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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156765
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】清掃装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 11/293 20060101AFI20231018BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20231018BHJP
   A47L 11/16 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A47L11/293
G05D1/02 H
A47L11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066309
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 武
(72)【発明者】
【氏名】池本 善行
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB11
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301GG06
5H301GG08
5H301GG10
5H301GG17
(57)【要約】
【課題】閾値以上の勾配がある斜面領域を清掃する。
【解決手段】清掃計画は、点P0から点P1への移動は、清掃を伴って行う。一方、この清掃計画は、点P1から点P2への移動、及び点P2から点P3への移動はいずれも走行のみで清掃を行わない。そして、点P3に到達した時点で、この清掃計画は、清掃装置1を180度旋回させ、点P3から点P2へ登坂方向である+y方向に移動させながら清掃させる。この更新された清掃計画は、+y方向へ清掃を伴う移動、+x方向へ清掃を伴わない短距離の移動、-y方向へ清掃を伴わない移動、をこの順で繰り返す。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃対象領域の地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定し、該斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃装置。
【請求項2】
前記特定方向は、自装置が散布した洗浄水を自装置により回収可能な方向である
請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記特定方向は、登坂方向である
請求項1又は2に記載の清掃装置。
【請求項4】
走行時に特定した自装置の姿勢により前記地図を生成し、該地図に基づいて前記斜面領域を前記特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成し、作成した該清掃計画に沿って清掃する
請求項1又は2に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記清掃計画に沿って清掃する清掃時に自装置の姿勢を特定し、特定した該姿勢と前記地図により特定される勾配とが所定条件を満たさないときに清掃を停止する
請求項4に記載の清掃装置。
【請求項6】
前記清掃を停止した場合に、前記清掃時に特定した前記姿勢に基づいて前記地図を更新し、更新した該地図に基づいて前記清掃計画を修正し、修正した該清掃計画に沿って清掃する
請求項5に記載の清掃装置。
【請求項7】
走行時に特定した清掃装置の姿勢により清掃対象領域の地図を生成する工程と、
前記地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定する工程と、
前記斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成する工程と、
前記清掃計画に沿って前記清掃装置に前記清掃対象領域を清掃させる工程と、
を有する清掃方法。
【請求項8】
清掃装置を制御するコンピュータに、
走行時に特定した前記清掃装置の姿勢により清掃対象領域の地図を生成する工程と、
前記地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定する工程と、
前記斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成する工程と、
前記清掃計画に沿って前記清掃装置に前記清掃対象領域を清掃させる工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な清掃装置の傾斜地清掃技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式の清掃装置は、床面に勾配があると自重により下降することがある。そこで、勾配のある床面を自走する清掃装置の制御方法が検討されている。
【0003】
特許文献1は、床面を走行するための電動走行機構と、床面を走行しながら掃除するための電動掃除機構と、バッテリーと、電動走行機構および電動掃除機構へバッテリーからの電力を制御して供給する制御部とを搭載した筐体を備え、制御部は筐体の走行を水平面に対して傾斜した斜面で停止させるとき、筐体が自重によって斜面を走行しようとする方向を、筐体が自重によって下降しない方向まで筐体を移動させた後に、電動走行機構への電力供給を停止することを特徴とする自走式掃除機、を開示している。
【0004】
