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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015656
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】シールカバーおよびシール部材
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20230125BHJP
   B60J 10/30 20160101ALI20230125BHJP
   B60J 10/16 20160101ALI20230125BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
B60J10/30
B60J10/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119566
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】沖野 文人
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 泰亮
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA12
3D201BA01
3D201CA18
(57)【要約】
【課題】カバー部材へのシール部材の組付けが簡単なシールカバーを提供する。
【解決手段】ドアインナーパネル(20)に形成されたドアホール(H)を塞ぐシールカバー(1)であって、ドアホール(H)を車内側から覆うカバー部材(2)と、カバー部材(2)の外周部(2a)に取り付けられ、ドアホール(H)を塞いだ状態で、ドアホール(H)の開口縁部の周りを囲む位置においてドアインナーパネル(20)と接するシール部材(3)と、を備え、シール部材(3)は、カバー部材(2)の外周部(2a)に該外周部(2a)を抱え込むように嵌め込まれる嵌合部(4)と、嵌合部(4)に設けられ、ドアインナーパネル(20)に圧接される第1シール部(5)と、を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールを塞ぐシールカバーであって、
前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、
前記カバー部材の外周部に取り付けられ、前記ドアホールを塞いだ状態で、前記ドアホールの開口縁部の周りを囲む位置において前記ドアインナーパネルと接するシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
前記カバー部材の外周部に該外周部を抱え込むように嵌め込まれる嵌合部と、
前記嵌合部に設けられ、前記ドアインナーパネルに圧接される第1シール部と、を有することを特徴とするシールカバー。
【請求項2】
前記第1シール部は、前記ドアホールを塞いだ状態で、前記カバー部材における前記嵌合部よりも内周部に位置する部分に接触することを特徴とする請求項1に記載のシールカバー。
【請求項3】
前記嵌合部の内側に、前記カバー部材の外周部と圧接される第2シール部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールカバー。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記外周部に、前記嵌合部を係止する係止形状部を有することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のシールカバー。
【請求項5】
前記シール部材は、紐状であり、
前記嵌合部は、ソリッド状の樹脂よりなる請求項1から4の何れか1項に記載のシールカバー。
【請求項6】
前記カバー部材は、外周部に該外周部から延びるスリット状の切欠き部を有し、
前記シール部材は、少なくとも一方の端部の前記嵌合部が前記切欠き部の縁に嵌め込まれ、前記切欠き部が形成されている部分において、前記シール部材の両端部同士が前記カバー部材の面方向において重なり合い、
前記ドアホールを塞いだ状態で、前記両端部における前記第1シール部同士が接触することを特徴とする請求項5に記載のシールカバー。
【請求項7】
取付ベースに形成された開口を塞ぐシールカバーのシール部材であって、
紐状であり、
前記シールカバーにおける、前記開口を覆うカバー部材の外周部に該外周部を抱え込むように嵌め込まれる嵌合部と、
前記嵌合部に設けられ、前記取付ベースに圧接される第1シール部と、を有するシール部材。
【請求項8】
前記嵌合部は、ソリッド状の樹脂よりなる請求項7に記載のシール部材。
