(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156716
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】判定装置、路面認識方法、および推定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 15/931 20200101AFI20231018BHJP
G01S 15/04 20060101ALI20231018BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G01S15/931
G01S15/04
E01C23/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066235
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 達也
(72)【発明者】
【氏名】深代 優輝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 厚司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲弥
【テーマコード(参考)】
2D053
5J083
【Fターム(参考)】
2D053AA33
2D053FA03
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC29
5J083AD04
5J083AD06
5J083AD14
5J083AE06
5J083AF05
5J083BE12
5J083BE19
5J083BE38
5J083CA10
5J083CA12
(57)【要約】
【課題】路面の凹部を検知できる技術を提供する。
【解決手段】判定装置100は、射出波を射出する射出部11と、射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部12と、を有し、反射波を用いて、射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができる1つ以上のセンサ部10と、反射波の受信強度を用いて、路面において凹部が存在するか否かを判定する判定部20とを備える。判定部は、受信強度を縦軸とし、センサ部からの距離または射出波を射出してから反射波を受け取るまでの時間を横軸とした第1グラフにおける包絡線である第2グラフにおいて、第1反射区間と第2反射区間との間に無反射区間が存在する場合であって、かつ、複数の極大値であってそれぞれ第2反射区間における受信強度が予め定められた閾値以上の受信強度である複数の極大値が、一定間隔で位置している場合に、凹部が存在すると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定装置(100)であって、
射出波を射出する射出部(11)と、前記射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部(12)と、を有し、前記反射波を用いて、前記射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができる1つ以上のセンサ部(10)と、
前記反射波の受信強度を用いて、路面において凹部が存在するか否かを判定する判定部(20)と、を備え、
前記判定部は、
前記受信強度を縦軸とし、前記センサ部からの距離または前記射出波を射出してから前記反射波を受け取るまでの時間を横軸とした第1グラフにおける包絡線である第2グラフにおいて、
第1路面からの前記反射波による第1反射区間と、前記前後方向において前記第1反射区間よりも前記判定装置から遠い位置からの前記反射波による第2反射区間と、の間に存在する無反射区間を検知し、
前記無反射区間が存在する場合であって、かつ、複数の極大値であってそれぞれ前記第2反射区間における前記受信強度が予め定められた閾値以上の受信強度である複数の極大値が、一定間隔で位置している場合に、前記凹部が存在すると判定する、判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の判定装置であって、更に、
前記センサ部が測定した距離を用いて、前記複数の極大値の前記横軸における間隔に基づき前記路面の延伸方向における前記凹部の幅である溝幅を算出する溝幅算出部(31)と、を備える、判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の判定装置であって、
前記溝幅算出部は、気温と湿度との少なくとも一方の測定値を用いて、前記センサ部が測定した距離を補正する、判定装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の判定装置であって、