特許文献2は、傾斜面に作業を行う作業ロボットと、追従車と、作業ロボットと追従車とを接続するケーブルとを有し、作業ロボットと追従車とは、互いの位置を獲得するための測位システムを有し、追従車は、作業ロボットの位置を識別しながら、作業ロボットに追従して自動的に移動することができ、動力源は、追従車に設けられ、ケーブルを介して作業ロボットによる作業に対して継続的に動力を提供する傾斜面上作業用装置、を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-64066号公報
【特許文献2】特開2019-34306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自走式の清掃装置の中には、床面に洗浄水を散布するものがあり、また、ワックスを塗布するものがある。これら湿式の清掃装置は、自走する際に洗浄水等を回収するスクイージを有する。しかし、床面が勾配を有すると、清掃装置は、スクイージの配置次第で洗浄水等を回収できない場合がある。したがって、従来の湿式の清掃装置は、勾配を有する床面を清掃の対象から除外していた。
【0007】
本発明の目的の一つは、閾値以上の勾配がある斜面領域を清掃することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、清掃対象領域の地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定し、該斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃装置、を第1の態様として提供する。
【0009】
第1の態様の清掃装置によれば、閾値以上の勾配がある斜面領域は、地図に基づいて特定されて、清掃される。
【0010】
第1の態様の清掃装置において、前記特定方向は、自装置が散布した洗浄水を自装置により回収可能な方向である、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0011】
第2の態様の清掃装置によれば、勾配がある斜面領域において自装置が散布した洗浄水は、回収される。
【0012】
第1又は第2の態様の清掃装置において、前記特定方向は、登坂方向である、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様の清掃装置によれば、閾値以上の勾配がある斜面領域は、登坂方向に進みながら清掃される。
【0014】
第1又は第2の態様の清掃装置において、走行時に特定した自装置の姿勢により前記地図を生成し、該地図に基づいて前記斜面領域を前記特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成し、作成した該清掃計画に沿って清掃する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0015】
第4の態様の清掃装置によれば、走行時に特定した自装置の姿勢が地図に反映される。
【0016】
第4の態様の清掃装置において、前記清掃計画に沿って清掃する清掃時に自装置の姿勢を特定し、特定した該姿勢と前記地図により特定される勾配とが所定条件を満たさないときに清掃を停止する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0017】
第5の態様の清掃装置によれば、斜面領域は、地図により特定される勾配と、自装置の姿勢とが所定条件を満たさない場合に、清掃が停止される。
【0018】
第5の態様の清掃装置において、前記清掃を停止した場合に、前記清掃時に特定した前記姿勢に基づいて前記地図を更新し、更新した該地図に基づいて前記清掃計画を修正し、修正した該清掃計画に沿って清掃する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0019】
第6の態様の清掃装置によれば、斜面領域は、清掃が停止された場合に、自装置の姿勢に基づいて地図が更新され、清掃計画が修正されてから清掃される。
【0020】
本発明は、走行時に特定した清掃装置の姿勢により清掃対象領域の地図を生成する工程と、前記地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定する工程と、前記斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成する工程と、前記清掃計画に沿って前記清掃装置に前記清掃対象領域を清掃させる工程と、を有する清掃方法、を第7の態様として提供する。
【0021】
第7の態様の清掃方法によれば、閾値以上の勾配がある斜面領域は、地図に基づいて特定されて、清掃される。
【0022】
本発明は、清掃装置を制御するコンピュータに、走行時に特定した前記清掃装置の姿勢により清掃対象領域の地図を生成する工程と、前記地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定する工程と、前記斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成する工程と、前記清掃計画に沿って前記清掃装置に前記清掃対象領域を清掃させる工程と、を実行させるためのプログラム、を第8の態様として提供する。
【0023】
第8の態様のプログラムによれば、閾値以上の勾配がある斜面領域は、地図に基づいて特定されて、清掃される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願の実施形態に係る清掃装置1の構成の例を示す図。
図2】清掃装置1の外観の例を示す概略図。
図3】地図DB121の例を示す図。
図4】清掃計画DB122の例を示す図。
図5】センサ部16の例を示す図。
図6】清掃部18の例を示す図。
図7】登坂方向に移動しながら清掃する清掃装置1の例を示す図。
