特開 2023-156768 内燃機関

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023156768

(43)【公開日】2023-10-25

(54)【発明の名称】内燃機関

(51)【国際特許分類】

   F02F 11/00 20060101AFI20231018BHJP

   F02F 1/00 20060101ALI20231018BHJP

【ＦＩ】

F02F11/00 E

F02F1/00 S

【審査請求】有

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022066316

(22)【出願日】2022-04-13

(11)【特許番号】

(45)【特許公報発行日】2023-09-05

(71)【出願人】

【識別番号】000000170

【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100166006

【弁理士】

【氏名又は名称】泉 通博

(74)【代理人】

【識別番号】100124084

【弁理士】

【氏名又は名称】黒岩 久人

(74)【代理人】

【識別番号】100154070

【弁理士】

【氏名又は名称】久恒 京範

(74)【代理人】

【識別番号】100153280

【弁理士】

【氏名又は名称】寺川 賢祐

(72)【発明者】

【氏名】山本 和成

(72)【発明者】

【氏名】後藤 操

(72)【発明者】

【氏名】小宮山 巧

【テーマコード（参考）】

3G024

【Ｆターム（参考）】

3G024AA22

3G024AA31

3G024AA36

3G024FA08

(57)【要約】

【課題】リング部材とガスケットの間の隙間に起因する悪影響を抑制する。
【解決手段】内燃機関１は、内部でピストン１５が往復動するシリンダ１０と、シリンダの上に位置するシリンダヘッド２５と、シリンダ１０とシリンダヘッド２５の間に配置されたガスケット３０と、シリンダ１０の内周面の上端部に形成された段差部２０と、段差部２０に設けられた円筒状のリング部材４０と、リング部材４０の上面に設けられ、リング部材４０とシリンダヘッド２５に挟まれているシール部材５０を備える。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

内部でピストンが往復動するシリンダと、
前記シリンダの上に位置するシリンダヘッドと、
前記シリンダと前記シリンダヘッドの間に配置されたガスケットと、
前記シリンダの内周面の上端部に形成された段差部と、
前記段差部に設けられた円筒状のリング部材と、
前記リング部材の上面に設けられ、前記リング部材と前記シリンダヘッドに挟まれているシール部材と、
を備える、内燃機関。

【請求項2】

前記シール部材は、前記リング部材と前記ガスケットの両方に接している、
請求項１に記載の内燃機関。

【請求項3】

前記シール部材は、前記リング部材と前記シリンダヘッドの両方に接している、
請求項１に記載の内燃機関。

【請求項4】

前記リング部材は、前記段差部に面している第１部分と、前記ガスケットの側面に面している第２部分とを有し、
前記シール部材は、前記第２部分と前記シリンダヘッドの両方に接している、
請求項３に記載の内燃機関。

【請求項5】

前記シール部材は、周方向に沿って空洞になっており、前記リング部材と前記シリンダヘッドの間で潰されている、
請求項１から４のいずれか１項に記載の内燃機関。

【請求項6】

前記リング部材の外周面は、下側に向かって前記リング部材の直径が小さくなるテーパ面となっており、
前記段差部の内周面は、前記リング部材の前記テーパ面と平行な傾斜面となっている、
請求項１に記載の内燃機関。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、シリンダ及びピストンを有する内燃機関に関する。

【背景技術】

【0002】

内燃機関において、シリンダの内周面の上部に形成された段差部に、リング部材が設けられている。例えば、下記の特許文献１には、ピストンに付着した煤を落とすために、段差部にスクレーパリングが設けられている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１７－８９４１０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

上述した段差部は、シリンダとシリンダヘッドの間に設けられたガスケットの下に位置しているが、段差部に設けたリング部材とガスケットの間には、隙間がある。隙間があると、ガスケットの下面が燃焼ガスに触れることで変形したり、隙間を介してリング部材の外周面に燃焼ガスが回り込んだりするおそれがある。

【0005】

そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、リング部材とガスケットの間の隙間に起因する悪影響を抑制することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の一の態様においては、内部でピストンが往復動するシリンダと、前記シリンダの上に位置するシリンダヘッドと、前記シリンダと前記シリンダヘッドの間に配置されたガスケットと、前記シリンダの内周面の上端部に形成された段差部と、前記段差部に設けられた円筒状のリング部材と、前記リング部材の上面に設けられ、前記リング部材と前記シリンダヘッドに挟まれているシール部材と、を備える、内燃機関を提供する。

