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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156549
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/32 20060101AFI20231018BHJP
   G11C 16/10 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G11C16/32
G11C16/10 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065958
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛇島 浩史
【テーマコード(参考)】
5B225
【Fターム(参考)】
5B225DE12
5B225EA10
5B225FA02
(57)【要約】
【課題】不揮発性メモリの信頼性を保証しながら、高頻度で発生する中断処理に対して高速に応答することが可能な半導体装置を提供すること。
【解決手段】電気的に書込可能または消去可能な不揮発性メモリと、不揮発性メモリの書込動作と消去動作のモード制御を実行する制御回路を有する半導体装置であって、不揮発性メモリは、書換動作の中断を要求する制御回路からの中断要求信号に応答し、書込電圧または消去電圧の印加を中断する動作、及び、書換動作の中断からの復帰を要求する制御回路からの復帰要求信号に応答し、印加電圧の中断から復帰する動作を制御し、並びに、書込電圧または消去電圧の電圧印加停止時に電圧印加停止フラグを制御回路に出力する書換中断・復帰制御回路と、中断要求信号の応答時に書換電圧が印加されている選択線を識別するための書換位置情報を保持する書換情報保持回路を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に書込可能または消去可能な不揮発性メモリと、前記不揮発性メモリの書込動作と消去動作のモード制御を実行する制御回路を有する半導体装置であって、
前記不揮発性メモリは、
書込動作および消去動作の少なくともいずれか一方を含む書換動作の中断を要求する前記制御回路からの中断要求信号に応答し、書込電圧または消去電圧の印加を中断する動作、及び、前記書換動作の中断からの復帰を要求する前記制御回路からの復帰要求信号に応答し、書込電圧または消去電圧の印加の中断から復帰する動作を制御し、並びに、書込電圧または消去電圧の電圧印加停止時に電圧印加停止フラグを前記制御回路に出力する書換中断・復帰制御回路と、
中断要求信号の応答時に書込電圧が印加されている選択線を識別するための書込位置情報、又は、中断要求信号の応答時に消去電圧が印加されている選択線を識別するための消去位置情報を保持する書換情報保持回路と、を備え、
前記制御回路は、前記不揮発性メモリが書込モードまたは消去モードにある場合の中断命令に応答し、書換の中断要求信号を前記書換中断・復帰制御回路に送信し、及び、中断要求信号によって中断された前記不揮発性メモリの書込モードまたは消去モードの復帰命令に応答し、前記書換中断・復帰制御回路から出力される前記電圧印加停止フラグがアクティブな場合に前記書換中断・復帰制御回路へ書換の復帰要求信号を出力する半導体装置。
【請求項2】
前記書換中断・復帰制御回路は、
書込モードまたは消去モードにおいて、選択されるべき最初の選択線に書込電圧または消去電圧を印加する前に前記中断要求信号を受信する場合には、
前記最初の選択線を選択し、前記最初の選択線に対する書込電圧または消去電圧の印加が完了した後に書込モードまたは消去モードを中断させ、電圧印加停止フラグをアクティブにして前記制御回路に出力し、
書込モードまたは消去モードにおいて、選択されるべき最後の選択線以外の選択線に書込電圧または消去電圧を印加中に前記中断要求信号を受信する場合には、
前記選択線に対する書込電圧または消去電圧の印加が完了した後に書込モードまたは消去モードを中断させ、前記電圧印加停止フラグをアクティブにして前記制御回路に出力し、
書込モードまたは消去モードにおいて、選択されるべき最後の選択線に書込電圧または消去電圧を印加中に前記中断要求信号を受信する場合には、
前記最後の選択線に対する書込電圧または消去電圧の印加が完了した後に書込モードまたは消去モードを中断させ、前記電圧印加停止フラグを非アクティブにして前記制御回路に出力し、
書込モードまたは消去モードにおいて、選択されるべき最後の選択線に書込電圧または消去電圧を印加後に前記中断要求信号を受信する場合には、
前記電圧印加停止フラグを非アクティブにして前記制御回路に出力する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
書込モードまたは消去モードにおいて、選択されるべき最初の選択線に書込電圧または消去電圧を印加する前に前記書換中断・復帰制御回路が前記中断要求信号を受信する場合には、
前記書換中断・復帰制御回路が、前記最初の選択線を選択し、前記最初の選択線に対する書込電圧または消去電圧の印加が完了した後に、前記書換情報保持回路は、前記最初の選択線の次に選択されるべき選択線の識別情報を前記書換中断・復帰制御回路から受信して記憶し、
書込モードまたは消去モードにおいて、選択されるべき最後の選択線以外の選択線に書込電圧または消去電圧を印加中に前記書換中断・復帰制御回路が前記中断要求信号を受信する場合には、
前記書換中断・復帰制御回路が、前記選択線に対する書込電圧または消去電圧の印加が完了した後に、前記書換情報保持回路は、前記選択線の次に選択されるべき選択線の識別情報を前記書換中断・復帰制御回路から受信して記憶し、
前記書換中断・復帰制御回路が前記制御回路から前記書換の前記復帰要求信号を受信する場合に、前記書換中断・復帰制御回路は、
前記書換情報保持回路から次に選択されるべき選択線の前記識別情報を読み出し、
前記識別情報によって示される次に選択されるべき選択線を選択し、
前記選択線に書込電圧または消去電圧を印加する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記書換情報保持回路は、前記書込位置情報に加えて、前記選択線に書込電圧が印加されてから中断するまでの書込時間情報を記憶し、または、
