(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156695
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】全天周カメラ
(51)【国際特許分類】
G03B 37/04 20210101AFI20231018BHJP
G02B 13/04 20060101ALI20231018BHJP
G02B 13/06 20060101ALI20231018BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20231018BHJP
【FI】
G03B37/04
G02B13/04 D
G02B13/06
G03B15/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066203
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】林田 哲哉
【テーマコード(参考)】
2H059
2H087
【Fターム(参考)】
2H059BA02
2H059BA03
2H059BA11
2H087KA01
2H087LA03
2H087PA07
2H087PA16
2H087PB11
2H087QA02
2H087QA05
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA36
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】スティッチング誤差を低減可能な全天周カメラを提供すること。
【解決手段】開示の技術の一態様に係る全天周カメラは、全天周画像を出力可能な全天周カメラであって、それぞれが第1レンズ群と第2レンズ群とを有する4つの光学系と、前記4つの光学系それぞれにより形成される像を撮像する4つの撮像部と、前記4つの撮像部により撮像された4つの画像を繋ぎ合わせることにより前記全天周画像を生成する生成部と、を有し、前記4つの光学系それぞれは、仮想正四面体が有する4つの仮想面のいずれかに光軸が直交するように配置され、前記全天周カメラの中心は、前記4つの光学系それぞれにおける前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全天周画像を出力可能な全天周カメラであって、
それぞれが第1レンズ群と第2レンズ群とを有する4つの光学系と、
前記4つの光学系それぞれにより形成される像を撮像する4つの撮像部と、
前記4つの撮像部により撮像された4つの画像を繋ぎ合わせることにより前記全天周画像を生成する生成部と、を有し、
前記4つの光学系それぞれは、仮想正四面体が有する4つの仮想面のいずれかに光軸が直交するように配置され、
前記全天周カメラの中心は、前記4つの光学系それぞれにおける前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に位置する、全天周カメラ。
【請求項2】
前記撮像部は、前記全天周カメラの中心を挟んで前記第1レンズ群とは反対の位置に配置される、請求項1に記載の全天周カメラ。
【請求項3】
前記第2レンズ群および前記撮像部は、前記全天周カメラの中心から見て、前記仮想正四面体が有する4つの仮想頂点のうちいずれかの仮想頂点が位置する方向に配置され、
前記第1レンズ群は、前記全天周カメラの中心から見て、前記いずれかの仮想頂点に向き合う仮想面が位置する方向に配置される、請求項1または請求項2に記載の全天周カメラ。
【請求項4】
前記光学系における直径が最大となる外縁部上の第1の点と前記全天周カメラの中心とを通る第1仮想線と、前記外縁部上において前記光学系の光軸を挟んで前記第1の点とは反対の位置にある第2の点と前記全天周カメラの中心とを通る第2仮想線と、のなす角度は141[度]以下である、請求項1または請求項2に記載の全天周カメラ。
【請求項5】
前記光学系の最大画角は、141[度]以上である、請求項1または請求項2に記載の全天周カメラ。
【請求項6】
前記4つの光学系それぞれにおける前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に配置される透光性部材を有し、
前記4つの光学系のそれぞれは、前記透光性部材を通して像を形成し、
前記透光性部材は、前記4つの光学系それぞれの光軸に沿う方向に所定の長さを有する、請求項1または請求項2に記載の全天周カメラ。
【請求項7】
前記透光性部材は、前記所定の長さを空けて向き合う一対の部材面を複数組有する切頂四面体であり、
前記切頂四面体は、複数組の前記一対の部材面それぞれが、前記4つの光学系の光軸に直交するように配置される、請求項6に記載の全天周カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全天周カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全天周画像を出力可能な全天周カメラが知られている。全天周カメラは、放送用カメラや、監視カメラ、車載カメラ等の様々な用途において使用される。
