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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156462
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20231017BHJP
   H01G 9/10 20060101ALI20231017BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20231017BHJP
   H01G 4/236 20060101ALI20231017BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20231017BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20231017BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01G9/008 301
H01G9/10 C
H01G2/02 101D
H01G4/236
H01G4/228 H
H01G9/15
H01G9/145
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133060
(22)【出願日】2023-08-17
(62)【分割の表示】P 2022112831の分割
【原出願日】2017-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2016213724
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016213725
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016233480
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 達治
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モールド樹脂層にクラックが発生することによる電解コンデンサの封止性の低下を抑制する。
【解決手段】電解コンデンサ1Aは、一対の電極を含むコンデンサ素子10と、電解液と、コンデンサ素子及び電解液を収容するケース11と、封口部材12と、封口部材を貫通する一対のリード14A、14Bと、モールド樹脂層13と、を備える。ケースは、開口を有する。封口部材は、ケースの開口を封止する。一対のリードは、一対の電極にそれぞれ電気的に接続される。モールド樹脂層は、ケースの開口側を臨む封口部材の外面の少なくとも一部を覆う。一対のリードの少なくとも一方が、タブ部16A、16Bと、引き出し部15A、15Bと、を有している。タブ部は、電極に接続されている。引き出し部は、タブ部の一端部に接続されている。タブ部の当該一端部が、封口部材の外面から突出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を含むコンデンサ素子と、
前記一対の電極の間に介在する電解液と、
前記コンデンサ素子および前記電解液を収容し、開口を有するケースと、
前記開口を封止する封口部材と、
前記封口部材を覆うモールド樹脂層と、
前記一対の電極にそれぞれ電気的に接続し、かつ、前記封口部材および前記モールド樹脂層を貫通する一対のリードと、を備え、
前記一対のリードの少なくとも一方が、電気的絶縁層で覆われた絶縁領域を有し、
前記電気的絶縁層は、前記一対のリードの少なくとも一方と、前記封口部材および前記モールド樹脂層の少なくとも一方との間に設けられている、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記電気的絶縁層は、前記一対のリードの少なくとも一方が、前記封口部材と前記モールド樹脂層との境界に接しないように設けられている、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記電気的絶縁層は、前記封口部材と前記モールド樹脂層との境界に跨って設けられている、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記絶縁領域が前記境界から前記モールド樹脂層側に延在する距離が、前記モールド樹脂層の厚さの10%以上である、請求項3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記絶縁領域が前記境界から前記封口部材側に延在する距離が、前記封口部材の厚さの10%以上である、請求項3または4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記一対のリードの少なくとも一方は、前記一対の電極の一方に接続されているタブ部と、前記タブ部に接続されている引き出し部とを有し、
少なくとも前記タブ部と前記引き出し部との接合部は、前記電気的絶縁層で覆われている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記引き出し部が、遷移金属を含む、請求項6に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記電気的絶縁層は、絶縁性樹脂層および絶縁性セラミックス層の少なくとも一方を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
一対の電極を含むコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容し、開口を有するケースと、
前記開口を封止する封口部材と、
前記封口部材を覆うモールド樹脂層と、
前記一対の電極にそれぞれ電気的に接続し、かつ、前記封口部材および前記モールド樹脂層を貫通する一対のリードと、を備え、
前記封口部材と前記モールド樹脂層との間に、隙間が設けられている、電解コンデンサ。
【請求項10】
さらに、電解液を有し、
前記隙間に露出する前記封口部材の表面に、前記電解液に含まれる成分の膜が形成されている、請求項9に記載の電解コンデンサ。
【請求項11】
前記一対のリードの少なくとも一方が、電気的絶縁層で覆われた絶縁領域を有し、
前記絶縁領域は、少なくとも前記隙間に跨って設けられている、請求項9または10に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封口部材を覆うモールド樹脂層を備える電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、一対の電極を含むコンデンサ素子と、一対の電極の間に介在する電解液と、コンデンサ素子および電解液を収容し、開口を有するケースと、ケースの開口を封止する封口部材と、一対の電極にそれぞれ電気的に接続され、かつ、封口部材を貫通する一対のリードとを備える。各リードは、例えばアルミニウムを主成分とするタブ部と、タブ部の一端部に接続された引き出し部とを具備する。タブ部は、ケース内で電極に接続され、引き出し部は、ケース外に引き出される。
【0003】
封口部材は、高温環境下で酸化により劣化することがあり、封口部材が劣化すると、電解コンデンサの封止性が低下する。また、電解液成分が封口部材を透過し、蒸散して、徐々に減少する傾向が見られる。そこで、ケース内の密閉性を高めるために、ケースの開口側を臨む封口部材の外面をモールド樹脂層で覆うことが提案されている(特許文献1)。モールド樹脂層を設けることで、電解液成分のケース外への蒸散が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-245106号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の局面に係る電解コンデンサは、一対の電極を含むコンデンサ素子と、一対の電極の間に介在する電解液と、コンデンサ素子および電解液を収容するケースと、封口部材と、封口部材を貫通する一対のリードと、モールド樹脂層と、を備える。ケースは、開口を有する。封口部材は、ケースの開口を封止する。一対のリードは、一対の電極にそれぞれ電気的に接続される。モールド樹脂層は、開口側を臨む封口部材の外面の少なくとも一部を覆う。一対のリードの少なくとも一方が、タブ部と、引き出し部と、を有する。タブ部は、電極に接続されている。引き出し部は、タブ部の一端部に接続されている。タブ部の一端部が、封口部材の外面から突出している。
【0006】
本開示によれば、ケースの開口側を臨む封口部材の外面の少なくとも一部を覆うモールド樹脂層を備える電解コンデンサにおいて、リードの腐食を抑制することができる。
【0007】
また、本開示の第2の局面に係る電解コンデンサは、一対の電極を含むコンデンサ素子と、一対の電極の間に介在する電解液と、コンデンサ素子および電解液を収容するケースと、封口部材と、封口部材を覆うモールド樹脂層と、封口部材およびモールド樹脂層を貫通する一対のリードと、を備える。ケースは、開口を有する。封口部材は、ケースの開口を封止する。一対のリードは、一対の電極にそれぞれ電気的に接続する。一対のリードの少なくとも一方が、電気的絶縁層で覆われた絶縁領域を有する。電気的絶縁層は、一対のリードの少なくとも一方と、封口部材およびモールド樹脂層の少なくとも一方との間に設けられている。
【0008】
本開示によれば、封口部材を覆うモールド樹脂層を有する電解コンデンサのリードの腐食を抑制することができる。
【0009】
また、本開示の第3の局面に係る電解コンデンサは、一対の電極を含むコンデンサ素子と、コンデンサ素子を収容するケースと、封口部材と、封口部材を覆うモールド樹脂層と、封口部材およびモールド樹脂層を貫通する一対のリードと、を備える。ケースは、開口を有する。封口部材は、ケースの開口を封止する。一対のリードは、一対の電極にそれぞれ電気的に接続する。封口部材とモールド樹脂層との間に、隙間が設けられている。
【0010】
本開示によれば、モールド樹脂層にクラックが発生することによる電解コンデンサの封止性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る電解コンデンサの概略断面図である。