前記書換情報保持回路は、前記消去位置情報に加えて、前記選択線に消去電圧が印加されてから中断するまでの消去時間情報を記憶し、
前記書換中断・復帰制御回路が前記復帰要求信号を受信すると、前記書換情報保持回路から、前記書込位置情報及び前記書込時間情報、又は、前記消去位置情報及び前記消去時間情報を読み出し、前記書込位置情報又は前記消去位置情報によって示される選択線を選択し、前記書込時間情報又は前記消去時間情報から前記選択線に印加されるべき残り時間の間、前記書込電圧又は消去電圧を前記選択線に印加する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
電気的に書込可能または消去可能な不揮発性メモリと、前記不揮発性メモリの書込動作と消去動作のモード制御を実行する制御回路を有する半導体装置であって、
前記不揮発性メモリは、
書込動作および消去動作の少なくともいずれか一方を含む書換動作の中断を要求する前記制御回路からの中断要求信号に応答し、書込電圧または消去電圧の印加を中断する動作、及び、前記書換動作の中断からの復帰を要求する前記制御回路からの復帰要求信号に応答し、書込電圧または消去電圧の印加の中断から復帰する動作を制御し、書込電圧または消去電圧の電圧印加停止時に電圧印加停止フラグを前記制御回路に出力し、並びに、書込動作又は消去動作の停止時にアクティブな書換停止フラグを出力する書換中断・復帰制御回路と、
前記アクティブな書換停止フラグを受信すると、書込動作又は消去動作が停止されている領域とは異なる他の領域への書込動作又は消去動作を制御可能な書換制御回路と、を備える半導体装置。
【請求項6】
前記選択線は、前記不揮発性メモリのソース線であり、前記ソース線は複数あり、複数の前記ソース線のそれぞれは異なる記憶領域に対応する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記選択線には、前記不揮発性メモリのビット線がさらに含まれる請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、特に、不揮発性メモリを含む半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のMCU(Micro Control Unit)において、マルチCPU(Central Processing Unit)コア化やOTA(Over The Air)機能に対応することが必要になっている。このような状況化では、不揮発性メモリに対する書込要求又は消去要求の競合頻度が顕著になってくる。具体的には、マルチCPUコア化によって、CPUコア数がフラッシュバンク数よりも大きくなり、同一バンクへの書込要求又は消去要求の競合が多発する場合がある。また、OTA機能に対応することによって、ファームウェアの更新が必須となり、車両等のフィールド情報の記録のため書込要求又は消去要求の競合が多発する場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、書込動作又は消去動作中の割り込みによる中断命令の供給から実際の中断までの移行時間を短くする技術が開示されている。具体的には、書込動作又は消去動作中の中断命令に応答し、非同期に書込電圧又は消去電圧の印加を解除し、書込又は消去の禁止期間(中断処理時間)の短縮を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-34045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような動作の工夫にもかかわらず、書込動作又は消去動作の復帰時には、再度、同一領域への書込電圧又は消去電圧の印加が必要となるために、不揮発性メモリの信頼性を保証するためには、中断命令は1回の使用に制限されていた。したがって、2回目以降の中断処理時間を短縮することができず、2回目以降の中断命令に対する応答が遅くなる。しかし、上述したように、マルチCPUコア化やOTA(Over-The-Air)機能に対応することが必要不可欠になってくると、書込要求又は消去要求の競合が頻発することが想定される。この場合には、従来技術は、不揮発性メモリの信頼性を保証しながら、高頻度で発生する中断処理に対して高速に応答することが困難になってくる。
【0006】
本開示は、このようなことに鑑みてなされたものである。その目的の一つは、不揮発性メモリの信頼性を保証しながら、高頻度で発生する中断処理に対して高速に応答することが可能な半導体装置を提供することにある。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。代表的な半導体装置は、電気的に書込可能または消去可能な不揮発性メモリと、前記不揮発性メモリの書込動作と消去動作のモード制御を実行する制御回路を有し、前記不揮発性メモリは、書込動作および消去動作の少なくともいずれか一方を含む書換動作の中断を要求する前記制御回路からの中断要求信号に応答し、書込電圧または消去電圧の印加を中断する動作、及び、前記書換の中断からの復帰を要求する前記制御回路からの復帰要求信号に応答し、書込電圧または消去電圧の印加の中断から復帰する動作を制御し、並びに、書込電圧または消去電圧の電圧印加停止時に電圧印加停止フラグを前記制御回路に出力する書換中断・復帰制御回路と、中断要求信号の応答時に書込電圧が印加されている選択線を識別するための書込位置情報、又は、中断要求信号の応答時に消去電圧が印加されている選択線を識別するための消去位置情報を保持する書換情報保持回路と、を備え、前記制御回路は、前記不揮発性メモリが書込モードまたは消去モードにある場合の中断命令に応答し、書換の中断要求信号を前記書換中断・復帰制御回路に送信し、及び、中断要求信号によって中断された前記不揮発性メモリの書込モードまたは消去モードの復帰命令に応答し、前記書換中断・復帰制御回路から出力される前記電圧印加停止フラグがアクティブな場合に前記書換中断・復帰制御回路へ書換の復帰要求信号を出力する。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によれば、不揮発性メモリの信頼性を保証しながら、高頻度で発生する中断処理に対して高速に応答することが可能な半導体装置を提供可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る半導体装置の動作概要の一例を説明するタイミングチャートである。
