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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156764
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】コネクタおよびシールド部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6581 20110101AFI20231018BHJP
【FI】
H01R13/6581
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066307
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智貴
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FB07
5E021FC21
5E021LA10
5E021LA15
(57)【要約】
【課題】通信性能の向上を図ることが可能なコネクタおよびシールド部材を提供する。
【解決手段】コネクタ10は、導電部材60を収容するハウジング40と、導電部材60の外周側に位置してハウジング40の内部に圧入状態で保持される導電性のシールド部材20と、を備える。シールド部材20は、板状をなし、互いの板面を対向させる一対の側板21を有している。一対の側板21は、導電部材60を挟んだ両側に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材を収容するハウジングと、
前記導電部材の外周側に位置して前記ハウジングの内部に圧入状態で保持される導電性のシールド部材と、を備えるコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記導電部材の端子金具を係止するインナハウジングと、前記インナハウジングの外周側を包囲するアウタハウジングと、によって構成され、
前記シールド部材は、板状をなし、前記インナハウジングと前記アウタハウジングとの間の間隙に配置される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記シールド部材は、前記アウタハウジングの内面に係止される圧入突起を有している、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記シールド部材は、互いの板面を対向させる一対の側板を有し、一対の前記側板は、前記導電部材を挟んだ両側に配置され、前記圧入突起は、一対の前記側板のそれぞれにおいて前記側板の板面に沿って突出している、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記シールド部材は、互いの板面を対向させつつ一端から他端にかけて延びる一対の側板と、一対の前記側板における前記一端側の部分および前記他端側の部分をそれぞれつなぐ一端連結部および他端連結部と、一対の前記側板における前記一端連結部と前記他端連結部との間の部分をつなぐ中間連結部と、を有し、
前記中間連結部は、前記インナハウジングを支持可能な支持部になっている、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記シールド部材は、一端から他端にかけて延びる板状をなし、前記導電部材の電線が引き出される側である他端側を向く板厚面に、前記アウタハウジングの内面に接触可能な当て止め部を有している、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記シールド部材は、一端から他端にかけて延びる板状をなし、前記導電部材の電線が引き出される側である他端側を向く板厚面に、前記アウタハウジングの内面に接触可能な当て止め部を有している、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項8】
導電部材を収容したハウジングの内部に配置される、導電性の板材のシールド部材であって、
互いの板面を対向させつつ一端から他端にかけて延びる一対の側板と、一対の前記側板における前記一端側の部分および前記他端側の部分をそれぞれつなぐ一端連結部および他端連結部と、一対の前記側板における前記一端連結部と前記他端連結部との間の部分をつなぐ中間連結部と、を備える、シールド部材。
【請求項9】
前記一対の側板のそれぞれは、前記側板の板面に沿って突出する圧入突起を有している、請求項8に記載のシールド部材。
【請求項10】
前記一対の側板のそれぞれは、前記導電部材の電線が引き出される側である他端側を向く板厚面に、当て止め部を有している、請求項8または請求項9に記載のシールド部材。
【請求項11】
