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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156722
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】高速炉の中性子計測方法及び高速炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/02 20060101AFI20231018BHJP
   G21C 17/108 20060101ALI20231018BHJP
   G21C 5/00 20060101ALI20231018BHJP
   G21C 11/08 20060101ALI20231018BHJP
   G21C 11/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G21C1/02 210
G21C17/108 100
G21C5/00
G21C11/08
G21C11/02 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066246
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】307041573
【氏名又は名称】三菱FBRシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】平松 貴志
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 仁
(72)【発明者】
【氏名】庄司 崇
(72)【発明者】
【氏名】▲土▼肥 明
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA07
2G075BA03
2G075CA08
2G075DA08
2G075EA01
2G075FA06
2G075FB09
(57)【要約】
【課題】中性子検出器45による中性子束の測定値の正確度を向上させる。
【解決手段】この高速炉1は、炉心20と、上部が開口した有底円筒型に形成され、炉心を冷却材とともに収容する主容器10と、主容器10の上部に配置され主容器10を閉じるルーフスラブ構造体11と、炉心からの中性子の中性子束を測定する中性子検出ユニット40と、を備え、中性子検出ユニット40は、炉心20の上方の領域において、下端部が主容器10内に位置し上端部がルーフスラブ構造体内に位置するように主容器の高さ方向に延在し、核燃料からの中性子を主容器10の上方へと導く中性子ガイド管41と、ルーフスラブ構造体11内に配置され、中性子ガイド管41を通じて導かれた中性子の速度を減速させる減速材42と、ルーフスラブ構造体11内に配置され、減速した中性子の中性子束を測定する中性子検出器45とを有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料を収容する炉心と、
上部が開口した有底円筒型に形成され、前記炉心を冷却材とともに収容する主容器と、
前記主容器の上部に配置され前記主容器を閉じるルーフスラブ構造体と、
前記炉心からの中性子の中性子束を測定する中性子検出ユニットと、
を備える高速炉であって、
前記中性子検出ユニットは、
前記炉心の上方の領域において、下端部が前記主容器内に位置し上端部が前記ルーフスラブ構造体内に位置するように前記主容器の高さ方向に延在し、前記炉心からの中性子を前記主容器の上方へと導く中性子ガイド管と、
前記ルーフスラブ構造体内に配置され、前記中性子ガイド管を通じて導かれた前記中性子の速度を減速させる減速材と、
前記ルーフスラブ構造体内に配置され、減速した前記中性子の中性子束を測定する中性子検出器と、
を有する、高速炉。
【請求項2】
前記中性子検出ユニットは、
前記ルーフスラブ構造体の上方から前記ルーフスラブ構造体に対して着脱自在に取り付けられ、前記主容器の内部に向かって延在する第1パイプを有し、
前記第1パイプの一部が前記中性子ガイド管として構成され、かつ、前記第1パイプ内に前記減速材が配置されている、
請求項1に記載の高速炉。
【請求項3】
前記炉心の上方の領域に設けられ、計装機器が配置される収容スペースを形成する炉心上部構造をさらに備え、
前記炉心上部構造は、
前記収容スペースを囲み、前記主容器の高さ方向に延在する筒体と、
前記筒体の下端部に設けられた計装取付板と、
を有し、
前記第1パイプは前記筒体内に配置され、前記第1パイプの下端は前記計装取付板に、途中は炉心上部構造内の高さ方向に配置された少なくとも1枚の水平板に固定される、