【0003】
全天周カメラとして、正四面体の各面に割り当てられた4つのレンズ系を有し、4つのレンズ系それぞれを用いて取得される4つの画像を繋ぎ合わせることにより、全天周画像を生成するものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の全天周カメラでは、4つの画像を繋ぎ合わせる際に画像のスティッチング誤差(繋ぎ合わせ誤差)が大きくなり、全天周画像の品質が低下する場合がある。このため、スティッチング誤差を低減可能な全天周カメラが求められている。
【0006】
本開示は、スティッチング誤差を低減可能な全天周カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の一態様に係る全天周カメラは、全天周画像を出力可能な全天周カメラであって、それぞれが第1レンズ群と第2レンズ群とを有する4つの光学系と、前記4つの光学系それぞれにより形成される像を撮像する4つの撮像部と、前記4つの撮像部により撮像された4つの画像を繋ぎ合わせることにより前記全天周画像を生成する生成部と、を有し、前記4つの光学系それぞれは、仮想正四面体が有する4つの仮想面のいずれかに光軸が直交するように配置され、前記全天周カメラの中心は、前記4つの光学系それぞれにおける前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に位置する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、スティッチング誤差を低減可能な全天周カメラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る全天周カメラの全体構成を例示する斜視図である。
【
図2】
図1の全天周カメラの光学系、透光性部材、撮像部の配置例の図である。
【
図3】
図1の全天周カメラの光学系、撮像部、仮想正四面体の関係例の図である。
【
図4】
図1の全天周カメラにおける光学系の詳細構成を例示する断面図である。
【
図5】
図1の全天周カメラにおける透光性部材の詳細構成を例示する斜視図である。
【
図6】
図1の全天周カメラにおける制御部の機能構成を例示するブロック図である。
【
図7】比較例に係る全天周カメラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。なお、以下に示す実施形態は、本開示の技術思想を具体化するための全天周カメラを例示するものであって、本開示を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
実施形態に係る全天周カメラは、全天周画像を出力可能なカメラである。全天周画像とは、その場における上下左右を含む360度全方向の被写体や風景等を撮影した画像をいう。全天周画像は、全天球画像または360度画像とも呼ばれる。本明細書では、全天周画像は、静止画および動画(映像)を含む。
【0012】
一般に、全天周カメラは、複数の光学系と、複数の撮像部と、を含み、光学系および撮像部からなる複数の組によって相互に異なる方向の被写体や風景等を撮影した複数の画像を繋ぎ合わせる、すなわちスティッチングすることにより、全天周画像を生成する。全天周カメラにおける複数の光学系は、それぞれノーダルポイントを有する。ノーダルポイントは、光学系の焦点に対応する点である。複数の光学系において、このノーダルポイント同士の間の距離が長いと、複数の画像を繋ぎ合わせる際にスティッチング誤差が大きくなる。スティッチング誤差とは、画像の繋ぎ目となる領域において、繋ぎ合わされる画像同士が位置ずれする画像の繋ぎ合せ誤差をいう。スティッチング誤差が大きくなると、繋ぎ目が目立つこと等により、全天周画像の品質が低下する。
【0013】
実施形態に係る全天周カメラは、4つの光学系と4つの撮像部とを有し、これらの配置を規定することにより、ノーダルポイント同士の間の距離を短くしてスティッチング誤差を低減するものである。
【0014】
<全天周カメラ100の全体構成例>
図1は、実施形態に係る全天周カメラ100の全体構成を例示する図である。全天周カメラ100は、光学系1と、透光性部材2と、撮像部3と、制御部4と、を有する。光学系1は、4つの光学系として、光学系1a、1b、1cおよび1dを含む。
【0015】
光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれは、複数のレンズを含んで構成される。光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれは、相互に異なる方向における被写体や風景等の像を形成可能に配置される。本実施形態では、光学系1a、1b、1cおよび1dは、いずれも同じ構成を有するが、必ずしも同じ構成でなくてもよい。
