(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156554
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ポリエチレンパウダー
(51)【国際特許分類】
C08F 10/02 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
C08F10/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065981
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】沖津 直哉
(72)【発明者】
【氏名】魚海 圭秀
(72)【発明者】
【氏名】平見 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】藤原 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 誠
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA50
4J100DA51
4J100DA62
4J100FA03
4J100FA10
4J100FA19
4J100JA11
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】フィルムの透明性や、繊維の機械的強度や、電池用セパレーターの機械的強度及び熱収縮率がより優れる、ポリエチレンを提供すること。
【解決手段】所定の<加工条件>で加工し、ホットステージを使用して所定の<測定条件>で昇温および降温した様子を光学顕微鏡で観察したとき、補外結晶化開始温度+2.0℃において観察される球晶について、上記球晶の平均円形度が0.3以上0.7以下であり、上記球晶の円形度の歪度平均が-1以上1以下である、ポリエチレンパウダー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の<加工条件>で加工し、ホットステージを使用して下記の<測定条件>で昇温および降温した様子を光学顕微鏡で観察したとき、補外結晶化開始温度+2.0℃において観察される球晶について、
前記球晶の平均円形度が0.3以上0.7以下であり、
前記球晶の円形度の歪度平均が-1以上1以下である、
ポリエチレンパウダー。
<加工条件>
(1)ポリエチレンパウダーの融点以上の温度で圧縮成形し、厚み1mmに成形する。
(2)成形品断面から厚み15μmの試験片を切り出す。
(3)試験片をスライドガラスとカバーガラスで挟み、再度ポリエチレンパウダーの融点以上の温度で加熱し、観察用プレパラートを得る。
<測定条件>
(1)20℃/分の速度で30℃から180℃まで昇温する。
(2)180℃で5分間保持する。
(3)20℃/分の速度で180℃から140℃まで降温する。
(4)2℃/分の速度で140℃から115℃まで降温する。
【請求項2】
球晶の平均面積が20μm2以上100μm2以下である、
請求項1に記載のポリエチレンパウダー。
【請求項3】
チタン含有量が3ppm未満である、
請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
【請求項4】
マグネシウム含有量が10ppm以上200ppm未満である、
請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
【請求項5】
シリカ含有量が10ppm未満である、
請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
【請求項6】
分子量分布(Mw/Mn)が4未満である、
請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンパウダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエチレンは、溶融延伸、射出成形、押出成形、圧縮成形等の各種成形法によって成形され、フィルム、シート、微多孔膜、繊維、発泡体、パイプ等多種多様な用途に用いられている。近年では、微多孔膜としての需要が急速に伸びており、当該微多孔膜は、リチウムイオン電池や鉛蓄電池等の重要部材であるセパレーターに使用されている。上記フィルムは、高い透明性が必要とされる。また、上記繊維は、高い機械的強度を有することが必要とされる。電池用のセパレーターは、高い機械的強度を有することが必要とされる。
【0003】
これらの要求を満足するオレフィンの重合体または共重合体を製造するための触媒として、チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなる、いわゆるチーグラー・ナッタ型触媒を用いたポリエチレンの製造方法が知られている。一方、エチレンの単独重合またはエチレンと他のα-オレフィンとの共重合に際し、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド等の可溶性のハロゲン含有遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物の1種であるアルミノキサンとからなる触媒を用いることにより高活性で重合することでポリエチレンを得る技術についても見出されてきている(例えば特許文献1および2参照)。
【0004】
また、特許文献3および特許文献4には、シクロペンタジエニル金属化合物およびシクロペンタジエニル金属カチオンを安定化することのできるイオン性化合物とからなる触媒を用いてオレフィンを重合してポリエチレン等を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4-12283号公報
【特許文献2】DE3127133.2号公報
【特許文献3】特表平1-501950号公報
【特許文献4】特表平1-502036号公報
【特許文献5】特許第6788590号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これら従来技術において提案された触媒系を用いたポリエチレンの製造方法においては、ポリエチレンの球晶構造と上記のような要求性能の関連性については考慮されておらず、フィルムの透明性や、繊維の機械的強度や、電池用セパレーターの機械的強度については改良の余地があった。
【0007】
上記問題を解決するため、例えば特許文献5には、上記ポリエチレンの球晶構造と要求性能の関連性について、特定の分子量、分子量分布、密度、球晶直径、および123℃の半結晶化時間において、加工性および表面特性に優れたエチレン/アルファーオレフィン共重合体を提供する方法が開示されている。
【0008】
しかし、これら改良技術において提案された方法では、特定の分子量、分子量分布、密度、球晶直径、および123℃の半結晶化時間によって使用可能なポリエチレンに制約が生じる。上述の通り、より物性の優れた製品の製造が絶えず要求されており、特にフィルムの透明性や、繊維の機械的強度や、電池用セパレーターの機械的強度の必要性がさらに要求されている。
【0009】
従って、本発明の課題は、フィルムの透明性や、繊維の機械的強度や、電池用セパレーターの機械的強度及び熱収縮率がより優れる、ポリエチレンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、上記のような事情に鑑みて、鋭意検討の末に本発明を完成させた。即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記の<加工条件>で加工し、ホットステージを使用して下記の<測定条件>で昇温および降温した様子を光学顕微鏡で観察したとき、補外結晶化開始温度+2.0℃において観察される球晶について、
前記球晶の平均円形度が0.3以上0.7以下であり、
前記球晶の円形度の歪度平均が-1以上1以下である、
ポリエチレンパウダー。
<加工条件>
(1)ポリエチレンパウダーの融点以上の温度で圧縮成形し、厚み1mmに成形する。
(2)成形品断面から厚み15μmの試験片を切り出す。
(3)試験片をスライドガラスとカバーガラスで挟み、再度ポリエチレンパウダーの融点以上の温度で加熱し、観察用プレパラートを得る。
<測定条件>
(1)20℃/分の速度で30℃から180℃まで昇温する。
(2)180℃で5分間保持する。
(3)20℃/分の速度で180℃から140℃まで降温する。
(4)2℃/分の速度で140℃から115℃まで降温する。
[2]
球晶の平均面積が20μm2以上100μm2以下である、
[1]に記載のポリエチレンパウダー。
[3]
チタン含有量が3ppm未満である、
[1]又は[2]に記載のポリエチレンパウダー。
[4]
マグネシウム含有量が10ppm以上200ppm未満である、
[1]~[3]のいずれかに記載のポリエチレンパウダー。
[5]
シリカ含有量が10ppm未満である、
[1]~[4]のいずれかに記載のポリエチレンパウダー。
[6]
分子量分布(Mw/Mn)が4未満である、
[1]~[5]のいずれかに記載のポリエチレンパウダー。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、フィルムの透明性、繊維の機械的強度、電池用セパレーターの機械的強度及び熱収縮率がより優れたポリエチレンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】光学顕微鏡により撮影した球晶の画像解析の例を示す。
【
図2】光学顕微鏡により撮影した球晶の画像解析の例を示す。
【
図3】光学顕微鏡により撮影した球晶の画像解析の例を示す。
【
図4】光学顕微鏡により撮影した球晶の画像解析の例を示す。
【
図5】光学顕微鏡により撮影した球晶の画像解析の例を示す。
【
図6】光学顕微鏡により撮影した球晶の画像解析の例を示す。
【
図7】光学顕微鏡により撮影した球晶の画像解析の例を示す。
【
図8】光学顕微鏡により撮影した球晶の画像解析の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について具体的に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
[ポリエチレンパウダー]
本実施例のポリエチレンパウダーは、下記の<加工条件>で加工し、ホットステージを使用して下記の<測定条件>で昇温および降温した様子を光学顕微鏡で観察したとき、補外結晶化開始温度+2.0℃において観察される球晶について、上記球晶の平均円形度が0.3以上0.7以下であり、上記球晶の円形度の歪度平均が-1以上1以下である、ポリエチレンパウダーである。
<加工条件>
(1)ポリエチレンパウダーの融点以上の温度で圧縮成形し、厚み1mmに成形する。
(2)成形品断面から厚み15μmの試験片を切り出す。
(3)試験片をスライドガラスとカバーガラスで挟み、再度ポリエチレンパウダーの融点以上の温度で加熱し、観察用プレパラートを得る。
<測定条件>
(1)20℃/分の速度で30℃から180℃まで昇温する。
(2)180℃で5分間保持する。
(3)20℃/分の速度で180℃から140℃まで降温する。
(4)2℃/分の速度で140℃から115℃まで降温する。
本実施例のポリエチレンパウダーは、上記球晶の平均円形度及び円形度の歪度平均が上記範囲であることにより、上記ポリエチレンパウダーを成形してなるフィルムの透明性、繊維の機械的強度、及び電池用セパレーターの機械的強度及び熱収縮率がより優れる。以下、本実施形態のポリエチレンパウダーについて詳説する。
【0015】
[ポリエチレンの結晶構造]
本実施形態におけるポリエチレンの結晶構造について説明する。
一般的に、結晶性高分子のポリエチレンは融点以下では結晶と非晶構造を持つことが知られており、一度溶融させたポリエチレンを急冷せずにゆっくりと降温させていくと、球晶の生成と成長の過程を観察できる。溶融させたポリエチレンを、ゆっくりと降温していくと、高分子鎖がまっすぐに伸びた形をとりながら結晶化し、一定の箇所で折り返すことを何度も繰り返し、薄板状の微結晶構造をとる。当該薄板状の微結晶構造をラメラともいう。
【0016】
本実施形態のポリエチレンの結晶の物性について以下詳説する。
【0017】
[円形度平均]
本発明において、ポリエチレンは、上記の<加工条件>で加工し、ホットステージを使用して上記の<測定条件>で昇温および降温した様子を光学顕微鏡で観察したとき、補外結晶化開始温度+2.0℃において観察される球晶の円形平均度(以下、円形度、ともいう。)が、0.3~0.7であり、0.3~0.6であることが好ましく、0.35~0.55であることがより好ましい。上記球晶の円形度が上記範囲にあるとラメラの伸長に伴い歪な球晶が形成されるため、例えば、フィルム、繊維(例えば、高強度繊維)や二次電池用セパレーター(例えば、微多孔膜)を延伸加工する際に、球晶の破壊が均一に進行しやすくなり、その結果、結晶が配向しやすく、伸び切り鎖結晶が生成しやすくなる。また、それにより、結晶化度が高くなり、例えば、繊維(例えば、高強度繊維)や二次電池用セパレーター(例えば、微多孔膜)では高い機械的強度(突刺強度、引張破断強度等)や耐熱性(熱収縮率等)、例えば、繊維(例えば、高強度繊維)では耐クリープ性が得られる。
【0018】
本実施形態において、円形度とは、ポリエチレンの球晶の断面構造において、球晶の面積をS、球晶の周囲長をLとした際に下記式(1)で表されるパラメータである。
円形度 = 4πS/L2 式(1)
球晶が真円に近いほど、円形度は最大値である1に近づく。ポリエチレンの球晶の断面構造の観察方法については、特に限定されないが、例えば、後述する実施例の方法を採用することができる。
【0019】
[円形度の歪度平均]