前記一端連結部と前記中間連結部との間および前記他端連結部と前記中間連結部との間は、空間になっている、請求項8または請求項9に記載のシールド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタおよびシールド部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたコネクタ(雄コネクタ)は、ハウジング(雄アウタハウジング)と、ハウジングの外周側に組み付けられる導電性のシールド部材と、を備えている。ハウジングには、導電部材が収容されている。特許文献1の場合、導電部材は、ツイストペアケーブルの端部で互いに並列に配置される2本の電線と、2本の電線のそれぞれに接続される端子と、によって構成される。シールド部材は、導電部材を電磁ノイズからシールドする。ツイストペアケーブルの端部にコネクタが接続された構造は、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-145083号公報
【特許文献2】特開2021-68579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、シールド部材がコネクタの外面に露出しており、高速伝送における通信性能の向上と安定化を図る観点から未だ改善の余地があった。
【0005】
そこで、本開示は、通信性能の向上を図ることが可能なコネクタおよびシールド部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、導電部材を収容するハウジングと、前記導電部材の外周側に位置して前記ハウジングの内部に圧入状態で保持される導電性のシールド部材と、を備える。
【0007】
本開示のシールド部材は、導電部材を収容したハウジングの内部に配置される、導電性の板材のシールド部材であって、互いの板面を対向させつつ一端から他端にかけて延びる一対の側板と、一対の前記側板における前記一端側の部分および前記他端側の部分をそれぞれつなぐ一端連結部および他端連結部と、一対の前記側板における前記一端連結部と前記他端連結部との間の部分をつなぐ中間連結部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、通信性能の向上を図ることが可能なコネクタおよびシールド部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態1において、相手側コネクタと嵌合状態にあるコネクタの側断面図である。
図2図2は、コネクタの平断面図である。
図3図3は、ロア部材がアッパ部材に対して進出位置にあるときのインナハウジングの斜視図である。
図4図4は、アウタハウジングの斜視図である。
図5図5は、アウタハウジングの正面図である。
図6図6は、シールド部材の斜視図である。
図7図7は、シールド部材の平面図である。
図8図8は、シールド部材の正面図である。
図9図9は、一対のストッパ片の当て止め部がアウタハウジングの各ストッパ面に接触している部分の拡大断面図である。
図10図10は、圧入突起がアウタハウジングに圧入されている部分の拡大断面図である。
図11図11は、シールド部材の組み付け前のコネクタの部分拡大正面図である。
図12図12は、中間連結部がインナハウジングの下面を支持可能に配置されている部分の拡大斜視図である。
図13図13は、相手側コネクタと嵌合状態にあるコネクタの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)導電部材を収容するハウジングと、前記導電部材の外周側に位置して前記ハウジングの内部に圧入状態で保持される導電性のシールド部材と、を備える。
シールド部材は、導電部材を電磁ノイズからシールドすることができる。このシールド部材はハウジングの内部に配置されているので、外部異物との干渉を回避できる。その結果、シールド性能の向上を図ることができる。しかもシールド部材は、ハウジングの内部に圧入状態で保持されるので、ハウジングから離脱するのを防止できる。
【0011】
(2)前記ハウジングは、前記導電部材の端子金具を係止するインナハウジングと、前記インナハウジングの外周側を包囲するアウタハウジングと、によって構成され、前記シールド部材は、板状をなし、前記インナハウジングと前記アウタハウジングとの間の間隙に配置されるのが好ましい。
インナハウジングとアウタハウジングとの間の間隙を利用することで、板状のシールド部材をハウジングに組み付けることができるので、シールド部材の組み付けのための複雑な構造をハウジングに設ける必要がない。
【0012】
(3)前記シールド部材は、前記アウタハウジングの内面に係止される圧入突起を有しているのが良い。
圧入突起がアウタハウジングの内面に係止されることにより、ハウジングに対するシールド部材の圧入状態を維持することができる。
【0013】
(4)前記シールド部材は、互いの板面を対向させる一対の側板を有し、一対の前記側板は、前記導電部材を挟んだ両側に配置され、前記圧入突起は、一対の前記側板のそれぞれにおいて前記側板の板面に沿って突出しているのが良い。
