(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156719
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】電源装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20231018BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231018BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231018BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20231018BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B60L1/00 L
B60R16/02 645D
B60L50/60
B60L58/10
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/00 A
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066240
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 暁
(72)【発明者】
【氏名】井上 真一
(72)【発明者】
【氏名】下坂 渉哉
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐貴彦
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503BA04
5G503BB01
5G503BB02
5G503CC02
5G503CC08
5G503DA13
5G503FA06
5G503FA14
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC05
5H125BC25
5H125CD04
5H125DD01
5H125EE41
5H125EE47
5H125EE48
5H125EE51
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】汲み出し制御の実施に伴うシステムメインリレーの作動回数の増加を抑制して、システムメインリレーの部品寿命への影響を低減させることができる電源装置などを提供する。
【解決手段】高圧バッテリーと1つ以上の車載機器との間に設けられるリレーと、車両の走行システムを作動させるメインスイッチの状態に基づいて、リレーのON/OFFを切り替えて、高圧バッテリーから1つ以上の車載機器への電力供給を制御する制御部と、を備え、制御部は、リレーをONにしている状態でメインスイッチがOFFされたとき、1つ以上の車載機器の中にメインスイッチがOFFされた後に作動する特定の車載機器がある場合には、リレーをONに維持したままで高圧バッテリーから特定の車載機器に電力を供給させる、電源装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源装置であって、
高圧バッテリーと1つ以上の車載機器との間に設けられるリレーと、
前記車両の走行システムを作動させるメインスイッチの状態に基づいて、前記リレーのON/OFFを切り替えて、前記高圧バッテリーから前記1つ以上の車載機器への電力供給を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記リレーをONにしている状態で前記メインスイッチがOFFされたとき、前記1つ以上の車載機器の中に前記メインスイッチがOFFされた後に作動する特定の車載機器がある場合には、前記リレーをONに維持したままで前記高圧バッテリーから前記特定の車載機器に電力を供給させる、電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記リレーをOFFにしている状態で前記車両に対する所定の操作があったとき、前記特定の車載機器がある場合には、前記リレーをONにして前記高圧バッテリーから前記特定の車載機器に電力を供給させ、その後前記メインスイッチがONされた場合には、前記リレーのONを維持する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記高圧バッテリーから前記特定の車載機器に電力を供給させている状態が所定の時間継続した場合、前記リレーをOFFにする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記メインスイッチがONされている間に前記特定の車載機器があるか否かを判断する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記高圧バッテリーから前記特定の車載機器に電力を供給させる要求の有無に基づいて、前記特定の車載機器があるか否かを判断する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項6】
前記特定の車載機器は、前記車両の降車時及び乗車時の少なくともいずれかの時に作動する機器である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
高圧バッテリーと1つ以上の車載機器との間に設けられるリレーを備え、車両に搭載される電源装置のコンピューターが実行する制御方法であって、
