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特開2023-156776車両用経路計画装置、車両用経路計画方法、車両用経路計画システム
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  • 特開-車両用経路計画装置、車両用経路計画方法、車両用経路計画システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156776
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】車両用経路計画装置、車両用経路計画方法、車両用経路計画システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20231018BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G01C21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066332
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高木 良貴
(72)【発明者】
【氏名】御厨 裕
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129AA04
2F129BB03
2F129CC15
2F129CC16
2F129CC25
2F129DD24
2F129DD29
2F129DD57
2F129DD70
2F129EE52
2F129FF02
2F129FF32
2F129FF62
2F129FF63
2F129GG04
2F129GG05
2F129GG06
2F129GG17
2F129GG18
5H181AA01
5H181AA14
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181MA08
(57)【要約】
【課題】交通流を低下させる可能性を低減させる。
【解決手段】自動運転車両である先行利用車両の周辺環境を取得し、取得した周辺環境に応じて、先行利用車両が出力可能な走行速度を算出し、先行利用車両の現在地を取得し、算出した走行速度と、取得した現在地に応じて、先行利用車両の現在地から目的地までの走行ルートの候補となる走行ルート候補を算出し、算出した走行ルート候補の交通への許容度を算出し、算出した走行ルート候補のうち算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両である先行利用車両の周辺環境を取得する処理と、
前記取得した周辺環境に応じて、前記先行利用車両が出力可能な走行速度を算出する処理と、
前記先行利用車両の現在地を取得する処理と、
前記算出した走行速度と、前記取得した現在地と、に応じて、前記先行利用車両の現在地から目的地までの走行ルートの候補となる走行ルート候補を算出する処理と、
前記算出した走行ルート候補の交通への許容度を算出する処理と、
前記算出した走行ルート候補のうち前記算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する処理と、
を実行するコンピュータを備える車両用経路計画装置。
【請求項2】
前記許容度は、前記算出した走行ルート候補の区間長に対する許容度と、前記算出した走行ルート候補の交通量に対する許容度と、前記算出した走行ルート候補の車線数に対する許容度と、前記算出した走行ルート候補の巡航速度に対する許容度と、前記算出した走行ルート候補の閉塞度に対する許容度と、のうち少なくとも一つを含む請求項1に記載した車両用経路計画装置。
【請求項3】
前記コンピュータは、
前記区間長に対する許容度を、前記算出した走行ルート候補の区間長が短いほど大きく算出する処理を実行する請求項2に記載した車両用経路計画装置。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記交通量に対する許容度を、前記算出した走行ルート候補における単位時間当たりの走行台数が少ないほど大きく算出する処理を実行する請求項2に記載した車両用経路計画装置。
【請求項5】
前記コンピュータは、
前記車線数に対する許容度を、前記算出した走行ルート候補の車線数が多いほど大きく算出する処理を実行する請求項2に記載した車両用経路計画装置。
【請求項6】
前記コンピュータは、
前記巡航速度に対する許容度を、前記算出した走行ルート候補における単位時間当たりの平均走行速度が低いほど大きく算出する処理を実行する請求項2に記載した車両用経路計画装置。
【請求項7】
前記コンピュータは、
前記閉塞度に対する許容度を、前記算出した走行ルート候補の区間における閉塞状態が小さいほど大きく算出する処理を実行する請求項2に記載した車両用経路計画装置。
【請求項8】
前記コンピュータは、
前記出力可能な走行速度を、前記先行利用車両の周辺環境を取得する車載センサによる、前記先行利用車両の前方環境の認識精度に応じて算出する処理を実行する請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両用経路計画装置。
【請求項9】
前記コンピュータは、
前記認識精度を、前記車載センサの故障及び出力低下のうち少なくとも一方に応じて算出する処理を実行する請求項8に記載した車両用経路計画装置。
【請求項10】
前記コンピュータは、
前記認識精度を、日照状況、天候及び時間帯のうち少なくとも一つを含む環境要因に応じて算出する処理を実行する請求項8に記載した車両用経路計画装置。
【請求項11】
前記コンピュータは、
前記算出した走行ルート候補の前記許容度が予め設定した許容度閾値未満である場合、前記現在地から前記許容度が前記許容度閾値以上となる範囲内で、前記先行利用車両から他の自動運転車両である乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ地点である乗り継ぎ地を設定する処理を実行する請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両用経路計画装置。
【請求項12】
前記コンピュータは、
前記乗り継ぎ車両を配車する処理を実行する請求項11に記載した車両用経路計画装置。
【請求項13】
前記コンピュータは、
前記先行利用車両に乗車しているユーザが前記目的地へ到着するまでに経過することを許容する時間である目的地到着許容時間を取得する処理と、
前記乗り継ぎ車両を、前記乗り継ぎ地に応じて、前記目的地到着許容時間までに前記目的地へ到着することが可能な自動運転車両から選択する処理を実行する請求項12に記載した車両用経路計画装置。
【請求項14】
前記コンピュータは、
前記出力可能な走行速度では前記乗り継ぎ地を設定することが不可能な場合は、前記現在地から前記目的地の間に存在する停車可能な路肩に前記先行利用車両を停車させる処理を実行する請求項12に記載した車両用経路計画装置。
【請求項15】
前記コンピュータは、
前記先行利用車両に乗車しているユーザが前記目的地へ到着するまでに経過することを許容する時間である目的地到着許容時間を取得する処理と、
前記目的地到着許容時間までに前記目的地へ到着する走行ルート候補を、前記提案走行ルートとして出力する処理を実行する請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両用経路計画装置。