前記溝幅算出部は、前記受信強度と前記無反射区間との関係を教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて前記溝幅を推定する、判定装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2項に記載の判定装置であって、更に、
前記センサ部が測定した距離を用いて、前記無反射区間の長さに基づいて前記凹部の高さである溝高を算出する溝高算出部(32)、を備える、判定装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の判定装置であって、更に、
前記第2グラフの第2反射区間において前記センサ部から最も近い位置にある第1極大値の前記受信強度と、前記複数の極大値の前記受信強度の減衰量とに基づき、前記凹部の高さである溝高を算出する溝高算出部を備える、判定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の判定装置であって、
前記溝高算出部は、前記受信強度と前記無反射区間との関係を教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて前記溝高を推定する、判定装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の判定装置であって、
前記センサ部は、前記反射波の入射角を検知でき、
前記判定部は、前記入射角が予め定められた範囲内である前記反射波の受信強度を用いて、前記路面において前記凹部が存在するか否かを判定する、判定装置。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の判定装置であって、
前記センサ部は、複数の周波数の前記射出波を射出し、
前記判定部は、周波数毎に前記凹部が存在するか否かの判定を行い、前記凹部が存在するという判定結果の数が予め定められた閾値以上の場合に、前記凹部が存在すると判定する、判定装置。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の判定装置であって、
複数の前記センサ部を備え、
前記判定部は、前記センサ部毎に前記凹部が存在するか否かの判定を行い、前記凹部が存在するという判定結果の数が予め定められた閾値以上の場合に、前記凹部が存在すると判定する、判定装置。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の判定装置であって、
前記センサ部は、指向性を有するセンサである、判定装置。
【請求項12】
請求項11に記載の判定装置であって、
前記センサ部は、フェーズドアレイである、判定装置。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の判定装置であって、
前記射出部は、前記射出波として音波もしくは電波を射出する、判定装置。
【請求項14】
路面において凹部が存在するか否かを判定する路面認識方法であって、
射出波を射出する射出部と前記射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部とを有し、前記反射波を用いて、前記射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができる1つ以上のセンサが測定した距離および前記反射波の受信強度を取得する工程と、
前記受信強度を縦軸とし、前記センサからの距離または前記射出波を射出してから前記反射波を受け取るまでの時間を横軸とした第1グラフにおける包絡線である第2グラフにおいて、第1路面からの前記反射波による第1反射区間と、前記前後方向において前記第1反射区間よりも前記センサから遠い位置からの前記反射波による第2反射区間と、の間に存在する無反射区間を検知し、前記無反射区間が存在する場合であって、前記第2反射区間における前記受信強度が予め定められた閾値以上の受信強度である複数の極大値が、一定間隔で位置している場合に、前記凹部が存在すると判定する工程と、を含む、路面認識方法。
【請求項15】
路面において凹部が存在するか否かを判定する推定装置(200)であって、
射出波を射出する射出部と前記射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部とを有し、前記反射波を用いて、前記射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができる1つ以上のセンサが測定した距離を用いて、前記凹部が存在するか否かを判定する判定部と、
前記凹部が存在するか否かの判定結果を出力する出力部(40)と、を備え、
前記判定部は、
前記受信強度を縦軸とし、前記センサからの距離または前記射出波を射出してから前記反射波を受け取るまでの時間を横軸とした第1グラフにおける包絡線である第2グラフにおいて、
第1路面からの前記反射波による第1反射区間と、前記前後方向において前記第1反射区間よりも前記推定装置から遠い位置からの前記反射波による第2反射区間と、の間に存在する無反射区間を検知し、