【0007】

また、前記シール部材は、前記リング部材と前記ガスケットの両方に接していることとしてもよい。

【0008】

また、前記シール部材は、前記リング部材と前記シリンダヘッドの両方に接していることとしてもよい。

【0009】

また、前記リング部材は、前記段差部に面している第１部分と、前記ガスケットの側面に面している第２部分とを有し、前記シール部材は、前記第２部分と前記シリンダヘッドの両方に接していることとしてもよい。

【0010】

また、前記シール部材は、周方向に沿って空洞になっており、前記リング部材と前記シリンダヘッドの間で潰されていることとしてもよい。

【0011】

また、前記リング部材の外周面は、下側に向かって前記リング部材の直径が小さくなるテーパ面となっており、前記段差部の内周面は、前記リング部材の前記テーパ面と平行な傾斜面となっていることとしてもよい。

【発明の効果】

【0012】

本発明によれば、リング部材とガスケットの間の隙間に起因する悪影響を抑制できるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】一の実施形態に係る内燃機関１の内部構成を説明するための模式図である。

【図2】比較例に係る内燃機関１００を説明するための模式図である。

【図3】内燃機関１の内部構成の第１変形例を説明するための模式図である。

【図4】内燃機関１の内部構成の第２変形例を説明するための模式図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

＜内燃機関の構成＞
一の実施形態に係る内燃機関の構成について、図１を参照しながら説明する。
図１は、一の実施形態に係る内燃機関１の内部構成を説明するための模式図である。なお、図１では、説明の便宜上、内燃機関１の一部のみが示されており、他の構成は省略されている。

【0015】

内燃機関１は、例えば、車両に搭載されているエンジンである。内燃機関１は、図１に示すように、シリンダ１０と、ピストン１５と、段差部２０と、シリンダヘッド２５と、ガスケット３０と、リング部材４０と、シール部材５０を有する。

【0016】

シリンダ１０は、金属製であり、円筒状に形成されている。シリンダ１０の内部には、ピストン１５が収容されている。

【0017】

ピストン１５は、シリンダ１０内にて上死点と下死点の間で往復動する。図１においては、ピストン１５が上死点に位置している。ピストン１５の外周面に形成された溝には、ピストンリング１８が装着されている。

【0018】

段差部２０は、図１に示すように、シリンダ１０の内周面１１の上端部に位置している。段差部２０は、ピストン１５が上死点に位置している際に、ピストンリング１８よりも上方の位置している。段差部２０は、シリンダ１０の内周面１１において周方向に１周するように形成されている。また、段差部２０は、ガスケット３０の下方に位置している。段差部２０は、底面に垂直な内周面２２を有する。

【0019】

シリンダヘッド２５は、シリンダ１０の上に位置している。シリンダヘッド２５は、金属製であり、例えばシリンダ１０と同じ材質から成る。
ガスケット３０は、シリンダ１０とシリンダヘッド２５の間に配置されている。ガスケット３０は、シリンダ１０内の気密性を高める機能を有している。

【0020】

リング部材４０は、図１に示すように、段差部２０に設けられている。具体的には、リング部材４０は、段差部２０に嵌め込まれている。リング部材４０は、円筒状に形成されており、上死点に位置するピストン１５の周囲を覆っている。リング部材４０は、金属製である。リング部材４０は、ここではシリンダ１０と同じ材質から成るが、これに限定されず、シリンダ１０とは異なる材質から成ってもよい。

【0021】

リング部材４０は、シリンダ１０とピストン１５の間の空間を狭めるために設けられている。すなわち、リング部材４０の内周面４３が、シリンダ１０の内周面１１よりもピストン１５の外周面の近くに位置している。リング部材４０が設けられていない場合には、シリンダ１０の内周面１１とピストン１５の外周面の間の空間は、燃焼に用いられない無駄な空間となってしまい、燃焼効率が低下してしまう。これに対して、本実施形態のようにリング部材４０を設けた場合には、無駄な空間を狭めることができるので、圧縮比が大きくなり、燃費が向上する。

【0022】

リング部材４０の下面４１は、段差部２０の底面に接している。リング部材４０の外周面４２は、段差部２０の内周面２２に対して離間している。このため、リング部材４０の外周面４２と段差部２０の内周面２２の間には、空間が存在している。