図2図2は、実施形態1に係る半導体装置の書換動作の推移の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係る半導体装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態1に係る半導体装置の書換動作の一例を示すタイミングチャートである。
図5図5は、実施形態1に係る半導体装置の書換動作の一例を示すタイミングチャートである。
図6図6は、実施形態1に係る半導体装置の書換動作の一例を示すタイミングチャートである。
図7図7は、実施形態1に係る半導体装置の書換動作の一例を示すタイミングチャートである。
図8図8は、実施形態1に係る半導体装置の性能を示す実施例の一部である。
図9図9は、実施形態1の変形例に係る半導体装置の書換可能領域の関係を示す図である。
図10図10は、実施形態1の変形例に係る半導体装置の書換動作の推移の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態2に係る半導体装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0011】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0012】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。
【0013】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る半導体装置の概略的なタイミングチャートの一例を示す図である。図1のタイミングチャートは、不揮発性メモリの複数のソース線のそれぞれのソース線に印加される書込電圧または消去電圧の印加タイミングと、書込動作または消去動作に対する中断要求信号が発生するタイミングI1及び復帰要求信号が発生するタイミングR1との関係の一例を示した図である。不揮発性メモリの複数のソース線のそれぞれのソース線は、不揮発性メモリの異なる領域であって、連続する領域を分割して選択するために使用される。
【0015】
具体的には、図1における半導体装置は、最初に選択されるべきソース線であるソース線SL0、及び、ソース線SL0の次に選択されるべきソース線であるソース線SL1に対する書込電圧または消去電圧の印加を示している。したがって、ソース線SL0及びソース線SL1に対応する不揮発性メモリの領域に対する書込動作または消去動作は完了している。ただし、ベリファイ動作が必要な場合には、図1のタイミングチャートの動作が終了した後に、ベリファイ動作が実行される場合がある。
【0016】
また、図1は、ソース線SL2に対する書込電圧または消去電圧の印加中に、中断要求信号がタイミングI1で発生している状態を示している。この場合に、半導体装置は、ソース線SL2に対応する不揮発性メモリの対応領域に対する書込電圧または消去電圧の印加を完了してから、次のソース線であるソース線SL3に対する書込電圧または消去電圧の印加を実行せずに、書込電圧または消去電圧の印加を中断する中断状態を維持する。中断状態を維持した後に、タイミングR1で復帰要求信号が発生すると、半導体装置は、次のソース線であるソース線SL3に対する書込電圧または消去電圧の印加を開始する。すなわち、半導体装置は、あらかじめ規定されている書込電圧または消去電圧の印加幅(印加時間:t2)を満足するように、中断要求信号の発生タイミングから時間t1の間、書込電圧または消去電圧を印加し続ける。
【0017】
さらに、ソース線SL3からソース線SLk(kは4以上の正の整数)までの書込電圧または消去電圧の印加の間に、中断要求信号が発生しない場合には、半導体装置は、ソース線SL3からソース線SLk(kは4以上の正の整数)までの書込電圧または消去電圧の印加を完了する。
【0018】
上述したように、本実施形態に係る半導体装置は、ソース線単位で書込電圧または消去電圧の印加を実行するので、中断要求信号が発生した場合の中断処理時間を短縮することが可能になる。また、本実施形態に係る半導体装置は、ソース線単位で書込電圧または消去電圧の印加を完了させて、中断状態に移行するので、あらかじめ規定されている書込電圧または消去電圧の印加幅(印加時間:t2)を確実に確保することが可能になる。さらに、本実施形態に係る半導体装置は、ソース線単位で書込電圧または消去電圧の印加を完了させて、中断状態に移行し、次のソース線から書込電圧または消去電圧の印加を再開させるので、メモリセルに対するストレスの増大を回避することが可能になる。すなわち、不揮発性メモリに対して制限される書込可能回数または消去可能回数を無駄に使用することがなくなる。したがって、従来技術における中断処理の使用回数の制限を撤廃することが可能になる。さらに、本実施形態に係る半導体装置は、1個の中断要求信号に対して、ソース線単位で書込電圧または消去電圧の印加を完了させてから、次の中断要求信号を受け付けるので、中断要求信号が頻発しても、書込動作または消去動作が進行しなくなる事態を避けることが可能になる。
【0019】
図2は、図1のタイミングチャートに対応する不揮発性メモリのメモリ領域の書換状態の一例を示す概念図である。なお、本実施形態において、書換とは、書込および消去の少なくともいずれか一方を示す用語であり、書換には書込および消去の両方が含まれる場合がある。
【0020】
一例として、図2の不揮発性メモリを含む半導体装置が、車両またはIoT機器に搭載されている場合を想定して説明する。すなわち、図2は、半導体装置のOTAにおけるファームウェア更新(FOTA:Firmware Update Over-The-Air)時に発生する中断要求信号による不揮発性メモリの書込動作/消去動作の競合動作を示す。
【0021】