圧入突起が一対の側板のそれぞれに形成されているため、シールド部材がハウジングにバランス良く保持される。また、圧入突起が側板の板面に沿って突出しているため、圧入突起の形成に際してシールド部材の構造を複雑化させることもない。
【0014】
(5)前記シールド部材は、互いの板面を対向させつつ一端から他端にかけて延びる一対の側板と、一対の前記側板における前記一端側の部分および前記他端側の部分をそれぞれつなぐ一端連結部および他端連結部と、一対の前記側板における前記一端連結部と前記他端連結部との間の部分をつなぐ中間連結部と、を有し、前記中間連結部は、前記インナハウジングを支持可能な支持部になっているのが良い。
シールド部材が一端連結部および他端連結部を有しているため、導電部材の一端側および他端側におけるシールド性能をより強化できる。また、中間連結部としての支持部がインナハウジングを支持可能であるため、アウタハウジングの内部にインナハウジングを安定して収容させることができる。
【0015】
(6)前記シールド部材は、一端から他端にかけて延びる板状をなし、前記導電部材の電線が引き出される側である他端側を向く板厚面に、前記アウタハウジングの内面に接触可能な当て止め部を有しているのが良い。
シールド部材がインナハウジングとアウタハウジングとの間の間隙に差し込まれ、当て止め部がアウタハウジングの内面に接触することにより、シールド部材の差し込み動作を停止させ、ハウジングの内部にシールド部材を位置決めして配置させることができる。当て止め部は、シールド部材の板厚面に形成されているため、アウタハウジングの内面に接触したときに必要な強度を確保できる。
【0016】
本開示のシールド部材は、
(7)導電部材を収容したハウジングの内部に配置される、導電性の板材のシールド部材であって、互いの板面を対向させつつ一端から他端にかけて延びる一対の側板と、一対の前記側板における前記一端側の部分および前記他端側の部分をそれぞれつなぐ一端連結部および他端連結部と、一対の前記側板における前記一端連結部と前記他端連結部との間の部分をつなぐ中間連結部と、を備える。
シールド部材がハウジングの内部に配置されていて外部異物との干渉を回避できるので、シールド性能の向上を図ることができる。シールド部材が一端連結部および他端連結部を有しているため、導電部材の一端側および他端側におけるシールド性能をより強化できる。また、ハウジングがインナハウジングとアウタハウジングとで構成され、インナハウジングとアウタハウジングとの間の間隙にシールド部材が配置される場合には、インナハウジングを支持可能な位置に中間連結部を配置させることができる。その結果、アウタハウジングの内部にインナハウジングを安定して収容させることができる。
【0017】
(8)前記一対の側板のそれぞれは、前記側板の板面に沿って突出する圧入突起を有しているのが良い。
圧入突起がハウジングの内面に係止されることにより、ハウジングに対するシールド部材の圧入状態を維持することができる。圧入突起が一対の側板のそれぞれに形成されているため、シールド部材がハウジングにバランス良く保持される。また、圧入突起が側板の板面に沿って突出しているため、圧入突起の形成に際してシールド部材の構造を複雑化させることもない。
【0018】
(9)前記一対の側板のそれぞれは、前記導電部材の電線が引き出される側である前記他端側を向く板厚面に、当て止め部を有しているのが良い。
シールド部材をハウジングの内部に組み付ける際に、当て止め部がハウジングの内面に接触することにより、シールド部材の組み付け動作を停止させ、ハウジングの内部にシールド部材を位置決めして配置させることができる。当て止め部は、シールド部材の板厚面に形成されているため、ハウジングの内面に接触したときに必要な強度を確保できる。
【0019】
(10)前記一端連結部と前記中間連結部との間および前記他端連結部と前記中間連結部との間は、空間になっているのが良い。
これらの空間によってシールド部材の軽量化を図ることができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態1>
実施形態1は、コネクタ10として、防水コネクタを例示している。図1および図2に示すように、コネクタ10は、ハウジング40と、導電部材60と、防水部材80と、シールド部材20と、を備えている。導電部材60は、詳細は後述するが、電線61の端部側の部分と電線61の端部に接続される端子金具62とによって構成されている。ハウジング40は、相手側コネクタ100に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング40と相手側コネクタ100とが嵌合開始時に互いに向き合う面側を前側とする。上下方向は、図1の上下方向を基準とする。左右方向は、図2の上下方向を基準とする。
【0022】
(相手側コネクタ)