【請求項9】
前記第1シール部は、前記開口を塞いだ状態で、前記カバー部材における前記嵌合部よりも内周部に位置する部分に接触するように形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のシール部材。
【請求項10】
前記嵌合部の内側に、前記カバー部材の外周部と圧接される第2シール部を有していることを特徴とする請求項7、8又は9に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアインナーパネルに取付けられるシールカバー、およびシールカバー等のシール構造に用いられるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールは、雨水等の車内への浸入を防止するためにシールカバーを用いて塞がれている。
【0003】
このようなシールカバーとして、ドアホールを覆うカバー部材を備え、その周縁部に、発泡体等からなるシール部材が両面テープ等を用いて貼り付けられたものがある。カバー部材がドアホールを塞いだ状態で、シール部材がドアホールの開口縁部の周りに押し付けられ、雨水等の浸入を防ぐ。
【0004】
また、特許文献1には、ドアホールを覆うカバー本体(カバー部材に相当)と、カバー本体の外周に形成されたシール用のリップ(シール部材に相当)と、を有するホールカバー(シールカバーに相当)が開示されている。リップは、カバー本体にインサート成形あるいは2色成形されている。
【0005】
また、特許文献2には、サービスホールを塞いだ際にインナーパネルに接する側になる発泡シート(シール部材に相当)と、発泡シートに接着した硬質シート(カバー部材に相当)とからなるサービスホールカバー(シールカバーに相当)が開示されている。発泡シートと硬質シートとは熱接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-94676号公報
【特許文献2】特許第6721162号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術には、以下のような問題がある。
【0008】
まず、カバー部材の周囲にシール部材を貼り付ける構成においては、シール部材を慎重に貼り付けていく必要がある。そのため、作業に習熟が必要となる。しかも、組み付け工数も多くなる。また、両面テープ等を使用する場合は、離型紙がゴミとして発生する。
【0009】
一方、特許文献1、2に開示された従来技術においては、シール部材とカバー部材とが一体に形成されているので、シール部材をカバー部材に組み付ける作業そのものが存在しない。しかしながら、インサート成形又は2色成形するための装置、又は熱接着するための装置が必要となり、製造コストが嵩む。さらに、シール部材とカバー部材とを一体に形成する構成では、不良品が発生した場合、シール部材およびカバー部材の両方が不良となるため原料ロスが大きくなる。
【0010】
本発明の一態様は、上記課題に鑑みなされたもので、カバー部材へのシール部材の組み付けが簡単なシールカバー等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシールカバーは、自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールを塞ぐシールカバーであって、前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、前記カバー部材の外周部に取り付けられ、前記ドアホールを塞いだ状態で、前記ドアホールの開口縁部の周りを囲む位置において前記ドアインナーパネルと接するシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記カバー部材の外周部に該外周部を抱え込むように嵌め込まれる嵌合部と、前記嵌合部に設けられ、前記ドアインナーパネルに圧接される第1シール部と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、カバー部材の外周部にシール部材の嵌合部を嵌め込むことで、カバー部材にシール部材を組み付けることができる。しかも、シール部材を嵌め込む作業は、シール部材を貼り付ける作業のように習熟も必要なく、かつ、工程数も削減できる。また両面テープ等を必要としないので、離型紙等のゴミも発生しない。さらに、シール部材とカバー部材とを一体に形成する構成のように、インサート成形又は2色成形するための装置等を必要とせず、不良品発生時の原料ロスも小さくできる。
【0013】
