(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156540
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】画像表示装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20231018BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231018BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231018BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231018BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231018BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20231018BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20231018BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231018BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231018BHJP
G02B 3/00 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
H05B33/02
H01L27/146 D
H01L29/78 612Z
H01L29/78 626C
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/26 Z
G09F9/30 349Z
G09F9/00 350Z
G02B3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148536
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】甚田 誠一郎
【テーマコード(参考)】
3K107
4M118
5C094
5F110
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC41
3K107DD25
3K107DD30
3K107DD39
3K107EE03
3K107EE06
3K107EE29
3K107EE67
3K107EE68
3K107HH05
4M118AB01
4M118AB03
4M118GC11
4M118GD03
4M118HA02
5C094AA60
5C094BA03
5C094BA25
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA12
5C094DA20
5C094EA04
5C094EB02
5C094FA01
5C094FA02
5C094HA08
5F110BB01
5F110CC07
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5F110DD30
5F110FF02
5F110FF03
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5F110NN03
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5F110NN24
5F110NN27
5F110NN28
5G435BB04
5G435BB05
5G435CC09
5G435EE49
5G435GG02
5G435HH02
5G435LL07
5G435LL08
(57)【要約】
【課題】回折光の発生を抑制可能な画像表示装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、二次元状に配置される複数の画素を備え、前記複数の画素のうち少なくとも一部の画素は、第1自発光素子と、前記第1自発光素子により発光される第1発光領域と、可視光を透過させる所定の形状の透過窓を有する非発光領域と、を有する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元状に配置される複数の画素を備え、
前記複数の画素のうち少なくとも一部の画素は、
第1自発光素子と、
前記第1自発光素子により発光される第1発光領域と、
可視光を透過させる所定の形状の透過窓を有する非発光領域と、を有する、画像表示装置。
【請求項2】
前記透過窓の形状がそれぞれ異なる前記非発光領域を有する二以上の画素が設けられる、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記非発光領域は、当該画像表示装置の表示面側から平面視したときに、当該画像表示装置を通して入射される光を受光する受光装置に重なる位置に配置される、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記第1自発光素子に接続される画素回路は、前記第1発光領域内に配置される、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記非発光領域は、一つの画素内にそれぞれ離隔して配置される複数の前記透過窓を有する、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記透過窓は、二以上の画素に跨がって配置される、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記二以上の画素に跨がって配置される前記透過窓には、形状が異なる複数種類が存在する、請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記透過窓の光入射側に配置され、入射された光を屈折させて前記透過窓に導く光学部材を備える、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記光学部材は、
入射された光を光軸方向に屈折させる第1光学系と、
前記第1光学系で屈折された光を平行化する第2光学系と、を有し、
前記透過窓は、前記第2光学系で平行化された光を透過させる、請求項8に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記透過窓の光入射側に配置され、入射された光を屈折させて前記透過窓に導く第1光学部材と、
前記透過窓の光出射側に配置され、前記透過窓から出射された光を平行化させて受光装置に導く第2光学部材と、を備える、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記複数の画素のうち一部の画素を含む第1画素領域と、
前記複数の画素のうち前記第1画素領域内の画素以外の少なくとも一部の画素を含む第2画素領域と、を備え、
前記第1画素領域内の画素は、前記第1自発光素子、前記第1発光領域、及び前記非発光領域を有し、
前記第2画素領域内の画素は、
第2自発光素子と、
前記第2自発光素子により発光され、前記第1発光領域よりも面積が大きい第2発光領域と、を有する、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記第1画素領域は、画素表示領域内の複数箇所に離隔して設けられる、請求項11に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記第1画素領域内には、前記透過窓を透過した光による回折光の形状がそれぞれ相違するように、それぞれ異なる形状の前記透過窓を有する二以上の画素が設けられる、請求項11に記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記第1自発光素子は、
下部電極層と、
前記下部電極層の上に配置される表示層と、
前記表示層の上に配置される上部電極層と、
前記下部電極層の下に配置され、前記下部電極層から積層方向に延びるコンタクトを介して前記下部電極層に導通される配線層と、を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記下部電極層の端部により規定される、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記第1自発光素子は、
下部電極層と、
前記下部電極層の上に配置される表示層と、
前記表示層の上に配置される上部電極層と、
前記下部電極層の下に配置され、前記下部電極層から積層方向に延びるコンタクトを介して前記下部電極層に導通される配線層と、を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記配線層の端部により規定される、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項16】