図2(a)は、本実施形態における不揮発性メモリのメモリ領域の一例として、データフラッシュ(Data Flash)とコードフラッシュ(Code Flash)の領域を概念的に示す図である。例えば、本実施形態における半導体装置が車両に搭載されて使用される場合には、データフラッシュは車両の速度、温度等のフィールド情報の書換動作に使用される場合がある。したがって、データフラッシュは優先度の高い情報の書換動作に使用される場合がある。また、コードフラッシュは車両のECU(Electronic Control Unit)等の制御装置の制御プログラムであるファームウェアの書換動作に使用される場合がある。したがって、ファームウェアの書換動作には長い時間がかかる場合がある。図2(a)は、コードフラッシュの一部の領域に、ユーザプログラムv1.0というファームウェアが書き込まれており、ta1の位置のファームウェアコードが実行中である状態を示している。
【0022】
図2(b)は、ファームウェアであるユーザプログラムv1.0の位置tb2のファームウェアコードの実行中に、ユーザプログラムv1.0とは異なるコードフラッシュ領域にユーザプログラムv2.0が位置tb1まで消去動作または書込動作が進んでいる状況を示す。例えば、ユーザプログラムv1.0によって制御されるECUの動作中に、無線通信によって伝送される更新プログラムであるユーザプログラムv2.0を途中まで書き込んでいる状態が図2(b)の状態であり得る。なお、ユーザプログラムv2.0の書込動作の前に消去動作が必要な場合があるので、位置tb1は消去動作または書込動作の途中位置を示す。
【0023】
図2(c)は、ファームウェアであるユーザプログラムv1.0の位置tb3のファームウェアコードの実行中に、データフラッシュ領域に上述した優先順位が高いフィールド情報が書き込まれるための消去動作または書込動作が進行中である状態を示す。この場合に、ユーザプログラムv2.0を書き込むための消去動作または書込動作は一時中断される。ここで、ユーザプログラムv2.0に対する中断要求信号が発生してからユーザプログラムv2.0を書き込むための消去動作または書込動作が中断するまでの中断処理時間が短いほど、優先順位が高い情報のデータフラッシュ領域への書込待ち時間が短くなる。すなわち、半導体装置の処理能力が向上する。さらに、書込待ち時間が短くなることによって、中断要求信号が発生してからデータフラッシュ領域の消去動作および書込動作が完了するまでの合計時間(トータル時間)が短縮されるので、高速書換動作を実現可能となることも意味する。
【0024】
図2(d)は、データフラッシュ領域にフィールド情報が書き込まれるための消去動作および書込動作が完了し、コードフラッシュ領域へのユーザプログラムv2.0の書込が完了した後に、車両のECU等の制御装置がリセットされ、更新プログラムであるユーザプログラムv2.0の実行が開始された状態を示す図である。
【0025】
図3は、本実施形態に係る半導体装置100の構成例を示すブロック図である。半導体装置100は、CPU(Central Processing Unit)110、RAM(Random Access Memory)120、BSC(Bus State Controller)130、制御部140、不揮発性メモリ150を含む。
【0026】
CPU110は、不揮発性メモリ150に書き込まれたファームウェアのコードをフェッチし、ファームウェアに従って、半導体装置100及び半導体装置100に接続される外部電子機器(図示せず)を制御する機能を有する。
【0027】
RAM120は、ファームウェアが実行されることによってCPU110が生成した情報、または、不揮発性メモリ150に書き込まれた情報等の情報を一時的に記憶する機能を有する。
【0028】
BSC130は、内部バス(IBUS)及び周辺バス(PBUS)を切り替えて、CPU110がアクセス可能なバスを切り替える機能を有する。例えば、CPU110が不揮発性メモリ150に書き込まれた情報を読み出す場合には、BSC130はCPU110がIBUSをアクセスできるように機能する。また、例えば、CPU110が不揮発性メモリ150に消去動作または書込動作を指示する命令を発行する場合には、BSC130はCPU110がPBUSを介して制御部140にアクセスできるように機能する。
【0029】
制御部140は、CPU110からの不揮発性メモリ150に対する消去動作または書込動作を指示する命令をPBUSを介して受信すると、後述する書換シーケンサ151に消去モード信号および/または書込モード信号S1を出力する。なお、上述したように、書換という用語は、消去または書込のいずれか一方、若しくは、消去および書込の両方を含む用語として本明細書では使用される。
【0030】
また、制御部140は、消去モード信号および/または書込モード信号S1を出力した後に、書換シーケンサ151から書換電圧印加完了信号S2を受信する前に、優先度の高い情報の書換命令をCPU110から受信する場合がある。この場合には、制御部140は、書換中断要求信号S3を後述する書換中断/復帰制御回路153に出力する。また、制御部140が書換中断/復帰制御回路153からアクティブな書換電圧印加停止フラグS5を受信した後に、優先度の高い情報の書込が終了すると、制御部140は書換復帰要求信号S4を書換中断/復帰制御回路153に出力する。なお、優先度の高い情報の書込は消去モード信号および/または書込モード信号S1によって開始し、優先度の高い情報の書込の終了は、書換電圧印加完了信号S2の受信によって制御部140は認識することが可能である。
【0031】
不揮発性メモリ150は、書換シーケンサ151、不揮発性メモリセルアレイ152、書換中断/復帰制御回路153、書換情報保持回路154を備える。
【0032】
書換シーケンサ151は、制御部140からの消去モード信号および/または書込モード信号S1を受信すると、消去モードおよび/または書込モードに入り、消去モードおよび/または書込モードを実行する。消去モードには、消去電圧の印加準備段階、消去電圧の印加動作及び消去のベリファイ動作などの動作が含まれ得る。また、書込モードには、書込電圧の印加準備段階、書込電圧の印加動作及び書込のベリファイ動作などの動作が含まれ得る。また、書換シーケンサ151は、不揮発性メモリセルアレイ152をソース線SLi(iは0または正の整数)およびビット線BLj(jは0または正の整数)によって、消去および/または書込を実行する領域を決定する。
【0033】
