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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156652
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】空圧駆動機のサイレンサ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20231018BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20231018BHJP
   F04B 45/053 20060101ALI20231018BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20231018BHJP
   F01N 1/10 20060101ALI20231018BHJP
   F01N 1/24 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F04B39/00 101N
G10K11/16 100
F04B45/053 B
F01N1/00 H
F01N1/10 F
F01N1/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066147
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】595143458
【氏名又は名称】有限会社スイサク
(74)【代理人】
【識別番号】100079234
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】櫂谷 克己
【テーマコード(参考)】
3G004
3H003
3H077
5D061
【Fターム(参考)】
3G004AA10
3G004BA01
3G004BA03
3G004CA14
3G004FA02
3G004FA04
3G004FA08
3G004GA01
3G004GA04
3G004GA06
3H003AA04
3H003AC02
3H003BA05
3H003BA07
3H003CD07
3H077AA12
3H077CC02
3H077CC09
3H077CC17
3H077DD09
3H077EE24
3H077FF06
3H077FF13
3H077FF21
5D061EE13
(57)【要約】
【課題】
エアーシリンダ、高圧バルブやダイヤフラムポンプのような空圧駆動機のエアー排出口や吐出口で発生する騒音および圧力損失を軽減するサイレンサ装置を提供する。
【解決手段】
空圧駆動機のエアー排出口3や吐出口に取り付け、筒先部6から筒内部7に向かって内径が増大し、筒内部7の後方において厚さ10mm以上である連続気泡の多孔質金属体8を筒端の格子部10によって保持し、且つ該多孔質金属体の前方に細管系部材12を軸方向に密に配置し、高圧エアーの流れを前方配置の細管系部材12によって整えてから、後方配置の多孔質金属体8によって発生騒音を軽減する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空圧駆動機のエアー排出口や吐出口に取り付ける中空筒形の装置であって、筒先部または排出口から筒内部に向かって内径が増大し、筒内部の後方において全厚10mm以上である連続気泡の多孔質金属体を筒端の格子部によって保持し、且つ該多孔質金属体の前方に細管系部材を軸方向に密に配置し、高圧エアーの流れを前方配置の細管系部材によって整えてから、後方配置の多孔質金属体によって発生騒音を軽減するとともに高圧エアーの急激な減圧化を防止するサイレンサ装置。
【請求項2】
多孔質金属体である金属素材はAl-Si合金の過共晶材である6~20メッシュの金属切削材の表面にAl-Zn-Mg合金の共晶材の粉末を付着させたチップからなり、該チップをプレスで加圧しながら6000~9000Aの高電流を流して500~600℃に加熱し、チップ表面のAl-Zn-Mg合金だけを溶融させてから圧力を抜いて多孔質に成形し、その密度を0.8~1.5g/cmに調整する請求項1記載のサイレンサ装置。
【請求項3】
多孔質金属体は、厚さ14~20mmの金属素材の単体である請求項1記載のサイレンサ装置。
【請求項4】