図1に示すように、相手側コネクタ100は、相手側ハウジング140と、相手側端子金具162と、相手側防水部材180と、を備えている。相手側ハウジング140は、合成樹脂製であって、相手側アウタハウジング141と、相手側アウタハウジング141の内部に配置される相手側インナハウジング142と、によって構成されている。
【0023】
また、相手側アウタハウジング141は、相手側アウタハウジング本体149と、相手側アウタハウジング本体149の前端部の外周側を包囲する嵌合筒部143と、を有している。相手側アウタハウジング本体149と嵌合筒部143との間には、ハウジング40の後述するフード部51が嵌合される。嵌合筒部143の上壁には、前後方向に延びて上下方向に弾性変形可能な相手側ロック部144が形成されている。
【0024】
相手側端子金具162は、導電金属製であって、前端部に筒状の箱部163を有する雌型端子として構成される。相手側端子金具162は、相手側インナハウジング142の内部に抜け止め状態で収容される。相手側端子金具162の後端部は、相手側電線161の端部に圧着して接続されている。
【0025】
相手側電線161は、芯線の外周を絶縁被覆で包囲した被覆電線として構成される。図示はしないが、相手側電線161は、2本が互いに撚り合わされ、ツイストペアケーブルを構成している。ツイストペアケーブルとしての2本の相手側電線161は、端部を除いて、絶縁性の相手側シース164の内部に配置されている。2本の相手側電線161の端部は、相手側シース164の端部から突出しており、相手側インナハウジング142の内部において、撚りが解かれた状態で、左右方向に並んで配置されている。相手側端子金具162も、撚りが解かれた2本の相手側電線161に対応し、相手側インナハウジング142の内部において、左右方向に並んで配置されている。
【0026】
相手側防水部材180は、ゴム製であって、相手側アウタハウジング141の後端側の内部に配置され、相手側インナハウジング142から引き出された相手側シース164の部分と相手側アウタハウジング141との間を液密にシールする。
【0027】
相手側アウタハウジング本体149の外周面には、コネクタシール部材90が装着されている。コネクタシール部材90は、ゴム製であってリング状をなし、相手側アウタハウジング本体149とフード部51との間を液密にシールする。言い換えれば、コネクタシール部材90は、コネクタ10と相手側コネクタ100との間を液密にシールする。
【0028】
(ハウジング)
ハウジング40は、合成樹脂製であって、図1および図2に示すように、アウタハウジング41と、アウタハウジング41の内部に配置されるインナハウジング42と、によって構成されている。図3に示すように、インナハウジング42は、ロア部材43と、アッパ部材44と、によって構成されている。ロア部材43は、アッパ部材44の下側に配置される。ロア部材43は、アッパ部材44に対し、前端部をアッパ部材44から前方に突出させる進出位置(図3を参照)と、前端部をアッパ部材44から突出させない退避位置(図1を参照)とに、前後方向にスライド移動可能とされている。図2に示すように、アッパ部材44は、左右方向に並んで配置される2つのキャビティ45を有している。
【0029】
アッパ部材44の各キャビティ45には、端子金具62が挿入される。図1に示すように、アッパ部材44は、板状の天井部46と、天井部46から下方(キャビティ45内)に突出する端子固定部47と、天井部46から上方に突出するロック突部48と、を有している。端子固定部47は、キャビティ45に収容された端子金具62を係止し、端子金具62のキャビティ45からの抜け出しを規制する。
【0030】
図4に示すように、アウタハウジング41は、前後方向に長く延びる筒状をなしている。アウタハウジング41は、インナハウジング42を収容するアウタハウジング本体49と、アウタハウジング本体49の前端から一回り大きくなって前方に突出するフード部51と、によって構成されている。
【0031】
図1および図5に示すように、アウタハウジング41は、アウタハウジング本体49の上端部の内周面から前方に突出するロックアーム52を有している。ロックアーム52は、上下方向に弾性変形可能とされている。
【0032】
図5に示すように、アウタハウジング本体49は、上端部に、上下方向および左右方向に沿って平坦な段差面53を有している。また、アウタハウジング本体49は、段差面53から一段後方へ引っ込んだ位置にストッパ面54を有している。段差面53およびストッパ面54は、アウタハウジング41の正面視において、ロックアーム52を挟んだ左右両側に対をなし、フード部51の内部に臨むように前方を向いて配置されている。
【0033】
また、アウタハウジング本体49は、下端部に、左右で対をなす受け面55を有している。受け面55は、段差面53およびストッパ面54と同様、フード部51の内部に臨むように前方を向いて配置されている。アウタハウジング本体49の下面には、車両等の図示しない取付対象に取り付けるためのブラケット部58が突設されている。
【0034】