【請求項16】
自動運転車両である先行利用車両の周辺環境を取得し、
前記取得した周辺環境に応じて、前記先行利用車両が出力可能な走行速度を算出し、
前記取得した周辺環境と、前記算出した走行速度と、を制御装置へ送信し、
前記制御装置が、
前記先行利用車両の現在地を取得し、
前記算出した走行速度と、前記取得した現在地と、に応じて、前記先行利用車両の現在地から目的地までの走行ルートの候補となる走行ルート候補を算出し、
前記算出した走行ルート候補の交通への許容度を算出し、
前記算出した走行ルート候補のうち前記算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する車両用経路計画方法。
【請求項17】
自動運転車両である先行利用車両が取得した前記先行利用車両の周辺環境と、前記取得した周辺環境に応じて前記先行利用車両が算出した先行利用車両が出力可能な走行速度と、を受信する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記先行利用車両の現在地を取得し、
前記算出した走行速度と、前記取得した現在地と、に応じて、前記先行利用車両の現在地から目的地までの走行ルートの候補となる走行ルート候補を算出し、
前記算出した走行ルート候補の交通への許容度を算出し、
前記算出した走行ルート候補のうち前記算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する車両用経路計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用経路計画装置、車両用経路計画方法、車両用経路計画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の周辺環境を正確に認識できているか否かに基づいて、車両の速度を制限する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018‐203017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている技術では、車両の周辺環境によっては、車両の速度を法定速度よりも低い速度に制限して走行する可能性があるため、法定速度で走行している他車両よりも低い速度で走行する可能性があり、交通流を低下させる可能性がある。
本発明は、交通流を低下させる可能性を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、自動運転車両である先行利用車両の周辺環境を取得し、取得した周辺環境に応じて、先行利用車両が出力可能な走行速度を算出し、先行利用車両の現在地を取得する。さらに、算出した走行速度と、取得した現在地とに応じて、先行利用車両の現在地から目的地までの走行ルートの候補となる走行ルート候補を算出し、算出した走行ルート候補の交通への許容度を算出する。これに加え、算出した走行ルート候補のうち算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、交通流を低下させる可能性を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】車両用経路計画システムの概略構成図である。
図2A】車両の機能構成を示す説明図である。
図2B】制御装置の機能構成を示す説明図である。
図3】車両用経路計画システムが実施する動作を示すフローチャートである。
図4】リルート処理を示すフローチャートである。
図5】配車処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0009】
(構成)
図1は、車両用経路計画システムの概略構成図である。車両用経路計画システム1は、ユーザの移動に用いる車両3が走行する経路(走行経路)を設定するシステムである。
車両用経路計画システム1は、制御装置2と、車両3(サービス車両)を少なくとも備える。
【0010】
ユーザは、車両3を利用する際に、例えば、電子装置を用いて制御装置2にアクセスして、車両3を予約する。
電子装置は、車両用経路計画システム1による配車サービスを利用するユーザが使用する端末装置である。また、電子装置は、例えば、ユーザが携行可能な携帯情報端末や、持ち運びが容易な小型コンピュータとしてもよく、家屋等に設置した据え置き型のコンピュータ等としてもよい。なお、電子装置には、例えば、車両用経路計画システム1を使用するための専用アプリケーションソフトウエアを、予めインストールしておく。以下の説明においては、「アプリケーションソフトウエア」を「ソフトウエア」と記載する場合がある。また、ユーザは、電子装置のブラウザ機能を利用し、インターネットを用いて、車両3を予約してもよい。
【0011】
車両3を予約する際には、電子装置によって利用リクエストデータを生成し、制御装置2へ利用リクエストデータを送信する。
利用リクエストデータは、例えば、車両3を利用して移動する人数(ユーザ自身を含む)の情報と、ユーザが車両3への乗車を希望する乗車場所(希望乗車地)と、ユーザが車両3からの降車を希望する降車場所(目的地)の情報を含む。これに加え、利用リクエストデータは、例えば、ユーザが車両3への乗車を希望する日付及び時間(希望乗車日時)と、ユーザが車両3からの降車を希望する日付及び時間(希望降車日時)の情報を含む。
【0012】
<制御装置>
制御装置2(サーバ装置)は、利用リクエストデータに応じた処理を行う。
制御装置2は、プロセッサ20と、記憶装置21と、通信装置22と、登録者データベース(登録者DB)23と、地図データベース(地図DB)24と、予約データベース(予約DB)25を備える。
プロセッサ20は、例えば、CPUやMPUであってよい。記憶装置21は、レジスタ、キャッシュメモリや、主記憶装置として使用されるROM、RAM等のメモリ等、一時的でない有形の記憶媒体を含んでよい。以下に説明する制御装置2の機能は、例えば、記憶装置21に格納されたコンピュータプログラムを、プロセッサ20が実行することにより実現される。
【0013】
通信装置22は、制御装置2と外部装置との間における通信機能を提供する。通信装置22による通信方式は、例えば、公衆移動体通信網による有線通信や無線通信、衛星通信、車両3との間の路車間通信等であってよい。
制御装置2は、通信装置22によって、車両3や電子装置との間でデータを送受信する。
【0014】
登録者DB23は、車両用経路計画システム1を使用する者を登録するためのデータベースである。以下の説明においては、登録者DB23に登録された者を「登録者」と表記する。例えば、車両用経路計画システム1を使用する者として、配車サービスの利用者が登録者DB23に登録されている。
【0015】
図DB24には、車両用経路計画システム1が配車サービスを提供する地域の地図情報が格納されている。地図情報は、例えば、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビゲーション地図」という)であってよい。
制御装置2は、利用リクエストデータに応じて、地図DB24に格納されている地図情報に基づき、利用リクエストデータに含まれる希望乗車地から目的地まで至る走行経路を算出する。また、制御装置2は、利用リクエストデータに含まれる希望乗車日時に車両3が発車し、走行経路を走行して目的地に到着する降車日時を予測する。