多孔質金属体前方の細管系部材は、全体をアルミ箔テープで束ねたりまたは金属製の細管束であることにより、後方の多孔性金属体を経て内部の静電気を速やかに放出できる請求項1記載のサイレンサ装置。
【請求項5】
多孔質金属体前方の細管系部材は、筒状に巻いたプラスチック製の片面段ボールシートまたはプラスチック製のストロー束である請求項1記載のサイレンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアーシリンダ、高圧バルブやダイヤフラムポンプのような空圧駆動機のエアー排出口や吐出口で発生する騒音および圧力損失を軽減するサイレンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアーシリンダやダイヤフラムポンプなどのエアー排出口に取り付けるサイレンサとして、一般的な構造は実用新案登録第3209711号または特開2002-371961号などから公知であり、例えば、図7のように設置することが可能である。実用新案登録第3209711号は、急速排気弁のエアーの排気口に取り付ける有底円筒状のサイレンサ本体と、該サイレンサ本体よりも長尺に形成され且つサイレンサ本体の先端側に隙間をあけて覆う円筒状のサイレンサカバーとを備えるサイレンサに関する。また、特開2011-201025号はブロワや真空ポンプなどに用いるサイレンサ兼用型処理装置に関し、流入ガスによる騒音の低下を図り且つ化学反応槽で発生するガスの回収のために、ブロワまたは真空ポンプの吸入口と吐出口側またはその何れか一方に取り付ける。
【0003】
実用新案登録第3209711号に開示のサイレンサでは、急速排気弁の安定した動作を維持しつつ排気音の軽減を図ることができる。また、特開2002-371961号に開示のサイレンサ兼用型処理装置は、カール形状の吸着フィルター材をタンクに充填することにより、最終的に大気に放出されるガスに含まれる臭気の除去、切削ミストの回収及び流入ガスによる騒音の低下を図るとともに、ガスの弱酸性化による環境汚染の防止に役立っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3209711号公報
【特許文献2】特開2002-371961号公報
【特許文献3】特開2011-201025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
0.7~0.8MPaの高圧エアーが作用する排出口において、高圧エアーが小径の排出口からより大径の筒体や外部に達すると減圧されて温度が低下し、高圧エアーに含まれる水蒸気が液化して結露し、120db以上の騒音とともに出口から水滴が噴出する。実用新案登録第3209711号のサイレンサは、円筒カバーがサイレンサ本体よりも大径且つ長寸であるプラスチック製の二重筒体であり、小径のサイレンサ本体から排出されるエアーはより大径で長寸のサイレンサカバーに覆われ、エアー排出部が外気に晒されないのでこのエアー排出部が凍結することはない。このサイレンサを設置する急速排気弁は半導体製造用のポンプに取り付けられ、作動流体であるエアーの排気音を多少小さくできても、0.7~0.8MPaのような高圧エアーの排気音は小さくならない。
【0006】
0.7~0.8MPaの高圧エアーについて、筒状のサイレンサの内部に軟質の繊維素材などを封入して騒音防止を試みると、その筒先部に高圧エアーが作用するので軟質の素材は圧縮化されて出口から排出されてしまうので、軟質素材の代わりにセラミック製などの硬質多孔性樹脂板を筒内部に封入することが多い。特開2002-371961号のサイレンサ兼用型処理装置は、球状黒鉛鋳鉄や黒心可鍛鋳鉄に少量の銅成分を含有する鋳鉄材料または一般鋼材料であるカール形状の吸着フィルター材をタンクに充填することにより、該タンク内を通過する流入ガスの臭気を除去して弱酸性化するのには有効であっても、流入ガスによる騒音を低下させることは少なく、特に0.7~0.8MPaのような高圧エアーでは排気音を小さくすることはできない。
【0007】
中空筒形のサイレンサにおいて、セラミック製などの硬質多孔性樹脂材をその筒内部に封入した場合、結露が多少少なくなり且つ騒音は音源から50cm離れた場所で95db程度まで低下するが、それ以下の騒音にはならない。この反面、サイレンサにおいて高圧エアーの空気摩擦抵抗が大きくなってエアーシリンダやダイヤフラムポンプなどの性能を低下させ、さらに連続使用するとサイレンサ内に水滴が生じて目詰まりが発生し、エアーシリンダやダイヤフラムポンプの性能をいっそう低下させる。