前記無反射区間が存在する場合であって、前記第2反射区間における前記受信強度が予め定められた閾値以上の受信強度である複数の極大値が、一定間隔で位置している場合に、前記凹部が存在すると判定する、推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定装置、路面認識方法、および推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
判定装置として、超音波やレーザ等の送信波を発し、路面によって反射された反射波を受信し、その受信波に基づいて、路面を検知するものが知られている。特許文献1には、受信波の形態を、過去の受信波の形態と比較して欠落部分を検知することで、路面に凹部を存在することを判定する技術が開示されている。また、特許文献2には、受信波の測定点から、距離や高度が大きく変化する部分を検知することで、路面に凹部を存在することを判定する技術が開示されている。また、特許文献3には、路面の高さデータを並べ替え、変化点を検出することで、路面に凹部を存在することを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-132511号公報
【特許文献2】特開2017-15601号公報
【特許文献3】特開2012-220227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、路面の延伸方向において、手前の路面と奥の路面との間に存在する段差であって手前の路面から下降する段差である下り段差と、凹部とを区別できない。そのため、路面の凹部を検知できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、判定装置(100)が提供される。判定装置は、射出波を射出する射出部(11)と、前記射出波が物標に反射して生じる反射波を受けとる受取部(12)と、を有し、前記反射波を用いて、前記射出部の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができる1つ以上のセンサ部(10)と、
前記反射波の受信強度を用いて、路面において凹部が存在するか否かを判定する判定部(20)と、を備える。前記判定部は、前記受信強度を縦軸とし、前記センサ部からの距離または前記射出波を射出してから前記反射波を受け取るまでの時間を横軸とした第1グラフにおける包絡線である第2グラフにおいて、第1路面からの前記反射波による第1反射区間と、前記前後方向において前記第1反射区間よりも前記判定装置から遠い位置からの前記反射波による第2反射区間と、の間に存在する無反射区間を検知し、前記無反射区間が存在する場合であって、かつ、複数の極大値であってそれぞれ前記第2反射区間における前記受信強度が予め定められた閾値以上の受信強度である複数の極大値が、一定間隔で位置している場合に、前記凹部が存在すると判定する。
【0006】
この形態の判定装置によれば、例えば、下り段差の場合、複数の極大値が一定間隔で位置しないため、凹部と下り段差とを区別して、凹部を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】凹部検出処理の一例を示したフローチャートである。
【
図4】距離と受信強度との関係を示す第1グラフである。
【
図5】第1グラフの包絡線を示す第2グラフである。
【
図6】第3実施形態における凹部の一例を示す説明図である。
【
図8】第3実施形態における凹部の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1に示すように、判定装置100は、センサ部10と、判定部20と、算出部30と、出力部40と、を備える。判定装置100は、周囲の物体までの距離を検出する。判定装置100は、例えば、車両に搭載されるソナーである。判定装置100として、ミリ波レーダやLiDAR(Light Detection and Ranging)、光の飛行時間を利用して三次元位置を測定可能なTOFカメラ(TOF:Time Of Flight)を採用できる。
【0009】
センサ部10は、射出波を射出する射出部11と、射出波が物標に反射して生じる様々な反射波を受けとる受取部12と、を有する。センサ部10は、受取部12が受け取る反射波を用いて、射出部11の前後方向における予め定められた検知範囲に存在する物体までの距離を測定することができる。射出部11の前後方向とは、判定装置100に基づいて定められる方向である。本実施形態において、射出部11は、射出波として音波を射出する。射出部11は、電波や光波を射出してもよい。
【0010】
判定部20は、センサ部10が受信した反射波の受信強度を用いて、路面に凹部が存在するか否かを判定する。
図2に示すように、「凹部」とは、路面の延伸方向において、第1路面301と、第1路面301よりも判定装置100から遠い第2路面302との間に存在する溝303である。本開示において、第1路面301と第2路面302との間に存在する窪みも凹部に含まれる。
【0011】
算出部30(