【0016】
透光性部材2は、光学系1に含まれる第1レンズ群と第2レンズ群との間に配置されている。透光性部材2は、第1レンズ群を通って入射してきた光を透過させ、第2レンズ群に向けて出射させる。なお、ここでの透光性は、少なくとも可視光に対し、60%以上の透過率を有することをいう。可視光とは、波長が約360[nm]から約830[nm]までの範囲に含まれる光をいう。
【0017】
撮像部3は、4つの撮像部として、撮像部3a、3b、3cおよび3dを含む。撮像部3a、3b、3cおよび3dそれぞれは、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含む。撮像素子は、2次元方向に整列する複数の画素を有し、各画素に入射してきた光の強度に基づいて画像を撮像する。本実施形態では、撮像部3a、3b、3cおよび3dは、いずれも同じ構成を有するが、必ずしも同じ構成でなくてもよい。
【0018】
光学系1aと撮像部3a、光学系1bと撮像部3b、光学系1cと撮像部3c、および光学系1dと撮像部3dは、それぞれが組を構成している。撮像部3aは、光学系1aにより形成される像を撮像する。撮像部3bは、光学系1bにより形成される像を撮像する。撮像部3cは、光学系1cにより形成される像を撮像する。撮像部3dは、光学系1dにより形成される像を撮像する。撮像部3a、3b、3cおよび3dそれぞれは、撮像により得られた画像に対応する電気信号を制御部4に送信する。
【0019】
制御部4は、撮像部3a、3b、3cおよび3dそれぞれにより得られた4つの画像を繋ぎ合わせることにより、全天周画像Siを生成する。例えば制御部4は、光学系1a、1b、1cおよび1dの位置または向き等の情報に基づいて、撮像部3a、3b、3cおよび3dそれぞれから受信した4つの画像を繋ぎ合わせることにより、全天周画像Siを生成できる。
【0020】
全天周カメラ100は、制御部4により生成された全天周画像Siを外部装置に出力する。外部装置は、PC(Personal Computer)等の情報処理装置や、ディスプレイ等の表示装置、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置等である。
【0021】
本実施形態では、制御部4は、CPU(Central Processing Unit)または電気回路等が実装された回路実装基板であるが、これに限定されず、コンピュータにより構成されてもよい。
【0022】
全天周カメラ100において、上記各構成部は、
図1に示す所定の位置に配置され、且つ所定の姿勢を維持可能に、筐体や治具等に対して固定される。但し、制御部4は、光学系1等が固定された筐体や治具等に対して遠隔配置されてもよい。
【0023】
図1における最大幅Wは、全天周カメラ100において、最も幅が広い部分の幅である。本実施形態では、最大幅Wは、一例として287[mm]である。
【0024】
<光学系1、透光性部材2および撮像部3の配置例>
図2は、光学系1、透光性部材2および撮像部3の配置を例示する図である。
図2は、全天周カメラ100に含まれる光学系1および撮像部3のうちの2組と、透光性部材2と、を例示している。この2組の光学系および撮像部は、具体的には、光学系1aおよび撮像部3aからなる組と、光学系1bおよび撮像部3bからなる組である。
【0025】
図2は、説明の便宜のために、光学系1cおよび撮像部3cからなる組と、光学系1dおよび撮像部3dからなる組と、を取り除いた状態の全天周カメラ100を示している。光学系1aおよび1bに関する以下の説明は、光学系1cおよび1dにも適用できる。同様に、撮像部3aおよび3bに関する以下の説明は、撮像部3cおよび3dにも適用できる。
【0026】
図2に示すように、光学系1aは、第1レンズ群11aと、第2レンズ群12aと、を有する。第1レンズ群11aは、レンズ111aと、レンズ112aと、レンズ113aと、レンズ114aと、レンズ115aと、を有する。第2レンズ群12aは、レンズ121aと、レンズ122aと、を有する。光軸10aは、光学系1aの光軸を表している。第1レンズ群11aおよび第2レンズ群12aに含まれる各レンズは、その中心が光軸10aにほぼ沿うように並んで配置されている。
【0027】
光学系1bは、第1レンズ群11bと、第2レンズ群12bと、を有する。第1レンズ群11bは、レンズ111bと、レンズ112bと、レンズ113bと、レンズ114bと、レンズ115bと、を有する。第2レンズ群12bは、レンズ121bと、レンズ122bと、を有する。光軸10bは光学系1bの光軸を表している。第1レンズ群11bおよび第2レンズ群12bに含まれる各レンズは、その中心が光軸10bにほぼ沿うように並んで配置されている。
【0028】