制御装置2は、利用リクエストデータに含まれる希望乗車地、希望乗車日時、目的地と、制御装置2が算出した走行経路及び降車日時とを、車両3の運行計画として予約DB25に記憶する。
また、制御装置2は、希望乗車地、希望乗車日時、目的地、降車日時及び走行経路を含んだ運行計画を、車両3へ出力する。
【0016】
<車両>
車両3は、ユーザの要求に応じて運行する車両(いわゆる、デマンド型交通の車両)であり、例えば、乗り合いタクシーやロボットタクシーであってよい。
また、車両3は、制御装置2から出力された運行計画に従って、運転者(人間)が関与せずに、コントローラ34によって車両3を自動的に運転する自動運転車両である。
車両3は、制御装置2から運行計画を受信すると、運行計画に含まれる希望乗車日時までに到着するように乗車場所まで走行する。また、乗車場所において利用者が車両3に乗車すると、運行計画に含まれる走行経路に沿って降車場所まで走行する。
【0017】
車両3は、車載センサ30と、測位装置31と、地図データベース(地図DB)32と、通信装置33と、コントローラ34と、アクチュエータ35とを備える。
車載センサ30は、車両3の周囲の物体を検出する物体センサや、車両3から得られる様々な情報(車両状態)を検出する車両センサを含む。
物体センサは、例えば、車両3の周囲に存在する物体と車両3との相対位置、車両3と物体との距離、物体が存在する方向等の車両3の周囲環境を検出する。物体センサは、例えば、車両3の周囲環境を撮影するカメラを含んでよい。また、例えば、物体センサは、レーザレンジファインダ(LRF)やレーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)のレーザレーダ等の測距装置を含んでもよい。物体センサは、検出した車両3の周囲環境の情報である周囲環境情報を、コントローラ34へ出力する。
車両センサは、例えば、車両3の走行速度(車速)を検出する車速センサ、車両3が備える各タイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、車両3の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)を含んでよい。また、車両センサは、例えば、操舵角(転舵角を含む)を検出する操舵角センサ、車両3に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレイトを検出するヨーレイトセンサを含んでよい。さらに、車両センサは、例えば、シートベルトの着脱を検出するシートベルトセンサや、ドアの開閉を検出するドアセンサを含んでよい。車両センサは、車両状態情報をコントローラ34へ出力する。
【0018】
測位装置31は、車両3の現在地及び姿勢を測定する。測位装置31は、例えば、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備えてよい。GNSS受信機は、例えば、地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置31は、慣性航法装置を備えてもよい。測位装置31は、測定した現在地の現在地情報をコントローラ34へ出力する。
図DB32は、地図情報を記憶する。地図情報は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビゲーション地図」という)と、自動運転用の地図として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という)とを含んでいてよい。
通信装置33は、車両3と外部装置との間における通信機能を提供する。通信装置33による通信方式は、例えば、公衆移動体通信網による無線通信、衛星通信、路車間通信等であってよい。
車両3は、通信装置33によって制御装置2との間でデータを送受信する。
【0019】
コントローラ34は、車両3を制御する電子制御ユニットである。例えば、コントローラ34は、車両3の自動運転制御を行う。コントローラ34は、プロセッサ36と、記憶装置37等の周辺部品とを含む。プロセッサ36は、例えば、CPUやMPUであってよい。記憶装置37は、レジスタ、キャッシュメモリや、主記憶装置として使用されるROM、RAM等のメモリ等の一時的でない有形の記憶媒体を含んでよい。コントローラ34の機能は、例えば、プロセッサ36が、記憶装置37に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
コントローラ34は、車載センサ30からの周囲環境情報及び車両状態情報と、測位装置31の測位結果と、地図DB32の地図情報とに基づいて、車両3を運行計画に従って走行させる自動運転制御を実行する。例えば、コントローラ34は、車両3の現在地及び姿勢と、運行計画に含まれる走行経路と、地図情報と、車両3の周囲環境とに基づいて、車両3を走行させる目標走行軌道を算出する。これに加え、コントローラ34は、例えば、車両3の周辺の経路や物体の有無を表現する経路空間マップと、走行時の危険度を数値化したリスクマップとを生成する。さらに、コントローラ34は、車両3の運動特性、車両状態情報、経路空間マップと、リスクマップとに基づいて、目標走行軌道を生成する。そして、コントローラ34は、生成した目標走行軌道に沿って車両3が走行するようにアクチュエータ35を駆動する。
アクチュエータ35は、コントローラ34からの制御信号に応じて、車両3の操舵装置と、駆動装置と制動装置を操作して、車両3の車両挙動を発生させることにより、車両3を自動的に運転する。アクチュエータ35は、操舵アクチュエータと、アクセル開度アクチュエータと、ブレーキ制御アクチュエータを備える。
【0020】
<車両の機能構成>
以下、車両用経路計画システム1の詳細について説明する。図2Aは、車両3の機能構成(一例)を示す説明図である。
車両3は、周辺環境取得部40と、環境要因取得部41と、認識精度算出部42と、出力可能速度算出部43を備える。
【0021】
周辺環境取得部40は、車載センサ30を用いて、車両3の周辺環境(周辺の車両や歩行者の存在、道路工事による車線狭窄等)を取得する。
【0022】
環境要因取得部41は、例えば、路車間通信や車載センサ30等を用いて、環境要因を取得する。環境要因には、日照状況、天候及び時間帯のうち少なくとも一つを含む。
【0023】
認識精度算出部42は、周辺環境取得部40が取得した周辺環境を用いて、車載センサ30による、車両3の周辺環境を認識する精度である認識精度を算出する。
実施形態では、一例として、認識精度算出部42が、車載センサ30による、車両3の前方環境の認識精度を算出する場合について説明する。
【0024】
また、認識精度算出部42は、車載センサ30の故障及び出力低下のうち少なくとも一方に応じて、認識精度を算出する。
車載センサ30による認識精度を算出する処理としては、例えば、カメラによって撮像可能な位置に一時停止位置や交差点、右左折路等の表示が存在する場合に、カメラの撮像画像から表示を認識することが不可能な場合に、認識精度が低下していると算出する。なお、認識精度は、例えば、通常の認識精度である「高」、センサの検出精度が通常の五割程度まで低下した状態の認識精度である「中」、センサの検出精度が通常の三割程度まで低下した状態の認識精度である「低」の三段階で表す。