図1参照)は、センサ部10が受信した反射波の受信強度を用いて、凹部における各部位の長さを算出する。算出部30は、溝幅算出部31と溝高算出部32とを有する。溝幅算出部31は、センサ部10が測定した距離を用いて、路面の延伸方向における凹部の幅である溝幅Lwを算出する。溝高算出部32は、センサ部10が測定した距離を用いて、凹部の高さである溝高Lhを算出する。以下では、
図2に示す路面の形状を例として、算出部30が溝幅Lwおよび溝高Lhを算出する方法を説明する。算出部30が溝幅Lwおよび溝高Lhを算出する詳細については後述する。
【0012】
出力部40は、算出部30が算出した溝幅Lwおよび溝高Lhを出力する。出力部40は、例えば、判定装置100を搭載する車両に出力する。判定部20と算出部30と出力部40とを併せて、推定装置200ともいう。
【0013】
図3に示す凹部検出処理は、判定部20が路面において凹部が存在するか否かを判定する処理である。ステップS100において、判定部20は、反射波の受信強度を取得する。より具体的には、判定部20は、ある時点におけるセンサ部10が受取部12によって取得した路面や凹部の壁面に反射して生じる各反射波の受信強度を取得する。
【0014】
ステップS110において、判定部20は、ステップS100で取得した受信強度から無反射区間を検知する。より具体的には、受信強度とセンサ部10からの距離との関係を示すグラフの包絡線から無反射区間を検知する。本実施形態において、「無反射区間」とは、第1路面301からの反射波による第1反射区間と、溝303の第2路面302と接続している壁面や第2路面302からの反射波による第2反射区間と、の間に存在する受信強度が予め定めた値より低い位置が連続する区間である。なお、無反射区間が検知されなかった場合、判定部20は、凹部が検出されなかった、と判定して凹部検出処理を終了してもよい。
【0015】
図4に示す第1グラフの縦軸は受取部12が取得した反射波の受信強度を示している。横軸は、センサ部10からの距離を示している。
図5に太線で示す第2グラフの縦軸は受取部12が取得した反射波の受信強度を示している。横軸は、センサ部10からの距離を示している。第2グラフは、第1グラフの包絡線を表している。より具体的には、第2グラフは、第1グラフにおけるグラフ群G1、G2、G3、G4の包絡線である。グラフ群G1~G4は、受信強度の極大値が予め定められた値以上となるグラフが予め定められた大きさの区間以上連続している集合である。本実施形態において、グラフ群G1~G4は、受信強度が0以上となるグラフの集合である。包絡線は、受信強度の極大値に接する近似曲線である。
【0016】
図5における距離d1から距離d2の区間が第1反射区間A1であり、距離d3から距離d7の区間が第2反射区間A2である。第1反射区間A1と第2反射区間A2との間に存在する区間が無反射区間A3である。なお、本実施形態において、無反射区間A3における受信強度は0であるが、これに限らず、無反射区間A3における受信強度が0より大きくてもよい。
【0017】
ステップS120(
図3参照)において、判定部20は、
図5に示す第2グラフにおける、第2反射区間A2における受信強度が予め定められた範囲内の受信強度である複数の極大値P1~P3が、一定間隔で位置している場合に、凹部が存在すると判定する。第2反射区間A2における受信強度が予め定められた範囲内の受信強度である極大値とは、第2反射区間A2において受信強度が、第1閾値受信強度Th1以上であって第2閾値受信強度Th2以下の極大値である。より具体的には、判定部20は、第1極大値P1の横軸上の位置である距離d4の値と第2極大値P2の横軸上の位置である距離d5の値の差D1と、第2極大値P2の横軸上の位置である距離d5の値と第3極大値P3の横軸上の位置である距離d6の値の差D2と、の差が予め定められた範囲内の値である場合に、凹部が存在すると判定する。本実施形態において、第1閾値受信強度Th1と第2閾値受信強度Th2とは、一定の値である。なお、第1閾値受信強度Th1と第2閾値受信強度Th2とは、判定装置100からの距離d1に応じた空気減衰を考慮した値でもよく、距離d1が遠い程小さい値を採用してもよい。
【0018】
算出部30は、凹部検出処理において、凹部が存在すると判定された場合、溝幅Lwおよび溝高Lhを算出する。本実施形態において、溝幅算出部31は、複数の極大値P1~P3の横軸における差D1、D2に基づき、溝幅Lwを算出する。射出部11から射出された射出波は、凹部の内壁によって多重反射するため、溝幅Lwが大きくなると、極大値の間隔が大きくなる。例えば、溝幅算出部31は、溝幅Lwとして、差D1と差D2との平均値を算出する。平均値は、加算平均でもよく、加重平均でもよい。
【0019】
本実施形態において、溝高算出部32は、無反射区間A3の長さに基づいて溝高Lhを算出する。溝高Lhが小さい場合、溝高Lhが大きい場合よりも入射波が凹部内で多重反射する回数が少ないため、無反射区間A3が短くなる。例えば、溝高算出部32は、次の式(1)によって、溝高Lhを算出する。
【0020】
Lh=Ln×sinθ…(1)
ここで、Lnは無反射区間A3の長さであり、θは射出部11から射出される射出波の入射角である。
