(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156585
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ダクト装置及びダクトの接続具
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20231018BHJP
F16L 21/035 20060101ALI20231018BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20231018BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20231018BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F16L21/035
F16J15/06 G
F16J15/10 L
F16B7/20 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066019
(22)【出願日】2022-04-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】522150698
【氏名又は名称】池田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】池田 純一
【テーマコード(参考)】
3J039
3J040
3L080
【Fターム(参考)】
3J039AA03
3J039BB01
3J040AA02
3J040EA22
3J040FA06
3J040HA03
3L080AB02
3L080AB04
3L080AD02
(57)【要約】
【課題】空調・換気用のダクト等、天井のような頭上に配置されるダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能にする。
【解決手段】ダクト装置1は、筒状に形成された第1ダクト10と、第1ダクト10の先端部に取り付けられ、第1ダクト10の内部に、筒状に形成された第2ダクトを挿入したときに第1ダクト10の内面と第2ダクトの外面との間で圧縮される接続具30と、を備える。接続具30は、棒状の本体部31と、本体部31に形成され、長手方向に沿って延びかつ第1ダクト10の先端部に嵌合する溝部33と、を含んで構成され、本体部31を湾曲させながら溝部33が第1ダクト10の先端部に嵌合されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された第1ダクトと、
前記第1ダクトの開口端部に取り付けられ、前記第1ダクトの内部に、筒状に形成された第2ダクトを挿入したときに前記第1ダクトの内面と前記第2ダクトの外面との間で圧縮される可撓性部材と、を備え、
前記可撓性部材は、棒状の本体と、当該本体に形成され、長手方向に沿って延びかつ前記第1ダクトの開口端部に嵌合する溝部と、を含んで構成され、前記本体を湾曲させながら前記溝部が前記第1ダクトの開口端部に嵌合されている、ダクト装置。
【請求項2】
前記可撓性部材は、前記第1ダクトに前記第2ダクトを挿入したときに前記第2ダクトの開口端部が当接しかつ前記第1ダクトの開口の大きさを前記第2ダクトの挿入方向に向かって小さくする傾斜面を有する、請求項1に記載のダクト装置。
【請求項3】
前記第2ダクトは、側面から外側に突出する環状の突条を有し、当該突条は、前記第1ダクトに挿入された場合に、前記第1ダクトの開口端に当接可能な部位に形成され、前記第2ダクトの挿入を規制可能である、請求項1又は2に記載のダクト装置。
【請求項4】
前記第2ダクトは、突部をさらに含んで構成され、
前記突部は、前記第2ダクトにおいて前記第1ダクトに挿入される側の開口端部に形成され、前記第2ダクトが前記第1ダクトに挿入された場合に前記可撓性部材を乗り越えて前記可撓性部材よりも奥に位置付けられる、請求項1又は2に記載のダクト装置。
【請求項5】
筒状に形成されたダクトに取り付けられ、前記ダクトの内部に他のダクトが挿入されたときに、前記ダクトの内面と前記他のダクトの外面との間で圧縮される可撓性部材からなる接続具であって、
棒状の本体と、
当該本体に形成され、長手方向に沿って延びかつ前記ダクトの開口端部に嵌合する溝部と、