図8】所定方向に移動しながら清掃する清掃装置1の例を示す図。
図9】降坂方向に垂直に移動する清掃装置1の例を示す図。
図10】降坂方向に沿って移動する清掃装置1の例を示す図。
図11】清掃装置1が清掃計画を作成する動作の流れの例を示すフロー図。
図12】標準用の清掃計画の例を示す図。
図13】床面Gの勾配に応じて変更される清掃計画の例を示す図。
図14】特定方向に移動する経路が追加された清掃計画の例を示す図。
図15】更新された清掃計画における清掃を伴う移動の例。
図16】清掃装置1が清掃中に清掃計画を更新する動作の流れの例を示すフロー図。
図17】閾値以上の勾配を有する斜面領域Rを一部に含む床面Gの例を示す図。
図18】降坂方向に伸びる直線を含む垂直面で床面Gを切断した場合の断面図。
図19】標準用の清掃計画が斜面領域Rと重なる場合の例を示す図。
図20】斜面領域Rに対応して作成された清掃経路の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態>
以下に示す図において、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表し、円の中に交差する2本の線を描いた記号は、紙面手前側から奥側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を-x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、-y方向、z軸方向、+z方向、-z方向が定義される。ここで、-z方向は、重力の働く方向である。
【0026】
<清掃装置の構成>
図1は、本願の実施形態に係る清掃装置1の構成の例を示す図である。また、図2は、清掃装置1の外観の例を示す概略図である。
【0027】
図1に示す清掃装置1は、プロセッサ11、メモリ12、操作部14、表示部15、センサ部16、移動部17、及び清掃部18を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。なお、清掃装置1は、有線又は無線により他の装置と通信可能に接続するための通信部を有してもよい。
【0028】
また、図2に示す通り、清掃装置1は、底面と円筒状の側面とを含み、上面が開口している筐体10を有する。この筐体10の開口した上面には、蓋部が蝶番等により開閉可能に取り付けられている。
【0029】
図1に示すプロセッサ11は、メモリ12に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読出して実行することにより清掃装置1の各部を制御する。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0030】
操作部14は、各種の指示をするための操作ボタン、タッチパネル等の操作子を備えており、操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ11に送る。この操作は、例えば、操作ボタンに対する押下、タッチパネルに対するジェスチャー等である。図2に示す例において、この操作部14は、プロセッサ11、メモリ12、表示部15とともに、上述した筐体10の蓋部に内蔵されている。
【0031】
表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ11の制御の下、画像を表示する。表示画面の上には、操作部14の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。なお、清掃装置1は、操作部14及び表示部15のいずれか、又は両方を有しなくてもよい。清掃装置1は、例えば、図示しない通信部を介して外部の装置から操作され、又は外部の装置に情報を提示してもよい。
【0032】
移動部17は、清掃装置1を移動させる構成である。例えば、図2に示す移動部17は、床面Gに接地する複数のタイヤを有する。この移動部17は、図示しないモータによりこのタイヤを回転させることにより、床面Gの上を例えば+y方向へ移動させる。移動部17のタイヤを駆動するモータは、例えば、図1に示すプロセッサ11により制御される。なお、移動部17が有する少なくともいずれか一つのタイヤは、プロセッサ11の制御の下で移動方向を変更する操舵機能を有する。
【0033】
図1に示すメモリ12は、プロセッサ11に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ12は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。また、このメモリ12は、地図DB121、及び清掃計画DB122を記憶する。
【0034】
図3は、地図DB121の例を示す図である。地図DB121は、清掃装置1の清掃の対象である床面Gを表したデータベースである。図3に示す地図DB121は、部屋IDリスト1211と、点群表1212とを有する。
【0035】
部屋IDリスト1211は、清掃対象物である床面Gを有する部屋を識別する部屋IDを列挙したリストである。部屋IDリスト1211に列挙された部屋IDには、それぞれ一つずつ点群表1212が対応付けて記憶されている。
【0036】
図DB121の点群表1212は、対応する部屋IDで示される部屋の床面Gに含まれる点群データを記憶する表である。図3に示す点群表1212は、平面座標、高さ、及び勾配の欄をそれぞれ有する。
【0037】
点群表1212における平面座標は、床面Gに含まれる点の平面座標を示しており、例えば、x座標とy座標との組で示される。高さは、上述した点の高さを示しており、例えば、z座標で示される。勾配は、上述した点における床面Gの勾配を示すデータであり、例えば、その点における床面Gの単位法線ベクトル等で示される。
【0038】
