(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156778
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】光変調器、位相シフタ及び光通信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20231018BHJP
H04B 10/556 20130101ALI20231018BHJP
【FI】
G02F1/01 C
H04B10/556
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066337
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA28
2K102BA01
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BC10
2K102BD01
2K102CA10
2K102DA04
2K102DB04
2K102DB08
2K102EA05
2K102EA17
2K102EB11
2K102EB20
5K102AA51
5K102AD15
5K102AH24
5K102PH02
5K102PH22
5K102PH49
5K102PH50
5K102RB01
(57)【要約】
【課題】位相シフト量を確保しながら、出力光の微調整を実現できる光変調器等を提供することを目的とする。
【解決手段】光変調器は、第1の位相シフタと、第2の位相シフタとを有する。第1の位相シフタは、第1の信号光が通過する第1の光導波路と、駆動電圧に応じた電力を第1の光導波路に作用させる第1の直流電極と、を有する。第1の位相シフタは、第1の直流電極への駆動電圧に応じて第1の光導波路を通過する第1の信号光の位相をシフトする。第2の位相シフタは、第2の信号光が通過する第2の光導波路と、駆動電圧に応じた電力を第2の光導波路に作用させる第2の直流電極と、を有する。第2の位相シフタは、第2の直流電極への駆動電圧に応じて第2の光導波路を通過する第2の信号光の位相をシフトする。第2の位相シフタは、第1の位相シフタに比較して、所定の駆動電圧量に応じた位相シフト量が小さくなる構成にした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の信号光が通過する第1の光導波路と、前記第1の光導波路に並走し、駆動電圧に応じた電力を前記第1の光導波路に作用させる第1の直流電極と、を有し、前記第1の直流電極への駆動電圧に応じて前記第1の光導波路を通過する前記第1の信号光の位相をシフトする第1の位相シフタと、
第2の信号光が通過する第2の光導波路と、前記第2の光導波路に並走し、駆動電圧に応じた電力を前記第2の光導波路に作用させる第2の直流電極と、を有し、前記第2の直流電極への駆動電圧に応じて前記第2の光導波路を通過する前記第2の信号光の位相をシフトする第2の位相シフタと、を有し、
前記第2の位相シフタは、
前記第1の位相シフタに比較して、所定の駆動電圧量に応じた位相シフト量が小さくなる構成にしたことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記第2の位相シフタ内の前記第2の直流電極の電極幅が、前記第1の位相シフタ内の前記第1の直流電極の電極幅に比較して狭くなるように前記第1の直流電極及び前記第2の直流電極を構成したことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記第2の位相シフタ内の前記第2の光導波路の導波路長が、前記第1の位相シフタ内の前記第1の光導波路の導波路長に比較して短くなるように前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路を構成したことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項4】
前記第1の位相シフタ内の前記第1の光導波路及び前記第2の位相シフタ内の前記第2の光導波路の折り返し回数が異なり、かつ、前記第1の光導波路の導波路長が前記第2の光導波路の導波路長に比較して長くなるように前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路を構成したことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
前記第1の位相シフタ内の前記第1の光導波路の導波路長と前記第2の位相シフタ内の前記第2の光導波路の導波路長を同一にし、かつ、前記第2の位相シフタ内の前記第2の光導波路の前記第2の直流電極の電力が作用する作用長が、前記第1の位相シフタ内の前記第1の光導波路の前記第1の直流電極の電力が作用する作用長に比較して短くなるように前記第2の直流電極を配置したことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項6】