【0021】
以上で説明した本実施形態の判定装置100によれば、判定部20は、受信強度から無反射区間A3を検出し、第2反射区間A2における受信強度が予め定められた範囲内の受信強度である複数の極大値P1~P3が、一定間隔で位置している場合に、凹部が存在すると判定する。例えば、下り段差の場合、凹部と異なり、多重反射が発生しないため、複数の極大値が一定間隔で位置しない。そのため、凹部と下り段差とを区別して、凹部を検知できる。
【0022】
また、本実施形態において、溝幅算出部31は、溝幅Lwとして、複数の極大値P1~P3の横軸における差D1、D2の平均値を算出する。そのため、溝幅算出部31は、他のセンサを用いることなく溝幅Lwを算出できる。
【0023】
また、本実施形態において、溝高算出部32は、無反射区間A3の長さに基づいて式(1)を用いて溝高Lhを算出する。そのため、溝高算出部32は、他のセンサを用いることなく溝高Lhを算出できる。
【0024】
B.第2実施形態:
第2実施形態において、
図2に示した路面の形状を例として溝高算出部32が溝高Lhを算出する方法を説明する。第2実施形態は、溝高算出部32が、第2グラフの第2反射区間A2においてセンサ部10から最も近い位置にある第1極大値P1の受信強度と、複数の極大値P1~P3の受信強度の減衰量(以下、単に「受信強度の減衰量」とも言う)とに基づき、溝高Lhを算出する点が、第1実施形態と異なる。受信強度の減衰量の詳細については後述する。第2実施形態の判定装置100の構成は、第1実施形態の判定装置100の構成と同一であるため、判定装置100の構成の説明は省略する。
【0025】
本実施形態において、溝高算出部32は、受信強度の減衰量として、例えば、複数の極大値P1~P3の包絡線である第3グラフの近似式の第1極大値P1における接線の傾きを用いる。溝高算出部32は、第1極大値P1と受信強度の減衰量と溝高Lhとの関係を予め実験やシミュレーションによって求めた関数やテーブルを用いて、溝高Lhを算出する。溝高Lhが小さい場合、溝303へ入射した射出波は、溝高Lhが大きい場合よりも早く溝303の外へ出るため、溝303の内壁で反射する度に受信強度が大きく減衰する。溝高Lhが大きい場合、溝303へ入射した射出波は、溝高Lhが小さい場合よりも遅く溝303の外へ出るため、溝303の内壁で反射しても受信強度が大きく減衰しない。そのため、溝高算出部32は、第1極大値P1の受信強度が高く、受信強度の減衰量が大きい場合の溝高Lhが、第1極大値P1の受信強度が低く、受信強度の減衰量が小さい場合の溝高Lhよりも小さいとして、溝高Lhを算出する。
【0026】
以上で説明した第2実施形態の判定装置100によれば、溝高算出部32が、第1極大値P1の受信強度と、複数の極大値P1~P3の受信強度の減衰量とに基づき、溝高Lhを算出する。そのため、溝高算出部32は、反射波の受信強度の減衰量に基づき、溝高Lhを算出できる。
【0027】
C.第3実施形態:
第3実施形態は、判定部20が、入射角が予め定められた閾値範囲内である反射波の受信強度を用いて、凹部が存在するか否かを判定する点が、第1実施形態と異なる。第3実施形態の判定装置100の構成は、第1実施形態の判定装置100の構成と同一であるため、判定装置100の構成の説明は省略する。
【0028】
第3実施形態において、
図6に示す路面の形状を例として、判定部20が、凹部が存在するか否かを判定する方法を説明する。
図6に示すように、路面の延伸方向において、第1路面301と、第1路面301よりも判定装置100から遠い第2路面302との間に、第1路面301から下降する溝303があり、第2路面302に障害物305がある。すなわち、
図6に示す路面の形状は、障害物305が存在する点が、
図2に示す路面の形状と異なる。
【0029】
図7に示す第2グラフにおいて、実線は、受取部12への入射角が第1範囲内である反射波の受信強度における第2グラフを表しており、一点鎖線は、入射角が第2範囲内である反射波の受信強度における第2グラフを表している。第1範囲は、第2範囲よりも入射角が大きい範囲である。第1範囲は、閾値範囲内の入射角の範囲であり、第2範囲は閾値範囲外の入射角の範囲である。
【0030】
本実施形態において、判定部20は、ステップS120(
図3参照)において、入射角が予め定められた閾値範囲内である反射波の受信強度を用いて、第2反射区間A2cにおける複数の極大値が、一定間隔で位置している場合に、凹部が存在すると判定する。
図7に示すように、第2グラフにおける第2反射区間A2cにおける複数の極大値P1~P3、P6は一定間隔で位置していないが、入射角が第1範囲内である反射波の受信強度を示すグラフにおける第2反射区間A2cにおける複数の極大値P1~P3は一定間隔で位置している。従って、判定部20は、凹部が存在すると判定する。路面の延伸方向において溝303の奥に障害物305がある場合に、溝303からの反射波の入射角と障害物305からの反射波の入射角とは異なる。そのため、判定部20は、入射角が予め定められた閾値範囲内である反射波の受信強度に基づいて、凹部が存在するか否かを判定できる。また、一つの障害物305からの反射波によって、第2グラフの第2反射区間A2cにおける極大値は複数生じない。そのため、