本発明の一態様に係るシールカバーは、さらに、前記第1シール部は、前記ドアホールを塞いだ状態で、前記カバー部材における前記嵌合部よりも内周部に位置する部分に接触する構成であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1シール部がカバー部材に接触した部分にて嵌合部の内側への水の浸入を阻止でき、これにより、嵌合部の内側を伝って車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【0015】
本発明の一態様に係るシールカバーは、さらに、前記嵌合部の内側に、前記カバー部材の外周部と圧接される第2シール部を有している構成であってもよい。
【0016】
上記構成によれば、第2シール部がカバー部材の外周部と接触することで、嵌合部の内側への水の浸入を阻止でき、これにより、嵌合部の内側を伝って車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【0017】
本発明の一態様に係るシールカバーは、さらに、前記カバー部材は、前記外周部に、前記嵌合部を係止する係止形状部を有する構成であってもよい。
【0018】
上記構成によれば、カバー部材の外周部に対する嵌合部の嵌め込みが安定して保持され、組み付け作業時の作業性も良好になる。
【0019】
本発明の一態様に係るシールカバーは、さらに、前記シール部材は、紐状であり、前記嵌合部は、ソリッド状の樹脂よりなる構成であってもよい。
【0020】
上記構成によれば、カバー部材の外周部に対して、シール部材を、長さ方向の一端部からスライドさせるようにして取り付けることができる。これにより、組み付け時の作業性がさらに良好になる。
【0021】
本発明の一態様に係るシールカバーは、さらに、前記カバー部材は、外周部に該外周部から延びるスリット状の切欠き部を有し、前記シール部材は、少なくとも一方の端部の前記嵌合部が前記切欠き部の縁に嵌め込まれ、前記切欠き部が形成されている部分において、前記シール部材の両端部同士が前記カバー部材の面方向において重なり合い、前記ドアホールを塞いだ状態で、前記両端部における前記第1シール部同士が接触する構成であってもよい。
【0022】
紐状のシール部材の場合、繋ぎ目部分からの水の浸入を阻止するために、カバー部材の外周部に嵌め込まれたシール部材の両端部同士を確実に接続する必要がある。これに対し、上記構成によれば、両端部同士がカバー部材の面方向において重なり合い、ドアホールを塞いだ状態で、両端部における第1シール部同士が接触する。したがって、シール部材の両端部同士を突き合せて接続しなくても、切欠き部を利用して重なるように嵌め込むだけで、シール部材の端部からの水の浸入を阻止することができる。
【0023】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシール部材は、取付ベースに形成された開口を塞ぐシールカバーのシール部材であって、紐状であり、前記シールカバーにおける、前記開口を覆うカバー部材の外周部に該外周部を抱え込むように嵌め込まれる嵌合部と、前記嵌合部に設けられ、前記取付ベースに圧接される第1シール部と、を有することを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、カバー部材の外周部にシール部材の嵌合部を嵌め込むことで、カバー部材にシール部材を組み付けることができる。しかも、シール部材を嵌め込む作業は、シール部材を貼り付ける作業のように習熟も必要なく、かつ、工程数も削減できる。
【0025】
本発明の一態様に係るシール部材は、さらに、前記嵌合部は、ソリッド状の樹脂よりなる構成であってもよい。
【0026】
上記構成によれば、カバー部材の外周部に対して、シール部材を、長さ方向の一端部からスライドさせるようにして取り付けることができる。これにより、組み付け時の作業性がさらに良好になる。
【0027】
本発明の一態様に係るシール部材は、さらに、前記第1シール部は、前記開口を塞いだ状態で、前記カバー部材における前記嵌合部よりも内周部に位置する部分に接触するように形成されている構成とすることもできる。
【0028】
上記構成によれば、第1シール部がカバー部材に接触した部分にて嵌合部の内側への水の浸入を阻止でき、これにより、嵌合部の内側を伝って車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【0029】
本発明の一態様に係るシール部材は、さらに、前記嵌合部の内側に、前記カバー部材の外周部と圧接される第2シール部を有している構成であってもよい。
【0030】