請求項2に記載の高速炉。
【請求項4】
前記中性子検出ユニットは、
前記第1パイプ内における前記減速材の上方に配置され、前記炉心側からの熱及び放射線を遮蔽する部材である遮蔽プラグをさらに有する、
請求項2又は3に記載の高速炉。
【請求項5】
前記中性子検出ユニットは、
前記ルーフスラブ構造体の上方から前記ルーフスラブ構造体に対して着脱自在に取り付けられた第2パイプを有し、
前記第2パイプに前記中性子検出器が配置されている、
請求項1又は2に記載の高速炉。
【請求項6】
前記ルーフスラブ構造体は、
前記主容器の上部を覆うルーフスラブと、
前記ルーフスラブの中心部分に配置され、前記核燃料を交換するための燃料交換機を移動させる回転プラグと、
を有し、前記第2パイプは、前記回転プラグに配置されている、
請求項5に記載の高速炉。
【請求項7】
前記ルーフスラブ構造体は、
前記ルーフスラブ構造体の下面側に形成された熱遮蔽層と、
前記ルーフスラブ構造体の上面側に形成された放射線遮蔽層と、
を有し、前記熱遮蔽層と前記放射線遮蔽層との間に、冷却ガスが充填される空間である冷却ガス空間が形成され、
前記第2パイプは、
前記中性子検出器が前記冷却ガス空間に位置するように配置されている、
請求項6に記載の高速炉。
【請求項8】
複数の前記中性子検出ユニットが設けられ、
複数の前記中性子検出器からの出力値を取得する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
所定の前記中性子検出器からの出力値と、1つ又は複数の他の前記中性子検出器からの出力値とを比較して、出力値の差が所定の閾値以上の場合、前記所定の中性子検出器の異常を示すアラートを出力する、
請求項1又は2に記載の高速炉。
【請求項9】
核燃料を収容する炉心と、上部が開口した有底円筒型に形成され、前記炉心を冷却材とともに収容する主容器と、前記主容器の上部に配置され前記主容器を閉じるルーフスラブ構造体と、前記炉心からの中性子の中性子束を測定する中性子検出ユニットと、を備える高速炉の中性子計測方法であって、
前記中性子検出ユニットは、前記炉心の上方の領域において、下端部が前記主容器内に位置し上端部が前記ルーフスラブ構造体内に位置するように前記主容器の高さ方向に延在し、前記炉心からの中性子を前記主容器の上方へと導く中性子ガイド管と、前記ルーフスラブ構造体内に配置され、前記中性子ガイド管を通じて導かれた前記中性子の速度を減速させる減速材と、前記ルーフスラブ構造体内に配置され、減速した前記中性子の中性子束を測定する中性子検出器と、を有し、
前記中性子ガイド管を通じて導かれた前記中性子の速度を前記減速材で減速させるステップと、
前記減速材によって減速した前記中性子の中性子束を前記中性子検出器で測定するステップと、
を有する、高速炉の中性子計測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速炉の中性子計測方法及び高速炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉を安全に連転するために、炉心から発生する中性子を測定することが行われている。炉心から発生する中性子の遮蔽設計では、主容器内の機器である炉内機器に入射する中性子束を制限値以下にするという第1要求と、炉心監視のための中性子計装である中性子検出器に入射する中性子束を制限値以上にするという第2要求との2つの相反する要求を満足することが求められる。
【0003】
例えば、特許文献1では、タンク型の高速炉においてこれら第1要求及び第2要求満たすために、中性子の遮蔽能力が小さいアルゴンやヘリウム等の気体が封入されるか又は真空とされた中空円筒が配置された構造が開示されている。具体的には、中空円筒は、炉心と中性子検出器との間の炉内の位置に設けられ、中空円筒によって主容器外への中性子の透過が促進され、中性子検出器により中性子束が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3041058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、中空円筒は炉内に配置されており、中空円筒は冷却材である液体ナトリウムに浸っている。高速炉の動作時には、液体ナトリウムは高温となることから、液体ナトリウム内に配置された検査機器等によって中空円筒を検査することは困難である。その結果、中空円筒が破損していることに起因して、中性子束の測定を正確に行うことができないという問題が生じる。
【0006】