図7に示す第2グラフの第2反射区間A2cにおける入射角が第2範囲内である反射波の受信強度を示すグラフの極大値は1つだけであるため、溝303からの反射波ではなく、障害物305からの反射波であると判定できる。
【0031】
また、
図8に示すように、路面の延伸方向において、第1路面301と、第1路面301よりも判定装置100から遠い第2路面302との間に、第1路面301から下降する溝303があり、第2路面302に複数の障害物304が路面の進行方向に沿って連続している場合も、同様に溝303からの反射波と、障害物305からの反射波とを判別できる。
【0032】
以上で説明した第3実施形態の判定装置100によれば、判定部20が、入射角が閾値範囲内である反射波の受信強度を用いて、凹部が存在するか否かを判定するため、例えば、溝303の奥に障害物305がある場合であっても、凹部を精度良く検知できる。
【0033】
また、判定部20は、溝303に起因する第2グラフと障害物305に起因する第2グラフとを判別できる。そのため、算出部30は、より精度良く複数の極大値の横軸における間隔や無反射区間A3の長さを算出できるため、より精度良く溝幅Lwや溝高Lhを算出することができる。
【0034】
D.他の実施形態:
(D1)上述した実施形態において、判定装置100は、センサ部10と判定部20と算出部30と出力部40とを備える。この代わりに、判定装置100は、センサ部10と判定部20のみを備える構成でもよい。
【0035】
(D2)上述した実施形態において、算出部30は、溝幅算出部31と溝高算出部32とを有する。この代わりに、算出部30は、溝幅算出部31と溝高算出部32のいずれか一方のみを有する構成でもよい。
【0036】
(D3)上述した実施形態において、センサ部10は、指向性を有するセンサでもよい。無指向のセンサよりも、等距離円状に存在する路面からの反射波を抑制できるため、より無反射区間を精度よく検知できる。また、センサ部10は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスを複数並べたフェーズドアレイでもよい。センサ部10は、例えば、射出部11および受取部12が一体となったPMUT(Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducers)を有していてもよく、受取部12としてマイクアレイを有していてもよい。
【0037】
(D4)上述した実施形態において、センサ部10は、複数の周波数の射出波を射出してもよい。この場合、判定部20は、周波数毎の反射波において凹部が存在するか否かの判定を行い、凹部が存在するという判定結果の数が予め定められた閾値以上の場合に、凹部が存在すると判定する。閾値はセンサ部10が受信できる反射波の周波数の種類の数以下の値である。
【0038】
(D5)上述した実施形態において、判定装置100は、センサ部10を複数備えてもよい。この場合、判定部20は、センサ部10毎に凹部が存在するか否かの判定を行い、凹部が存在するという判定結果の数が予め定められた閾値以上の場合に、凹部が存在すると判定する。閾値は判定装置100が備えるセンサ部10の数以下の値である。
【0039】
(D6)上述した実施形態において、判定部20は、第2グラフにおける、第2反射区間A2における受信強度が予め定められた範囲内の受信強度である複数の極大値を用いて、凹部が存在するか否かを判定している。これに限らず、判定部20は、第2グラフにおける、第2反射区間A2における受信強度が予め定められた第1閾値受信強度Th1以上の受信強度である複数の極大値P1を用いて、凹部が存在するか否かを判定してもよい。
【0040】
(D7)上述した実施形態において、溝幅算出部31は、溝幅Lwとして、差D1と差D2との平均値を算出している。これに限らず、溝幅算出部31は、溝幅Lwとして、ある極大値と、ある極大値と隣接する他の極大値との間隔を算出してもよい。例えば、溝幅算出部31は、差D1を溝幅Lwとして算出しても良く、差D2を溝幅Lwとして算出してもよい。
【0041】
(D8)上述した実施形態において、算出部30は、気温と湿度との少なくとも一方の測定値を用いて、センサ部10が測定した距離を補正してもよい。より具体的には、算出部30は、空気による吸収によって生じる、音波の伝搬に伴う減衰を補正してもよい。音波の伝搬に伴う減衰は、気温が高くなるほど大きくなる。また、音波の伝搬に伴う減衰は、湿度が高くなるほど大きくなる。すなわち、気温および湿度が高くなると、受信強度が小さくなる。また、音波の伝搬速度が速くなるため、第2グラフにおける極大値の間隔が狭くなる。
【0042】
この形態によれば、例えば、溝幅算出部31は、グラフにおける複数の極大値の間隔を精度良く推定できるため、溝幅Lwを精度良く算出できる。溝幅算出部31は、例えば、受信強度が次の式(2)に比例することに基づき、受信強度を補正する。
T∝exp(-αx)…(2)