前記配線層は、積層された複数の金属層を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記複数の金属層の少なくとも一つの金属層の端部により規定される、請求項15に記載の画像表示装置。
【請求項17】
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状を規定する前記金属層は、画素回路内のキャパシタの電極である、請求項16に記載の画像表示装置。
【請求項18】
前記第1発光領域の全域は、前記透過窓の領域を除いて前記下部電極層で覆われる、請求項14に記載の画像表示装置。
【請求項19】
二次元状に配置される複数の画素を有する画像表示装置と、
前記画像表示装置を通して入射される光を受光する受光装置と、を備え、
前記画像表示装置は、前記複数の画素のうち一部の画素を含む第1画素領域を有し、
前記第1画素領域内の前記一部の画素は、
第1自発光素子と、
前記第1自発光素子により発光される第1発光領域と、
可視光を透過させる所定の形状の透過窓を有する非発光領域と、を有し、
前記第1画素領域の少なくとも一部は、前記画像表示装置の表示面側から平面視したときに前記受光装置に重なるように配置される、電子機器。
【請求項20】
前記受光装置は、前記非発光領域を通して光を受光する、請求項19に記載の電子機器。
【請求項21】
前記受光装置は、前記非発光領域を通して入射された光を光電変換する撮像センサと、前記非発光領域を通して入射された光を受光して距離を計測する距離計測センサと、前記非発光領域を通して入射された光に基づいて温度を計測する温度センサと、の少なくとも一つを含む、請求項19に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像表示装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のスマートフォンや携帯電話、PC(Personal Computer)などの電子機器では、表示パネルの額縁(ベゼル)に、カメラなどの種々のセンサを搭載している。搭載されるセンサも増える傾向にあり、カメラの他に、顔認証用のセンサや赤外線センサ、動体検出センサなどがある。その一方で、デザイン上の観点や軽薄短小化の傾向から、画面サイズに影響を与えずに電子機器の外形サイズをできるだけコンパクトにすることが求められており、ベゼル幅は狭まる傾向にある。このような背景から、表示パネルの真下にイメージセンサモジュールを配置して、表示パネルを通過した被写体光をイメージセンサモジュールで撮影する技術が提案されている。表示パネルの真下にイメージセンサモジュールを配置するには、表示パネルを透明化する必要がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示パネルの各画素には、画素回路や配線パターンなどの不透明な部材が配置されており、それに加えて、透過率の低い絶縁層も配置されている。このため、表示パネルの真下にイメージセンサモジュールを配置すると、表示パネルに入射された光は、表示パネル内で不規則に反射、屈折及び回折を行い、これらの反射、屈折及び回折により生じた光(以下、回折光と呼ぶ)が発生した状態でイメージセンサモジュールに入射される。回折光が発生したまま撮影を行うと、被写体画像の画質が低下してしまう。
【0005】
そこで、本開示では、回折光の発生を抑制可能な画像表示装置及び電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、二次元状に配置される複数の画素を備え、
前記複数の画素のうち少なくとも一部の画素は、
第1自発光素子と、
前記第1自発光素子により発光される第1発光領域と、
可視光を透過させる所定の形状の透過窓を有する非発光領域と、を有する、画像表示装置が提供される。
【0007】
前記透過窓の形状がそれぞれ異なる前記非発光領域を有する二以上の画素が設けられてもよい。
【0008】
前記非発光領域は、当該画像表示装置の表示面側から平面視したときに、当該画像表示装置を通して入射される光を受光する受光装置に重なる位置に配置されてもよい。
【0009】
前記第1自発光素子に接続される画素回路は、前記第1発光領域内に配置されてもよい。
【0010】
前記非発光領域は、一つの画素内にそれぞれ離隔して配置される複数の前記透過窓を有してもよい。
【0011】
前記透過窓は、二以上の画素に跨がって配置されてもよい。
【0012】
前記二以上の画素に跨がって配置される前記透過窓には、形状が異なる複数種類が存在してもよい。
【0013】
前記透過窓の光入射側に配置され、入射された光を屈折させて前記透過窓に導く光学部材を備えてもよい。
【0014】
前記光学部材は、
入射された光を光軸方向に屈折させる第1光学系と、
前記第1光学系で屈折された光を平行化する第2光学系と、を有し、
前記透過窓は、前記第2光学系で平行化された光を透過させてもよい。
【0015】
前記透過窓の光入射側に配置され、入射された光を屈折させて前記透過窓に導く第1光学部材と、
前記透過窓の光出射側に配置され、前記透過窓から出射された光を平行化させて受光装置に導く第2光学部材と、を備えてもよい。
【0016】
前記複数の画素のうち一部の画素を含む第1画素領域と、
前記複数の画素のうち前記第1画素領域内の画素以外の少なくとも一部の画素を含む第2画素領域と、を備え、
前記第1画素領域内の画素は、前記第1自発光素子、前記第1発光領域、及び前記非発光領域を有し、
前記第2画素領域内の画素は、
第2自発光素子と、
前記第2自発光素子により発光され、前記第1発光領域よりも面積が大きい第2発光領域と、を有してもよい。
【0017】
前記第1画素領域は、画素表示領域内の複数箇所に離隔して設けられてもよい。
【0018】
前記第1画素領域内には、前記透過窓を透過した光による回折光の形状がそれぞれ相違するように、それぞれ異なる形状の前記透過窓を有する二以上の画素が設けられてもよい。
【0019】
前記第1自発光素子は、
下部電極層と、
前記下部電極層の上に配置される表示層と、
前記表示層の上に配置される上部電極層と、
前記下部電極層の下に配置され、前記下部電極層から積層方向に延びるコンタクトを介して前記下部電極層に導通される配線層と、を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記下部電極層の端部により規定されてもよい。
【0020】
前記第1自発光素子は、
下部電極層と、
前記下部電極層の上に配置される表示層と、
前記表示層の上に配置される上部電極層と、
前記下部電極層の下に配置され、前記下部電極層から積層方向に延びるコンタクトを介して前記下部電極層に導通される配線層と、を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記配線層の端部により規定されてもよい。
【0021】
前記配線層は、積層された複数の金属層を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記複数の金属層の少なくとも一つの金属層の端部により規定されてもよい。
【0022】
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状を規定する前記金属層は、画素回路内のキャパシタの電極であってもよい。
【0023】
前記第1発光領域の全域は、前記透過窓の領域を除いて前記下部電極層で覆われてもよい。
【0024】
本開示の他の一態様では、二次元状に配置される複数の画素を有する画像表示装置と、
前記画像表示装置を通して入射される光を受光する受光装置と、を備え、
前記画像表示装置は、前記複数の画素のうち一部の画素を含む第1画素領域を有し、
前記第1画素領域内の前記一部の画素は、
第1自発光素子と、
前記第1自発光素子により発光される第1発光領域と、
可視光を透過させる所定の形状の透過窓を有する非発光領域と、を有し、
前記第1画素領域の少なくとも一部は、前記画像表示装置の表示面側から平面視したときに前記受光装置に重なるように配置される、電子機器が提供される。
【0025】
前記受光装置は、前記非発光領域を通して光を受光してもよい。
【0026】
前記受光装置は、前記非発光領域を通して入射された光を光電変換する撮像センサと、前記非発光領域を通して入射された光を受光して距離を計測する距離計測センサと、前記非発光領域を通して入射された光に基づいて温度を計測する温度センサと、の少なくとも一つを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】表示パネルの直下に配置されるセンサの具体的な場所の一例を破線で示す図。
【
図2A】表示パネルの中央より上側の裏面側に二つのセンサを並べて配置した例を示す図。
【
図2B】表示パネルの四隅にセンサ5を配置した例を示す図。
【
図3】第1画素領域内の画素の構造と、第2画素領域内の画素の構造とを模式的に示す図。
【
図5】イメージセンサモジュールの光学構成を模式的に説明する図。
【
図6】被写体からの光がイメージセンサ上に結像するまでの光路を説明する図。
【
図7】OLEDを含む画素回路の基本構成を示す回路図。
【