前記車両の走行システムを作動させるメインスイッチの状態を判断するステップと、
前記メインスイッチの状態に基づいて、前記リレーのON/OFFを切り替えるステップと、
前記リレーをONにしている状態で前記メインスイッチがOFFされたとき、前記1つ以上の車載機器の中に前記メインスイッチがOFFされた後に作動する特定の車載機器があるか否かを判断するステップと、
前記メインスイッチがOFFされた後に作動する前記特定の車載機器がある場合には、前記リレーをONに維持したままで前記高圧バッテリーから前記特定の車載機器に電力を供給させるステップと、を含む、制御方法。
【請求項8】
高圧バッテリーと1つ以上の車載機器との間に設けられるリレーを備え、車両に搭載される電源装置のコンピューターに実行させるプログラムであって、
前記車両の走行システムを作動させるメインスイッチの状態を判断するステップと、
前記メインスイッチの状態に基づいて、前記リレーのON/OFFを切り替えるステップと、
前記リレーをONにしている状態で前記メインスイッチがOFFされたとき、前記1つ以上の車載機器の中に前記メインスイッチがOFFされた後に作動する特定の車載機器があるか否かを判断するステップと、
前記メインスイッチがOFFされた後に作動する前記特定の車載機器がある場合には、前記リレーをONに維持したままで前記高圧バッテリーから前記特定の車載機器に電力を供給させるステップと、を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される電源装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両のメインスイッチがOFFとなっている走行が不可能な状態において、補機バッテリーを電源とする車載機器の消費電力が所定の値よりも大きい場合、その消費電力が大きい間は高圧バッテリーから車載機器へ電力を供給させる、いわゆる汲み出し制御を行う電源装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汲み出し制御を行うためには、補機バッテリーを電源とする車載機器と高圧バッテリーとの間に設けられるシステムメインリレー(SMR)のON/OFFの状態を、汲み出し制御のたびに切り替える必要がある。このシステムメインリレーの部品寿命を向上させるためには、システムメインリレーの作動回数を極力少なくしてスイッチングによる発熱の影響を低減させることが好ましい。このことから、汲み出し制御を実施する方法には改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、汲み出し制御の実施に伴うシステムメインリレーの作動回数の増加を抑制して、システムメインリレーの部品寿命への影響を低減させることができる、電源装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載される電源装置であって、高圧バッテリーと1つ以上の車載機器との間に設けられるリレーと、車両の走行システムを作動させるメインスイッチの状態に基づいて、リレーのON/OFFを切り替えて、高圧バッテリーから1つ以上の車載機器への電力供給を制御する制御部と、を備え、制御部は、リレーをONにしている状態でメインスイッチがOFFされたとき、1つ以上の車載機器の中にメインスイッチがOFFされた後に作動する特定の車載機器がある場合には、リレーをONに維持したままで高圧バッテリーから特定の車載機器に電力を供給させる、電源装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示の電源装置などによれば、汲み出し制御の実施に伴うシステムメインリレーの作動回数の増加を抑制して、システムメインリレーの部品寿命への影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電源装置とその周辺部の機能ブロック図
【
図2】システムメインリレーONの状態において電源装置が実行する降車時制御の処理フローチャート
【
図3】システムメインリレーOFFの状態において電源装置が実行する乗車時制御の処理フローチャート
【
図4】システムメインリレーONの状態において電源装置が実行する降車時制御の応用例の処理フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の電源装置は、補機バッテリーを主電源とする補機負荷の中に車両の降車時に作動する特定の補機負荷がある場合には、車両の降車時に、システムメインリレーをONからOFFに切り替えることなくON状態に維持したままで高圧バッテリーから特定の補機負荷へ電力を供給する汲み出し制御を行う。この制御によって、汲み出し制御の実施に伴うシステムメインリレーの作動回数を抑制することができる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る電源装置20とその周辺部の機能ブロック図である。
図1に例示した機能ブロックは、高圧バッテリー10と、電源装置20と、補機バッテリー30と、複数の補機負荷41及び42と、を備えている。なお、
図1では、電力用の信号線を実線で、制御/通信用の信号線を破線でそれぞれ示している。この電源装置20は、例えば、動力源として電動モーターを使用するハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、及び電気自動車(BEV)などの車両に搭載することができる。
【0011】