これに対し、遮蔽集合体内の中性子遮蔽材を液体ナトリウムに置き換えて主容器の外部に配置された中性子検出器で中性子束を測定する構成も考えられる。しかしながら、高速炉においては使用済燃料が炉心付近の遮蔽集合体の一部に代えて貯蔵される場合があり、この場合、この使用済燃料から中性子が放出されたり、炉心からの中性子が使用済燃料に吸収されたりする。その結果、炉外に設置された中性子検出器では中性子束の正確な測定を行いにくく、改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、中性子検出器による中性子束の測定値の正確度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、核燃料を収容する炉心と、上部が開口した有底円筒型に形成され、前記炉心を冷却材とともに収容する主容器と、前記主容器の上部に配置され前記主容器を閉じるルーフスラブ構造体と、前記炉心からの中性子の中性子束を測定する中性子検出ユニットと、を備える高速炉であって、前記中性子検出ユニットは、前記炉心の上方の領域において、下端部が前記主容器内に位置し上端部が前記ルーフスラブ構造体内に位置するように前記主容器の高さ方向に延在し、前記炉心からの中性子を前記主容器の上方へと導く中性子ガイド管と、前記ルーフスラブ構造体内に配置され、前記中性子ガイド管を通じて導かれた前記中性子の速度を減速させる減速材と、前記ルーフスラブ構造体内に配置され、減速した前記中性子の中性子束を測定する中性子検出器と、を有する、高速炉を提供する。
【0009】
前記中性子検出ユニットは、前記ルーフスラブ構造体の上方から前記ルーフスラブ構造体に対して着脱自在に取り付けられ、前記主容器の内部に向かって延在する第1パイプを有し、前記第1パイプの一部が前記中性子ガイド管として構成され、かつ、前記第1パイプ内に前記減速材が配置されていてもよい。
【0010】
高速炉は、前記炉心の上方の領域に設けられ、計装機器が配置される収容スペースを形成する上部構造をさらに備え、前記上部構造は、前記収容スペースを囲み、前記主容器の高さ方向に延在する筒体と、前記筒体の下端部に設けられた計装取付板と、を有し、前記第1パイプは前記筒体内に配置され、前記第1パイプの下端は前記計装取付板に、途中は炉心上部構造内の高さ方向に配置された少なくとも1枚の水平板に固定されていてもよい。
【0011】
高速炉において、前記中性子検出ユニットは、前記第1パイプ内における前記減速材の上方に配置され、前記炉心側からの熱及び放射線を遮蔽する部材である遮蔽プラグをさらに有してもよい。
【0012】
前記中性子検出ユニットは、前記ルーフスラブ構造体の上方から前記ルーフスラブ構造体に対して着脱自在に取り付けられた第2パイプを有し、前記第2パイプに前記中性子検出器が配置されもよい。
【0013】
前記ルーフスラブ構造体は、前記主容器の上部を覆うルーフスラブと、前記ルーフスラブの中心部分に配置され、前記核燃料を交換するための燃料交換機を移動させる回転プラグと、を有し、前記第2パイプは、前記回転プラグに配置されていてもよい。
【0014】
前記ルーフスラブ構造体は、前記ルーフスラブ構造体の下面側に形成された熱遮蔽層と、前記ルーフスラブ構造体の上面側に形成された放射線遮蔽層と、を有し、前記熱遮蔽層と前記放射線遮蔽層との間に、冷却ガスが充填される空間である冷却ガス空間が形成され、前記第2パイプは、前記中性子検出器が前記冷却ガス空間に位置するように配置されていてもよい。
【0015】
高速炉は、複数の前記中性子検出ユニットが設けられ、複数の前記中性子検出器からの出力値を取得する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、所定の前記中性子検出器からの出力値と、1つ又は複数の他の前記中性子検出器からの出力値とを比較して、出力値の差が所定の閾値以上の場合、前記所定の中性子検出器の異常を示すアラートを出力してもよい。
【0016】
本発明の一形態の高速炉の中性子計測方法は、核燃料を収容する炉心と、上部が開口した有底円筒型に形成され、前記炉心を冷却材とともに収容する主容器と、前記主容器の上部に配置され前記主容器を閉じるルーフスラブ構造体と、前記炉心からの中性子の中性子束を測定する中性子検出ユニットと、を備える高速炉における中性子計測方法であって、前記中性子検出ユニットは、前記炉心の上方の領域において、下端部が前記主容器内に位置し上端部が前記ルーフスラブ構造体内に位置するように前記主容器の高さ方向に延在し、前記炉心からの中性子を前記主容器の上方へと導く中性子ガイド管と、前記ルーフスラブ構造体内に配置され、前記中性子ガイド管を通じて導かれた前記中性子の速度を減速させる減速材と、前記ルーフスラブ構造体内に配置され、減速した前記中性子の中性子束を測定する中性子検出器と、を有し、前記中性子ガイド管を通じて導かれた前記中性子の速度を前記減速材で減速させるステップと、前記減速材によって減速した前記中性子の中性子束を前記中性子検出器で測定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、中性子検出器による中性子束の測定値の正確度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】高速炉の構成を示す断面図である。