本発明において、ポリエチレンは、上記の<加工条件>で加工し、ホットステージを使用して上記の<測定条件>で昇温および降温した様子を光学顕微鏡で観察したとき、補外結晶化開始温度+2.0℃において観察される球晶の円形度の歪度平均(以下、円形度の歪度、ともいう。)が、-1~1であり、-0.5~1であることが好ましく、0~0.5であることがより好ましい。上記球晶の歪度平均が上記範囲にあるとラメラの伸長に伴い球晶が歪なものになることが多いため、例えば、フィルム、繊維(例えば、高強度繊維)や二次電池用セパレーター(例えば、微多孔膜)を延伸加工する際に、円形度が低い球晶は破壊される起点が多くなるため、球晶の破壊が均一に進行しやすくなり、その結果、結晶が配向しやすく、伸び切り鎖結晶が生成しやすくなり、また、結晶化度が高くなり、例えば、繊維(例えば、高強度繊維)や二次電池用セパレーター(例えば、微多孔膜)では高い機械的強度(突刺強度、引張破断強度等)や耐熱性(熱収縮率等)、例えば、繊維(例えば、高強度繊維)では耐クリープ性が得られる。
【0020】
本実施形態において、円形度の歪度平均とは、ポリエチレンの球晶の断面構造において観察されるN個の球晶の円形度をそれぞれX1,X2…XN、平均円形度をu、標準偏差をσとした場合に、下記式(2)で表されるパラメータである。
円形度の歪度平均 =Σ(Xi-μ)3/(Nσ3) 式(2)
円形度の歪度平均が0に近づくにつれて、円形度の分布は正規分布に近づく。
【0021】
[ポリエチレンの球晶の面積平均]
本発明において、ポリエチレンの球晶の面積(以下、球晶面積、ともいう。)が20~100μm2の範囲であることが好ましく、30~80μm2の範囲であることがさらに好ましく、40~70μm2の範囲であることがさらに好ましい。球晶が上記範囲にあると球晶サイズが小さいため、例えば、押出成形されたフィルムの透明性が高くなる傾向にある。
【0022】
球晶の歪度及び/又は球晶面積が小さいポリエチレンを得る方法としては、特に限定されないが、例えば、触媒の残渣をポリエチレン粒子内部に均一に分散させる方法があるそれにより、球晶の円形度の平均が前期範囲に制御できるメカニズムは明らかではないが、本発明者らは以下の通り推定している。
【0023】
触媒残渣は無機物であるため、溶融したポリエチレンの内部では硬い核剤及び/又は異物が存在しているように振る舞う。溶融したポリエチレンが結晶化する過程で、残渣は、結晶が生成する核剤及び/又は結晶が成長する過程では異物となるため、速やかに結晶が生成し及び/又は分子鎖が整列し鎖が折りたたまれる際に残渣をよけるように結晶が成長し、歪な形状の球晶となる。また、結晶核が増えることにより、生成する球晶の密度が高まり隣り合う球晶がぶつかりあって球晶成長が早く止まることになるため、球晶面積の小さい球晶を得ることができる。
【0024】
触媒残渣をポリエチレン粒子内部に均一に分散させる方法としては、特に限定されないが、例えば、重合の初期活性を高くする方法がある。一般的にポリエチレンの触媒は重合時にフラグメンテーションを起こしポリエチレン粒子内部に分散する事が知られている。従って、重合初期に急重合することにより、通常よりも触媒残渣が微細となり、均一に分散したポリエチレンを得ることができる。
【0025】
重合初期活性を高くする方法として、特に限定されないが、例えば、活性点の化合物はZN系触媒に代表される四塩化チタンより、シングルサイト系触媒に代表されるメタロセン化合物を用いる方が初期活性は高くなる。
【0026】
その他の重合初期活性を高くする方法として、特に限定されないが、例えば、活性点の担持量を増やす方法があり、担持量が多ければ、隣り合う活性点間距離が短くなり、互いの重合熱で活性点付近の温度が高くなり、活性化が促進されより多くのポリエチレン鎖を成長させることができる。担体1gあたりの活性点担持量が60μmol以上であることが好ましく、100μmol以上であることがさらに好ましい。
【0027】
その他の重合初期活性を高くする方法として、特に限定されないが、例えば、触媒を多くフィードする方法及び/又は主触媒を助触媒と混合フィードする方法があり、フィード濃度が高い及び/又は主触媒と助触媒を混合フィードするとフィード直後のみ、局所的に重合発熱量が高くなるため、初期のみ急重合させることができる。
【0028】
その他の重合初期活性を高くする方法として、特に限定されないが、例えば、リアクターの重合温度よりもフィードする触媒の温度を高くする方法があり、フィード直後のみ重合活性が高くなるため、初期のみ急重合させることができる。重合温度とフィードする触媒の温度差は5℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがさらに好ましい。
【0029】
その他の重合初期活性を高くする方法として、特に限定されないが、例えば、触媒を乾固させる方法がある。理由は定かではないが、一度触媒を乾固させ、スラリー状に戻した触媒の場合は重合活性が高くなる。
【0030】
触媒残渣をポリエチレン粒子内部に均一に分散させる方法としては、特に限定されないが、例えば、重合により壊れやすい担体を用いることができる。一般的に担体材料としてのシリカは硬く壊れにくく、塩化マグネシウムや珪藻土化合物を担体として用いることが好ましい。
【0031】
触媒残渣をポリエチレン粒子内部に均一に分散させる方法としては触媒の表面に細孔を形成させる方法がある。触媒表面の細孔内部にある活性点からポリエチレンが重合すると、孔の内部がポリエチレンに満たされた後に穴を押し広げようとする応力がかかり、触媒がフラグメンテーションを起こす。
【0032】
触媒の表面に細孔を形成させる方法として、特に限定されないが、例えば、塩化マグネシウム担体を短鎖アルコールで膨潤させ、その後アルキルアルミニウムを接触させる事でこれらを系外に引き抜くことで、担体に細孔が形成され、担体比表面積が増大する。
【0033】
本実施形態のポリエチレンパウダーは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が4未満であることが好ましい。分子量分布を測定する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いることができる。分子量分布が上記範囲であることにより、成形体の機械的強度がより向上する傾向にある。
【0034】
分子量分布を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合触媒としてシングルサイト系触媒に代表されるメタロセン化合物を用いること等が挙げられる。
【0035】
[極限粘度]
本実施形態のポリエチレンパウダー(以下、単に「パウダー」ともいう。)は、極限粘度IVが1.0dL/g以上33.0dL/g以下であり、好ましくは1.5dL/g以上31.0dL/g以下であり、より好ましくは2.4dL/g以上29.0dL/g以下である。
【0036】
本実施形態のポリエチレンパウダーは、極限粘度IVが前記下限値以上であることにより、機械的強度がより向上し、また、極限粘度IVが前記上限値以下であることにより、成形性がより向上する。
【0037】
また、本実施形態のポリエチレンパウダーは、例えば、二次電池用セパレーターの成形体に用いるならば、極限粘度IVが、好ましくは1.0dL/g以上13.0dL/g以下であり、より好ましくは1.5dL/g以上11.5dL/g以下であり、更に好ましくは2.4dL/g以上9.5dL/g以下である。極限粘度IVが上記範囲内のポリエチレンパウダーを成形して得られる二次電池用セパレーターは、膜強度及び熱収縮性に優れる傾向にある。
【0038】
また、本実施形態のポリエチレンパウダーは、例えば、繊維の成形体に用いるならば、極限粘度IVが、好ましくは13.5dL/g以上33.0dL/g以下であり、より好ましくは15.0dL/g以上31.0dL/g以下であり、更に好ましくは16.5dL/g以上29.0dL/g以下である。極限粘度IVが上記範囲内のポリエチレンパウダーを成形(例えば、一般的又は低温で事前に膨潤した場合の成形)して得られる繊維は、糸強度に優れる傾向にある。
【0039】
極限粘度IVを上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレンを単独重合する際、又は、エチレンと共重合可能なエチレン以外のオレフィンとを共重合する際の反応器の重合温度を変化させることが挙げられる。極限粘度IVは、重合温度を高温にするほど低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど高くなる傾向にある。また、極限粘度IVを上記範囲にする別の方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレンを単独重合する際、又は、エチレンと共重合可能なオレフィンとを共重合する際に使用する助触媒としての有機金属化合物種を変更することが挙げられる。更に、極限粘度IVを上記範囲にする別の方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレンを単独重合する際、又は、エチレンと共重合可能なオレフィンとを共重合する際に連鎖移動剤を添加することが挙げられる。連鎖移動剤を添加することにより、同一重合温度でも生成するポリエチレンの極限粘度IVが低くなる傾向にある。
なお、本実施形態において、極限粘度IVは、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0040】
本実施形態のポリエチレンパウダーは、エチレン単独重合体、及び/又は、エチレンと、エチレンと共重合可能なエチレン以外のオレフィン(以下、「コモノマー」ともいう)との共重合体(以下、「エチレン重合体」ともいう)からなるパウダーであることが好ましい。
【0041】
エチレンと共重合可能なオレフィンとしては、特に限定されないが、具体的には、例えば、炭素数3以上15以下のα-オレフィン、炭素数3以上15以下の環状オレフィン、式CH2=CHR1(ここで、R1は炭素数6~12のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素数3以上15以下の直鎖状、分岐状又は環状のジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種のコモノマーが挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3以上15以下のα-オレフィンである。
【0042】
上記α-オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン等が挙げられる。
【0043】
[コモノマー含有量]
本実施形態のポリエチレンパウダーは、13C-NMRで測定されたコモノマー含有量が好ましくは1.0mol%以下であり、より好ましくは0.1mol%以下であり、更に好ましくは0mol%である。本実施形態のポリエチレンパウダーは、コモノマー含有量が前記範囲であると、分解を抑制できる傾向にあり、また、該ポリエチレンパウダーを成形して得られる成形体の強度が向上する傾向にある。
【0044】
[球晶の観察方法]
本発明のポリエチレンの球晶構造を観察する方法について特に制限はないが、ポリエチレンの融点以上の温度まで昇温可能な観察ステージを備える、光学顕微鏡を用いることが好ましい。観察サンプルとなるポリエチレンパウダーは、あらかじめポリエチレンの融点以上に加熱した圧縮成形機で厚み1mm程度のシート状に成形し、さらに成形時の接地面履歴を受けていない断面をカミソリ刃等で切り出した部分を観察することが好ましい。さらに、カミソリ刃等で切り出した部分は、スライドガラスとカバーガラスで挟み、再度ポリエチレンの融点以上の温度まで加熱することでポリエチレンとガラス面を密着させ、ガラスプレパラートにしておくことが好ましい。観察サンプルを観察する際の光学顕微鏡の観察倍率は、撮影した画像の解析が容易となるよう任意で選択することができる。サンプルの観察位置は、撮影した画像の解析が容易となるよう任意で選択することができるが、視野内に気泡や表面凹凸のない部分を選択することが好ましい。
【0045】
[チタン含有量/マグネシウム含有量/シリカ含有量]
本実施形態のポリエチレンパウダーは、ポリエチレン重量比で、チタン(Ti)含有量は3ppm未満であることが好ましい。また、マグネシウム(Mg)含有量は10ppm以上200ppm未満であることが好ましい。また、シリカ(Si)含有量は10ppm未満であることが好ましい。Ti及びMg及びSiの含有量をこのような範囲に調整することで、例えば、触媒の残渣をポリエチレン粒子内部に均一に分散させることができる。なお、一般的には、ポリエチレンパウダー中に残存する触媒残渣由来の金属量が多いことで、成形体の厚みムラの原因になる傾向が強い。なお、本実施形態において、Ti及びMg及びSiの含有量の測定は後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
【0046】
上記のチタン含有量、マグネシウム含有量、及びシリカ含有量を上記の範囲に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンの重合に用いる触媒の組成を変更することにより調製する方法が挙げられる。
【0047】
[触媒]
本発明のポリエチレンパウダーは、以下の触媒を用いてエチレンモノマー等を重合することにより作製することができる。本発明において、ポリエチレンパウダーを重合する触媒は、特に限定されないが、例えば、[A]無機固体粒子と、[B]遷移金属化合物成分と、[C]活性化剤と、[D]液体成分から構成されている。
【0048】