高圧バッテリー10は、例えばリチウムイオン電池などの充放電可能に構成された二次電池であり、主にスターターモーターや走行用電動モーターなど(図示せず)の車両に搭載されるいわゆる主機に電力供給を行う駆動用バッテリーである。この高圧バッテリー10は、後述するシステムメインリレー21を介して主機に電力を供給することができる。また、高圧バッテリー10は、システムメインリレー21を介して後述する制御部22に電力を供給することができる。
【0012】
補機バッテリー30は、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの充放電可能に構成された二次電池であり、複数の補機負荷41及び42を含む車両に搭載されるいわゆる補機に電力供給を行うバッテリーである。この補機バッテリー30は、高圧バッテリー10の電力によって充電可能である。一般に、補機バッテリー30は、高圧バッテリー10よりも定格電圧が低く設定されている。
【0013】
複数の補機負荷41及び42は、車両に搭載される機器であり、所定の動作を実行するために必要な電力を消費する装置や装備などである。この複数の補機負荷41及び42には、例えば、車両のドアの開閉時やイグニッションスイッチのON/OFF時などの定型の動作パターンに連動して作動する特定の車載機器(例えば、電子アウターミラーや降車支援システムなど)が含まれる。複数の補機負荷41及び42は、電源装置20から供給される電力や補機バッテリー30に蓄えられた電力で動作する。なお、
図1では、2つの補機負荷41及び42が車両に搭載されている例を示したが、車両に搭載される補機負荷の数は限定されない。
【0014】
電源装置20は、高圧バッテリー10及び補機バッテリー30の充放電を制御して車両における電力収支を管理するための装置である。本実施形態に係る電源装置20は、システムメインリレー(SMR)21と、制御部22と、を備えている。
【0015】
システムメインリレー21は、高圧バッテリー10の電力授受の状態を制御するためのスイッチ素子であり、高圧バッテリー10と制御部22との間に設けられる。このシステムメインリレー21は、制御部22からの指示に基づいて、入出力端子間を電気的に接続した状態(ON)及び入出力端子間を電気的に遮断した状態(OFF)を切り替えることができる。
【0016】
制御部22は、高圧バッテリー10から補機バッテリー30や複数の補機負荷41及び42への電力供給を制御するための構成である。この制御部22は、車両の走行に関わるシステム(以下「車両の走行システム」という)を作動させるためのメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IG)のON/OFFの状態や、複数の補機負荷41及び42の作動可否の設定状態などに基づいて、システムメインリレー21のON/OFFを切り替える。また、この制御部22は、システムメインリレー21がONであるときに、高圧バッテリー10から補機バッテリー30や複数の補機負荷41及び42へ所定の電圧の電力を供給することができる。電力供給の際、制御部22は、入力電圧である高圧バッテリー10の電圧を補機バッテリー30に規定された所定の電圧に変換(DC-DCコンバート)して出力することができる。
【0017】
この制御部22の一部又は全部は、典型的にはマイコンなどのプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスなどを含んだ電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)によって構成され得る。この電子制御装置は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、上述した機能の一部又は全部を実現することができる。
【0018】
[制御]
次に、
図2乃至
図4をさらに参照して、本実施形態に係る電源装置20によって実行される制御を説明する。電源装置20が実行する制御としては、降車時制御と乗車時制御とに分けて説明することができる。なお、以下の説明では、ドライバーなどの乗員が車両から降りるときを「車両の降車時」と、乗員が車両に乗り込むときを「車両の乗車時」と、その双方を対象とするときを「車両の乗降車時」という。
【0019】
(1)降車時制御
図2は、車両の走行システムが動作しており(走行可能な状態であり)、かつ、システムメインリレー21が接続されている状態(SMR=ON)において、車両の降車時に電源装置20の制御部22が実行する制御(降車時制御)の処理手順を示すフローチャートである。
【0020】
(ステップS201)
電源装置20の制御部22は、車両が搭載する複数の補機負荷41及び42の中に、車両の乗降車時に作動する補機負荷(特定の車載機器)があるか否かを判断する。より具体的には、制御部22は、車両の走行システムを作動させるメインスイッチがOFFされた後に作動する補機負荷があるか否かを判断する。判断の対象となり得る補機負荷には、電子アウターミラーや降車支援システムなどを例示できる。なお、車両によっては、これら判断対象となり得る補機負荷について、車両の乗車時及び/又は降車時に作動させるか否かを、車両のドライバーなどのユーザーがカスタマイズ設定できるものも存在する。本実施形態の制御部22は、このようなカスタマイズ設定に対応しており、車両の走行システムが動作しているメインスイッチがONである期間に、各補機負荷について車両の乗降車時に作動させる設定がなされているか否かを把握することを行う。各補機負荷の作動可否の設定や管理は、制御部22が行ってもよいし、図示しない他の構成が行ってもよい。
【0021】