【0025】
さらに、認識精度算出部42は、環境要因取得部41が取得した環境要因に応じて、認識精度を算出する。
環境要因に応じて認識精度を算出する処理としては、例えば、日照状況が、日射がカメラの撮像能力に影響を与える程度に強い状況である場合、認識精度の低下を発生させる可能性があると判断して、認識精度が低下していると算出する。また、例えば、天候が、濃霧や豪雨等、カメラの撮像能力に影響を天候である場合、認識精度の低下を発生させる可能性があると判断して、認識精度が低下していると算出する。さらに、車両3が走行している時間帯が、夜間や早朝等、周囲の明るさがカメラの撮像能力に影響を与える時間帯である場合、認識精度の低下を発生させる可能性があると判断して、認識精度が低下していると算出する。
【0026】
出力可能速度算出部43は、周辺環境取得部40が取得した周辺環境に応じて、車両3が出力可能な走行速度を算出する。
これに加え、出力可能速度算出部43は、認識精度算出部42が算出した認識精度に応じて、車両3が出力可能な走行速度を算出する。
具体的には、認識精度が「高」である場合、車両3が走行する道路の法定速度を、車両3が出力可能な走行速度として算出する。
【0027】
また、例えば、認識精度が「中」の場合、認識精度が「高」である場合に出力可能な走行速度に、係数として「0.9」を乗算した速度を、車両3が出力可能な走行速度として算出する。
さらに、例えば、認識精度が「低」の場合、認識精度が「高」である場合に出力可能な走行速度に、係数として「0.75」を乗算した速度を、車両3が出力可能な走行速度として算出する。
また、出力可能速度算出部43は、車両3にユーザが乗車していないときは、車両3にユーザが乗車しているときよりも、出力可能な走行速度を低い速度に設定する。なお、車両3にユーザが乗車しているか否かの判定には、例えば、シートベルトセンサを用いる。
【0028】
<制御装置の機能構成>
図2Bは、制御装置2の機能構成(一例)を示す説明図である。
制御装置2は、車両現在地取得部50と、リクエストデータ取得部51と、走行計画作成部52と、走行ルート候補算出部53と、許容度算出部54と、目的地到着許容時間取得部55を備える。これに加え、制御装置2は、提案走行ルート出力部56と、乗り継ぎ判断部57と、乗り継ぎ地設定部58と、配車処理部59と、路肩停車処理部60を備える。
【0029】
車両現在地取得部50は、測位装置31が出力した現在地情報を用いて、車両3の現在地を取得する。
リクエストデータ取得部51は、電子装置から利用リクエストデータを受信すると、利用リクエストデータが含む情報を予約DB25に登録する。
【0030】
走行計画作成部52は、リクエストデータ取得部51が予約DB25に登録した情報に応じて、運行計画を作成する。
運行計画を作成する際には、利用リクエストデータが含む情報と、地図DB24に格納されている地図情報に基づいて、現在地から目的地まで至る走行経路を設定する。
また、走行計画作成部52は、算出した走行経路を予約DB25に記憶する。これにより、走行計画作成部52が設定した走行経路は、ユーザに提供される配車サービスの運行計画として、予約DB25に記憶される。
さらに、走行計画作成部52は、運行計画に関する運行計画情報を、ユーザに供する車両3と、電子装置へ出力する。
【0031】
走行ルート候補算出部53は、出力可能速度算出部43が算出した走行速度と、車両現在地取得部50が取得した現在地に応じて、走行ルート候補を算出する。
走行ルート候補は、車両3の現在地から目的地までの走行ルートの候補である。
【0032】
走行ルート候補を算出する際には、まず、出力可能速度算出部43が算出した走行速度、すなわち、車両3が自動運転を実行することが可能な最高速度が、法定速度未満である区間を検出する。
最高速度が法定速度未満である区間を検出する際には、例えば、走行計画作成部52が設定した走行経路と、地図DB32の地図情報と、車両現在地取得部50が取得した現在地と、利用リクエストデータが含む目的地を参照する。
【0033】
そして、例えば、走行計画作成部52が設定した走行経路が、法定速度が60[km/h]の区間で構成され、出力可能速度算出部43が算出した走行速度が40[km/h]である場合、現在地と目的地の間で法定速度が40[km/h]の区間を検出する。
次に、走行ルート候補として、現在地と目的地の間で法定速度が40[km/h]の区間を含む走行ルートを算出する。
【0034】
実施形態では、一例として、走行ルート候補算出部53が、複数の走行ルート候補を算出する場合について説明する。
また、走行ルート候補算出部53は、乗り継ぎ地設定部58が後述する乗り継ぎ地を設定すると、走行ルート候補として、車両3の現在地から乗り継ぎ地までの走行ルート候補を算出する。
【0035】
許容度算出部54は、走行ルート候補算出部53が算出した複数の走行ルート候補に対し、交通への許容度を算出する。
許容度は、以下の許容度I~許容度Vのうち、少なくとも一つを含む。
【0036】
許容度I:走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の、区間長に対する許容度。許容度Iの評価基準は、走行ルート候補である走行ルートを車両3が走行した場合に、車両3が交通流へ影響を及ぼすと予測される時間である。
走行ルート候補の区間長は、例えば、地図DB24に格納されている地図情報を用いて取得する。
【0037】
許容度II:走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の、交通量に対する許容度。許容度IIの評価基準は、走行ルート候補である走行ルートを車両3が走行した場合に、他車両に影響を及ぼす車両3の速度である。
走行ルート候補の交通量は、例えば、路車間通信や車々間通信を用いて取得する。
【0038】
許容度III:走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の、車線数に対する許容度。許容度IIIの評価基準は、走行ルート候補である走行ルートを車両3が走行した場合に、車両3の存在が影響を及ぼす他車両の台数である。
走行ルート候補の車線数は、例えば、地図DB24に格納されている地図情報を用いて取得する。
【0039】
許容度IV:走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の、巡航速度に対する許容度。許容度IVの評価基準は、走行ルート候補である走行ルートを車両3が走行した場合に、車両3の速度が、走行ルートの交通に及ぼすインパクトの程度である。
走行ルート候補の交通量は、例えば、路車間通信や車々間通信を用いて取得する。
【0040】
許容度V:走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の、閉塞度に対する許容度。許容度Vの評価基準は、走行ルート候補である走行ルートを車両3が走行した場合に、走行ルートの実質的な走行車線数がどれくらいかである。
走行ルート候補の交通量は、例えば、路車間通信や車々間通信を用いて取得する。
【0041】
許容度算出部54は、区間長に対する許容度(許容度I)を、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の区間長が短いほど、大きく算出する。
