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特開2023-156591電気転てつ機状態監視装置および電気転てつ機状態監視方法、並びに、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156591
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】電気転てつ機状態監視装置および電気転てつ機状態監視方法、並びに、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/06 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
B61L5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066047
(22)【出願日】2022-04-13
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】潮見 俊輔
(57)【要約】
【課題】耐久性に問題が発生せず、ノイズ対策等を必要としない手法を用いて、クラッチが滑っている状態においても、クラッチ回転軸の出力トルクや転換負荷を高い精度で推定して、電気転てつ機の状態を監視する。
【解決手段】電気転てつ機のモータの電流値および電圧値、並びに、電気転てつ機のクラッチの出力軸の回転速度を取得して、モータの推定最大トルク、および、モータとクラッチの回転速度比を算出し、モータとクラッチの回転速度比とモータと、クラッチのトルク比との相関関係に基づいて、クラッチの出力軸のトルクの推定値を算出するクラッチ出力軸トルク推定処理部41を有する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気転てつ機の転換負荷の推定を行う電気転てつ機状態監視装置であって、
前記電気転てつ機のモータの電流値および電圧値、並びに、前記電気転てつ機のクラッチの出力軸の回転速度を取得して、前記モータの推定最大トルク、および、前記モータと前記クラッチの回転速度比を算出し、前記モータと前記クラッチの前記回転速度比と前記モータと前記クラッチのトルク比との相関関係に基づいて、前記クラッチの出力軸のトルクの推定値を算出するクラッチ出力軸トルク推定処理部
を有することを特徴とする電気転てつ機状態監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気転てつ機状態監視装置であって、
前記クラッチ出力軸トルク推定処理部は、前記モータの前記電圧値、および、前記クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、前記モータの推定最大トルクを算出するモータ推定最大トルク算出部を有する
ことを特徴とする電気転てつ機状態監視装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の電気転てつ機状態監視装置であって、
前記クラッチ出力軸トルク推定処理部は、
前記モータの前記電流値および前記電圧値を、前記モータの回転速度に換算するモータ回転速度換算部と、
前記モータ回転速度換算部により得られた前記モータの回転速度と、前記クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、前記回転速度比を算出する回転速度比算出部と
を有することを特徴とする電気転てつ機状態監視装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の電気転てつ機状態監視装置であって、
前記クラッチ出力軸トルク推定処理部により算出された前記クラッチの出力軸のトルクの推定値、動力伝達機構の減速比、および、回転運動から直動運動に変換する動力伝達比に基づいて、前記電気転てつ機の前記転換負荷を算出する転換負荷推定処理部
をさらに有することを特徴とする電気転てつ機状態監視装置。
【請求項5】
電気転てつ機の転換負荷の推定を行う電気転てつ機状態監視装置の電気転てつ機状態監視方法であって、
前記電気転てつ機のモータの電流値および電圧値、並びに、前記電気転てつ機のクラッチの出力軸の回転速度を取得する取得ステップと、
前記取得ステップの処理により取得された前記モータの前記電圧値、並びに、前記クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、前記モータの推定最大トルクを算出する第1の算出ステップと、
前記取得ステップの処理により取得された前記モータの前記電流値および前記電圧値、並びに、前記クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、前記モータと前記クラッチの回転速度比を算出する第2の算出ステップと、