図9】センサが直下に配置されていない第2画素領域内の画素の断面図。
【
図11】センサが直下に配置されている第1画素領域内の画素の平面レイアウト図。
【
図12】センサが直下に配置されている第1画素領域内の画素の断面図。
【
図13】回折光を発生させる回折現象を説明する図。
【
図14】一実施形態による画像表示装置の平面レイアウト図。
【
図15】画素内の第2発光領域の全域にアノード電極を配置した平面レイアウト図。
【
図16】第1画素領域の断面構造の第1例を示す断面図。
【
図17】第1画素領域の断面構造の第2例を示す断面図。
【
図18】第1画素領域の断面構造の第3例を示す断面図。
【
図25】画素回路の詳細な回路構成の第1例を示す回路図。
【
図26】画素回路の詳細な回路構成の第2例を示す回路図。
【
図31A】非発光領域内に複数の円形の透過窓を設けた例を示す図。
【
図31B】
図31Aの各透過窓に平行光を入射させたときに発生する回折光を示す図。
【
図34】3つの画素に跨がるように1個の透過窓を設ける例を示す図。
【
図36】第1画素領域の光入射側にマイクロレンズを配置した例を示す断面図。
【
図37A】マイクロレンズがない場合に第1画素領域に入射される光の進行方向を矢印で示した図。
【
図37B】
図36のマイクロレンズを設けた場合の光の進行方向を矢印で示した図。
【
図38】マイクロレンズで屈折された光の進行方向を矢印線で示した図。
【
図39】第1画素領域の光入射側に、凸方向の異なる複数のマイクロレンズを配置した断面図。
【
図40】第1画素領域の光入射側にマイクロレンズを配置するとともに、第1画素領域の光出射側に別のマイクロレンズを配置した断面図。
【
図41】
図40の二個のマイクロレンズを通る光の進行方向を矢印線で示した図。
【
図42】第1の実施形態の電子機器をカプセル内視鏡に適用した場合の平面図。
【
図43】第1の実施形態の電子機器をデジタル一眼レフカメラに適用した場合の背面図。
【
図44A】第1の実施形態の電子機器をHMDに適用した例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、画像表示装置及び電子機器の実施形態について説明する。以下では、画像表示装置及び電子機器の主要な構成部分を中心に説明するが、画像表示装置及び電子機器には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は本開示の第1の実施形態による画像表示装置1を備えた電子機器50の平面図及び断面図である。図示のように、本実施形態による画像表示装置1は、表示パネル2を備えている。表示パネル2には、例えばフレキシブル・プリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)3が接続されている。表示パネル2は、例えばガラス基板又は透明フィルム上に複数の層を積層したものであり、表示面2zには縦横に複数の画素が配置されている。FPC3の上には、表示パネル2の駆動回路の少なくとも一部を内蔵するチップ(COF:Chip On Film)4が実装されている。なお、駆動回路をCOG(Chip On Glass)として表示パネル2に積層してもよい。
【0030】
本実施形態による画像表示装置1は、表示パネル2の直下に、表示パネル2を通して光を受光する各種のセンサ5を配置可能としている。本明細書では、画像表示装置1とセンサ5を備えた構成を電子機器50と呼ぶ。電子機器50内に設けられるセンサ5の種類は特に問わないが、例えば、表示パネル2を通して入射された光を光電変換する撮像センサ、表示パネル2を通して光を投光するとともに、対象物で反射された光を表示パネル2を通して受光して、対象物までの距離を計測する距離計測センサ、表示パネル2を通して入射された光に基づいて温度を計測する温度センサなどである。このように、表示パネル2の直下に配置されるセンサ5は、光を受光する受光装置の機能を少なくとも備えている。なお、センサ5は、表示パネル2を通して光を投光する発光装置の機能を備えていてもよい。
【0031】
図1は表示パネル2の直下に配置されるセンサ5の具体的な場所の一例を破線で示している。
図1のように、センサ5は、例えば、表示パネル2の中央よりも上側の裏面側に配置されている。なお、
図1のセンサ5の配置場所は一例であり、センサ5の配置場所は任意である。図示のように、表示パネル2の裏面側にセンサ5を配置することで、表示パネル2の側方にセンサ5を配置しなくて済み、電子機器50のベゼルを極小化することができ、電子機器50の正面側のほぼ全域を表示パネル2にすることができる。
【0032】
図1では、表示パネル2の一箇所にセンサ5を配置する例を示しているが、
図2A又は
図2Bに示すように、複数箇所にセンサ5を配置してもよい。
図2Aは、表示パネル2の中央より上側の裏面側に二つのセンサ5を並べて配置した例を示している。また、
図2Bは、表示パネル2の四隅にセンサ5を配置した例を示している。
図2Bのように、表示パネル2の四隅にセンサ5を配置するのは以下の理由である。表示パネル2内のセンサ5と重なる画素領域は、透過率を高くする工夫を施すため、その周囲の画素領域とは表示品質に若干の差異が生じるおそれがある。ある。人間は画面中央を凝視するとき、中心視野となる画面中央部は詳細まで把握でき、若干の差異に気づくことができる。しかし、周辺視野となる外周部の詳細視認度は低くなる。通常の表示画像では画面中央を見ることが多いため、その差異を目立たなくするために四隅にセンサ5を配置することが推奨される
【0033】
図2Aや
図2Bのように、表示パネル2の裏面側に複数のセンサ5を配置する場合、複数のセンサ5の種類は同じでも異なっていてもよい。例えば、焦点距離の異なる複数のイメージセンサモジュール9を配置してもよいし、あるいは、撮像センサ5とToF(Time of Flight)センサ5などのように、異なる種類のセンサ5を配置してもよい。
【0034】
本実施形態では、裏面側のセンサ5と重なる画素領域(第1画素領域)と、センサ5と重ならない画素領域(第2画素領域)で、画素の構造を変えている。
図3は、第1画素領域6内の画素7の構造と、第2画素領域8内の画素7の構造とを模式的に示す図である。第1画素領域6内の画素7は、第1自発光素子6a、第1発光領域6b、及び非発光領域6cを有する。第1発光領域6bは、第1自発光素子6aにより発光される領域である。非発光領域6cは、第1自発光素子6aによる発光は行わないものの、可視光を透過させる所定の形状の透過窓6dを有する。第2画素領域8内の画素7は、第2自発光素子8a及び第2発光領域8bを有する。第2発光領域8bは、第2自発光素子8aにより発光され、第1発光領域6bよりも大きい面積を有する。
【0035】
第1自発光素子6a及び第2自発光素子8aの代表例は、有機EL(Electroluminescence)素子(以下では、OLED:Organic Light Emitting Diodeとも呼ぶ)である。自発光素子は、バックライトを省略できるため、少なくとも一部を透明化することができる。以下では、自発光素子としてOLEDを用いる例を主に説明する。
【0036】
なお、センサ5と重なる画素領域とセンサ5と重ならない画素領域で画素7の構造を変えるのではなく、表示パネル2内の全画素7の構造を同じにしてもよい。この場合、表示パネル2内の任意の場所にセンサ5を重ねて配置できるように、全画素7を
図3の第1発光領域6bと非発光領域6cで構成すればよい。
【0037】
図4はイメージセンサモジュール9の断面図である。
図4に示すように、イメージセンサモジュール9は、支持基板9aの上に実装されるイメージセンサ9bと、IR(Infrared Ray)カットフィルタ9cと、レンズユニット9dと、コイル9eと、磁石9fと、バネ9gとを有する。レンズユニット9dは、1つ又は複数のレンズを有する。レンズユニット9dは、コイル9dに流す電流の方向に応じて光軸方向に移動可能とされている。なお、イメージセンサモジュール9の内部構成は、
図4に示したものに限定されない。
【0038】
図5はイメージセンサモジュール9の光学構成を模式的に説明する図である。被写体10からの光は、レンズユニット9dで屈折されて、イメージセンサ9b上に結像する。レンズユニット9dに入射される光の量が多いほどイメージセンサ9bで受光される光量も増えて、感度が向上する。本実施形態の場合、被写体10とレンズユニット9dとの間に表示パネル2が配置されることになる。被写体10からの光が表示パネル2を透過する際に、表示パネル2での吸収、反射、回折を抑制することが重要となる。
【0039】
図6は被写体10からの光がイメージセンサ9b上に結像するまでの光路を説明する図である。
図6では、表示パネル2の各画素7とイメージセンサ9bの各画素7を模式的に矩形のマス目で表している。図示のように、表示パネル2の各画素7は、イメージセンサ9bの各画素7よりもはるかに大きい。被写体10の特定位置からの光は、表示パネル2の透過窓6dを通過して、イメージセンサモジュール9のレンズユニット9dで屈折されて、イメージセンサ9b上の特定画素7で結像される。このように、被写体10からの光は、表示パネル2の第1画素領域6内の複数画素7に設けられた複数の透過窓6dを透過して、イメージセンサモジュール9に入射される。