前記第1の位相シフタ内の前記第1の光導波路は直線導波路、前記第2の位相シフタ内の前記第2の光導波路は曲げ導波路とし、かつ、前記第2の位相シフタ内の前記第2の光導波路の前記第2の直流電極の電力が作用する作用長が、前記第1の位相シフタ内の前記第1の光導波路の前記第1の直流電極の電力が作用する作用長に比較して短くなるように前記第2の光導波路の曲げ導波路を配置したことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項7】
前記第1の位相シフタ内の前記第1の光導波路の導波路長と前記第2の位相シフタ内の前記第2の光導波路の導波路長を同一にし、かつ、前記第2の位相シフタ内の前記第2の直流電極の電極長が、前記第1の位相シフタ内の前記第1の直流電極の電極長に比較して長くなるように、前記第1の直流電極及び前記第2の直流電極を構成したことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項8】
信号光が通過する光導波路と、
前記光導波路に並走し、駆動電圧に応じた電力を前記光導波路に作用させる第1の直流電極を備え、前記第1の直流電極への駆動電圧に応じて前記光導波路を通過する前記信号光の位相をシフトする第1の位相シフタと、
前記光導波路に並走し、駆動電圧に応じた電力を前記光導波路に作用させる第2の直流電極を備え、前記第1の位相シフタと直列に接続すると共に、前記第2の直流電極への駆動電圧に応じて前記光導波路を通過する前記信号光の位相をシフトする第2の位相シフタと、を有し、
前記第2の位相シフタは、
前記第1の位相シフタに比較して、所定の駆動電圧量に応じた位相シフト量が小さくなる構成にしたことを特徴とする位相シフタ。
【請求項9】
前記第2の位相シフタ内の前記第2の直流電極の電極長が、前記第1の位相シフタ内の前記第1の直流電極の電極長に比較して短くなるように前記第1の直流電極及び前記第2の直流電極を構成したことを特徴とする請求項8に記載の位相シフタ。
【請求項10】
前記第2の位相シフタ内の前記第2の直流電極の電極幅が、前記第1の位相シフタ内の前記第1の直流電極の電極幅に比較して狭くなるように前記第1の直流電極及び前記第2の直流電極を構成したことを特徴とする請求項8に記載の位相シフタ。
【請求項11】
電気信号に対する信号処理を実行するプロセッサと、
信号光を発生させる光源と、
前記プロセッサから出力される電気信号を用いて、前記光源から発生する信号光を変調する光変調器と、を有する光通信装置であって、
前記光変調器は、
前記光源からの前記信号光の内、第1の信号光が通過する第1の光導波路と、前記第1の光導波路に並走し、駆動電圧に応じた電力を前記第1の光導波路に作用させる第1の直流電極と、を有し、前記第1の直流電極への駆動電圧に応じて前記第1の光導波路を通過する前記第1の信号光の位相をシフトする第1の位相シフタと、
前記光源からの前記信号光の内、第2の信号光が通過する第2の光導波路と、前記第2の光導波路に並走し、駆動電圧に応じた電力を前記第2の光導波路に作用させる第2の直流電極と、を有し、前記第2の直流電極への駆動電圧に応じて前記第2の光導波路を通過する前記第2の信号光の位相をシフトする第2の位相シフタと、
前記第1の位相シフタにて位相シフト後の前記第1の信号光と前記第2の位相シフタにて位相シフト後の前記第2の信号光とを合波して変調後の信号光を得る合波部と、
を有し、
前記第2の位相シフタは、
前記第1の位相シフタに比較して、所定の駆動電圧量に応じた位相シフト量が小さくなる構成にしたことを特徴とする光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器、位相シフタ及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光変調器は、4チャネルのマッハツェンダ変調器が集積されている。各マッハツェンダ干渉計(Mach-Zehnder interferometer:MZI)には、RF位相シフタ(Radio Frequency Phase Shifter:RFPS)及びDC位相シフタ(Direct Current Phase Shifter:DCPS)がある。RFPSには、例えば、数10GHzの帯域をもつ高速信号を入力し、高速変調を行うMZIである。DCPSは、例えば、ヒータ電極で構成され、ヒータ電極に電流を流して光導波路を加熱することで光導波路の屈折率を変化させ、光の位相を調整するMZIである。光変調器は、RFPSに入力する電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するように、DCPSのヒータ電極に流す電流を調整する。
【0003】
光変調器は、信号光の位相を調整するDC側MZMを有する。
図12は、DC側MZM200の構成の一例を示す平面模式図である。
図12に示すDC側MZM200は、DCPS210と、合波部220と、クラッド層230とを有する。DCPS210は、第1の信号光の位相をシフトする第1のDCPS210Aと、第2の信号光の位相をシフトする第2のDCPS210Bとを有する。第1の信号光及び第2の信号光は、例えば、入力光を分岐した信号光である。