図2図1の一部の拡大図である。
図3】高速炉を上方から見た状態の一例を示す模式図である。
図4図3の一部の拡大図である。
図5】中性子ガイド管がある場合と、中性子ガイド管がない場合との中性子の減衰の様子を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一の実施形態に係る高速炉1の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、高速炉1の構成を示す断面図である。図2は、図1の一部の拡大図である。図3は、高速炉1を上方から見た状態の一例を示す模式図である。図4は、図3の一部の拡大図である。なお、図1は、図3のA-A線における断面図である。図2における矢印は、中性子が移動する向きを模式的に示している。
【0020】
以下では、図面に描かれた対象物の向きに合わせて「上」及び「下」のような方向を示す用語が使用されるが、これらの用語は本発明を限定する意図で使用されるものではない。「鉛直方向」は、主容器の高さ方向に対応する。
【0021】
高速炉1は、一例としてタンク型高速炉であり、例えばウランやプルトニウム等を燃料として核分裂連鎖反応を制御しながら持続させて、エネルギーを取り出す。高速炉1は、主として、主容器10と、ルーフスラブ構造体11と、炉心20と、炉心上部構造30と、中性子検出ユニット40と、中間熱交換器50と、循環ポンプ60と、直接炉心冷却系熱交換器70とを備える。
【0022】
本実施形態の高速炉1の特徴の1つは、中性子束を測定する中性子検出ユニット40が、主容器10の半径方向の外側ではなく、炉心20の上方の領域に設けられている点にある。具体的には、中性子検出ユニット40は、中性子を主容器10の上方へと導く中性子ガイド管41と、中性子の速度を減速させる減速材42と、中性子束を測定する中性子検出器45とを有している。減速材42及び中性子検出器45は、ルーフスラブ構造体11の内部に配置されている。炉心20からの中性子は、中性子ガイド管41を通って主容器10の上方側へと導かれ、減速材42によって減速させられ、比較的温度の低いルーフスラブ構造体11内で中性子検出器45によって測定される。
【0023】
このような構成によれば、中性子検出ユニット40が炉心20の上方に配置されているため、中性子検出器が主容器10の半径方向外側に配置される構成と比較して、冷却材であるナトリウムによる中性子の減衰の影響を受けにくい。したがって、中性子検出ユニット40の中性子検出器45による中性子束の測定値の正確度を向上させることができる。
【0024】
〔各部の構成〕
以下、高速炉1の各部について説明する。なお、本実施形態の特徴的な構成は中性子検出ユニット40及びその周辺構造であるが、これらについて詳細に説明する前に、高速炉1の全体的な構成及び動作について説明する。
【0025】
主容器10は、一例として、上部が開口した有底円筒型であり、例えば15m~20m程度の直径を有する。主容器10は、図1に示すように、炉心20、炉心上部構造30、中間熱交換器50、循環ポンプ60、直接炉心冷却系熱交換器70(図3参照)、及び、一次系の冷却材であるナトリウム等を収容する。主容器10の上端はルーフスラブ構造体11によって閉塞されている。主容器10の内部には仕切板15が設けられている。
【0026】
仕切板15は、例えば円環状の部材であり、主容器10の内部を上部プレナムと下部プレナムとに仕切るように水平に配置されている。上部プレナムと下部プレナムとは、炉心槽10a、中間熱交換器50、及び循環ポンプ60等を介して互いに連通している。これにより、後述するように循環ポンプ60を動作させることによって、冷却材は上部プレナムと下部プレナムとの間を循環する。
【0027】
炉心20は、核燃料を収容する部分であり、燃料集合体、遮蔽集合体、及び制御棒集合体(いずれも不図示)等を有する。炉心20は、主容器10の中央部に設けられた炉心槽10aの内部に収容されている。炉心槽10aは、具体的には、仕切板15の中心部分において上部プレナムと下部プレナムとの両方に開口するように設けられており、冷却材が通過できるように構成されている。炉心20の具体的な構成は特に限定されるものではないが、一例として、炉心の中心領域に燃料集合体が配置されており、燃料集合体の周囲に遮蔽集合体が配置されている。制御棒集合体は、燃料集合体の付近に配置されている。
