(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156775
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ボールねじ付きサーボモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20231018BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20231018BHJP
B29C 45/28 20060101ALI20231018BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H25/22 Z
B29C45/28
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066330
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】青柳 典明
【テーマコード(参考)】
3J062
4F202
4F206
5H607
【Fターム(参考)】
3J062CD02
3J062CD23
3J062CG83
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK03
4F202CK07
4F206JA07
4F206JF01
4F206JL02
4F206JM04
4F206JM05
4F206JN15
4F206JQ81
4F206JT07
4F206JT38
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD04
5H607DD16
5H607EE53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バルブゲート方式のホットランナーにおいて注型スピードや注型量といった樹脂注型の精密な制御を可能とし、射出成型機のタクトタイム向上を実現することができる方式を提供する。
【解決手段】ボールねじ付きサーボモータ10は、モータ軸8内部にボールねじ2が取り付けられ、単体で回転運動を直線運動に変換できる一体モータ構造である構成とする。ボールねじ軸の回転防止用構造として、ボールねじ2にピン、モータ側にピンが通る溝を設けて、ボールねじ軸が回転しない構造としたり、また、ボールねじのねじ抜け防止のストッパーを備えた構造とすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸内内部にボールねじが取り付けられ、単体で回転運動を直線運動に変換できることを特徴とする、ボールねじ付きサーボモータ。
【請求項2】
ボールねじ軸の回転防止用構造を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のボールねじ付きサーボモータ。
【請求項3】
ボールねじのねじ抜け防止のストッパーを備えていることを特徴とする、請求項1に記載のボールねじ付きサーボモータ。
【請求項4】
ボールねじ軸の回転防止用構造、およびボールねじのねじ抜け防止のストッパーを備えていることを特徴とする、請求項1に記載のボールねじ付きサーボモータ。
【請求項5】
ホットランナーのノズル部分のバルブピン駆動用であることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載のボールねじ付きサーボモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールねじ付きサーボモータに係り、特に回転運動を直進運動に変換するためのモータ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホットランナーは、熱可塑性樹脂の射出成形において、金型側へ樹脂を流すための道であるスプルー・ランナーを溶融した状態で保持し、成形品のみを取り出す技術である。そのシステムは、成形品側への樹脂供給用ノズル、ノズルまで樹脂を分岐させるマニホールド、センサ・ヒータ・温度制御用コントローラ等から構成される。ノズルにおける樹脂供給部すなわちゲートの構造によって、バルブゲートとオープンゲートの二方式がある。
【0003】
このうちバルブゲート方式は、バルブピンによってゲート部分を閉じる機構(バルブ機構)がノズル内部に組み込まれており、溶融樹脂の糸引きやたれ落ち発生が完全に防止される。バルブ機構において、バルブピンを駆動する機構としては従来、電動式、油圧式、エアシリンダー式、スプリングバルブ式が使用されている。
【0004】
ホットランナーバルブ装置については従来、特許出願等も多くなされている。たとえば後掲特許文献1には、複雑な機構的な開閉構造を取らず、内部に樹脂が流動される昇降ピンを昇降させる簡素な構造により、金型のキャビティに注入される樹脂の供給を容易に制御できる構成とし、小型の精密部品や流動性の不良な樹脂に対する成形条件を良好に設計可能とすることで量産性を高め、成形品の不良発生を低減可能な射出成形機用のホットランナーバルブ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-501649号公報「射出成形機のバルブ装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バルブゲート方式のホットランナーにおいては、注型スピードや注型量などといった樹脂注型の精密な制御を行うことができれば、射出成型機のタクトタイム向上を実現することができる。しかし、ノズル部分のバルブピン駆動機構として、従来のエアシリンダー等ではその実現が難しい。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、バルブゲート方式のホットランナーにおいて注型スピードや注型量などといった樹脂注型の精密な制御を可能とし、射出成型機のタクトタイム向上を実現することができる方式を提供することである。
【0008】
また本発明の課題は、バルブゲート方式のホットランナー技術に限定することなく、モータ単体による回転運動を直進運動に変換するためのモータ構造として新規かつ有用なる方式・構造を提供し、それによって、制御対象が何であれ、従来よりも精密な制御が可能な駆動方式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は上記課題について検討した結果、ACサーボモータとボールねじを組合せることにより樹脂注型の精密な制御を可能とし、射出成型機のタクトタイム向上を実現できることに想到した。つまり、モータ内においてボールねじを取り付けた一体モータ構造とし、モータ回転運動を直進運動に変換して出力するという方式であり、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕 モータ軸内内部にボールねじが取り付けられ、単体で回転運動を直線運動に変換できることを特徴とする、ボールねじ付きサーボモータ。