【0023】

シール部材５０は、図１に示すように、リング部材４０の上面４４に設けられている。また、シール部材５０は、リング部材４０と、ガスケット３０を介したシリンダヘッド２５とに挟まれるように設けられている。また、シール部材５０は、リング部材４０とガスケット３０の両方に接している。具体的には、シール部材５０は、リング部材４０の上面４４と、ガスケット３０の下面３１とに接している。

【0024】

シール部材５０は、リング部材４０と同様に、環状に形成されている。シール部材５０の内部は、周方向に沿って空洞になっている。また、シール部材５０の材質は、リング部材４０及びシリンダヘッド２５の材質よりも柔らかい。このため、シール部材５０は、リング部材４０とシリンダヘッド２５の間で潰されている。これにより、リング部材４０とガスケット３０の間の密閉性を高めることができ、図２に示す比較例に対してメリットがある。

【0025】

図２は、比較例に係る内燃機関１００を説明するための模式図である。比較例においては、図１に示すシール部材５０が設けられていない。そして、リング部材４０の上面４４は、ガスケット３０の下面３１と接しておらず、リング部材４０とガスケット３０の間に隙間が生じる。隙間が生じると、シリンダ内の空気等が、リング部材４０の外周面４２と段差部２０の内周面２２の間の空間に入り込んでしまい（図２に示す矢印参照）、シリンダ１０の空気を燃焼させる大きくなってしまう。また、隙間が生じると、例えば高温の燃焼ガスがガスケット３０の下面３１に触れて、ガスケット３０が変形するおそれがある。

【0026】

これに対して、本実施形態では、シール部材５０が、リング部材４０の上面４４とガスケット３０の下面３１とに接しているため、リング部材４０とガスケット３０と間に隙間が生じることを防止できる。特に、シール部材５０がリング部材４０とガスケット３０に密接しているため、リング部材４０の外周面４２と段差部２０の内周面２２の間の空気に空気等が入り込むことを有効に防止できる。また、シール部材５０がガスケット３０の下面３１に接しているため、燃料ガスがガスケット３０に下面３１に触れてガスケット３０が変形することを防止できる。

【0027】

＜変形例＞
以下では、内燃機関１の内部構成の２つの変形例について、図３及び図４を参照しながら説明する。

【0028】

図３は、内燃機関１の内部構成の第１変形例を説明するための模式図である。
第１変形例のリング部材１４０の形状は、図１のリング部材４０の形状と異なる。第１変形例の他の構成は、図１に示す構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。

【0029】

リング部材１４０は、図３に示すように、段付きの形状となっている。リング部材１４０は、下部１４２と、上部１４４を有する。
下部１４２は、段差部２０に面している第１部分であり、段差部２０に嵌め込まれている。下部１４２の下面１４２ａは、段差部２０の底面に接している。

【0030】

上部１４４は、段差部２０よりも上方に位置し、ガスケット３０の側面に面している第２部分である。上部１４４の幅は、下部１４２の幅よりも小さい。上部１４４の上面１４４ａには、シール部材５０が設けられている。

【0031】

第１変形例のシール部材５０は、リング部材１４０とシリンダヘッド２５の両方に接している。具体的には、シール部材５０は、リング部材１４０の上部１４４とシリンダヘッド２５の両方に接している。

【0032】

第１変形例の場合には、シール部材５０が、リング部材１４０とシリンダヘッド２５の両方に接するように位置しているため、リング部材１４０とガスケット３０の間に隙間が生じることを防止できる。これにより、リング部材１４０の外周面１４６と段差部２０の内周面２２の間の空気に空気等が入り込むことを有効に防止できる。また、燃料ガスがガスケット３０に下面３１に触れることを防止できる。

【0033】

図４は、内燃機関１の内部構成の第２変形例を説明するための模式図である。
第２変形例の段差部２２０及びリング部材２４０の形状は、図１の段差部２０及びリング部材４０の形状と異なる。第２変形例の他の構成は、図１に示す構成を同様であるので、詳細な説明は省略する。

【0034】

段差部２２０の内周面２２２は、図１の段差部２０の内周面２２とは異なり、図４に示すように傾斜面となっている。内周面２２２は、ここでは所定の傾斜角度で直線状に傾斜している。