図2】コンデンサ素子の一例の構成を説明するための概略図である。
図3】本開示の第1実施形態の第1変形例に係る電解コンデンサの概略断面図である。
図4】本開示の第1実施形態の第2変形例に係る電解コンデンサの概略断面図である。
図5】本開示の参考形態に係る電解コンデンサの概略断面図である。
図6図5における封口部材とモールド樹脂層との境界付近を示す要部断面図である。
図7】本開示の第2実施形態に係る電解コンデンサの概略断面図である。
図8】本開示の第2実施形態の変形例に係る電解コンデンサの概略断面図である。
図9】電気的絶縁層を設けた後、引き出し部と棒状部の接合部が封口部材の孔内に位置するように棒状部を封口部材に挿入した場合の電解コンデンサの要部断面図である。
図10】電気的絶縁層を設けた後、引き出し部と棒状部の接合部が封口部材の孔外に位置するように棒状部を封口部材に挿入した場合の電解コンデンサの要部断面図である。
図11】引き出し部と棒状部の接合部が封口部材の孔内に位置するように棒状部を封口部材に挿入した後、電気的絶縁層を設けた場合の電解コンデンサの要部断面図である。
図12】引き出し部と棒状部の接合部が封口部材の孔外に位置するように棒状部を封口部材に挿入した後、電気的絶縁層を設けた場合の電解コンデンサの要部断面図である。
図13】本開示の第3施形態に係る電解コンデンサの概略断面図である。
図14】引き出し部と棒状部の接合部が封口部材の孔内に位置するように、棒状部が封口部材の孔に挿入されている状態で、隙間が形成された場合の電解コンデンサの要部断面図である。
図15】引き出し部と棒状部の接合部が封口部材の孔外に位置するように、棒状部が封口部材の孔に挿入されている状態で、隙間が形成された場合の電解コンデンサの要部断面図である。
図16】本開示の第3実施形態の変形例に係る電解コンデンサの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施の形態の説明に先立ち、従来技術における問題点を簡単に説明する。一対のリードは、封口部材およびモールド樹脂層を貫通し、モールド樹脂層の実装面の側から引き出されている。電解液(例えば溶媒)は、ゴム成分を含む封口部材を比較的透過し易いが、モールド樹脂層を透過しにくい。そのため、封口部材の外面をモールド樹脂層で覆うと、封口部材の内部や、封口部材とモールド樹脂層との境界に、電解液が滞留することがある。このような場合、封口部材に含まれる塩素成分(塩素を含む成分)が電解液に溶け出し易くなる。リードが塩素成分を含む電解液に接触すると、リードの腐食が進行するおそれがある。
【0013】
より具体的に、図5、6を参照しながら、本開示の参考形態に係る電解コンデンサの一例の構造について説明する。
【0014】
電解コンデンサ1Dは、コンデンサ素子10と、電解液(図示しない)と、コンデンサ素子10および電解液を収容するケース11とを備える。ケース11の開口は、封口部材12により封止されている。ケース11の開口を臨む封口部材12の外面(以下、単に、封口部材12の外面とも称する。)は、モールド樹脂層13で覆われている。コンデンサ素子10が具備する一対の電極には、それぞれリード14A,14Bが接続されている。
【0015】
リード14A,14Bは、それぞれ一方および他方の電極に接続されたタブ部16A,16Bと、タブ部16A,16Bにそれぞれ接続された引き出し部15A,15Bを有する。タブ部16A,16Bと引き出し部15A,15Bとの接続部を、以下、リード内接続部175A,175Bとも称する。
【0016】
一方の電極は陽極であり、他方の電極は陰極である。陽極は、表面に誘電体層を有する。電解コンデンサは、誘電体層の表面の少なくとも一部を被覆する固体電解質層を具備してもよい。一方のリードは、陽極に接続された陽極リードであり、他方のリードは、陰極に接続された陰極リードである。
【0017】
図示例では、タブ部16A,16Bは、それぞれ棒状部17A,17Bと、扁平部18A,18Bを有する。扁平部18Aおよび18Bは、それぞれ陽極および陰極に接続されている。棒状部17A,17Bは、それぞれ引き出し部15A,15Bに接続されている。引き出し部15A,15Bの少なくとも一部は、モールド樹脂層13の実装面13Sから外部に引き出され、実装面13Sに設けられた溝部13A,13Bに収容されている。溝部13A,13Bの底面13a,13bは、所定の傾斜を有することが好ましい。
【0018】
棒状部17A,17Bの一端部(以下、先端部とも称する。)は、封口部材12に設けられた貫通孔内に位置している。封口部材12とモールド樹脂層13との境界付近には、電解液成分が滞留しやすい。棒状部17A,17Bの先端部が封口部材12の貫通孔内に位置する場合、封口部材12とモールド樹脂層13との境界付近に滞留する電解液成分は、リード内接続部175A,175Bおよび引き出し部15A,15Bに接触し易くなる。このとき、滞留する電解液成分により、リード内接続部175A,175Bおよび引き出し部15A,15Bが腐食する。また、封口部材12とモールド樹脂層13との境界の広い範囲に電解液が進入し、一対のリード14A,14Bのリード内接続部175A,175B間および/または引き出し部15A,15B間に電解液成分が滞留すると、当該リード間に電圧が印加されたときに、リード内接続部175A,175Bおよび/または引き出し部15A,15B(特に陽極リード側)の腐食が促進される。さらに、図6に示すように、棒状部17A,17Bの先端部が、封口部材の貫通孔内に位置する場合、リード14A,14Bとモールド樹脂層13との間に隙間が生じやすい。このような隙間には電解液成分が滞留しやすく、リード内接続部175A,175Bおよび/または引き出し部15A,15Bの腐食が促進される。
【0019】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に係る電解コンデンサは、一対の電極を含むコンデンサ素子と、一対の電極の間に介在する電解液と、コンデンサ素子および電解液を収容するケースと、封口部材と、封口部材を貫通する一対のリードと、モールド樹脂層を備える。封口部材は、ケースの開口を封止する。一対のリードは、一対の電極にそれぞれ電気的に接続される。モールド樹脂層は、封口部材の外面の少なくとも一部を覆う。一対のリードの少なくとも一方が、タブ部と、引き出し部とを有する。タブ部は、電極に接続されている。引き出し部は、タブ部の先端部に接続されている。タブ部の先端部が、封口部材の外面から突出している。これにより、滞留する電解液成分が、棒状部の先端部と引き出し部との接続部に接触することが抑制される。よって、リードの断線のような不具合が生じにくくなる。
【0020】
リードの中でも、タブ部(もしくは棒状部と扁平部)は、元々ケース内に収容される部位であるため、電解液との接触による腐食を生じにくい材質(弁作用金属など)で形成されている。例えば、タブ部は、酸化被膜で覆われているため、腐食を生じにくい。一方、タブ部と引き出し部との接続部(リード内接続部)およびこれに続く引き出し部は、例えば、CP線、Cu線などの腐食しやすい材質(Fe、Cuなどの遷移金属)を含む。タブ部の引き出し部側の端部(もしくは棒状部の先端部)を封口部材から突出させることで、リード内接続部およびこれに続く引き出し部を、モールド樹脂層と封口部材との境界から離間させることができる。これにより、電解液成分とリード内接続部および引き出し部との接触が抑制される。
【0021】
一対のリードの双方が、滞留する電解液成分と接触した状態で、電圧が印加されると、リード成分が電気分解され、リードの腐食が加速する。よって、一対のリードの少なくとも一方と電解液成分との接触を抑制すれば、リードの腐食は抑制される。陽極リードと陰極リードの中では、陽極リードの腐食が進行しやすいため、少なくとも陽極リードの引き出し側の端部(もしくは棒状部の先端部)を、封口部材の外面から突出させることが好ましい。ただし、リードの腐食を抑制する効果を高めるためには、一対のリードの双方と電解液成分との接触を抑制することが望ましい。
【0022】
リード内接続部は、モールド樹脂層に埋設されていてもよい。これにより、モールド樹脂層とリード内接続部との接着界面が形成される。接着界面には、滞留する電解液成分が侵入しにくいため、リードの腐食を抑制する効果が高められる。なお、リード内接続部は、通常、タブ部と引き出し部との溶接痕を有する。溶接痕の少なくとも一部がモールド樹脂層で覆われていれば、それに応じた腐食の抑制効果を得ることができる。
【0023】
タブ部の引き出し部側の端部は、モールド樹脂層で覆われていない露出部を有してもよい。露出部は、モールド樹脂層とリードとの接着界面を形成しないため、毛細管現象による露出部への電解液成分の這い上がりは生じない。露出部は、常時、外気に晒されるため、電解液成分で濡れた状態になりにくく、乾燥しやすくなる。よって、リードが電解液成分に接触することが抑制される。
【0024】
封口部材の外面から突出するタブ部の全体を、モールド樹脂層で覆わずに、露出させてもよい。この場合、リードが通過する貫通孔の周囲には、貫通孔を囲むように、モールド樹脂層を有さない領域が形成される。このとき、封口部材から突出するタブ部の周囲には、モールド樹脂層と封口部材との境界が形成されず、その部分が外部に露出している。よって、封口部材から突出するタブ部の周囲における電解液成分の滞留がさらに抑制される。
【0025】
一方、タブ部の引き出し部側の端部は、溶接痕の全体がモールド樹脂層で覆われるように、モールド樹脂層に埋設してもよい。このとき、タブ部の引き出し部側の端部に続く引き出し部の一部も一緒にモールド樹脂層に埋設してもよい。
【0026】
タブ部は、タブ部を構成する金属の酸化被膜で覆われていることが好ましい。これにより、タブ部と電解液成分との接触による腐食が生じにくくなる。例えば、タブ部がアルミニウムのような弁作用金属を含む場合、タブ部を陽極酸化して、タブ部に酸化被膜を形成することができる。酸化被膜は、陽極リードだけに形成すれば十分であるが、陰極リードに酸化被膜を形成してもよい。
【0027】