【0008】
本発明者は、過去の経験からサイレンサについて特殊な多孔質金属板を用いると、前方配置の金属板によって一旦空気を拡散し、さらに後方配置の多孔質金属板によって再び空気を拡散することで空気圧を再分散させて空気中に放出することにより、圧力損失を小さくできることを究明した。この種の多孔質金属板は、高圧エアーを一気に排出する際に温度が急下降して結露することを回避できる。また、両多孔質金属材間に金属やプラスチック製の細管系部材を配置すると、多孔質金属板の通過後に渦流が発生することを防ぐことができる。
【0009】
この知見に基づいて、本発明者は特願2021-47007号として既に特許出願しているが、前方配置の金属板を除いて高圧エアーを細管系部材に直接流通させて渦流を防ぐと、後方配置の金属板だけで空気を十分に拡散することができ、且つ多孔質金属板をより厚くすれば2枚重ねは特に必要ではなく、その代わりに該金属板の密度をいっそう低くするのが望ましいことが判明した。また、高圧エアーの流れを整えるための細管系部材について、片面段ボールシートを筒状に巻き付けるとストロー束の代わりに好適に使用できることが判明した。
【0010】
本発明は、エアーシリンダやダイヤフラムポンプ用の従来のサイレンサに関する問題点をさらに改善するために提案されたものであり、ダイヤフラムポンプなどの空圧駆動機の吐出口で発生する騒音および圧力損失を十分に軽減できるサイレンサ装置を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、特願2021-47007号のサイレンサとほぼ同等に騒音および圧力損失を軽減でき、しかもよりも小型で安価であるサイレンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るサイレンサ装置は、空圧駆動機のエアー排出口や吐出口などに取り付ける中空筒形の装置である。このサイレンサ装置は筒先部または排出口から筒内部に向かって内径が増大し、筒内部の後方において全厚10mm以上である連続気泡の多孔質金属体を筒端の格子部によって保持し、且つ該多孔質金属体の前方に細管系部材を軸方向に密に配置し、高圧エアーの流れを前方配置の細管系部材によって整えてから、後方配置の多孔質金属体によって発生騒音を軽減するとともに高圧エアーの急激な減圧化を防止する。
【0012】
本発明に係るサイレンサ装置において、多孔質金属体である金属素材はAl-Si合金の過共晶材である6~20メッシュの金属切削材の表面にAl-Zn-Mg合金の共晶材の粉末を付着させたチップからなる。このチップをプレスで加圧しながら6000~9000Aの高電流を流して500~600℃に加熱し、チップ表面のAl-Zn-Mg合金だけを溶融させてから圧力を抜いて多孔質に成形し、その密度を0.8~1.5g/cmに調整する。
【0013】
本発明に係るサイレンサ装置において、多孔質金属体は、厚さ14~20mmの金属素材の単体であると好ましい。また、多孔質金属体前方の細管系部材は、筒状に巻いたプラスチック製の片面段ボールシートまたはプラスチック製のストロー束であると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るサイレンサ装置では、前方配置の細管系部材によって渦流を防いで空気圧を下げ、且つ後方配置の多孔質金属体によって空気を拡散することで空気圧を分散させて空気中に放出するから、圧力損失が小さくなって騒音を下げることができる。後方配置の多孔質金属体は肉厚で熱伝導率が良いので、高圧エアーを一気に排出する際に温度が急下降しても結露せず、高圧エアーの連続排気による凍結を回避できる。また、前方配置の細管系部材はプラスチック製であるので、プラスチック材は熱伝導性が金属細管より悪い反面、渦流が発生することを防ぎ、高圧エアーの中に水分が含まれていても発錆することがない。
【0015】
本発明に係るサイレンサ装置を空圧駆動機に適用した場合、該空圧駆動機の一例であるエアーシリンダのアームの伸長・収縮運動の速度を高め、エアーシリンダ能力を上げることが可能である。この種のエアーシリンダでは、通常、高圧エアーを一気に吐出すると空気の摩擦抵抗を受け、排出圧力が高ければ高いほど摩擦抵抗が大きくなって迅速に排出できず、一方、徐々に排出すると摩擦抵抗は小さくなるが吐出時間が長くなる。この場合に、従来のように、エアーシリンダに接続するコンプレッサーの圧縮能力を高めるだけでは作動能力を上げることはできない。