第1の算出ステップの処理により算出された前記モータの推定最大トルク値、前記第2の算出ステップの処理により算出された前記回転速度比、および、前記回転速度比と前記モータと前記クラッチのトルク比との相関関係に基づいて、前記クラッチの出力軸のトルクの推定値を算出する第3の算出ステップと
を含むことを特徴とする電気転てつ機状態監視方法。
【請求項6】
電気転てつ機の状態を監視するコンピュータが実行するプログラムであって、
前記電気転てつ機のモータの電流値および電圧値、並びに、前記電気転てつ機のクラッチの出力軸の回転速度を取得する取得ステップと、
前記取得ステップの処理により取得された前記モータの前記電圧値、並びに、前記クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、前記モータの推定最大トルクを算出する第1の算出ステップと、
前記取得ステップの処理により取得された前記モータの前記電流値および前記電圧値、並びに、前記クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、前記モータと前記クラッチの回転速度比を算出する第2の算出ステップと、
第1の算出ステップの処理により算出された前記モータの推定最大トルク、前記第2の算出ステップの処理により算出された前記回転速度比、および、前記回転速度比と前記モータと前記クラッチのトルク比との相関関係に基づいて、前記クラッチの出力軸のトルクの推定値を算出する第3の算出ステップと
を含むことを特徴とするプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気転てつ機状態監視装置および電気転てつ機状態監視方法、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の分岐器の可動部を転換・鎖錠する電気転てつ機において、トングレール等の分岐器可動部を駆動させる際に作用する転換負荷が、電気転てつ機自身の転換力を超過してしまった場合、分岐器の転換動作が停止してしまう。これよる列車運行の阻害が発生する以前に、その予兆を検出するために、電気転てつ機の状態を監視するための装置が広く用いられている。
【0003】
従来、電気転てつ機を駆動するモータの電流や電圧を計測し、モータの電流や電圧とモータのトルクとの関係に基づいて、転換負荷の変化に伴うモータトルクや電流の変化を検出または推定することにより、転換負荷を検出したり、転換負荷の増加の予兆を検出する技術がある。この技術には、例えば、モータの電流等からモータに作用する転換負荷の推定値を算出する手法(例えば、特許文献1および特許文献2)がある。
【0004】
転換負荷を測定する方法としては、この他にも、ジョーピン形軸力計を用いる方法(例えば、非特許文献1)、トングレール転換時前後のトングレールの静的状態と、トングレール転換作動時のトングレールの動的挙動を、電動アクチュエータとトングレールを連結する力伝達要素に加わる力の大きさにより観測する方法(例えば、特許文献3)、ひずみゲージを外部に取り付ける方法(例えば、非特許文献2)がある。これらの方法は、転換負荷に対して線形的に変化する部材のひずみを利用した測定方法であり、動作かんや、動作かんと分岐器を結ぶスイッチアジャスタ等、電気転てつ機の内部の動作状態に影響を受けにくい箇所で測定される。
【0005】
また、電気転てつ機のモータの出力軸の回転速度と電圧を計測し、誘導電動機のトルクの等価回路式に計測結果を代入するか、または、ルックアップテーブルを用いて、回転速度からトルクを算出する技術(例えば、特許文献4)がある。また、電気転てつ機の手動転換を行うハンドルの回転トルクと回転数を計測し、これらから、ハンドルの回転に伴うトルクを記録する手法(例えば、特許文献5)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3020268号公報
【特許文献2】特許第4719240号公報
【特許文献3】特許第4510589号公報
【特許文献4】特許第2774947号公報
【特許文献5】特許第2596264号公報
【非特許文献1】潮見俊輔,研究開発七つ道具 ジョーピン形軸力計,RRR,Vol.74,No.1,2017
【非特許文献2】佐々木正孝,鈴木雅彦,金田敏之,NS電気転てつ機モニタリングの基礎開発,JR East
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した、特許文献1、および、特許文献2に記載の技術のように、転換負荷の推定値を算出する方式では、電気転てつ機のモータに作用するトルクを推定した上で、回転運動を動作かんの直線運動に変換するカム機構のトルクと力の伝達率(動作かんの移動量の関数)を乗じて、転換負荷の推定値が算出される。この際、ロックピースに備えた接点(所定の転換動作を行い、鎖錠動作を行った際に切断)を用いて検出した転換開始から終了までの時間をもとに、動作かんが一定速度で移動したという仮定のもとに、動作かんが動きはじめた時間と停止した時間が推定されて、転換負荷の推定値が算出される。ここで、モータとカム機構の間に備えられるモータの過負荷保護手段の一つであるクラッチにおいて、クラッチの入出力軸間で回転数差がなく、かつトルクが100%伝達される状態においては、少なくともモータのトルクとカム機構直前の転換歯車の回転軸のトルクとは、両者の歯車比により算出することが可能である。しかしながら、実際の電気転てつ機の使用環境において、特に分岐器の転換負荷が大きい場合には、クラッチが伝達可能なトルクを超過するため、モータの回転軸のトルクや回転速度と、クラッチの出力軸のトルクや回転速度とは一致しない。