制御部22が、車両の乗降車時に作動させるように設定されている補機負荷があると判断した場合は(ステップS201、はい)、ステップS202に処理が進む。一方、制御部22が、車両の乗降車時に作動させるように設定されている補機負荷がないと判断した場合は(ステップS201、いいえ)、ステップS203に処理が進む。
【0022】
(ステップS202)
電源装置20の制御部22は、車両の乗降車時において、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側への電力供給を行うことを要求する、つまり車両の乗降車時に作動させるように設定されている補機負荷へ電力を供給するように要求する、いわゆる汲み出し要求を「あり」に設定する。この汲み出し要求は、例えば所定のフラグを立てることによって「あり」に設定することが可能である。制御部22によって汲み出し要求が「あり」に設定されると、ステップS204に処理が進む。
【0023】
(ステップS203)
電源装置20の制御部22は、車両の乗降車時において、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側への電力供給を行うことを要求する汲み出し要求を「なし」に設定する。この汲み出し要求は、例えば所定のフラグを立てないことによって「なし」に設定することが可能である。制御部22によって汲み出し要求が「なし」に設定されると、ステップS204に処理が進む。
【0024】
なお、上述した汲み出し要求は、車両の降車時に作動する補機負荷と、車両の乗車時に作動する補機負荷とで、それぞれ独立して設定してもよい。降車時と乗車時とで汲み出し要求を個別に設定することで、汲み出し処理を不必要に実施してしまうことを回避することができる。
【0025】
(ステップS204)
電源装置20の制御部22は、車両の走行システムを作動させるメインスイッチがOFFになったか否かを判断する。すなわち、制御部22は、乗員が車両から降りるために、車両を走行不可能な状態(駐車状態など)に遷移させたか否かを判断する。このメインスイッチとしては、車両のイグニッションスイッチ(IG)を例示できる。
【0026】
制御部22が、メインスイッチがOFFになった(IG-OFF)と判断した場合は(ステップS204、はい)、ステップS205に処理が進む。一方、制御部22が、メインスイッチがOFFになっていない(IG-ON)と判断した場合は(ステップS204、いいえ)、ステップS201に処理が進む。
【0027】
(ステップS205)
電源装置20の制御部22は、メインスイッチがONである期間に行った判断において、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側への電力供給を行うことを要求する汲み出し要求が「あり」に設定されているか否かを判断する。なお、車両の降車時と車両の乗車時とで独立した汲み出し要求が設定されている場合には、このステップでは車両の降車時について汲み出し要求の有無を判断すれば足りる。
【0028】
制御部22が、汲み出し要求が「あり」に設定されていると判断した場合は(ステップS205、はい)、ステップS206に処理が進む。一方、制御部22が、汲み出し要求が「なし」に設定されていると判断した場合は(ステップS205、いいえ)、ステップS207に処理が進む。
【0029】
(ステップS206)
電源装置20の制御部22は、システムメインリレー21が接続されている状態(SMR=ON)を維持したままで、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側へ、すなわち少なくとも車両の降車時に作動する補機負荷へ電力を供給する汲み出し処理を実施する。この汲み出し処理を実施すべき時間やタイミングなどは、例えば法規や車両の仕様などに基づいて、補機負荷ごとに設定される。一例として、電子アウターミラーは、車両の降車時及び車両の乗車時の両方で最大7分間の継続した作動が求められる。また、降車支援システムは、車両の降車時のみで最大3分間の継続した作動が求められる。なお、補機バッテリー30の劣化保護の観点から、汲み出し処理を実施すべき時間は、車両の降車時に作動する補機負荷の動作が継続する時間以上に設定されることが好ましい。制御部22によって車両の降車時に作動する補機負荷の動作が終了するまで高圧バッテリー10からの汲み出し処理が実施されると、ステップS207に処理が進む。
【0030】
(ステップS207)
電源装置20の制御部22は、システムメインリレー21を遮断する(SMR=OFF)。これにより、高圧バッテリー10がシステムから電気的に切り離される。制御部22によってシステムメインリレー21が遮断されると、降車時制御が終了する。
【0031】
この降車時制御では、車両の降車時に汲み出し処理を実施する必要があることが降車前に分かっている場合、降車行為(IG-ON)を判断したときにシステムメインリレー21をONから一旦OFFに切り替えてまた再びONに戻すことなく、リレーONの状態を維持したままで汲み出し処理を実施する。これにより、システムメインリレー21の作動回数を削減することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、ステップS201における、車両の乗降車時に作動する補機負荷(特定の車載機器)が1つでも存在するか否かの結果によって、汲み出し要求を設定するか否かを判断する例を説明した。しかしながら、この判断に代えて、車両の乗降車時に作動する1つ又は複数の補機負荷の合計消費電力が所定の値を超えるか否かに基づいて、汲み出し要求を設定するか否かを判断するようにしてもよい。