【0016】
本発明に係るサイレンサ装置は、高圧エアーの圧力を拡散して大気圧になじみやすくしたうえで高圧エアーを早く排出することができ、迅速な排出によって空気の摩擦抵抗を小さくし、この摩擦抵抗を小さくすることで発生する騒音も小さくなる。現在、各種の物品製造ラインにおいて、部品を掴んだり弾いたりするアームの迅速な動きが必要なところにエアーシリンダが多数設置されているので、シリンダアームのいっそう迅速な動きを可能とし且つ騒音を軽減できる本発明のサイレンサ装置は実に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るサイレンサ装置の縦断面図である。
図2図1のサイレンサ装置の背面の端面図である。
図3図1のA-A線に沿ったサイレンサ装置の概略横断面図である。
図4】細管系部材の変形例を示す図3と同様の概略横断面図である。
図5】細管系部材として用いる片面段ボールシートを示す側面図である。
図6】波形シートの下面に平坦シートを接着する工程を示す概略説明図である。
図7】サイレンサ装置をダイヤフラムポンプに取り付けた状態を例示する概略説明図である。
図8】サイレンサ装置で用いる多孔質素材の成形装置を示す概略断面図である。
図9図8の成形装置を水平に切断して示す概略断面図である。
図10】ダイヤフラムポンプに接続したサイレンサ装置および市販サイレンサについて、圧力0.7MPa開放時の時間と圧力変化を示すグラフである。
図11】ダイヤフラムポンプに接続したサイレンサ装置および市販サイレンサについて、圧力0.7MPaの全音域における騒音レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るサイレンサ装置1(図1)は、例えば、公知のダイヤフラムポンプ2(図7)のような空圧駆動機のエアー排出口3または吐出口に取り付ける中空筒形の装置である。サイレンサ装置1は、図1図7に示すように、ポンプ2のエアー排出口3に取り付ける筒本体5の筒先部6から筒内部7に向かって内径が増大し、該筒内部の後方において連続気泡の多孔質金属体8を筒後端の格子部10によって保持し、該多孔質金属体の前方に細管系部材12を軸方向に密に配置する。
【0019】
サイレンサ装置1は、図7のようなダイヤフラムポンプ2に限定されることなく、各種の空圧駆動機に取り付け可能である。この種の空圧駆動機として、エアーシリンダ、空圧ポンプ、真空ポンプ、ピストンポンプ、蒸気ボイラーなどが例示できる。
【0020】
サイレンサ装置1において、筒本体5は、耐圧性である硬質プラスチックまたは金属製などであり、熱伝導性が比較的低いので温度低下が小さく且つ成形が容易な硬質プラスチック製であると好ましい。筒本体5がプラスチック製であれば、細管系部材12をアルミ箔テープ(図示しない)で全体を束ねたりまたは金属製の細管束を使用すると、多孔性金属体8を経て内部の静電気を速やかに放出できる。また、アース端子用ネジ(図示しない)を筒本体5の側壁にねじ込み、その先端をアルミ箔テープや金属細管束に接触させると、筒本体自体が帯電することがない。このため、筒本体5が高価な金属製でなくても、該筒本体の帯電による静電気スパーク発火の怖れはない。
【0021】
筒本体5は、空圧駆動機に接続する小径の筒先部6から筒内部7に向かって内径が増大する中空構造を有する。筒本体5は、筒先部6を含む前筒部14と、後端の格子部10を含む後筒部16からなり、筒部14,16には、後方に向かって内径が大きい環状段部18および前方に向かって外径が小さい環状段部20をそれぞれ形成する。
【0022】
可変径の前筒部14には、小径の筒先部6の後端外周に六角ナット部22を成形し、該前筒部の内周中間に細管系部材12を保持するための内環状段部24を形成する。図2に示すように、ほぼ円筒形の後筒部16は、その後端面を格子部10で構成し、該格子部によって多孔質金属体8を保持するとともに高圧エアーを通過可能にする。円周形の格子部10には、交差や平行する桟状17や亀甲状などを形成しても、金属ネットなどを取り付けて格子部を構成してもよい。
【0023】
