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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156581
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】変成シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/10 20060101AFI20231018BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231018BHJP
   C09J 183/00 20060101ALI20231018BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231018BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C08L83/10
E04F13/08 101K
C09J183/00
C09J11/06
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066012
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 雅密
【テーマコード(参考)】
2E110
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
2E110AA27
2E110AA51
2E110AB04
2E110AB05
2E110DA12
2E110DC21
2E110GB53Z
4J002CP171
4J002CP181
4J002GJ01
4J040EK001
4J040KA14
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA42
4J040MA02
4J040MA06
4J040MA08
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】
床の下地材や壁の下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工するための変成シリコーン組成物を得ることであり、その変成シリコーン組成物は、床の下地材と床材、壁の下地材と壁材を貼り合わせた後は通常の生活を送ってもそれらがズレたり剥がれたりすることなく、それらを解体する時は、床材や壁材等の表面材を容易に剥がすことができ、下地材を傷つけて、下地材を取り替える必要がないようなシリコーン組成物を得ることである。
【解決手段】
変成シリコーン(A)100質量部に対し、可塑剤(B)を70~150質量部、JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)を50~350質量部、その他フィラー(D)を50~400質量部含有する変成シリコーン組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変成シリコーン(A)100質量部に対し、可塑剤(B)を70~150質量部、JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)を50~350質量部、その他フィラー(D)を50~400質量部含有する変成シリコーン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の変成シリコーン組成物が、フライアッシュバルーン等の中空フィラーを含まず、エポキシ化合物をも含まない変成シリコーン組成物。
【請求項3】
前記変成シリコーン組成物が、床の下地材や壁の下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工するための請求項1または請求項2に記載の変成シリコーン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床の下地材や壁の下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工するための変成シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅、共同住宅、事務所、商業施設、医療、福祉施設等の建造物は、床材や壁材等の表面材の内装仕上げが行われるのが一般的である。一般住宅の床の場合、ネダの上に下地合板を設置し、その上に複合フローリング材等を貼り合わせられる場合がある。
床材、壁材の下地材の材質としては、合板、石膏ボード等が用いられるが、何れも床材や壁材等の表面材の内装仕上げが行われる。
共同住宅、事務所、商業施設、医療、福祉施設の場合、下地材としてはコンクリートである場合もあり、その場合発泡体付きの化粧樹脂製シートを貼られる場合もあるし、コンクリートの上に、木材、石膏ボード等の緩衝下地材を設け、その上に床材や壁材等が設置される場合もある。
この様に、床の下地材や壁の下地材等の下地材には、さまざまな材質が用いられ、床材や壁材等の表面材にもさまざまな材質が用いられる。この様な多種多様な材質の接着施工に、しばしば変成シリコーン組成物が用いられる場合がある。
【0003】
床の下地材や壁の下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工された内装仕上げが行われた場合、人が生活している間はそれらがズレたり、剥がれたりしないことが求められる。
【0004】
人が生活すると、床材や壁材等は劣化し、いずれ貼り替える必要が生じる。貸店舗、賃貸住宅でよく見うけられるが、貸借人が替わるタイミングで、床材や壁材等の表面材が貼り替えられる場合がある。
その場合、床材や壁材等の表面材を容易に剥がすことができ、下地材を傷つけて、下地材を取り替える必要がないような変成シリコーン組成物が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-024095
【特許文献2】特開2006-096859
【特許文献3】特開2007-016129