本発明において、[A]無機固体粒子の例としては、多孔質高分子材料(但し、マトリックスは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ビニルエステル共重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレン-ビニルエステル共重合体の部分あるいは完全鹸化物等のポリオレフィンやその変性物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂等を含む)、周期表第2~4、13又は14族に属する元素の無機固体酸化物(たとえば、シリカ、アルミナ、マグネシア、塩化マグネシウム、ジルコニア、チタニア、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、五酸化バナジウム、酸化クロム、酸化トリウム、又はこれらの混合物若しくはこれらの複合酸化物)等が挙げられる。シリカを含有する複合酸化物の例としては、シリカ-マグネシア、シリカ-アルミナ等の、シリカと周期表第2族又は第13族に属する元素から選ばれる元素の酸化物との複合酸化物が挙げられる。本発明においては、シリカ、アルミナ、及びシリカと周期表第2族又は第13族に属する元素から選ばれる元素の酸化物との複合酸化物から選ばれることが好ましい。
【0049】
[A]無機固体粒子として用いられるシリカ生成物の形状に関しては特に制限はなく、シリカは、顆粒状、球状、凝集状、ヒューム状など、いかなる形状であってもよい。市販のシリカ生成物の好ましい例としては、SD3216.30、SP-9-10046、デビソンサイロイドTM(SyloidTM)245、デビソン948又はデビソン952[以上全て、グレースデビソン社(W.R.デビソン社(米国)の支社)製]、アエロジル812[デグザAG社(ドイツ)製造]、ES70X[クロスフィールド社(米国)製]、P-6、P-10、Q-6[富士シリシア社(日本国)製]等が挙げられる。
【0050】
本発明において用いられる[A]無機固体粒子の好ましい有機マグネシウム化合物の例として、下記の式(4)で表される化合物が挙げられる。
MgRnX2-n 式(4)
(式4中、Rは、各々独立して、炭素数1~12の直鎖状,分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を表し、Xは、各々独立して、ハライド、ヒドリド又は炭素数1~10のアルコキシド基を表し、nは1又は2である)。
上記式(4)で表される化合物は、単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
【0051】
式(4)中の基Rの例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、、フェニル基、トリル基等が挙げられる。式(4)中の基Xの例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、水素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0052】
次に本発明において用いられる[B]遷移金属化合物成分について説明する。本発明において用いられる[B]遷移金属化合物成分の例としては、まず下記の式(5)で表される化合物を挙げることができる。
LjWkMXpX’q 式(5)
(式5中、Lは、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1~8個の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1~12のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1~12のアミノヒドロカルビル基、炭素数1~12のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~12のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1~12のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1~12のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる、20個までの非水素原子を有する置換基であり、Mは、形式酸化数が+2、+3又は+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子Lにη5結合している遷移金属を表し、Wは、50個までの非水素原子を有する2価の置換基であって、LとMとに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL及びMと共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、Xは、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、及びLとMとに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれる、60個までの非水素原子を有するアニオン性σ結合型配位子を表し、X’は、各々独立して、40個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基配位性化合物を表し、jは1又は2であり、但し、jが2である時、場合によっては2つの配位子Lが、20個までの非水素原子を有する2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1~20のヒドロカルバジイル基、炭素数1~12のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1~12のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1~12のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基、及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、kは0又は1であり、pは0、1又は2であり、但し、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子、又はLとMとに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より1以上小さい整数であり、またXがMにのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、pはMの形式酸化数より(j+1)以上小さい整数であり、qは0、1又は2である)。
【0053】
上記式(5)の化合物中の配位子Xの例としては、ヒドリド、ハライド、炭素数1~60の炭化水素基、炭素数1~60のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~60のヒドロカルビルアミド基、炭素数1~60のヒドロカルビルフォスフィド基、炭素数1~60のヒドロカルビルスルフィド、シリル基、これらの複合基等が挙げられる。
【0054】
上記式(5)の化合物中の中性ルイス塩基配位性化合物X’の例としては、フォスフィン、エーテル、アミン、炭素数2~40のオレフィン、炭素数1~40のジエン、これらの化合物から誘導される2価の基等が挙げられる。
【0055】
本発明において用いられる[B]遷移金属化合物成分の例としては、次に下記の式(6)で表される化合物を挙げることができる。
式(6)
【化1】
(式中、R
1及びR
4は、それぞれ独立に炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は全炭素数7~20の環上に炭化水素基を有する芳香族基、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、R
2とR
3はたがいに結合して環を形成していてもよく、X及びYは、それぞれ独立にハロゲン原子又は炭素数1~20の炭化水素基、Mは、ニッケル又はパラジウムを示す。)で表される錯体化合物を挙げることができる。
【0056】
上記一般式(6)において、R1及びR4のうちの炭素数1~20の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数3~20のシクロアルキル基など、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。なお、シクロアルキル基の環上には低級アルキル基などの適当な置換差が導入されていてもよい。
【0057】
また、全炭素数7~20の環上に炭化水素基を有する芳香族基としては、例えばフェニル基やナフチル基などの芳香族環上に、炭素数1~10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が1個以上導入された基などが挙げられる。このR1及びR4としては、環上に炭化水素基を有する芳香族基が好ましく、特に2,6-ジイソプロピルフェニル基が好適である。R1及びR4は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
また、R2及びR3のうちの炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基としては、前記R1及びR4のうちの炭素数1~20の脂肪族炭化水素基の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。また炭素数6~20のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが挙げられ、炭素数7~20のアラルキル基としては、例えばベンジル基やフェネチル基などが挙げられる。
【0059】
このR2及びR3は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、たがいに結合して環を形成していてもよい。一方、X及びYは、ハロゲン原子としては、塩素、臭素又はヨウ素原子などが挙げられ、また、炭素数1~20の炭化水素基としては、上記R2及びR3における炭素数1~20の炭化水素基について、説明したとおりである。このX及びYとしては、特に塩素原子又はメチル基が好ましい。また、XとYは、たがいに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0060】
本発明において用いられる[B]遷移金属化合物成分の具体例としては、以下に示すような化合物が挙げられる。
ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムヒドリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムヒドリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムヒドリド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムヒドリド、ビス(シクロペンタジエニル)ネオペンチルジルコニウムヒドリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジヒドリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジエチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジヒドリド、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(5-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(6-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(7-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(5-メトキシ-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(2,3-ジメチル-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4,7-ジメチル-1-インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス-(4,7-ジメトキシ-1-インデニル)ジルコニウムジメチル、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジヒドリド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジヒドリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジヒドリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、シリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジヒドリド、シリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジヒドリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、[(N-t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N-t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N-メチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N-フェニルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N-ベンジルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N-t-ブチルアミド)(η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N-t-ブチルアミド)(η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N-メチルアミド)(η5-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N-メチルアミド)(η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N-t-ブチルアミド)(η5-インデニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N-ベンジルアミド)(η5-インデニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル等。