組み立て時には、前筒部14には細管系部材12を後方から入れて環状段部24で係止させ、一方、後筒部16には円柱形の多孔質金属体8を収納する。前筒部14と後筒部16の段部18,20を接合して溶着すると、多孔質金属体8を格子部10で係止し、細管系部材12を環状段部24と多孔質金属体8とで固定する。
【0024】
細管系部材12は、所望の通気性能に応じて全長を15~60mmに定めればよい。細管系部材12として、図3図5に示すようにプラスチック製の片面段ボールシート26を筒状に巻いて前筒部14内に収納しても、図4に示すようなポリプロピレン製のプラスチックストロー束28や金属細管束を収納してもよい。ストロー束28である場合には、細管径が1.5~3.5mmであり、全体を結束して使用することが望ましい。
【0025】
細管系部材12は、多孔質金属体8の前方において軸方向および半径方向に密に配置することを要する。細管系部材12により、高圧エアーの摩擦抵抗による圧力損失を回避しながら、空圧駆動機を通過してきた高圧エアーの気流の渦を作らせず、後方の多孔質金属体8へスムースに流通させて空気圧を下げる。
【0026】
多孔質金属体8には、連続気泡であれば各種の金属素材を使用することができ、該金属素材の空隙率は60%以上であって65%以上であると通気性の点で好ましい。多孔質金属体8は、図1図2から明らかなように、筒内部7の内径とほぼ等しい直径40~100mmの円盤状であり、その全厚が10mm以上であると発生騒音を軽減でき、厚みが14~20mmであると発生騒音をいっそう良く軽減できるので好ましい。高圧エアーでも圧力が0.7MPa未満であれば、10mm厚前後の多孔質金属体8でも使用可能である。図1において、多孔質金属体8として、空隙率を調整するために金属素材を2枚以上重ねることも可能であり、全厚が20mm厚を越えると消音効果が上がる反面、高圧エアーの排出抵抗が大きくなりすぎる。
【0027】
多孔質金属体8を製造するには、一例として、Al-Si合金の過共晶材を旋盤で切削した6~30メッシュの金属チップ30(図8)を用いる。この際に、多孔質金属体8の成形後の見掛け密度は、チップの横幅によって変化し、例えば、10~20メッシュの金属チップを使用すると見掛け密度が高くなり、6~10メッシュの金属チップを使うとその密度は下がる。次に、金属チップの表面にAl-Zn-Mg合金の共晶材の40~50メッシュの金属粉末を付着させる。この金属粉末は、Al-Zn-Mg合金の共晶材をクラッシャーによって40~50メッシュに粉末化されている。
【0028】
Al-Zn-Mg合金の粉末を付着させたAl-Si合金の金属チップ30の成形には、図8および図9に示す多孔質金属の成形装置32を用いればよい。成形装置32は、型枠34においてセラミックスの上下型38,40を備え、且つ1対の電極板36,36を対向設置することにより、電極板36,36のほぼ全面に高電流を流して均等に加熱できる。成形装置32に関して、型枠34内に充填する金属チップ30への加圧力と電気比抵抗との関係は、加圧力を高くすると金属本来の電気比抵抗に近づけることが可能である。
【0029】
成形装置32において、離型シート42を型枠34の底面に敷設してから金属チップ30を型枠34内にほぼ均等に入れ、その上にさらに別の離型シート42を敷設する。型枠34内において、加圧前の金属切削材の厚みは一般に100mm以下であると好ましい。次に、セラミックスの上型38を下降させ、6000~9000Aの高電流を流し、例えば約500~600℃に加熱しながら加圧することで平板状に成形する。
【0030】
充填された金属チップ30は、約500℃の加熱によってその一部が融点を越えるまで加熱される。この際に、表面のAl-Zn-Mg合金の溶融部と接しているAl-Si合金は、圧力がかかっているため接触部分の一部が溶け出し、Al-Zn-Mg合金とAl-Si合金とが金属間結合を起こして一体化して融着材を形成する。次に、型枠34への加圧力を抜くと、融着材において圧力によって変形していたAl-Si合金チップが元の形態に戻り、Al-Zn-Mg合金と結合したままで連続気泡の多孔質の状態になり、全体の体積が加圧前近くまで戻って見掛け密度が約1g/cmになる。平板状の融着材を所望の円形平面に裁断すると多孔質金属体8を得る。
【0031】