不揮発性メモリセルアレイ152の一例には、フラッシュメモリが挙げられる。不揮発性メモリセルアレイ152はソース線およびビット線等によって消去動作および/または書込動作が実行される領域が選択される。ソース線は、消去動作時の消去電圧および/または書込動作動作時の書込電圧が印加されて、アクティブ状態になる。なお、本実施形態では主にソース線の動作に基づいて、半導体装置100の動作を記述する。
【0034】
書換中断/復帰制御回路153は、不揮発性メモリセルアレイ152において情報の書換動作を実行中に、当該情報よりも優先度が高い他の情報の書換要求を示す書換中断要求信号S3を制御部140から受信すると以下の動作を実行する機能を有する。すなわち、書換中断/復帰制御回路153は、実行中の書換動作を一時的に中断する機能を有する。また、書換中断/復帰制御回路153は、一時的に書換動作を中断した後に、中断された書換動作を再開する復帰機能を有する。ただし、制御部140からの書換中断要求信号S3の受信タイミングによって、書換中断/復帰制御回路153の動作は異なる。ここでは、ソース線を選択した書換動作の実行中に書換中断要求信号S3を受信した書換中断/復帰制御回路153の動作を説明する。
【0035】
具体的には、実行中の書換動作を一時的に中断する場合には、選択中のソース線の印加電圧の印加を完了した後に、書換中断/復帰制御回路153は、書換動作を一時的に中断する。すなわち、書換中断/復帰制御回路153は、選択中のソース線に印加されるべき予め定められた時間の間は、中断動作を実行せずに、印加されるべき印加電圧を印加し続ける。そして、書換中断/復帰制御回路153は、次に選択されるべきソース線に、印加されるべき印加電圧を印加する前に、書換動作を一時的に中断する。書換動作を一時的に中断した後に、書換中断/復帰制御回路153は、書換電圧印加停止を示す情報をアクティブにした書換電圧印加開始/停止信号S6を、書換シーケンサ151に出力する。書換シーケンサ151は、書換電圧印加開始/停止信号S6を受信すると、次に選択されるべきソース線の識別情報S7を書換中断/復帰制御回路153に出力する。次に選択されるべきソース線の識別情報S7を受信した書換中断/復帰制御回路153は、当該識別情報S7をS9として書換情報保持回路154に出力する。また、書換中断/復帰制御回路153は、書換電圧印加停止フラグS5をアクティブにし、制御部140に書換電圧印加停止フラグS5を出力する。
【0036】
また、書換中断/復帰制御回路153は、制御部140から書換復帰要求信号S4を受信すると、書換情報保持回路154から次に選択されるべきソース線の識別情報S8を読みだし、当該識別情報を含む書換電圧印加開始/停止信号S6を書換シーケンサ151に出力する。
【0037】
書換情報保持回路154は、書換中断/復帰制御回路153から、次に選択されるべきソース線の識別情報S9を受信し、当該識別情報を記憶する機能を有する。また、書換情報保持回路154に記憶された当該識別情報は、書換復帰要求信号S4を受信した書換中断/復帰制御回路153によって読み出されることが可能である。
【0038】
(書換中断要求信号S3の受信タイミングによる動作モードの違い)
図4から図7は、書換モードにおいて異なるタイミングで書換中断要求信号S3が発生した場合の半導体装置100の動作モードの違いを示す。
【0039】
図4は、半導体装置100が書換モードM11に入っているが、書換電圧がソース線SL0に印加される前に、書換中断要求信号S3が書換中断/復帰制御回路153に入力された場合の半導体装置100の動作モードを示す。書換電圧がソース線SL0に印加される前に、書換中断要求信号S3が書換中断/復帰制御回路153に入力された場合には、書換中断要求信号S3の入力とは無関係に、書換電圧を印加するための電源セットアップ等の電圧印加シーケンスの処理を半導体装置100は実行する。そして、半導体装置100は、不揮発性メモリセルアレイ152の書換領域の先頭のソース線(SL0)を選択し、書換電圧を印加する。書換電圧の印加期間は予め定められている書換のための書換期間(t11)である。半導体装置100は、当該書換期間、書換電圧を印加した後に、書換中断/復帰制御回路153が書換電圧の印加を停止し、書換電圧印加停止フラグS5をアクティブにし、制御部140に書換電圧印加停止フラグS5を出力する。書換中断/復帰制御回路153は、先頭のソース線(SL0)の次に書換電圧が印加されるべき2番目のソース線(SL1)の識別情報を、書換シーケンサ151から入力し、当該識別情報を書換情報保持回路154に出力する。書換情報保持回路154は、2番目のソース線(SL1)の識別情報を記憶する。
【0040】
さらに、図4において、書換復帰要求信号S4がタイミングR2で制御部140から書換中断/復帰制御回路153に入力されると、半導体装置100は、書換モードM12に移行する。そして、書換中断/復帰制御回路153は2番目のソース線(SL1)の識別情報を書換情報保持回路154から読み出す。2番目のソース線(SL1)の識別情報は書換電圧印加開始/停止信号S6に含まれて、書換中断/復帰制御回路153から書換シーケンサ151に入力される。書換シーケンサ151は、2番目のソース線(SL1)を選択し、2番目のソース線(SL1)に書換電圧を印加する。最後のソース線(SLk(kは4以上の整数)までの間に書換中断要求信号S3が書換中断/復帰制御回路153に入力されない場合には、書換シーケンサ151は、最後のソース線(SLk)までの書換電圧の印加を終了させる。時間t12は、選択された2番目のソース線(SL1)の書換電圧の印加開始から最後のソース線(SLk)の書換電圧の印加終了までの時間を示す。
【0041】