【0008】
また、上述した特許文献3および非特許文献2に記載の技術は、転換負荷に対して線形的に変化する部材のひずみを利用した測定方法であり、上述したように、動作かんや、動作かんと分岐器を結ぶスイッチアジャスタ等、電気転てつ機の内部の動作状態に影響を受けにくい箇所で測定される。しかしながら、通常使用する転換負荷の大きさ(例えば、1~数kN)に対する部材のひずみは小さいため、レールを流れる帰線電流、軌道回路や車両から受けるインバータ等によるノイズ、または、温度変化によるドリフト等の影響を受けやすく、実用的な信号強度を得るのは容易ではない。また、上述した非特許文献1に記載のジョーピン形軸力計は、十分な信号強度を得られる構造のため、一般的なひずみ測定方法で十分実用的な値が得られるが、実用的な値を得るために、ひずみゲージの機械的強度を低くしている。このため、この技術は、走行試験等の短期的な使用には耐えうるが、数十年単位の長期耐久性に課題がある。
【0009】
また、上述した特許文献4に記載の技術は、モータが出力するトルクを推定対象としており、クラッチのすべりが発生している場合については推定の対象ではない。そして、上述した特許文献5に記載の技術は、計測するトルクから歯車比を乗ずることでクラッチの出力側のトルクを算出することが可能であるが、電気転てつ機のモータを駆動させた際のトルクとは必ずしも同一ではなく、さらに、回転軸の変形量をひずみゲージや磁歪等で計測するトルクセンサは、その計測原理上、感度を高めるために変形しやすくなるように、機械強度を計測対象の軸よりも低くすることが一般的であるため、同様の原理のトルクセンサを電気転てつ機の回転軸上に内蔵することは、耐久性の観点から現実的ではない。
【0010】
そこで、本発明は、前記課題を解決すること、すなわち、耐久性に問題が発生せず、ノイズ対策等を必要としない手法を用いて、クラッチが滑っている状態においても、クラッチ回転軸の出力トルクや転換負荷を高い精度で推定することができる、電気転てつ機状態監視装置および電気転てつ機状態監視方法、並びに、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電気転てつ機状態監視装置の一側面は、電気転てつ機のモータの電流値および電圧値、並びに、電気転てつ機のクラッチの出力軸の回転速度を取得して、モータの推定最大トルク、および、モータとクラッチの回転速度比を算出し、モータとクラッチの回転速度比とモータとクラッチのトルク比との相関関係に基づいて、クラッチの出力軸のトルクの推定値を算出するクラッチ出力軸トルク推定処理部を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の電気転てつ機状態監視装置の他の側面は、クラッチ出力軸トルク推定処理部が、モータの電圧値、および、クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、モータの推定最大トルクを算出するモータ推定最大トルク算出部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の電気転てつ機状態監視装置の他の側面は、クラッチ出力軸トルク推定処理部が、モータの電流値および電圧値を、モータの回転速度に換算するモータ回転速度換算部と、モータ回転速度換算部により得られたモータの回転速度と、クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、回転速度比を算出する回転速度比算出部とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の電気転てつ機状態監視装置の他の側面は、クラッチ出力軸トルク推定処理部により算出されたクラッチの出力軸のトルクの推定値、動力伝達機構の減速比、および、回転運動から直動運動に変換する動力伝達比に基づいて、電気転てつ機の転換負荷を算出する転換負荷推定処理部をさらに有することを特徴とする。
【0015】