引き出し部は、柔軟な線状部材であることが好ましい。線状部材は、芯材と、芯材の表面を被覆するメッキ層とを具備することが好ましい。芯材は、例えば、導電性に優れるCuや、鋼もしくはFeなどを主成分とすることが好ましい。メッキ層は、低融点金属で形成されていることが好ましい。引き出し部が、低融点金属のメッキ層を具備することで、引き出し部を所定の被接続電極に接続することが容易になる。具体的には、CP線、Cu線などを引き出し部に用いることができる。CP線とは、芯材が鋼もしくはFeなどで形成され、メッキ層がSn、Cuなどで形成される線状部材である。Cu線とは、芯材がCuで形成され、メッキ層がSnなどで形成される線状部材である。
【0028】
引き出し部に遷移金属が含まれる場合、引き出し部からは、遷移金属が電解液成分に溶出しやすい。これに対し、タブ部の引き出し部側の端部を、封口部材の外面から突出させることで、引き出し部の腐食が顕著に抑制される。
【0029】
モールド樹脂層で覆われている封口部材の外面からは、電解液成分の蒸散が抑制される。よって、モールド樹脂層は、封口部材の外面の少なくとも一部を覆っていればよい。既に述べたように、封口部材の外面のうち、リードを通過させるための貫通孔の周囲には、貫通孔を囲むように、モールド樹脂層を有さない領域を設けてもよい。ただし、封口部材の外面のうち、貫通孔の周囲以外の領域は、モールド樹脂層で覆われていることが好ましい。このとき、封口部材の外面の50%以上の面積がモールド樹脂層で覆われていることが好ましい。封口部材の外面の全領域(100%)がモールド樹脂層で覆われていてもよい。
【0030】
モールド樹脂層は、封口部材の外面に加え、ケースの開口に続く側面の少なくとも一部を覆っていることが好ましい。これにより、ケース内の密閉性を更に高めることができる。モールド樹脂層は、ケースと対向する領域において、ケースに密着していることが好ましい。これにより、モールド樹脂層をより強固に封口部材に固定することができる。
【0031】
以下、本開示の第1実施形態に係る電解コンデンサについて、図面を参照しながら具体的に説明するが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0032】
図1に示す電解コンデンサ1Aは、コンデンサ素子10、電解液(図示しない)およびこれら収容するとともに開口を有するケース11を備える。ケース11は、例えば有底円筒形である。ケース11の開口は、封口部材12で封止されている。ケース11の開口側を臨む封口部材12の外面は、その全体がモールド樹脂層13で覆われている。モールド樹脂層13は、封口部材12の外面とともにケース11の開口を覆うように設けられ、更に、ケース11の開口に続く側面の少なくとも一部を覆っている。
【0033】
ケース11の開口は、コンデンサ素子10を収容した後、封口部材12およびモールド樹脂層13で封止される。ケース11の開口端部は、封口部材12側に絞り加工され、内側にかしめ加工されている。これにより、封口部材12がケース11の開口部に固定され、ケース11は封口部材12により密閉される。モールド樹脂層13は、ケース11と対向する領域において、ケース11に部分的に接着していればよく、接着していない箇所があってもよい。
【0034】
モールド樹脂層13は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などを含んでいてもよい。硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が例示される。硬化剤、重合開始剤、触媒などは、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
【0035】
硬化性樹脂としては、例えば、熱の作用により硬化または重合する化合物(例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマーなど)が使用される。このような化合物(または硬化性樹脂)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ジアリルフタレート、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。硬化性樹脂組成物は、複数の硬化性樹脂を含んでもよい。
【0036】
フィラーとしては、例えば、絶縁性の粒子(無機系、有機系)および/または繊維などが好ましい。フィラーを構成する絶縁性材料としては、例えば、シリカ、アルミナなどの絶縁性の化合物(酸化物など)、ガラス、鉱物材料(タルク、マイカ、クレーなど)などが挙げられる。モールド樹脂層は、これらのフィラーを一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。モールド樹脂層中のフィラーの含有割合は、例えば、10質量%以上、90質量%以下である。
【0037】
モールド樹脂層13は、熱可塑性樹脂もしくはこれを含む組成物を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを用いることができる。
【0038】
モールド樹脂層13は、射出成形、インサート成形、圧縮成形などの成形技術を用いて形成することができる。モールド樹脂層13は、例えば、所定の金型を用いて、硬化性樹脂組成物または熱可塑性樹脂(組成物)を封口部材12の外面とともにケース11の開口を覆うように、金型内の所定箇所に充填して形成することができる。
【0039】
図2に示すコンデンサ素子10は、陽極21と陰極22とを、これらの間にセパレータ23を介在させて捲回することにより形成されている。陽極21および陰極22には、それぞれ陽極リード14Aおよび陰極リード14Bが電気的に接続されている。各リードは、封口部材12を貫通して外部に引き出されている。
【0040】
陽極リード14Aおよび陰極リード14Bは、陽極21および陰極22にそれぞれ接続されたタブ部16A,16Bと、タブ部16A,16Bにそれぞれ接続された引き出し部15A,15Bとを有する。タブ部16A,16Bは、例えば、アルミニウムを含む。引き出し部15A,15Bは、例えば、鉄、銅、ニッケル、錫などの金属を含むCP線、Cu線などである。電解コンデンサ1Aが、基板に実装される際には、引き出し部15A,15Bを介して、基板上の被接続電極とコンデンサ素子10のリード14A,14Bとが電気的に接続される。
【0041】
タブ部16A,16Bは、それぞれ棒状部17A,17Bと扁平部18A,18Bとを有する。棒状部17A,17Bと扁平部18A,18Bは、それぞれ互いに電気的に接続されていればよく、一体でもよい。例えば、棒状体の一部を圧延することで、扁平部が形成される。圧延されない領域は、棒状部として残る。これにより、扁平部と棒状部とが一体化されたタブ部16A,16Bを形成することができる。
【0042】
棒状部17A,17Bは、それぞれ封口部材12を貫通している。棒状部17A,17Bの形状は、特に制限されず、丸棒状(例えば、断面が円形や楕円形である棒状)でもよく、角棒状(例えば、断面が多角形である棒状)でもよい。棒状部17A,17Bは、それぞれ扁平部18A,18Bを介して、コンデンサ素子10に接続されている。扁平部18A,18Bを有することで、リード14A,14Bと陽極、陰極との接続が容易になる。
【0043】
引き出し部15A,15Bは、棒状部17A,17Bの先端部に溶接などにより接続され、引き出し部15A,15Bと棒状部との境界にリード内接続部175A,175Bを形成している。引き出し部15A,15Bの少なくとも一部は、それぞれモールド樹脂層13を通過して外部に引き出されている。引き出し部15A,15Bの形状は、特に制限されず、例えば、ワイヤ状でもよく、リボン状でもよい。
【0044】
棒状部17A,17Bの先端部は、封口部材12の外面から突出している。棒状部17A,17Bの最先端部に対応するリード内接続部175A,175Bもしくは溶接痕の最も引き出し部側の部位と、封口部材12の外面との距離Dは、引き出し部15A,15Bもしくはリード内接続部175A,175Bと電解液成分との接触を抑制する観点から大きいほど好ましい。距離Dは、モールド樹脂層13の最大厚さTの5%以上が好ましい。このとき、モールド樹脂層13の実装面13Sから、棒状部17A,17Bの先端部が突出しないことが望ましい。ここで、モールド樹脂層13の最大厚さTとは、モールド樹脂層13の実装面13Sと封口部材12の外面との間の鉛直距離の最大値である。鉛直距離とは、封口部材12の外面の法線方向における距離をいう。
【0045】
上記構成においては、リード内接続部175A,175Bがモールド樹脂層13に埋設されている。棒状部17A,17Bの先端部は全体的にモールド樹脂層13で覆われ、モールド樹脂層13と棒状部17A,17Bの先端部との接着界面が十分に大きな面積を持って形成される。このような接着界面により、リード内接続部175A,175Bもしくは引き出し部15A,15Bと、電解液成分との接触が顕著に抑制される。
【0046】
図1に示すように、モールド樹脂層13の実装面13Sには、細長形状の溝部13A,13Bが設けられている。引き出し部15A,15Bは、実装面13Sから外部へ引き出された部分を有する。当該部分は、溝部13A,13Bに収容されることで、実装面13S付近に配置される。
【0047】
底面13a,13bは、引き出し部15A,15Bがモールド樹脂層13から外部へ引き出され始める箇所から実装面13Sの外周に向かって、徐々に溝部13A,13Bの深さが増大するように傾斜している。引き出し部15A,15Bを実装面13Sに対して略平行に折り曲げると、引き出し部15A,15Bには、元の形状に戻ろうとする復元力が働く。この復元力を考慮して、溝部13A,13Bの底面には上記傾斜が設けられている。実装面13Sに対する底面13a,13bの傾斜角度は、例えば3°以上、30°以下である。なお、底面13a,13bを傾斜させずに、溝部13A,13Bの深さを一定にしてもよい。
【0048】
封口部材12は、絶縁性物質であればよい。絶縁性物質としては弾性体が好ましい。ゴムなどの弾性体を含む封口部材12を用いることで、高い封止性を確保することができる。高い耐熱性が得られ易い観点からは、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン(商標)ゴムなど)、ブチルゴム、イソプレンゴムなどが好ましい。
【0049】