【0061】
本発明において用いられる[B]遷移金属化合物成分の具体例としては、さらに、[B]遷移金属化合物成分の具体例として上に挙げた各ジルコニウム及びチタン化合物の名称の「ジメチル」の部分(これは、各化合物の名称末尾の部分、すなわち「ジルコニウム」又は「チタニウム」という部分の直後に現れているものであり、前記式(7)中のX″の部分に対応する名称である)を、以下に掲げる任意のものに替えてできる名称を持つ化合物も挙げられる。「ジベンジル」、「2-(N,N-ジメチルアミノ)ベンジル」、「2-ブテン-1,4-ジイル」、「s-トランス-η4-1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン」、「s-トランス-η4-3-メチル-1,3-ペンタジエン」、「s-トランス-η4-1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン」、「s-トランス-η4-2,4-ヘキサジエン」、「s-トランス-η4-1,3-ペンタジエン」、「s-トランス-η4-1,4-ジトリル-1,3-ブタジエン」、「s-トランス-η4-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエン」、「s-シス-η4-1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン」、「s-シス-η4-3-メチル-1,3-ペンタジエン」、「s-シス-η4-1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン」、「s-シス-η4-2,4-ヘキサジエン」、「s-シス-η4-1,3-ペンタジエン」、「s-シス-η4-1,4-ジトリル-1,3-ブタジエン」、「s-シス-η4-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエン」等。
【0062】
本発明において用いられる[B]遷移金属化合物成分は、一般に公知の方法で合成できる。本発明において[B]遷移金属化合物成分として用いられる遷移金属化合物の好ましい合成法の例としては、米国特許第5,491,246号明細書に開示された方法を挙げることができる。本発明においてこれら[B]遷移金属化合物成分は単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
【0063】
本発明において用いられる[C]活性化剤について説明する。[C]活性化剤として例えば、以下の一般式(7)で定義される化合物が挙げられる。
[L-H]d+[MmQp]d- 式(7)
但し、式中[L-H]d+はプロトン付与性のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また、式中[MmQp]d-は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至第15族から選ばれる金属又はメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。また、mは1乃至7の整数であり、pは2乃至14の整数であり、dは1乃至7の整数であり、p-m=dである。
【0064】
本発明において、[C]活性化剤の好ましい例としては以下の一般式(C-1)で表される。
[MmQn(Gq(T-H)r)z]d- (C-1)
但し、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属又はメタロイドである。Qは、一般式(8)に定義の通りであり、Gは硼素及びTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基であり、TはO、S、NR、又はPRであり、ここでRはヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、又は水素である。また、mは1~7の整数であり、nは0~7の整数であり、qは0又は1の整数であり、rは0~3の整数であり、zは1~8の整数であり、dは1~7の整数であり、n+z-m=dである。
【0065】
本発明の成分(C-1)の更に好ましい例は、以下の一般式(C-2)で表される。
[L-H]+[BQ3Q’]- (C-2)
但し、式中[L-H]+はプロトン付与性のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また、式中[BQ3Q’]-は相溶性の非配位性アニオンであり、Qはペンタフルオロフェニル基であり、残る1つのQ’は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6乃至20の置換アリール基である。
【0066】
本発明の相溶性の非配位性アニオンの具体例としては、例えば、テトラキスフェニルボレート、トリ(p-トリル)(フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(2,4-ジメチルフェニル)(ヒドフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ナフチル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル-ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4-ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p-トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4-ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジ-トリフルオロメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2-ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシ-シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-(4’-ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)ボレート等が挙げられ、最も好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ボレートが挙げられる。
【0067】
[C]活性化剤は、有機アルミニウム化合物との反応物でもよい。有機アルミニウム化合物は例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等、或いはこれらのアルキルアルミニウムとメチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール等のアルコール類との反応生成物、例えばジメチルメトキシアルミニウム、ジエチルエトキシアルミニウム、ジブチルブトキシアルミニウム等が挙げられる。また、上記の有機アルミニウム化合物との反応物は単一で使用しても良く、混合して使用してもよい。
【0068】
次に本発明において用いられる[D]液体成分について説明する。本発明において用いられる[D]液体成分として例えば、以下の一般式(8)で定義される化合物が挙げられる。
[-Al(Me)-O-]n-[-Al(R)-O-]m 式(8)
式8中、Rは炭素数1~12の炭化水基である。上記式において、Rは具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが例示できる。これらの中でメチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。上記式に於いて、例えば、1種類のアルキルアルミニウム単位から構成される有機アルミニウムオキシ化合物の例としては、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、n-プロピルアルモキサン、イソプロピルアルモキサン、n-ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、ペンチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、オクチルアルモキサン、デシルアルモキサン、シクロヘキシルアルモキサン、シクロオクチルアルモキサン等がある。これらの中でメチルアルモキサン、エチルアルモキサンが好ましく、特にメチルアルモキサンが好ましい。このように本発明の有機アルミニウムオキシ化合物は、上記式で表されるアルキルオキシアルミニウム単位で構成されるものであるが、必ずしも1種類の構成単位よりなる化合物に限定されるものではなく、複数種類の構成単位よりなっていても良い。例えば、メチルエチルアルモキサン、メチルプロピルアルモキサン、メチルブチルアルモキサン等であり、各種構成単位の比は0~100%の範囲で任意に取り得る。また、1種類の構成単位よりなる複数種類の有機アルミニウムオキシ化合物の混合物であってもよい。例えば、メチルアルモキサンとエチルアルモキサンの混合物、メチルアルモキサンとn-プロピルアルモキサンの混合物、メチルアルモキサンとイソブチルアルモキサンの混合物等である。またnとmは任意の数字を取ることができるが、製造の容易さの観点からmとnの比m/nは0.1以上10以下が好ましく、0.3以上5以下がさらに好ましい。
【0069】
また、本発明の有機アルミニウムオキシ化合物は、その製造方法から来る未反応化学物質を含んでいても構わない。すなわち、一般に有機アルミニウムオキシ化合物は、トリアルキルアルミニウムとH2Oの反応によって得られるが、これら原料の一部が未反応化学物質として残存していても構わない。例えば、メチルアルキサンの合成の場合は原料としてトリメチルアルミニウム及びH2Oを使用するが、これら原料の片方あるいは両方が、未反応化学物質としてメチルアルモキサン中に含まれている場合等である。上記例示の有機アルミニウムオキシ化合物の製造方法に於いては、通常トリアルキルアルミニウムをH2Oよりも多く使用する為、残存化学物質として、トリアルキルアルミニウムが有機アルミニウムオキシ化合物に含まれることが多い。
【0070】
次に、[A]無機固体粒子と、[B]遷移金属化合物成分と、[C]活性化剤と、[D]液体成分からポリエチレン重合触媒を製造する方法について説明する。
【0071】
本発明においては、[A]無機固体粒子及び[D]液体成分の存在下に[B]遷移金属化合物成分と、[C]活性化剤を同時に添加することによりポリエチレン重合触媒を製造する。
より詳しくは、十分に窒素置換された反応器に不活性反応溶媒を添加し、ここに[A]無機固体粒子と[D]液体成分を添加してスラリー化し、ここに[B]遷移金属化合物成分と[C]活性化剤とをそれぞれ別々に、同時に反応器に添加することにより、オレフィン重合用固体触媒を製造する。このことは、[A]無機固体粒子の存在下において、等量の[B]遷移金属化合物成分と[C]活性化剤とが反応し担持されることを意味している。なお、本発明における不活性反応溶媒とはヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられるが、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の直鎖状または分岐状の炭化水素化合物が好ましく用いられる。
【0072】
本発明においては、各成分の使用量、使用量の比も特に制限されないが、[B]遷移金属化合物成分が活性化されるのに十分な量の[C]活性化剤を用いることが好ましい。
本発明において、[B]遷移金属化合物成分は[A]無機固体粒子1gに対して好ましくは5×10-6~10-2モル、より好ましくは10-5~10-3モルの量で用いられる。
【0073】
本発明において、不純物のスカベンジャーとして液体成分[E]を用いてもよい。液体成分[E]は下記の式(6)で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物[E-1]とアミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物[E-2]との反応によって合成される、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物である。
【0074】
(M2)a(Mg)b(R3)c(R4)d 式(9)
〔式9中、M2は周期律表第1族、第2族、第12族、および第13族に属する金属原子であり、R3およびR4は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、a、b、c、dは次の関係を満たす実数である。0≦a、0<b、0≦c、0≦d、c+d>0、e×a+2b=c+d(ただし、eはM2の原子価)〕
【0075】
本発明においては、有機マグネシウム化合物[E-1]と化合物[E-2]との反応には特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の不活性反応媒体中、室温~150℃の間で反応させることによって行われることが好ましい。この反応の順序については特に制限はなく、有機マグネシウム化合物[E-1]中に化合物[E-2]を添加する方法、化合物[E-2]に有機マグネシウム化合物[E-1]を添加する方法、または両者を同時に添加する方法のいずれの方法も好ましい。有機マグネシウム化合物[E-1]と化合物[E-2]との反応比率については特に制限はないが、反応により合成される液体成分[E]に含まれる全金属原子に対する化合物[E-2]のモル比は0.01~2であることが好ましく、0.1~1であることがさらに好ましい。