許容度算出部54は、交通量に対する許容度(許容度II)を、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補における単位時間当たりの走行台数が少ないほど、大きく算出する。
許容度算出部54は、車線数に対する許容度(許容度III)を、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の車線数が多いほど、大きく算出する。
許容度算出部54は、巡航速度に対する許容度(許容度IV)を、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補における単位時間当たりの平均走行速度が低いほど、大きく算出する。
許容度算出部54は、閉塞度に対する許容度(許容度V)を、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の区間における閉塞状態が小さいほど、大きく算出する。
なお、許容度I~許容度Vは、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補のうち、例えば、出力可能速度算出部43が算出した走行速度よりも法定速度が高い区間を対象として算出してもよい。
【0042】
目的地到着許容時間取得部55は、目的地到着許容時間を取得する処理を行う。
目的地到着許容時間は、車両3に乗車しているユーザが目的地へ到着するまでに経過することを許容する時間である。
目的地到着許容時間を取得する際には、現在の時刻と、利用リクエストデータが含む希望降車日時の情報を用いる。
【0043】
提案走行ルート出力部56は、走行ルート候補算出部53が算出した全ての走行ルート候補から、許容度算出部54が算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルート(運行計画)として車両3へ出力する。
具体的に、提案走行ルート出力部56は、走行ルート候補算出部53が算出した全ての走行ルート候補に対し、許容度算出部54が算出した許容度が、予め設定した許容度閾値以上であるか否かを判定する。そして、許容度算出部54が算出した許容度が、許容度閾値以上である走行ルート候補を、提案走行ルート(運行計画)として車両3へ出力する。
許容度閾値は、許容度算出部54が算出した許容度に対応するパラメータ(数値等)である。
【0044】
また、提案走行ルート出力部56は、許容度が許容度閾値以上である走行ルート候補のうち、目的地到着許容時間取得部55が取得した目的地到着許容時間までに目的地へ到着する走行ルート候補を、提案走行ルート(運行計画)として車両3へ出力する。
また、提案走行ルート出力部56は、走行ルート候補算出部53が車両3の現在地から乗り継ぎ地までの走行ルート候補である乗り継ぎ走行ルート候補を算出すると、乗り継ぎ走行ルート候補を、提案走行ルート(運行計画)として車両3へ出力する。
提案走行ルートの入力を受けた車両3は、提案走行ルートに沿って走行する。
【0045】
乗り継ぎ判断部57は、許容度算出部54が算出した許容度が許容度閾値未満であるか否かを判定する。そして、許容度算出部54が算出した許容度が許容度閾値未満である場合、ユーザが、乗車している車両3から他の自動運転車両へ乗り継ぐ必要があると判断する。
なお、以降の説明では、他の自動運転車両へ乗り継ぐ前にユーザが乗車している車両3を、「先行利用車両」と記載する場合がある。また、以降の説明では、ユーザが先行利用車両から乗り継ぐ他の自動運転車両を、「乗り継ぎ車両」と記載する場合がある。
【0046】
以下、乗り継ぎ判断部57が、ユーザが先行利用車両から乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ必要があるか否かを判断する処理の具体例について説明する。
【0047】
(具体例I)
許容度Iに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の区間長が500[m]であり、通過に50[秒]が必要な状態である。
許容度IIに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の車線数が二車線の状態である。
許容度IIIに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の交通量がまばらな状態である。
許容度IVに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の巡航速度が60[km/h]の状態である。
許容度Vに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の閉塞度が、駐車車両が少ない(閉塞度が低い)状態である。
具体例Iでは、出力可能速度算出部43が算出した走行速度が、車両3が出力可能な走行速度が通常よりも低下している場合であっても、交通流を低下させる可能性が低いと判断する。そして、ユーザが先行利用車両から乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ必要は無いと判断する(走行継続)。
【0048】
(具体例II)
許容度Iに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の区間長が3[km]であり、通過に5[分]が必要な状態である。
許容度IIに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の車線数が二車線の状態である。
許容度IIIに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の交通量が多い状態である。
許容度IVに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の巡航速度が60[km/h]の状態である。
許容度Vに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の閉塞度が、駐車車両が多い(閉塞度が高い)状態である。
具体例IIでは、出力可能速度算出部43が算出した走行速度が、車両3が出力可能な走行速度が通常よりも低下している場合では、交通流を低下させる可能性が高いと判断する。そして、ユーザが先行利用車両から乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ必要があると判断する(乗り継ぎが必要)。
【0049】
(具体例III)
許容度Iに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の区間長が3[km]であり、通過に5[分]が必要な状態である。
許容度IIに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の車線数が二車線の状態である。
許容度IIIに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の交通量が、渋滞の発生により多い状態である。
許容度IVに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の巡航速度が、渋滞の発生により40[km/h]に低下している状態である。
許容度Vに関する具体的な状態が、走行ルート候補算出部53が算出した走行ルート候補の閉塞度が、駐車車両が多い(閉塞度が高い)状態である。