なお、この点群表1212において、平面座標、高さ、及び勾配は矛盾しないように検算されてもよい。また、例えば、平面座標、高さ、及び勾配のうち、勾配又は高さは、他の数値から求められてもよい。
【0039】
図4は、清掃計画DB122の例を示す図である。清掃計画DB122は、清掃装置1が床面Gを清掃する計画(つまり、清掃計画)を記憶するデータベースである。図4に示す清掃計画DB122は、部屋IDリスト1221と、計画表1222とを有する。
【0040】
部屋IDリスト1221は、上述した部屋IDを列挙したリストであり、上述した地図DB121の部屋IDリスト1211と共通の情報である。部屋IDリスト1221に列挙された部屋IDには、それぞれ一つずつ計画表1222が対応付けて記憶されている。
【0041】
清掃計画DB122の計画表1222は、対応する部屋IDで示される部屋の清掃計画を記憶する表である。この計画表1222は、始点ID、平面座標、方向、距離、及び洗浄の欄をそれぞれ有する。
【0042】
清掃計画は、対応する部屋IDで示される部屋において、清掃装置1が床面Gを清掃する際に通過する経路を有向グラフにより表したものである。清掃計画は、複数のノードとそれらノード間をつなぐエッジとで表現される。計画表1222における一行のデータは、それぞれ清掃計画を構成するエッジを示している。
【0043】
この計画表1222の始点IDは、エッジの始点となるノードの識別情報である。平面座標は、始点IDで識別されるノードの平面座標であり、例えば、xy座標で示される。方向は、始点IDで識別されるノードから清掃装置1が移動する方向であり、例えば、x成分とy成分との組で示される。距離は、始点IDで識別されるノードから清掃装置1が移動する距離である。なお、この計画表1222において一行に対応付けられた始点IDで識別されるノードから、対応する方向に、対応する距離だけ移動すると、清掃装置1は、次行の始点IDで識別されるノードに到達する。
【0044】
この計画表1222の洗浄の欄は、その行で示されるエッジにおいて清掃装置1が洗浄を行うか否かを示すフラグを示す。この洗浄の欄に「y」が記されている場合、清掃装置1は洗浄を行う。この洗浄の欄に、例えば「n」が記されている等、「y」が記されていない場合、清掃装置1はこのエッジを移動する際に走行だけ行い、洗浄を行わない。
【0045】
メモリ12は、標準用の清掃計画を記憶していてもよい。この標準用の清掃計画は、勾配なしの床面に対する清掃装置1の移動経路である。標準用の清掃計画は、例えば、まず矩形の床面Gの一辺に沿った方向(以下、主走査方向という)へ移動しながらその床面Gを清掃するように記述される。そして、この清掃計画は、部屋の壁面に突き当たると、床面Gの他辺に沿った方向(以下、副走査方向という)に決められた距離だけ移動し、上述した主走査方向の反対方向に沿って移動しながら床面Gを清掃するように記述される。
【0046】
勾配なしの床面は、洗浄水等の洗浄に用いる液体をどの方向にも流下させない。そのため、標準用の清掃計画において上述した清掃の欄は全て「y」であってもよい。一方、地図DB121に基づいて閾値以上の勾配があることが判明した領域は、プロセッサ11により斜面領域として特定される。この斜面領域に含まれるエッジは、洗浄水が回収できない方向に移動するものである場合、清掃の欄が例えば「n」に書き換えられる。
【0047】
プロセッサ11は、例えば、メモリ12から標準用の清掃計画を読み出して、清掃計画DB122にこれを書き込む。この際に、プロセッサ11は、地図DB121を参照して、清掃計画DB122におけるエッジが、洗浄水を回収可能な方向に移動するエッジであるか否かを判断する。このエッジが洗浄水を回収可能な方向に移動するエッジでないと判断する場合、プロセッサ11は、このエッジに対応付けられた清掃の欄を「n」に変更する。そして、プロセッサ11は、清掃の欄が「n」に変更された斜面領域に対して、洗浄水を回収可能な方向に移動しながら清掃する経路を清掃計画DB122に追加する。
【0048】
センサ部16は、周囲の状況を感知する様々なセンサ群で構成される。図1に示すセンサ部16は、距離画像センサ161、ドライブレコーダ162、勾配センサ163、超音波センサ164、及びバンパースイッチ165を有する
【0049】
図5は、センサ部16の例を示す図である。図5において清掃装置1は、矢印Dに沿って移動する。この矢印Dは、図5において+y方向である。センサ部16を構成する距離画像センサ161、ドライブレコーダ162、勾配センサ163、超音波センサ164、及びバンパースイッチ165は、矢印Dに沿って移動する清掃装置1において+y方向側に設けられている。つまり、センサ部16の各構成は、清掃装置1の前側に設けられ、前方を監視する。これらセンサ部16の各構成は、監視した周囲の情報をプロセッサ11に通知する。
【0050】
距離画像センサ161は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)である。この距離画像センサ161は、照射したレーザが対象物まで往復してくる時間を用いて、その対象物までの距離を計測する。そして、この距離画像センサ161は、レーザを走査することにより、画素ごとにその画素に示される対象物までの距離の情報を含んだ距離画像データを生成する。
【0051】
ドライブレコーダ162は、例えば、光学系と、撮像素子とを有するデジタルビデオカメラである。この光学系は、例えば、清掃対象物から届く光を集めるレンズ、ミラー等である。また、この撮像素子は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等である。この撮像素子は、光学系が集めた光に応じた画像を示す画像データを生成する。生成された画像データは、メモリ12に記憶される。
【0052】