【0076】
本発明においては、液体成分[E]は単独で使用してもよいし、二種類以上混合して使用してもよい。この液体成分[E]は、高濃度であっても重合活性を低下させることが少なく、したがって広い濃度範囲で高い重合活性を発現させることができる。このため液体成分[E]を含むポリエチレン重合触媒は、重合活性の制御が容易である。
重合に使用する際の液体成分[E]の濃度については特に制限はないが、液体成分[E]に含まれる全金属原子のモル濃度が0.001mmol/リットル以上10mmol/リットル以下であることが好ましく、0.01mmol/リットル以上5mmol/リットル以下であることがさらに好ましい。0.001mmol/リットル以上の場合は、不純物のスカベンジャーとしての作用が十分ではない恐れがあるという問題を回避するうえで好ましく、10mmol/リットル以下の場合は、重合活性が低下する恐れがあるという問題を回避するうえで好ましい。
【0077】
次に、有機マグネシウム化合物[E-1]について説明する。
有機マグネシウム化合物[E-1]は上記の(9)式で表される。なお、上記の式(9)中では炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、(R3)2Mgおよびこれらと他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。記号a、b、c、dの関係式e×a+2b=c+dは、金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0078】
上記式中R3ないしR4で表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基であることが好ましく、アルキル基であることがさらに好ましく、一級のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0079】
a>0の場合、金属原子M2としては、周期律表第1族、第2族、第12族、および第13族からなる群に属する金属元素が使用でき、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、特にアルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が好ましい。
【0080】
金属原子M2に対するマグネシウムのモル比b/aには特に制限はないが、0.1以上50以下の範囲が好ましく、0.5以上10以下の範囲がさらに好ましい。また、a=0の場合には、有機マグネシウム化合物[E-1]が炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物であることが好ましく、上記の式(9)のR3、R4が次に示す三つの群(9-1)、(9-2)、(9-3)のいずれか一つであることがさらに好ましい。
【0081】
(9-1):R3、R4の少なくとも一方が炭素原子数4~6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR3、R4がともに炭素原子数4~6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(9-2):R3、R4が炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR3が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R4が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(9-3):R3、R4の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR3、R4が共に炭素原子数6以上のアルキル基であること。
【0082】
以下これらの基を具体的に示す。(9-1)において炭素原子数4~6である二級または三級のアルキル基としては、1-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-エチルプロピル基、等が挙げられ、1-メチルプロピル基が特に好ましい。(9-2)において、炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル基、プロピル基が挙げられ、エチル基は特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、ブチル基、ヘキシル基は特に好ましい。(9-3)において、炭素原子数6以上のアルキル基としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基等が挙げられ、アルキル基である方が好ましく、ヘキシル基は特に好ましい。
【0083】
一般にアルキル基の炭素原子数を増やすと炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘性が高くなる傾向であり、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は炭化水素溶液として用いられるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のコンプレックス化剤がわずかに含有されあるいは残存していても差し支えなく用いることができる。
【0084】
次に化合物[E-2]について説明する。
この化合物はアミン、アルコール、シロキサン化合物からなる群に属する化合物である。
本発明においては、アミン化合物には特に制限はないが、脂肪族、脂環式ないし芳香族アミンが好ましい。具体的には、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N、N-ジメチルアニリン、トルイジン、等が挙げられる。
【0085】
本発明においては、アルコール化合物には特に制限はないが、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1,1-ジメチルエタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-メチルペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-エチル-4-メチル-1-ペンタノール、2-プロピル-1-ヘプタノール、2-エチル-5-メチル-1-オクタノール、1-オクタノール、1-デカノール、シクロヘキサノール、フェノールが好ましく、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノールおよび2-エチル-1-ヘキサノールがさらに好ましい。
【0086】
本発明においては、シロキサン化合物には特に制限はないが、下記の式(10)で表される構成単位を有するシロキサン化合物が好ましい。
【化2】
(上記の式(10)中、R
11およびR
12は、水素または炭素原子数1~30の炭化水素基、および炭素数1~40の置換された炭化水素基なる群より選ばれる基である。)
【0087】
本発明においては、この炭化水素基には特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基、ビニル基が好ましい。また、置換された炭化水素基には特に制限はないが、トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0088】
本発明においては、当該シロキサン化合物は1種類または2種類以上の構成単位から成る2量体以上の鎖状または環状の化合物の形で用いることができる。
【0089】
本発明においては、このシロキサン化合物として、対称ジヒドロテトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ペンタメチルトリヒドロトリシロキサン、環状メチルヒドロテトラシロキサン、環状メチルヒドロペンタシロキサン、環状ジメチルテトラシロキサン、環状メチルトリフルオロプロピルテトラシロキサン、環状メチルフェニルテトラシロキサン、環状ジフェニルテトラシロキサン、(末端メチル封塞)メチルヒドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、(末端メチル封塞)フェニルヒドロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが好ましい。
【0090】
なお、本発明では、オレフィン重合用触媒は、上記のような各成分以外にもオレフィン重合に有用な他の成分を含むことができる。
【0091】
次に、本発明におけるポリエチレンパウダーの製造方法について説明する。
【0092】
本発明のポリエチレンパウダーは、本発明のオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンを単独重合させるか、あるいはエチレンと、好ましくは炭素数3以上20以下のα-オレフィン、炭素数3以上20以下の環状オレフィン、一般式CH2=CHR13(但し、R13は炭素数6以上20以下のアリール基である。)で表される化合物、および炭素数4以上20以下の直鎖状、分岐状または環状のジエンからなる群に含まれる少なくとも1種のオレフィンと共重合させることができる。
【0093】
本発明で、炭素数3以上20以下のα-オレフィンとは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンであり、炭素数3以上20以下の環状オレフィンとは、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、および2-メチル-1.4,5.8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンであり、前記の一般式CH2=CHR13(式中R13は炭素数6以上20以下のアリール基である。)で表わされる化合物とは、例えば、スチレン、ビニルシクロヘキサン等であり、炭素数4以上20以下の直鎖状、分岐状または環状のジエンとは、例えば、1,3-ブタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、およびシクロヘキサジエンである。
【0094】
エチレンと上記オレフィン(コモノマー)との共重合により、エチレン重合体の密度や物性を制御可能である。本発明によるオレフィンの重合は、懸濁重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。懸濁重合法においては、懸濁重合の媒体として不活性炭化水素溶媒を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。この不活性炭化水素溶媒としては特に制限はないが、プロパン、ブタン、2-メチルプロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が好ましく、プロパン、ブタン、2-メチルプロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンが特に好ましい。また、二種類以上の不活性炭化水素溶媒を混合して使用することもできる。
【0095】
本発明のオレフィン重合用触媒を重合器に添加する方法については特に制限はないが、上記の不活性炭化水素溶媒のスラリーとしてとして重合器に添加する方法が好ましく、ブタン、2-メチルプロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンがさらに好ましい。
【0096】
本発明においては、オレフィンの重合における触媒の添加量には特に制限はないが、1時間当たりに得られる重合体の重量に対する触媒の重量が0.001wt%以上1wt%以下となるように重合器内の触媒濃度を調整することが好ましい。重合温度には特に制限はないが、0℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、かつ150℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下の範囲である。重合圧力には特に制限はないが、0.1MPa以上10MPa以下が好ましく、0.2MPa以上5MPaがさらに好ましく、0.5MPa以上3MPa以下がさらに好ましい。この重合反応の形式については特に制限はなく、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法も好ましく行うことができる。また、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0097】
本発明において得られるオレフィン重合体の分子量は、DE3127133.2号公報等に記載されているように、重合器内の水素の濃度、あるいは重合温度を変化させることによって調節することもできる。
【0098】
[成形体]
次に本発明において成形体を得る方法を説明する。本実施形態のポリエチレンパウダーは、種々の方法により成形することができる。また、本実施形態の成形体は、上述のポリエチレンパウダーを成形して得られる。本実施形態の成形体は、特に限定されないが、例えば、公知の射出成形や押出成形や延伸成形によって得ることができ、種々の用途に用いることができる。本実施形態の成形体の具体例としては、限定されるものではないが、例えば、二次電池用セパレーター(例えば、微多孔膜)、繊維(例えば、高強度繊維)、フィルムが挙げられ、中でも、リチイムイオン微多孔膜、高強度繊維、フィルムとして好適である。
【0099】
[二次電池用セパレーター]