【0040】
図7はOLED5を含む画素回路12の基本構成を示す回路図である。
図7の画素回路12は、OLED5の他に、ドライブトランジスタQ1と、サンプリングトランジスタQ2と、画素容量Csとを備えている。サンプリングトランジスタQ2は、信号線SigとドライブトランジスタQ1のゲートとの間に接続されている。サンプリングトランジスタQ2のゲートには、走査線Gateが接続されている。画素容量Csは、ドライブトランジスタQ1のゲートとOLED5のアノード電極との間に接続されている。ドライブトランジスタQ1は、電源電圧ノードVccpとOLED5のアノードとの間に接続されている。
【0041】
図8はセンサ5が直下に配置されていない第2画素領域8内の画素7の平面レイアウト図である。第2画素領域8内の画素7は、一般的な画素構成を有する。各画素7は複数の色画素7(例えば、RGBの3つの色画素7)を有する。
図8には、横に2つの色画素7と、縦に2つの色画素7の計4つの色画素7の平面レイアウトが図示されている。各色画素7は第2発光領域8bを有する。第2発光領域8bは、色画素7のほぼ全域に広がっている。第2発光領域8b内には、第2自発光素子8a(OLED5)を有する画素回路12が配置されている。
図8の左側2列は、アノード電極12aよりも下側の平面レイアウトを示し、
図8の右側2列は、アノード電極12aと、その上に配置される表示層2aの平面レイアウトを示している。
【0042】
図8の右側2列に示すように、色画素7のほぼ全域にわたってアノード電極12aと表示層2aが配置されており、色画素7の全域が光を発光する第2発光領域8bとなる。
【0043】
図8の左側2列に示すように、色画素7の画素回路12は、色画素7内の上側半分の領域内に配置されている。また、色画素7の上端側には、電源電圧Vccp用の配線パターンと、走査線用の配線パターンが水平方向Xに配置されている。また、色画素7の縦方向Yの境界に沿って信号線Sigの配線パターンが配置されている。
【0044】
図9はセンサ5が直下に配置されていない第2画素領域8内の画素7(色画素7)の断面図である。
図9は
図8のA-A線方向の断面構造を示しており、より詳細には画素回路12内のドライブトランジスタQ1の周辺の断面構造を示している。なお、
図9を含めて、本明細書に添付した図面に記載された断面図は、特徴的な層構成を強調して図示しており、縦横の長さの比率は平面レイアウトとは必ずしも一致しない。
【0045】
図9の上面は表示パネル2の表示面側であり、
図9の底面はセンサ5が配置される側である。
図9の底面側から上面側(光出射側)にかけて、第1透明基板31と、第1絶縁層32と、第1配線層(ゲート電極)33と、第2絶縁層34と、第2配線層(ソース配線またはドレイン配線)35と、第3絶縁層36と、アノード電極層38と、第4絶縁層37と、表示層2aと、カソード電極層39と、第5絶縁層40と、第2透明基板41とが順に積層されている。
【0046】
第1透明基板31と第2透明基板41は、例えば、可視光透過性に優れた石英ガラスや透明フィルム等で形成されることが望ましい。あるいは第1透明基板31と第2透明基板41のどちらか一方を石英ガラス、もう一方を透明フィルムで形成してもよい。 なお、製造観点から有色で透過率のそれほど高くないフィルム、例えばポリイミドフィルムを利用してもよい。あるいは第1透明基板31と第2透明基板41の少なくとも一方を、透明フィルムで形成してもよい。第1透明基板31の上に、画素回路12内の各回路素子を接続するための第1配線層(M1)33が配置されている。
【0047】
第1透明基板31の上には、第1配線層33を覆うように第1絶縁層32が配置されている。第1絶縁層32は、例えば、可視光透過性に優れたシリコン窒化層とシリコン酸化層の積層構造である。第1絶縁層32の上には、画素回路12内の各トランジスタのチャネル領域が形成される半導体層42が配置されている。
図9は、第1配線層33に形成されるゲートと、第2配線層35に形成されるソース及びドレインと、半導体層42に形成されるチャネル領域とを有するドライブトランジスタQ1の断面構造を模式的に図示しているが、他のトランジスタもこれらの層33、35、42に配置されており、不図示のコンタクトにより第1配線層33に接続されている。
【0048】
第1絶縁層32の上には、トランジスタ等を覆うように第2絶縁層34が配置されている。第2絶縁層34は、例えば、可視光透過性に優れたシリコン酸化層、シリコン窒化層及びシリコン酸化層の積層構造である。第2絶縁層34の一部にはトレンチ34aが形成されて、トレンチ34a内にコンタクト部材35aを充填することにより、各トランジスタのソースやドレイン等に接続される第2配線層(M2)35が形成されている。
図9には、ドライブトランジスタQ1とOLED5のアノード電極12aとを接続するための第2配線層35が図示されているが、他の回路素子に接続される第2配線層35も同じ層に配置されている。また、後述するように、第2配線層35とアノード電極12aとの間に、
図9では不図示の第3配線層を設けてもよい。第3配線層は、画素回路内の配線として用いることができる他、アノード電極12aとの接続に用いてもよい。
【0049】
第2絶縁層34の上には、第2配線層35を覆って表面を平坦化するための第3絶縁層36が配置されている。第3絶縁層36は、アクリル樹脂等の樹脂材料で形成されている。第3絶縁層36の膜厚は、第1~第2絶縁層32,34の膜厚よりも大きくしている。
【0050】
第3絶縁層36の上面の一部にはトレンチ36aが形成されて、トレンチ36a内にコンタクト部材36bを充填して第2配線層35との導通を図るとともに、コンタクト部材36bを第3絶縁層36の上面側まで延在させてアノード電極層38を形成している。アノード電極層38は積層構造であり、金属材料層を含んでいる。金属材料層は、一般には可視光透過率が低く、光を反射させる反射層として機能する。具体的な金属材料としては、例えばAlNdやAgを適用可能である。
【0051】
アノード電極層38の最下層は、トレンチ36aに接する部分であり、断線しやすいことから、少なくともトレンチ36aの角部は例えばAlNdなどの金属材料で形成される場合がある。アノード電極層38の最上層は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電層で形成されている。あるいは、アノード電極層38を、例えば、ITO/Ag/ITOの積層構造にしてもよい。Agは本来的には不透明であるが、膜厚を薄くすることで、可視光透過率が向上する。Agを薄くすると強度が弱くなるため、両面にITOを配置した積層構造にすることで、透明導電層として機能させることができる。
【0052】
第3絶縁層36の上には、アノード電極層38を覆うように第4絶縁層37が配置されている。第4絶縁層37も、第3絶縁層36と同様にアクリル樹脂等の樹脂材料で形成されている。第4絶縁層37は、OLED5の配置場所に合わせてパターニングされて、凹部37aが形成されている。
【0053】
第4絶縁層37の凹部37aの底面及び側面を含むように表示層2aが配置されている。表示層2aは、例えば
図10に示すような積層構造を有する。
図10に示す表示層2aは、アノード電極層38側から積層順に、陽極2b、正孔注入層2c、正孔輸送層2d、発光層2e、電子輸送層2f、電子注入層2g、及び陰極2hを配置した積層構造である。陽極2bは、アノード電極12aとも呼ばれる。正孔注入層2cは、アノード電極12aからの正孔が注入される層である。正孔輸送層2dは、正孔を発光層2eに効率よく運ぶ層である。発光層2eは、正孔と電子を再結合させて励起子を生成し、励起子が基底状態に戻る際に光を発光する。陰極2hは、カソード電極とも呼ばれる。電子注入層2gは、陰極2hからの電子が注入される層である。電子輸送層2fは、電子を発光層2eに効率よく運ぶ層である。発光層2eは有機物を含んでいる。
図9に示す表示層2aの上には、カソード電極層39が配置されている。カソード電極層39は、アノード電極層38と同様に透明導電層で形成されている。なお、アノード電極層38の透明導電層は、例えばITO/Ag/ITOで形成され、カソード電極層39の透明電極層は、例えばMgAgで形成される。
【0054】
カソード電極層39の上には第5絶縁層40が配置されている。第5絶縁層40は、上面を平坦化するとともに耐湿性に優れた絶縁材料で形成される。第5絶縁層40の上には、第2透明基板41が配置されている。
【0055】
図8及び
図9に示すように、第2画素領域8では、色画素7のほぼ全域に反射膜として機能するアノード電極層38が配置されており、可視光を透過させることはできない。
【0056】
図11はセンサ5が直下に配置されている第1画素領域6内の画素7の平面レイアウト図である。一つの画素7は複数の色画素7(例えば、RGBの3つの色画素7)を有する。
図11には、横に2つの色画素7と、縦に2つの色画素7の計4つの色画素7の平面レイアウトが図示されている。各色画素7は、第1発光領域6bと非発光領域6cとを有する。第1発光領域6bは、第1自発光素子6a(OLED5)を有する画素回路12を含み、OLED5により発光される領域である。非発光領域6cは、可視光を透過させる領域である。