上記構成によれば、第2シール部がカバー部材の外周部と接触することで、嵌合部の内側への水の浸入を阻止でき、これにより、嵌合部の内側を伝って車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、カバー部材へのシール部材の組付けが簡単なシールカバー等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態1に係るシールカバーがドアインナーパネル0に取り付けられた自動車のドアの車内側の構造を示す模式図である。
図2】実施形態1に係るシールカバーを車内側から見た模式図である。
図3】実施形態1に係るシールカバーを車外側から見た模式図である。
図4】実施形態1に係るシールカバーにおけるカバー部材を車内側から見た模式図である。
図5】実施形態1に係るシールカバーの部分断面図であって、図2におけるA-A線に沿った断面図である。
図6】実施形態1に係るシールカバーの部分断面図であって、図2におけるB-B線に沿った断面図である。
図7】ドアインナーパネルに取り付けられている状態の、実施形態1に係るシールカバー1の部分断面図であって、図2におけるA-A線に沿った断面図である。
図8】ドアインナーパネルに取り付けられている状態の、実施形態1に係るシールカバー1の部分断面図であって、図2におけるB-B線に沿った断面図である。
図9】実施形態2に係るシールカバーの部分断面図である。
図10】実施形態3に係るシールカバーにおける切欠き部が有る部分の部分断面図である。
図11】実施形態4に係るシールカバーにおける切欠き部が有る部分の部分断面図である。
図12】実施形態5に係るシールカバーを車内側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書および特許請求の範囲において、圧接とは、圧力をもって接触することをいう。図面中、「CE」は車外側、「CI」は車内側、「U」は上側、「D」は下側をそれぞれ指している。
【0034】
〔実施形態1〕
実施形態1について図1から図8を参照して説明する。図1は、実施形態1に係るシールカバー1がドアインナーパネル20に取り付けられた自動車のドア19の車内側の構造を示す模式図である。図2は、実施形態1に係るシールカバー1を車内側から見た模式図である。図3は、実施形態1に係るシールカバー1を車外側から見た模式図である。図4は、実施形態1に係るシールカバー1におけるカバー部材2を車内側から見た模式図である。
【0035】
図5は、実施形態1に係るシールカバー1の部分断面図であって、図2におけるA-A線に沿った断面図である。図6は、実施形態1に係るシールカバー1の部分断面図であって、図2におけるB-B線に沿った断面図である。図7は、ドアインナーパネル20に取り付けられている状態の、実施形態1に係るシールカバー1の部分断面図であって、図2におけるA-A線に沿った断面図である。図8は、ドアインナーパネル20に取り付けられている状態の、実施形態1に係るシールカバー1の部分断面図であって、図2におけるB-B線に沿った断面図である。
【0036】
(1.シールカバー1の概要)
図1に示すように、実施形態1に係るシールカバー1は、自動車のドア19の一部を構成するドアインナーパネル(取付ベース)20に取り付けられ、ドアインナーパネル20に形成されたドアホール(開口)Hを塞ぐものである。シールカバー1は、ドアホールHから車内側への雨水等の水の浸入を防止する。
【0037】
ドアホールHは、例えば、ドア19の内部に配置された各種部品を修理するときに、作業者が手又は工具等を入れるための開口部である。なお、図1には、ドア19の一例としてフロントドアが図示されている。
【0038】
図2図4に示すように、シールカバー1は、ドアホールHを車内側から覆うカバー部材2と、ドアホールHの開口縁部の周りを囲む位置においてドアインナーパネル20と接する(圧接する)シール部材3と、を備えている。なお、図1図3においては、シール部材3の構成を分かり易くするために、カバー部材2に対してシール部材3を大きく幅広に記載している。
【0039】
(2.カバー部材2)
カバー部材2は、ドアホールHの輪郭形状より一回り大きいサイズの外部輪郭を有している(図1参照)。また、図示してはいないが、カバー部材2に、シールカバー1をドアインナーパネル20に取り付けるクリップが設けられている。
【0040】
シール部材3は、このようなカバー部材2の外周部2aに取り付けられる。より詳細には、図5に示すように、シール部材3の後述する嵌合部4が、カバー部材2の外周部2aに、該外周部2aを抱え込むように嵌め込まれる。
【0041】
本実施形態では、カバー部材2は、外周部2aに、嵌め込まれた嵌合部4を係止する係止形状部2bを有している。図5の例では、係止形状部2bとして、外周部2aに断面Y字状のフランジが設けられている。このような係止形状部2bは、図4に示すように、シール部材3が組み付けられる外周部2aの全周に亘って形成されている。なお、係止形状部2bの形状は、このような断面Y字状のフランジに限るものではない。形状のバリエーションについては後述する。