透光性部材2は、第1レンズ群11aと第2レンズ群12aとの間であって、第1レンズ群11bと第2レンズ群12bとの間に配置されている。より詳しくは、透光性部材2は、レンズ115aとレンズ121aとの間であって、レンズ115bとレンズ121bとの間に配置されている。
【0029】
透光性部材2は、レンズ115aおよびレンズ121aのそれぞれに向き合う面と、レンズ115bおよびレンズ121bのそれぞれに向き合う面と、を含む多面体である。透光性部材2は、一例としてガラス材料であるBK7を含んで構成される。但し、透光性部材2は、BK7以外のガラス材料を含んで構成することもでき、また透光性を有する樹脂材料等を含んで構成することもできる。
【0030】
光学系1aおよび1bのそれぞれは、透光性部材2を介して像を形成する。例えば、光学系1aは、入射してきた光を、第1レンズ群11a、透光性部材2および第2レンズ群12aにより撮像部3aの撮像面上に集光することによって、被写体や風景等の像を略結像させる。光学系1bは、入射してきた光を、第1レンズ群11b、透光性部材2および第2レンズ群12bにより撮像部3bの撮像面上に集光することによって、被写体や風景等の像を略結像させる。
【0031】
図2において、透光性部材2内に示した仮想円柱21は、光学系1aに入射してきた光が透光性部材2内を透過する経路を表す仮想的な円柱である。同様に、仮想円柱22は、光学系1bに入射してきた光が透光性部材2内を透過する経路を表す仮想的な円柱である。仮想円柱21および22は、実際に透光性部材2内に設けられる部位または部材ではない。
【0032】
中心Gは、全天周カメラ100の中心を表す。全天周カメラ100の中心は、全天周カメラ100の外形形状を近似した球体の中心を意味する。中心Gは、典型的には全天周カメラ100の重心である。但し、全天周カメラ100の重量分布に偏りがある場合には、中心Gの位置は、全天周カメラ100の重心位置からずれている場合もある。
【0033】
本実施形態では、中心Gは、4つの光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれにおける、第1レンズ群と第2レンズ群との間に位置する。
図2では、中心Gは、第1レンズ群11aと第2レンズ群12aとの間に位置するとともに、第1レンズ群11bと第2レンズ群12bとの間に位置している。本実施形態では、第1レンズ群11aと第2レンズ群12aとの間であって、第1レンズ群11bと第2レンズ群12bとの間には、透光性部材2が配置されている。このため、中心Gは、透光性部材2の内部に位置する。
【0034】
ノーダルポイントNaは、光学系1aのノーダルポイントを表す。ノーダルポイントNbは、光学系1bのノーダルポイントを表す。ノーダルポイントNaは、ノーダルポイントNbに対して離隔した位置にある。
【0035】
<光学系1、撮像部3および仮想正四面体5の関係例>
図3は、光学系1と、撮像部3と、仮想正四面体5と、の関係を例示する図である。
図3では、説明の便宜のため、光学系1および撮像部3のうちの1組である、光学系1bおよび撮像部3bのみを示している。
【0036】
仮想正四面体5は、光学系1および撮像部3がそれぞれ配置される位置を示すために用いられる仮想的な正四面体である。従って、仮想正四面体5は、全天周カメラ100において実際に設けられる部材ではない。
【0037】
正四面体とは、正多面体のうち面の数が4つのものをいう。正四面体において、平面視における面の形状は正三角形である。また、正四面体は、4つの面に対をなして向き合う4つの頂点を有する。本明細書では、仮想正四面体の4つの面のそれぞれを仮想面と称し、正四面体の4つの頂点のそれぞれを仮想頂点と称する。
【0038】
図3に示すように、仮想正四面体5は、仮想面51a、51b、51cおよび51dと、仮想頂点52a、52b、52cおよび52dと、を含む。
【0039】
仮想頂点52aは、仮想面51aの中心軸上に位置する。仮想面51aの中心軸は、仮想面51aの法線方向に沿い、仮想面51aの中心を通る軸である。仮想面51aと仮想頂点52aとは対をなしている。
【0040】
仮想頂点52bは、仮想面51bの中心軸上に位置する。仮想面51bの中心軸は、仮想面51bの法線方向に沿い、仮想面51bの中心を通る軸である。仮想面51bと仮想頂点52bとは対をなしている。
【0041】
仮想頂点52cは、仮想面51cの中心軸上に位置する。仮想面51cの中心軸は、仮想面51cの法線方向に沿い、仮想面51cの中心を通る軸である。仮想面51cと仮想頂点52cとは対をなしている。
【0042】
仮想頂点52dは、仮想面51dの中心軸上に位置する。仮想面51dの中心軸は、仮想面51dの法線方向に沿い、仮想面51dの中心を通る軸である。仮想面51dと仮想頂点52dとは対をなしている。
【0043】
以下の説明では、仮想面51a、51b、51cおよび51dを特に区別しない場合には、仮想面51と総称する。また仮想頂点52a、52b、52cおよび52dを特に区別しない場合には、仮想頂点52と総称する。