図4に示すように、フード部51は、上壁の前端部から上方に突出するコネクタロック部56を有している。図5に示すように、フード部51の内周面には、複数の係合部57が突設されている。各係合部57は、前後方向に延びるリブ状をなし、フード部51の内周面に周方向に間隔を置いて4つ配置されている。具体的には、各係合部57は、フード部51における上壁および下壁のそれぞれの左右中央部と、フード部51における左右側壁のそれぞれの上下中央部と、に等間隔を置いて配置されている。
【0035】
(導電部材、防水部材等)
導電部材60としての端子金具62は、導電金属製であって、図2に示すように、前方に突出するタブ63を有する雄型端子として構成される。端子金具62は、キャビティ45に収容された状態で、フード部51の内部にタブ63を突出させる。
【0036】
電線61は、芯線の外周を絶縁被覆で包囲した被覆電線である。本実施形態1の場合、電線61は、図示はしないが2本が互いに撚り合わされ、UTPケーブル(Unshielded Twisted Pair Cable)として例示されるツイストペアケーブルを構成している。ツイストペアケーブルとしての2本の電線61は、端部を除いて、絶縁性のシース64の内部に配置されている。図2に示すように、2本の電線61の端部は、シース64の端部から前方に突出しており、各キャビティ45において、撚りが解かれた状態で、左右方向に並んで配置されている。端子金具62も、撚りが解かれた2本の電線61に対応し、各キャビティ45において、左右方向に並んで配置されている。
【0037】
本実施形態1の場合、導電部材60としての電線61は、撚りが解かれた2本の電線61と、シース64の端部内における撚り合された電線61の部分と、によって構成される。
【0038】
防水部材80は、ゴム製であって、アウタハウジング本体49の後端側の内部に配置され、インナハウジング42から引き出されたシース64の部分とアウタハウジング本体49との間を液密にシールする。
【0039】
また、アウタハウジング本体49の後端部には、防水部材80の抜け出しを規制する合成樹脂製のリアホルダ65が装着されている。
【0040】
(シールド部材)
シールド部材20は、導電性を有する金属製の板材を曲げ加工等して一体に形成されている。図6および図7に示すように、シールド部材20は、左右方向で互いに対向する一対の側板21を有している。各側板21は、板面を左右方向に向けつつ前後方向に長く延びる形状をなし、インナハウジング42の前後長さを超える前後長さを有している。
【0041】
また、シールド部材20は、各側板21の前端部(一端側の部分)をつなぐ一端連結部22と、各側板21の後端部(他端側の部分)をつなぐ他端連結部23と、各側板21における一端連結部22と他端連結部23との間の前後中間部分をつなぐ中間連結部24と、を有している。中間連結部24は、シールド部材20における長さ方向中央よりも前側に配置されている。シールド部材20において、一端連結部22と中間連結部24との間、および中間連結部24と他端連結部23との間は、それぞれ空間25になっており、上下方向に開放されている。各側壁の左右方向の間隔は、一端連結部22、他端連結部23および中間連結部24のそれぞれによって維持されている。
【0042】
図6および図7に示すように、各側板21は、後端部に位置する一対の本体側板部26と、前端部に位置する一対のフード側板部27と、前後方向において各フード側板部27と各本体側板部26との間に位置する一対の屈曲部28と、を有している。各本体側板部26は、前後方向に互いに平行に長く延びるように配置されている。各フード側板部27は、各本体側板部26よりも前後方向に短く、且つ各本体側板部26よりも左右方向に間隔を置いて互いに平行に配置されている。各屈曲部28は、各本体側板部26から各フード側板部27に向けて左右方向に拡開している。
【0043】
図6および図12に示すように、各本体側板部26の前端部の下縁には、屈曲部28と中間連結部24との間から下方に張り出す拡張部37が形成されている。各拡張部37の下縁には、圧入突起29が形成されている。圧入突起29は、フード側板部27の周囲の部位と段差なく連続するように各本体側板部26の板面に沿って配置されている。図10に示すように、圧入突起29は、側面視で三角突状をなし、下方に向けて逆テーパ状に前傾する係止面31を有している。
【0044】
図6に示すように、各本体側板部26の前端部の上縁には、ストッパ片32が突出して形成されている。図8に示すように、ストッパ片32は、正面視L字形をなし、上方に起立する部分と各本体側板部26の左右方向(対向方向)の内側に突出する部分とを有している。ストッパ片32の後端は、板厚面であって、後方を向く当て止め部33として構成される。
【0045】
図6および図8に示すように、一端連結部22は、正面視U字形をなし、各フード側板部27の前端部から下方に対をなして突出する部分の下端間に、左右方向に架け渡される一端架設部34を一体に有している。
【0046】