【0028】
炉心上部構造30は、制御棒駆動機構、及び、温度計や燃料破損検出器等の各種計測機器(いずれも不図示)が設けられる。炉心上部構造30は、炉心20の上方に配置されている。炉心上部構造30は、筒体31と、計装取付板32とを有する。筒体31は、一例として円筒状の部材であって、主容器10の高さ方向に延在している。筒体31は、計装機器等が配置される収容スペースを形成する。
【0029】
計装取付板32は、炉心上部構造30に配置された板状の部材である。計装取付板32は、具体的には、炉心上部構造30の下端部に位置し、炉心20の上方において、一例として水平に配置されている。計装取付板32は、後述するように炉心上部構造30と共に中性子検出ユニット40の第1パイプP1の一部を支持する。
【0030】
(ルーフスラブ構造体11)
ルーフスラブ構造体11は、主容器10の上部に配置され主容器10を閉じる蓋として機能する。ルーフスラブ構造体11の断面構造に関し、ルーフスラブ構造体11は、図1に示すように、熱遮蔽層11aと、放射線遮蔽層11bと、冷却ガス空間11cとを有している。
【0031】
熱遮蔽層11aは、ルーフスラブ構造体11の下面側に形成され、主容器10内からの熱を遮蔽する層である。放射線遮蔽層11bは、ルーフスラブ構造体11の上面側に形成され、放射線を遮断する層である。
【0032】
冷却ガス空間11cは、熱遮蔽層11aと放射線遮蔽層11bとの間に形成された密閉空間である。冷却ガス空間11cには、冷却ガスが充填される。高速炉1の稼働中における冷却ガス空間11cの温度は、例えば100℃以下であり、具体的な例としては70℃以下である。
【0033】
続いて、ルーフスラブ構造体11を上面側から見た構造について説明する。ルーフスラブ構造体11は、図3及び図4に示すように、ルーフスラブ12と、回転プラグ13と、を含んでいる。ルーフスラブ12は、主容器10の上部を覆う構造体であり、一例として回転プラグ13の周囲の環状の領域において主容器10の上部を覆っている。
【0034】
回転プラグ13は、ルーフスラブ12の中心部分に配置されている。回転プラグ13は、大回転プラグ13-1と小回転プラグ13-2とで構成されている。小回転プラグ13-2は、核燃料を交換するための燃料交換機14(構成部品の一部のみを示す)と、炉心上部構造30とを支持している。
【0035】
大回転プラグ13-1と小回転プラグ13-2とは互いに偏心した状態で設けられており、大回転プラグ13-1及び小回転プラグ13-2は、それぞれが回転することで、燃料交換機14を炉心20上の所定の位置に位置させる。燃料交換の際には、燃料交換機14が所定の位置に移動し、燃料の交換作業を行う。
【0036】
再び図1を参照する。中間熱交換器50は、炉心20からの熱によって昇温した一次系の冷却材を中間熱交換器50の内部において二次系の冷却材(不図示)との間で熱交換をすることにより冷却する熱交換器である。中間熱交換器50は、筒状に形成され、ルーフスラブ構造体11及び仕切板15を貫通するように鉛直方向に配置されている。中間熱交換器50は、上部プレナムに位置する入口窓51と、下部プレナムに位置する出口窓52とを有する。入口窓51は、上部プレナム内の高温の冷却材が流入する開口部である。出口窓52は、中間熱交換器50の内部を通過した冷却材が下部プレナムへと流出する開口部である。
【0037】
循環ポンプ60は、冷却材を循環させるためのポンプであり、ルーフスラブ構造体11及び仕切板15を貫通するように鉛直方向に延在している。循環ポンプ60は、冷却材を、下部プレナム内に位置する配管61を介して炉心槽10aへと圧送する。
【0038】
高速炉1の動作時の冷却材の流れは、従来公知であるので、以下簡単に説明する。循環ポンプ60によって炉心槽10aに圧送された冷却材は、炉心槽10aにおいて炉心20からの熱を受けて例えば500℃~550℃程度にとなる。冷却材は、その後、炉心槽10aの内部を上方に向かって流れ、上部プレナムへと流入する。上部プレナムに流入した冷却材は中間熱交換器50の入口窓51から中間熱交換器50の内部に流れ込み、中間熱交換器50の内部で例えば400℃程度まで冷却される。冷却された冷却材は、中間熱交換器50内を下方に向かって流れて出口窓52から流出する。
【0039】
出口窓52から流出して下部プレナムに流れ込んだ冷却材は、循環ポンプ60により吸引される。吸引された冷却材は、循環ポンプ60の作用により再び炉心槽10aへと圧送される。このように、冷却材は主容器10内を循環しながら炉心20を冷却する。