前記本体における前記溝部が形成された面の側方に位置しかつ長手方向に沿って延びる側面から膨出する膨出部と、を含んで構成され、
前記膨出部は、前記溝部を前記ダクトの開口端部に嵌合させて、前記本体を前記ダクトに取り付けた場合に、前記ダクトの内側に環状に配置され、
前記膨出部の外面は、前記ダクトの開口端部から奥側に向かって前記ダクトの開口が小さくなるように傾斜する、接続具。
【請求項6】
前記膨出部が中空である、請求項5に記載の接続具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト装置及びダクトの接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムや換気システム等において、ダクトが広く利用される。従来におけるこの種の技術としては、特許文献1に記載された技術がある。特許文献1によれば、端部に継手部を有する角ダクトAの接続構造であり、継手部は、各壁板の端部に設けられた接続部から構成され、接続部は、壁板の端部が壁板の板面と略平行に3つ折りされて、壁板側から順に下位接続部、中位接続部、上位接続部が設けられ、上位接続部の自由端が下位接続部と中位接続部との折り曲げ部よりも突出している。例えば、角ダクトAの接続部の上位接続部を角ダクトBの接続部の上位接続部と中位接続部の間に嵌入させるだけで、角ダクトAと角ダクトBとが接続される。このため、角ダクトAと角ダクトBを容易かつ短時間で接続することが可能となり、また、狭い場所や高い場所などでも、作業者に大きな負担を与えることなく適正に(接続箇所の漏れが接続不良などなく)接続することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空調・換気用のダクトは、通常、複数のダクトを接続することによって、空気の通り道として使用される。ここで、空調・換気用のダクトは、天井のような頭上に配置されることが多い。このため、空調・換気用のダクトの接続作業は作業者にとって負担の大きい作業となる。また、空調・換気用のダクトによっては、連結したダクトが外れないように、ビス止めを行うものもある。このビス止めに係る作業もビス穴の位置合わせを行ってビス止めを行う、といった作業を高い位置で行うことになるため、作業者にとって負担の大きい作業となる。
【0005】
本発明は、上述のような問題点に対して鑑みなされたものであって、空調・換気用のダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能なダクト及び接続具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備える。
【0007】
(1) 筒状に形成された第1ダクト(例えば、第1ダクト10)と、
前記第1ダクトの開口端部に取り付けられ、前記第1ダクトの内部に、筒状に形成された第2ダクト(例えば、第2ダクト20)を挿入したときに前記第1ダクトの内面と前記第2ダクトの外面との間で圧縮される可撓性部材(例えば、接続具30)と、を備え、
前記可撓性部材は、棒状の本体(例えば、本体部31)と、当該本体に形成され、長手方向に沿って延びかつ前記第1ダクトの開口端部に嵌合する溝部(例えば、溝部33)と、を含んで構成され、前記本体を湾曲させながら前記溝部が前記第1ダクトの開口端部に嵌合されている、ダクト装置。
【0008】
(1)のダクト装置によれば、第1ダクトに第2ダクトを挿入したときに、第1ダクトの内面と第2ダクトの外面との間で可撓性部材が圧縮され、第2ダクトの外面を押す方向に可撓性部材からの弾性力が働くため、可撓性部材を介して第1ダクトに第2ダクトが支持されるようになる。しかも、第1ダクトの内面と第2ダクトの外面との間が可撓性部材によって密閉されるため、内部の空気が外部に漏れないように第1ダクトと第2ダクトとが接続される。また、可撓性部材の片方の端部の溝部を第1ダクトの開口端部に嵌合させ、可撓性部材を湾曲させながら可撓性部材の端部の溝部を第1ダクトの開口端部に嵌合させて行くことにより、第1ダクトの先端部に可撓性部材を容易に取り付けることが可能になる。このように、ダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能なダクト装置を提供することが可能になる。
【0009】