二次電池用セパレーター(例えば、微多孔膜)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、溶剤を用いた湿式法において、Tダイを備え付けた押出し機にて、押出し、延伸、抽出、乾燥を経る加工方法が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、以下の製造方法が挙げられる。
【0100】
高分子量ポリエチレンパウダーと流動パラフィンと、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤とを配合し、ポリエチレンパウダーの融点(Tm2)より30℃低い温度で撹拌することでスラリー状液体を調製する。得られたスラリー状液体を混練機に投入し、一定温度で混練した後、熱プレスし、次に、冷却プレスすることで、ゲルシートを成形する。なお、金枠を使用することで、ゲルシートの厚みを調整する。
【0101】
このゲル状シートを、同時二軸延伸機を用いて延伸した後、延伸フィルムを切り出し、金枠に固定する。その後、ヘキサンに浸漬し、流動パラフィンを抽出除去後、乾燥する。更に熱固定することにより、微多孔膜を得ることができる。
【0102】
[繊維]
繊維(例えば、高強度繊維)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィンと上述のポリエチレンパウダーとを混練紡糸後、加熱延伸することで得る方法が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、以下の製造方法が挙げられる。ポリエチレンパウダーと流動パラフィンと、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤とを配合し、ポリエチレンパウダーの融点(Tm2)より30℃低い温度で撹拌することでスラリー状液体を調製する。
【0103】
次に、スラリー状液体を混練機に投入し、一定温度で混練作業を行う。その後、押出機先端に装着した紡糸口金に通して紡糸する。次に、吐出した流動パラフィンを含む糸を、紡糸口金から離れた箇所で巻き取った。ついで、巻き取った糸から流動パラフィンを除去するために、ヘキサン中に該糸を浸漬させ抽出作業を行った後、乾燥させる。得られた糸を恒温槽内で1次延伸し、次いで恒温槽内で糸が切れる直前まで2次延伸することで、高強度繊維(延伸糸)を得ることができる。
【0104】
次に、実施例等に基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
【実施例0105】
本発明において、実施例および比較例で使用したエチレン、ヘキサンはMS-3A(昭和ユニオン製)を用いて脱水し、ヘキサンはさらに真空ポンプを用いた減圧脱気を行うことにより脱酸素した後に使用した。
【0106】
[ポリエチレンの作製方法および物性評価方法]
実施例及び比較例に示す方法でポリエチレンを作製した。得られた重合物の物性は、下記の方法で評価した。
【0107】
[極限粘度の測定]
ポリエチレンパウダーの極限粘度IVは、ISO1628-3(2010)に準拠し、以下のとおり測定した。
ポリエチレンパウダーを4.0~4.5mgの範囲内で秤量し、真空ポンプで脱気し窒素で置換した20mLのデカヒドロナフタレン(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールを1g/L加えたもの、以下、デカリンと表記)を溶媒とし、内部の空気を真空ポンプで脱気し窒素で置換した溶解管中で、150℃で90分間攪拌し溶解させて溶液を得た。粘度管としては、キャノン-フェンスケ型粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号-100)を用いた。
[分子量分布の測定]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布とした。GPC測定は、下記の測定条件で行った。分子量の校正は、東ソー(株)製標準ポリスチレンのMW(Molecularweight)が1,050~20,600,000の範囲の12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMWに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次校正直線を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、粘度平均分子量(Mv)を決定した。また、GPC測定で求めた分子量分布より、分子量が1,000,000以上の全体に対する割合を算出した。
(測定条件)
装置:PolymerChar社製GPC-IR
検出器:PolymerChar社製IR5
カラム:昭和電工(株)製UT-807(1本)と東ソー(株)製GMHHRH(
S)HT(2本)を直列に接続して使用
移動相:o-ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0ml/分
試料濃度:4mg/8mL
【0108】
[ポリエチレンパウダーのチタン、マグネシウム、及びケイ素の含有量測定]
実施例及び比較例で得られたポリエチレンパウダーを、JISK0133に準拠して、高周波プラズマ質量分析により元素含有量を測定した。試料の調製は、マイクロウェーブ分解装置(型式ETHOSTC、マイルストーンゼネラル(株)製)を用いて、硝酸で加圧酸分解することで実施した。調整した試料について、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置、型式XシリーズX7、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、内標準法にて、ポリエチレンパウダー中の含有金属元素としてチタン、マグネシウム、ケイ素の含有量の定量を行った。
【0109】
[補外結晶化開始温度の測定]
補外結晶化開始温度(Tic)は、示差走査熱量計(DSC)としてPerkinElmer社製DSC8000を用いて下記温度条件で測定を実施した。ポリエチレン系重合体パウダーを8.3~8.5mg秤量し、アルミニウム試料パン中に入れた。このパンにアルミニウムカバーを取り付け、示差走査熱量計中に設置した。流量20mL/分で窒素をパージしながら、温度校正は純物質のインジウムを使用した。
(温度条件)
1)50℃で1分間保持後、10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温した。
2)180℃で5分間保持後、10℃/minの降温速度で50℃まで降温した。
3)50℃で5分間保持後、10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温した。
上記2)の降温過程において得られる高温側のベースラインを低温側に延長した直線と,結晶化ピークの高温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度を補外結晶化開始温度(Tic)とする。
【0110】
[ポリエチレン球晶観察]
実施例及び比較例で得られたポリエチレンパウダーを圧縮成型機(SFA-37H型、株式会社神藤金属工業所製)を用いて1mmにプレス試験片を作製した。加熱成形は210℃、5MPaで5分間行い、さらに15MPaで25分間行い、冷却成形は25℃、10MPaで10分間行った。得られた試験片の中心部をカミソリ刃を用い、2mm×5mmに切り出した。切り出した試験片断面をミクロトームを用いて、厚み15μmに切り出し、スライドガラスに乗せた。その上にカバーガラスを乗せ、観察用プレパラートとした。
【0111】
作成したプレパラートを真空乾燥機に入れ、その上に重さ160gのアルミ角棒置き、真空脱気しながら180℃に昇温した。180℃に到達してから1時間加熱真空脱気を行った。加熱真空脱気が終わると試験片を取り出し室温で冷却し球晶観察用のプレパラートとした。プレパラートをヒートステージへ乗せ、カメラ付光学顕微鏡で測定粒子を下記昇温条件で150℃から100℃まで冷却する過程を観察した。冷却工程において測定球晶の観察画像は4秒毎に撮影し、測定終了後にPythonのOpenCVを用いて下記手順で画像解析を行い、球晶の特徴量を測定した。
(昇温条件)
(1)20℃/分の速度で30℃から180℃まで昇温
(2)180℃で5分間保持
(3)20℃/分の速度で180℃から140℃まで降温
(4)2℃/分の速度で140℃から115℃まで降温
【0112】
[画像解析]
プログラミング言語:Pythonライブラリ:OpenCV、観察画像:顕微鏡で撮影した1200×1900ピクセル画像、にて球晶形成初期を観察するため、DSCで得られたTic温度+2.0℃の画像を観察した。
【0113】
具体的な解析事例として
図1~4の入手方法を以下記載する。
まず顕微鏡で撮影した1200×1900ピクセル画像(
図1)から、球晶が生成している範囲でのトリミングを行う。ただし、十分な球晶観察数を得るためにトリミング範囲は600×1000ピクセル以上とした。得られた画像を
図2に示す。次に画像内に存在する球晶以外のコンタミ成分を取り除くため、バイラテラルフィルタを用いてノイズを除去した。得られた画像を
図3に示す。さらに適応的二値化処理を行うことで球晶の輪郭を得た。得られた画像を
図4に示す。
図4の画像から球晶の特徴量(面積平均、円形度の平均、円形度の歪度)を算出した。
【0114】
バイラテラルフィルタの実行条件は、観察者が肉眼で観察し、ノイズを平滑化する目的が十分に達せられると考え得る条件で、例えば条件式(1)下線部に示すように任意に選定することができる。これらの値は一般的にはカーネルサイズ、色空間における標準偏差、座標空間における標準偏差と表現されるが、本発明においてはこの限りではない。
cv2.bilateralFilter(image,15,25,25) 条件式(1)
【0115】
適応的二値化処理の実行条件は、観察者が肉眼で観察し、球晶の輪郭線を得る目的が十分に達せられると考え得る条件で、例えば条件式(2)下線部に示すように任意に選定することができる。これらの値は一般的には閾値を超えた場合に設定される輝度、閾値計算を行うカーネルサイズ、計算された閾値から差し引く定数と表現されるが、本発明においてはこの限りではない。
cv2.adaptiveThreshold(image,255,cv2.ADAPTIVE_THRESH_MEAN_C,cv2.THRESH_BINARY,101,3) 条件式(2)
【0116】
具体的な解析事例として
図5~8の入手方法を以下記載する。
まず顕微鏡で撮影した1200×1900ピクセル画像(
図5)から、球晶が生成している範囲でのトリミングを行う。ただし、十分な球晶観察数を得るためにトリミング範囲は600×1000ピクセル以上とした。得られた画像を
図6に示す。次に画像内に存在する球晶以外のコンタミ成分を取り除くため、バイラテラルフィルタを用いてノイズを除去した。得られた画像を
図7に示す。さらに適応的二値化処理を行うことで球晶の輪郭を得た。得られた画像を
図8に示す。
図8の画像から球晶の特徴量(面積平均、円形度の平均、円形度の歪度)を算出した。
【0117】
バイラテラルフィルタの実行条件は、観察者が肉眼で観察し、ノイズを平滑化する目的が十分に達せられると考え得る条件で、例えば条件式(3)下線部に示すように任意に選定することができる。これらの値は一般的にはカーネルサイズ、色空間における標準偏差、座標空間における標準偏差と表現されるが、本発明においてはこの限りではない。
cv2.bilateralFilter(image,5,25,25) 条件式(3)
【0118】
適応的二値化処理の実行条件は、観察者が肉眼で観察し、球晶の輪郭線を得る目的が十分に達せられると考え得る条件で、例えば条件式(4)下線部に示すように任意に選定することができる。これらの値は一般的には閾値を超えた場合に設定される輝度、閾値計算を行うカーネルサイズ、計算された閾値から差し引く定数と表現されるが、本発明においてはこの限りではない。
cv2.adaptiveThreshold(image,255,cv2.ADAPTIVE_THRESH_MEAN_C,cv2.THRESH_BINARY,11,-4) 条件式(4)
【0119】
[微多孔膜の製造方法]
実施例1~7及び比較例1~7で得られたポリエチレンパウダーを用いて微多孔膜を以下のとおり製造した。
ポリエチレンパウダーと流動パラフィンとの合計を100質量部としたときに、30質量部のポリエチレンパウダーと70質量部の流動パラフィン(株式会社MORESCO製流動パラフィン(製品名:スモイルP-350P))と、更に1質量部の酸化防止剤(グレートレイクスケミカル日本(株)製テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマート)]メタン(製品名:ANOX20))とを配合し、ポリエチレンパウダーの融点(Tm2)より30℃低い温度で30分間撹拌することでスラリー状液体を調製した。
【0120】
得られたスラリー状液体を(株)東洋精機社製ラボプラストミル(本体型式:4C150―01)に投入し、200℃一定、10分間、スクリュー回転数50rpmで混練した後、180℃/1MPa/3分で熱プレスし、更に180℃/10MPa/2分で熱プレスした後、25℃/10MPa/5分で冷却プレスすることで、ゲルシートを成形した。なお、厚み1.0mmの金枠を使用することで、ゲルシートの厚みを1.0mmに調整した。
【0121】
このゲル状シートを同時二軸延伸機を用いて115℃で7×7倍に延伸した後、延伸フィルムをおよそ30cm角に切り出し、内寸25cm角の金枠に固定した。その後、ヘキサンに浸漬し、流動パラフィンを抽出除去後、24時間以上乾燥した。更に134℃、1分で熱固定し、微多孔膜を得た。
【0122】
[微多孔膜の目付換算突刺強度(gf/(g/m2))]