【0040】
なお、図3では、中間熱交換器50、循環ポンプ60、及び直接炉心冷却系熱交換器70などの具体的な配置例が示されているが、これらの構成要素の数、及び、配置位置は高速炉1の仕様等に応じて適宜変更されてよい。直接炉心冷却系熱交換器70は、従来公知の直接炉心冷却系熱交換器であるため、詳細な説明は省略する。
【0041】
(中性子検出ユニット40)
中性子検出ユニット40は、炉心20からの中性子の中性子束を測定するユニットである。中性子検出ユニット40は、図1及び図2に示すように、主として、中性子ガイド管41、減速材42、第1遮蔽プラグ43、中性子検出器45、第2遮蔽プラグ46、第1パイプP1、及び第2パイプP2を有する。具体的には、第1パイプP1に、中性子ガイド管41、減速材42、及び第1遮蔽プラグ43が設けられ、第2パイプP2に中性子検出器45及び第2遮蔽プラグ46が設けられている。
【0042】
図4に示すように、ルーフスラブ12の周方向に複数の中性子検出ユニット40が配置されている。具体的には4つの中性子検出ユニット40が一例として周方向に90°間隔で配置されている。中性子検出ユニット40の構成はいずれも同一であるため、以下、1つの中性子検出ユニット40について説明する。
【0043】
第1パイプP1は、金属製の筒状部材である。第1パイプP1の断面形状は、円形、四角形及び多角形など任意であるが、本実施形態では一例として円形である。第1パイプP1は、炉心上部構造30の筒体31内に配置され、炉心20の上方の領域に位置している。ここで、炉心20の上方の領域とは、炉心20の真上に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、炉心20の真上の領域(図2の符号S1を参照)である。
【0044】
第1パイプP1は、ルーフスラブ構造体11の上方からルーフスラブ構造体11に対して着脱自在に取り付けられている。第1パイプP1は、例えば内部に配置された機器が故障した場合などに、他の第1パイプP1と交換できるように構成されている。第1パイプP1は、上端がルーフスラブ構造体11によって支持され、ルーフスラブ構造体11から主容器10の内部に向かって鉛直方向に延在している。第1パイプP1の下端は、必ずしも所定の部材によって支持されている必要はないが、本実施形態では、炉心上部構造30の計装取付板32によって支持されている。
【0045】
第1パイプP1は、ルーフスラブ構造体11から炉心20の付近まで延びる比較的長い部材であるところ、このように下端が計装取付板32に固定される構成によれば、第1パイプP1が撓むことが防止される。その結果、第1パイプP1及び第1パイプP1に配置された中性子ガイド管41等が損傷しにくくなる。
【0046】
中性子ガイド管41は、第1パイプP1の一部として構成され、中性子を比較的高温な炉心20付近から比較的低温のルーフスラブ構造体11側へと案内する。具体的には、中性子ガイド管41は、下端部が主容器10内に位置し上端部がルーフスラブ構造体11内に位置するように延在している。中性子ガイド管41は中空の部材であり、中性子が大幅に減衰することなく通過できるように、例えばアルゴンガスなどの不活性ガスが充填されている。
【0047】
減速材42は、第1パイプP1内における中性子ガイド管41の上方に配置されている。減速材42は、一例として、ルーフスラブ構造体11の内部に位置している。減速材42は、中性子ガイド管41を通じて導かれた中性子の速度を減速させる。中性子は、このよう減速材42によって減速させられて熱中性子となることで、中性子検出器45によって検出可能となる。
【0048】
第1遮蔽プラグ43は、第1パイプP1内における減速材42の上方に配置されている。第1遮蔽プラグ43は、炉心20側からの熱及び放射線を遮蔽する部材である。
【0049】
第2パイプP2は、金属製の筒状部材であり、第1パイプP1と同様、ルーフスラブ構造体11の上方からルーフスラブ構造体11に対して着脱自在に取り付けられている。第2パイプP2の断面形状は、円形、四角形及び多角形など任意であるが、本実施形態では一例として円形である。第2パイプP2は、一例として第1パイプP1と平行に配置されている。図4に示すように、本実施形態では、第2パイプP2は第1パイプP1よりも主容器10(図1参照)の半径方向の外側に配置されている。
【0050】
第2パイプP2は、ルーフスラブ構造体11のどのような位置に配置されていてもよいが、本実施形態では、図4に示すように、第2パイプP2は回転プラグ13に設けられている。本発明は図4の構成に限定されるものではないが、図4の例では、3本の第2パイプP2が小回転プラグ13-2に設けられ、1本の第2パイプP2が大回転プラグ13-1に設けられている。