(2) (1)において、前記可撓性部材は、前記第1ダクトに前記第2ダクトを挿入したときに前記第2ダクトの開口端部が当接しかつ前記第1ダクトの開口の大きさを前記第2ダクトの挿入方向に向かって小さくする傾斜面(例えば、傾斜面32a)を有する、ダクト装置。
【0010】
(2)のダクト装置によれば、可撓性部材が第1ダクトの端部に取り付けられることによって、第1ダクトの開口が可撓性部材の傾斜面によって第2ダクトの挿入方向に向かって小さくなっているため、第2ダクトを第1ダクトに挿入する際に、まず、第2ダクトの先端に可撓性部材の傾斜面に当接する。このまま、第2ダクトを押し込んで第1ダクトの奥側に挿入した場合に、可撓性部材における第2ダクトとの当接部位が弾性変形して、第2ダクトと可撓性部材との接触面積が徐々に大きくなる。これにより、第2ダクトを押し込む当初において第2ダクトが可撓性部材から受ける反発力を小さくすることができるため、第1ダクトに対する第2ダクトの挿入が容易になる。このように、空調・換気用のダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能なダクト装置を提供することが可能になる。
【0011】
(3) (1)又は(2)において、前記第2ダクトは、側面から外側に突出する環状の突条(例えば、突条22)を有し、当該突条は、前記第1ダクトに挿入された場合に、前記第1ダクトの開口端に当接可能な部位に形成され、前記第2ダクトの挿入を規制可能である、ダクト装置。
【0012】
(3)のダクト装置によれば、第2ダクトは、側面から外側に突出する環状の突条を有するため、第2ダクトの剛性が向上し、変形しにくくなる。また、突条は、第1ダクトに挿入された場合に、第1ダクトの開口端に当接可能な部位に形成され第2ダクトの挿入を規制するため、第2ダクトが必要以上に第1ダクトの内部に入り込むことを防止することができる。
【0013】
(4) (1)~(3)のいずれか1つのダクト装置において、前記第2ダクトは、突部(例えば、突部24、折り曲げ部25)をさらに含んで構成され、前記突部は、前記第2ダクトにおいて前記第1ダクトに挿入される側の開口端部に形成され、前記第2ダクトが前記第1ダクトに挿入された場合に前記可撓性部材を乗り越えて前記可撓性部材よりも奥に位置付けられる、ダクト装置。
【0014】
(4)のダクト装置によれば、第2ダクトが第1ダクトに挿入された場合に、第2ダクトの開口端部に形成された突部を、可撓性部材を乗り越えて可撓性部材よりも奥に位置付けることが可能になる。このため、第2ダクトが第1ダクトから引き抜かれる方向に移動した場合に、突部が可撓性部材に係止して、それ以上の第2ダクトの移動が規制される。これにより、第2ダクトが第1ダクトから外れ難くなる。
【0015】
(5) 筒状に形成されたダクト(例えば、第1ダクト10)に取り付けられ、前記ダクトの内部に他のダクト(例えば、第2ダクト20)が挿入されたときに、前記ダクトの内面と前記他のダクトの外面との間で圧縮される(1)~(4)のいずれか1つのダクト装置に係る可撓性部材からなる接続具(例えば、接続具30)であって、
棒状の本体(例えば、本体部31)と、
当該本体に形成され、長手方向に沿って延びかつ前記ダクトの開口端部に嵌合する溝部(例えば、溝部33)と、
前記本体における前記溝部が形成された面の側方に位置しかつ長手方向に沿って延びる側面から膨出する膨出部(例えば、膨出部32)と、を含んで構成され、
前記膨出部は、前記溝部を前記ダクトの開口端部に嵌合させて、前記本体を前記ダクトに取り付けた場合に、前記ダクトの内側に環状に配置され、
前記膨出部の外面(例えば、傾斜面32a)は、前記ダクトの開口端部から奥側に向かって前記ダクトの開口が小さくなるように傾斜する、接続具。
【0016】
(5)の接続具によれば、接続具がダクトの開口端部に取り付けられることによって、ダクトの開口が接続具の膨出部の傾斜によって奥側に向かって小さくなる。このため、ダクトに他のダクトを挿入する際に、まず、他のダクトの先端に接続具の膨出部の傾斜に当接する。このまま、他のダクトを押し込んでダクトの奥側に挿入した場合に、膨出部における他のダクトとの当接部位が弾性変形して他のダクトと膨出部との接触面積が徐々に大きくなる。これにより、ダクトを押し込む当初において他のダクトが可撓性部材から受ける反発力を小さくすることができるため、ダクトに対する他のダクトの挿入が容易になる。そして、ダクトに他のダクトを挿入したときに、ダクトの内面と他のダクトの外面との間で圧縮されるため、接続具を介してダクトに他のダクトが支持されるようになる。しかも、ダクトの内面と他のダクトの外面との間が接続具によって密閉されるため、ダクト内の空気が外部に漏れないようにダクトと他のダクトとが接続される。このように、ダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能な接続具を提供することが可能になる。