勾配センサ163は、自装置(すなわち清掃装置1)の姿勢を感知するセンサである。この勾配センサ163は、清掃装置1の内部に設置されている。勾配センサ163は、例えば、3軸方向の加速度を検知する加速度センサ、又は、圧電振動子等の素子に加わるコリオリの力から角速度を求めて自装置の姿勢を測定する振動ジャイロセンサ等を含む。勾配センサ163は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)であってもよい。勾配センサ163は、感知した自装置の姿勢に基づいて、自装置が走行する床面Gの勾配を計測する。
【0053】
超音波センサ164は、超音波を用いて周囲の対象物の配置を感知するセンサである。この超音波センサ164は、例えば、清掃装置1の前側のうち、左右二ヶ所に設けられ、それぞれが超音波を送信し、障害物から反射されて戻ってくるエコーを探知する。これにより、超音波センサ164は、前方の障害物を感知する。
【0054】
バンパースイッチ165は、清掃装置1の前側のうち、下方に取り付けられたバンパーに内蔵された接触式のスイッチである。清掃装置1が前方に進み、バンパーが障害物に衝突すると、バンパースイッチ165は閉となり衝突を感知する。
【0055】
清掃部18は、清掃対象物を清掃する構成である。図1に示す清掃部18は、ブラシ181、スクイージ182、タンク183、及びポンプ184を有する。図6は、清掃部18の例を示す図である。図6には、ブラシ181、スクイージ182、タンク183、及びポンプ184の概略的な配置が示されている。タンク183、及びポンプ184は、図6において筐体10の内部に収容されている。
【0056】
図6に示す通り、清掃装置1は、矢印Dに沿って移動しながら床面Gを清掃する。このとき清掃装置1は、タンク183から洗浄水を流出させ、この洗浄水を床面Gに散布する。例えば、このタンク183は下方のブラシ181に向けて電磁弁付きのパイプが取り付けられている。プロセッサ11は、パイプに設けられた電磁弁の開閉を調整することで、ブラシ181に流出させる洗浄水の量を調節する。
【0057】
ブラシ181は、プロセッサ11の制御の下、図示しないモータ等の駆動力により回転する。このブラシ181は、床面G上に散布された洗浄水を含んでこの床面Gを擦ることで清掃を行う。床面Gに勾配がない場合、ブラシ181で洗浄に用いられた洗浄水は汚れを含んだ状態で、その場にとどまる。
【0058】
清掃装置1は、+y方向に移動しているので、汚染された洗浄水は、清掃装置1の後方(つまり、-y方向)に設けられたスクイージ182により堰き止められる。ポンプ184は、吸引口に接続されたパイプを床面Gに向けている。ポンプ184は、このパイプ経由で、プロセッサ11の制御の下、ブラシ181とスクイージ182との間に溜まった汚染された洗浄水を吸い上げる。そして、ポンプ184は、吸い上げた洗浄水をタンク183の回収容器内に吐出する。
【0059】
図6に示す通り、タンク183は、汚染されていない洗浄水を収容する領域と、汚染された洗浄水を収容する領域とを、隔壁で区画しているとよい。また、回収した洗浄水は、タンク183に収容される前に濾過装置によって濾過されてもよい。
【0060】
<洗浄水を回収可能な移動方向>
清掃装置1は、床面Gに勾配があるとき、移動方向によって洗浄水を回収できない場合がある。
【0061】
図7は、登坂方向に移動しながら清掃する清掃装置1の例を示す図である。ここで、登坂方向は、清掃対象の面に沿って一定の距離を進んだときに高さが最も高くなる方向である。また、降坂方向とは、清掃対象の面に沿って一定の距離を進んだときに高さが最も低くなる方向である。したがって、降坂方向は、登坂方向の正反対の方向である。
【0062】
図7において、床面Gは、+y方向に登坂方向が向いている平面である。図7に示す清掃装置1は、移動方向Dtに移動しながら清掃する。したがって、図7に示す清掃装置1は、登坂方向に移動しながら床面Gを清掃する。この場合、床面Gに散布された洗浄水は、その勾配により降坂方向Dfに流下する。図7に示す清掃装置1は、ブラシ181を経由して床面Gに散布された洗浄水を回収可能な位置にスクイージ182を配置している。したがって、この場合、清掃装置1は、洗浄水を回収可能である。つまり、登坂方向は、自装置が散布した洗浄水を自装置により回収可能な方向である特定方向の例である。
【0063】
図8は、所定方向に移動しながら清掃する清掃装置1の例を示す図である。図8に示す所定方向は、清掃装置1を上から見た場合に、登坂方向から時計回りにθだけ回転した方向である。この場合においても、ブラシ181を経由して床面Gに散布された洗浄水は、その勾配により降坂方向Dfに流下する。そして、スクイージ182は、図8に斜線で示す洗浄水の溜まった領域を通過するため、洗浄水を回収可能である。これは、スクイージ182が、ブラシ181よりも幅方向に広い形状を有することによる。つまり、この所定方向は、自装置が散布した洗浄水を自装置により回収可能な方向である特定方向の例である。
【0064】
図9は、降坂方向に垂直に移動する清掃装置1の例を示す図である。図9に示す通り、清掃装置1は、降坂方向Dfと直交する移動方向Dtに沿って移動する。スクイージ182は、清掃装置1の後方に設けられているので、ブラシ181から降坂方向Dfに沿って流下する洗浄水を堰き止めることができない。したがって、降坂方向に垂直なこの方向は、洗浄水を回収不能な移動方向である。
【0065】
図10は、降坂方向に沿って移動する清掃装置1の例を示す図である。図10に示す清掃装置1は、降坂方向Dfに平行な移動方向Dtに沿って移動する。この場合にも、スクイージ182は、清掃装置1の後方に設けられているので、ブラシ181から降坂方向Dfに沿って流下する洗浄水を堰き止めることができない。したがって、降坂方向に沿ったこの方向は、洗浄水を回収不能な移動方向である。