【特許文献4】特開2020-029473
【0006】
特許文献1は、床下地材や壁下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工する際に用いる易剥離性一液湿気硬化型接着剤に関し、特に接着施工した後、容易に表面材を剥離でき、住宅等において、床材等の表面材の貼り替え作業が合理化しうる易剥離性一液湿気硬化型接着剤とあり、本願と目的とするところは殆ど同じであるが、剥離性には改善の余地があった。
【0007】
特許文献2は、サンド調の窯業系サイディングボード目地に使用した場合、該外壁と調和した外観を有し、かつ窯業系サイディングボード目地に要求される低モジュラス・高伸長という物性を有するシーリング材組成物とある。特許文献3は、配合時にバルーンが破壊されにくく、軽量で作業性の良好なシーリング材組成物であって、硬化物が低モジュラス、高伸張の物性を有し、表面にざらつき感を有する建築用シーリング材として好適に使用し得るシーリング材組成物とある。特許文献2、特許文献3、何れの組成物を床の下地材や壁の下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工するための変成シリコーン組成物として用いるには、剥離性に改善の余地があった。
【0008】
特許文献4は、略垂直面に塗布しても樹脂組成物が流れ出すことなく、クシ目ゴテを用い薄く引き延ばした後、クシ目ゴテを液の状態の樹脂組成物から離す時に糸引きしないので、周辺を汚染することなく、タイル貼り合わせ後は良好な接着性を示し、且つ硬化物から樹脂組成物未反応成分がブリードアウトしない組成物を得るとあるが、特許文献1、特許文献2、特許文献3同様、剥離性に改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、床の下地材や壁の下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工するための変成シリコーン組成物を得ることであり、その変成シリコーン組成物は、床の下地材と床材、壁の下地材と壁材を貼り合わせた後は通常の生活を送ってもそれらがズレたり剥がれたりすることなく、それらを解体する時は、床材や壁材等の表面材を容易に剥がすことができ、下地材を傷つけて、下地材を取り替える必要がないような変成シリコーン組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
変成シリコーン(A)100質量部に対し、可塑剤(B)を70~150質量部、JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)を50~350質量部、その他フィラー(D)を50~400質量部含有する変成シリコーン組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る変成シリコーン組成物は、床の下地材や壁の下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工するための変成シリコーン組成物を得ることであり、その変成シリコーン組成物は、床の下地材と床材、壁の下地材と壁材を貼り合わせた後は通常の生活を送ってもそれらがズレたり剥がれたりすることなく、それらを解体する時は、床材や壁材等の表面材を容易に剥がすことができ、下地材を傷つけて、下地材を取り替える必要がないような変成シリコーン組成物であるので、人が生活する上で問題なく生活することができ、床材や壁材等の表面材の貼り替えは、容易に行うことができる。
尚、床の下地材や壁の下地材等の下地材には、さまざまな材質が用いられ、床材や壁材等の表面材にもさまざまな材質が用いられるが、本願の変成シリコーン組成物は、何れの組み合わせでも対応可能な変成シリコーン組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
床の下地材や壁の下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工するための変成シリコーン組成物の一例を示す。
【0013】
本願に使用される変成シリコーン(A)は、主骨格にポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の構造をもち、主鎖若しくは側鎖の何れかに、加水分解性シリル基を持つ化合物である。空気中の水分により加水分解性シリル基のアルコキシ基が加水分解し、生成したシラノール基が縮合することによって重合は進行する。
変成シリコーン(A)は市販されており、具体的に製品名を挙げると、カネカ社製、商品名:サイリルEST-250、商品名:サイリルEST-280、商品名:サイリルOR110S、商品名:サイリルMA440、商品名:サイリルMA480、商品名:サイリルMA451、商品名:サイリルMA904、商品名:サイリルMAX602、商品名:サイリルMAX923、商品名:サイリルMAX951、商品名:サイリルS203H、商品名:サイリルS227、商品名:サイリルS303H、商品名:サイリルS327、商品名:サイリルSA100S、商品名:サイリルSA310S、商品名:サイリルSA410S、商品名:サイリルSAT010、製品名:サイリルSAT-200、商品名:サイリルSAT145、商品名:サイリルSAX015、商品名:サイリルSAX260、商品名:サイリルSAX350、商品名:サイリルSAX400が販売され、ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト社から、商品名:STP-E10、商品名:STP-E15、商品名:STP-E30、商品名:STP-E35等が販売されている。
ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト社品は、主骨格と加水分解性シリル基がウレタン結合を介して結ばれているので、シリル化ウレタンと表現される場合がある。尚、これらは併用することができる。
【0014】