カトーテック(株)製のハンディー圧縮試験器「KES-G5」を用いて、開口部の直径10mmの試料ホルダーで上記に記載の微多孔膜を固定した。次に、固定された微多孔膜の中央部に対して、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度10mm/minで突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(gf)を得た。得られた突刺強度(gf)を目付で除することで目付換算突刺強度(gf/(g/m2))(以下、単に突刺強度ともいう。)を算出した。なお、この操作を8枚の微多孔膜で8回実施し、8回の平均値を目付換算強度(gf/(g/m2))とし、以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:目付換算突刺強度が65gf/(g/m2)以上である。
○:目付換算突刺強度が55gf/(g/m2)以上65gf/(g/m2)未満である。
×:目付換算突刺強度が55gf/(g/m2)未満である。
【0123】
[微多孔膜の熱収縮率]
上記に記載の微多孔膜を製造する際に、熱固定条件を、130℃/1分、132℃/1分、134℃/1分、136℃/1分の4条件で実施し、得られた熱固定後の膜の気孔率を算出した。気孔率は10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm3)より、次式を用いて算出した。
気孔率(%)=(体積-質量/密度)/体積×100
【0124】
また、得られた熱固定後の膜を1枚ずつ紙で挟み、その紙の束を封筒に入れ、120℃で1時間加熱した。その後、室温で15分冷却し、膜辺の長さを曲尺で測定し、元長からの収縮率を計算することで、熱収縮率を算出した。ここで、気孔率と熱収縮率とのグラフを作成し、気孔率50%における熱収縮率をグラフから概算し、得られた熱収縮率に基づき膜物性の優劣を以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:熱収縮率が20%未満である。
○:熱収縮率が20%以上25%未満である。
×:熱収縮率が25%以上である。
【0125】
[フィルム製造方法]
実施例9及び比較例9で得られたポリエチレンパウダーをT-ダイ製膜機(北進産業株式会社製HM40N、スクリュー径40mm、ダイ300mm幅)を用い、シリンダー温度200℃、ダイ温度210℃、押出量5kg/時間で成形した。両端を50mmずつトリミングし、厚さ35μmからなるフィルムを得た。
【0126】
[フィルムの透明性評価]
上記フィルムを株式会社村上色彩技術研究所製HAZEMETERHM-150を使用し、ASTMD1003に準じてヘイズ(Haze)値を測定した。ヘイズ値が小さいほど、透明性に優れる。
(評価基準)
◎:ヘイズ値が20%未満である。
○:ヘイズ値が20%以上30%未満である。
×:ヘイズ値が30%以上である。
【0127】
[高強度繊維の製造方法]
実施例8及び比較例8で得られたポリエチレンパウダーを用いて高強度繊維を以下のとおり製造した。ポリエチレンパウダーと流動パラフィンとの合計を100質量部としたとき、7質量部のポリエチレンパウダーと93質量部の流動パラフィン(株式会社MORESCO製流動パラフィン(製品名:スモイルP-350P))と、更に1質量部の酸化防止剤(グレートレイクスケミカル日本(株)製テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマート)]メタン(製品名:ANOX20))とを配合し、ポリエチレンパウダーの融点(Tm2)より30℃低い温度で30分間撹拌することでスラリー状液体を調製した。
次に、スラリー状液体を(株)東洋精機社製ラボプラストミル(本体型式:4C150)用異方向回転二軸押出機(本体型式:2D25S)に投入し、200℃一定で混練作業を行った。
【0128】
その後、押出機先端に装着した紡糸口金に通して紡糸した。紡糸口金の温度は200℃で、吐出量は300g/時間であり、紡糸口金の孔径は1.0mmで実施した。
次に、吐出した流動パラフィンを含む糸を、紡糸口金から2.0m離れた箇所で、室温条件下で、50m/分の速さで巻き取った。
【0129】
ついで、巻き取った糸から流動パラフィンを除去するために、ヘキサン中に該糸を浸漬させ抽出作業を行った後、24時間以上乾燥させた。
得られた糸を120℃に設定した恒温槽内で20mm/minの速度で1次延伸し、次いで140℃に設定した恒温槽内で10mm/minの速度で糸が切れる直前まで2次延伸することで、高強度繊維(延伸糸)を得た。
【0130】
[高強度繊維の引張破断強度]
上記の方法で紡糸した高強度繊維(延伸糸)10mを、1m間隔で切断し、得られた繊維10本について、室温条件下で破断するまで引っ張り、平均破断強度を算出した。その際に、糸にかかった最高荷重値を繊度で割ることで破断強度算出した。なお、繊度は糸1×104m当たりの重量であり、単位はdtexで表す。高強度繊維の引張破断強度は、以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:引張破断強度が30cN/dtex以上である。
○:引張破断強度が25cN/dtex以上、30cN/dtex未満である。
×:引張破断強度が25cN/dtex未満である。
【0131】
[実施例1]
([D]液体成分を吸着させた[A]無機固体粒子の調製)
窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/LのMg6(C4H9)12AL(C2H5)3(以下、「Mg1」と略称する)のヘキサン溶液2,000mL(マグネシウムとアルミニウムで2000mmol相当)を仕込み、50℃で攪拌しながら、5.47mol/Lのn-ブタノールヘキサン溶液146mLを3時間かけて滴下し、終了後ラインを300mLのヘキサンで洗浄した。さらに、50℃で2時間かけて攪拌を継続した。反応終了後、常温まで冷却したものを原料(b-1)とした。原料(b-1)はマグネシウムの濃度で0.704mol/Lであった。
【0132】
窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で原料(b-1)の有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液1340mL(マグネシウム943mmol相当)を3時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、原料(B-1)担体を得た。この担体を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムは7.5mmolであった。
上記原料(B-1)担体133gを含有するヘキサンスラリー3,000mLに、50℃で1-ブタノール(東京化成工業社製)800mmoLを1時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、原料(B-2)担体を得た。
【0133】
上記原料(B-2)担体133gを含有するヘキサンスラリー3,000mLに、65℃でジエチルアルミニウムクロライド(1.2mol/L、ヘキサン溶液[東ソーファインケム社製])1200mmoLを1時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、[A]無機固体粒子を得た。
【0134】
得られたスラリーを攪拌下60℃に保ちながら、モディファイドメチルアルミノキサン(1mol/L、m/n=3、MMAOヘキサン溶液[東ソーファインケム社製])を200ml加え、その後2時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、[D]液体成分を吸着させた[A]無機固体粒子156gのヘキサンスラリー2700mLを得た。
【0135】
([B]遷移金属化合物成分の調製)
[B]遷移金属化合物成分として、[(N-t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム-1,3-ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体α」と略称する)を使用した。チタニウム錯体200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社製]1000mlに溶解し、有機マグネシウム化合物として、Mg1のヘキサン溶液(濃度1M)を40ml加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1Mに調整し、[B]遷移金属化合物成分を得た。なお、このMg1は、ヘキサン中、25℃で所定量のトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムとを混合することにより合成した。
【0136】
([C]活性化剤の調製)
[C]活性化剤として、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)を使用した。有機アルミニウム化合物(C-2)として、エトキシジエチルアルミニウムを使用した。
【0137】
ボレート17.8gをトルエン156mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1M)15.6mlを25℃で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度を80mMに調節した。その後、25℃で1時間攪拌することにより[C]活性化剤を調製した。
【0138】
(ポリエチレン重合触媒の調製)
上記操作により得られた[D]液体成分を吸着させた[A]無機固体粒子のスラリー2700mlに、25℃にて撹拌しながら、上記操作により得られた[C]活性化剤を195mlと[B]遷移金属化合物成分156mlとを別のラインから定量ポンプを用い同時に添加し、その後、2時間反応を継続することにより、ポリエチレン重合触媒を調製した。この時の添加時間は[C]活性化剤および[B]遷移金属化合物成分共に30分間であり、攪拌数は400rpmであった。
【0139】
(液体成分[E]の調製)
有機マグネシウム化合物[E-1]として、前記のMg1を使用した。化合物[E-2]として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)を使用した。200mlのフラスコに、ヘキサン40mlとMg1を、MgとAlの総量として38.0mmolを攪拌しながら添加し、20℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40mlを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下に反応させることにより、液体成分[E]を調製した。
【0140】
ここで、エチレンの重合は下記のように行った。まず容量1.5lのオートクレーブにヘキサン800mlを入れ、上記の液体成分[E]をMgとAlの総量として0.25mmol加えた。このオートクレーブに加圧されたエチレンを入れてオートクレーブの内圧を0.8MPaに高めた。次いで、オートクレーブの内温を70℃に高め、85℃に加熱したポリエチレン重合触媒のスラリーを、モディファイドメチルアルミノキサン(1mol/L、m/n=3、MMAOヘキサン溶液[東ソーファインケム社製])50mmol%(モル比、Al/Al+Ti))と同時に、Ti換算で2.8mmolとなるようにオートクレーブに添加することにより、エチレンの重合を開始した。またオートクレーブの全圧が0.8MPaに維持されるようにエチレンをオートクレーブに加えながら、水素を500mol―ppm(水素/(エチレン+水素))も加え、1時間重合を行った。重合終了後、オートクレーブから反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、ポリマーの乾燥粉末を得た。
【0141】
[実施例2]
実施例1と同一の条件で触媒を調製した。調整した触媒は直ちに真空ポンプを用いた減圧脱気を行うことにより乾固させ、エチレンの重合に用いるまで15℃以下に保たれた冷暗所にて保管した。エチレンの重合に用いる際には、乾固させた触媒へ2,700mlのヘキサンを窒素雰囲気下で加えた。また、75℃に加熱したポリエチレン重合触媒のスラリーを、Ti換算で1.0mmolとなるようにオートクレーブに添加すること以外は、実施例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0142】
[実施例3]
原料(B-1)担体を[A]無機固体粒子として用いた以外は、実施例1と同一の条件で触媒を調製した。また、実施例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0143】
[実施例4]
塩化マグネシウム,powder,<200μm(シグマアルドリッチ社製)を[A]無機固体粒子として用い、[D]液体成分を吸着させた塩化マグネシウム,powder,<200μmのスラリー2700mlに、25℃にて撹拌しながら、[C]活性化剤を98mlと[B]遷移金属化合物成分78mlとを別のラインから定量ポンプを用い同時に添加した以外は、実施例1と同一の条件で触媒を調製した。また、実施例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0144】
[実施例5]
実施例1と同一の条件で触媒を調製した。また、室温のポリエチレン重合触媒のスラリーを、Ti換算で1.4mmolとなるようにオートクレーブに添加すること以外は、実施例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0145】
[実施例6]
[B]遷移金属化合物成分として、[(N-t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム-ジクロリド(以下、「チタニウム錯体β」と略称する)を使用した以外は、実施例1と同一の条件で触媒を調製した。また、実施例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0146】
