(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015677
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】樹脂発泡体形成用エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20230125BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230125BHJP
A61K 8/69 20060101ALI20230125BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230125BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/02
A61K8/69
A61K8/81
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119600
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳世
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC352
4C083AC442
4C083AC811
4C083AC812
4C083AD091
4C083AD092
4C083BB14
4C083BB49
4C083CC02
4C083DD08
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】吐出すると発泡し、冷却感があり、かつ、指先で押し付けると転がるように塗布することのできる、趣向性の優れた球状の樹脂発泡体を形成することができる樹脂発泡体形成用エアゾール組成物を提供する。
【解決手段】原液と液化ガスとからなり、原液は、樹脂と、ポリオールと、水と、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含み、液化ガスは、ジメチルエーテルを含む、樹脂発泡体形成用エアゾール組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と液化ガスとからなり、
前記原液は、樹脂と、ポリオールと、水と、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含み、
前記液化ガスは、ジメチルエーテルを含む、樹脂発泡体形成用エアゾール組成物。
【請求項2】
前記ポリオールの含有量は、原液中、0.5~25質量%である、請求項1記載の樹脂発泡体形成用エアゾール組成物。
【請求項3】
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、3~40質量%である、請求項1または2記載の樹脂発泡体形成用エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体形成用エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、吐出すると発泡し、冷却感があり、かつ、指先で押し付けると転がるように塗布することのできる、趣向性の優れた球状の樹脂発泡体を形成することができる樹脂発泡体形成用エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出すると、対象面を冷却し、かつ、対象面上で皮膜等を形成するエアゾール組成物が知られている(たとえば特許文献1~2)。特許文献1には、樹脂含有水溶液と、水と、ジメチルエーテルを含有する被膜性冷却剤が開示されている。この被膜性冷却剤は、塗布すると、可剥性の樹脂被膜を形成し、樹脂被膜の表面および内部から揮発成分が揮発し、その気化潜熱によって被塗布箇所を冷却することができる。特許文献2には、ポリビニルブチラールと、可塑剤と、アルコールと、沸点が5~50℃であるハイドロフルオロオレフィンと、液化ガスを含む、剥離性被膜形成用エアゾール組成物が開示されている。この剥離性被膜形成用エアゾール組成物は、対象物に対してほとんど発泡せずに液膜状に付着し優れた密着性を示し、かつ、柔軟で剥離しやすい皮膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-193043号公報
【特許文献2】特開2020-200404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~2に記載の発明は、対象面を冷却することができる。しかしながら、特許文献1~2に記載の発明は、剥離可能な皮膜が形成されるため、塗布面に対してのみ冷却感が付与される。そのため、特許文献1~2に記載の発明は、たとえば、消費者が塗布後の皮膜を用いて、塗布面以外の部位に冷却感を付与したり、有効成分等を付与したりすることができない。また、吐出物は、皮膜であり、外観上の趣向性が乏しい。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、吐出すると発泡し、冷却感があり、かつ、指先で押し付けると転がるように塗布することのできる、趣向性の優れた球状の樹脂発泡体を形成することができる樹脂発泡体形成用エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)原液と液化ガスとからなり、前記原液は、樹脂と、ポリオールと、水と、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含み、前記液化ガスは、ジメチルエーテルを含む、樹脂発泡体形成用エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、樹脂発泡体形成用エアゾール組成物は、吐出されると発泡し、球状の樹脂発泡体となる。樹脂発泡体は、冷却感があり、かつ、指先で押し付けると転がるように塗布することができる。また、球状であることから、樹脂発泡体は、可愛らしい外観であり、皮膜よりも趣向性が優れる。
【0009】
(2)前記ポリオールの含有量は、原液中、0.5~25質量%である、(1)記載の樹脂発泡体形成用エアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、吐出後に得られる樹脂発泡体は、指等で抑えると、原液が染み出しやすい。そのため、樹脂発泡体形成用エアゾール組成物は、塗布面等に、有効成分等を付与しやすい。
【0011】
(3)前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、3~40質量%である、(1)または(2)記載の樹脂発泡体形成用エアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、樹脂発泡体形成用エアゾール組成物は、吐出物を指で押さえると吐出物内でハイドロフルオロオレフィンの気化が促進されやすく、球状の樹脂発泡体を形成しやすい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吐出すると発泡し、冷却感があり、かつ、指先で押し付けると転がるように塗布することのできる、趣向性の優れた球状の樹脂発泡体を形成することができる樹脂発泡体形成用エアゾール組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の樹脂発泡体形成用エアゾール組成物を吐出して得られた樹脂発泡体の外観写真である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の樹脂発泡体形成用エアゾール組成物を吐出して得られた樹脂発泡体に模様を描き加えた外観写真である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の樹脂発泡体形成用エアゾール組成物を吐出して得られた樹脂発泡体を指で押し付けている状態の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<樹脂発泡体形成用エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の樹脂発泡体形成用エアゾール組成物(以下、エアゾール組成物ともいう)は、原液と液化ガスとからなる。原液は、樹脂と、ポリオールと、水と、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含む。液化ガスは、ジメチルエーテルを含む。以下、それぞれについて説明する。