【0044】
図3では、例えば仮想面51aの符号の表記において、仮想面51aが含まれる仮想正四面体5と、仮想面51aの総称表記である仮想面51と、を括弧書きにより表している。仮想面51b、51cおよび51dにおいても同じである。
【0045】
本実施形態では、光学系1a、1b、1cおよび1dのそれぞれは、仮想正四面体5が有する仮想面51a、51b、51cおよび51dのいずれかに光軸が直交するように配置される。例えば
図3では、光学系1bは、その光軸10bが仮想面51bに直交するように配置されている。
【0046】
光学系1bと同様に、光学系1aは、その光軸10aが仮想面51aに直交するように配置され、光学系1cは、その光軸が仮想面51cに直交するように配置され、光学系1dは、その光軸が仮想面51dに直交するように配置される。
【0047】
本実施形態では、撮像部3は、全天周カメラの中心Gを挟んで光学系1の第1レンズ群とは反対の位置に配置される。例えば
図3では、撮像部3bは、全天周カメラ100の中心Gを挟んで、光学系1bの第1レンズ群11bとは反対の位置に配置されている。また撮像部3は、全天周カメラ100の中心Gと、仮想正四面体5の仮想頂点52と、の間に配置される。例えば
図3では、撮像部3bは、全天周カメラ100の中心Gと、仮想正四面体5の仮想頂点52bと、の間に配置されている。
【0048】
光学系1bと同様に、撮像部3aは、全天周カメラ100の中心Gを挟んで、光学系1aの第1レンズ群11aとは反対の位置に配置される。また撮像部3aは、全天周カメラ100の中心Gと、仮想正四面体5の仮想頂点52aと、の間に配置される。撮像部3cは、全天周カメラ100の中心Gを挟んで、光学系1cの第1レンズ群とは反対の位置に配置される。また撮像部3cは、全天周カメラ100の中心Gと、仮想正四面体5の仮想頂点52cと、の間に配置される。撮像部3dは、全天周カメラ100の中心Gを挟んで、光学系1dの第1レンズ群とは反対の位置に配置される。また撮像部3dは、全天周カメラ100の中心Gと、仮想正四面体5の仮想頂点52dと、の間に配置される。
【0049】
本実施形態では、光学系1に含まれる第2レンズ群および撮像部3は、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想正四面体5が有する4つの仮想頂点52のうちいずれかの仮想頂点52が位置する方向に配置される。また、光学系1に含まれる第1レンズ群は、全天周カメラ100の中心Gから見て、上記いずれかの仮想頂点52に向き合う仮想面51が位置する方向に配置される。
【0050】
例えば
図3では、光学系1bに含まれる第2レンズ群12bおよび撮像部3bは、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52bが位置する方向に配置されている。また、光学系1bに含まれる第1レンズ群11bは、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52bに向き合う仮想面51bが位置する方向に配置されている。
【0051】
光学系1bと同様に、光学系1aに含まれる第2レンズ群12aおよび撮像部3aは、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52aが位置する方向に配置される。また、光学系1aに含まれる第1レンズ群11aは、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52aに向き合う仮想面51aが位置する方向に配置される。
【0052】
光学系1cに含まれる第2レンズ群および撮像部3cは、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52cが位置する方向に配置される。また、光学系1cに含まれる第1レンズ群は、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52cに向き合う仮想面51cが位置する方向に配置される。
【0053】
光学系1dに含まれる第2レンズ群および撮像部3dは、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52dが位置する方向に配置される。また、光学系1dに含まれる第1レンズ群は、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52dに向き合う仮想面51dが位置する方向に配置される。
【0054】
<光学系1の詳細構成例>
図4は、光学系1の詳細構成を例示する断面図である。
図4では光学系1のうち光学系1aを代表して示している。光学系1aに関する以下の説明は、光学系1b、1cおよび1dに対しても適用可能である。
【0055】