【0004】
第1のDCPS210Aは、Si基板上に備えた、第1の信号光が通過する第1の光導波路211Aと、第1の光導波路211Aと並走し、駆動電圧に応じた電力で第1の光導波路211Aを加熱する第1のDC電極212Aとを有する。第1のDC電極212Aは、例えば、Ti等の抵抗のある金属材料で構成するヒータ電極である。第1のDCPS210Aは、駆動電圧に応じた電力で第1の光導波路211Aを加熱して、Siの熱光学効果で第1の光導波路211Aの光屈折率を変化させる。第1のDCPS210Aは、第1の光導波路211Aの光屈折率を変化させることで、第1の光導波路211Aを通過する第1の信号光の位相をシフトし、位相シフト後の第1の信号光を合波部220に出力する。
【0005】
第2のDCPS210Bは、Si基板上に備えた、第2の信号光が通過する第2の光導波路211Bと、第2の光導波路211Bと並走し、駆動電圧に応じた電力で第2の光導波路211Bを加熱する第2のDC電極212Bとを有する。第2のDC電極212Bは、例えば、Ti等の抵抗のある金属材料で構成するヒータ電極である。第2のDCPS210Bは、駆動電圧に応じた電力で第2の光導波路211Bを加熱して、Siの熱光学効果で第2の光導波路211Bの光屈折率を変化させる。第2のDCPS210Bは、第2の光導波路211Bの光屈折率を変化させることで、第2の光導波路211Bを通過する第2の信号光の位相をシフトし、位相シフト後の第2の信号光を合波部220に出力する。
【0006】
合波部220は、位相シフト後の第1の信号光及び位相シフト後の第2の信号光を合波する。クラッド層230は、第1のDCPS210A、第2のDCPS210B、合波部220を被覆する、例えば、SiO2の層である。つまり、DC側MZM200は、第1のDCPS210Aで位相シフト後の第1の信号光と、第2のDCPS210Bで位相シフト後の第2の信号光とを合波して位相調整後の信号光を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-133664号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0099529号明細書
【特許文献3】特開2019-191252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、DCPSに印加する駆動電圧の最大電圧は電源により制限される、その最大電圧以下によるRFPS等の部品バラツキで発生する位相の不安定性を長期にわたって補償する必要がある。
【0009】
図13Aは、従来のDC側MZM200内のDCPS210における駆動電圧と出力光との関係の一例を示す説明図である。DCPS210に印加する最大電圧が5V、位相の不安定性を補償するのに必要な位相シフト量を4πとした場合、ヒータ電極に印加する駆動電圧と出力光(透過率)との関係は
図13Aに示すようになる。
【0010】
図13Bは、従来のDC側MZM200内のDCPS210における駆動電圧に対する勾配(変化量)の一例を示す説明図である。ヒータ電極に印加する駆動電圧と出力光の変化量の関係は、
図13Bに示すように、駆動電圧に対する出力光の勾配(変化量)が大きくなる。とりわけ、出力光を小さくしようとする場合には、駆動電圧に対する出力光の勾配(変化量)が大きくなる。例えば、出力光を-15dBに調整しようとすると、そのときの勾配(変化量)は55dB/Vと大きくなる。従って、高い精度で駆動電圧を制御する必要があるが、高精度の駆動制御が難しい。その結果、DCPSにおいて位相シフト量を確保しながら、出力光を微調整するのは困難である。
【0011】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、位相シフト量を確保しながら、出力光の微調整を実現できる光変調器等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願が開示する光変調器は、1つの態様において、第1の位相シフタと、第2の位相シフタとを有する。第1の位相シフタは、第1の信号光が通過する第1の光導波路と、第1の光導波路に並走し、駆動電圧に応じた電力を第1の光導波路に作用させる第1の直流電極と、を有する。第1の位相シフタは、第1の直流電極への駆動電圧に応じて第1の光導波路を通過する第1の信号光の位相をシフトする。第2の位相シフタは、第2の信号光が通過する第2の光導波路と、第2の光導波路に並走し、駆動電圧に応じた電力を第2の光導波路に作用させる第2の直流電極と、を有する。第2の位相シフタは、第2の直流電極への駆動電圧に応じて第2の光導波路を通過する第2の信号光の位相をシフトする。第2の位相シフタは、第1の位相シフタに比較して、所定の駆動電圧量に応じた位相シフト量が小さくなる構成にした。
【発明の効果】
【0013】