可塑剤(B)としては、変成シリコーン組成物中に添加した場合、相溶し、且つ変成シリコーン(A)と反応しない成分ならば、どの様な化合物でも添加することができる。このような化合物としては、ポリエーテルポリオール類、アクリルポリオール類、ポリエステルポリオール類、水酸基含有液状ゴム類を挙げることができる。
【0015】
ポリエーテルポリオール類は市販されており、具体的に製品名を挙げると、AGC社の商品名:EXCENOL420、商品名:EXCENOL720、商品名:EXCENOL1020、商品名:EXCENOL2020、商品名:EXCENOL3020、商品名:EXCENOL430、商品名:EXCENOL1030、商品名:EXCENOL3030、商品名:EXCENOL4030、商品名:EXCENOL5030を挙げることができる。
アクリルポリオール類は市販されており、具体的に製品名を挙げると、東亞合成社の商品名:ARUFON UP-1000、商品名:ARUFON UP-1021、商品名:ARUFON UP-1061、商品名:ARUFON UP-1110、商品名:ARUFON UH-2000、商品名:ARUFON UH-2041、商品名:ARUFON UH-2170、商品名:ARUFON UH-2190を挙げることができる。
可塑剤(B)の添加量としては、変成シリコーン(A)100質量部に対し、70~150質量部、より好適には85~135質量部である。尚、これらは併用することができる。
【0016】
寒水石とは、粒状大理石のことであり、主成分は炭酸カルシウムである。平均粒径は、JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒径にて、好適な平均粒径は0.1~0.6mmである。
平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)として具体的に製品名を挙げると、旭鉱末社製の商品名:白竜砕石一厘を挙げることができる。
平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)の添加量としては、変成シリコーン樹脂(A)100質量部に対し、50~350質量部、より好適には60~340質量部である。尚、各種平均粒径違いの寒水石は、要求性能を満たす範囲で併用することができる。
【0017】
その他フィラー(D)としては、無機材でも有機材でも良く、無機材としては、寒水石ではない炭酸カルシウム、タルク、シリカ、酸化カルシウム、カオリン、焼成カオリン、クレー、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、ゼオライト、ガラスビーズ、シラスバルーン等が挙げられる。
有機材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0018】
炭酸カルシウムの製品名を具体的に挙げると、白石カルシウム社製、製品名:ソフトンSB、製品名:ソフトン2200、製品名:ソフトン3200、製品名:ソフトンSB、白艶華CCR-B、製品名:ホワイトンSB、製品名:ホワイトンSSB等を挙げることができる。タルクの製品名を具体的に挙げると、日本タルク社製の製品名:ミクロエースMS、製品名:ミクロエースMS-P、製品名:ミクロエースP-2、製品名:ミクロエースK-1等を挙げることができる。尚、これらは併用することができる。
尚、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン等の中空フィラーは、それらが組成物中から浮いてきて分離したり、床の下地材と床材、壁の下地材と壁材を貼り合わせた後ズレたり剥がれたりする可能性が有るので、使用しない方が良い。
【0019】
本願の変成シリコーン組成物は、密着性向上の為にシランカップリング剤を添加することが出来る。具体的に製品名を挙げると、信越化学工業社製、製品名:KBM-1003(ビニルトリメトキシシラン)、製品名:KBM-603(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、製品名:KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、製品名:KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、製品名:KBM-903(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)が挙げられる。添加量としては変成シリコーン(A)100質量部に対し、0~15質量部、より好適には1~12質量部である。尚、これらは併用することができる。
【0020】
本願の変成シリコーン組成物は、変成シリコーン(A)の加水分解性シリル基のアルコキシ基の加水分解反応を促進させる為、反応触媒を添加することが出来る。
反応触媒としては、錫系、ビスマス系、アミン系の触媒を用いる事も出来る。
具体的に製品名を挙げると、錫触媒としては、日東化成社製、商品名:ネオスタンU-100、商品名:ネオスタンU-130、商品名:ネオスタンU-200、商品名:ネオスタンU-220H、商品名:ネオスタンU-303等が挙げられる。
ビスマス触媒としては、日東化成社製、商品名:ネオスタンU-600が販売され、松尾産業社からは、商品名:Borchi Kat24、商品名:Borchi Kat315等が販売されている。
アミン系触媒としては、サンアプロ社製、商品名:U-CAT SA-1、U-CAT SA-102、U-CAT SA-106、U-CAT SA-112、U-CAT SA-506等が販売されている。
添加量としては変成シリコーン(A)100質量部に対し、0.01~5質量部、より好適には0.05~3質量部である。尚、これらは併用することができる。
【0021】
本願の変成シリコーン組成物は、酸化防止剤を添加することが出来る。酸化防止剤としては、リン系、ヒドロキノン系、ビス・トリス・ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤等が挙げられる。
添加量としては変成シリコーン(A)100質量部に対し、0~5質量部、より好適には0~3質量部である。尚、これらは併用することができる。
【0022】