図4において、レンズ111a、112aおよび113aは、メニスカス形状を有する単レンズである。レンズ114aは、凹面形状を両面に有するアクロマートレンズである。レンズ115aは、凸面形状を両面に有するアクロマートレンズである。レンズ121aは、凸面形状を両面に有するアクロマートレンズである。レンズ122aは、被写体側に凸面形状を有するアクロマートレンズである。アクロマートレンズとは、屈折率の波長分散が異なる2つのレンズを貼り合わせて1つのレンズにしたものをいう。
【0056】
光学系1aに含まれるレンズの数は、7つに限定されず適宜変更可能である。また各レンズの形状、配置、面間隔および材質等も、全天周カメラ100の用途や要求仕様等に応じて適宜変更可能である。
【0057】
光線15aは、複数の画角ごとに光学系1aを透過する光線を表している。4つの光学系および4つの撮像部を用いて全天周画像Siを得るためには、光学系1aの最大画角θは141[度]以上であることが好ましい。なお、
図4では、最大画角θの半角であるθ/2を表示している。
【0058】
第1の点H1は、光学系1aにおける直径が最大となる外縁部上の点である。第1仮想線61は、第1の点H1と全天周カメラ100の中心Gとを通る仮想的な線である。第2の点H2は、光学系1aの光軸10aを挟んで第1の点H1とは反対の位置にある上記外縁部上の点である。第2仮想線62は、第2の点H2と全天周カメラ100の中心Gとを通る仮想的な線である。
【0059】
本実施形態では、第1仮想線61と第2仮想線62とのなす角度φは、141[度]以下であることが好ましい。角度φを141[度]以下とすることにより、第1レンズ群11aと第2レンズ群12aとの間に透光性部材2を配置しつつ、撮像部3aの撮像面上において略結像した像を、光学系1aによって形成可能となる。
【0060】
<透光性部材2の詳細構成例>
図5は、透光性部材2の詳細構成を例示する斜視図である。透光性部材2は、8つの部材面201~208を含む切頂四面体である。切頂四面体とは、正四面体の各頂点を切り落とした立体をいう。
【0061】
部材面201と部材面202、部材面203と部材面204、部材面205と部材面206、部材面207と部材面208、のそれぞれは、所定の長さLを空けて向き合う一対の部材面の組である。透光性部材2は、4つの光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれの光軸に沿う方向に長さLを有する。また、透光性部材2は、4組の一対の部材面それぞれが、4つの光学系1a、1b、1cおよび1dの光軸に直交するように配置される。
【0062】
例えば、部材面201と部材面202との間の長さLは、光学系1bの光軸10bに沿う方向における長さである。部材面201および部材面202は、光学系1bの光軸10bに直交するように配置される。
【0063】
部材面203と部材面204との間の長さLは、光学系1aの光軸10aに沿う方向における長さである。部材面203および部材面204は、光学系1aの光軸10aに直交するように配置される。
【0064】
部材面205と部材面206との間の長さLは、光学系1cの光軸に沿う方向における長さである。部材面205および部材面206は、光学系1cの光軸に直交するように配置される。
【0065】
部材面207と部材面208との間の長さLは、光学系1dの光軸に沿う方向における長さである。部材面207および部材面208は、光学系1dの光軸に直交するように配置される。
【0066】
図5では、部材面201と部材面202との間における長さLのみが表示されているが、部材面203と部材面204、部材面205と部材面206、部材面207と部材面208、のそれぞれにおいても同じ長さLである。本実施形態では、一例として長さLは50[mm]である。
【0067】
<制御部4の機能構成例>
図6は、制御部4の機能構成を例示するブロック図である。制御部4は、撮像制御部41と、生成部42と、出力部43と、を有する。制御部4は、これらの機能を電気回路で実現できる他、これらの機能の一部をソフトウェア(CPU)により実現することもできる。また制御部4は、複数の回路または複数のソフトウェアによってこれらの機能を実現してもよい。
【0068】
撮像制御部41は、光学系1と撮像部3の4つの組によって相互に異なる方向の被写体や風景等を撮影した4つの画像を取得可能に撮像部3の動作を制御する。撮像制御部41は、例えば撮像部3a、3b、3cおよび3dそれぞれの露出開始タイミング、露出時間、あるいは各撮像部間での同期等を制御できる。撮像制御部41は、撮像部3a、3b、3cおよび3dそれぞれが撮像した画像を受信し、生成部42に出力する。
【0069】
生成部42は、撮像制御部41を介して入力した撮像部3a、3b、3cおよび3dそれぞれによる4つの画像を繋ぎ合わせることにより、全天周画像Siを生成する。生成部42は、生成した全天周画像Siを、出力部43を介して外部装置に出力する。