【0017】
(6) (5)において、前記膨出部が中空である、接続具。
【0018】
(6)の接続具によれば、膨出部が中空であるため変形し易くなり、一のダクトに対する他のダクトの挿入が容易になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能なダクト装置及びダクトの接続具を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態におけるダクト装置1の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるダクト装置1に第2ダクト20を挿入した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る接続具30の外観を示す斜視図である。
【
図4】第1ダクト10に対して接続具30を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図5】第1ダクト10に対して接続具30を取り付けた状態を示す平面図である。
【
図6】接続具30を取り付けた第1ダクト10に対して第2ダクト20を挿入した状態を示す断面図である。
【
図7】接続具30を取り付けた第1ダクト10に対して第2ダクト20を挿入した状態を示す平面図である。
【
図8】第2ダクト20の変形例を示す断面図である。
【
図9】第2ダクト20の別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態におけるダクト装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態におけるダクト装置1に第2ダクト20を挿入した状態を示す斜視図である。ダクト装置1の用途は特に限定されるものではないが、天井のような頭上に配置されるダクト装置であることが好ましく、例えば、空気・換気用ダクト装置等が挙げられる。
【0023】
図1に示すように、ダクト装置1は、第1ダクト10と、接続具30と、を備えている。ダクト装置1は、
図2に示すように、内部に第2ダクト20を挿入可能であり、かつ第2ダクト20を支持することが可能である。
【0024】
第1ダクト10及び第2ダクト20は、金属製の円筒部材からなり、第1ダクト10の直径が、第2ダクト20の直径よりも若干大きく設定されている。このため、第1ダクト10の内部に第2ダクト20を挿入することが可能である。
【0025】
第1ダクト10の側面には、環状の突条12が圧縮加工により形成されている。本実施形態においては、第1ダクト10の側面における中央の部位、言い換えると半分の高さの部位に突条12が形成されている。この環状の突条12によって第1ダクト10の強度が向上し、変形しにくくなる。
【0026】
第2ダクト20の側面にも、環状の突条22が圧縮加工により形成されている。本実施形態においては、第2ダクト20の開口端から第1ダクト10の高さに相当する部位までの範囲に形成されている。なお、以下の説明において、第1ダクト10及び第2ダクト20における一方の開口端を先端、他方の開口端を後端と称することにする。また、第2ダクト20における突条22の部位の直径は、第1ダクト10の直径よりも大きく設定されている。このため、第1ダクト10の内部に第2ダクト20が挿入された場合に、第1ダクト10の先端が突条22に当接するようになり、それ以上の第2ダクト20の挿入が規制される。
【0027】
接続具30は、第1ダクト10の先端部に取り付けられる。接続具30は、樹脂によって構成されており、可撓性及び弾力性を備えている。例えば、接続具30は、ゴム部材あるいはスポンジ部材によって構成される。より具体的には、接続具30の素材として、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂混合物質、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を主成分とする組成物等が適用可能である。