封口部材12は、ケース11の開口の形状に対応する形状(例えば、円盤状などのディスク状など)を有する。封口部材12は、棒状部17A,17Bを通すための貫通孔を有する。貫通孔の形状やサイズは、棒状部17A,17Bの形状やサイズに応じて適宜決定すればよい。
【0050】
以下、コンデンサ素子10について説明する。
【0051】
コンデンサ素子10は、例えば、図2に示すような巻回体を備えている。巻回体は、誘電体層を有する陽極21と、陰極22と、これらの間に介在するセパレータ23と、を備えている。コンデンサ素子10において、陽極21にはリード14Aが接続され、陰極22にはリード14Bが接続されている。
【0052】
陽極21および陰極22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、巻回体の最外周を止めずに、一部が展開された状態を示している。
【0053】
陽極21としては、例えば、表面が粗面化された金属箔が用いられる。金属箔を構成する金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属、または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
【0054】
金属箔表面の粗面化は、公知の方法により行うことができる。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、例えば、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば、直流電解法または交流電解法などにより行ってもよい。
【0055】
誘電体層は、陽極21の表面に形成される。具体的には、誘電体層は、粗面化された金属箔の表面に形成されるため、陽極21の表面の孔や窪み(ピット)の内壁面に沿って形成される。
【0056】
誘電体層の形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理は、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬することにより行ってもよい。化成処理では、必要に応じて、金属箔を化成液に浸漬した状態で、電圧を印加してもよい。
【0057】
陰極22には、例えば、金属箔が使用される。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。陰極22には、必要に応じて、粗面化および/または化成処理を行ってもよい。粗面化および化成処理は、例えば、陽極21について記載した方法などにより行なうことができる。
【0058】
セパレータ23としては、特に制限されず、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、ポリアミド(例えば、脂肪族ポリアミド、アラミドなどの芳香族ポリアミド)の繊維を含む不織布などを用いてもよい。
【0059】
巻回体は、公知の方法により作製することができる。巻回体を形成する際、リードを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リード14A,14Bを巻回体から植立させてもよい。
【0060】
コンデンサ素子10は、電解液を備える。電解液としては、非水溶媒であってもよく、非水溶媒とこれに溶解させたイオン性物質(溶質、例えば、有機塩)との混合物でもよい。非水溶媒は、有機溶媒でもよく、イオン性液体でもよい。非水溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、スルホラン、γ-ブチロラクトン、N-メチルアセトアミドなどを用いることができる。有機塩としては、例えば、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリニウムなどが挙げられる。
【0061】
コンデンサ素子10は、誘電体層の表面の少なくとも一部を被覆する固体電解質層を備えてもよい。
【0062】
固体電解質層は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。固体電解質層は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で化学重合および/または電解重合することにより、形成することができる。あるいは、導電性高分子が溶解した溶液、または、導電性高分子が分散した分散液を、誘電体層に塗布することにより、形成することができる。
【0063】
ケース11の材料には、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金が用いられる。
【0064】
(第1実施形態の第1変形例)
図3に示す電解コンデンサ1Bは、タブ部16A,16Bの棒状部17A,17Bの先端部が、モールド樹脂層13に埋設されていない点以外、第1実施形態と同様の構造を有する。本変形例においても、リード内接続部175A,175Bおよびこれに続く引き出し部15A,15Bを、封口部材12とモールド樹脂層13との境界から十分に離間させることができる。なお、図3では、図1に示した第1実施形態における構成要素と同じ構成要素に同じ符号を付している。
【0065】
モールド樹脂層13は、封口部材12の外面を全面的に覆っている。一方、棒状部17A,17Bの先端部およびリード内接続部175A,175Bは、モールド樹脂層13に埋設されておらず、外部に露出している。このような露出部には、電解液成分の這い上がりを促進する毛細管現象は生じない。また、露出部は、常時、外気に晒され、乾燥しやすくなる。以上により、電解液成分がリード間に滞留することがさらに抑制される。
【0066】
ここでも、距離Dは、モールド樹脂層13の最大厚さTの5%以上が好ましい。このとき、モールド樹脂層13の実装面13Sから棒状部17A,17Bの先端部が突出しないように距離Dを設定することが望ましい。
【0067】
モールド樹脂層13の実装面13Sに細長形状の溝部13A,13Bを設ける場合、棒状部17A,17Bの先端部がモールド樹脂層13から突出する箇所で、溝部13A,13Bの深さを大きくすることが好ましい。これにより、リード内接続部175A,175Bおよびこれに続く引き出し部15A,15Bを溝部13A,13Bに収容することができる。よって、実装面13Sから引き出し部15A,15Bが突出するのを抑制することができる。
【0068】
(第1実施形態の第2変形例)
図4に示す電解コンデンサ1Cは、棒状部17A,17Bのうち、封口部材12の外面から突出する部位の全体が、モールド樹脂層13で覆われずに露出している。この点以外、第1実施形態と同様の構造を有する。ここでも、距離Dは、モールド樹脂層13の最大厚さTの5%以上が好ましい。なお、図4では、図1に示した第1実施形態における構成要素と同じ構成要素に同じ符号を付している。
【0069】
棒状部17A,17Bが突出する封口部材12の貫通孔の周囲には、その貫通孔を囲むように、モールド樹脂層13で覆われない領域が形成されている。例えば、モールド樹脂層13には、棒状部17A,17Bの一部が貫挿される筒状の貫通孔が形成される。この場合、封口部材12から突出する棒状部17A,17Bの周囲の少なくとも一部に、モールド樹脂層13と封口部材12との境界が形成されず、封口部材12の外面が僅かに露出する。そのため、封口部材12から突出する棒状部17A,17Bの周囲では、封口部材12とモールド樹脂層13との境界が不連続になる。また、封口部材12から突出する棒状部17A,17Bには、電解液成分の這い上がりを促進する毛細管現象が生じず、棒状部17A,17Bの先端部は、常時、外気に晒され、乾燥しやすくなる。以上により、電解液成分によるリードの腐食が更に高度に抑制される。
【0070】
なお、陽極リードおよび陰極リードの少なくとも一方が、図1図3または図4に示すように、封口部材の外面から突出していれば、リードが電解液成分に接触することが抑制される。また、陽極リードおよび陰極リードの一方が、図1図3または図4に示される何れかの構成を有し、他方が、図1図3または図4に示される他の何れかの構成を有してもよい。
【0071】
(第2実施形態)
本開示の第2実施形態に係る電解コンデンサは、一対の電極を含むコンデンサ素子と、一対の電極の間に介在する電解液と、コンデンサ素子および電解液を収容ケースと、封口部材と、封口部材を覆うモールド樹脂層と、封口部材およびモールド樹脂層を貫通する一対のリードと、を備える。ケースは、開口を有する。封口部材は、ケースの開口を封止する。一対のリードは、一対の電極にそれぞれ電気的に接続する。一対のリードの少なくとも一方が、電気的絶縁層で覆われた絶縁領域を有する。電気的絶縁層は、一対のリードの少なくとも一方と、封口部材およびモールド樹脂層の少なくとも一方との間に設けられている。電気的絶縁層は、リードが封口部材およびモールド樹脂層を貫通する領域の少なくとも一部において、形成されていればよい。
【0072】
一対の電極のうちの一方は、陽極であり、他方は、陰極である。陽極は、表面に誘電体層を有する。一対のリードのうちの一方は、陽極に電気的に接続する陽極リードであり、他方は、陰極に電気的に接続する陰極リードである。
【0073】
上記絶縁領域(電気的絶縁層)を設けることにより、封口部材の内部や、封口部材とモールド樹脂層との境界に、電解液が滞留する場合でも、リードと、滞留する電解液との接触が抑制される。よって、封口部材に含まれる塩素成分が、滞留する電解液中に溶け出した場合でも、リードの腐食を抑制できる。なお、電解液が滞留するとは、電解液に含まれる成分(例えば、溶媒や、電解質塩が溶解した溶液)が滞留することを意味する。
【0074】
リードは、封口部材を貫通する領域だけでなく、モールド樹脂層を貫通する領域でも、上記の滞留する電解液に接触するおそれがある。よって、リードと、封口部材および/またはモールド樹脂層との間に(リードが封口部材およびモールド樹脂層を貫通する領域の少なくとも一部において)、電気的絶縁層が形成されていれば、リードの腐食を抑制する効果が得られる。
【0075】