図5は、半導体装置100が書換モードM13に入っており、選択されているソース線SL2に書換電圧が印加されている最中に、書換中断要求信号S3がタイミングI3で書換中断/復帰制御回路153に入力された場合の半導体装置100の動作モードを示す。なお、選択されているソース線は、ソース線SL2に限定されるものではなく、ソース線SL0からソース線SLk-1のいずれかのソース線が選択されて場合に本実施形態は適用され得る。書換電圧の印加期間は予め定められている書換のための書換期間(t14)である。すなわち、ソース線SL0からソース線SLk-1のいずれかのソース線が選択されている場合に、書換中断要求信号S3が入力されても、選択されているソース線の書換期間が終了するまで、書換中断/復帰制御回路153は書換シーケンサ151に書換電圧を印加させ続ける。半導体装置100は、当該書換期間、書換電圧を印加した後に、書換中断/復帰制御回路153が書換電圧の印加を停止し、書換電圧印加停止フラグS5をアクティブにし、制御部140に書換電圧印加停止フラグS5を出力する。書換中断/復帰制御回路153は、3番目のソース線(SL2)の次に書換電圧が印加されるべき4番目のソース線(SL3)の識別情報を、書換シーケンサ151から入力し、当該識別情報を書換情報保持回路154に出力する。書換情報保持回路154は、4番目のソース線(SL3)の識別情報を記憶する。すなわち、書換情報保持回路154は、ソース線SL1からソース線SLkのいずれかのソース線の識別情報を次に書換電圧が印加されるべきソース線として記憶する。
【0042】
さらに、図5において、書換復帰要求信号S4がタイミングR3で制御部140から書換中断/復帰制御回路153に入力されると、半導体装置100は、書換モードM14に移行する。そして、書換中断/復帰制御回路153は4番目のソース線(SL3)の識別情報を書換情報保持回路154から読み出す。4番目のソース線(SL3)の識別情報は書換電圧印加開始/停止信号S6に含まれて、書換中断/復帰制御回路153から書換シーケンサ151に入力される。書換シーケンサ151は、4番目のソース線(SL3)を選択し、4番目のソース線(SL4)に書換電圧を印加する。最後のソース線(SLk(kは4以上の整数)までの間に書換中断要求信号S3が書換中断/復帰制御回路153に入力されない場合には、書換シーケンサ151は、最後のソース線(SLk)までの書換電圧の印加を終了させる。時間t15は、書換中断要求信号S3が書換動作中に入力されたソース線の次に選択されるべきソース線の書換電圧の印加開始から最後のソース線(SLk)の書換電圧の印加終了までの時間を示す。
【0043】
図6は、半導体装置100が書換モードM15に入っており、選択されている最後のソース線SLkに書換電圧が印加されている最中に、書換中断要求信号S3がタイミングI4で書換中断/復帰制御回路153に入力された場合の半導体装置100の動作モードを示す。最後のソース線SLkが選択されている場合に、書換中断要求信号S3が入力されても、選択されている最後のソース線の書換期間が終了するまで、書換中断/復帰制御回路153は書換シーケンサ151に書換電圧を印加させ続ける。半導体装置100は、当該書換期間、書換電圧を印加した後に、書換中断/復帰制御回路153が書換電圧の印加を停止し、書換電圧印加停止フラグS5を非アクティブにし、制御部140に非アクティブな書換電圧印加停止フラグS5を出力する。なお、この場合には、書換中断/復帰制御回路153は、ソース線の識別情報S9を書換情報保持回路154に出力しないので、書換情報保持回路154は新たな情報を記憶することはない。また、非アクティブな書換電圧印加停止フラグS5を受信した制御部140は、書換中断要求信号を発生した新たな情報の書込が終了してから書換モードM16を開始し、書換中断要求信号によって中断していた情報のベリファイ動作を書換モードM16の間に完了させる。
【0044】
図7は、半導体装置100が書換モードM17に入っており、選択されている最後のソース線SLkに対する書換電圧の印加が終了した後に、書換中断要求信号S3がタイミングI5で書換中断/復帰制御回路153に入力された場合の半導体装置100の動作モードを示す。半導体装置100は、書換電圧印加停止フラグS5を非アクティブにし、制御部140に非アクティブな書換電圧印加停止フラグS5を出力する。また、この場合にも、書換中断/復帰制御回路153は、ソース線の識別情報S9を書換情報保持回路154に出力しないので、書換情報保持回路154は新たな情報を記憶することはない。また、非アクティブな書換電圧印加停止フラグS5を受信した制御部140は、書換中断要求信号を発生した新たな情報の書込が終了してから書換モードM18を開始し、書換中断要求信号によって中断していた情報のベリファイ動作を書換モードM18の間に完了させる。
【0045】
(実験例)
図8は、上述した動作を実行可能な半導体装置100のコードフラッシュ領域(No.1)及びデータフラッシュ領域(No.2)における所要時間を計測した結果を示す。所要時間は2種類の時間で示されている。2種類の時間の1つ目は、サスペンド応答時間(suspension response time)である。サスペンド応答時間とは、書換モードにある情報に対して書換中断要求信号S3が出力されてから、選択されているソース線に対しての書換電圧の印加が完了し、中断処理が完了するまでの時間を示す。したがって、サスペンド応答時間は、他の情報によるコードフラッシュ領域またはデータフラッシュ領域への書換を禁止する書換禁止期間(中断処理時間)でもある。
【0046】
図8の上段のコードフラッシュ領域(No.1)におけるサスペンド応答時間は、従来技術の半導体装置(prior arts)では約1700μsであったが、本実施形態の半導体装置100の実施例(working examples)では、約120μs以下であった。また、図8の下段のデータフラッシュ領域(No.2)におけるサスペンド応答時間は、従来技術の半導体装置(prior arts)では約300μsであったが、本実施形態の半導体装置100の実施例(working examples)では、約120μs以下であった。したがって、本実施形態の半導体装置100は、不揮発性メモリにおけるサスペンド応答時間を大幅に短縮することが可能になった。
【0047】
2種類の時間の2つ目は、書込動作/消去動作の増加時間(increasing time for write/erase)である。書込動作/消去動作の増加時間とは、選択されているソース線に対しての書換電圧の印加が完了してから、中断処理が完了し、書換復帰要求信号S4が発生し、書換復帰処理が完了するまでの時間である。
【0048】
図8の上段のコードフラッシュ領域(No.1)における書込動作/消去動作の増加時間は、従来技術の半導体装置(prior arts)では約1700μsであったが、本実施形態の半導体装置100の実施例(working examples)では、約80μs以下であった。また、図8の下段のデータフラッシュ領域(No.2)における書込動作/消去動作の増加時間は、従来技術の半導体装置(prior arts)では約300μsであったが、本実施形態の半導体装置100の実施例(working examples)では、約70μs以下であった。したがって、本実施形態の半導体装置100は、不揮発性メモリにおける書込動作/消去動作の増加時間を大幅に短縮することが可能になった。