多孔質金属体8の見掛け密度は、前記のように、使用する金属チップ30のメッシュ幅によって異なり、細かいメッシュ幅であると見掛け密度が高くなり、粗いメッシュ幅であると見掛け密度が下がる。例えば、20~30メッシュの金属チップ30を用いると多孔質金属体8の見掛け密度は約1.2g/cm以上になり、10~20メッシュを用いた場合には見掛け密度が約1g/cmになり、6~10メッシュを用いた場合には見掛け密度は約0.8g/cm程度になる。全厚10mm以上の多孔質金属体8をサイレンサ装置1に用いるならば、その見掛け密度は急激な圧力損失を防ぐために0.8~1.5g/cmであることが望ましい。
【0032】
サイレンサ装置1において、図1のように、細管系部材12の後方に厚さ10mm以上である連続気泡の多孔質金属体8を配置すると、該多孔質金属体が比較的肉厚であるので、発生騒音を軽減し且つ圧力損失を少なくする点で効果的な構成になる。また、多孔質金属体8と同質である別の金属素材を細管系部材12の前方に介在させてもよく、このサイレンサ装置において、1または2枚の多孔質金属体を中間に介在させるならば、少なくとも消音効果は上昇する。
【0033】
サイレンサ装置1は、ダイヤフラムポンプ2(図7)、エアーシリンダ、高圧バルブのような各種の空圧駆動機のエアー排出口3または吐出口などに取り付ければよい。図示しないけれども、サイレンサ装置1の筒本体5をエアーシリンダやポンプの本体に直接接続する場合には、小径の筒先部を省略してエアー排出口が筒先部を代用できるように構成してもよい。また、サイレンサ装置1をエアーシリンダやポンプの本体内に収納配置することも可能であり、この場合には筒本体の形状を適宜変更すればよい。所望に応じて、多孔質金属体8の保護のために、その前後端面に金網(図示しない)を取り付けることもできる。
【0034】
サイレンサ装置1の筒先部6をダイヤフラムポンプ2(図7)の排出口3に取り付けると、0.7~0.8MPaの高圧エアーが小内径の筒先部6を経て大口径の筒内部7に達し、膨張した高圧エアーは減圧化されて温度が低下する。高圧エアーは、細管系部材12で流れが整えられ且つ均等な圧力に拡散されて該細管系部材を通過し、この際に各細管の内表面における通過気流の空気抵抗により、騒音と空気圧を若干低下させるけれども、高圧エアー中の水分が液化する程の温度低下は生じない。
【0035】
次に、高圧エアーは、細管系部材12を通って後方の多孔質金属体8に送り込まれ、比較的肉厚の多孔質金属体8でさらに万遍なく拡散され、高圧エアーが拡散されることによって急激な減圧化を防ぎ、熱伝導の良好な肉厚の多孔質金属体8との接触で急激な温度低下を緩和するとともに、該多孔質金属体を通過するときに温度の均一化が図られ、蒸気の液化を防ぐことで結露発生を防止する。結果として、サイレンサ装置1で高圧エアーを分散させてから空気中に放出することにより、圧力損失を少なくし且つ騒音を小さくできる。サイレンサ装置1は、市販のサイレンサと比較してもいっそうの騒音低減になる。
【0036】
サイレンサ装置1をエアーシリンダに適用する場合には、該エアーシリンダのアームの伸長・収縮する運動の速度を高めてエアーシリンダの作業能力を上げる。エアーシリンダの作業能力は、シリンダ内に入った気圧の高い空気をいかに早く吐出するかに依存し、コンプレッサの圧縮能力を高めるだけではエアーシリンダ能力を上げることはできず、シリンダ内の高圧エアーを迅速に吐出することが必要になる。サイレンサ装置1は、空気の圧力を拡散して大気圧になじみやすくしたうえで早く空気を吐出することにより、空気の摩擦抵抗を小さくするので発生する騒音も相当に小さくなる。
【0037】
サイレンサ装置1では、前方の細管系部材12の径と長さと、後方の全厚10mm以上の多孔質金属体8の厚みとを適宜に組み合わせることにより、所定の周波数における騒音レベルを調整できる。サイレンサ装置1は、空圧駆動機の性能をアップさせるとともに、500Hz以下の低周波における騒音成分を激減させることができるので生活環境にとって好ましい。これに対し、低周波成分の騒音レベルが高くなると、距離減衰が効きにくくなるために遠くまで騒音を運び、騒音問題を引き起こす。
【0038】
サイレンサ装置1を用い、低周波成分の騒音レベルが低くなると、距離減衰が働いてサイレンサ装置の設置近辺だけの騒音となり一般的な吸音材で処理できる。フーリエ級数により、音は低周波成分の波の上に高周波数成分が乗っているので、低周波領域の成分レベルが高ければ遠くまで高い周波数成分を乗せて運んでしまう。つまり、爆発的な騒音中には10Hz以下の超低周波音や100Hz以下の低周波音が含まれ、サイレンサ装置1ではこれらの低周波音を減衰処理するために細管系部材12を使い、高圧空気の流れの中で渦を作らないように流し、できるだけ細かな流れに拡散して大気圧に放出すると小さな渦流ができて高い音に変化し、このような状態で大気圧になじませて排出する。