本発明の電気転てつ機状態監視方法の一側面は、電気転てつ機のモータの電流値および電圧値、並びに、電気転てつ機のクラッチの出力軸の回転速度を取得する取得ステップと、取得ステップの処理により取得されたモータの電圧値、並びに、クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、モータの推定最大トルクを算出する第1の算出ステップと、取得ステップの処理により取得されたモータの電流値および電圧値、並びに、クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、モータとクラッチの回転速度比を算出する第2の算出ステップと、第1の算出ステップの処理により算出されたモータの推定最大トルク値、第2の算出ステップの処理により算出された回転速度比、および、回転速度比とモータとクラッチのトルク比との相関関係に基づいて、クラッチの出力軸のトルクの推定値を算出する第3の算出ステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明のプログラムの一側面は、電気転てつ機のモータの電流値および電圧値、並びに、電気転てつ機のクラッチの出力軸の回転速度を取得する取得ステップと、取得ステップの処理により取得されたモータの電圧値、並びに、クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、モータの推定最大トルクを算出する第1の算出ステップと、取得ステップの処理により取得されたモータの電流値および電圧値、並びに、クラッチの出力軸の回転速度に基づいて、モータとクラッチの回転速度比を算出する第2の算出ステップと、第1の算出ステップの処理により算出されたモータの推定最大トルク、第2の算出ステップの処理により算出された回転速度比、および、回転速度比とモータとクラッチのトルク比との相関関係に基づいて、クラッチの出力軸のトルクの推定値を算出する第3の算出ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐久性に問題が発生せず、ノイズ対策等を必要としない手法を用いて、クラッチが滑っている状態においても、トルクや転換負荷の高い推定精度で、電気転てつ機の状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】カム機構を用いた電気転てつ機における動力伝達機構の構造の例について説明するための図である。
図2】モータ1とクラッチ3との接続箇所の拡大図である。
図3】トルク比と速度比との関係について説明するための図である。
図4】電気転てつ機状態監視システム21が有する機能を示す機能ブロック図である。
図5】クラッチ出力軸トルク推定処理部41の更に詳細な機能構成を示す機能ブロック図である。
図6】推定結果について説明するための図である。
図7】推定結果について説明するための図である。
図8】電気転てつ機状態監視システム21の処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態の電気転てつ機状態監視装置および電気転てつ機状態監視方法、並びに、プログラムについて、図を参照しながら説明する。
【0020】
図1を用いて、カム機構を用いた電気転てつ機における動力伝達機構の構造の例について説明する。図1は、電気転てつ機の、モータ1、減速機構2、および、クラッチ3に対応する部分の側面図、並びに、側面図に記載された減速機構2のうちの、転換歯車11、ローラ12、および、動作かん13の部分の下面図である。
【0021】
電気転てつ機は、モータ1の回転軸の回転運動を、トングレール等の分岐器の可動部を平行移動させるための直動運動に転換するため、モータ1の回転運動を減速し、カム機構やボールねじ等の機構で直動運動に変換し出力する減速機構2を備える。減速機構2は、転換歯車11、ローラ12、および、動作かん13を含んで構成されている。図中矢印aは、転換歯車11の回転軸トルクを示し、図中矢印bは、転換負荷を示している。
【0022】
また、分岐器への石の介在等による転換動作の途中停止や、変換された直動運動の出力部である動作かん13への過負荷に対して、過大なトルクや転換力を出力しないためのトルクリミッタの役割を有するクラッチ3が、モータ1と減速機構2の間に設けられる。電気転てつ機には、図1に示した部分に加えて、転換動作の完了後に分岐器可動部の位置を保持し、車両走行等に伴う外力に対しても位置を保持するために、動作かん13の位置を保持する部材を駆動して嵌合させる機構や、カム機構の支点を利用した鎖錠機構等が備えられているが、その図示および詳細な説明は省略する。
【0023】
図2は、モータ1とクラッチ3との接続箇所の拡大図である。クラッチ3は、モータ1の出力トルクを伝達するものであるが、過負荷が発生した場合、すべりが発生して、クラッチ3の後段に過負荷がかからない機構となっている。すなわち、過負荷防護のために用いるクラッチ3が過負荷の作用により機能している、すなわち、過負荷が発生してクラッチが滑っている状態におけるクラッチ3の出力トルクは、クラッチ3の入力トルク、すなわち、モータ1の出力トルクとは異なる値である。
【0024】