【0049】
上述した本実施形態に係る半導体装置100によれば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリセルアレイ152領域に書込動作および/または消去動作の競合が発生した場合であっても、書換禁止期間を大幅に短縮することが可能になる。すなわち、書込動作および/または消去動作の中断処理時間(サスペンド応答時間)を大幅に短縮することが可能になる。また、書込動作および/または消去動作の中断処理によって生じる、書込動作および/または消去動作の増加時間を大きく抑制することが可能になる。
【0050】
また、上述した本実施形態に係る半導体装置100によれば、一度選択されたソース線に対する消去電圧または書込電圧を書換中断要求信号の発生とは無関係に、所定の期間、印加し続ける。したがって、不揮発性メモリセルアレイ152領域は不要なストレスを受けることがなくなるので、不揮発性メモリセルアレイ152領域で保証されている消去電圧または書込電圧の印加回数を無駄に使用することがなくなる。
【0051】
さらに、上述した本実施形態に係る半導体装置100によれば、従来技術で制限されていた高速な中断処理動作の使用回数の制限を撤廃することが可能になる。
【0052】
さらに、上述した本実施形態に係る半導体装置100によれば、書換中断要求信号が短時間で繰り返し発生しても、本実施形態に係る半導体装置100は選択されたソース線の消去動作または書込動作を終了してから、次の書換中断要求信号を受け付ける。したがって、本実施形態に係る半導体装置100は中断処理を繰り返しても、書換られるべき情報の書換動作を継続して進行させていくことが可能になるように構成されている。
【0053】
さらに、上述した本実施形態に係る半導体装置100によれば、書換中断要求に対応するために制御部140を複数搭載する必要がないので、半導体装置100の面積増加およびコスト増加を抑制することが可能になる。
【0054】
(実施形態1の変形例)
上述した実施形態では、コードフラッシュ領域の書換動作中に、データフラッシュ領域への書換動作が発生する場合を主にして、本実施形態に係る半導体装置100の動作を説明した。しかし、本実施形態に係る半導体装置100の中断処理動作は、不揮発性メモリセルアレイ152の領域には依存しない。
【0055】
図9は、本実施形態に係る半導体装置100の中断処理動作が、不揮発性メモリセルアレイ152の領域に依存しないことを示す図である。上述してきたように、図9における別フラッシュ領域とは、コードフラッシュ領域とデータフラッシュ領域との間で書込動作及び消去動作の割り込みが可能であるか否かを示している。図9は、書込サスペンド状態において、別フラッシュ領域における書込動作及び消去動作が可能であることを示している。さらに、図9は、消去サスペンド状態において、別フラッシュ領域における書込動作及び消去動作が可能であることを示している。
【0056】
図9における同一フラッシュ領域とは、コードフラッシュ領域またはデータフラッシュ領域の中において書込動作及び消去動作の割り込みが可能であるか否かを示している。図9は、書込サスペンド状態において、同一フラッシュ領域における書込動作及び消去動作が可能であることを示している。さらに、図9は、消去サスペンド状態において、同一フラッシュ領域における書込動作及び消去動作が可能であることを示している。
【0057】
図10は、同一フラッシュ領域において、情報Aの書換(書込/消去)動作中に、情報Aよりも優先度が高い情報Bの書換(書込/消去)動作の割り込みが発生した場合の有効データ(次に選択されるべきソース線の識別情報)の使用及び保持状況を示す図である。
【0058】
図10の上段から説明すると、最初に半導体装置100は読出モードにある。次に情報Aの書込および/または消去の割り込みが発生すると、半導体装置100は情報Aの書込/消去モードに移行する。その後、半導体装置100は書込/消去電圧の印加状態になると、書込/消去電圧が印加されているソース線の次に選択されるべきソース線の識別情報が有効データ(A)として発生する。ここで、情報Aの書込および/または消去の割り込みが発生すると、半導体装置100は情報Aの書込/消去を中断する。また、情報Aの書込/消去を中断する場合には、有効データ(A)を書換情報保持回路154に退避し、情報Aの書込/消去の復帰動作に備える。
【0059】
図10において、有効データ(A)が書換情報保持回路154に退避されると、半導体装置100は読出モードに一旦移行し、その後、情報Bの書込/消去モードに移行する。そして、情報Bの書込/消去電圧が印加されるソース線に関する有効データ(B)に従って、半導体装置100は情報Bの書込/消去電圧を最後のソース線まで印加し、書込/消去動作を終了させる。書換シーケンサ151には有効データ(B)が残らず、有効データ(A)は書換情報保持回路154に退避されている。
【0060】
図10において、情報Bの書込/消去動作が終了すると、半導体装置100は読出モードに一旦移行し、その後、情報Aの書込/消去モードに復帰する。半導体装置100が情報Aの書込/消去モードに復帰すると、半導体装置100は書換情報保持回路154に退避されている有効データ(A)を読み出して、情報Aの書込/消去モードを再開する。半導体装置100が有効データ(A)を使用して書込/消去電圧の印加を再開すると、半導体装置100は情報Aの書込/消去電圧を最後のソース線まで印加し、書込/消去動作を終了させる。また、書換情報保持回路154に退避されている有効データ(A)が読み出されると、書換情報保持回路154に退避されている有効データは消去される。半導体装置100は書込/消去動作を終了すると、読出モードに移行し、不揮発性メモリに記憶されているファームウェアにしたがって、制御動作を開始または継続する。
【0061】