【0033】
(2)乗車時制御
図3は、車両の走行システムが停止しており(走行不可能な状態であり)、かつ、システムメインリレー21が遮断されている状態(SMR=OFF)において、車両の乗車時に電源装置20の制御部22が実行する制御(乗車時制御)の処理手順を示すフローチャートである。
【0034】
(ステップS301)
電源装置20の制御部22は、車両に対して所定の操作があったか否かを判断する。この判断は、車両のユーザーなどが車両に乗り込む可能性を判定するために行われる。所定の操作としては、電子キーなどによる車両ドアのロックを解錠する操作や、ドアハンドルを握って車両ドアを開ける操作など、車両に対する外部からのアクセスが発生したことを認識できる操作を例示することができる。車両に対して所定の操作があったことは、制御部22が自ら判断してもよいし、図示しない構成が行った判断を制御部22が取得するようにしてもよい。
【0035】
制御部22が、車両に対して所定の操作があったと判断した場合は(ステップS301、はい)、ステップS302に処理が進む。一方、制御部22が、車両に対して所定の操作がまだないと判断した場合は(ステップS301、いいえ)、ステップS301の判断を繰り返し行う。
【0036】
(ステップS302)
電源装置20の制御部22は、前回の車両走行時などのメインスイッチがONである期間に行った判断において、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側への電力供給を行うことを要求する汲み出し要求が「あり」に設定されているか否かを判断する。なお、車両の降車時と車両の乗車時とで独立した汲み出し要求が設定されている場合には、このステップでは車両の乗車時について汲み出し要求の有無を判断すれば足りる。
【0037】
制御部22が、汲み出し要求が「あり」に設定されていると判断した場合は(ステップS302、はい)、ステップS303に処理が進む。一方、制御部22が、汲み出し要求が「なし」に設定されていると判断した場合は(ステップS302、いいえ)、ステップS305に処理が進む。
【0038】
(ステップS303)
電源装置20の制御部22は、汲み出し要求が「あり」に設定されている場合、システムメインリレー21を接続する(SMR=ON)。これにより、高圧バッテリー10がシステムと電気的に接続される。制御部22によってシステムメインリレー21が接続されると、ステップS304に処理が進む。
【0039】
(ステップS304)
電源装置20の制御部22は、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側へ、すなわち車両の乗車時に作動する補機負荷へ電力を供給する汲み出し処理を開始する。制御部22によって車両の乗車時に作動する補機負荷に対する汲み出し処理が開始されると、ステップS307に処理が進む。
【0040】
(ステップS305)
電源装置20の制御部22は、汲み出し要求が「なし」に設定されている場合、車両が走行可能な状態になったか否かを判断する。この車両が走行可能な状態としては、Ready-ONの状態を例示することができる。
【0041】
制御部22が、車両が走行可能な状態(Ready-ON)になったと判断した場合は(ステップS305、はい)、ステップS306に処理が進む。一方、制御部22が、車両が走行可能な状態になっていない(Ready-OFF)と判断した場合は(ステップS305、いいえ)、ステップS305の判断を繰り返し行う。
【0042】
(ステップS306)
電源装置20の制御部22は、車両が走行可能な状態(Ready-ON)になると、システムメインリレー21を接続する(SMR=ON)。これにより、高圧バッテリー10がシステムと電気的に接続される。制御部22によってシステムメインリレー21が接続されると、乗車時制御が終了する。
【0043】
(ステップS307)
電源装置20の制御部22は、汲み出し処理を開始した後、車両が走行可能な状態になったか否かを判断する。この車両が走行可能な状態としては、Ready-ONの状態を例示することができる。
【0044】
制御部22が、車両が走行可能な状態(Ready-ON)になったと判断した場合は(ステップS307、はい)、ステップS308に処理が進む。一方、制御部22が、車両が走行可能な状態になっていない(Ready-OFF)と判断した場合は(ステップS307、いいえ)、ステップS309に処理が進む。
【0045】
(ステップS308)
電源装置20の制御部22は、システムメインリレー21が接続されている状態(SMR=ON)を維持したままで、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側へ、すなわち少なくとも車両の乗車時に作動する補機負荷へ電力を供給する汲み出し処理を終了する。制御部22によって車両の乗車時に作動する補機負荷への汲み出し処理が終了すると、乗車時制御が終了する。
【0046】
(ステップS309)
電源装置20の制御部22は、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側へ、すなわち車両の乗車時に作動する補機負荷へ電力を供給する汲み出し処理が、所定の時間継続して実施されているか否かを判断する。この判断は、例えば車両ドアの長時間に亘る開閉動作などによって、車両が走行可能な状態になるまでに汲み出し処理が不必要に長く実施されることを回避するために行われる。よって、この所定の時間は、例えば法規や車両の仕様などに基づいて、高圧バッテリー10や補機バッテリー30の蓄電状態を考慮しつつ適切に設定することができる。