【0070】
<比較例>
図7は、比較例に係る全天周カメラ100Xの構成を示す図である。全天周カメラ100Xは、光学系1Xと、撮像部3Xと、を有する。
【0071】
光学系1Xは、光学系1aX、1bX、1cXおよび1dXを含む。光学系1aX、1bX、1cXおよび1dXそれぞれは、相互に異なる方向における被写体や風景等の像を形成可能に配置されている。
【0072】
撮像部3Xは、撮像部3aX、3bX、3cXおよび3dXを含む。光学系1aXと撮像部3aX、光学系1bXと撮像部3bX、光学系1cXと撮像部3cX、および光学系1dXと撮像部3dXは、それぞれが組を構成している。
【0073】
中心GXは、全天周カメラ100Xの中心を表す。中心GXの意味は、全天周カメラ100の中心Gと同じである。ノーダルポイントNaXは、光学系1aXのノーダルポイントを表す。ノーダルポイントNbXは、光学系1bXのノーダルポイントを表す。ノーダルポイントNcXは、光学系1cXのノーダルポイントを表す。ノーダルポイントNdXは、光学系1dXのノーダルポイントを表す。最大幅WXは、全天周カメラ100Xにおいて最も幅が広い部分の幅である。
【0074】
全天周カメラ100Xでは、全天周カメラの中心GXは、撮像部3aXと撮像部3cXとの間であって、撮像部3bXと撮像部3dXとの間に位置する。光学系1Xおよび撮像部3Xからなる複数の組同士は、全天周カメラの中心GXを挟んで両側に配置される。例えば、光学系1bXおよび撮像部3bXの組と、光学系1dXおよび撮像部3dXの組とは、全天周カメラの中心GXを挟んで両側に配置される。これらの構成の場合には、光学系1bXにおける被写体側の端部と、光学系1dXにおける被写体側の端部と、の間の距離が長くなり、最大幅WXが長くなる結果、全天周カメラ100Xが大型化する。最大幅WXは、一例として540[mm]であり、実施形態に係る全天周カメラ100の最大幅Wの287[mm]と比較して広くなる。
【0075】
また、全天周カメラ100Xでは、ノーダルポイント同士の間の距離は、実施形態に係る全天周カメラ100におけるノーダルポイント同士の間の距離と比較して長い。例えば全天周カメラ100XにおけるノーダルポイントNbXとノーダルポイントNdXとの間の距離は、全天周カメラ100におけるノーダルポイントNbとノーダルポイントNdとの間の距離と比較して長い。ノーダルポイント同士の間の距離が長くなることによりスティッチング誤差が大きくなる。この結果、繋ぎ合わされる画像同士の繋目が目立つこと等によって全天周画像の品質が低下する。
【0076】
<全天周カメラ100の作用効果>
以上説明したように、全天周カメラは、光学系1a、1b、1cおよび1d(4つの光学系)と、撮像部3a、3b、3cおよび3d(4つの撮像部)と、生成部42と、を有する。光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれは、仮想正四面体5が有する仮想面51a、51b、51cおよび51dのいずれかに光軸が直交するように配置される。全天周カメラ100の中心Gは、光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれにおける第1レンズ群と第2レンズ群との間に位置する。例えば、例えば光学系1bは、仮想面51bに光軸10bが直交するように配置される。全天周カメラ100の中心Gは、少なくとも第1レンズ群11aと第2レンズ群12aとの間に位置するとともに、第1レンズ群11bと第2レンズ群12bとの間に位置する。
【0077】
上記構成により、光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれが相互に近づくことに伴って、各光学系のノーダルポイントは相互に近くなる。各光学系のノーダルポイントが近いほど、スティッチング誤差は小さくなるため、本実施形態では、スティッチング誤差を低減可能な全天周カメラ100を提供できる。また、光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれが相互に近づくことにより、全天周カメラ100の最大幅Wを短かくできるため、本実施形態では、全天周カメラ100を小型化できる。
【0078】
また、本実施形態では、撮像部3は、全天周カメラ100の中心Gを挟んで光学系1の第1レンズ群とは反対の位置に配置される。例えば撮像部3bは、全天周カメラ100の中心Gを挟んで光学系1bの第1レンズ群11bとは反対の位置に配置される。この構成により光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれを相互に近づけることができるため、本実施形態では、スティッチング誤差を低減するとともに、全天周カメラ100を小型化できる。
【0079】
