミスセンス腫瘍変異の数が多かった。ニボルマブ単剤治療を投与し、完全応答(CR)または部分応答(PR)を経験する対象は、平均325ミスセンス変異を有し、疾患安定を経験する者は平均211.5ミスセンス変異を有し、疾患安定を経験する者は平均185.5ミスセンス変異を有した(
図6A)。ニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療を投与し、完全応答(CR)または部分応答(PR)を経験する対象は、平均266ミスセンス変異を有し、疾患安定を経験するものは平均202ミスセンス変異を有し、疾患安定を経験するものは、平均156ミスセンス変異を有した(
図6B)。
【0351】
さらに、高TMBの対象は、低または中TMBを有する対象と比較して、ニボルマブ単剤治療(
図7A)またはニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療(
図7B)での処置後、PFSの増加を示した。ニボルマブ単剤治療について、平均PFSは、低TMBおよび中TMB対象で約1.3%および高TMB対象で約1.4%であり、1年目のPFSは、中TMBでわずか3.15に対して、高TMB対象で21.2%であった(
図7A)。ニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療について、平均PFSは、低TMB対象で約1.5%、中TMB対象で1.3%および高TMB対象で約7.8%であり、1年目のPFSは、中および低TMB対象でそれぞれ約8.0%および6.2%であるのに比して、高TMB対象で約30%であった(
図7B)。
【0352】
同様に、高TMBの対象は、低または中TMBを有する対象と比較して、ニボルマブ単剤治療(
図8A)またはニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療(
図8B)での処置後OSの増加を示した。ニボルマブ単剤治療について、中央OSは低TMB対象で約3.1%、中TMB対象で約3.9%および高TMB対象で約5.4%であり、1年目のOSは、中TMBで約26.0%および低TMB対象で22.1%であるのに対し、高TMB対象で35.2%であった(
図8A)。ニボルマブ/イピリムマブ組み合わせ治療について、中央OSは、低TMB対象で約3.4%、中TMB対象で3.6%および高TMB対象で約22%であり、1年目のOSは、中および低TMB対象でそれぞれ約19.6%および23.4%であるのに対し、高TMB対象で約62.4%であった(
図8B)。
【0353】
ここに開示する全ての刊行物、特許および特許出願は、引用により、各個々の刊行物、特許および特許出願が具体的にかつここに引用により包含されると示されるのと同程度に引用によりここに包含される。
【0354】
本出願は、全体として引用により本明細書に包含させる、米国仮出願62/572,514(2017年10月15日出願)および62/650,654(2018年3月30日出願)の利益を主張する。