本願が開示する光変調器等の1つの態様によれば、位相シフト量を確保しながら、出力光の微調整を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施例の光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、光変調器の構成の一例を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1のDC側子MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図4A】
図4Aは、DC側子MZM内の第1のDCPS及び第2のDCPSにおける駆動電圧と出力光との関係の一例を示す説明図である。
【
図4B】
図4Bは、DC側子MZM内の第1のDCPS及び第2のDCPSにおける駆動電圧に対する勾配(変化量)の関係の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施例2のDC側子MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図6】
図6は、実施例3のDC側子MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図7】
図7は、実施例4のDC側子MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図8】
図8は、実施例5のDC側子MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図9】
図9は、実施例6のDC側子MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図10】
図10は、実施例7のDC側子MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図11】
図11は、実施例8のDC側子MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図12】
図12は、従来のDC側MZMの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図13A】
図13Aは、従来のDC側MZM内のDCPSにおける駆動電圧と出力光との関係の一例を示す説明図である。
【
図13B】
図13Bは、従来のDC側MZM内のDCPSにおける駆動電圧に対する勾配(変化量)の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願が開示する光通信装置等の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、本実施例の光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す光通信装置1は、出力側の光ファイバ2A(2)及び入力側の光ファイバ2B(2)と接続する、例えば、光コヒーレント送受信機である。光通信装置1は、DSP(Digital Signal Processor)3と、光源4と、光変調器5と、光受信器6とを有する。DSP3は、デジタル信号処理を実行する電気部品である。DSP3は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、実行後の送信データに相当するデータ信号を光変調器5に出力する。また、DSP3は、光受信器6から得たデータ信号に相当する受信データに対して復号化等の処理を実行する。
【0017】
光源4は、例えば、波長可変のレーザダイオード等を備え、所定の波長の光を発生させて光変調器5及び光受信器6へ供給する、例えば、ITLA(Integrated Tunable Laser Assembly)である。
【0018】
図2は、光変調器5の構成の一例を示す平面模式図である。
図2に示す光変調器5は、光導波路11と、光入力部12と、第1の分岐部13と、X偏波MZM14A(14)と、Y偏波MZM14B(14)とを有する。光変調器5は、偏波回転部(PR:Polarization Rotator)15と、偏波ビームコンバイナ(PBC:Polarization Beam Combiner)16と、光出力部17とを有する。
【0019】
光導波路11は、光導波路11Aと、光導波路11Bと、光導波路11Cとを有するSi導波路である。光導波路11Aは、光入力部12と第1の分岐部13との間を接続する光導波路である。光導波路11Bは、X偏波MZM14A内の第2の合波部27A(27)と光出力部17との間、Y偏波MZM14B内の第2の合波部27B(27)と光出力部17との間を接続する光導波路である。光導波路11Cは、第1の分岐部13と第2の合波部27との間を接続する光導波路である。
【0020】
光入力部12は、光源4からのレーザ光を入力する。第1の分岐部13は、光入力部12からのレーザ光を光分岐し、光分岐後のレーザ光をX偏波MZM14A及びY偏波MZM14Bに出力する。
【0021】