【0051】
中性子検出器45は、中性子の中性子束を測定する検出器であり、第2パイプP2に設けられている。具体的には、中性子検出器45は、減速材42を通過して減速した中性子の中性子束を測定する。中性子検出器45は、ルーフスラブ構造体11の内部、具体的には、ルーフスラブ構造体11の冷却ガス空間11cの内部に配置されている。
【0052】
上述したように、本実施形態では、第1パイプP1及び第2パイプP2がルーフスラブ構造体11(具体的にはルーフスラブ構造体11の回転プラグ13)に対して上方から着脱自在に挿入される。このような構成によれば、第1パイプP1及び第2パイプP2を容易に抜き出すことができ、各種機器へのケーブル配線も行い易い。
【0053】
図5は、中性子ガイド管がある場合と、中性子ガイド管がない場合との中性子の減衰の様子を示すグラフである。図5において、横軸は、ルーフスラブ構造体11の上面からの軸方向の距離[cm]であり、縦軸は、中性子束[n/(cm・sec)]である。図5に示すように、中性子ガイド管がない場合、炉心側の計装取付板32からルーフスラブ構造体の上面側に近づくにつれて(「上面からの軸方向距離」の値が「0」に近づくにつれて)中性子束の量が減少するが、中性子ガイド管がある場合は、中性子束の減少率が中性子ガイド管がない場合と比較して小さくなる。このことから、中性子ガイド管を利用することで、中性子を大幅に減衰させることなく主容器の上面側に導くことができることが理解される。
【0054】
(制御装置80)
制御装置80(図1参照)は、中性子検出器45の検出結果に応じて表示部81に所定の情報を表示させる装置である。制御装置80は、例えばCPU及び記憶部を有するコンピュータで構成されている。表示部81は、例えばディスプレイである。制御装置80は、それぞれの中性子検出ユニット40の中性子検出器45に電気的に接続されており、各中性子検出器45からの出力値を取得する。
【0055】
上述したように本実施形態の高速炉1では、第1パイプP1の中性子ガイド管41によってルーフスラブ構造体11内へと導かれ、減速材42で減速させられた中性子の中性子束を中性子検出器45が計測する。第1パイプP1は、下端側が主容器10の冷却材内に挿入されており、高速炉1の動作時においては冷却材が高温になるため、中性子ガイド管41が損傷することが想定される。このような損傷が生じた場合、侵入したナトリウムによる大幅な減衰を被るため中性子束を正確に検出することができない。
【0056】
そこで本実施形態では、制御装置80が、中性子検出器45の検出結果に基づいて中性子ガイド管41の損傷の発生を推定する。具体的には、制御装置80は、複数の中性子検出器45からの出力値を取得し、1つの所定の中性子検出器45からの出力値と、複数の他の中性子検出器45からの出力値とを比較する。複数の他の中性子検出器45からの出力値は、例えば、3つの中性子検出器45からの出力値の平均値である。
【0057】
制御装置80は、所定の中性子検出器45から出力値と、他の中性子検出器45からの出力値との差が所定の閾値以上の場合、その所定の中性子検出器45の異常を示すアラートを出力する。制御装置80は、具体的には、一例として表示部81にアラートを表示させる。アラートは、例えば、作業者に中性子検出ユニット40を点検させるためのメッセージであってもよいし、機器の交換を促すメッセージであってもよい。
【0058】
このような構成によれば、表示部81に表示されたアラートを作業者が見ることによって、作業者が中性子検出ユニット40に異常が生じていることを知ることができ、当該の中性子検出ユニット40の作動を阻止して点検や機器の交換といった対応を取ることができる。
【0059】
なお、制御装置80は、1つの所定の中性子検出器45からの出力値と、任意の1つの他の中性子検出器45からの出力値とを比較することによって、上記のような異常検出を行ってもよい。また、制御装置80は、1つの所定の中性子検出器45からの出力値と、予め所定の値に設定された基準値とを比較し、その差が所定の閾値以上の場合に、アラートを出力してもよい。
【0060】
(作用効果)
以上説明した本実施形の高速炉1では、中性子検出ユニット40として中性子ガイド管41、減速材42、及び中性子検出器45が設けられ、炉心20からの中性子は、中性子ガイド管41によって主容器10の上方へと導かれ、比較的温度の低いルーフスラブ構造体11の内部において、中性子検出器45によって中性子束が測定される。本実施形態の高速炉1における中性子計測方法は、中性子ガイド管41を通じて導かれた中性子の速度を減速材42で減速させるステップと、減速材42によって減速した中性子の中性子束を中性子検出器45で測定するステップとを有する。