【0028】
図3は本発明の一実施形態に係る接続具30の外観を示す斜視図である。
【0029】
接続具30は、長尺の棒状に形成された本体部31と、本体部31から側方に膨出する膨出部32と、を備えている。
【0030】
本体部31は、正面視略U字形に形成されており、溝部33を備えている。溝部33は、本体部31におけるU字形の内部の底面及びこの底面の幅方向に対向する両側面によって形成されており、長尺方向に延びている。溝部33における両側面にはリブ34が複数立設されている。
【0031】
リブ34は板状に形成されており、
図3に示すようにリブ34は底面側に向かって斜めに傾斜している。また、
図3に示すように本体部31を正面視した場合に、溝部33における一方の側面の複数のリブ34と、他方の側面の複数のリブ34とは、交互に配置されている。本体部31は、長手方向の両端部を近づけるように加圧することにより、側面を弧状に湾曲させることが可能な可撓性を備えている。
【0032】
膨出部32は、
図3に示すように本体部31における溝部33の一方の側面の反対面から膨出している。膨出部32は、本体部31におけるU字の曲げ部付近から、U字の先端側に傾斜する傾斜面32aを備えている。また、膨出部32は、傾斜面32aに沿って延びるリブ35を備えている。膨出部32は、中空であり、
図3に示すように正面視薄肉に形成されている。このため、膨出部32は容易に弾性変形可能である。
【0033】
次に、第1ダクト10に対する接続具30の取り付けについて説明する。
【0034】
まず、接続具30の長さが第1ダクト10の円周の長さになるように予め調整しておく。次に、接続具30の膨出部32が第1ダクト10の内側に向くように接続具30の一端部の溝部33を第1ダクト10の先端部に対向させてから、接続具30の一端部を押し込む。これにより、接続具30の一端部が第1ダクト10の先端部に嵌合する。以下、接続具30における第1ダクト10の先端部に嵌合した部分の近傍を押し込んで行くことにより、接続具30が湾曲しながら溝部33が第1ダクト10の先端部に嵌合する。そして、接続具30の他端部を第1ダクト10の先端部に嵌合させることで、接続具30の一端面と他端面とが当接して、接続具30が環状になる。これにより、第1ダクト10に対する接続具30の取り付けが終了する。
【0035】
なお、接続具30の取り付け後に、接続具30の溝部33に樹脂製のシール剤を注入して、第1ダクト10と接続具30との間の隙間を封止してもよい。これにより、第1ダクト10に対して接続具30が強固に固定される。また、第1ダクト10に対して接続具30を取り付けたときに、接続具30の一端面と他端面とが離間している場合には、作業員が接続具30の一端面と他端面との間にシール剤を注入してもよい。
【0036】
図4は、第1ダクト10に対して接続具30を取り付けた状態を示す断面図である。
図5は、第1ダクト10に対して接続具30を取り付けた状態を示す平面図である。
第1ダクト10に対して接続具30が取り付けられた場合、接続具30の内部においてリブ34の先端部が第1ダクト10の内面に当接している。このため、第1ダクト10から接続具30を取り外そうとした場合に、リブ34による反発力が接続具30に加わるようになり、接続具30が容易に外れ難くなる。また、傾斜面32aは、第1ダクト10の先端部から奥側に向かって傾斜角が徐々に大きくなっており、第1ダクト10の開口が奥側に向かって漸次小さくなる。
【0037】
次に、第1ダクト10と第2ダクト20との接続作業について説明する。
【0038】
第1ダクト10と第2ダクト20との接続作業は、接続具30が取り付けられた第1ダクト10の開口に第2ダクト20を挿入することによって完了する。
【0039】
接続具30が取り付けられた第1ダクト10の開口に第2ダクト20を挿入すると、第2ダクト20の先端が膨出部32の傾斜面32aに当接する。この状態で第2ダクト20が更に押し込まれると、膨出部32が弾性変形して第1ダクト10と第2ダクト20との間に入り込む。
【0040】
図6は、接続具30を取り付けた第1ダクト10に対して第2ダクト20を挿入した状態を示す断面図である。