X偏波MZM14Aは、第1の分岐部13で分岐後のレーザ光をX偏波のデータ信号で直交位相変調し、X偏波のIQ成分の信号光をPBC16に出力する。Y偏波MZM14Bは、第1の分岐部13で分岐後のレーザ光をY偏波のデータ信号で直交位相変調し、Y偏波のIQ成分の信号光をPR15に出力する。PR15は、Y偏波MZM14BからのY偏波のIQ成分の信号光を偏波回転してX偏波のIQ成分の信号光に変換し、変換後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC16に出力する。更に、PBC16は、X偏波MZM14AからのX偏波のIQ成分の信号光と、PR15からの変換後のX偏波のIQ成分の信号光とを合波して偏波多重信号光を光出力部17に出力する。
【0022】
X偏波MZM14Aは、第2の分岐部21A(21)と、2個の第3の分岐部22(22A)と、2個のRF側MZM23(23A,23B)と、2個のDC側子MZM24(24A,24B)と、2個の第1の合波部26(26A,26B)とを有する。更に、X偏波MZM14Aは、DC側親MZM25(25A)と、第2の合波部27(27A)とを有する。
【0023】
第3の分岐部22Aは、第2の分岐部21Aからのレーザ光をRF側MZM23A内の各RFPS41に分岐出力する。RF側MZM23Aは、2個のRF電極28と、2個のRFPS41とを有する。RF側MZM23A内の各RFPS41は、RF電極28からの高速信号に応じてレーザ光を高速変調し、高速変調後のレーザ光をDC側子MZM24A内の各子DCPS42に出力する。
【0024】
DC側子MZM24Aは、2個のDC電極30A、30B(30)と、2個の子DCPS42とを有する。DC電極30は、例えば、Ti等の抵抗のある金属材料で構成する直流のヒータ電極である。DC側子MZM24A内の各子DCPS42は、高速変調後のレーザ光をDC電極30からのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のI成分の信号光を第1の合波部26Aに出力する。第1の合波部26Aは、各子DCPS42からのI成分の信号光を合波し、合波後のI成分の信号光をDC側親MZM25A内の一方の親DCPS43に出力する。
【0025】
DC側子MZM24Bは、2個のDC電極30A、30B(30)と、2個の子DCPS42とを有する。DC側子MZM24B内の各子DCPS42は、高速変調後のレーザ光をDC電極30からのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のQ成分の信号光を第1の合波部26Bに出力する。第1の合波部26Bは、各子DCPS42からのQ成分の信号光を合波し、合波後のQ成分の信号光をDC側親MZM25A内の他方の親DCPS43に出力する。
【0026】
DC側親MZM25Aは、2個のDC電極30C(30)と、2個の親DCPS43とを有する。DC側親MZM25A内の一方の親DCPS43は、DC電極30Cからの駆動電圧信号に応じて位相変調後のI成分の信号光を直交変調し、直交変調後のX偏波のI成分の信号光を第2の合波部27Aに出力する。DC側親MZM25A内の他方の親DCPS43は、DC電極30Cからの駆動電圧信号に応じて位相変調後のQ成分の信号光を直交変調し、直交変調後のX偏波のQ成分の信号光を第2の合波部27Aに出力する。
【0027】
第2の合波部27Aは、DC側親MZM25A内の一方の親DCPS43からのX偏波のI成分の信号光と、一方のDC側親MZM25A内の他方の親DCPS43からのX偏波のQ成分の信号光とを合波する。そして、第2の合波部27Aは、合波後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC16に出力する。
【0028】
Y偏波MZM14Bは、第2の分岐部21B(21)と、2個の第3の分岐部22B(22)と、2個のRF側MZM23(23C,23D)と、2個のDC側子MZM24(24C,24D)とを有する。更に、Y偏波MZM14Bは、2個の第1の合波部26(26C,26D)と、DC側親MZM25(25B)と、第2の合波部27(27B)と、調整部32とを有する。
【0029】
第3の分岐部22Bは、第2の分岐部21Bからのレーザ光をRF側MZM23C内の各RFPS41に分岐出力する。RF側MZM23Cは、2個のRF電極28と、2個のRFPS41とを有する。RF側MZM23C内の各RFPS41は、RF電極28からの高速信号に応じてレーザ光を高速変調し、高速変調後のレーザ光をDC側子MZM24C内の各子DCPS42に出力する。
【0030】
DC側子MZM24Cは、2個のDC電極30A、30B(30)と、2個の子DCPS42とを有する。DC側子MZM24C内の各子DCPS42は、高速変調後のレーザ光をDC電極30からのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のI成分の信号光を第1の合波部26Cに出力する。第1の合波部26Cは、各子DCPS42からのI成分の信号光を合波し、合波後のI成分の信号光をDC側親MZM25B内の一方の親DCPS43に出力する。
【0031】