【0061】
このような構成によれば、中性子検出器45が主容器10の半径方向外側に配置される構成と比較して、冷却材であるナトリウムによる中性子の減衰の影響を受けにくいため、中性子検出器45による中性子束の測定値の正確度を向上させることができる。また、中性子検出ユニット40が炉心20の上方に設けられている本実施形態の構成によれば、使用済燃料が遮蔽集合体の一部に代えて貯蔵されたとしても、使用済燃料から放出される中性子による影響や、炉心からの中性子が使用済燃料に吸収されることによる影響を受けにくく、中性子束を精度良く検出することができる。
【0062】
また、本実施形態の高速炉1では、ルーフスラブ構造体11に対して着脱自在に取り付けられた第1パイプP1の一部として中性子ガイド管41が構成されている。したがって、例えば中性子ガイド管41が損傷した場合に、中性子ガイド管41を交換し易い。
【0063】
また、本実施形態の高速炉1では、第1パイプP1の下端が計装取付板32に、途中は炉心上部構造30内の高さ方向の数枚の水平板に支持・固定されている(後者は不図示)。水平板は、炉心上部構造30内において、1枚又は複数枚配置されていてもよく、当該水平板によって第1パイプP1における上端と下端との間の中間領域が支持されていることが、一形態において好ましい。このような構成によれば、第1パイプP1が撓むことが防止され、その結果、第1パイプP1及び第1パイプP1に配置された中性子ガイド管41等が損傷しにくくなる。よって、中性子束の測定を長期にわたって正確に行うことが可能となる。
【0064】
また、本実施形態の高速炉1では、第1パイプP1に第1遮蔽プラグ43がさらに設けられている。このように、第1遮蔽プラグ43を第1パイプP1に設けることで、原子炉運転中はルーフスラブ構造体11上部への中性子等放射線の遮蔽を行い、中性子ガイド管41内に設置した計装機器を交換する必要が生じた際は原子炉停止時に第1遮蔽プラグ43を取り外して交換を行う。
【0065】
また、本実施形態の高速炉1では、ルーフスラブ構造体11に対して着脱自在に取り付けられた第2パイプP2に中性子検出器45が配置されている。中性子検出器45は、ルーフスラブ構造体11の内部(具体的は冷却ガス空間11c)の任意の位置に配置されてよいが、このように第2パイプP2に中性子検出器45が設けられている場合、中性子検出器45を交換する必要が生じた際に交換を行い易いという利点がある。
【0066】
また、本字実施形態の高速炉1では、中性子検出器45は、熱遮蔽層11aによって遮熱された、ルーフスラブ構造体11の冷却ガス空間11cに位置するように配置されている。このような構成によれば、熱による中性子検出器45の損傷が生じにくく、また、高温条件下で使用可能な特別な検出器を用いる必要もない。
【0067】
また、本字実施形態の高速炉1では、複数の中性子検出ユニット40のうちの一部に損傷が生じ、中性子検出器45の出力値に基づいて異常が検出された場合には、制御装置80が表示部81にアラートを出力する。したがって、作業者が中性子検出ユニット40に異常が生じていることを知ることができ、当該の中性子検出ユニット40の作動を阻止して点検や機器の交換といった処置を行うことができる。
【0068】
(変形例)
図3に示したように、上記実施形態では、中性子検出器45が設けられた第2パイプP2が回転プラグ13の大回転プラグ13-1と小回転プラグ13-2とに配置された構成を例示した。しかしながら、本発明においては、例えば、全ての第2パイプP2が大回転プラグ13-1に、または小回転プラグ13-2に配置されてもよい。
【0069】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0070】
1 高速炉
10 主容器
10a 炉心槽
11 ルーフスラブ構造体
11a 熱遮蔽層
11b 放射線遮蔽層
11c 冷却ガス空間
12 ルーフスラブ
13 回転プラグ
13-1 大回転プラグ
13-2 小回転プラグ
14 燃料交換機
15 仕切板
20 炉心
30 炉心上部構造
31 筒体
32 計装取付板
40 中性子検出ユニット
41 中性子ガイド管
42 減速材
43 第1遮蔽プラグ
45 中性子検出器
46 第2遮蔽プラグ
50 中間熱交換器
51 入口窓
52 出口窓
60 循環ポンプ
61 配管
70 直接炉心冷却系熱交換器
80 制御装置
81 表示部
P1 第1パイプ
P2 第2パイプ
S1 領域
図1
図2
図3
図4
図5