図2に示すように、モータ1とクラッチ3において、モータ1の回転速度ω、モータ1の出力トルクT、物理的に回転速度低下が全てモータ1で発生したと想定した場合のトルク、すなわち、モータ1のトルクの推定範囲の上限値であるモータ1の推定最大トルクTmc、クラッチ3の回転速度ω、クラッチ3のトルクTとしたとき、モータ1の推定最大トルクTmcとクラッチ3のトルクTとのトルク比と、モータ1の回転速度ωとクラッチ3の回転速度ωとの速度比とは、インダクションクラッチなどのある種類のクラッチにおいて、図3に示されるように、指数近似の関係にある。
【0025】
図4は、図1図3を用いて説明した電気転てつ機の転換負荷の推定を行う電気転てつ機状態監視システム21が有する機能を示す機能ブロック図である。電気転てつ機状態監視システム21は、モータ1とクラッチ3とのトルク比および回転速度比を、ある一定の関係で示す事ができる電気転てつ機を対象として転換負荷の推定を行うことができる。
【0026】
電気転てつ機状態監視システム21は、電流値計測部31、電圧値計測部32、クラッチ回転速度計測部33、電気転てつ機動作監視部34、データ処理部35、および、出力処理部36の機能を含んで構成されている。また、データ処理部35は、クラッチ出力軸トルク推定処理部41、歯車等軸トルク推定処理部42、および、転換負荷推定処理部43の機能を含んで構成されている。電気転てつ機状態監視システム21は、複数の装置により構成されていてもよく、例えば、データ処理部35、および、出力処理部36の機能を含んだ電気転てつ機状態監視装置を構成し、電流値計測部31、電圧値計測部32、クラッチ回転速度計測部33、および、電気転てつ機動作監視部34の各機能は、それぞれ、異なる装置として構成することができる。
【0027】
電流値計測部31は、モータ1の電流を計測して、測定された電流値Iを、データ処理部35に供給する。電流値計測部31には、例えば、電流センサなどが用いられる。
【0028】
電圧値計測部32は、モータ1の電圧を計測して、測定された電圧値Vを、データ処理部35に供給する。電圧値計測部32には、例えば、電圧センサやA/D変換器などが用いられる。
【0029】
なお、電流値計測部31および電圧値計測部32は、電気転てつ機内部に備えることが好ましいが、電気転てつ機の外部に備えても良い。
【0030】
クラッチ回転速度計測部33は、クラッチ3の出力軸の回転速度を計測して、測定された回転速度ωの値を、データ処理部35に供給する。クラッチ回転速度計測部33は、例えば、歯車の歯を計数する磁気センサなどを含んで構成される。
【0031】
なお、クラッチ回転速度計測部33は、クラッチ3の出力軸の回転速度ωを直接計測するもの以外であってもよく、例えば、クラッチ3の回転角または回転角速度を計測して、微分または積分により、回転速度ωを算出するようにしたり、減速機構2内の、回転速度が異なる回転軸や回転を伝達する歯車等の回転を計測し、減速比を乗じることにより回転速度ωを算出したり、減速機構2において、クラッチ3の回転運動が直動運動に変換されたのちの直動運動の変位や速度を計測し、これを回転角や回転速度に変換することにより、回転速度ωを算出するものであってもよい。すなわち、クラッチ回転速度計測部33は、クラッチ3の出力軸に設けられても良いし、減速機構2内に設けられていてもよい。回転速度を計測するためのセンサは、クラッチ3の機能に影響を与えることなく、容易に設置可能であり、耐久性等にも問題が生じることはない。
【0032】
電気転てつ機動作監視部34は、電気転てつ機の動作を監視し、電気転てつ機の動作開始および終了を、データ処理部35に通知する。なお、電気転てつ機動作監視部34は、独立した機能として備えてもよいが、例えば、電流値計測部31により計測された電流値、または、クラッチ回転速度計測部33により計測された回転速度により、データ処理部35内部で演算を行って、動作を監視するものとしてもよい。
【0033】
データ処理部35は、電気転てつ機動作監視部34からの通知に基づいて、電気転てつ機の動作中に、電流値計測部31により測定されたモータ1の電流値I、電圧値計測部32により測定されたモータ1の電圧値V、および、クラッチ回転速度計測部33により測定されたクラッチ3の出力軸の回転速度ωを取得し、クラッチ3の出力軸のトルク、減速機構2内の歯車等の回転機構の軸のトルク、および、クラッチ3の回転運動が直動運動に変換されたのちの直動運動における転換負荷の値を推定する処理を実行する。ここでは、データ処理部35は、回転機構の軸のトルクとして、転換歯車11の軸のトルクを推定するとともに、直動運動における転換負荷の値として、動作かん13の転換負荷の値を推定するものとして説明する。
【0034】
データ処理部35のクラッチ出力軸トルク推定処理部41は、電流値計測部31から供給されたモータ1の電流値I、電圧値計測部32から供給されたモータ1の電圧値V、および、クラッチ回転速度計測部33から供給されたクラッチ3の出力軸の回転速度ωから、クラッチ3の出力軸のトルクの推定値Tを算出する。
【0035】