尚、床の下地材と床材、壁の下地材と壁材を貼り合わせた後のズレたり剥がれたりしない指標は、後述する平面引張強さにて評価することができる。また、床の下地材と床材、壁の下地材と壁材の剥がし易さの指標は、後述する割裂強さにて評価することができる。
【0023】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例0024】
実施例1の変成シリコーン組成物の作製
井上製作所社製プラネタリーミキサー、商品名:PLM-2の釜の中に、サイリルEST-280を100g、EXCENOL3020を100g、白竜砕石一厘を70g、ホワイトンSBを230g、白艶華CCR-Bを50g、KBM-1003を6g、KBM-603を4g、ネオスタンU-220Hを1.5g、23℃減圧下で攪拌、混合し、実施例1の変成シリコーン組成物の作製を得た。
【0025】
実施例2~10、比較例1~15の変成シリコーン組成物の作製
表1、表2に示した配合割合で、実施例1の変成シリコーン組成物の作製と同様の手順で、実施例2~10、比較例1~15の変成シリコーン組成物を作製した。
尚、白竜砕石二厘は、平均粒径が0.7mmの寒水石、白竜砕石三厘は、平均粒径が1mmの寒水石、セノライトSAは巴工業社の中空フィラーであるフライアッシュバルーン、828は三菱ケミカル社製のビスフェノールA型ジグリシジレートでエポキシ化合物、エポニットK100は、日東化成社のケチミン化合物で、エポキシ硬化剤である。
【0026】
平面引張強さ
JIS K 6849に準拠して試験を行った。70mm×70mm×12mm厚の合板と、40mm×40mm×12mm厚の合板を準備した。
70mm×70mm×12mm厚の合板上に、変成シリコーン組成物を500~600g/m塗布し、JIS A5536(床仕上げ材用接着剤)に準拠し、櫛目コテを用いて変成シリコーン組成物を延ばして、その上に40mm×40mm×12mm厚の合板を載せて、更に1kgのおもりを載せて5秒間圧諦した。おもりを外した後、はみ出した変成シリコーン組成物を取り除き、23℃環境下168時間静置、変成シリコーン組成物を硬化させた。
島津製作所製オートグラフ万能試験機AG-Xplusを用い、引張速度3mm/分にて接着強度を測定した。n=5平均である。結果を表3、表4に示す。
判定基準としては、0.84N/mm以上であれば、通常の生活を送っても床の下地材や壁の下地材等の下地材と床材や壁材等の表面材が、ズレたり剥がれたりすることがないと判断され、合格である。0.84N/mm未満は不合格である。
【0027】
割裂強さ
JIS K 6853に準拠して試験を行った。70mm×40mm×12mm厚の合板と、50mm×25mm×12mm厚の合板、5mm幅で0.3mm厚のスペーサー2枚を準備した。
70mm×40mm×12mm厚の合板の長辺の両端部に、5mm幅で0.3mm厚のスペーサーを配し、接触体積が30mm×25mm×0.3mm厚になるようにした。そこに、変成シリコーン組成物を1.5~2g塗布し、その上に70mm×40mm×12mm厚の合板の長辺の片端辺と、50mm×25mm×12mm厚の合板の短辺の片端辺が揃うように50mm×25mm×12mm厚の合板を載せて、手で5秒間圧諦した。はみ出した変成シリコーン組成物を取り除き、23℃環境下168時間静置、変成シリコーン組成物を硬化させた。
50mm×25mm×12mm厚の合板は、面積が約10mm×25mmもう一枚の合板と重なっていない部分が存在するが、その部分にL字治具を引掛けて、島津製作所製オートグラフ万能試験機AG-Xplusを用い、引張速度50mm/分にて接着強度を測定した。n=5平均である。結果を表3、表4に示す。
判定基準としては、270N/25mm以下であれば、下地材を傷つけることなく床材や壁材等の表面材を容易に剥がすことができると判断され、合格である。270N/25mm超過は不合格である。
【0028】
変成シリコーン(A)100質量部に対し、可塑剤(B)を70~150質量部、JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)を50~350質量部、その他フィラー(D)を50~400質量部含有する変成シリコーン組成物である実施例1~9は、平面引張強さ、割裂強さ共に合格となった。
【0029】
JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)が添加されていない実施例1~4、添加量の少ない実施例5は割裂強さが不合格となり、容易に剥離できないことが分かった。
JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)よりも平均粒子径の大きい寒水石を用いた比較例6、比較例7は、平面引張強さが不合格となり、床の下地材や壁の下地材等の下地材と床材や壁材等の表面材がズレたり剥がれたりするおそれがあることが分かった。
その他フィラー(D)が添加されていない比較例8は、平面引張強さが不合格となった。
【0030】
可塑剤(B)の添加量が少ない比較例9は割裂強さが不合格となり、添加量が多い比較例10、比較例11は平面引張強さが不合格となった。可塑剤(B)の添加量が多く、JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)が添加されないで、その他フィラー(D)が多い比較例12は平面引張強さが不合格となった。
【0031】
変成シリコーン(A)、可塑剤(B)、JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)、その他フィラー(D)のうち、その他フィラー(D)を中空フィラーであるフライアッシュバルーンのセノライトSAを使用した比較例13は、平面引張強さが不合格となった。JIS-Z-8815に基づく乾式ふるい分け試験平均粒子径が0.1~0.6mmの寒水石(C)の代わりに、セノライトSAを使用した比較例14は割裂強さが不合格となった。
ビスフェノールA型ジグリシジレートでエポキシ化合物である828、その硬化剤であるケチミン化合物のエポニットK100を使用した比較例15は割裂強さが不合格となった。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】