【0057】
非発光領域6cは、OLED5からの光を発光させることはできないが、入射された可視光を透過させることができる。よって、非発光領域6cの直下にセンサ5を配置することで、センサ5にて可視光を受光することができる。
【0058】
図12はセンサ5が直下に配置されている第1画素領域6内の画素7の断面図である。
図12は
図11のA-A線方向の断面構造を示しており、第1発光領域6bから非発光領域6cにかけての断面構造を示している。
図9と比較すればわかるように、非発光領域6cでは、第3絶縁層36、第4絶縁層37、アノード電極層38、表示層2a、及びカソード電極39が除去されている。従って、
図12の上方(表示面側)から非発光領域6cに入射された光は、非発光領域6c内で吸収や反射されることなく、底面(裏面側)から出射されてセンサ5に入射される。
【0059】
しかしながら、第1画素領域6に入射された光の一部は、非発光領域6cだけでなく第1発光領域6bにも入射されて回折され、回折光を発生させる。
【0060】
図13は回折光を発生させる回折現象を説明する図である。太陽光や指向性の高い光等の平行光は、非発光領域6cと第1発光領域6bの境界部等で回折され、1次回折光を初めとする高次の回折光を生じさせる。なお、0次回折光は入射光の光軸方向を進む光であり、回折光の中で最も光強度の大きい光である。つまり、 0次回折光は撮影対象物そのものであり、撮影すべき光である。より高次の回折光ほど、0次回折光から離れた方向を進行し、光強度も弱くなる。一般には、1次回折光を含む高次の回折光を総称して回折光と呼ぶ。回折光は、本来的には被写体光に存在しない光であり、被写体10の撮影にとって不要な光である。
【0061】
回折光が写り込んだ撮像画像において、最も明るい輝点が0次光であり、0次回折光からクロス形状に高次の回折光が広がっている。被写体光が白色光の場合、白色光に含まれる複数の波長成分ごとに回折角度が異なるため、虹色の回折光fが発生される。
【0062】
撮像画像に写り込んだ回折光の形状は、例えばクロス形状になるが、どのような形状の回折光fが発生するかは、後述するように非発光領域6c内に光が透過する部分の形状に依存し、透過する部分の形状が既知であれば、回折原理からシミュレーションにより回折光形状を推測できる。
図11に示す第1画素領域6内の各画素7の平面レイアウトでは、非発光領域6c外に、配線の隙間や第1発光領域6bの周囲にも、光の透過領域が存在する。このように、画素7内の複数箇所に不規則な形状の光の透過領域が存在すると、入射光が複雑に回折し、回折光fの形状も複雑になる。
【0063】
図14は
図11の平面レイアウトで生じうる問題点を解決させた一実施形態による画像表示装置1の平面レイアウト図である。
図14では、第1画素領域6における第1発光領域6b内の全域にアノード電極12aを配置して光が透過しないようにし、かつ非発光領域6cに所定の形状の透過窓6dを設けて、透過窓6dの内部だけが被写体光を透過させるようにしている。
図14では、非発光領域6cの透過窓6dの周囲をアノード電極12aで覆う例を示しているが、後述するように透過窓6dの形状を規定する部材は必ずしもアノード電極12aとは限らない。
【0064】
図14では、透過窓6dの平面形状を矩形にしている。透過窓6dの平面形状はできるだけ簡易な形状が望ましい。簡易な形状ほど、回折光fの発生方向が単純化し、シミュレーションにより予め回折光形状を求めることができる。
【0065】
このように、本実施形態では、表示パネル2内のセンサ5の直上に位置する第1画素領域6については、
図14に示すように、画素7内の非発光領域6cに透過窓6dを設けて、回折光fの形状を制御している。これに対して、表示パネル2内のセンサ5の直上に位置しない第2画素領域8については、
図8と同様の平面レイアウトでも構わない。あるいは、
図15に示すように、画素7内の第2発光領域8bの全域にアノード電極12aを配置して、入射光を透過させないようにしてもよい。アノード電極12aの面積が広い方が発光面積が広がり、OLED5の劣化を抑制できる。よって、
図8よりも
図15の平面レイアウトの方がより望ましい。
【0066】
上述したように、センサ5が直下に配置される第1画素領域6における非発光領域6c内の透過窓6dの形状は、複数の部材のいずれかで規定することができる。
【0067】
図16は第1画素領域6の断面構造の第1例を示す断面図である。
図16は、非発光領域6c内の透過窓6dの形状がアノード電極12a(アノード電極層38)で規定されている例を示している。アノード電極層38の端部は、表示面側から平面視したときに、
図14に示したように矩形状に形成されている。このように、
図16の例では、透過窓6dの形状は、アノード電極層38の端部によって規定されている。
【0068】
図16の例では、透過窓6dの内部の第3絶縁層36と第4電極層37をそのまま残している。このため、第3絶縁層36と第4絶縁層37の材料が有色の樹脂層である場合は、可視光透過率が低下するおそれがあるが、少なくとも一部の可視光は透過するため、透過窓6d内の第3絶縁層36と第4電極層37を残してもよい。
【0069】
図17は第1画素領域6の断面構造の第2例を示す断面図である。
図17は、
図16と同様にアノード電極層38の端部で透過窓6dの形状を規定している。
図17は、透過窓6dの内部において第4絶縁層37が除去されている点で
図16とは異なっている。透過窓6dの内部に第4絶縁層37が存在しないため、第4絶縁層37を光が透過する際の光の吸収や反射等を抑制でき、センサ5に入射される光の光量を増やせるため、センサ5の受光感度が高くなる。
【0070】
図18は第1画素領域6の断面構造の第3例を示す断面図である。
図18は、
図16及び
図17と同様にアノード電極層38の端部で透過窓6dの形状を規定している。
図18は、透過窓6dの内部において第3絶縁層36と第4絶縁層37が除去されている点で
図16及び
図17とは異なっている。透過窓6dの内部に第3絶縁層36と第4絶縁層37が存在しないため、センサ5に入射される光の光量を
図17よりも増やすことができ、
図17よりもさらにセンサ5の受光感度を高くできる。
【0071】
図18の場合、アノード電極層38の下に配置されている第3絶縁層36の端部は、アノード電極層38の端部とほぼ同じ位置に設けられている。製造ばらつきによっては、第3絶縁層36の端部がアノード電極層38の端部よりも、透過窓6d側に突き出る可能性があり、この場合、透過窓6dの形状がアノード電極層38の端部で規定されるのか、第3絶縁層36の端部で規定されるのかがあいまいになる。また、第3絶縁層36の端部の突き出し具合によって、回折光fの発生の仕方が変わる可能性がある。
【0072】
そこで、以下に示すように、第3絶縁層36よりも底面側の配線層によって、透過窓6dの形状を規定することも考えられる。
【0073】
図19は
図14の第1変形例による平面レイアウト図、
図20は
図19のA-A線断面図である。
図20は第1画素領域6の断面構造の第4例を示している。
図19及び
図20の例では、第3絶縁層36の下方に配置されている第2配線層(M2)35の端部で透過窓6dの形状を規定している。第2配線層(M2)35は、
図19に示すように、表示面方向から平面視したときに矩形状に形成されている。第2配線層(M2)35は、アルミニウムなどの可視光を透過させない金属材料で形成されているため、第1画素領域6への入射光は透過窓6dの内部を通過してセンサ5に入射される。
【0074】
図19の断面構造では、第2配線層(M2)35を第3絶縁層36よりも透過窓6d側に配置しているため、製造ばらつきがあっても第2配線層(M2)35にて透過窓6dの形状を規定することができる。
【0075】
図21は
図14の第2変形例による平面レイアウト図、
図22は
図21のA-A線断面図である。
図21及び
図22の例では、第3絶縁層36の下方に配置されている第1配線層(M1)33の端部で透過窓6dの形状を規定している。第1配線層(M1)33は、
図21に示すように、表示面方向から平面視したときに矩形状に形成されている。第1配線層(M1)33は、アルミニウム等の可視光を透過させない金属材料で形成されているため、第1画素領域6への入射光は透過窓6dの内部を通過してセンサ5に入射される。
【0076】
図19~
図22では、配線層の端部で透過窓6dの形状を規定する例を示したが、透過窓6dの形状を規定する配線層でキャパシタを形成してもよい。これにより、キャパシタを別に形成しなくて済み、画像表示装置1の断面構造を簡略化できる。
【0077】
図23は
図14の第3変形例による平面レイアウト図、
図24は
図23のA-A線断面図である。
図24では、第1配線層(M1)33にて透過窓6dの形状を規定している。また、透過窓6dの形状を規定するために設けた第1配線層(M1)33の真上に、第1絶縁層32を間に挟んで金属層44を配置して、キャパシタ43を形成している。このキャパシタ43は画素回路12に設けられるキャパシタとして利用することができる。