DC側子MZM24Dは、2個のDC電極30A、30B(30)と、2個の子DCPS42とを有する。DC側子MZM24D内の各子DCPS42は、高速変調後のレーザ光をDC電極30からのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のQ成分の信号光を第1の合波部26Dに出力する。第1の合波部26Dは、各子DCPS42からのQ成分の信号光を合波し、合波後のQ成分の信号光をDC側親MZM25B内の他方の親DCPS43に出力する。
【0032】
DC側親MZM25Bは、2個のDC電極30C(30)と、2個の親DCPS43とを有する。DC側親MZM25B内の一方の親DCPS43は、DC電極30Cからの駆動電圧信号に応じて位相変調後のI成分の信号光を直交変調し、直交変調後のY偏波のI成分の信号光を第2の合波部27Bに出力する。DC側親MZM25B内の他方の親DCPS43は、DC電極30Cからの駆動電圧信号に応じて位相変調後のQ成分の信号光を直交変調し、直交変調後のY偏波のQ成分の信号光を第2の合波部27Bに出力する。
【0033】
第2の合波部27Bは、DC側親MZM25B内の一方の親DCPS43からのY偏波のI成分の信号光と、一方のDC側親MZM25B内の他方の親DCPS43からのY偏波のQ成分の信号光とを合波する。そして、第2の合波部27Bは、合波後のY偏波のIQ成分の信号光をPR15に出力する。PR15は、第2の合波部27BからのY偏波のIQ成分の信号光を偏波回転し、偏波回転後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC16に出力する。PBC16は、第2の合波部27AからのX偏波のIQ成分の信号光と、PR15からのX偏波のIQ成分の信号光とを偏波多重し、偏波多重信号を光出力部17から出力する。
【0034】
図3は、実施例1のDC側子MZM24Aの構成の一例を示す平面模式図である。尚、説明の便宜上、DC側子MZM24Aについて説明するが、DC側子MZM24B、24C及び24DもDC側子MZM24Aと同一の構成であるため、同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
図3に示すDC側子MZM24Aは、第1の信号光の位相をシフトする子DCPS42である第1のDCPS42Aと、第2の信号光の位相をシフトする子DCPS42である第2のDCPS42Bと、第1の合波部26Aと、クラッド層51とを有する。
【0035】
第1のDCPS42Aは、第1の信号光が通過する第1の光導波路11C1と、第1の光導波路11C1と並走し、駆動電圧に応じた電力で第1の光導波路11C1を加熱する第1のDC電極30Aとを有する。第1のDCPS42Aは、駆動電圧に応じた電力で第1の光導波路11C1を加熱して、Siの熱光学効果により、第1の光導波路11C1の光屈折率を変化させる。第1のDCPS42Aは、第1の光導波路11C1の光屈折率を変化させることで、第1の光導波路11C1を通過する第1の信号光の位相をシフトし、位相シフト後の第1の信号光を第1の合波部26Aに出力する。
【0036】
第2のDCPS42Bは、第2の信号光が通過する第2の光導波路11C2と、第2の光導波路11C2と並走し、駆動電圧に応じた電力で第2の光導波路11C2を加熱する第2のDC電極30Bとを有する。第2のDCPS42Bは、駆動電圧に応じた電力で第2の光導波路11C2を加熱して、Siの熱光学効果により、第2の光導波路11C2の光屈折率を変化させる。第2のDCPS42Bは、2の光導波路11C2の光屈折率を変化させることで、第2の光導波路11C2を通過する第2の信号光の位相をシフトし、位相シフト後の第2の信号光を第1の合波部26Aに出力する。
【0037】
第1の合波部26Aは、位相シフト後の第1の信号光及び位相シフト後の第2の信号光を合波する。クラッド層51は、第1のDCPS42A、第2のDCPS42B、第1の合波部26Aを被覆する、例えば、SiO2の層である。
【0038】
第2のDCPS42B内の第2のDC電極30Bの電極幅W2は、第1のDCPS42A内の第1のDC電極30Aの電極幅W1に比較して狭くしている。その結果、第2のDC電極30Bは、第1のDC電極30Aに比較して電気抵抗が高くなる。
【0039】
第1のDC電極30Aの電極幅W1を第2のDC電極30Bの電極幅W2に比較して広くしている。その結果、第1のDC電極30Aは、第2のDC電極30Bに比較して流れる電流が大きく、第1の光導波路11C1の方が加熱されるため、第1のDCPS42Aの位相シフト量が大きくなる。これに対して、第2のDC電極30Bは、第1のDC電極30Aに比較して流れる電流が小さく、第2の光導波路11C2の方が加熱されないため、第2のDCPS42Bの位相シフト量が小さくなる。
【0040】
図4Aは、DC側子MZM24A内の第1のDCPS42A及び第2のDCPS42Bにおける駆動電圧と出力光との関係の一例を示す説明図である。第2のDC電極30Bの電極幅W2を第1のDC電極30Aの電極幅W1の1/4にしたとする。第2のDC電極30Bに駆動電圧5Vを印加した場合の第2のDCPS42Bの位相シフト量は、第1のDCPS42Aの位相シフト量の1/4となる。第1のDCPS42A及び第2のDCPS42Bの駆動電圧と出力光との関係は