また、本実施形態では、光学系1の第2レンズ群および撮像部3は、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想正四面体5が有する4つの仮想頂点52のうちいずれかの仮想頂点52が位置する方向に配置される。光学系1の第1レンズ群は、全天周カメラ100の中心Gから見て、上記いずれかの仮想頂点52に向き合う仮想面51が位置する方向に配置される。例えば、第2レンズ群12bおよび撮像部3bは、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52bが位置する方向に配置される。第1レンズ群11bは、全天周カメラ100の中心Gから見て、仮想頂点52bに向き合う仮想面51bが位置する方向に配置される。これらの構成により、光学系1a、1b、1cおよび1dのそれぞれを相互に近づけることができるため、本実施形態では、スティッチング誤差を低減するとともに、全天周カメラ100を小型化できる。
【0080】
また、本実施形態では、光学系1および撮像部3の数はそれぞれ4つである。仮想正四面体は、仮想面51の反対側が頂点になっているため、第1レンズ群、第2レンズ群および撮像部が線状に並ぶように、第1レンズ群、第2レンズ群および撮像部を配置できる。これにより、全天周カメラ100を小型化できる。
【0081】
また、本実施形態では、第1の点H1と全天周カメラ100の中心Gとを通る第1仮想線61と、第2の点H2と全天周カメラ100の中心Gとを通る第2仮想線62とのなす角度φは、141[度]以下である。この構成により、全天周画像Siを得るために必要な光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれを相互に近づけることができるため、本実施形態では、スティッチング誤差を低減するとともに、全天周カメラ100を小型化できる。
【0082】
また、本実施形態では、光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれの最大画角θは、141[度]以上である。これにより、全天周カメラ100は、光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれによる4つの画像を繋ぎ合わせ、全天周画像Siを生成できる。
【0083】
また、本実施形態では、全天周カメラ100は、光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれの第1レンズ群と第2レンズ群との間に配置される透光性部材2を有する。光学系1a、1b、1cおよび1dは、透光性部材2を介して像を形成する。透光性部材2は、光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれの光軸に沿う方向に所定の長さLを有する。透光性部材2を配置することにより、第1レンズ群と第2レンズ群との間が空気層である場合と比較して、第1レンズ群と第2レンズ群との間の距離が短くなる。これにより、光学系1a、1b、1cおよび1dのそれぞれが相互に近くなるため、本実施形態では、スティッチング誤差を低減でき、また全天周カメラ100を小型化できる。
【0084】
第1レンズ群と第2レンズ群との間の距離を短縮する観点では、透光性部材2の屈折率は、高いほうが好ましい。なお、全天周カメラ100は、透光性部材2を有する構成に限定されるものではなく、透光性部材2を設けず、第1レンズ群と第2レンズ群との間に空気層のみを有する構成であってもよい。
【0085】
また、本実施形態では、透光性部材2は、所定の長さLを空けて向き合う一対の部材面を複数組有する切頂四面体である。切頂四面体は、複数組の一対の部材面それぞれが、光学系1a、1b、1cおよび1dの光軸に直交するように配置される。これにより、第1レンズ群と第2レンズ群との間に小さい透光性部材2を配置可能になる。この結果、光学系1a、1b、1cおよび1dそれぞれを相互に近づけることができるため、本実施形態では、スティッチング誤差を低減するとともに、全天周カメラ100を小型化できる。
【符号の説明】
【0086】
1、1a、1b、1c、1d 光学系
2 透光性部材
21、22 仮想円柱
201、202、203、204、205、206、207、208 部材面
3、3a、3b、3c、3d 撮像部
4 制御部
41 撮像制御部
42 生成部
43 出力部
5 仮想正四面体
51、51a、51b、51c、51d 仮想面
52、52a、52b、52c、52d 仮想頂点
61 第1仮想線
62 第2仮想線
11a 第1レンズ群
111a、112a、113a、114a、115a、111b、112b、113b、114b、115b レンズ
12a 第2レンズ群
121a、122a、121b、122b レンズ
15a 光線
100 全天周カメラ
G 全天周カメラの中心
H1 第1の点
H2 第2の点
L 所定の長さ
Na、Nb ノーダルポイント
Si 全天周画像
W 最大幅
θ 最大画角
φ 角度