図7は、接続具30を取り付けた第1ダクト10に対して第2ダクト20を挿入した状態を示す平面図である。
【0041】
膨出部32が弾性変形して第1ダクト10と第2ダクト20との間に入り込むことにより、第1ダクト10と第2ダクト20との間が膨出部32によって密閉され、第1ダクト10と第2ダクト20とが接続される。このとき、膨出部32が第1ダクト10と第2ダクト20との間で圧縮された状態にある。このため、第2ダクト20の外面を押す方向に接続具30の弾性力が働くようになり、接続具30を介して第1ダクト10に第2ダクト20が支持される。これにより、第2ダクト20が第1ダクト10から容易に外れ難くなり、従来方法にあるようなビスの固定を行うことなく第1ダクト10と第2ダクト20とを接続できる。なお、第1ダクト10と第2ダクト20とを接続し、ダクト内部に煙を流し、接続部分から煙が漏れないか目視したところ、煙の漏れは認められなかった。
【0042】
また、第1ダクト10から第2ダクト20を引き出そうとした場合に、リブ35が第1ダクト10と第2ダクト20との間に入り込もうとする。このため、第2ダクト20に係る外側からの圧力が大きくなり、接続具30と第2ダクト20との摩擦力が大きくなる。これにより、第2ダクト20が第1ダクト10から更に容易に外れ難くなる。少なくとも、人が引っ張る程度の力によって第2ダクト20が第1ダクト10から外れることはなかった。
【0043】
以上、説明したように構成された本発明の実施形態によれば、接続具30の端部の溝部33を第1ダクト10の先端部の一部に嵌合させ、本体部31を湾曲させながら接続具30の溝部33を第1ダクト10の先端部に嵌合させて行くことにより、第1ダクト10の先端部に接続具30を容易に取り付けることが可能になる。
【0044】
また、接続具30が第1ダクト10の先端部に取り付けられることにより、接続具30の傾斜面32aによって第1ダクト10の開口が第2ダクト20の挿入方向に向かって小さくなる。このため、第2ダクト20を第1ダクト10に挿入する際に、まず、第2ダクト20の先端に接続具30の傾斜面32aに当接する。この後、第2ダクト20を押し込んで第1ダクト10の奥側に挿入した場合に、接続具30における第2ダクトとの当接部位、特に膨出部32が弾性変形して、第2ダクト20と膨出部32との接触面積が徐々に大きくなる。これにより、第2ダクト20を押し込む当初において第2ダクト20が接続具30から受ける反発力を小さくすることができるため、第1ダクト10に対する第2ダクト20の挿入が容易になる。そして、第1ダクト10に第2ダクト20を挿入したときに、第1ダクト10の内面と第2ダクト20の外面との間で膨出部32が圧縮され、第2ダクト20の外面を押す方向に膨出部32からの弾性力が働くようになる。このため、接続具30を介して第1ダクト10に第2ダクト20が支持されるようになる。しかも、第1ダクト10の内面と第2ダクト20の外面との間が接続具30によって密閉されるため、ダクト内の空気が外部に漏れないように第1ダクト10と第2ダクト20とが接続される。このように、空調・換気用のダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能な空調・換気用ダクト装置1を提供することが可能になる。
【0045】
また、本実施形態によれば、第2ダクト20は、側面から外側に突出する環状の突条22を有するため、第2ダクト20の剛性が向上し、変形しにくくなる。また、突条22は、第1ダクト10に挿入された場合に、第1ダクト10の先端部に取り付けられた接続具30に当接可能な部位に形成されており、第2ダクト20の挿入を規制する。このため、第2ダクト20が必要以上に第1ダクト10の内部に入り込むことを防止することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、接続具30の膨出部32が中空であるため変形し易くなり、第1ダクト10に対する第2ダクトの挿入が容易になる。
【0047】
また、本実施形態によれば、第2ダクト20の先端部に形成された突部が、第1ダクトに挿入された場合に接続具30を乗り越えて接続具30よりも奥に位置付けられる。このため、第2ダクト20が第1ダクト10から引き抜かれる方向に移動した場合に、突部24が接続具30に係止して、それ以上の第2ダクト20の移動が規制される。これにより、第2ダクト20が第1ダクト10から外れ難くなる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限るものではない。例えば、