【0066】
なお、清掃装置1が散布した洗浄水がスクイージ182によって回収可能であるか否かは、上述した通り、降坂方向と、清掃装置1の移動方向に対するスクイージ182の配置と、のみによって判断されてもよい。しかし、洗浄水が回収可能であるか否かは、さらに洗浄水の流下速度と、清掃装置1の移動速度とを考慮して判断されてもよい。この判断は、洗浄水の表面張力、床面Gの材質等を考慮して行われてもよい。
【0067】
<清掃装置の動作>
<清掃計画を作成する動作>
図11は、清掃装置1が清掃計画を作成する動作の流れの例を示すフロー図である。清掃装置1は、指定された部屋の床面Gを走行しながら、図11に示す動作を行ってこの部屋の清掃計画を作成する。
【0068】
清掃装置1のプロセッサ11は、例えば、センサ部16を構成する距離画像センサ161、超音波センサ164、及びバンパースイッチ165等から周囲の状況を示す周囲情報を取得する(ステップS101)。周囲情報は、例えば、指定された部屋の壁の位置、床面Gの形状、床面Gに含まれる点のそれぞれの平面座標と高さとの組等を示す情報である。
【0069】
また、清掃装置1のプロセッサ11は、勾配センサ163によって感知された、自装置の姿勢に対応する床面Gの勾配情報を取得する(ステップS102)。そして、プロセッサ11は、周囲情報と勾配情報とを組み合わせて上述した部屋の地図を作成し、この地図を示すデータを地図DB121に記憶する(ステップS103)。このステップS103に示す工程は、走行時に特定した清掃装置の姿勢により清掃対象領域の地図を生成する工程の例である。
【0070】
次に、プロセッサ11は、地図DB121に記憶した地図に基づいて清掃計画を作成する(ステップS104)。プロセッサ11は、このステップS104において、例えば、標準用の清掃計画をメモリ12から読み出して、これを清掃計画とする。
【0071】
図12は、標準用の清掃計画の例を示す図である。図12において、床面Gは、x軸に平行な壁面とy軸に平行な壁面とに囲まれた矩形である。図12に示す標準用の清掃計画は、まず初期位置である点P0に清掃装置1を配置し、これを主走査方向である+y方向へ移動させながら点P1まで清掃させる。次にこの清掃計画は、点P1において清掃装置1を図12に示す時計回りに90度旋回させ、副走査方向である+x方向へ移動させながら点P2まで清掃させる。次にこの清掃計画は、清掃装置1を図12に示す時計回りに90度旋回させ、主走査方向の反対方向である-y方向へ移動させながら点P3まで清掃させる。
【0072】
このようにしてこの標準用の清掃計画は、清掃装置1によって床面Gを隙間なく清掃させるように構成されている。ただし、標準用の清掃計画がそのままで、清掃装置1に床面Gを隙間なく清掃させることができるのは、床面Gに閾値以上の勾配がない場合である。
【0073】
図11のフロー図に戻り、プロセッサ11は、地図DB121の地図を参照して、その地図の中に閾値以上の勾配を有する領域があるか否かを判断する(ステップS105)。閾値以上の勾配を有する領域がない、と判断する場合(ステップS105;NO)、プロセッサ11は、清掃計画の作成を完了し(ステップS106)、処理を終了する。
【0074】
一方、プロセッサ11は、閾値以上の勾配を有する領域がある、と判断する場合(ステップS105;YES)、その領域を斜面領域として特定する。このステップS105の処理は、地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定する工程の例である。
【0075】
そして、プロセッサ11は、その斜面領域が、清掃装置1の移動方向を特定方向に変更することで清掃可能であるか否かを判断する(ステップS107)。斜面領域が、清掃装置1の移動方向を特定方向に変更することで清掃可能である、と判断する場合(ステップS107;YES)、プロセッサ11は、清掃経路の移動方向を特定方向に変更して(ステップS108)、処理を終了する。
【0076】
このステップS108の処理は、斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成する工程の例である。
【0077】
一方、斜面領域が、清掃装置1の移動方向を特定方向に変更することで清掃可能でない、と判断する場合(ステップS107;NO)、プロセッサ11は、この斜面領域を清掃不可な領域として清掃計画に記憶し(ステップS109)、処理を終了する。
【0078】
図13は、床面Gの勾配に応じて変更される清掃計画の例を示す図である。ここで図13に示す床面Gは、全面において登坂方向が+y方向に沿っている閾値以上の勾配を有している。この床面Gは、全面が閾値以上の勾配を有する斜面領域として特定される。この斜面領域である床面Gにおいて、清掃装置1は、+y方向に沿って清掃するときに洗浄水を回収可能であるが、+x方向、及び-y方向に沿って清掃するとき、いずれも洗浄水を回収不能である。
【0079】
図13に示す点P0から点P1までの清掃経路は、+y方向に移動する経路であるため、標準用の清掃計画の通り、清掃が停止されない。しかし、点P1から点P2までの清掃経路、及び点P2から点P3までの清掃経路は、それぞれ+x方向、-y方向に移動する経路である。これらはいずれも床面Gの勾配を考慮すると、洗浄水の回収ができない移動方向である。そこで、図13において破線で示す通り、これらの清掃経路は、清掃が停止される。
【0080】
ここで、点P2から点P3までの清掃経路は、清掃装置1の移動方向を変更することで清掃可能である。すなわち、点P3から点P2に向かって+y方向に移動しながら清掃する分には、これが登坂方向の移動であるため、清掃装置1は、スクイージ182で洗浄水を回収しながら清掃することが可能である。そこで、清掃装置1は、清掃計画に点P2から点P3への清掃経路に代えて、点P3から点P2への清掃経路を追加する。