図24に示すキャパシタ43は、例えば
図7の画素回路12内の画素容量Csとして使用することができる。
【0078】
図25は画素回路12の詳細な回路構成の第1例を示す回路図である。
図25の画素回路12は、
図7に示したドライブトランジスタQ1とサンプリングトランジスタQ2の他に、3つのトランジスタQ3~Q5を有する。トランジスタQ3のドレインはドライブトランジスタQ1のゲートに接続され、トランジスタQ3のソースは電圧V1に設定され、トランジスタQ3のゲートにはゲート信号Gate1が入力される。トランジスタQ4のドレインはOLED5のアノード電極12aに接続され、トランジスタQ4のソースは電圧V2に設定され、トランジスタQ4のゲートにはゲート信号Gate2が入力される。
【0079】
トランジスタQ1~Q4はN型トランジスタであるのに対して、トランジスタQ5はP型トランジスタである。トランジスタQ5のソースは電源電圧Vccpに設定され、トランジスタQ5のドレインはドライブトランジスタQ1のドレインに接続され、トランジスタQ5のゲートにはゲート信号Gate3が入力される。
【0080】
図26は画素回路12の詳細な回路構成の第2例を示す回路図である。
図26の画素回路12内の各トランジスタQ1a~Q5aは、
図25の画素回路12内の各トランジスタQ1~Q5の導電型を逆にしたものである。トランジスタの導電型を逆にした以外に、
図26の画素回路12は
図25の画素回路12とは一部の回路構成が異なっている。
図25及び
図26は画素回路12の例示に過ぎず、種々の回路構成の変更が考えられる。
【0081】
図24の第1配線層(M1)33と、その直上の金属層にて形成されるキャパシタ43は、
図25又は
図26の画素回路12内のキャパシタCsとして用いることができる。
【0082】
図19~
図26では、画素回路12の一部を構成する配線層を透過窓6dの形状を規定するために用いる例を示したが、画素回路12の配線層とは別個に、透過窓6dの形状を規定するための金属層を設けてもよい。
【0083】
図27は
図14の第4変形例による平面レイアウト図、
図28は
図27のA-A線断面図である。
図28では、第3金属層(M3)45の端部にて透過窓6dの形状を規定している。透過窓6dの形状を規定する第3金属層(M3)45は、画素回路12の配線層の一部を構成するものでもよいし、あるいは、透過窓6dの形状を規定するために新たに設けたものでもよい。
図19、
図21、
図27の開口形状を規定するために設けたパターンは電気的にフローティングのイメージで図示しているが、電位カップリングなどの電気的な影響を受けやすくなるため、何らかの電位に接続することが推奨される。例えば、
図25で考えると、固定のDC電位(Vccp、Vcath、V1、V2)が第1推奨、アノード電位が第2推奨、その他の配線やノードが第3推奨である。
【0084】
画素回路12の配線として用いられる第1配線層(M1)33や第2配線層(M2)35では、画素回路12の配線という制約のために、透過窓6dの理想的な形状に合うように配置できない可能性がある。そこで、
図27では、新たに第3配線層(M3)45を設けて、この第3配線層(M3)45の端部を、透過窓6dの形状が理想的になる位置に配置している。これにより、第1配線層(M1)33や第2配線層(M2)35を変更することなく、透過窓6dを理想的な形状に設定できる。
【0085】
上述した各例では、透過窓6dを矩形状にする例を示したが、透過窓6dの形状は矩形には限定されない。ただし、透過窓6dの形状によって、回折光fの形状が変化する。
図29Aは透過窓6dが矩形である例を示し、
図29Bは
図29Aの透過窓6dに平行光を入射させたときに発生する回折光fの一例を示している。図示のように、透過窓6dが矩形の場合には、クロス形状の回折光fが発生する。
【0086】
図30Aは透過窓6dが円形である例を示し、
図30Bは
図30Aの透過窓6dに平行光を入射させたときに発生する回折光fの一例を示している。
図30Bに示すように、透過窓6dが円形の場合は、同心円状に回折光fが発生する。高次の回折光fほど、径サイズが大きくなり、かつ光強度が弱くなる。
【0087】
非発光領域6c内の透過窓6dは、必ずしも1個だけとは限らない。非発光領域6c内に複数の透過窓6dを設けてもよい。
図31Aは非発光領域6c内に複数の円形の透過窓6dを設けた例を示す図、
図31Bは
図31Aの各透過窓6dに平行光を入射させたときに発生する回折光fの一例を示している。複数の透過窓6dを設けると、回折光fの中心部分の光強度は弱くなり、かつ同心円状に回折光fが発生する。
図31Aでは、円形の透過窓6dを複数設ける例を示したが、円形以外の形状の透過窓6dを複数設けてもよい。この場合、回折光fの形状は
図31Bとは異なったものになる。
【0088】
図29A及び
図29Bに示したように、透過窓6dが矩形の場合、クロス形状の回折光fが発生する。この回折光fをソフトウェアによる画像処理で除去するには、例えば、矩形の向きがそれぞれ異なる複数の透過窓6dを設けて、これら複数の透過窓6dで発生した回折光f同士を合成して、回折光fを除去する手法が考えられる。
【0089】
図32は回折光fの除去の第1例を示す図である。
図32では、表示パネル2の直下に2つのイメージセンサモジュール9を配置するとともに、これらイメージセンサモジュール9の直上に位置する2つの第1画素領域6内の各画素7の非発光領域6cに、それぞれ矩形の向きが異なる透過窓6dを配置している。
【0090】
図32の例では、左側に位置するイメージセンサモジュール9の直上に位置する第1画素領域6内の非発光領域6cに、画素7の境界線に略平行に矩形状の透過窓6dを配置している。一方、右側に位置するイメージセンサモジュール9の直上に位置する第1画素領域6内の非発光領域6cに、画素7の境界線に対して45度傾いた方向に矩形状の透過窓6dを配置している。
【0091】
左側のイメージセンサモジュール9に入射される回折光f1のクロス形状と、右側のイメージセンサモジュール9に入射される回折光f2のクロス形状とは、互いに45度向きが異なっている。より詳細には、回折光f1が発生する方向には回折光f2は発生しておらず、かつ、回折光f2が発生する方向には回折光f1は発生していない。このため、左側のイメージセンサモジュール9による回折光f1の撮影画像g1と、右側のイメージセンサモジュール9による回折光f2の撮影画像g2とを合成することで、
図32の合成画像g3に示すように、中心位置の0次回折光の光スポット以外の回折光fを除去することができる。
【0092】
図32では、同じサイズ及び形状の透過窓6dの配置角度を互いに相違させて、回折光fの発生する方向を変えて、回折光f発生画像を合成して回折光fを相殺しているが、合成対象の複数の透過窓6dのサイズや形状は必ずしも同一でなくてもよい。
【0093】
図33は回折光fの除去の第2例を示す図である。
図33では、表示パネル2の直下に2つのイメージセンサモジュール9を配置するとともに、これらイメージセンサモジュール9の直上に位置する2つの第1画素領域6内に、それぞれ形状及び方向の異なる透過窓6dを配置している。
【0094】
図33の例では、左側に位置するイメージセンサモジュール9の直上に位置する第1画素領域6内の非発光領域6cには、ほぼ全域に透過窓6dを設けている。非発光領域6cは矩形状であるため、透過窓6dの形状も矩形状になる。右側に位置するイメージセンサモジュール9の直上に位置する第1画素領域6内の非発光領域6cには、画素7の境界線に対して45度傾斜した方向に左側の第1画素領域6よりも小サイズの透過窓6dを設けている。
【0095】
このように、
図33の例では、左側と右側で透過窓6dのサイズが異なり、かつ傾斜方向も異なるが、回折光f3、f4の形状は
図32の回折光f1、f2とほぼ同じになる(撮影画像g4とg5)。よって、
図32と同様に、各イメージセンサ9bで撮影された回折光fの画像同士を合成することで、合成画像g6に示すように、0次回折光の光スポットを除いて回折光fを除去できる。
【0096】
上述した実施形態では、1画素7(又は1色画素7)について1個以上の透過窓6dを設ける例を示したが、複数の画素7(又は複数の色画素7)を単位として、1個以上の透過窓6dを設けてもよい。
【0097】
図34は3つの画素7(又は3つの色画素7)に跨がるように1個の透過窓6dを設ける例を示す図である。
図34では、例えば、第2配線層(M2)35の端部にて透過窓6dの形状を規定している。
【0098】
図35は回折光fの除去の第3例を示す図である。
図35では、表示パネル2の直下に2つのイメージセンサモジュール9を配置するとともに、これらイメージセンサモジュール9の直上に位置する2つの第1画素領域6内の各画素7の非発光領域6cに、それぞれ形状及び方向の異なる透過窓6dを配置している。
【0099】
図35の例では、左側に位置するイメージセンサモジュール9の直上に位置する第1画素領域6内の非発光領域6cには、3つの画素7(又は3つの色画素7)に跨がるサイズの矩形状の透過窓6dを設けている。右側に位置するイメージセンサモジュール9の直上に位置する第1画素領域6内の非発光領域6cには、画素7の境界線に対して45度傾斜した方向に左側の第1画素領域6よりも小サイズの透過窓6dが3つの画素7(又は3つの色画素7)に跨がるように3つ設けている。