図8に示すように、第2ダクト20の先端部に外側に突出する突部24を形成してもよい。突部24は、例えば、プレス加工によって複数形成される。
図8に示す例においては、8カ所に突部24が形成されており、隣り合う突部24、24が円の中心に対して45°の位置に配置されている。突部24は、第2ダクト20の先端部に円周方向に沿った切れ目を入れ、この切れ目に対して第2ダクト20の先端側の近傍を外側に膨出させることによって形成されており、第2ダクト20の側面から切れ目に向かって上り傾斜する傾斜面を備えている。
【0049】
このように構成された第2ダクト20が第1ダクト10に挿入された場合に、突部24の傾斜面が膨出部32の外面に当接し、突部24が膨出部32を乗り越えて膨出部32よりも奥に位置付けられる。このため、第2ダクト20が第1ダクト10から引き抜かれる方向に移動した場合に、突部24が膨出部32に係止して、それ以上の第2ダクト20の移動が規制される。これにより、第2ダクトが第1ダクトから外れ難くなる。
【0050】
なお、突部24の代わりに、
図9に示すように、第2ダクト20の先端部に外側にJ字形に折り返される折り曲げ部25を形成してもよい。折り曲げ部25は、第2ダクト20の先端の一部を中心軸方向に延出させ、この延出部分の根本付近をJ字形に折り返すことによって形成される。
図9に示す例においては、4カ所に折り曲げ部25が形成されており、隣り合う折り曲げ部25、25が円の中心に対して90°の位置に配置されている。
【0051】
このように構成された第2ダクト20が第1ダクト10に挿入された場合に、折り曲げ部25が膨出部32を乗り越えて膨出部32よりも奥に位置付けられる。このとき、弾性変形していた折り曲げ部25が元に戻り、折り曲げ部25の先端が膨出部32に対向する。このため、第2ダクト20が第1ダクト10から引き抜かれる方向に移動した場合に、折り曲げ部25の先端が膨出部32に係止して、それ以上の第2ダクト20の移動が規制される。これにより、第2ダクトが第1ダクトから外れ難くなる。なお、突部24や折り曲げ部25、25の形状は、上述したものに限るものではなく、要は、第2ダクト20の挿入時に膨出部32を乗り越え易く、膨出部32を乗り越えた後に第2ダクト20を抜き出そうとした場合に膨出部32に係合可能な形状であれば適用可能である。
【0052】
また、
図2に示す第1ダクト10及び第2ダクト20は円筒形であるが、四角筒であってもよい。また、第1ダクト10及び第2ダクト20の形状についても、L字に屈曲したエルボ形であってもT字形の分岐管であってもよい。また、一端側の直径と他端側とが異なっており、第1ダクト10及び第2ダクト20の両方の機能を備えたダクトであってもよい。要は、内部に他のダクトを挿入する筒部を有するダクトであれば、第1ダクト10となり、他のダクトの内部に挿入される筒部を有するダクトであれば、第2ダクト20となり得る。また、第1ダクト10及び第2ダクト20の長さについても適宜設定可能である。
【0053】
また、第2ダクト20の側面の所定部位に、第1ダクト10に挿入する長さの目安となる紐状部材を巻き付けてもよい。これにより、作業員が、第1ダクト10に対して第2ダクト20をどの程度挿入すればよいかについて容易に把握することができる。また、紐状部材に突条22の機能を持たせることが可能になる。
【0054】
また、
図1に示す空調・換気用ダクト装置1によれば、第1ダクト10の先端部に接続具30が取り付けてられているが、第1ダクト10の先端部と後端部にそれぞれ接続具30が取り付けてられてもよい。これにより、第1ダクト10と第2ダクト20と交互に接続して長尺のダクトを形成することが可能になる。
【0055】
なお、前述の実施の形態及び各変形例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0056】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0057】
<ダクト装置1の構築>
本実施形態に記載のダクト装置1、すなわち
図1~
図7に示される仕様のダクト装置1を構築した。