【0081】
図14は、特定方向に移動する経路が追加された清掃計画の例を示す図である。図14に示す清掃計画は、点P0から点P1への移動は、清掃を伴って行う。一方、この清掃計画は、点P1から点P2への移動、及び点P2から点P3への移動はいずれも走行のみで清掃を行わない。そして、点P3に到達した時点で、この更新された清掃計画は、清掃装置1を180度旋回させ、点P3から点P2へ登坂方向である+y方向に移動させながら清掃させる。この更新された清掃計画は、図14に示す通り、+y方向へ清掃を伴う移動、+x方向へ清掃を伴わない短距離の移動、-y方向へ清掃を伴わない移動、をこの順で繰り返す。
【0082】
図15は、更新された清掃計画における清掃を伴う移動の例である。図15には、図14に示す清掃経路のうち、清掃を伴う移動をする清掃経路のみ抽出したものが示されている。清掃装置1は、更新されたこの清掃計画に沿って清掃するため、図15に実線で示す矢印の経路をそれぞれ清掃する。そして、これらの矢印は、清掃装置1により清掃される幅よりも短い間隔で並んでいる。そのため、これらの矢印に沿ってそれぞれ登坂方向に移動しながら清掃装置1が清掃すると、床面Gは隙間なく清掃される。なお、清掃装置1により清掃される幅とは、例えば、ブラシ181の幅、スクイージ182の幅等である。
【0083】
つまり、更新された清掃計画に従うことによって清掃装置1は、床面Gを隙間なく清掃することができる。この清掃装置1は、清掃対象領域の地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定し、この斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃装置の例である。また、上述した例において、この清掃装置1は、走行時に特定した自装置の姿勢により地図を生成し、この地図に基づいて斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成し、作成したこの清掃計画に沿って清掃する清掃装置の例である。
【0084】
<清掃中に清掃計画を更新する動作>
図16は、清掃装置1が清掃中に清掃計画を更新する動作の流れの例を示すフロー図である。清掃装置1のプロセッサ11は、所定の条件を満たしたとき、指定された部屋の床面Gに対応付けて記憶された清掃計画に沿って、その床面Gを自装置に清掃させる。これにより、図16に示す処理は開始される。ここでいう所定の条件とは、例えば、操作部14が操作者の操作を受付けたとき、スケジュールで予め決められた時刻になったとき、等である。
【0085】
清掃装置1のプロセッサ11は、現在、床面Gのうち自装置が設置している点における勾配を、勾配センサ163が測定する自装置の姿勢に基づいて測定する。そして、プロセッサ11は、地図DB121を参照し、地図と異なる勾配を測定したか否かを判断する(ステップS201)。
【0086】
地図と異なる勾配を測定した、と判断する場合(ステップS201;YES)、プロセッサ11は、測定された勾配に基づいて地図DB121を更新する(ステップS202)。そして、プロセッサ11は、測定されたその勾配が閾値未満であるか否かを判断する(ステップS203)。測定された勾配が閾値未満である、と判断する場合(ステップS203;YES)、プロセッサ11は、処理をステップS201に戻す。
【0087】
一方、測定された勾配が閾値未満ではない、と判断する場合(ステップS203;NO)、プロセッサ11は、清掃装置1の清掃を停止する(ステップS204)。したがって、この清掃装置1は、清掃計画に沿って清掃する清掃時に自装置の姿勢を特定し、特定したこの自装置の姿勢と地図により特定される勾配とが所定条件を満たさないときに清掃を停止する清掃装置の例である。
【0088】
そして、プロセッサ11は、清掃を停止したまま移動した領域を清掃が未だ行われていない「未清掃領域」としてメモリ12に記憶し(ステップS205)、処理をステップS201に戻す。
【0089】
ステップS201において、地図と異なる勾配を測定していない、と判断する場合(ステップS201;NO)、プロセッサ11は、清掃計画に沿って清掃を実行する(ステップS206)。このステップS206の工程は、清掃計画に沿って清掃装置に清掃対象領域を清掃させる工程の例である。
【0090】
そして、プロセッサ11は、清掃装置1が清掃計画に示す経路を完走したか否かを判断する(ステップS207)。経路を完走していない、と判断する場合(ステップS207;NO)、プロセッサ11は、処理をステップS201に戻す。
【0091】
一方、経路を完走した、と判断する場合(ステップS207;YES)、プロセッサ11は、未だに清掃されていない領域である「未清掃領域」が残ったか否かを判断する(ステップS208)。未清掃領域が残った、と判断する場合(ステップS208;YES)、プロセッサ11は、残ったその未清掃領域を放置するか否か判断する(ステップS209)
。この放置の是非は、例えば、予めメモリ12に記憶された条件を満たすか否かにより判断される。
【0092】
ステップS208において未清掃領域が残らなかった、と判断する場合(ステップS208;NO)、及び、ステップS209において未清掃領域を放置する、と判断する場合(ステップS209;YES)、プロセッサ11は、処理を終了する。
【0093】
一方、ステップS209において未清掃領域を放置しない、と判断する場合(ステップS209;NO)、プロセッサ11は、未清掃領域に対応した清掃経路を作成し、この清掃経路を含むように清掃計画を更新して(ステップS210)、処理をステップS201に戻す。
【0094】
すなわち、この清掃装置1は、清掃を停止した場合に、清掃時に特定した姿勢に基づいて地図を更新し、更新したこの地図に基づいて清掃計画を修正し、修正したこの清掃計画に沿って清掃する清掃装置の例である。