具体例IIIでは、出力可能速度算出部43が算出した走行速度が、車両3が出力可能な走行速度が通常よりも低下している場合であっても、渋滞により巡航速度が低下しているため、交通流を低下させる可能性が低いと判断する。そして、ユーザが先行利用車両から乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ必要は無いと判断する(走行継続)。
【0050】
乗り継ぎ地設定部58は、乗り継ぎ判断部57が乗り継ぐ必要があると判断すると、許容度算出部54が算出した許容度が現在地から許容度閾値以上となる範囲内で、乗り継ぎ地を設定する。
乗り継ぎ地は、先行利用車両から乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ地点である。
【0051】
配車処理部59は、乗り継ぎ地設定部58が設定した乗り継ぎ地へ、乗り継ぎ車両を配車する。
また、配車処理部59は、乗り継ぎ地設定部58が設定した乗り継ぎ地に応じて、目的地到着許容時間取得部55が取得した目的地到着許容時間までに目的地へ到着することが可能な自動運転車両から、乗り継ぎ車両を選択して配車する。
【0052】
路肩停車処理部60は、出力可能速度算出部43が算出した走行速度では乗り継ぎ地設定部58が乗り継ぎ地を設定することが不可能な場合、現在地から目的地の間に存在する停車可能な路肩に、先行利用車両を停車させる。
なお、現在地から目的地の間に存在する停車可能な路肩は、例えば、地図DB24に格納されている地図情報を用いて取得する。
また、路肩に先行利用車両を停車させる処理は、例えば、先行利用車両へ、現在地から路肩の近くへ走行する走行経路と、路肩の近くから先行利用車両を路肩へ移動させて停車させるための、アクチュエータの制御信号を、運行計画に含んで出力する処理である。
【0053】
(動作)
図3は、車両用経路計画システム1が行う動作を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートは、走行計画作成部52が、運行計画情報を先行利用車両と電子装置へ出力しており、ユーザが乗車した先行利用車両が走行している状態からスタートする。また、図3では、制御装置2と車両3との間で行う処理を、破線の矢印で示す。
【0054】
ステップS1において認識精度算出部42は、車載センサ30の認識精度を診断する。すなわち、ステップS1では、先行利用車両が、車載センサ30の状態を自己診断する。
ステップS2において認識精度算出部42は、車載センサ30の認識精度が低下しているか(例えば、認識精度が「中」又は「低」となっているか)否かを判定する。車載センサ30の認識精度が低下していると判定した場合(ステップS2:Y)、処理はステップS3へ進む。車載センサ30の認識精度が低下していないと判定した場合(ステップS2:N)、処理はステップS4へ進む。
【0055】
ステップS3において出力可能速度算出部43は、先行利用車両が出力可能な走行速度を算出する。
ステップS4において先行利用車両は、通常の走行を継続する。
ステップS5において走行ルート候補算出部53は、ステップS3で算出した走行速度が、速度閾値(例えば、運行計画に応じて先行利用車両が走行する道路の法定速度)未満であるか否かを判定する。算出した走行速度が速度閾値未満であると判定した場合(ステップS5:Y)、処理はステップS15へ進む。算出した走行速度が速度閾値以上であると判定した場合(ステップS5:N)、処理はステップS6へ進む。
【0056】
ステップS6において先行利用車両は、ステップS3で算出した走行速度まで減速する。
ステップS7において先行利用車両は、ステップS3で算出した走行速度による走行を継続する。
ステップS8において先行利用車両は、新たな走行ルート(リルート)の候補となる走行ルート候補(リルート候補)の出力を、制御装置2へリクエストする。
【0057】
ステップS9において制御装置2は、走行ルート候補を算出する処理(リルート処理)を行う。なお、リルート処理については、後述する。
ステップS10において先行利用車両は、ステップS9で算出した走行ルート候補を、新たな運行計画として設定する。
ステップS11において先行利用車両は、ステップS10で設定した運行計画に応じて走行する。
ステップS12において先行利用車両は、ステップS10で設定した運行計画に応じて走行している状態における、車載センサ30の認識精度が低下しているか否かの判定結果と、出力可能な走行速度を、制御装置2へ送信する。
【0058】
ステップS13において制御装置2は、乗り継ぎ車両を配車する処理(配車処理)を行う。なお、配車処理については、後述する。
ステップS14において乗り継ぎ車両は、乗り継ぎ地設定部58が設定した乗り継ぎ地まで走行する走行ルートを含む運行計画の入力を受けて、乗り継ぎ地まで走行する走行ルートを設定する。
【0059】
ステップS15において先行利用車両は、路肩停車処理部60が設定した路肩に停車する。
ステップS16において先行利用車両は、乗り継ぎ車両へ乗り継ぐことを、制御装置2へリクエストする。
【0060】
図4は、リルート処理を示すフローチャートである。
ステップS20において走行ルート候補算出部53は、ステップS3で算出した走行速度と、車両現在地取得部50が取得した現在地に応じて、複数の走行ルート候補を算出する。
ステップS21において走行ルート候補算出部53は、ステップS20で算出した複数の走行ルート候補に対して、ステップS3で算出した走行速度及び法定速度以下で走行した場合に、車両3が目的地に到着すると予測される時刻を算出する。
【0061】
ステップS22において提案走行ルート出力部56は、ステップS20において算出した複数の走行ルート候補のうち、ステップS21で算出した目的地到着許容時間までに目的地へ到着する走行ルート候補を抽出する。
ステップS23において提案走行ルート出力部56は、目的地到着許容時間までに目的地へ到着する走行ルート候補を抽出することが可能であったか否かを判定する。目的地到着許容時間までに目的地へ到着する走行ルート候補を抽出することが可能であると判定した場合(ステップS23:Y)、処理はステップS24へ進む。目的地到着許容時間までに目的地へ到着する走行ルート候補を抽出することが不可能であったと判定した場合(ステップS23:N)、処理はステップS29へ進む。
【0062】
ステップS24において提案走行ルート出力部56は、ステップS23で抽出することが可能であった走行ルート候補に、ステップS3で算出した走行速度が、法定速度以上である走行ルート候補が存在するか否かを判定する。ステップS3で算出した走行速度が法定速度以上である走行ルート候補が存在すると判定した場合(ステップS24:Y)、処理はステップS25へ進む。ステップS3で算出した走行速度が法定速度以上である走行ルート候補が存在しないと判定した場合(ステップS24:N)、処理はステップS26へ進む。
ステップS25において提案走行ルート出力部56は、ステップS3で算出した走行速度が法定速度以上である走行ルート候補を、提案走行ルートとして設定する。
【0063】
ステップS26において提案走行ルート出力部56は、ステップS3で算出した走行速度が法定速度を超えていない区間における、ユーザが乗車している車両3が交通流に及ぼす影響度合いを評価する。なお、ユーザが乗車している車両3が交通流に及ぼす影響度合いは、ステップS3で算出した走行速度が法定速度を超えていない走行ルート候補に対し、許容度算出部54が算出した許容度を用いて評価する。