ここで、モータ1の回転速度ωは、モータ1の電流値Iに対して線形または2次近似の関係を有し、かつ、線形近似の切片や傾きがモータ1の電圧値Vにより変化することが明らかになっている。また、モータ1の回転速度ωとモータ1のトルクTについても、線形近似の関係を有し、かつ、線形近似の切片や傾きがモータ1の電圧値Vにより変化することが明らかになっている。これの関係、すなわち、近似式の計数は、交流誘導電動機の電流値またはトルクと、モータ1とのすべり率の関係により得られる。
【0036】
クラッチ出力軸トルク推定処理部41は、クラッチ回転速度計測部33により計測されたクラッチ3の出力軸の回転速度ωが、クラッチ3の入出力軸間で回転数差がない状態、すなわち、モータ1の回転速度ωがクラッチ3の出力軸の回転速度ωと等しいと仮定して、モータ1の回転速度ωとモータ1のトルクTの線形近似式に代入して得られるモータ1のトルク、すなわち、物理的に回転速度低下が全てモータ1で発生した場合を想定して得られるトルクの推定範囲の上限値であるモータ1の推定最大トルクTmcを算出する。また、クラッチ出力軸トルク推定処理部41は、クラッチ3の出力軸の回転速度ωcと電流値Iから推定されるモータ1の回転速度ωとの回転速度比νを算出する。
【0037】
実際に回転速度が著しく低下している状態においては、クラッチ3においてすべりが生じ、モータ1の出力軸とクラッチ3の出力軸との回転速度差が生じている。即ち、図3を用いて説明した回転速度比νとトルク比τとの関係は、クラッチ3がすべらない状態とすべる状態を通じて成立するものといえる。
【0038】
クラッチ出力軸トルク推定処理部41は、この関係を利用することにより、クラッチ3が滑っている状態(ν<1)とクラッチ3が滑っていない状態(ν=1)を通じてクラッチ3の出力軸トルクの推定値Tを算出することが可能である。クラッチ出力軸トルク推定処理部41は、算出されたクラッチ3の出力軸トルクの推定値Tを歯車等軸トルク推定処理部42に供給する。クラッチ出力軸トルク推定処理部41が有する更に詳細な機能の構成例については、図5を用いて後述する。
【0039】
データ処理部35の歯車等軸トルク推定処理部42は、クラッチ出力軸トルク推定処理部41から供給されたクラッチ3の出力軸トルクの推定値Tに対して、減速機構2内部の動力伝達機構の減速比を乗じ、後段の特定の歯車等の回転機構における回転軸、ここでは、転換歯車11の回転軸のトルクの推定値を算出し、転換負荷推定処理部43に供給する。
【0040】
データ処理部35の転換負荷推定処理部43は、歯車等軸トルク推定処理部42から供給された転換歯車11の回転軸のトルクの推定値に対して、回転運動から直動運動に変換する動力伝達比を乗じて、特定の直動部分、ここでは、動作かん13に作用する力である転換負荷の推定値を算出し、出力処理部36に供給する。
【0041】
出力処理部36は、データ処理部35から供給された、動作かん13に作用する転換負荷の推定値を、鉄道設備の集中管理装置などの所定の他の情報処理装置に出力する。
【0042】
図5は、クラッチ出力軸トルク推定処理部41の更に詳細な機能構成例を示す機能ブロック図である。クラッチ出力軸トルク推定処理部41は、電流値取得部51、電圧値取得部52、クラッチ回転速度取得部53、モータ回転速度換算部54、モータ推定最大トルク算出部55、回転速度比算出部56、および、クラッチ出力軸トルク推定値算出部57の機能を含んで構成されている。
【0043】
電流値取得部51は、電流値計測部31から供給されたモータ1の電流値Iを取得し、モータ回転速度換算部54に供給する。
【0044】
電圧値取得部52は、電圧値計測部32から供給されたモータ1の電圧値Vを取得し、モータ回転速度換算部54、および、モータ推定最大トルク算出部55に供給する。
【0045】
クラッチ回転速度取得部53は、クラッチ回転速度計測部33から供給されたクラッチ3の出力軸の回転速度ωを取得し、モータ推定最大トルク算出部55、および、回転速度比算出部56に供給する。
【0046】
モータ回転速度換算部54は、電流値取得部51から供給されたモータ1の電流値Iと電圧値取得部52から供給されたモータ1の電圧値Vを、次の式(1)に代入し、モータ1の回転速度ωに換算して、回転速度比算出部56に供給する。なお、式(1)において、αinおよびβinの値は、モータ1の電圧値Vにより異なる線形近似式の計数であり、実測により得られるものである。
【0047】
【数1】
【0048】
モータ推定最大トルク算出部55は、電圧値取得部52から供給されたモータ1の電圧値Vと、クラッチ回転速度取得部53から供給されたクラッチ3の出力軸回転速度ωを、次の式(2)に代入し、モータ1の推定最大トルクTmcに対応する値を算出し、クラッチ出力軸トルク推定値算出部57に供給する。なお、式(2)において、αntおよびβntの値は、モータ1の電圧値Vにより異なる線形近似式の計数であり、実測により得られるものである。
【0049】
【数2】
【0050】
回転速度比算出部56は、クラッチ回転速度取得部53から供給されたクラッチ3の出力軸回転速度ωとモータ回転速度換算部54から供給されたモータ1の回転速度ωから、モータ1の出力軸とクラッチ3の出力軸の回転速度比ν (ν=ω/ω)を算出し、クラッチ出力軸トルク推定値算出部57に供給する。