特に封口部材とモールド樹脂層との境界に電解液が滞留し易いことから、電気的絶縁層は、少なくとも、一対のリードの少なくとも一方が、封口部材とモールド樹脂層との境界に接しないように(すなわちリードが境界と対面しないように)設けられていることが好ましい。この場合、絶縁領域を設けることによる効果を更に高めることができる。更に、電気的絶縁層は、封口部材とモールド樹脂層との境界に跨って設けられていることがより好ましい。
【0076】
また、仮に、一対のリードと、封口部材とモールド樹脂層との境界に滞留した電解液とが接触した状態で電解コンデンサに電圧が印加された場合、リード(特に、陽極リード)の腐食が進行する。一対のリードの少なくとも一方が、封口部材とモールド樹脂層との境界に接しないように、電気的絶縁層を設けることで、このようなリードの腐食の進行が抑制される。このようなリードの腐食の進行を抑制する効果を更に高めるためには、一対のリードの両方に絶縁領域が設けられていることが好ましい。また、このような状態において、陽極リードは陽極リードを構成する金属(例えばアルミニウムや錫)が溶け出し易くなる。よって、陽極リードのみに絶縁領域を設けてもよい。
【0077】
電気的絶縁層は、電解液もしくは塩素成分を含む溶媒に対する耐食性に優れていることが好ましい。この場合、長期にわたり、絶縁領域を設けることによる効果を維持することができる。
【0078】
以下、本開示の第2実施形態に係る電解コンデンサを、図面を参照しながら詳細に説明するが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0079】
図7に示す電解コンデンサ2Aは、陽極箔21(図2参照)および陰極箔22(図2参照)を含むコンデンサ素子10と、陽極箔21と陰極箔22との間に介在する電解液(図示しない)と、コンデンサ素子10および電解液を収容し、開口を有する有底円筒形のケース11と、を備える。ケース11の材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金が挙げられる。
【0080】
電解コンデンサ2Aは、ケース11の開口を封止する封口部材12と、封口部材12を覆うモールド樹脂層13とを備える。モールド樹脂層13は、封口部材12のケース11の外側に配される主面とともにケース11の開口を覆うように設けられている。ケース11の開口は、コンデンサ素子10を収容した後、封口部材12およびモールド樹脂層13で封止される。ケース11の開口端部の近傍は、封口部材12側に絞り加工されているとともに、ケース11の開口端部は、内側にかしめ加工されている。これにより、封口部材12がケース11の開口部に固定され、ケース11は封口部材12により封止されている。モールド樹脂層13を設けることで、封口部材12の酸化などによる劣化を抑制するとともに、電解コンデンサ2Aの封止性をさらに高めている。
【0081】
図7に示すように、モールド樹脂層13が、さらに、ケース11の開口に続く側面の少なくとも一部を覆っていることが好ましい。これにより、電解コンデンサの封止性をさらに高めることができる。なお、本実施形態において、モールド樹脂層13と、ケース11および封口部材12とは、部分的に接着していない箇所があってもよい。
【0082】
モールド樹脂層13としては、第1実施形態と同様の構成、材料を使用することができる。
【0083】
電解コンデンサ2Aは、コンデンサ素子10に含まれる陽極箔21および陰極箔22にそれぞれ電気的に接続し、かつ、封口部材12およびモールド樹脂層13を貫通する一対のリード14A,14Bを備える。電解コンデンサが基板に実装された際には、リード14A,14Bを介して、コンデンサ素子10と、基板上の端子とが電気的に接続される。
【0084】
リード14A,14Bは、陽極箔21および陰極箔22にそれぞれ接続したタブ部16A,16Bと、タブ部16A,16Bにそれぞれ接続した引き出し部15A,15Bとを有する。引き出し部15A,15Bとタブ部16A,16Bとは、溶接などにより接続されている。引き出し部15A,15Bは、例えば、鉄、銅、ニッケル、錫などの金属を含む。タブ部16A,16Bは、例えば、アルミニウムを含む。
【0085】
タブ部16A,16Bは、それぞれ、棒状部17A,17Bと、扁平部18A,18Bとを有する。棒状部17A,17Bと扁平部18A,18Bとは、それぞれ、電気的に接続していればよく、一体化していてもよい。例えば、棒状体の一端部を圧延することで扁平部が形成され、圧延されない領域が棒状部として残ることで、扁平部と棒状部とが一体化したタブ部を形成することができる。
【0086】
本実施形態において、棒状部17A,17Bは、それぞれ封口部材12内に配置された部分を含む。引き出し部15A,15Bは、棒状部17A,17Bの先端部からそれぞれ延びている。棒状部17A,17Bは、それぞれ、扁平部18A,18Bを介して、コンデンサ素子10に接続されている。扁平部18A,18Bを有することで、リード14A,14Bとコンデンサ素子との接続が容易になる。
【0087】
引き出し部15A,15Bの形状は特に制限されず、例えば、ワイヤ状であってもよく、リボン状であってもよい。棒状部17A,17Bの形状は特に制限されず、丸棒状(例えば、断面が円形や楕円形である棒状)であってもよく、角棒状(例えば、断面が多角形である棒状)であってもよい。
【0088】
リード14A,14Bは、電気的絶縁層19A,19Bで覆われた絶縁領域を有する。電気的絶縁層19A,19Bは、リード14A,14Bと、封口部材12およびモールド樹脂層13との間に設けられている。電気的絶縁層19A,19Bを設けることにより、封口部材12に含まれる塩素成分が、封口部材12の内部や封口部材12とモールド樹脂層13との境界に滞留する電解液中に溶け出した場合でも、リードの腐食を抑制できる。
【0089】
図7に示すように、電気的絶縁層19A,19Bは、リード14A,14Bが、封口部材12とモールド樹脂層13との境界に接しないように設けられていることが好ましい。このような電気的絶縁層19A,19Bを設けることにより、リード14A,14Bが、封口部材12とモールド樹脂層13との境界に滞留した電解液に接触することを抑制することができる。リード14A,14Bが電解液に接触した状態で電解コンデンサに電圧が印加された際のリード14A,14B(特に、陽極側のリード14A)の腐食の進行を抑制することができる。
【0090】
図7に示すように、電気的絶縁層19A,19Bは、封口部材12とモールド樹脂層13との境界に跨って設けられていることがより好ましい。この場合、リード14A,14Bが、封口部材12とモールド樹脂層13との境界に滞留した電解液に接触することを抑制する効果を更に高めることができる。
【0091】
電気的絶縁層19A,19Bは、電解液もしくは塩素成分を含む溶媒に対する耐食性に優れていることが好ましい。この場合、長期にわたり、絶縁領域を設けることによる効果を維持することができる。
【0092】
電気的絶縁層19A,19Bの厚さは、例えば、0.01mm以上、1.00mm以下である。
【0093】
引き出し部15A,15Bが遷移金属を含む場合、引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bとの溶接の際に、引き出し部15A,15Bおよび棒状部17A,17Bの端部同士が溶け合うことで、接合部の表面に遷移金属が露出する。よって、接合部が封口部材12とモールド樹脂層13との境界に滞留する電解液に接触すると、接合部(特に陽極側の接合部)で腐食が進行し易く、接合部でリードが断線し易い。よって、図7に示すように、少なくともタブ部16A,16B(棒状部17A,17B)と引き出し部15A,15Bとの接合部が、電気的絶縁層19A,19Bで覆われていることが好ましい。換言すれば、絶縁領域は、リード14A,14Bの棒状部17A,17Bから引き出し部15A,15Bに亘る領域に設けることが好ましい。接合部が電気的絶縁層で覆われることで、接合部の腐食の進行、およびそれに伴う接合部での断線を抑制することができる。図1に示すように、接合部が、上記の境界近傍に位置する場合、上記の境界に滞留する電解液に接触し易くなることから、接合部を図7に示す電気的絶縁層19A,19Bで覆うことによる効果が顕著に得られる。
【0094】
本実施形態では、図7に示すように、タブ部16A,16B(棒状部17A,17B)と引き出し部15A,15Bとの接合部の少なくとも一部が、封口部材12とモールド樹脂層13との境界よりも封口部材12側に位置しているが、上記接合部の少なくとも一部は、上記境界よりもモールド樹脂層13側に位置してもよい。
【0095】
絶縁領域が封口部材12とモールド樹脂層13との境界からモールド樹脂層13側に延在する距離t1a,t1bが、モールド樹脂層13の厚さT1の10%以上であることが好ましい。この場合、電解コンデンサの封止性を更に高めることができる。
【0096】
本実施形態において、絶縁領域の距離t1a,t1bは、電気的絶縁層19A,19Bが、封口部材12とモールド樹脂層13との境界面から当該境界面と垂直な方向に沿ってモールド樹脂層13側に延びる距離である。モールド樹脂層13の厚さT1は、ケース11の軸方向(図1中のX方向)における厚さであり、後述するモールド樹脂層13の溝部13A,13Bが設けられていない領域の厚さである。
【0097】
絶縁領域が封口部材12とモールド樹脂層13との境界から封口部材12側に延在する距離t2a,t2bが、封口部材12の厚さT2の10%以上であることが好ましい。この場合、電解コンデンサの封止性を更に高めることができる。
【0098】
本実施形態において、絶縁領域の距離t2a,t2bは、電気的絶縁層19A,19Bが、封口部材12とモールド樹脂層13との境界面から当該境界面と垂直な方向に沿って封口部材12側に延びる距離である。封口部材12の厚さT2は、ケース11の軸方向(図1中のX方向)における厚さである。
【0099】
本実施形態では、リード14Aおよびリード14Bの両方に絶縁領域を設けたが、リード14Aおよびリード14Bのうちの一方に絶縁領域を設けてもよい。
【0100】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、図7に示す電気的絶縁層19A,19Bを設けたが、図8に示す電気的絶縁層29A,29Bを設けてもよい。電気的絶縁層29A,29Bを設けることで、リード14A,14Bが封口部材12およびモールド樹脂層13を貫通する領域の全体にわたって、電解液との接触を抑制できる。