図35の場合も、発生する回折光f5,f6は
図32の回折光f1、f2とほぼ同じになる(撮影画像g7、g8)
【0100】
上述した各例では、第1画素領域6内の非発光領域6cに透過窓6dを設けることにより、回折光fの発生方向を事前に予測できるようにしているが、透過窓6dを透過した光しかセンサ5で受光できないため、センサ5で受光する受光量が制限され、センサ5の検出感度が低下することが懸念される。そこで、第1画素領域6に入射された光をできるだけ多く透過窓6dに集光する対策を施すのが望ましい。具体的な対策の一案として、第1画素領域6の光入射側にマイクロレンズを配置して、入射光を透過窓6dに集光させることが考えられる。
【0101】
図36は第1画素領域6の光入射側にマイクロレンズ(光学系)20を配置した例を示す断面図である。マイクロレンズ20は、表示パネル2の第2透明基板41の上に配置されるか、あるいは第2透明基板41を加工して形成される。マイクロレンズ20は、可視光透過性に優れた透明樹脂材の上にレジストを配置してウェットエッチング又はドライエッチングを行うことで形成可能である。
【0102】
図37Aはマイクロレンズ20がない場合に第1画素領域6に入射される光の進行方向を矢印で示した図、
図37Bは
図36のマイクロレンズ20を設けた場合の光の進行方向を矢印で示した図である。マイクロレンズ20がないと、第1画素領域6内の不透明部材に入射された光は透過窓6dを通過することができないため、透過窓6dを透過する光の光量が少なくなる。一方、マイクロレンズ20を設けると、マイクロレンズ20に入射された平行光はマイクロレンズ20の焦点方向に屈折される。よって、マイクロレンズ20の曲率を最適化して焦点位置を調整することで、透過窓6dを透過する光の光量を増やすことができる。
【0103】
1枚のマイクロレンズ20だけだと、マイクロレンズ20で屈折された光の少なくとも一部は透過窓6dを斜め方向に透過するため、透過窓6dを透過した光の一部がセンサ5に入射されないおそれがある。
図38はマイクロレンズ20で屈折された光の進行方向を矢印線で示した図である。図示のように、マイクロレンズ20は、光を屈折させるため、屈折された光の一部は、透過窓6dを透過してセンサ5の受光面から外れた場所に到達し、マイクロレンズ20に入射された光を有効活用できないおそれがある。
【0104】
そこで、
図39に示すように、第1画素領域6の光入射側に、凸方向の異なる複数のマイクロレンズ20a、20bを配置してもよい。この場合、
図39に矢印線で示したように、一個目のマイクロレンズ20aで屈折された光が、二個目のマイクロレンズ20bでビーム径の小さな平行光に変換されて透過窓6dに入射される。二個目のマイクロレンズ20bの曲率を透過窓6dのサイズに合わせて調整することで、透過窓6dの全域にわたって平行光を入射させることができ、像の歪みの少ない光をセンサ5で受光できる。
【0105】
図39に示す二個のマイクロレンズ20a、20bは、例えば、透明樹脂層を積層して、一方はウェットエッチングで加工し、他方はドライエッチングで加工することで、形成可能である。
【0106】
光の進行方向に沿って複数のマイクロレンズ20を配置する
図39の一変形例として、
図40に示すように、第1画素領域6の光入射側にマイクロレンズ(第1光学系)20aを配置するとともに、第1画素領域6の光出射側に別のマイクロレンズ(第2光学系)20bを配置してもよい。光入射側のマイクロレンズ20aと光出射側のマイクロレンズ20bでは、凸形状の向きが逆である。一個目のマイクロレンズ20aに入射された光は、屈折されて透過窓6dを通過した後、二個目のマイクロレンズ20bで平行光に変換されてセンサ5に入射される。
【0107】
図40の画像表示装置1は、例えば、第1透明樹脂層をウェットエッチング又はドライエッチングで加工して二個目のマイクロレンズ20bを形成し、その後、各層を形成した後、第2透明樹脂層をウェットエッチング又はドライエッチングで加工して一個目のマイクロレンズ20aを形成する。
【0108】
図41は
図40の二個のマイクロレンズ20a、20bを通る光の進行方向を矢印線で示した図である。一個目のマイクロレンズ20aで屈折された光は透過窓6dを透過した後に、二個目のマイクロレンズ20bで平行光に変換されてセンサ5に入射される。これにより、
図38のように一個のマイクロレンズ20だけを設ける場合と比べて、マイクロレンズ20に入射された光を漏れなくセンサ5に入射させることができ、センサ5の受光感度を向上できる。
【0109】
このように、本実施形態では、表示パネル2の裏面側に配置されるセンサ5の直上に位置する第1画素領域6に非発光領域6cを設け、非発光領域6cには予め定めた形状の透過窓6dを設ける。これにより、第1画素領域6に入射された光は、透過窓6dを透過してセンサ5に入射される。透過窓6dを光が透過する際に回折光fが発生するが、透過窓6dの形状を予め定めた形状にすることで、回折光fの発生方向を予め推定でき、センサ5の受光信号から回折光fによる影響を除去することができる。例えば、センサ5がイメージセンサモジュール9の場合、回折光fの発生方向を予め推測することで、イメージセンサモジュール9で撮影した画像データに写し込まれた回折光fを画像処理により除去することができる。
【0110】
非発光領域6cの透過窓6dの形状は、アノード電極12aの端部や配線層の端部により規定できるため、所望の形状及びサイズの透過窓6dを比較的容易に形成できる。また、第1画素領域6の非発光領域6c内に形状の異なる複数の透過窓6dを形成できるため、形状の異なる透過窓6dで発生される回折光f同士を合成することで、回折光fによる影響を相殺することも可能となる。
【0111】
また、第1画素領域6の光入射側にマイクロレンズ20を配置することで、第1画素領域6に入射された光をマイクロレンズ20で屈折させて非発光領域6cの透過窓6dに透過させることができ、透過窓6dを透過する光の光量を増やすことができる。さらに、マイクロレンズ20を光の入射方向に沿って複数設けることで、透過窓6dを透過した光をセンサ5の受光面に導くことができ、センサ5の受光量を増やすことができることから、センサ5の受光感度を向上できる。
【0112】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態で説明した構成を備えた電子機器50の具体的な候補としては、種々のものが考えられる。例えば、
図42は第1の実施形態の電子機器50をカプセル内視鏡に適用した場合の平面図である。
図42のカプセル内視鏡50は、例えば両端面が半球状で中央部が円筒状の筐体51内に、体腔内の画像を撮影するためのカメラ(超小型カメラ)52、カメラ52により撮影された画像データを記録するためのメモリ53、および、カプセル内視鏡50が被験者の体外に排出された後に、記録された画像データをアンテナ54を介して外部へ送信するための無線送信機55を備えている。
【0113】
また、筐体51内には、CPU(Central Processing Unit)56およびコイル(磁力・電流変換コイル)57が設けられている。CPU56は、カメラ52による撮影、およびメモリ53へのデータ蓄積動作を制御するとともに、メモリ53から無線送信機55による筐体51外のデータ受信装置(図示せず)へのデータ送信を制御する。コイル57は、カメラ52、メモリ53、無線送信機55、アンテナ54および後述する光源52bへの電力供給を行う。
【0114】
さらに、筐体51には、カプセル内視鏡50をデータ受信装置にセットした際に、これを検知するための磁気(リード)スイッチ58が設けられている。CPU56は、このリードスイッチ58がデータ受信装置へのセットを検知し、データの送信が可能になった時点で、コイル57からの無線送信機55への電力供給を行う。
【0115】
カメラ52は、例えば体腔内の画像を撮影するための対物光学系を含む撮像素子52a、体腔内を照明する複数の光源52bを有している。具体的には、カメラ52は、光源52bとして、例えばLED(Light Emitting Diode)を備えたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサやCCD(Charge Coupled Device)等によって構成される。
【0116】
第1の実施形態の電子機器50における表示部3は、
図42の光源52bのような発光体を含む概念である。
図42のカプセル内視鏡50では、例えば2個の光源52bを有するが、これらの光源52bを、複数の光源部を有する表示パネルや、複数のLEDを有するLEDモジュールで構成可能である。この場合、表示パネルやLEDモジュールの下方にカメラ52の撮像部を配置することで、カメラ52のレイアウト配置に関する制約が少なくなり、より小型のカプセル内視鏡50を実現できる。
【0117】
また、