【0016】
(原液)
原液は、樹脂と、ポリオールと、水と、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含む。
【0017】
・樹脂
樹脂は、エアゾール容器内ではジメチルエーテルにより溶解されており、外部に吐出されてジメチルエーテルが揮発すると析出して樹脂発泡体を形成する。
【0018】
樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、樹脂は、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョン、ビニルピロリドン-スチレン共重合体エマルジョン、アクリル酸-アクリル酸ヒドロキシエステル共重合体エマルジョンなどのエマルジョン系樹脂等である。これらの中でも、樹脂は、樹脂発泡体を形成しやすい点から、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョンであることが好ましい。
【0019】
樹脂の含有量特に限定されない。一例を挙げると、樹脂の含有量は、原液中、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。また、樹脂の含有量は、原液中、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、吐出直後の吐出物中に、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンを保持しやすくなる。また、エアゾール組成物は、吐出物を指で押すと吐出物内でハイドロフルオロオレフィンの気化が促進されて発泡し、球状の樹脂発泡体を形成しやすい。なお、エマルジョン系樹脂は、樹脂固形分以外に水や防腐剤などを含む。そのため、本実施形態における樹脂の含有量は、樹脂固形分と水や防腐剤などを含んだエマルジョンとしての量である。
【0020】
・ポリオール
ポリオールは、樹脂発泡体を指で押さえたときに、樹脂発泡体から原液をしみ出しやすくするなどの目的で配合される。
【0021】
ポリオールは特に限定されない。一例を挙げると、ポリオールは、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等である。
【0022】
ポリオールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ポリオールの含有量は、原液中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、ポリオールの含有量は、原液中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。ポリオールの含有量が上記範囲内であることにより、樹脂発泡体を指で押さえたときに、樹脂発泡体から原液がしみ出しやすくなる。そのため、エアゾール組成物は、塗布面等に、有効成分等を付与しやすい。
【0023】
・水
水は、樹脂や有効成分などの溶媒として用いられる。水が含まれることにより、樹脂発泡体は、原液がしみ出しやすくなる。また、樹脂発泡体は、粘着性が抑制されて、指にくっつきにくくなり、対象物上で転がすように塗布することができる。
【0024】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0025】
水の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、水は、原液中、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、水は、原液中、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、樹脂や有効成分を配合しやすい。また、得られる樹脂発泡体は、原液がしみ出しやすくなり、かつ、対象物上で転がすように塗布しやすい。
【0026】
・沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィン
沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは、エアゾール組成物が吐出されると、吐出物の内部に保持される。また、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは、吐出物を指で押すことにより、気化が促進されて樹脂発泡体を球状に成形する。さらに、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは、気化熱により冷却感を付与することができる。
【0027】
沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは特に限定されない。一例を挙げると、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点19℃)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z)、沸点39℃)、シス-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロオレフィン(HFO-1224yd(Z)、沸点15℃)等である。沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは併用されてもよい。
【0028】
沸点が10~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、沸点が10~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、沸点が10~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。沸点が10~40℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、ハイドロフルオロオレフィンは、吐出直後の吐出物中に保持されやすく、吐出物を指で押さえることにより気化が促進されて発泡し、球状の樹脂発泡体を形成しやすい。
【0029】
・任意成分
原液は、上記した樹脂、ポリオール、水、沸点が10~40℃のハイドロフルオロオレフィンのほかに、用途や目的などに応じて、アルコール、有効成分、界面活性剤、油剤、水溶性高分子、パウダーなどが適宜配合されてもよい。
【0030】
アルコールは、樹脂発泡体の乾燥性を調整するなどの目的で配合され得る。
【0031】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール等である。アルコールは併用されてもよい。
【0032】
アルコールが配合される場合、アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、適度に乾燥する樹脂発泡体が得られやすい。
【0033】