【0101】
電気的絶縁層29A,29Bの一方の端部は、封口部材12の、モールド樹脂層13側と反対側の主面から露出している。この場合、絶縁領域を設けることによる効果を更に高めることができる。
【0102】
また、電気的絶縁層29A,29Bの他方の端部は、モールド樹脂層13の実装面13S側から露出している。この場合、絶縁領域を設けることによる効果を更に高めることができる。ただし、実装性を高めるために、電気的絶縁層29A,29Bは、リード14A,14Bが実装される部分に設けないことが好ましい。
【0103】
電気的絶縁層19A,19B,29A,29Bは、絶縁性樹脂層および絶縁性セラミックス層の少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、電気的絶縁性および電解液(塩素成分を含む溶媒)に対する耐食性に優れた電気的絶縁層が得られる。
【0104】
絶縁性樹脂層は、硬化性樹脂組成物の硬化物、熱可塑性樹脂もしくはこれを含む組成物含むことが好ましい。硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂などモールド樹脂層に用い得る材料として例示したものを用いることができる。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加え、フィラー、硬化剤などを含んでもよい。
【0105】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなどを用いることができる。中でも、熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミドが好ましい。
【0106】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。中でも、熱可塑性樹脂は、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミドが好ましい。
【0107】
絶縁性樹脂層は、リードの所定箇所に熱硬化性樹脂組成物を塗布した後、硬化させることにより形成してもよく、リードの所定箇所に熱可塑性樹脂(組成物)を塗布することにより形成してもよい。また、絶縁性樹脂層は、リードの所定箇所に絶縁性樹脂テープを貼付することにより形成してもよい。
【0108】
絶縁性セラミックス層は、シリカ、金属酸化物、炭化物、硼化物、カップリング剤を含むことが好ましい。シリカは、例えば、天然結晶質シリカ、天然非晶質シリカ、合成結晶質シリカ、合成非晶質シリカなどを含む。中でも、シリカは、合成非晶質シリカを含むことが好ましい。金属酸化物は、例えば、アルミニウムを含む酸化物、チタンを含む酸化物、タンタルを含む酸化物などを含む。炭化物は、例えば、炭化珪素、炭化チタン、炭化ホウ素などを含む。硼化物は、例えば、二硼化アルミニウム、二硼化チタンなどを含む。カップリング剤は、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などを含む。
【0109】
絶縁性セラミックス層は、例えば、リードの所定箇所に、セラミックスをエアロゾルデポジション法により付着させたり、セラミックスを含むテープを貼付したり、セラミックスを含む塗料を塗布したりすることにより形成される。
【0110】
電気的絶縁層の形成は、リードを封口部材に挿入する前に行ってもよく、リードを封口部材に挿入した後に行ってもよい。
【0111】
ここで、電気的絶縁層の形成を、リードを封口部材に挿入する前に行った場合の電解コンデンサの例を、図9および図10に示す。図9および図10は、電解コンデンサにおける封口部材とモールド樹脂層との境界付近を示す要部断面図である。
【0112】
図9に示す電解コンデンサの場合、例えば、図9に示す電気的絶縁層39A,39Bを設ける。その後、引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bの接合部が封口部材12の孔内に位置するように、棒状部17A,17Bを封口部材12に挿入し、次いで、モールド樹脂層13を形成する。
【0113】
図10に示す電解コンデンサの場合、例えば、図10に示す電気的絶縁層49A,49Bを設ける。その後、引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bの接合部が封口部材12の孔外に位置するように、棒状部17A,17Bを封口部材12に挿入し、次いで、モールド樹脂層13を形成する。
【0114】
また、電気的絶縁層の形成を、リードを封口部材に挿入した後に行った場合の電解コンデンサの例を、図11および図12に示す。図11および図12は、電解コンデンサにおける封口部材とモールド樹脂層との境界付近を示す要部断面図である。
【0115】
図11に示す電解コンデンサの場合、例えば、引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bの接合部が封口部材12の孔内に位置するように、棒状部17A,17Bを封口部材12に挿入する。その後、図11に示す電気的絶縁層59A,59Bを設け、次いで、モールド樹脂層13を形成する。
【0116】
図12に示す電解コンデンサの場合、例えば、引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bの接合部が封口部材12の孔外に位置するように、棒状部17A,17Bを封口部材12に挿入する。その後、図12に示す電気的絶縁層69A,69Bを設け、次いで、モールド樹脂層13を形成する。
【0117】
なお、本実施形態において、電気的絶縁層は、図9図12に示す電気的絶縁層に限定されない。本実施形態において、電気的絶縁層が、リードと、封口部材および/またはモールド樹脂層との間に設けられていれば、リードの腐食を抑制する効果が得られる。電気的絶縁層は、リードと、封口部材およびモールド樹脂層との間に(例えば封口部材とモールド樹脂層との境界に跨って)設けてもよい。また、電気的絶縁層は、リードと封口部材との間(リードが封口部材を貫通する領域)のみに設けてもよく、リードとモールド樹脂層との間(リードがモールド樹脂を貫通する領域)のみに設けてもよい。
【0118】
引き出し部15A,15Bは、モールド樹脂層13の実装面13Sの側から外部へ引き出されている部分を有し、当該部分は、モールド樹脂層13の実装面13Sに沿って配されている。
【0119】
図7のように、モールド樹脂層13の実装面13Sに、リード14A,14Bのモールド樹脂層13から外部へ引き出された部分(引き出し部15A,15B)を収容する細長形状の溝部13A,13Bを設けてもよい。溝部13A,13Bに引き出し部15A,15Bを収容することで、実装面13S付近に引き出し部15A,15Bを安定して固定し配置することができる。
【0120】
溝部13A,13Bの底面13a,13bは、溝部13A,13Bのリード14A,14Bがモールド樹脂層13から外部へ引き出される側の一端部から、他端部に向かって、徐々に溝部13A,13Bの深さが増大するように傾斜している。引き出し部15A,15Bを実装面13Sに対して略平行となるよう折り曲げる際に、引き出し部15A,15Bは元の形状に戻ろうとする力が働く。この点を考慮して上記のように溝部13A,13Bの底面を傾斜させることで、引き出し部15A,15Bが実装面13Sから過度に飛び出すことがなく、引き出し部15A,15Bを溝部13A,13B内に収容させることができる。実装面13Sに対する溝部13A,13Bの底面の傾斜角度は、例えば、3°以上、30°以下である。
【0121】
本実施形態では、溝部13A,13Bの底面を傾斜させているが、溝部13A,13Bの底面を傾斜させずに、溝部13A,13Bの深さは一定としてもよい。
【0122】
封口部材12としては、第1実施形態と同様の構成、材料を使用することができる。
【0123】
コンデンサ素子10については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態において、電解液の電導度は低くてもよい。
【0124】
ケース内に収容されている電解液は、封口部材に含まれる塩素成分を溶解可能な溶媒を含み得る。よって、ケース内の電解液(溶媒)量が少ない場合でも、リードが腐食するおそれがある。電気的絶縁層を設けることにより、このようなリードの腐食を抑制する効果が得られる。
【0125】
(第3実施形態)
モールド樹脂層は、通常、封口部材に密着して形成されている。しかし、モールド樹脂層と封口部材とでは、温度上昇時の膨張度合い(線膨張係数)が大きく異なる。そのため、モールド樹脂層の封口部材との境界付近にストレスが集中することにより、モールド樹脂層にクラックが生じ、電解コンデンサの封止性が低下することがある。
【0126】
本開示の第3実施形態に係る電解コンデンサは、一対の電極を含むコンデンサ素子と、コンデンサ素子を収容するケースと、封口部材と、封口部材を覆うモールド樹脂層と、封口部材およびモールド樹脂層を貫通する一対のリードと、を備える。ケースは、開口を有する。封口部材は、ケースの開口を封止する。一対のリードは、一対の電極にそれぞれ電気的に接続する。封口部材とモールド樹脂層との間には、隙間が設けられている。
【0127】
上記の隙間を設けることにより、モールド樹脂層と封口部材との間で温度上昇時の膨張度合い(線膨張係数)が大きく異なる場合でも、モールド樹脂層の封口部材との境界付近にストレスが集中しにくくなる。ストレスの集中が緩和されることで、モールド樹脂層にクラックが生じることを抑制することができる。よって、モールド樹脂層にクラックが生じることによる電解コンデンサの封止性の低下を抑制することができる。
【0128】
上記隙間は、モールド樹脂層が封口部材に密着(接着)していないことで形成される微小な隙間であることが好ましい。隙間が微小であることで、電解コンデンサの小型化に有利となる。また、微小な隙間は、後述の方法で、形成することが可能である。
【0129】