ここでTは音圧であり、αは音の吸収係数であり、xはセンサ部10が測定した距離である。αは温度と湿度によって定められる。なお、溝幅算出部31は、射出部11が音波もしくは電波を射出する場合に、補正を行うことが好ましい。また、判定部20は、気温と湿度との少なくとも一方の測定値を用いて、第1閾値受信強度Th1や第2閾値受信強度Th2を決定してもよい。
【0043】
(D9)上述した実施形態において、溝高算出部32は、例えば、次の式(3)によって、溝高Lhを算出してもよい。
【0044】
Lh=α×Ln+β×Lw+γ×tanθ…(3)
ここで、αおよびβ、γは回帰係数である。回帰係数は、例えば、実験やシミュレーションによって予め求めることができる。入射角は、例えば、予め測定した第1路面301からセンサ部10までの垂直距離hs(
図2参照)と、センサ部10が測定した第1路面301の終了点Pt(
図2参照)までの直線距離Lu(
図2参照)とに基づいて定められる。なお、上記式(3)における各変数は、これに限らず、例えば、tanθに代えて、垂直距離hsや直線距離Luを用いてもよい。また、溝高算出部32は、非線形の式によって溝高Lhを算出してもよい。
【0045】
(D10)上述した実施形態において、溝幅算出部31は、受信強度と無反射区間A3との関係を教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて溝幅Lwを推定してもよい。より具体的には、溝幅算出部31は、教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて、
凹部が存在するか否か、および溝幅Lwを出力できる。また、溝幅算出部31は、教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて求めた、判定装置100からの各距離における位置が第1反射区間A1もしくは第2反射区間A2に含まれるか否かおよび、第2反射区間A2における第2グラフの複数の極大値の間隔に基づいて溝幅Lwを算出してもよい。教師有り機械学習として、例えばSVM(Support Vector Machine)やDNN(Deep Neural Network)を用いることができる。
【0046】
(D11)上述した実施形態において、溝高算出部32は、受信強度と無反射区間A3との関係を教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて溝高Lhを推定してもよい。より具体的には、溝高算出部32は、教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて、
凹部が存在するか否か、および溝高Lhを出力できる。また、溝高算出部32は、教師有り機械学習によって学習したモデルを用いて求めた、無反射区間A3の長さに基づいて溝高Lhを算出してもよい。教師有り機械学習として、例えばSVMやDNN、ランダムフォレストを用いることができる。
【0047】
(D12)上述した第2実施形態において、溝高算出部32は、受信強度の減衰量として、例えば、複数の極大値P1~P3の包絡線である第3グラフの近似式を用いている。これに限らず、溝高算出部32は、受信強度の減衰量として、複数の極大値P1~P3のうちの任意の2つの極大値の受信強度の差を用いてもよい。溝高算出部32は、例えば、第2グラフの第2反射区間A2においてセンサ部10から最も近い位置にある第1極大値P1の受信強度と、第2グラフの第2反射区間A2においてセンサ部10から最も遠い位置にある第3極大値P3の受信強度との差を、受信強度の減衰量として用いることができる。また、溝高算出部32は、受信強度の減衰量として、複数の極大値P1~P3のうちの任意の2つの極大値の受信強度の差と、第1極大値P1の受信強度とに基づいて求められる値を用いてもよい。
【0048】
(D13)上述した第4実施形態において、判定部20は、入射角が予め定められた閾値範囲内である反射波の受信強度を用いて、凹部が存在するか否かを判定している。これに限らず、20は、凹部が存在するか否かの判定に用いる反射波の入射角の閾値範囲を設けなくてもよい。判定部20は、同じ入射角の反射波の受信強度を示すグラフにおける複数の極大値P1~P3を用いて、凹部が存在するか否かの判定を行う。溝303からの反射波の入射角と障害物305からの反射波の入射角とは異なる。また、一つの障害物305からの反射波によって、第2グラフの第2反射区間A2cにおける極大値は複数生じない。そのため、
図7に示す第2グラフの第2反射区間A2cにおける入射角が同じ反射波の受信強度を示すグラフの複数の極大値は、溝303からの反射波であると判定できる。
【0049】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
10…センサ部、11…射出部、12…受取部、20…判定部、30…算出部、31…溝幅算出部、32…溝高算出部、40…出力部、100…判定装置、200…推定装置、301…第1路面、302…第2路面、303…溝、304、305…障害物