【0095】
図17は、閾値以上の勾配を有する斜面領域Rを一部に含む床面Gの例を示す図である。図17において等高線H1、H2、H3、H4は、床面Gのz座標が等しい高さにある点を結んだ線である。図17において、矢印ξは、降坂方向である。
【0096】
図18は、降坂方向に伸びる直線を含む垂直面で床面Gを切断した場合の断面図である。図18に示す通り、等高線H1から等高線H4までの床面Gは閾値以上の勾配があるため、斜面領域Rとして特定される。
【0097】
図19は、標準用の清掃計画が斜面領域Rと重なる場合の例を示す図である。例えば、地図DB121において、図17に示す部屋の床面Gを表した地図に斜面領域Rが含まれていなかった場合、清掃装置1は、この部屋の床面Gに閾値を超える勾配がないと判断する。そして、この清掃装置1は、この部屋の床面Gの清掃計画として、標準用の清掃計画を適用する。
【0098】
標準用の清掃計画は、例えば、部屋の壁の方向に沿って床面Gを走査する。図19に示す例で、標準用の清掃計画は、まず点P0から点P1へ+y方向に移動し、点P1から点P2へ+x方向に移動し、点P2から点P3へ-y方向に移動する清掃経路を辿る。
【0099】
しかし、斜面領域Rは、閾値以上の勾配を有している。そのため、清掃装置1は、この標準用の清掃計画に沿って清掃を開始すると、斜面領域Rに差し掛かったところでその閾値以上の勾配を感知する。
【0100】
斜面領域Rの降坂方向の向きは図19に示す矢印ξの方向である。この矢印ξの降坂方向を有する場合、この斜面領域Rは、+y方向、+x方向、-y方向のいずれもが洗浄水を回収可能な移動方向とならない。
【0101】
したがって、清掃装置1は、床面Gを標準用の清掃計画に沿って清掃しようとした場合、斜面領域Rに差し掛かった時点で地図と異なる勾配を測定し、地図を更新した上で、清掃を停止する。そのため、斜面領域Rは未清掃領域として清掃装置1に記憶される。
【0102】
そして、清掃装置1は、未清掃領域として残された斜面領域Rに対して別の清掃経路を作成して、この清掃計画を修正する。
【0103】
図20は、斜面領域Rに対応して作成された清掃経路の例を示す図である。清掃装置1は、標準用の清掃計画に沿って図19に示す点Peまで清掃を終えると、破線に沿って斜面領域Rに戻る。そして、清掃装置1は、新たに作成された清掃経路に沿って斜面領域Rを清掃する。
【0104】
例えば、清掃装置1は、斜面領域Rの降坂方向である矢印ξに対して正反対の方向に移動しながら清掃する。この方向は登坂方向であるから、斜面領域Rで散布された洗浄水は回収される。清掃装置1は、部屋の壁に到達すると、図20に破線で示す通り、清掃を停止して移動し、再び登坂方向に清掃を開始する。これを繰り返して清掃装置1は、斜面領域Rの全面を隙間なく清掃する。
【0105】
以上に説明した動作をすることにより、清掃装置1は、閾値以上の勾配がある斜面領域を清掃することができる。
【0106】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0107】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0108】
<1>
上述した実施形態において、プロセッサ11は、CPUであったが、他の構成であってもよい。例えば、プロセッサ11は、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよいし、FPGAを含んでもよい。また、このプロセッサ11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。また、このプロセッサ11は、GPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。
【0109】
<2>
上述したプロセッサ11によって実行されるプログラムは、磁気テープ及び磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線経由でダウンロードされてもよい。
【0110】
このプログラムは、清掃装置を制御するコンピュータに、走行時に特定した清掃装置の姿勢により清掃対象領域の地図を生成する工程と、地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定する工程と、斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成する工程と、清掃計画に沿って清掃装置に清掃対象領域を清掃させる工程と、を実行させるためのプログラムの例である。
【0111】
<3>
本発明に係る清掃装置1による床面Gの清掃方法は、走行時に特定した清掃装置の姿勢により清掃対象領域の地図を生成する工程と、地図に基づいて閾値以上の勾配がある斜面領域を特定する工程と、斜面領域を特定方向に進みながら清掃する清掃計画を作成する工程と、清掃計画に沿って清掃装置に清掃対象領域を清掃させる工程と、を有する清掃方法の例である。
【符号の説明】
【0112】
1…清掃装置、10…筐体、11…プロセッサ、12…メモリ、121…地図DB、1211…部屋IDリスト、1212…点群表、122…清掃計画DB、1221…部屋IDリスト、1222…計画表、14…操作部、15…表示部、16…センサ部、161…距離画像センサ、162…ドライブレコーダ、163…勾配センサ、164…超音波センサ、165…バンパースイッチ、17…移動部、18…清掃部、181…ブラシ、182…スクイージ、183…タンク、184…ポンプ、G…床面、H1~H4…等高線、P0~P3…点、Pe…点、R…斜面領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20