上述したように、有効データ(B)は、情報Aの書換領域以外のソース線を示すことが可能である。したがって、有効データ(A)と有効データ(B)は、同一のフラッシュメモリの異なる領域のソース線を示す識別情報として利用することが可能になる。すなわち、不揮発性メモリ150内に書換情報保持回路154を配置することによって、書込動作/消去動作が中断されている領域とは異なる他の領域に対する書込動作/消去動作が実行可能となる。ここにおける当該領域および当該他の領域とは、不揮発性メモリセルアレイ152の中の任意の領域を意図している。
【0062】
(実施形態2)
図11は実施形態2に係る半導体装置200の構成の一例を示すブロック図である。実施形態1に係る半導体装置100と異なる点は、書換情報保持回路154の代わりに、書換制御回路155及びOR回路156が不揮発性メモリ150’に追加されたことである。また、書換中断/復帰制御回路153’は、書換中断/復帰制御回路153の機能に加えて、書換制御回路155に書換停止フラグS10を出力する機能をさらに備える。
【0063】
書換中断/復帰制御回路153’は、実施形態1に係る書換中断/復帰制御回路153と同様に、制御部140から書換中断要求信号S3を入力して書換中断処理を実行する。また、書換中断/復帰制御回路153’は、書換電圧の印加を停止すると書換電圧印加停止フラグS5を制御部140に出力する。そして、書換動作を一時的に中断した後に、書換中断/復帰制御回路153’は、書換電圧印加停止を示す情報をアクティブにした書換電圧印加開始/停止信号S6aを、OR回路156を介して、書換電圧印加開始/停止信号S6として書換シーケンサ151に出力する。さらに、書換動作を一時的に中断した後に、書換中断/復帰制御回路153’は、書換停止フラグS10を書換制御回路155に出力する。また、書換中断/復帰制御回路153’は、制御部140から書換復帰要求信号S4が入力されると、書換中断復帰処理を実行する。
【0064】
書換制御回路155は、書換中断/復帰制御回路153’から書換停止フラグS10が入力されると、新たな割り込みに係る情報を不揮発性メモリセルアレイ152に書き込むために書込/消去動作を実行する。書込電圧の印加と停止は、書換電圧印加開始/停止信号S6bを、OR回路156を介して、書換電圧印加開始/停止信号S6として書換シーケンサ151に出力することによって実行される。また、書換シーケンサ151から、ソース線の識別情報が書換制御回路155及び書換中断/復帰制御回路153’に入力される。
【0065】
上述した実施形態2に係る半導体装置200の構成によれば、書換情報保持回路154の代わりに、書換電圧を印加できる制御回路を2セット備えることが可能になる。したがって、サスペンド要求が発生した場合に、書換電圧を印加中の制御回路を一時停止させ、サスペンド要求が発生した不揮発性メモリセルアレイ152の他の領域への書込動作/消去動作には別の制御回路を使用することが可能になる。
【0066】
(実施形態3)
実施形態3に係る半導体装置は、選択中のソース線に書換電圧を印加中に書換中断要求信号S3が入力された場合には、当該ソース線に対する書換電圧の印加を中止し、当該ソース線に対して印加されるべきであった書換電圧の残り時間情報を書換情報保持回路154に記憶する。なお、書換情報保持回路154には、選択中のソース線の識別情報も書換電圧の残り時間情報と対応付けられて記憶される。例えば、選択中のソース線に書換電圧が印加されるべき予め定められた時間から、書換中断要求信号S3の入力によって書換電圧の印加が中断されるまでの時間を差し引いた時間を、書換電圧の残り時間とすることが可能である。したがって、実施形態3に係る半導体装置は、選択中のソース線に対する書換電圧の印加中に書換中断要求信号S3が入力された場合には、選択中のソース線に対する書換電圧の印加を完了せずに、印加途中で書換動作を停止する。そして、書換復帰要求信号S4が入力されると、実施形態3に係る半導体装置は、書換電圧を停止したソース線を選択して書換電圧の残り時間だけ書換電圧を印加して当該ソース線に対する書換動作を完了させる。また、書換電圧の残り時間は、半導体装置が動作しているクロックを最小単位としてカウントするように構成されることも可能である。
【0067】
上述した実施形態3に係る半導体装置によれば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリセルアレイ152領域に書込動作および/または消去動作の競合が発生した場合であっても、書換禁止期間を大幅に短縮することが可能になる。すなわち、書込動作および/または消去動作の中断処理時間(サスペンド応答時間)を大幅に短縮することが可能になる。また、書込動作および/または消去動作の中断処理によって生じる、書込動作および/または消去動作の増加時間を大きく抑制することが可能になる。
【0068】
また、上述した実施形態3に係る半導体装置によれば、一度選択されたソース線に対する消去電圧または書込電圧を分割して、予め定められた所定の期間、印加することが可能になる。したがって、不揮発性メモリセルアレイ152領域は不要なストレスを受けることがなくなるので、不揮発性メモリセルアレイ152領域で保証されている消去電圧または書込電圧の印加回数を無駄に使用することがなくなる。
【0069】
さらに、上述した実施形態3に係る半導体装置100によれば、従来技術で制限されていた高速な中断処理動作の使用回数の制限を撤廃することが可能になる。
【0070】
さらに、上述した実施形態3に係る半導体装置100によれば、書換中断要求信号が短時間で繰り返し発生しても、選択されたソース線の消去動作または書込動作を途中で中断してから、次の書換中断要求信号を受け付け、中断した動作から継続して消去動作または書込動作を完了する。したがって、本実施形態に係る半導体装置100は中断処理を繰り返しても、書換られるべき情報の書換動作を後戻りさせることなく進行させていくことが可能になるように構成されている。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
100、200 半導体装置
140 制御部
150、150’ 不揮発性メモリ
151 書換シーケンサ
152 不揮発性メモリセルアレイ
153、153’ 書換中断/復帰制御回路
154 書換情報保持回路
155 書換制御回路
156 OR回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11