図43は第1の実施形態の電子機器50をデジタル一眼レフカメラ60に適用した場合の背面図である。デジタル一眼レフカメラ60やコンパクトカメラは、レンズとは反対側の背面に、プレビュー画面を表示する表示部3を備えている。この表示部3の表示面とは反対側にカメラモジュール4,5を配置して、撮影者の顔画像を表示部3の表示面2aに表示できるようにしてもよい。第1の実施形態による電子機器50では、表示部3と重なる領域にカメラモジュール4,5を配置できるため、カメラモジュール4,5を表示部3の額縁部分に設けなくて済み、表示部3のサイズを可能な限り大型化することができる。
【0118】
図44Aは第1の実施形態の電子機器50をヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)61に適用した例を示す平面図である。
図44AのHMD61は、VR(Virtual Reality)、AR(Augmented Reality)、MR(Mixed Reality)、又はSR(Substituional Reality)等に利用されるものである。現状のHMDは、
図44Bに示すように、外表面にカメラ62を搭載しており、HMDの装着者は、周囲の画像を視認することができる一方で、周囲の人間には、HMDの装着者の目や顔の表情がわからないという問題がある。
【0119】
そこで、
図44Aでは、HMD61の外表面に表示部3の表示面を設けるとともに、表示部3の表示面の反対側にカメラモジュール4,5を設ける。これにより、カメラモジュール4,5で撮影した装着者の顔の表情を表示部3の表示面に表示させることができ、装着者の周囲の人間が装着者の顔の表情や目の動きをリアルタイムに把握することができる。
【0120】
図44Aの場合、表示部3の裏面側にカメラモジュール4,5を設けるため、カメラモジュール4,5の設置場所についての制約がなくなり、HMD61のデザインの自由度を高めることができる。また、カメラを最適な位置に配置できるため、表示面に表示される装着者の目線が合わない等の不具合を防止できる。
【0121】
このように、第2の実施形態では、第1の実施形態による電子機器50を種々の用途に用いることができ、利用価値を高めることができる。
【0122】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)二次元状に配置される複数の画素を備え、
前記複数の画素のうち少なくとも一部の画素は、
第1自発光素子と、
前記第1自発光素子により発光される第1発光領域と、
可視光を透過させる所定の形状の透過窓を有する非発光領域と、を有する、画像表示装置。
(2)前記透過窓の形状がそれぞれ異なる前記非発光領域を有する二以上の画素が設けられる、(1)に記載の画像表示装置。
(3)前記非発光領域は、当該画像表示装置の表示面側から平面視したときに、当該画像表示装置を通して入射される光を受光する受光装置に重なる位置に配置される、(1)又は(2)に記載の画像表示装置。
(4)前記第1自発光素子に接続される画素回路は、前記第1発光領域内に配置される、(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(5)前記非発光領域は、一つの画素内にそれぞれ離隔して配置される複数の前記透過窓を有する、(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(6)前記透過窓は、二以上の画素に跨がって配置される、(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(7)前記二以上の画素に跨がって配置される前記透過窓には、形状が異なる複数種類が存在する、(6)に記載の画像表示装置。
(8)前記透過窓の光入射側に配置され、入射された光を屈折させて前記透過窓に導く光学部材を備える、(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(9)前記光学部材は、
入射された光を光軸方向に屈折させる第1光学系と、
前記第1光学系で屈折された光を平行化する第2光学系と、を有し、
前記透過窓は、前記第2光学系で平行化された光を透過させる、(8)に記載の画像表示装置。
(10)前記透過窓の光入射側に配置され、入射された光を屈折させて前記透過窓に導く第1光学部材と、
前記透過窓の光出射側に配置され、前記透過窓から出射された光を平行化させて受光装置に導く第2光学部材と、を備える、(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(11)前記複数の画素のうち一部の画素を含む第1画素領域と、
前記複数の画素のうち前記第1画素領域内の画素以外の少なくとも一部の画素を含む第2画素領域と、を備え、
前記第1画素領域内の画素は、前記第1自発光素子、前記第1発光領域、及び前記非発光領域を有し、
前記第2画素領域内の画素は、
第2自発光素子と、
前記第2自発光素子により発光され、前記第1発光領域よりも面積が大きい第2発光領域と、を有する、(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(12)前記第1画素領域は、画素表示領域内の複数箇所に離隔して設けられる、(11)に記載の画像表示装置。
(13)前記第1画素領域内には、前記透過窓を透過した光による回折光の形状がそれぞれ相違するように、それぞれ異なる形状の前記透過窓を有する二以上の画素が設けられる、(11)又は(12)に記載の画像表示装置。
(14)前記第1自発光素子は、
下部電極層と、
前記下部電極層の上に配置される表示層と、
前記表示層の上に配置される上部電極層と、
前記下部電極層の下に配置され、前記下部電極層から積層方向に延びるコンタクトを介して前記下部電極層に導通される配線層と、を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記下部電極層の端部により規定される、(1)乃至(13)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(15)前記第1自発光素子は、
下部電極層と、
前記下部電極層の上に配置される表示層と、
前記表示層の上に配置される上部電極層と、
前記下部電極層の下に配置され、前記下部電極層から積層方向に延びるコンタクトを介して前記下部電極層に導通される配線層と、を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記配線層の端部により規定される、(1)乃至(13)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(16)前記配線層は、積層された複数の金属層を有し、
前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状は、前記複数の金属層の少なくとも一つの金属層の端部により規定される、(15)に記載の画像表示装置。
(17)前記複数の画素の表示面側から平面視した際の前記透過窓の形状を規定する前記金属層は、画素回路内のキャパシタの電極である、(16)に記載の画像表示装置。
(18)前記第1発光領域の全域は、前記透過窓の領域を除いて前記下部電極層で覆われる、(14)乃至(18)のいずれか一項に記載の画像表示装置。
(19)二次元状に配置される複数の画素を有する画像表示装置と、
前記画像表示装置を通して入射される光を受光する受光装置と、を備え、
前記画像表示装置は、前記複数の画素のうち一部の画素を含む第1画素領域を有し、
前記第1画素領域内の前記一部の画素は、
第1自発光素子と、
前記第1自発光素子により発光される第1発光領域と、
可視光を透過させる所定の形状の透過窓を有する非発光領域と、を有し、
前記第1画素領域の少なくとも一部は、前記画像表示装置の表示面側から平面視したときに前記受光装置に重なるように配置される、電子機器。
(20)前記受光装置は、前記非発光領域を通して光を受光する、(19)に記載の電子機器。
(21)前記受光装置は、前記非発光領域を通して入射された光を光電変換する撮像センサと、前記非発光領域を通して入射された光を受光して距離を計測する距離計測センサと、前記非発光領域を通して入射された光に基づいて温度を計測する温度センサと、の少なくとも一つを含む、(19)又は(20)に記載の電子機器。
【0123】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 画像表示装置、2 表示パネル、2a 表示層、5 センサ、6 第1画素領域、6a 第1自発光素子、6b 第1発光領域、6c 非発光領域、6d 透過窓、7 画素、8 第2画素領域、8a 第2自発光素子、8b 第2発光領域、9 イメージセンサモジュール、9a 支持基板、9b イメージセンサ、9c カットフィルタ、9d レンズユニット、9e コイル、9f 磁石、9g バネ、10 被写体、11 特定画素、12 画素回路、12a アノード電極、31 第1透明基板、32 第1絶縁層、33 第1配線層、34 第2絶縁層、35 第2配線層、36 第3絶縁層、36a トレンチ、37 第4絶縁層、38 アノード電極層、39 カソード電極層、40 第5絶縁層、41 第2透明基板、42 半導体層、43 キャパシタ、44 金属層、45 第3金属層