【0051】
クラッチ出力軸トルク推定値算出部57は、モータ推定最大トルク算出部55から供給されたモータ1の推定最大トルクTmcと、回転速度比算出部56から供給されたモータ1の出力軸とクラッチ3の出力軸の回転速度比ν=ω/ωを、次の式(3)に代入し、クラッチ3の出力軸のトルクの推定値Tを算出し、歯車等軸トルク推定処理部42に供給する。なお、式(3)は、図3を用いて説明した、モータ1の推定最大トルクTmcとクラッチ3のトルクTとのトルク比τと、モータ1の回転速度ωとクラッチ3の回転速度ωとの回転速度比νの指数近似の関係を示す式であり、γotおよびδotの値は、実験により得られる係数である。
【0052】
【数3】
【0053】
クラッチ出力軸トルク推定値算出部57は、算出されたクラッチ3の出力軸のトルクの推定値Tを、転換負荷推定処理部43に供給する。上述したように、歯車等軸トルク推定処理部42は、クラッチ出力軸トルク推定処理部41から供給されたクラッチ3の出力軸トルクの推定値Tに対して、減速機構2内部の動力伝達機構の減速比を乗じて、転換歯車11の回転軸のトルクの推定値を算出し、転換負荷推定処理部43は、歯車等軸トルク推定処理部42から供給された転換歯車11の回転軸のトルクの推定値に対して、回転運動から直動運動に変換する動力伝達比を乗じて、動作かん13に作用する力である転換負荷の推定値を算出し、出力処理部36に供給する。
【0054】
図6は、高い転換負荷が作用し、クラッチ3が滑っている状態における、動作かん13のストロークと転換負荷との関係において、実測値、および、電気転てつ機状態監視システム21により得られる推定値とを示す図である。電気転てつ機状態監視システム21は、上述した機能を有することにより、高い転換負荷が作用し、クラッチ3が滑っている状態においても、実測値に近い転換負荷の推定値を得ることが可能となる。
【0055】
図7は、高い転換負荷が作用して転換不能が発生した場合における、動作かん13のストロークと動作かん13の回転軸のトルクとの関係において、実測値、および、電気転てつ機状態監視システム21により得られる推定値とを示す図である。電気転てつ機状態監視システム21は、上述した機能を有することにより、高い転換負荷が作用して転換不能が発生した場合においても、実測値に近い推定値を得ることが可能である。
【0056】
なお、電気転てつ機状態監視システム21は、クラッチ3が滑っていない場合においても、実測値に近い推定値を得ることが可能である。
【0057】
このように、電気転てつ機状態監視システム21は、特に、高い転換負荷が作用している状態において、従来手法よりも制度の良い推定値を得ることができる。また、電気転てつ機状態監視システム21においては、トルクを計測するためのセンサが不要であるため、従来の電気転てつ機を用いた場合であっても、S/N比の確保のための計測系のノイズ対策や,S/N比確保のために強度を低下させた構造を採用することが不要となる。
【0058】
次に、図8のフローチャートを参照して、電気転てつ機状態監視システム21のデータ処理部35が実行する処理について説明する。なお、図8のフローチャートにおいて、ステップS2~ステップS8の各処理は、電気転てつ機の状態の監視中において、随時実行されるものである。すなわち、ステップS8が終了し、監視状態が継続している場合に、ステップS2の処理が実行されるのではなく、監視状態が継続している間は、所定のタイミングレートでステップS2以降の各処理が逐次実行される。
【0059】
ステップS1において、電気転てつ機動作監視部34は、電気転てつ機の動作が開始されたか否かを判定する。ステップS1において、電気転てつ機の動作が開始されたと判定された場合、処理は、ステップS2に進む。
【0060】
ステップS2において、電流値取得部51は、電流値計測部31から供給されたモータ1の電流値Iを取得し、モータ回転速度換算部54に供給する。また、電圧値取得部52は、電圧値計測部32から供給されたモータ1の電圧値Vを取得し、モータ回転速度換算部54、および、モータ推定最大トルク算出部55に供給する。また、クラッチ回転速度取得部53は、クラッチ回転速度計測部33から供給されたクラッチ3の出力軸の回転速度ωを取得し、モータ推定最大トルク算出部55、および、回転速度比算出部56に供給する。
【0061】
ステップS3において、モータ回転速度換算部54は、電流値取得部51から供給されたモータ1の電流値Iと電圧値取得部52から供給されたモータ1の電圧値Vを、上述した式(1)に代入し、モータ1の回転速度ωに換算して、回転速度比算出部56に供給する。
【0062】
ステップS4において、モータ推定最大トルク算出部55は、電圧値取得部52から供給されたモータ1の電圧値Vと、クラッチ回転速度取得部53から供給されたクラッチ3の出力軸回転速度ωを、上述した式(2)に代入し、モータ1の推定最大トルクTmcに対応する値を算出し、クラッチ出力軸トルク推定値算出部57に供給する。