【0042】
さらに、本実施形態では、カバー部材2は、外周部2aに該外周部2aから延びるスリット状の切欠き部10を有している(図4参照)。切欠き部10は、外周部2aよりカバー部材2の内周側に入り込み、その後湾曲されて外周部2aに沿って延びるように設けられている。そして、切欠き部10におけるカバー部材2の内周側の縁2cには、係止形状部2bが形成されている。なお、カバー部材2の外周側の縁2dには、係止形状部2bは形成されていない。なお、切欠き部10は、「切欠き」の文言を使用しているが、切り欠くことで形成する物に限られないことは言うまでもなく、切欠き部はスリット形状部に換言できる。
【0043】
切欠き部10は、長く形成することで、シール部材3の端部同士の後述する重なり部分を長く確保でき、重ね合わせによる両端部の取り付けが安定する。また、湾曲させて外周部2aに沿って延びる形状とすることで、湾曲させることなくカバー部材2の内周側に向かう形状よりも、カバー部材2において切欠き部10を形成するために必要な領域を小さくすることができる。
【0044】
図2図3に示すように、切欠き部10におけるカバー部材2の内周側の縁2cに、シール部材3の一方の端部が取り付けられている。この切欠き部10が形成されている部分において、シール部材3の両端部同士をカバー部材2の面方向において重なり合っている。これにより、シール部材3の両端部同士を、外周部2aにおいて突き合せて接続することなく、外周部2aの全周にシール部材3を取り付けることができる。
【0045】
カバー部材2は、例えば加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、又は金属等からなる。加硫ゴムの例としては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンモノマー)、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、又はアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。熱可塑性エストラマーの例としては、オレフィン系(TPO)又はスチレン系(TPS)が挙げられる。熱可塑性成形樹脂の例としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、又はEVA(エチレン酢酸ビニル)が挙げられる。複合体の例としては、ガラス繊維ブレンドなどの繊維の集合体を挙げることができる。金属の例としては、アルミ又は鉄が挙げられる。
【0046】
(3.シール部材3)
図2図3に示すように、シール部材3は、紐状をなし、カバー部材2の外周部2aに嵌め込むことでカバー部材2に組み付けられている。図5図8に示すように、シール部材3は、嵌合部4と、嵌合部4に設けられた第1シール部5と、を有している。
【0047】
<嵌合部4>
嵌合部4は、カバー部材2の外周部2aに、該外周部2aを抱え込むように嵌め込まれ、カバー部材2に対するシール部材3の組み付けを可能にする。上述したように、本実施形態においては、カバー部材2の外周部2aに、断面Y字状のフランジからなる係止形状部2bが形成されており、嵌合部4は、この係止形状部2bを嵌合部4の内側部分で抱え込む。そのため、断面Y字状のフランジからなる係止形状部2bに対応させて、嵌合部4は、断面がフック状に形成されている。
【0048】
嵌合部4の開口4aにおける、カバー部材2の厚み方向のサイズは、係止形状部2bの同方向のサイズよりも小さく形成されている。これにより、シール部材3をカバー部材2から取り外す方向の力がシール部材3に加わったとしても、シール部材3が簡単に外れないようになっている。このように、カバー部材2の外周部2aに係止形状部2bを設け、該係止形状部2bに嵌合部4を嵌め込む構成とすることで、カバー部材2の外周部2aに対する嵌合部4の嵌め込みが安定して保持され、組み付け作業時の作業性も良好になる。
【0049】
また、本実施形態において、嵌合部4は、ソリッド状の樹脂より構成されている。そのため、カバー部材2の外周部2aに対して、紐状のシール部材3の嵌合部4を、長さ方向の一端部からスライドさせるようにして取り付けることができる。これによって、組み付け時の作業性がさらに良好になる。
【0050】