【0058】
<評価>
〔接続強度の確認〕
第1ダクト10の位置を固定し、成人男性が第2ダクト20を引っ張った。その結果、成人男性が引っ張る程度の力によって第2ダクト20が第1ダクト10から外れることはなかった。
【0059】
〔煙の漏れの確認〕
第1ダクト10と第2ダクト20とを接続し、ダクト内部に煙を流し、接続部分から煙が漏れないか目視した。その結果、煙の漏れは認められなかった。
前記第2ダクトは、側面から外側に突出する環状の突条を有し、当該突条は、前記第1ダクトに挿入された場合に、前記第1ダクトの開口端に当接可能な部位に形成され、前記第2ダクトの挿入を規制可能である、請求項1又は2に記載のダクト装置。
筒状に形成されたダクトに取り付けられ、前記ダクトの内部に他のダクトが挿入されたときに、前記ダクトの内面と前記他のダクトの外面との間で圧縮される可撓性部材からなる接続具であって、
棒状の本体と、
当該本体に形成され、長手方向に沿って延びかつ前記ダクトの開口端部に嵌合する溝部と、
前記本体における前記溝部が形成された面の側方に位置しかつ長手方向に沿って延びる側面から膨出する膨出部と、
当該膨出部から延びるリブ部と、を含んで構成され、
前記膨出部は、前記溝部を前記ダクトの開口端部に嵌合させて、前記本体を前記ダクトに取り付けた場合に、前記ダクトの内側に環状に配置され、
前記膨出部の外面は、前記ダクトの開口端部から奥側に向かって前記ダクトの開口が小さくなるように傾斜し、
前記リブ部は、前記膨出部の外面における傾斜に沿って延びる、接続具。
(1)のダクト装置によれば、第1ダクトに第2ダクトを挿入したときに、第1ダクトの内面と第2ダクトの外面との間で可撓性部材が圧縮され、第2ダクトの外面を押す方向に可撓性部材からの弾性力が働くため、可撓性部材を介して第1ダクトに第2ダクトが支持されるようになる。しかも、第1ダクトの内面と第2ダクトの外面との間が可撓性部材によって密閉されるため、内部の空気が外部に漏れないように第1ダクトと第2ダクトとが接続される。また、可撓性部材の片方の端部の溝部を第1ダクトの開口端部に嵌合させ、可撓性部材を湾曲させながら可撓性部材の端部の溝部を第1ダクトの開口端部に嵌合させて行くことにより、第1ダクトの先端部に可撓性部材を容易に取り付けることが可能になる。このように、ダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能なダクト装置を提供することが可能になる。
また、可撓性部材が第1ダクトの端部に取り付けられることによって、第1ダクトの開口が可撓性部材の傾斜面によって第2ダクトの挿入方向に向かって小さくなっているため、第2ダクトを第1ダクトに挿入する際に、まず、第2ダクトの先端に可撓性部材の傾斜面に当接する。このまま、第2ダクトを押し込んで第1ダクトの奥側に挿入した場合に、可撓性部材における第2ダクトとの当接部位が弾性変形して、第2ダクトと可撓性部材との接触面積が徐々に大きくなる。これにより、第2ダクトを押し込む当初において第2ダクトが可撓性部材から受ける反発力を小さくすることができるため、第1ダクトに対する第2ダクトの挿入が容易になる。このように、空調・換気用のダクトの接続作業に係る作業者の負担を軽減可能なダクト装置を提供することが可能になる。
(5) 筒状に形成されたダクト(例えば、第1ダクト10)に取り付けられ、前記ダクトの内部に他のダクト(例えば、第2ダクト20)が挿入されたときに、前記ダクトの内面と前記他のダクトの外面との間で圧縮される(1)~(4)のいずれか1つのダクト装置に係る可撓性部材からなる接続具(例えば、接続具30)であって、
棒状の本体(例えば、本体部31)と、
当該本体に形成され、長手方向に沿って延びかつ前記ダクトの開口端部に嵌合する溝部
(例えば、溝部33)と、
前記本体における前記溝部が形成された面の側方に位置しかつ長手方向に沿って延びる
側面から膨出する膨出部(例えば、膨出部32)と、
当該膨出部から延びるリブ部(例えば、リブ35)と、を含んで構成され、
前記膨出部は、前記溝部を前記ダクトの開口端部に嵌合させて、前記本体を前記ダクトに取り付けた場合に、前記ダクトの内側に環状に配置され、
前記膨出部の外面(例えば、傾斜面32a)は、前記ダクトの開口端部から奥側に向かって前記ダクトの開口が小さくなるように傾斜し、
前記リブ部は、前記膨出部の外面における傾斜に沿って延びる、接続具。