【0047】
制御部22が、汲み出し処理が所定の時間継続して実施されていると判断した場合は(ステップS309、はい)、ステップS310に処理が進む。一方、制御部22が、汲み出し処理が所定の時間継続して実施されていないと判断した場合は(ステップS309、いいえ)、ステップS307に処理が進む。
【0048】
(ステップS310)
電源装置20の制御部22は、システムメインリレー21を遮断して(SMR=OFF)、高圧バッテリー10から補機バッテリー30側へ、すなわち車両の乗車時に作動する補機負荷へ電力を供給する汲み出し処理を終了する。制御部22によってシステムメインリレー21が遮断され、かつ、車両の乗車時に作動する補機負荷への汲み出し処理が終了すると、乗車時制御が終了する。
【0049】
この乗車時制御では、車両の乗車時に汲み出し処理を実施する必要があることが乗車前に分かっている場合、車両の乗車時に先立って汲み出し処理を実施している途中に車両を走行可能とする指示(Ready-ON)があっても、システムメインリレー21をONから一旦OFFに切り替えてまた再びONに戻すことなく、リレーONの状態を維持したままで車両を走行可能な状態に遷移させる。これにより、システムメインリレー21の作動回数を削減することができる。
【0050】
(3)降車時制御の応用例
図4は、
図2で説明した車両の降車時に電源装置20の制御部22が実行する降車時制御の応用例の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示す降車時制御の応用例は、
図2に示す降車時制御と比べて、ステップS201の後にステップS401の処理を追加したことが異なる。
【0051】
この降車時制御の応用例では、車両の降車時に作動する補機負荷があると判断した場合(ステップS201、はい)、さらに補機バッテリー30の状態に基づいて汲み出し要求を「あり」に設定すべきか否かを判断することを行う(ステップS401)。一例として、補機バッテリー30の蓄電量(SOC:State of charge)が満充電の状態にあり、車両の降車時に作動する補機負荷への電力供給を補機バッテリー30に蓄えられた電力のみで賄えるような場合には、ステップS401において汲み出し不要と判断される。この判断によって、システムメインリレー21の作動回数を削減することができる。
【0052】
また、ステップS401においては、補機バッテリー30の状態だけでなく、高圧バッテリー10の状態や、車両の降車時及び/又は車両の乗車時に作動する補機負荷で消費される電力の合計値や、各補機負荷の作動タイミングなどもさらに考慮して、汲み出し要求を「あり」に設定すべきか否かを総合的に判断してもよい。一例として、補機バッテリー30の蓄電量(SOC)が満充電の状態にあったとしても、車両の降車時に作動する補機負荷で消費される電力の合計値が所定の値(補機バッテリー30の性能や容量などに基づいて設定可能)よりも多い場合には、汲み出し必要と判断してもよい。この判断によって、補機バッテリー30の上がりを回避することができる。
【0053】
なお、電源装置20の制御部22は、高圧バッテリー10や補機バッテリー30の状態を示す物理量(電圧値、電流値、蓄電量など)を、例えば、高圧バッテリー10や補機バッテリー30に設けられた電圧、電流、温度などの各種センサー(図示せず)の検出値に基づいて、取得や演算することができる。
【0054】
<作用・効果>
以上説明したように、本開示の一実施形態に係る電源装置20によれば、車両の降車時において、システムメインリレー21をONにしている状態でメインスイッチがOFF(IG-OFF)された場合、補機バッテリー30を主電源とする複数の補機負荷41及び42の中にメインスイッチがOFFされた後の車両の降車時に作動する補機負荷(特定の車載機器)がある場合には、システムメインリレー21をONの状態に維持したままで高圧バッテリー10から車両の降車時に作動する補機負荷へ電力を供給する汲み出し制御を行う。
【0055】
また、本開示の一実施形態に係る電源装置20によれば、車両の乗車時において、高圧バッテリー10から車両の乗車時に作動する補機負荷(特定の車載機器)へ電力を供給する汲み出し制御を行っている状態で車両を走行可能とする指示(Ready-ON)があった場合には、システムメインリレー21をONの状態に維持したままで車両を走行可能な状態に遷移させる制御を行う。
【0056】
これらの制御によって、汲み出し制御の実施に伴うシステムメインリレー21のON/OFF切り替え回数の増加を抑制することができ、システムメインリレー21の部品寿命への影響を低減させることができる。
【0057】
以上、本開示の一実施形態を説明したが、本開示は、電源装置、プロセッサとメモリとを備えた電源装置の制御部が実行する制御方法、制御方法を実行するための制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記録媒体、及び電源装置を搭載した車両として捉えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示の電源装置は、乗降車時に作動する可能性がある補機負荷が搭載された車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 高圧バッテリー
20 電源装置
21 システムメインリレー(SMR)
22 制御部
30 補機バッテリー
41 補機負荷
42 補機負荷