図6に示すように、中間連結部24は、各本体側板部26の前端部における圧入突起29より後方の部分の下端間に、左右方向に架け渡される中間架設部35を有している。中間架設部35は、左右両側で対をなす板片部分であって、各本体側板部26間の左右方向の中央部で互いに突き合わされている。
【0047】
他端連結部23は、各本体側板部26の後端部の下端間に、左右方向に架け渡される他端架設部36を有している。他端架設部36も、左右両側で対をなす板片部分であって、各本体側板部26間の左右方向の中央部で互いに突き合わされている。
【0048】
図7に示すように、他端連結部23の前後方向の板幅は、一端連結部22および中間連結部24のそれぞれの前後方向の板幅よりも大きくなっている。図8に示すように、中間架設部35は、一端架設部34および他端架設部36よりも上方に配置されている。一端架設部34は、中間架設部35および他端架設部36よりも下方に配置されている。
【0049】
<コネクタの組み付け方法、嵌合構造および作用>
まず、2本の電線61の端部に接続された端子金具62がインナハウジング42の各キャビティ45に収容される。次いで、インナハウジング42がアウタハウジング41の内部に後方から挿入される。インナハウジング42のロック突部48がアッパハウジングのロックアーム52に係止されることにより、インナハウジング42がアウタハウジング41に対して後方への抜け出しを規制された状態に保持される(図1を参照)。各端子金具62のタブ63は、進出位置のロア部材43によって保護される(図2を参照)。アウタハウジング本体49の後端側には、防水部材80が挿入され、さらにリアホルダ65が装着されて防水部材80の抜け出しを規制する。
【0050】
図11に示すように、インナハウジング42がアウタハウジング41に組み付けられた状態において、インナハウジング42の外周面とアウタハウジング本体49の内周面との間には、間隙Gが形成される。この間隙Gは、前方に開放され、後端が防水部材80で閉塞される(図2を参照)。間隙Gの最小値は、シールド部材20の板厚に対応している。
【0051】
続いて、インナハウジング42とアウタハウジング本体49との間の間隙Gに、前方からシールド部材20が差し込まれる。シールド部材20の差し込み過程で、各圧入突起29がアウタハウジング本体49の受け面55に接触して圧入される。その後、各ストッパ片32の当て止め部33がアウタハウジング本体49の各ストッパ面54に前方から対面接触し(図9および図10を参照)、シールド部材20の差し込みが停止される。これにより、シールド部材20がハウジング40の内部に正規に組み付けられる。このとき、各圧入突起29の係止面31がアウタハウジング本体49を係止することで、シールド部材20がハウジング40に対して前方への抜け出しを規制された状態に保持される(図10を参照)。
【0052】
図2に示すように、シールド部材20は、ハウジング40の内部において、防水部材80の前方に位置し、インナハウジング42の外周面に接触可能に配置される。インナハウジング42の外周面とアウタハウジング本体49の内周面との間の間隙Gには、各本体側板部26、中間連結部24および他端連結部23が配置される。各フード側板部27および一端連結部22は、フード部51の内部に配置される。一端連結部22は、インナハウジング42よりも前方に配置される。
【0053】
中間連結部24は、インナハウジング42におけるロア部材43の下面の前端側に接触して支持可能に配置される(図12を参照)。他端連結部23は、インナハウジング42におけるロア部材43の下面の後端側に接触して支持可能に配置される。インナハウジング42は、中間連結部24および他端連結部23によって上下方向の傾きが規制された状態でアウタハウジング41の内部に収容される。また、各フード側板部27および一端連結部22がそれぞれ各係合部57の端面に接触可能に配置される(図13を参照)。
【0054】
次に、相手側コネクタ100がハウジング40に嵌合される。相手側コネクタ100の嵌合過程で、相手側インナハウジング142がロア部材43を押圧して退避位置に移動させる。相手側コネクタ100の正規嵌合時に、相手側ロック部144がハウジング40のコネクタロック部56に係止可能に配置され、相手側ハウジング140がハウジング40に嵌合状態に保持される(図1を参照)。各相手側端子金具162の箱部163には各端子金具62のタブ63が挿入されて接続される。
【0055】
相手側コネクタ100の正規嵌合時に、図13に示すように、相手側アウタハウジング本体149とフード部51の各係合部57との間に、各係合部57を介して、シールド部材20が挟み込まれる。各フード側板部27および一端連結部22は、相手側アウタハウジング本体149の外周面に沿って配置される。また、各フード側板部27および一端連結部22は、コネクタシール部材90の後方(ハウジング40側から見た後方)に位置し、各端子金具62と各相手側端子金具162との接続部分に近接して配置される。各本体側板部26および他端連結部23は、各端子金具62と各電線61との接続部分に近接して配置される。