嵌合部4は、加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等からなる。加硫ゴムの例としては、例えば、EPDM、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、又はアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。熱可塑性エストラマーの例としては、例えばオレフィン系(TPO)又はスチレン系(TPS)等が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、又はポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0051】
<第1シール部5>
図5に示すように、第1シール部5は、嵌合部4に設けられている。本実施形態において、第1シール部5は、嵌合部4における車外側を向いた面に、車外側に突出して設けられている。
【0052】
第1シール部5は、発泡したスポンジ状の樹脂より構成されている。より好ましくは、スキン層を有したスポンジ状の樹脂より構成されていることである。第1シール部5は、嵌合部4と同様に、加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等からなる。第1シール部5は、押出成形によって嵌合部4と同時に成形することができる。
【0053】
図7に示すように、シールカバー1がドアインナーパネル20に取り付けられた状態で、第1シール部5は、ドアインナーパネル20に圧接される(曲線A1で囲った部分)。より詳細には、第1シール部5は、その弾性力によってドアインナーパネル20のドアホールHの開口縁部に圧接する。これにより、ドアインナーパネル20とシールカバー1との隙間から車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【0054】
また、図7に示すように、本実施形態においては、第1シール部5は、ドアインナーパネル20に圧接された状態で、車内側の面が、カバー部材2における嵌合部4よりも内周部に位置する部分に接触、あるいは圧接するように形成されている(曲線A2で囲った部分)。これにより、嵌合部4の内側への水の浸入を阻止して、嵌合部4の内側を伝って車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【0055】
ところで、紐状のシール部材3の場合、繋ぎ目部分からの水の浸入を阻止するために、カバー部材2の外周部に嵌め込まれたシール部材3の両端部同士を確実に接続する必要がある。
【0056】
本実施形態においては、図8に示すように、ドアインナーパネル20に圧接された状態で、シール部材3の両端部同士を重なり合わせている部分における第1シール部5同士が接触、あるいは圧接し合うようになっている(曲線A3で囲った部分)。これにより、シール部材3の両端部同士を突き合せて接続しなくても、切欠き部10を利用して重なるように嵌め込むだけで、シール部材3の端部からの水の浸入を阻止することができる。
【0057】
(4.効果)
上記構成によれば、カバー部材2の外周部2aにシール部材3の嵌合部4を嵌め込むことで、カバー部材2にシール部材3を組み付けることができる。しかも、シール部材3を嵌め込む作業は、シール部材3を貼り付ける作業のように習熟も必要なく、かつ、工程数も削減できる。また両面テープ等を必要としないので、離型紙等のゴミも発生しない。さらに、シール部材とカバー部材とを一体に形成する構成のように、インサート成形又は2色成形するための装置等を必要とせず、かつ、不良品発生時の原料ロスも小さくできる。
【0058】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0059】
実施形態2について図9を参照して説明する。図9は、実施形態2に係るシールカバー1Aの部分断面図である。図9に示すように、本実施形態2に係るシールカバー1Aは、シール部材3の嵌合部4の内側に、カバー部材2の外周部2aと圧接される第2シール部6を有している。この点が、実施形態1に係るシールカバー1と異なる。
【0060】
上記構成によれば、第1シール部5が接触している曲線A2で囲った部分をすり抜けて嵌合部4の内側を伝って車内側へ浸入しようとする水を、第2シール部6にて止めることができる。つまり、シールカバー1Aにおいては、嵌合部4の内側を伝って車内側へ浸入しようとする水に対して、2重の止水構造を有している。図9では、第2シール部6を1箇所に設けているが、複数箇所に設けてもよい。なお、第2シール部6の材質および材料については、第1シール部5と同じである。
【0061】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0062】
実施形態3について図10を参照して説明する。図10は、実施形態3に係るシールカバー1Bにおける切欠き部10が有る部分の部分断面図である。図10に示すように、本実施形態3に係るシールカバー1Bは、シール部材3Bを備えている。シール部材3Bでは、第1シール部5Bが、嵌合部4における車外側を向いた面(ドアインナーパネル20と対向する面)から該面の反対側に向かう側面に亘って設けられている。