有効成分は、用途や目的などに応じて適宜選択することができる。一例を挙げると、有効成分は、天然香料、合成香料などの各種香料、l-メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸、コラーゲン、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノールなどの防腐剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤、ローヤルゼリーエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液、酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、緑茶エキスなどの消臭剤、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤、アルブチン、コウジ酸などの美白剤、クロロヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノールなどの制汗剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤等である。
【0034】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、有効成分を配合することによる効果が得られやすい。
【0035】
界面活性剤は、吐出物を発泡しやすくする、対象物の汚れを除去する等の目的で配合され得る。
【0036】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸石鹸、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン性界面活性剤、アルキルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの陽イオン型界面活性剤;アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグルタミン酸、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩などのアミノ酸系界面活性剤等である。界面活性剤は、併用されてもよい。
【0037】
界面活性剤が配合される場合、界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、界面活性剤を配合することによる効果が得られやすい。
【0038】
油剤は、樹脂発泡体の硬さを調整する、油性の汚れを除去する等の目的で配合され得る。
【0039】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、コハク酸ジエトキシエチル、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のエステル油、流動パラフィン、ケロシン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィン等の炭化水素油、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、ホホバ油、麦芽油、ヤシ油、パーム油等の油脂、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシクロシロキサン等のシリコーンオイル、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、ラノリンアルコール、ヘキシルドデカノール、セトステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール等である。油剤は併用されてもよい。
【0040】
油剤が配合される場合、油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、油剤を配合することによる効果が得られやすい。
【0041】
水溶性高分子は、吐出物中にハイドロフルオロオレフィンを保持しやすくする等の目的で好適に配合される。
【0042】
水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、セルロースナノファイバー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等である。
【0043】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、水溶性高分子を配合することによる効果が得られやすい。
【0044】
パウダーは、滑りを良くするなど、使用感を向上させるために好適に配合される。
【0045】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。
【0046】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、パウダーを配合することによる効果が得られやすい。
【0047】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、樹脂と、ポリオールと、有効成分やアルコールなどの任意成分を水や温水に添加して原液基材を調製する。また、油剤を含有する場合は、原液基材を乳化物にしてもよい。この原液基材を密閉可能なタンクに充填し、これにハイドロフルオロオレフィンを充填して混合することにより原液を調製することができる。なお、ハイドロフルオロオレフィンは沸点以下に冷却してから充填することが好ましい。
【0048】
(液化ガス)
液化ガスは、ジメチルエーテルを含む。
【0049】
・ジメチルエーテル
ジメチルエーテルは、エアゾール容器内では液化し、樹脂を安定に溶解する。ジメチルエーテルは、外部に吐出されると気化し、樹脂を析出させて樹脂発泡体を形成する。
【0050】
ジメチルエーテルの含有量は、エアゾール組成物中、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、ジメチルエーテルの含有量は、エアゾール組成物中、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。ジメチルエーテルの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、エアゾール容器内で樹脂を安定に溶解し、樹脂発泡体を形成しやすく、樹脂発泡体を冷却し、塗布面に冷却効果を付与しやすい。
【0051】
液化ガスは、ジメチルエーテルのみであってもよく、他の液化ガスを含んでもよい。他の液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、他の液化ガスは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze、沸点-19℃)、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234yf、沸点-29℃)などの沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタンおよびこれらの混合物からなる炭素数3~5個の脂肪族炭化水素およびこれらの混合物等である。
【0052】
他の液化ガスが含まれる場合、ジメチルエーテルの一部は、他の液化ガスと置き換えられてもよい。
【0053】
また、エアゾール組成物は、圧縮ガスで加圧されてもよい。圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスは、窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素等である。
【0054】