【0056】
シールド部材20は、シース64から露出する各電線61の撚り戻し部分と、相手側シース164から露出する各相手側電線161の撚り戻し部分と、各端子金具62と、各相手側端子金具162と、の外周側に配置される。これにより、シールド部材20は、ハウジング40の内部に収容された導電部材60を電磁ノイズからシールドして保護することができるとともに、ハウジング40の内部で発生したノイズが外部へ放射されるのを抑制することができる。
【0057】
本実施形態1の場合、シールド部材20が板状をなし、一端連結部22と他端連結部23との間および他端連結部23と中間連結部24との間にそれぞれ空間25が形成されている。このため、シールド部材20の軽量化を図ることができる。また、板状のシールド部材20がインナハウジング42とアウタハウジング41との間の間隙Gに差し込まれるため、ハウジング40にシールド部材20を組み付けるための複雑な構造を設けなくて済む。
【0058】
以上説明したように本実施形態1によれば、シールド部材20がハウジング40の内部に配置されているので、シールド部材20と外部異物との干渉を回避でき、シールド性能の向上を図ることができる。また、シールド部材20はハウジング40の内部に圧入状態で保持されるので、ハウジング40から離脱するのを防止できる。特に、各圧入突起29の係止面31がアウタハウジング41の内面に係止されることにより、ハウジング40に対するシールド部材20の圧入状態をより安定且つ確実に維持することができる。しかも、各圧入突起29がシールド部材20の各側板21の板面に沿って形成されているため、各圧入突起29の形成に際してシールド部材20の構造を複雑化させることもない。
【0059】
また、各ストッパ片32の当て止め部33がアウタハウジング41の各ストッパ面54に当たることにより、シールド部材20をハウジング40の内部に位置決めすることができる。各ストッパ片32の当て止め部33は、シールド部材20の板厚面に形成されているため、アウタハウジング41の各ストッパ面54に当たったときに必要な強度を確保できる。
【0060】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、ハウジングに収容される端子金具は雄型端子として構成されていた。しかし他の実施形態として、ハウジングに収容される端子金具は雌型端子として構成されていても良い。端子金具が雌型端子である場合、ハウジングからフード部を省略することができる。
上記実施形態1の場合、導電部材として、ツイストペアケーブルとしての2本の電線を有していた。しかし他の実施形態として、導電部材としての2本の電線は、ツイストペアケーブルを構成していなくても良い。また、導電部材としての電線は、1本または3本以上で構成されていても良い。
上記実施形態1の場合、シールド部材は、一対の側板、一端連結部、中間連結部および他端連結部によって構成され、上方に開放され、空間を通して下方にも開放されていた。しかし他の実施形態として、シールド部材は、上面および下面を閉塞した筒状に形成されていても良い。
上記実施形態1の場合、シールド部材は、一端連結部と他端連結部との間に1つの中間連結部を有していた。しかし他の実施形態として、シールド部材は、一端連結部と他端連結部との間に2つ以上の中間連結部を有していても良い。
上記実施形態1の場合、コネクタは、防水コネクタであった。しかし他の実施形態として、コネクタは、防水部材やコネクタシール部材を有しない非防水のコネクタであっても良い。
【符号の説明】
【0061】
10…コネクタ
20…シールド部材
21…側板
22…一端連結部
23…他端連結部
24…中間連結部
25…空間
26…本体側板部
27…フード側板部
28…屈曲部
29…圧入突起
31…係止面
32…ストッパ片
33…当て止め部
34…一端架設部
35…中間架設部
36…他端架設部
37…拡張部
40…ハウジング
41…アウタハウジング
42…インナハウジング
43…ロア部材
44…アッパ部材
45…キャビティ
46…天井部
47…端子固定部
48…ロック突部
49…アウタハウジング本体
51…フード部
52…ロックアーム
53…段差面
54…ストッパ面
55…受け面
56…コネクタロック部
57…係合部
58…ブラケット部
60…導電部材
61…電線
62…端子金具
63…タブ
64…シース
65…リアホルダ
80…防水部材
90…コネクタシール部材
100…相手側コネクタ
140…相手側ハウジング
141…相手側アウタハウジング
142…相手側インナハウジング
143…嵌合筒部
144…相手側ロック部
149…相手側アウタハウジング本体
161…相手側電線
162…相手側端子金具
163…箱部
164…相手側シース
180…相手側防水部材
G…間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13