モールド樹脂層は、さらに、ケースの開口に続く側面の少なくとも一部を覆っていることが好ましい。この場合、電解コンデンサの封止性をさらに高めることができる。モールド樹脂層は、ケースと対向する領域においてケースに密着していることが好ましい。この場合、封口部材を覆うモールド樹脂層をより強固に固定して設けることができる。
【0130】
電解コンデンサが電解液を有する場合、上記隙間に露出する封口部材の表面(露出表面)に、電解液に含まれる成分の膜が形成されていることが好ましい。すなわち、露出表面の少なくとも一部が、電解液に含まれる成分の膜で覆われていることが好ましい。封口部材の露出表面が、電解液に含まれる成分の膜で覆われることにより、モールド樹脂層が酸素を比較的透過し易い樹脂成分を含む場合でも、封口部材と酸素との接触が抑制される。よって、高温環境下でも、モールド樹脂層を透過した酸素と封口部材との接触による、封口部材の劣化が抑制される。
【0131】
電解コンデンサが、一対の電極の間に介在する電解液を備え、電解液が、ケース内に収容されている場合、上記電解液に含まれる成分の膜は、ケース内に収容されている電解液の成分が、封口部材を透過し、封口部材とモールド樹脂層との隙間に滞留することで形成してもよい。電解コンデンサが、一対の電極の間に介在する電解液を備え、電解液が、ケース内に収容されている場合、電解液に含まれる成分(例えば溶媒)は、封口部材を比較的透過し易いが、モールド樹脂層を透過しにくい。そのため、封口部材とモールド樹脂層との間に隙間を設けることで、封口部材を透過した電解液の成分は、封口部材とモールド樹脂層との隙間に滞留し易くなる。よって、封口部材の露出表面に、電解液の成分の膜を効率的に形成することができる。
【0132】
一対の電極のうちの一方は、陽極であり、他方は、陰極である。陽極は、表面に誘電体層を有する。一対のリードのうちの一方は、陽極に電気的に接続する陽極リードであり、他方は、陰極に電気的に接続する陰極リードである。封口部材およびモールド樹脂層を貫通する一対のリードは、封口部材とモールド樹脂層との間に設けられた隙間に露出する。よって、一対のリードの少なくとも一方が、電気的絶縁層で覆われた絶縁領域を有することが好ましい。絶縁領域は、少なくとも上記隙間に跨って設けられていることがより好ましい。すなわち、絶縁領域は、リードが封口部材を貫通する部分からモールド樹脂層を貫通する部分において隙間を通過するように(跨ぐように)設けられていることがより好ましい。
【0133】
上記絶縁領域を設けることにより、封口部材とモールド樹脂層との隙間に、電解液に含まれる成分の膜が形成された(電解液に含まれる成分が滞留した)場合でも、一対のリードと、当該電解液の成分との接触が抑制される。仮に、一対のリードと、当該電解液の成分とが接触した状態で電解コンデンサに電圧が印加された場合、リード(特に、陽極リード)の腐食が進行する。絶縁領域を設けることで、このような腐食の進行が抑制される。
【0134】
絶縁領域を一対のリードの一方だけに設ける場合でも、上記のような腐食の進行を抑制することが可能である。ただし、リードの腐食の進行を抑制する効果を更に高めるためには、一対のリードの両方に絶縁領域が設けられていることが好ましい。
【0135】
電気的絶縁層は、耐電解液性に優れていることが好ましい。この場合、長期にわたり、絶縁領域を設けることによる効果を維持することができる。電気的絶縁層は、例えば、絶縁性樹脂層および絶縁性セラミックス層の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0136】
電解コンデンサは、一対の電極の間に介在する電解液を備え、電解液が、ケース内に収容されてもよい。電解コンデンサは、誘電体層の表面の少なくとも一部を被覆する固体電解質層を備えてもよい。電解コンデンサは、上記の電解液および固体電解質層の両方を備えてもよい。
【0137】
以下、本開示の第3実施形態に係る電解コンデンサを、図面を参照しながら詳細に説明するが、本開示は、これに限定されるものではない。
【0138】
図13に示す電解コンデンサ3Aは、陽極箔21(図2参照)および陰極箔22(図2参照)を含むコンデンサ素子10と、陽極箔21と陰極箔22との間に介在する電解液(図示しない)と、コンデンサ素子10および電解液を収容し、開口を有する有底円筒形のケース11と、を備える。ケース11の材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金が挙げられる。
【0139】
電解コンデンサ3Aは、ケース11の開口を封止する封口部材12と、封口部材12を覆うモールド樹脂層13とを備える。モールド樹脂層13は、封口部材12のケース11の外側に配される主面とともにケース11の開口を覆うように設けられている。ケース11の開口は、コンデンサ素子10を収容した後、封口部材12およびモールド樹脂層13で封止される。ケース11の開口端部の近傍は、封口部材12側に絞り加工されているとともに、ケース11の開口端部は、内側にかしめ加工されている。これにより、封口部材12がケース11の開口部に固定され、ケース11は封口部材12により封止されている。モールド樹脂層13を設けることで、電解コンデンサ3Aの封止性がさらに高められる。
【0140】
モールド樹脂層13は、封口部材12と対向する領域において封口部材12と接着しておらず、モールド樹脂層13と封口部材12との間に微小な隙間20が形成されている。隙間20を設けることにより、モールド樹脂層13と封口部材12との間で温度上昇時の膨張度合い(線膨張係数)が大きく異なる場合でも、モールド樹脂層13の封口部材12との境界付近にストレスが集中しにくくなる。ストレスの集中が緩和されることで、モールド樹脂層13にクラックが生じることを抑制することができる。
【0141】
図13に示すように、モールド樹脂層13は、さらに、ケース11の開口に続く側面の少なくとも一部を覆っていることが好ましい。これにより、電解コンデンサ3Aの封止性をさらに高めることができる。
【0142】
モールド樹脂層13は、ケース11と対向する領域においてケース11に接着している。これにより、封口部材12を覆うモールド樹脂層13を強固に固定して設けることができる。なお、本実施形態において、モールド樹脂層13は、ケース11と対向する領域においてケース11に部分的に接着していればよく、接着していない箇所があってもよい。
【0143】
モールド樹脂層13としては、第1実施形態と同様の構成、材料を使用することができる。
【0144】
封口部材12とモールド樹脂層13との間に隙間20を設ける方法としては、例えば、モールド樹脂層13を成形する際に、封口部材12の所定の領域(モールド樹脂層13で覆われる領域)に離型剤を塗布することが挙げられる。これにより、モールド樹脂層13が封口部材12に接着しないことで微小な隙間を容易に形成することができる。離型剤には、例えば、シリコーン系やフッ素系の離型剤が用いられる。
【0145】
隙間20に露出する封口部材12の表面(露出表面)には、電解液に含まれる成分の膜(図示しない)が形成されていることが好ましい。例えば、封口部材12を透過させた電解液の成分を隙間20に滞留させることで、封口部材12の露出表面の少なくとも一部を覆うように、電解液に含まれる成分の膜を形成することができる。
【0146】
封口部材12の露出表面が、電解液に含まれる成分の膜で覆われることにより、外部の酸素がモールド樹脂層13を透過して隙間20に到達した場合でも、封口部材12と酸素との接触が抑制される。よって、高温環境下でも、酸素と封口部材12との接触による封口部材12の劣化が抑制される。
【0147】
電解コンデンサは、コンデンサ素子10に含まれる陽極箔21および陰極箔22にそれぞれ電気的に接続し、かつ、封口部材12およびモールド樹脂層13を貫通する一対のリード14A,14Bを備える。電解コンデンサが基板に実装された際には、リード14A,14Bを介して、コンデンサ素子10と、基板上の端子とが電気的に接続される。
【0148】
リード14A,14Bは、陽極箔21および陰極箔22にそれぞれ接続したタブ部16A,16Bと、タブ部16A,16Bにそれぞれ接続した引き出し部15A,15Bとを有する。引き出し部15A,15Bとタブ部16A,16Bとは、溶接などにより接続されている。引き出し部15A,15Bは、例えば、鉄、銅、ニッケル、錫などの金属を含む。タブ部16A,16Bは、例えば、アルミニウムを含む。
【0149】
タブ部16A,16Bは、それぞれ、棒状部17A,17Bと、扁平部18A,18Bとを有する。棒状部17A,17Bと扁平部18A,18Bとは、それぞれ、電気的に接続していればよく、一体化していてもよい。例えば、棒状体の一端部を圧延することで扁平部が形成され、圧延されない領域が棒状部として残ることで、扁平部と棒状部とが一体化したタブ部を形成することができる。
【0150】
棒状部17A,17Bは、それぞれ封口部材12を貫通する部分を含む。棒状部17A,17Bの形状は特に制限されず、丸棒状(例えば、断面が円形や楕円形である棒状)であってもよく、角棒状(例えば、断面が多角形である棒状)であってもよい。棒状部17A,17Bは、それぞれ、扁平部18A,18Bを介して、コンデンサ素子10に接続されている。扁平部18A,18Bを有することで、リード14A,14Bとコンデンサ素子との接続が容易になる。
【0151】
引き出し部15A,15Bは、それぞれモールド樹脂層13を貫通する部分を含む。引き出し部15A,15Bの形状は特に制限されず、例えば、ワイヤ状であってもよく、リボン状であってもよい。引き出し部15A,15Bは、棒状部17A,17Bの先端部からそれぞれ延びている。
【0152】
ここで、引き出し部と棒状部の接合部が封口部材の孔内に位置するように、棒状部が封口部材の孔に挿入された状態で隙間が形成された場合の電解コンデンサの一例を、図14に示す。図14は、電解コンデンサにおける封口部材とモールド樹脂層との境界付近を示す要部断面図である。
【0153】
図14に示すように、引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bの接合部が封口部材12の孔内に位置するように、棒状部17A,17Bが封口部材12の孔に挿入されている。棒状部17A,17Bの先端部は、モールド樹脂層13側で封口部材12から露出している。棒状部17A,17Bの先端部および封口部材12と、モールド樹脂層13との間に、隙間30が設けられている。