[実施例7]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルアミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(RockwoodAdditives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより100gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土をボールミル粉砕することで原料(B-5)担体を得た。原料(B-5)担体を[A]無機固体粒子として用いた以外は、実施例1と同一の条件で触媒を調製した。また、実施例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0147】
[実施例8]
実施例1と同一の条件で触媒を調製した。また、オートクレーブの全圧が0.8MPaに維持されるようにエチレンをオートクレーブに加えながら、水素を加えなかったこと以外は、実施例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0148】
[実施例9]
実施例1と同一の条件で触媒を調製した。また、オートクレーブの全圧が0.8MPaに維持されるようにエチレンをオートクレーブに加えながら、水素を1mol―%(モル比、水素/(エチレン+水素))も加えること以外は、実施例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0149】
[比較例1]
([D]液体成分を吸着させた[A]無機固体粒子の調製)
窒素置換した容量8Lオートクレーブに加熱処理後のシリカ(Q-6[富士シリシア社製])130gをヘキサン2500ml中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下20℃に保ちながら、メチルアルミノキサン(1mol/LMAOヘキサン溶液[東ソーファインケム社製])を200ml加え、その後2時間攪拌した。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、[D]液体成分を吸着させた[A]無機固体粒子を得た。
【0150】
([B]遷移金属化合物成分の調製)
[B]遷移金属化合物成分として、[(N-t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム-1,3-ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」と略称する)を使用した。チタニウム錯体200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社製]1000mlに溶解し、有機マグネシウム化合物として、組成式AlMg6(C2H5)3(C4H9)12(以下、「Mg1」と略称する)のヘキサン溶液(濃度1M)を40ml加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1Mに調整し、[B]遷移金属化合物成分を得た。なお、このMg1は、ヘキサン中、25℃で所定量のトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムとを混合することにより合成した。
【0151】
([C]活性化剤の調製)
[C]活性化剤として、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)を使用した。有機アルミニウム化合物(C-2)として、エトキシジエチルアルミニウムを使用した。
ボレート17.8gをトルエン156mlに添加して溶解し、ボレートの100mMトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1M)15.6mlを25℃で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度を80mMに調節した。その後、25℃で1時間攪拌することにより[C]活性化剤を調製した。
【0152】
(ポリエチレン重合触媒の調製)
上記操作により得られた[D]液体成分を吸着させた[A]無機固体粒子のスラリー2700mlに、25℃にて撹拌しながら、上記操作により得られた[C]活性化剤を98mlと[B]遷移金属化合物成分78mlとを別のラインから定量ポンプを用い同時に添加し、その後、2時間反応を継続することにより、ポリエチレン重合触媒を調製した。この時の添加時間は[C]活性化剤および[B]遷移金属化合物成分共に30分間であり、攪拌数は400rpmであった。
【0153】
(液体成分[E]の調製)
有機マグネシウム化合物[E-1]として、前記のMg1を使用した。化合物[E-2]として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)を使用した。200mlのフラスコに、ヘキサン40mlとMg1を、MgとAlの総量として38.0mmolを攪拌しながら添加し、20℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40mlを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下に反応させることにより、液体成分[E]を調製した。
【0154】
エチレンの重合は下記のように行った。まず容量1.5lのオートクレーブにヘキサン800mlを入れ、上記の液体成分[E]をMgとAlの総量として0.25mmol加えた。このオートクレーブに加圧されたエチレンを入れてオートクレーブの内圧を0.8MPaに高めた。次いで、オートクレーブの内温を70℃に高め、75℃に加熱したポリエチレン重合触媒のスラリーを、モディファイドメチルアルミノキサン(1mol/L、m/n=3、MMAOヘキサン溶液[東ソーファインケム社製])50mmol%(モル比、Al/Al+Ti))と同時に、Ti換算で1.0mmolとなるようにオートクレーブに添加することにより、エチレンの重合を開始した。またオートクレーブの全圧が0.8MPaに維持されるようにエチレンをオートクレーブに加えながら、水素を500mol―ppm(水素/(エチレン+水素))も加え、1時間重合を行った。重合終了後、オートクレーブから反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、ポリマーの乾燥粉末を得た。
【0155】
[比較例2]
窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/LのMg6(C4H9)12AL(C2H5)3のヘキサン溶液2,000mL(マグネシウムとアルミニウムで2000mmol相当)を仕込み、50℃で攪拌しながら、5.47mol/Lのn-ブタノールヘキサン溶液146mLを3時間かけて滴下し、終了後ラインを300mLのヘキサンで洗浄した。さらに、50℃で2時間かけて攪拌を継続した。反応終了後、常温まで冷却したものを原料(b-1)とした。原料(b-1)はマグネシウムの濃度で0.704mol/Lであった。
【0156】
窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で原料(b-1)の有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液1340mL(マグネシウム943mmol相当)を3時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、原料(B-1)担体を得た。この担体を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムは7.5mmolであった。
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/LのMg6(C4H9)12Al(C2H5)3のヘキサン溶液2,000mL(マグネシウムとアルミニウムで2000mmol相当)を仕込み、80℃で攪拌しながら、8.33mol/Lのメチルハイドロジエンポリシロキサン(信越化学工業社製)のヘキサン溶液240mLを圧送、さらに80℃で2時間かけて攪拌を継続させた。反応終了後、常温まで冷却したものを原料[b-2]とした。原料[b-2]はマグネシウムとアルミニウムの合計濃度で0.786mol/Lであった。
【0157】
上記原料(B-1)担体133gを含有するヘキサンスラリー3,000mLに、50℃で1-ブタノール(東京化成工業社製)800mmoLを1時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、原料(B-2)担体を得た。
【0158】
上記原料(B-2)担体133gを含有するヘキサンスラリー3,000mLに、65℃でジエチルアルミニウムクロライド(東ソーファインケム社製)1200mmoLを1時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、原料(B-3)担体を得た。
上記[B-3]担体110gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに10℃で攪拌しながら、1mol/Lの四塩化チタンのヘキサン溶液103mLと原料[b-2]131mLを同時に3時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、ヘキサンで4回洗浄することにより、未反応原料成分を除去し、ポリエチレン重合触媒を調製した。
【0159】
エチレンの重合は下記のように行った。まず容量1.5lのオートクレーブにヘキサン800mlを入れ、上記の液体成分[E]をMgとAlの総量として0.25mmol加えた。このオートクレーブに加圧されたエチレンを入れてオートクレーブの内圧を0.8MPaに高めた。次いで、オートクレーブの内温を70℃に高め、室温のポリエチレン重合触媒のスラリーを、Ti換算で1.0mmolとなるようにオートクレーブに添加することにより、エチレンの重合を開始した。またオートクレーブの全圧が0.8MPaに維持されるようにエチレンをオートクレーブに加えながら、水素を10mol%(モル比、水素/(エチレン+水素))も加え、1時間重合を行った。重合終了後、オートクレーブから反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。その後、反応混合物を濾過、洗浄、乾燥し、ポリマーの乾燥粉末を得た。
【0160】
[比較例3]
実施例4と同一の条件で触媒を調製した。また、75℃に温調したポリエチレン重合触媒のスラリーを、Ti換算で1.4mmolとなるようにオートクレーブに添加すること以外は、実施例4と同一の条件でエチレンを重合した。
【0161】
[比較例4]
[D]液体成分を吸着させた塩化マグネシウム,powder,<200μmのスラリー2700mlに、25℃にて撹拌しながら、[C]活性化剤を400mlと[B]遷移金属化合物成分305mlとを別のラインから定量ポンプを用い同時に添加した以外は、比較例3と同一の条件で触媒を調製した。また、室温のポリエチレン重合触媒のスラリーを、Ti換算で1.4mmolとなるようにオートクレーブに添加すること以外は比較例3と同一の条件でエチレンを重合した。
【0162】
[比較例5]
[B]遷移金属化合物成分として、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)チタニウムジクロライド(以下、「チタニウム錯体γ」と略称する)を使用し、[D]液体成分を吸着させた塩化マグネシウム,powder,<200μmのスラリー2700mlに、25℃にて撹拌しながら、[C]活性化剤を195mlと[B]遷移金属化合物成分156mlとを別のラインから定量ポンプを用い同時に添加した以外は、比較例3と同一の条件で触媒を調製した。また、室温のポリエチレン重合触媒のスラリーを、Ti換算で1.0mmolとなるようにオートクレーブに添加すること以外は比較例3と同一の条件でエチレンを重合した。
【0163】
[比較例6]
[B]遷移金属化合物成分として、下記のチタニウム錯体δを使用した以外は、比較例5と同一の条件で触媒を調製した。また、室温のポリエチレン重合触媒のスラリーを、Ti換算で1.4mmolとなるようにオートクレーブに添加すること以外は比較例5と同一の条件でエチレンを重合した。
【化3】
【0164】
[比較例7]
[B]遷移金属化合物成分として、チタニウム錯体βを使用した以外は、比較例3と同一の条件で触媒を調製した。また、75℃に温調したポリエチレン重合触媒のスラリーを、Ti換算で1.0mmolとなるようにオートクレーブに添加すること以外は比較例5と同一の条件でエチレンを重合した。
【0165】
[比較例8]
比較例1と同一の条件で触媒を調製した。また、オートクレーブの全圧が0.8MPaに維持されるようにエチレンをオートクレーブに加えながら、水素を加えなかったこと以外は、比較例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0166】
[比較例9]
比較例1と同一の条件で触媒を調製した。また、オートクレーブの全圧が0.8MPaに維持されるようにエチレンをオートクレーブに加えながら、水素を1mol―%(モル比、水素/(エチレン+水素))も加えること以外は、比較例1と同一の条件でエチレンを重合した。
【0167】
[重合物の評価]
得られたポリエチレンパウダーを用いて、上記の製造方法で微多孔膜、繊維、及びフィルムを製造し、上記微多孔膜の突刺強度及び熱収縮率、上記繊維の引張破断強度、及び上記フィルムの透明性を上記の評価方法により評価した。得られた物性評価結果を表1に示す。
【0168】
本発明のポリエチレンパウダーを用いることにより、透明性に優れるフィルムや、機械的強度により優れる繊維や電池用セパレーターを提供することができることから、工業的に極めて効果があり広く利用され得る。