【実施例0039】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。サイレンサ装置1は、公知のダイヤフラムポンプ2(図7)の排出口3に取り付ける中空筒形の装置であり、中空筒形部は外径80mm、内径70mm、長さ86mmである。サイレンサ装置1は、図1に示すように、ポンプ2の排出口3に取り付ける筒本体5の筒先部6から筒内部7に向かって内径が増大し、筒内部において細管系部材12および連続気泡の多孔質金属体8を軸方向に密に順次配置する。
【0040】
多孔質金属体8を製造するには、Al-Si合金の過共晶材である10~20メッシュの金属チップ30(図8)を用い、この金属チップの表面にAl-Zn-Mg合金の共晶材の40~50メッシュの金属粉末を付着させる。Al-Si合金の金属チップ30の成形には、図8および図9に示す多孔質金属の成形装置32を用いる。成形装置32は、6000~9000Aの高電流を流し、約500℃に加熱しながら加圧することで平板状に成形する。
【0041】
充填された金属チップ30は、加圧・加熱によってその一部が融点を越えるまで加熱され、表面のAl-Zn-Mg合金の融点は480℃程度で低いので、Al-Si合金のチップ表面の金属粉末が溶け出し、一方、Al-Si合金は融点が630℃であるので、溶けずに変形度合いも低い状態を維持する。この際に、表面のAl-Zn-Mg合金の溶融部と接しているAl-Si合金は、圧力がかかっているため接触部分の一部が溶け出し、Al-Zn-Mg合金とAl-Si合金とが金属間結合を起こして一体化して融着材を形成する。加圧力を抜くと、圧力によって変形していたAl-Si合金チップが元の形態に戻り、Al-Zn-Mg合金と結合したままで連続気泡の多孔質の状態になる。この後に平板状の融着材を円形平面に裁断する。
【0042】
得た多孔質金属体8は厚みは16mmであり、筒内部7の内径とほぼ等しい直径70mmの円盤状である。多孔質金属体8の見掛け密度は10~20メッシュの金属チップ30であると約1g/cmである。また、多孔質金属体8の空隙率は15~20メッシュの金属チップ30を用いることによって約70%になる。図1に示す多孔質金属体8では、所望の空隙率と強度を保持するために16mm厚を1枚用いる。
【0043】
細管系部材12は、後方配置の多孔質金属体8の前方において軸方向および半径方向に密に配置され、長さ30mm、配置内径70mmである。細管系部材12として、図3図5に示すようにポリエチレン製の片面段ボールシート26を筒状に巻いて前筒部14内に収納する。片面段ボールシート26を製造するには、図5に示すように平坦なポリエチレンシート44を用いる。平坦シート44は、厚さが0.2~0.5mm、幅が1.5~2m、長さが1500m程度であり、波形ポリエチレンシート46の幅と厚みも平坦シート44とほぼ同じである。
【0044】
波形シート46は、1対の歯形ローラ(図示しない)間に通して、該シートを所定の間隔で凹凸状に折り曲げてパルス状側面を形成する。この歯形ローラは、プラスチック製シートの場合にはローラ自体を加熱しながら加工すると好ましい。この歯形は、通常、相互に噛み合った凹凸周面を有して回転する。
【0045】
得た波形シート46は、その下面において塗布ローラ47で液状接着剤を塗布した後に、該波形シートに対して下方のロール48から平坦シート44を順次送り込み、波形シート46を平坦シート44に接着し、その後に遠赤外線乾燥炉50に通して乾燥する。シート44,46が樹脂シートである場合には、高周波、誘電加熱または超音波で溶着することも可能であり、この場合には塗布ローラ47および乾燥炉50は不要である。また、これらのシートが金属製であるならば、スポット溶接やロウ付けも可能である。
【0046】