【0154】
隙間30は、例えば、以下の方法で形成される。引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bの接合部が封口部材12の孔内に位置するように、棒状部17A,17Bを封口部材12の孔に挿入する。その後、モールド樹脂層13を成形する際に、棒状部17A,17Bの先端部および封口部材12の所定の領域(モールド樹脂層13で覆われる領域)に離型剤を塗布する。
【0155】
また、引き出し部と棒状部の接合部が封口部材の孔外に位置するように、棒状部が封口部材の孔に挿入された状態で隙間が形成された場合の電解コンデンサの一例を、図15に示す。図15は、電解コンデンサにおける封口部材とモールド樹脂層との境界付近を示す要部断面図である。
【0156】
図15に示すように、引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bの接合部が封口部材12の孔外に位置するように、棒状部17A,17Bが封口部材12の孔に挿入されている。棒状部17A,17Bの先端部は、モールド樹脂層13側で封口部材12から露出している。棒状部17A,17Bの先端部および封口部材12と、モールド樹脂層13との間に、隙間40が設けられている。
【0157】
隙間40は、例えば、以下の方法で形成される。引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bの接合部が封口部材12の孔内に位置するように、棒状部17A,17Bを封口部材12の孔に挿入する。その後、モールド樹脂層13を成形する際に、棒状部17A,17Bの先端部および封口部材12の所定の領域(モールド樹脂層13で覆われる領域)に離型剤を塗布する。
【0158】
図14および図15に示すように、棒状部17A,17Bの先端部がモールド樹脂層13側で封口部材12から露出する場合、棒状部17A,17Bの先端部とモールド樹脂層13との間に、封口部材12とモールド樹脂層13との間に形成された隙間に連なる隙間を更に形成してもよい。
【0159】
(第3実施形態の変形例)
リード14A,14Bの一部は、封口部材12とモールド樹脂層13との間に設けられた隙間20に露出する。よって、図16に示すように、リード14A,14Bには、電気的絶縁層19A,19Bで覆われた絶縁領域を有することが好ましい。絶縁領域は、少なくとも隙間20に跨って設けられていることが好ましい。すなわち、絶縁領域は、リード14A,14Bが封口部材12を貫通する部分からモールド樹脂層13を貫通する部分までにおいて隙間20を通過するように(跨ぐように)設けられていることが好ましい。
【0160】
絶縁領域を設けることにより、隙間20に露出する封口部材12の表面に電解液に含まれる成分の膜が形成された場合(隙間20に電解液に含まれる成分が滞留した場合)でも、リード14A,14Bと、当該電解液の成分との接触が抑制される。よって、リード14A,14B(特に、陽極側のリード14A)の腐食の進行が抑制される。
【0161】
なお、図16では、リード14Aおよびリード14Bの両方に絶縁領域を設けたが、リード14Aおよびリード14Bのうちの一方に絶縁領域を設けてもよい。
【0162】
引き出し部15A,15Bが遷移金属を含む場合、引き出し部15A,15Bと棒状部17A,17Bとの溶接の際に、引き出し部15A,15Bおよび棒状部17A,17Bの端部同士が溶け合うことで、接合部の表面に遷移金属が露出する。よって、接合部が隙間20に滞留する電解液の成分に接触すると、接合部(特に陽極側の接合部)で腐食が進行し易く、接合部でリードが断線し易い。よって、図16に示すように、少なくともタブ部16A,16B(棒状部17A,17B)と引き出し部15A,15Bとの接合部が、電気的絶縁層19A,19Bで覆われていることが好ましい。換言すれば、絶縁領域は、リード14A,14Bの棒状部17A,17Bから引き出し部15A,15Bに亘る領域に設けることが好ましい。接合部が電気的絶縁層で覆われることで、接合部の腐食の進行、およびそれに伴う接合部での断線を抑制することができる。図16に示すように、接合部が、隙間20の近傍に位置する場合、隙間20に滞留する電解液の成分に接触し易くなることから、接合部を電気的絶縁層19A,19Bで覆うことによる効果が顕著に得られる。
【0163】
絶縁領域がモールド樹脂層13と隙間20との境界からモールド樹脂層13側に延在する距離t1a,t1bは、モールド樹脂層13の厚さT1の10%以上であることが好ましい。この場合、絶縁領域を設けることによる効果を更に高めることができる。
【0164】
本実施形態において、絶縁領域の距離t1a,t1bは、電気的絶縁層19A,19Bが、モールド樹脂層13と隙間20との境界面から当該境界面と垂直な方向に沿ってモールド樹脂層13側に延びる距離である。モールド樹脂層13の厚さT1は、ケース11の軸方向(図16中のX方向)における厚さであり、後述するモールド樹脂層13の溝部13A,13Bが設けられていない領域の厚さである。
【0165】
絶縁領域が封口部材12と隙間20との境界から封口部材12側に延在する距離t2a,t2bは、封口部材12の厚さT2の10%以上であることが好ましい。この場合、絶縁領域を設けることによる効果を更に高めることができる。
【0166】
本実施形態において、絶縁領域の距離t2a,t2bは、電気的絶縁層19A,19Bが、封口部材12と隙間20との境界面から当該境界面と垂直な方向に沿って封口部材12側に延びる距離である。封口部材12の厚さT2は、ケース11の軸方向(図16中のX方向)における厚さである。
【0167】
長期にわたり、絶縁領域を設けることによる効果を維持する観点から、電気的絶縁層19A,19Bは、耐電解液性に優れる絶縁性樹脂層および/または絶縁性セラミックス層を含むことが好ましい。なお、電気的絶縁層19A,19Bの厚さは、例えば、0.01mm以上、1.00mm以下であればよい。
【0168】
絶縁性樹脂層および絶縁性セラミックス層としては、それぞれ第2実施形態と同様の構成、材料を使用することができる。なお、絶縁性セラミックス層は、例えば、リードの所定箇所に、セラミックスをエアロゾルデポジション法により付着させたり、セラミックスを含むテープを貼付したり、セラミックスを含む塗料を塗布したりすることにより形成される。
【0169】
図13では、引き出し部15A,15Bは、モールド樹脂層13の実装面13Sの側から外部へ引き出されている部分を有する。当該部分は、モールド樹脂層13の実装面13Sに沿って配されている。ここで、モールド樹脂層13の実装面13Sには、図13に示すように、リード14A,14Bのモールド樹脂層13から外部へ引き出された部分を収容するための細長形状の溝部13A,13Bを設けてもよい。溝部13A,13Bに引き出し部15A,15Bを収容することで、実装面13S付近に引き出し部15A,15Bを安定して固定し配置することができる。
【0170】
溝部13A,13Bの底面13a,13bは、溝部13A,13Bのリード14A,14Bがモールド樹脂層13から外部へ引き出される側の一端部から、他端部に向かって、徐々に溝部13A,13Bの深さが増大するように傾斜している。引き出し部15A,15Bを実装面13Sに対して略平行となるよう折り曲げる際、引き出し部15A,15Bは元の形状に戻ろうとする力が働く。この点を考慮して、上記のように溝部13A,13Bの底面を傾斜させることで、引き出し部15A,15Bが実装面13Sから過度に飛び出すことがなく、引き出し部15A,15Bを溝部13A,13B内に収容させることができる。実装面13Sに対する溝部13A,13Bの底面13a,13bの傾斜角度は、例えば、3°以上、30°以下である。
【0171】
本実施形態では、溝部13A,13Bの底面を傾斜させているが、溝部13A,13Bの底面を傾斜させずに、溝部13A,13Bの深さは一定としてもよい。
【0172】
封口部材12としては、第1実施形態と同様の構成、材料を使用することができる。
【0173】
コンデンサ素子10については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、コンデンサ素子10は、電解液および固体電解質層を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本開示は、ケース内に電解液を含み、封口部材およびモールド樹脂層を備える電解コンデンサにおいて有用である。
【符号の説明】
【0175】
1A,1B,1C,1D,2A,2B,3A,3B:電解コンデンサ
10:コンデンサ素子
11:ケース
12:封口部材
13:モールド樹脂層
13S:実装面
13A,13B:溝部
13a,13b:底面
14A,14B:リード
15A,15B:引き出し部
16A,16B:タブ部
17A,17B:棒状部
18A,18B:扁平部
19A,19B,29A,29B,39A,39B,49A,49B,59A,59B,69A,69B:電気的絶縁層
20,30,40:隙間
21:陽極、陽極箔
22:陰極、陰極箔
23:セパレータ
24:巻止めテープ
175A,175B:リード内接続部
図1
図2
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図16
【手続補正書】
【提出日】2023-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を含むコンデンサ素子と、
電解液と、
前記コンデンサ素子および前記電解液を収容し、開口を有するケースと、
前記開口を封止する封口部材と、
前記封口部材を覆うモールド樹脂層と、
前記一対の電極にそれぞれ電気的に接続し、かつ、前記封口部材および前記モールド樹脂層を貫通する少なくとも一対のリードと、を備え、
前記封口部材と前記モールド樹脂層との間に、隙間が設けられており、
前記隙間に、前記電解液に含まれる成分が存在している、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記一対のリードの少なくとも一方が、電気的絶縁層で覆われた絶縁領域を有し、
前記絶縁領域は、少なくとも前記隙間に跨って設けられている、請求項に記載の電解コンデンサ。