【0063】
シールカバー1Bにおいても、ドアインナーパネル20に圧接された状態で、シール部材3の両端部同士を重なり合わせている部分における第1シール部5B同士が接触、あるいは圧接し合うようになっている(曲線A4で囲った部分)。
【0064】
さらに、シールカバー1Bにおいては、切欠き部10の内周側の縁2cに嵌め込まれたシール部材3Bの第1シール部5Bと、切欠き部10の外周側の縁2dとが、接触あるいは圧接する(曲線A5で囲った部分)。これにより、A5で囲った部分においても、切欠き部10を介して車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【0065】
つまり、シールカバー1Bにおいては、切欠き部10を介して車内側へ浸入しようと水に対して、2重の止水構造を有している。
【0066】
また、図10に示すように、シールカバー1Bにおいては、カバー部材2の外周部2a(係止形状部2b)と嵌合部4の内側の面とを密着させている。このような構成とすることでも、嵌合部4の内側を伝って車内側へ浸入しようと水を止めることができる。
【0067】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0068】
実施形態4について図11を参照して説明する。図11は、実施形態4に係るシールカバー1Cにおける切欠き部10が有る部分の部分断面図である。図11に示すように、本実施形態4に係るシールカバー1Cは、カバー部材2Cと、シール部材3Cと、を備えている。
【0069】
カバー部材2Cは、係止形状部2bとして、外周部2aに断面T字状のフランジが設けられている。このような係止形状部2bに対応させて、シール部材3Cは、断面C字状の嵌合部4Cを有している。第1シール部5Cは、嵌合部4Cにおけるカバー部材2Cの内周側を向いた面に形成されている。
【0070】
第1シール部5Cは、ドアインナーパネル20に圧接された状態で、車内側の面が、カバー部材2における嵌合部4よりも内周部に位置する部分に接触、あるいは圧接するように形成されている(曲線A5で囲った部分)。これにより、嵌合部4Cの内側を伝って車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【0071】
さらに、ドアインナーパネル20に圧接された状態で、切欠き部10の有る部分の外周部2aに嵌め込まれたシール部材3Cの第1シール部5Cが、切欠き部10の内周側の縁2cに嵌め込まれたシール部材3Cの嵌合部4Cに接触あるいは圧接する(曲線A6で囲った部分)。これにより、切欠き部10を介して車内側へ浸入しようとする水を止めることができる。
【0072】
なお、係止形状部2bとしては、断面Y字状および断面T字状のフランジを挙げたが、これに限るものではない。要は、外周部2aに嵌め込まれたシール部材3の嵌合部4が安定して嵌合され、外れない形状であればよく、係止形状部2bがリブ状で、嵌合部4の内側が当該リブに嵌り込む形状であってもよい。また、カバー部材2の外周部2aの両面、或いは片面に、溝状の凹部を形成し、嵌合部4側に該凹部に嵌り込む凸部を設ける構成であってもよい。
【0073】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0074】
実施形態5について図12を参照して説明する。図12は、実施形態5に係るシールカバー1Dを車内側から見た模式図である。図12に示すように、本実施形態5に係るシールカバー1Dは、カバー部材2と、シール部材3Dと、を備えている。シール部材3Dは、環状であり、伸縮性を有している。なお、図1図3と同様に、図12においては、シール部材3Dの構成を分かり易くするために、カバー部材2に対してシール部材3を大きく幅広に記載している。
【0075】
このような、シール部材3Dでは、引き伸ばしつつ、カバー部材2の外周部2aに嵌合部4Dを嵌め込むことで、カバー部材2に組み付けることができる。シール部材3Dに伸縮性を持たせることで、外周部2aに係止形状部2bを設けずとも、嵌合部4Dの嵌め込みが安定して保持され、組み付け作業時の作業性も良好になる。
【符号の説明】
【0076】
1、1A、1B、1C、1D シールカバー
2、2C カバー部材
2a 外周部
2b 係止形状部
3、3B、3C、3D シール部材
4、4C、4D 嵌合部
4a 開口
5、5B、5C 第1シール部
6 第2シール部
19 ドア
20 ドアインナーパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12