サイレンサ装置1は円筒形であり、ダイヤフラムポンプ2(図7)の排出口3に取り付けできるように筒先部6が細くなり、小径の筒先部6をポンプ2の排出口3にネジ止めできる。図7のダイヤフラムポンプ2はセンサ検知式であり、ポンプ室Aに高圧エアーが送られると1対のダイヤフラムはセンタロッドとともに右方向へ移動する(図7の位置)。センタロッドが右端まで移動すると、この位置をセンサ(図示しない)が検知し、コントローラ(図示しない)が作動して電磁弁が切り換わる。電磁弁が切り換わると、高圧エアーはポンプ室Bに送られ、ダイヤフラムはセンタロッドとともに左方向へ移動する。センタロッドが左端まで移動すると、この位置を別のセンサ(図示しない)が検知し、コントローラが作動して電磁弁が切り換わって右方向へ移動を開始し、この動作の繰返しによってダイヤフラムは連続的に往復動し、排出口3から約0.7MPaの高圧エアーを送り出す。
【0047】
サイレンサ装置1内において、約0.7MPaの高圧エアーが小内径の筒先部6を経て内径75mmの筒内部7に達し、膨張した高圧エアーは減圧化されて気温が低下し、前方の細管系部材12と接触する。この接触により、高圧エアーの一部が均等に拡散されることによって急激な減圧化を緩和する。高圧エアーは、細管系部材12との接触で急激な温度低下を防ぐとともに、該細管系部材を通過するときに温度の均一化が図られ、蒸気の液化を防ぐことによって結露発生および凍結を防止する。
【0048】
高圧エアーは、細管系部材12によって渦流を生じることなく、流れが整えられ且つ均等な圧力に分散されて該細管系部材を通過し、この際に各細管の内表面における通過気流の空気抵抗により、騒音と空気圧を若干低下させるけれども、高圧エアー中の水分が液化する程の温度低下は生じない。細管系部材12で空気の圧力を細分し、さらに後方の多孔質金属体8で再び空気を拡散して圧力を再分散させてから空気中に放出することにより、圧力損失を少なくして騒音を小さくする。細管系部材12は、ポリプロピレン製で熱伝導性が金属より悪いけれども、高圧エアーの中に水分が含まれていても発錆しない。
【0049】
ダイヤフラムポンプ2に接続したサイレンサ装置1について、格子部10における圧力0.7MPa開放時の時間と圧力変化を図10において実線で示す。一方、図10の点線は、比較装置として某空圧駆動メーカの市販サイレンサに関する筒後端における0.7MPa開放時の時間と圧力変化を示す。0.7MPaの高圧エアーをサイレンサ装置1に送入すると、図10に示すように市販サイレンサと比べて圧力が早く抜け、圧力が抜ける時間も短くなる。
【0050】
次に、サイレンサ装置1および市販サイレンサについて、図11において圧力0.7MPaの全音域における騒音レベルを示す。騒音レベルは音圧の2乗信号を平均して求め、その平均の時定数によってF特性として時定数125msの時間重み付け特性を用いる。F特性は平坦特性の意味であり、マイクロホンに入力された音圧に対して周波数特性上は全く変化しない。騒音を周波数分析するときに,騒音計の後ろにフィルタを接続して周波数を分析し、この際にF特性として正しい分析を行う。
【0051】
サイレンサ装置1および市販サイレンサについて、圧力0.7MPaの全音域における騒音レベルを図11に示し、騒音レベルの全体は、サイレンサ装置1で69.44dBであり、市販サイレンサで82.45dbであった。比較のために、ダイヤフラムポンプにサイレンサを接続していない場合を測定すると104.1dbであった。したがって、サイレンサ装置1は、市販サイレンサと比較して騒音レベルの全体で約13dBの騒音低減になり、サイレンサを接続していない場合と比べて騒音を約35db低減する。
【実施例0052】
実施例2のサイレンサ装置では、実施例1と同様の筒本体5を用いる。前方の細管系部材12として、図4に示すポリプロピレン製のプラスチックストロー束28を用い、このストローは細管径が2.5mm、長さが30mmである。また、後方配置の多孔質金属体8として、2枚の多孔質金属体を重ね合わせて設置し、両多孔質金属体は直径70mm、厚さ8mmである。
【0053】
このサイレンサ装置では、前方配置の細管系部材12によって渦流を防いで空気圧を下げ、且つ後方配置の多孔質金属体8によって空気を拡散することで空気圧を分散させて空気中に放出する。このサイレンサ装置は、実施例1のサイレンサ装置1と比べて消音効果がほぼ同じであり、高圧エアーの排出抵抗も殆ど変わらない。この反面、このサイレンサ装置は、実施例1のサイレンサ装置1と比べて製造コストが多少上昇する。
【符号の説明】
【0054】
1 サイレンサ装置
2 ダイヤフラムポンプ
5 筒本体
6 筒先部
8 多孔質金属体
10 格子部
12 細管系部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11