ステップS27において提案走行ルート出力部56は、ステップS3で算出した走行速度が法定速度を超えていない走行ルート候補に対して、許容度算出部54が算出した許容度が許容度閾値以上であるか否かを判定する。これにより、ステップS3で算出した走行速度が法定速度を超えていない走行ルート候補に、交通流に及ぼす影響度合いが小さい走行ルート候補(小影響ルート)が存在するか否かを判定する。なお、小影響ルートは、許容度算出部54が算出した許容度が許容度閾値以上である走行ルート候補である。ステップS3で算出した走行速度が法定速度を超えていない走行ルート候補に小影響ルートが存在すると判定した場合(ステップS27:Y)、処理はステップS28へ進む。ステップS3で算出した走行速度が法定速度を超えていない走行ルート候補に小影響ルートが存在しないと判定した場合(ステップS27:N)、処理はステップS29へ進む。
ステップS28において提案走行ルート出力部56は、ステップS27で存在すると判定した小影響ルートを、提案走行ルートとして設定する。
【0064】
ステップS29において乗り継ぎ判断部57は、ユーザが先行利用車両から乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ必要があると判断する。さらに、ステップS29において乗り継ぎ地設定部58は、許容度算出部54が算出した許容度が現在地から許容度閾値以上となる範囲内で、乗り継ぎ地を設定する。
ステップS30において走行ルート候補算出部53は、乗り継ぎ走行ルート候補を、提案走行ルートとして設定する。
ステップS31において提案走行ルート出力部56は、ステップS25で設定した提案走行ルート、ステップS28で設定した提案走行ルート、ステップS30で設定した提案走行ルートのうちいずれかを、提案走行ルート(運行計画)として出力する。
【0065】
図5は、配車処理を示すフローチャートである。
ステップS40において配車処理部59は、乗り継ぎ地が設定済みであるか否かを判定する。乗り継ぎ地が設定済みであると判定した場合(ステップS40:Y)、処理はステップS41へ進む。乗り継ぎ地が設定済みではないと判定した場合(ステップS40:N)、配車処理を終了して、車両用経路計画システム1が行う動作を終了する。
【0066】
ステップS41において配車処理部59は、設定済みの乗り継ぎ地に応じて、目的地到着許容時間取得部55が取得した目的地到着許容時間までに目的地へ到着することが可能な自動運転車両から、乗り継ぎ車両を選択する。
ステップS42において配車処理部59は、ステップS41で選択した乗り継ぎ車両を配車する。
【0067】
以上説明したように、本発明では、車載センサ30の認識精度が低下していない場合には、先行利用車両が通常の走行(自動運転による走行)を継続し、運行計画に含まれる走行経路に沿って走行する。一方、車載センサ30の認識精度が低下している場合には、先行利用車両が出力可能な走行速度と、許容度と、許容度閾値とに応じて、提案走行ルートを出力する処理や、先行利用車両から乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ処理や、乗り継ぎ車両を配車する処理等を行う。すなわち、例えば、運行計画に含まれる走行経路の法定速度が60[km/h]であり、車載センサ30の認識精度が低下して出力可能な走行速度が40[km/h]まで低下している場合には、先行利用車両が交通流に及ぼす影響度合いに応じた処理を行う。
【0068】
(実施形態の効果)
(1)車両用経路計画システム1を構成する車両用経路計画装置が備えるコンピュータが、先行利用車両の周辺環境を取得する処理と、取得した周辺環境に応じて先行利用車両が出力可能な走行速度を算出する処理を実行する。これに加え、先行利用車両の現在地を取得する処理と、算出した走行速度と取得した現在地に応じて、先行利用車両の現在地から目的地までの走行ルートの候補となる走行ルート候補を算出する処理を実行する。さらに、算出した走行ルート候補の交通への許容度を算出する処理と、算出した走行ルート候補のうち算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する処理を実行する。
これにより、ユーザが乗車する車両の走行速度を、車両の周辺環境に応じて出力可能な走行速度に制限するとともに、出力可能な走行速度に適した交通流の走行ルート候補を算出することが可能となる。
このため、車両の周辺環境によって法定速度よりも低い走行速度に制限して走行する場合であっても、交通流を低下させる可能性を低減させることが可能となる。
【0069】
(2)許容度が、算出した走行ルート候補の区間長、算出した走行ルート候補の交通量、算出した走行ルート候補の車線数、算出した走行ルート候補の巡航速度、算出した走行ルート候補の閉塞度、のそれぞれに対する許容度のうち少なくとも一つを含む。
これにより、走行ルート候補の構造や交通状況に応じて、提案走行ルートを設定することが可能となる。
【0070】
(3)コンピュータが、区間長に対する許容度を、算出した走行ルート候補の区間長が短いほど大きく算出する。
これにより、走行ルート候補の区間長が短い構造、すなわち、出力可能な走行速度が低下した車両が交通流に及ぼす影響が高い構造を反映させて、許容度を算出することが可能となる。
【0071】
(4)コンピュータが、交通量に対する許容度を、算出した走行ルート候補における単位時間当たりの走行台数が少ないほど大きく算出する。
これにより、走行ルート候補の単位時間当たりの走行台数が少ない状況、すなわち、出力可能な走行速度が低下した車両が交通流に及ぼす影響が高い状況を反映させて、許容度を算出することが可能となる。
【0072】
(5)コンピュータが、車線数に対する許容度を、算出した走行ルート候補の車線数が多いほど大きく算出する。
これにより、走行ルート候補の車線数が多い構造、すなわち、出力可能な走行速度が低下した車両が交通流に及ぼす影響が高い構造を反映させて、許容度を算出することが可能となる。
【0073】
(6)コンピュータが、巡航速度に対する許容度を、算出した走行ルート候補における単位時間当たりの平均走行速度が低いほど大きく算出する。
これにより、走行ルート候補の単位時間当たりの平均走行速度が低い状況、すなわち、出力可能な走行速度が低下した車両が交通流に及ぼす影響が高い状況を反映させて、許容度を算出することが可能となる。
【0074】
(7)コンピュータが、閉塞度に対する許容度を、算出した走行ルート候補の区間における閉塞状態が小さいほど大きく算出する。
これにより、走行ルート候補の区間における閉塞状態が小さい状況、すなわち、出力可能な走行速度が低下した車両が交通流に及ぼす影響が高い状況を反映させて、許容度を算出することが可能となる。
【0075】
(8)コンピュータが、出力可能な走行速度を、先行利用車両の周辺環境を取得する車載センサによる、先行利用車両の前方環境の認識精度に応じて算出する。
これにより、自動運転車両の走行において重要なパラメータである、先行車両との距離等を検出する能力に応じて、車両が出力可能な走行速度を算出することが可能となる。
【0076】
(9)コンピュータが、認識精度を、車載センサ30の故障及び出力低下のうち少なくとも一方に応じて算出する。