【0063】
ステップS5において、回転速度比算出部56は、クラッチ回転速度取得部53から供給されたクラッチ3の出力軸回転速度ωとモータ回転速度換算部54から供給されたモータ1の回転速度ωから、モータ1の出力軸とクラッチ3の出力軸の回転速度比ν (ν=ω/ω)を算出し、クラッチ出力軸トルク推定値算出部57に供給する。
【0064】
ステップS6において、クラッチ出力軸トルク推定値算出部57は、モータ推定最大トルク算出部55から供給されたモータ1の推定最大トルクTmcと、回転速度比算出部56から供給されたモータ1の出力軸とクラッチ3の出力軸の回転速度比νを、上述した式(3)に代入し、クラッチ3の出力軸のトルクの推定値Tを算出し、歯車等軸トルク推定処理部42に供給する。
【0065】
ステップS7において、歯車等軸トルク推定処理部42は、クラッチ出力軸トルク推定処理部41から供給されたクラッチ3の出力軸トルクの推定値Tに対して、減速機構2内部の動力伝達機構の減速比を乗じ、ある特定の回転軸、ここでは、転換歯車11の回転軸のトルクの推定値を算出し、転換負荷推定処理部43に供給する。
【0066】
ステップS8において、転換負荷推定処理部43は、歯車等軸トルク推定処理部42から供給された転換歯車11の回転軸のトルクの推定値に対して、回転運動から直動運動に変換する動力伝達比を乗じて、ある直動部分、ここでは、動作かん13に作用する力である転換負荷の推定値を算出し、出力処理部36に供給する。出力処理部36は、データ処理部35から供給された、動作かん13に作用する転換負荷の推定値を、鉄道設備の集中管理装置などの所定の他の情報処理装置に出力する。
【0067】
ステップS9において、電気転てつ機動作監視部34は、電気転てつ機の動作が終了されたか否かを判定する。ステップS9において、電気転てつ機の動作が終了していないと判定された場合、ステップS2~ステップS8の処理が繰り返される。ステップS9において、電気転てつ機の動作が終了されたと判定された場合、処理は終了される。
【0068】
なお、電気転てつ機状態監視システム21のデータ処理部35が実行する処理は、上述したように、電気転てつ機の動作中に随時実行されるのみならず、例えば、電気転てつ機の動作中は、ステップS1、ステップS2、および、ステップS9の処理のみを実行し、ステップS2の処理により得られる、電流値取得部51、電圧値取得部52、および、クラッチ回転速度取得部53の各計測値を、図示しない記憶部に保存し、電気転てつ機の動作終了後、すなわち、ステップS9において電気転てつ機の動作が終了したと判定された場合に、図示しない記憶部に記憶された各測定値を、モータ回転速度換算部54、モータ推定最大トルク算出部55、および、回転速度比算出部56が読みだして、ステップS3~ステップS8の処理をバッチで一括して実行するものとしてもよい。
【0069】
このように、電気転てつ機の転換負荷の推定を行う電気転てつ機状態監視システム21は、データ処理部35の機能を含んで構成される電気転てつ機状態監視装置を含み、データ処理部35は、モータ1の電流値Iおよび電圧値V、並びに、クラッチ3の出力軸の回転速度ωを取得して、モータ1の推定最大トルクTmc、および、モータ1とクラッチ3の回転速度比νを算出し、モータ1とクラッチ3の回転速度比νと、モータ1とクラッチ3のトルク比τとの相関関係に基づいて、クラッチ3の出力軸のトルクの推定値Tを算出するクラッチ出力軸トルク推定処理部41を有するので、耐久性に問題が発生せず、ノイズ対策等を必要としない手法を用いて、クラッチ3が滑っている状態においても、トルクや転換負荷の高い推定精度で、電気転てつ機の状態を監視することができる。
【0070】
上述した技術は、ハードウェアとしては、例えば、パーソナルコンピュータに適用することができる。
【0071】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0072】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0073】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…モータ、 2…減速機構、 3…クラッチ、 11…転換歯車、 12…ローラ、
13…動作かん、 21…電気転てつ機状態監視システム、 31…電流値計測部、
32…電圧値計測部、 33…クラッチ回転速度計測部、 34…電気転てつ機動作監視部、 35…データ処理部、 36…出力処理部、 41…クラッチ出力軸トルク推定処理部、 42…歯車等軸トルク推定処理部、 43…転換負荷推定処理部、 51…電流値取得部、 52…電圧値取得部、 53…クラッチ回転速度取得部、 54…モータ回転速度換算部、 55…モータ推定最大トルク算出部、 56…回転速度比算出部、
57…クラッチ出力軸トルク推定値算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8