【0035】

リング部材２４０の外周面２４２は、図４に示すように、下側に向かってリング部材２４０の直径が小さくなるテーパ面となっている。すなわち、リング部材２４０の上部の幅が、リング部材２４０の下部の幅よりも大きい。また、外周面２４２は、段差部２２０の内周面２２２と平行な面となっている。すなわち、外周面２４２の傾斜角度は、内周面２２２の傾斜角度と同じ大きさである。なお、リング部材２４０の上面２４４には、図１で説明したシール部材５０が設けられている。

【0036】

第２変形例の場合には、リング部材２４０の外周面２４２がテーパ面となっていると共に、段差部２２０の内周面２２２が傾斜面となっているため、テーパ面及び傾斜面がない場合に比べて、リング部材２４０を段差部２２０に嵌め込みやすくなる。また、リング部材２４０を段差部２２０に嵌め込む際にリング部材２４０が段差部２２０に引っ掛かって損傷することを防止できる。

【0037】

＜本実施形態における効果＞
上述した実施形態の内燃機関１は、シリンダ１０の上端部に形成された段差部２０に設けられた円筒状のリング部材４０と、リング部材４０の上面に設けられリング部材４０とシリンダヘッド２５に挟まれているシール部材５０を有する。
上記のシール部材５０を設けることで、リング部材４０とガスケット３０の間に隙間が生じることを防止できる。これにより、リング部材４０の外周面４２と段差部２０の内周面２２の間の空気に空気等が入り込むことを有効に防止できると共に、燃料ガスがガスケット３０に下面３１に触れてガスケット３０が変形することを防止できる。

【0038】

以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。

【符号の説明】

【0039】

１ 内燃機関
１０ シリンダ
１５ ピストン
２０ 段差部
２５ シリンダヘッド
３０ ガスケット
４０ リング部材
５０ シール部材
１４０ リング部材
２２０ 段差部
２４０ リング部材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【手続補正書】

【提出日】2023-06-30

【手続補正1】

【補正対象書類名】特許請求の範囲

【補正対象項目名】全文

【補正方法】変更

【補正の内容】

【特許請求の範囲】

【請求項1】

内部でピストンが往復動するシリンダと、
前記シリンダの上に位置するシリンダヘッドと、
前記シリンダと前記シリンダヘッドの間に配置されたガスケットと、
前記シリンダの内周面の上端部に形成された段差部と、
前記段差部に設けられた円筒状のリング部材と、
前記リング部材の上面に設けられ、前記リング部材と前記シリンダヘッドに挟まれているシール部材と、
を備え、
前記シール部材は、前記リング部材と前記ガスケットの両方に接している、内燃機関。

【請求項2】

内部でピストンが往復動するシリンダと、
前記シリンダの上に位置するシリンダヘッドと、
前記シリンダと前記シリンダヘッドの間に配置されたガスケットと、
前記シリンダの内周面の上端部に形成された段差部と、
前記段差部に設けられた円筒状のリング部材と、
前記リング部材の上面に設けられ、前記リング部材と前記シリンダヘッドに挟まれているシール部材と、
を備え、
前記シール部材は、周方向に沿って空洞になっており、前記リング部材と前記シリンダヘッドの間で潰されている、内燃機関。

【請求項3】

前記シール部材は、前記リング部材と前記ガスケットの両方に接している、
請求項２に記載の内燃機関。

【請求項4】

前記シール部材は、前記リング部材と前記シリンダヘッドの両方に接している、
請求項２に記載の内燃機関。

【請求項5】

前記リング部材は、前記段差部に面している第１部分と、前記ガスケットの側面に面している第２部分とを有し、
前記シール部材は、前記第２部分と前記シリンダヘッドの両方に接している、
請求項４に記載の内燃機関。

【請求項6】

内部でピストンが往復動するシリンダと、
前記シリンダの上に位置するシリンダヘッドと、
前記シリンダと前記シリンダヘッドの間に配置されたガスケットと、
前記シリンダの内周面の上端部に形成された段差部と、
前記段差部に設けられた円筒状のリング部材と、
前記リング部材の上面に設けられ、前記リング部材と前記シリンダヘッドに挟まれているシール部材と、
を備え、
前記リング部材の外周面は、下側に向かって前記リング部材の直径が小さくなるテーパ面となっており、
前記段差部の内周面は、前記リング部材の前記テーパ面と平行な傾斜面となっている、内燃機関。