これにより、自動運転車両の走行において重要な要素である、車載センサ30の性能の変化(低下)に応じて、車両が出力可能な走行速度を算出することが可能となる。
【0077】
(10)コンピュータが、認識精度を、日照状況、天候及び時間帯のうち少なくとも一つを含む環境要因に応じて算出する。
これにより、自動運転車両の走行において重要な要素である、車載センサ30が各種のパラメータを検出する環境の変化に応じて、車両が出力可能な走行速度を算出することが可能となる。
【0078】
(11)コンピュータが、算出した走行ルート候補の許容度が許容度閾値未満である場合、現在地から許容度が許容度閾値以上となる範囲内で、先行利用車両から他の自動運転車両である乗り継ぎ車両へ乗り継ぐ地点である乗り継ぎ地を設定する処理を実行する。
これにより、先行利用車両への乗車を継続した場合では、交通流を低下させる可能性が増加すると予測される状況において、目的地へ到着するために要する時間を短縮することが可能となる。
【0079】
(12)コンピュータが、乗り継ぎ車両を配車する。
これにより、先行利用車両から乗り継ぎ車両への乗り継ぎに要する時間を短縮することが可能となるとともに、先行利用車両から乗り継ぎ車両への乗り継ぎに要する手間を低減させることが可能となる。
【0080】
(13)コンピュータが、先行利用車両に乗車しているユーザが目的地へ到着するまでに経過することを許容する時間である目的地到着許容時間を取得する処理を実行する。これに加え、乗り継ぎ車両を、乗り継ぎ地に応じて、目的地到着許容時間までに目的地へ到着することが可能な自動運転車両から選択する。
これにより、先行利用車両から乗り継ぎ車両への乗り継ぎを行った後に、目的地へ到着するために要する時間が増加することを回避することが可能となる。
【0081】
(14)コンピュータが、出力可能な走行速度では乗り継ぎ地を設定することが不可能な場合、現在地から目的地の間に存在する停車可能な路肩に先行利用車両を停車させる。
これにより、先行利用車両への乗車を継続した場合では、交通流を低下させる可能性が増加すると予測される状況において、先行利用車両が交通流を低下させる可能性を低減させることが可能となる。
【0082】
(15)コンピュータが、先行利用車両に乗車しているユーザが目的地へ到着するまでに経過することを許容する時間である目的地到着許容時間を取得する処理を実行する。これに加え、目的地到着許容時間までに目的地へ到着する走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する。
これにより、出力可能な走行速度が低下した場合であっても、目的地到着許容時間までに目的地へ到着することが不可能な状況を回避することが可能となる。
【0083】
(16)コンピュータが、先行利用車両にユーザが乗車していないときは、先行利用車両にユーザが乗車しているときよりも出力可能な走行速度を低い速度に設定する。
これにより、目的地へ到着する要求が無い状態では、車両が受ける負荷を低減させることが可能となる。
【0084】
(17)コンピュータが、算出した走行ルート候補のうち、算出した許容度が許容度閾値以上である走行ルート候補を選択して、提案走行ルートとして出力する。
これにより、ユーザが乗車する車両が出力可能な走行速度に適した交通流の走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力することが可能となる。
【0085】
(18)車両用経路計画方法では、自動運転車両である先行利用車両の周辺環境を取得し、取得した周辺環境に応じて、先行利用車両が出力可能な走行速度を算出し、取得した周辺環境と、算出した走行速度を制御装置2へ送信する。そして、制御装置2が、先行利用車両の現在地を取得し、算出した走行速度と取得した現在地に応じて、先行利用車両の現在地から目的地までの走行ルートの候補となる走行ルート候補を算出する。これに加え、算出した走行ルート候補の交通への許容度を算出し、算出した走行ルート候補のうち算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する。
これにより、ユーザが乗車する車両の走行速度を、車両の周辺環境に応じて出力可能な走行速度に制限するとともに、出力可能な走行速度に適した交通流の走行ルート候補を算出することが可能となる。
このため、車両の周辺環境によって法定速度よりも低い走行速度に制限して走行する場合であっても、交通流を低下させる可能性を低減させることが可能となる。
【0086】
(19)車両用経路計画システム1が、自動運転車両である先行利用車両が取得した先行利用車両の周辺環境と、取得した周辺環境に応じて先行利用車両が算出した先行利用車両が出力可能な走行速度とを受信する制御装置2を備える。さらに、制御装置2は、先行利用車両の現在地を取得し、算出した走行速度と、取得した現在地と、に応じて、先行利用車両の現在地から目的地までの走行ルートの候補となる走行ルート候補を算出する。これに加え、算出した走行ルート候補の交通への許容度を算出し、算出した走行ルート候補のうち算出した許容度に応じて選択した走行ルート候補を、提案走行ルートとして出力する。
これにより、ユーザが乗車する車両の走行速度を、車両の周辺環境に応じて出力可能な走行速度に制限するとともに、出力可能な走行速度に適した交通流の走行ルート候補を算出することが可能となる。
このため、車両の周辺環境によって法定速度よりも低い走行速度に制限して走行する場合であっても、交通流を低下させる可能性を低減させることが可能となる。
【0087】
(実施形態の変形例)
(1)実施形態では、車両3が出力可能な走行速度を、車載センサ30による車両3の前方環境の認識精度に応じて算出したが、これに限定するものではない。すなわち、車両3が出力可能な走行速度を、例えば、車載センサ30による車両3の周辺環境の認識精度や、路車間通信や車々間通信等、通信能力の精度に応じて算出してもよい。
【0088】
(2)実施形態では、算出した走行ルート候補のうち、算出した許容度が許容度閾値以上である走行ルート候補を選択して、提案走行ルートとして出力する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、算出した走行ルート候補のうち算出した許容度が最大である走行ルート候補を選択して、提案走行ルートとして出力する構成としてもよい。この場合、走行ルート候補を選択する処理を簡素化することが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
1…車両用経路計画システム、2…制御装置、3…車両、20、36…プロセッサ、21、37…記憶装置、22、33…通信装置、23…登録者データベース、24、32…地図データベース、25…予約データベース、30…車載センサ、31…測位装置、34…コントローラ、35…アクチュエータ、40…周辺環境取得部、41…環境要因取得部、42…認識精度算出部、43…出力可能速度算出部、50…車両現在地取得部、51…リクエストデータ取得部、52…走行計画作成部、53…走行ルート候補算出部、54…許容度算出部、55…目的地到着許容時間取得部、56…提案走行ルート出力部、57…乗り継ぎ判断部、58…乗り継ぎ地設定部、59…配車処理部、60…路肩停車処理部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5