〔2〕 ボールねじ軸の回転防止用構造を備えていることを特徴とする、〔1〕に記載のボールねじ付きサーボモータ。
【0011】
〔3〕 ボールねじのねじ抜け防止のストッパーを備えていることを特徴とする、〔1〕に記載のボールねじ付きサーボモータ。
〔4〕 ボールねじ軸の回転防止用構造、およびボールねじのねじ抜け防止のストッパーを備えていることを特徴とする、〔1〕に記載のボールねじ付きサーボモータ。
〔5〕 ホットランナーのノズル部分のバルブピン駆動用であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載のボールねじ付きサーボモータ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のボールねじ付きサーボモータは上述のように構成されるため、これによれば、バルブゲート方式のホットランナーにおいて、注型スピードや注型量などといった樹脂注型の精密な制御を可能とすることができ、それにより、射出成型機のタクトタイム向上を実現できる。
【0013】
また、本発明によれば、バルブゲート方式のホットランナー技術に限定することなく、モータ単体による回転運動を直進運動に変換するためのモータ構造として新規かつ有用なる方式・構造を提供することができ、それによって、制御対象を限定せず、それに対する制御を従来よりも精密なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明ボールねじ付きサーボモータの基本構成を概念的に示す側断面図である。
【
図2】本発明ボールねじ付きサーボモータの構成例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明ボールねじ付きサーボモータの基本構成を概念的に示す側断面図である。図中、(a)は本発明の構成を、(b)は本発明と対比する前提的な構成を、それぞれ示す。(a)に示すように本ボールねじ付きサーボモータ10は、モータ軸8内部にボールねじ2が取り付けられ、単体で回転運動mRを直線運動mLに変換できる一体モータ構造であることを、主たる構成とする。
【0016】
かかる構成により本ボールねじ付きサーボモータ10では、モータによる回転運動mRはモータ軸8内部に取付けられたボールねじ2へと伝動されてボールねじ2において直線運動mLに変換され、出力される。すなわち、本来であれば図中(b)に示すように、モータ10bの出力として得られるモータ軸8bの回転運動mRは、モータ10b外にて連結されるボールねじ2bに伝動されて直線運動mLへと変換されるところ、(a)に示す本発明では、モータ出力の変化がモータ10内部において行われるのである。
【0017】
すなわち、本ボールねじ付きサーボモータ10では、モータ軸8の回転運動mRはその内部に取付けられたボールねじ2に伝動され、ボールねじ2において直線運動mLに変換され、それが本モータ10の出力として出力されるため、図中(b)との対比で明らかなとおり、モータ+ボールねじの軸方向長さを短くすることができ、省スペース化となる。しかし本発明による効果の本質は、それではない。
【0018】
つまり本発明では、図中(b)のようにボールねじ2bの軸端をモータ10bのモータ軸8bに固定するという間接的な機構によって回転運動mRから直線運動mLへの変換を行う必要がなく、モータ軸8の回転運動mRは、これに取付けられて一体となっているボールねじ2において直接、直線運動mLに変換されて出力される。つまり、本モータ単体にて直接、直進運動を実現できる構造であり、これにより、制御対象に関わらず、より精密な制御を実現することができる。また、本モータ10の出力は、回転運動ではなく直線運動出力となる。
【0019】
図2は、本発明ボールねじ付きサーボモータの構成例を示す側断面図であり、ホットランナーのノズル部分のバルブピン駆動用モータの構成である。図示するように本例ボールねじ付きサーボモータ210は、ケース29C中に収容されたステータ29S、ロータ29R、モータ軸28等によるモータとしての基本構造に加えて、モータ軸28内部にボールねじ22が取り付けられ、本モータ単体で回転運動を直線運動に変換できる一体モータ構造を有する。
【0020】
ボールねじ22取付部分をより詳細に説明する。ハウジング24、ねじ軸23等から構成されているボールねじ22は、軸固定部25によってモータ軸28に固定され、かつその内部に収容されている。本モータ210の出力端部であるねじ軸2の先端部には、ねじ回り止め兼突き当て用ピン21が設けられている。また、ねじ回り止め兼突き当て用ピン21が移動する空間を規定するピン移動用溝26が設けられている。
【0021】
ねじ回り止め兼突き当て用ピン21はボールねじ軸23の回転防止用構造であり、これにより、モータ軸28の回転とともにボールねじ22のハウジング24等が回転しても、回転から変換された直線運動を担うねじ軸23は回転せずに直線運動し、直線駆動を本モータ210外へと出力することができる。
【0022】
また、図示するように本ボールねじ付きサーボモータ210は、モータ210内において機械的なストッパー7a、7bを設け、ねじ軸23がストローク以上動作できない構造としている。これにより、ボールねじのねじ抜けを防止することができ、本モータ210自身および制御対象であるホットランナーノズル部分のバルブピン等の制御対象に対する意図しない衝撃、破損等を防止することができる。
【0023】
なお、モータにボールねじを一体化させるという方式を、これらを単純に直列に連結させる構造としてしまえば、全体としての軸方向寸法は長大となり、モータ製造における金型コストが増加してしまう。しかし本発明のように、モータ内、モータ軸内にボールねじを収容して一体化する構成とすることによって、モータ全長をより抑えることができ、金型コストを抑えることができる。
【0024】
以上の説明の通り本発明ボールねじ付きサーボモータ210は、ホットランナーに適用して、金型への樹脂注型を行うためのノズル部分のバルブピン駆動用モータとして用いることができる。その場合、上述した通り、精密な樹脂注型制御を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のボールねじ付きサーボモータによれば、バルブゲート方式のホットランナーにおいて樹脂注型の精密な制御を可能とし、それにより、射出成型機のタクトタイム向上を実現できる。さらに、これに限定されず、回転運動を直進運動に変換するためのモータ構造として新規かつ有用なる方式・構造を提供することができる。したがって、ホットランナー、サーボモータ製造・使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0026】
21…ねじ回り止め兼突き当て用ピン
2、2b、22…ボールねじ
23…ねじ軸
24…ハウジング
25…軸固定部
26…ピン移動用溝
27a、27b…機械的ストッパー
8、8b、28…モータ軸
29C…ケース
29R…ロータ
29S…ステータ
10、210…ボールねじ付きサーボモータ
10b…サーボモータ
mL…直線運動
mR…回転運動