圧縮ガスが使用される場合、圧縮ガスは、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.4MPa以上となるよう充填されることが好ましく、0.5MPa以上となるよう充填されることがより好ましい。また、圧縮ガスは、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.7MPa以下となるよう充填されることが好ましく、0.6MPa以下となるよう充填されることがより好ましい。圧力が上記範囲内になるよう圧縮ガスが充填されることにより、エアゾール組成物は、低温時でも安定に吐出され得る。
【0055】
本実施形態のエアゾール組成物は、容器本体に原液を充填してバルブを固着し、バルブから液化ガスを充填し、原液と液化ガスを混合することにより調製することができる。なお、液化ガスはバルブを固着する直前に充填してもよい。また、原液は原液基材とハイドロフルオロオレフィンとを別々に容器本体に充填してもよい。さらに、ハイドロフルオロオレフィンは液化ガスと混合しておき、この混合物を、原液基材を充填しているエアゾール容器に充填してもよい。
【0056】
容器本体は、エアゾール組成物が充填される容器であり、有底筒状である。容器本体の開口部には、バルブが取り付けられる。
【0057】
容器本体の材質は特に限定されない。一例を挙げると、容器本体の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0058】
バルブは、容器本体の開口部を閉止して密封するための部材である。また、バルブは、容器本体の開口部に装着されるマウンティングカップに保持されるハウジングと、容器本体の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。ハウジングは、ステムと、ステムラバーと、ステムを上方に付勢するスプリングとを収容する。ステムの上端には、エアゾール組成物を噴霧するための噴射部材が取り付けられる。
【0059】
噴射部材は、バルブの開閉を操作してエアゾール組成物を噴射するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。噴射部材は、噴射孔が形成されたノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。噴射孔からは、エアゾール組成物が噴射される。噴射孔の数および形状は特に限定されない。噴射孔は、複数であってもよい。また、噴射孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0060】
本実施形態のエアゾール組成物は、噴射部材が押し下げられると、バルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、容器本体内と外部とが連通する。容器本体内と外部とが連通すると、容器本体内の圧力と外部との圧力差によって、エアゾール組成物がハウジング内に取り込まれ、次いで、ステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。吐出されたエアゾール組成物は、対象面(たとえば腕など)において発泡し、球状の樹脂発泡体となる。
図1および
図2は、本実施形態のエアゾール組成物を吐出して得られた樹脂発泡体の外観写真である。球状であることから、樹脂発泡体は、可愛らしい外観であり、皮膜よりも趣向性が優れる。
図2に示されるように、本実施形態のエアゾール組成物を吐出して得られた樹脂発泡体は、弾力のある樹脂皮膜が形成されるため、たとえば、表面に文字や模様等を描くこともでき、趣向性が高い。
【0061】
図3は、本実施形態のエアゾール組成物を吐出して得られた樹脂発泡体を指で押し付けている状態の外観写真である。樹脂発泡体は、冷却感があり、対象面を冷却することができる。また、
図3に示されるように、樹脂発泡体は、内部が空洞であるため、指先で押す力を和らげながら、対象面を押圧することができる。さらに、樹脂発泡体は、指でつまんで、種々の部位(たとえば、目元や口元など)に適用したり、塗布面上を転がすように塗布することもできる。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0063】
(実施例1)
以下の表1に示される処方に従って原液1を調製し、アルミニウム製容器本体に35g(35質量%)充填した。容器本体の開口部にバルブを固着し、バルブからジメチルエーテルを65g(65質量%)充填し、エアゾール容器内で原液とジメチルエーテルを混合し、エアゾール組成物を調製した。
【0064】
【0065】
(実施例2)
原液1の充填量を25g(25質量%)、ジメチルエーテルの充填量を75g(75質量%)とした以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0066】
(実施例3)
原液1の代わりに、表1に示される原液2を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0067】
(比較例1)
原液1の代わりに、表1に示される原液3を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0068】
実施例1~3および比較例1のエアゾール組成物を用いて、以下の評価方法により、樹脂発泡体の形状、塗布性、冷却感を評価した。結果を表2に示す。
【0069】
<樹脂発泡体の形状>
エアゾール容器を25℃に調整された恒温水槽中に1時間浸漬し、エアゾール組成物を25℃に調整した。手のひらに吐出されたエアゾール組成物から形成された樹脂発泡体の形状を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:樹脂発泡体は、指先で押さなくてもゆっくりと膨張しながら球状になった。
○:樹脂発泡体は、表面を指先で数回軽く押すとゆっくりと膨張しながら球状になった。
×:樹脂発泡体は、表面を指先で数回軽く押しても球状にならなかった。
【0070】
<塗布性>
形成された樹脂発泡体を手の甲に押し付けるように指先で前方に移動させたときの状態を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:樹脂発泡体は、剥離しやすく、手の甲を転がるようにスムーズに移動した。
×:樹脂発泡体は、くっつきやすく、手の甲を転がることなくスムーズに移動しなかった。
【0071】
<冷却感>
形成された樹脂発泡体を手の甲に塗布したときの冷却感を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:樹脂発泡体は、冷たく感じた。
×:樹脂発泡体は、冷たく感じなかった。
【0072】
【0073】
表2に示されるように、本発明の実施例1~3のエアゾール組成物は、吐出後に膨張し、趣向性のある球状の樹脂発泡体を形成することができた。得られた樹脂発泡体は、冷却感があり、剥離しやすく、転がすように移動させることができた。一方、沸点が10~40℃であるハイドロフルオロオレフィンを含まない比較例1のエアゾール組成物は、球状でない樹脂発泡体が得られ、かつ、塗布面にくっつきやすかった。
【0074】
(実施例4)
以下の表3に示される処方に従って原液4を調製し、アルミニウム製容器本体に44g(44質量%)充填した。容器本体の開口部バルブを固着し、バルブからジメチルエーテルを56g(56質量%)充填し、エアゾール容器内で原液とジメチルエーテルを混合し、エアゾール組成物を調製した。
【0075】
(実施例5)
原液4の代わりに、表3に示される原液5を用いた以外は、実施例4と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0076】
【0077】
実施例4~5のエアゾール組成物を用いて、以下の評価方法により、樹脂発泡体の形状、塗布性、冷却感を評価した。結果を表4に示す。
【0078】
【0079】
表4に示されるように、本発明の実施例4~5のエアゾール組成物は、吐出後に膨張し、趣向性のある球状の樹脂発泡体を形成することができた。得られた樹脂発泡体は、冷却感があり、剥離しやすく、転がすように移動させることができた。