図4Aに示すようになる。
【0041】
図4Bは、DC側子MZM24A内の第1のDCPS42及び第2のDCPS42における駆動電圧に対する勾配(変化量)の一例を示す説明図である。駆動電圧に対する出力光の勾配(変化量)は、
図4Bに示すように、第2のDCPS42Bは、第1のDCPS42Aに比較して小さくなる。その結果、第1のDCPS42Aで4πの位相シフト量を確保しながら、第2のDCPS42Bで出力光の微調整を実現できる。
【0042】
つまり、DC側子MZM24Aでは、第1のDCPS42Aで4πの位相シフト量を制御した後、第2のDCPS42Bで出力光を微調整する。従って、長期にわたる位相の不安定性を補償しながら、その制御を容易にできる。
【0043】
実施例1のDC側子MZM24Aでは、第2のDCPS42Bが第1のDCPS42Aに比較して、所定の駆動電圧量に応じた位相シフト量が小さくなる構成にした。具体的には、第2のDCPS42B内の第2のDC電極30Bの電極幅W2が、第1のDCPS42A内の第1のDC電極30Aの電極幅W1に比較して狭くなるように第1のDC電極30A及び第2のDC電極30Bを構成した。その結果、第1のDCPS42Aで4πの位相シフト量を確保しながら、第2のDCPS42Bで出力光の微調整を実現できる。
【0044】
尚、説明の便宜上、DC側子MZM24Aについて説明したが、DC側親MZM25もDC側子MZM24Aと同一の構成であるため、同様の効果が言える。
【0045】
実施例1のDC側子MZM24Aは、第1のDC電極30Aの電極幅W1に比較して、第2のDC電極30Bの電極幅W2を狭くする構造を例示した。しかしながら、第1のDC電極30A及び第2のDC電極30Bの電極幅を同一にし、DC電極30に作用する第1の光導波路11C1及び第2の光導波路11C2の折り返し回数を変えても良く、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。尚、実施例1の光変調器5と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
第1のDCPS42A1は、第1の信号光が通過する第1の光導波路11C11と、第1の光導波路11C11と並走し、駆動電圧に応じた電力で第1の光導波路11C11を加熱する第1のDC電極30A1とを有する。第1のDCPS42A1は、駆動電圧に応じた電力で第1の光導波路11C11を加熱して第1の光導波路11C11の加熱によるSiの熱光学効果により、第1の光導波路11C11の光屈折率を変化させる。第1のDCPS42A1は、第1の光導波路11C11の光屈折率を変化させることで、第1の光導波路11C11を通過する第1の信号光の位相をシフトし、位相シフト後の第1の信号光を第1の合波部26Aに出力する。
第2のDCPS42B1は、第2の信号光が通過する第2の光導波路11C21と、第2の光導波路11C21と並走し、駆動電圧に応じた電力で第2の光導波路11C21を加熱する第2のDC電極30B1とを有する。第2のDCPS42B1は、駆動電圧に応じた電力で第2の光導波路11C21を加熱して第2の光導波路11C21の加熱によるSiの熱光学効果により、第2の光導波路11C21の光屈折率を変化させる。第2のDCPS42B1は、第2の光導波路11C21の光屈折率を変化させることで、第2の光導波路11C21を通過する第2の信号光の位相をシフトし、位相シフト後の第2の信号光を第1の合波部26Aに出力する。
第1の合波部26Aは、位相シフト後の第1の信号光及び位相シフト後の第2の信号光を合波する。クラッド層51は、第1のDCPS42A1、第2のDCPS42B1、第1の合波部26Aを被覆する、例えば、SiO2の層である。
第2のDCPS42B1内の第2のDC電極30B1の電力が作用する第2の光導波路11C21は直線導波路である。これに対して、第1のDCPS42A1内の第1のDC電極30A1の電力が作用する第1の光導波路11C11は、2回折り返す折り返し導波路である。第2の光導波路11C21は、第2のDC電極30B1の電力が作用する本数が1本であるのに対し、第1の光導波路11C11は、第1のDC電極30A1の電力が作用する本数が3本である。第2のDCPS42B1の駆動電圧に対する位相シフト量は、第1のDCPS42A1の同一の駆動電圧量に対する位相シフト量の1/3である。その結果、第1のDCPS42A1で4πの位相シフト量を確保しながら、第2のDCPS42B1で出力光の微調整を実現できる。
実施例2のDC側子MZM24A1は、第2のDCPS42B1内の第2の光導波路11C21の導波路長が、第1のDCPS42A1内の第1の光導波路11C11の導波路長に比較して短くなるように構成した。その結果、第1のDCPS42A1で4πの位相シフト量を確保しながら、第2のDCPS42B1で出力光の微調整を実現できる。
更に、第1のDCPS42A1内の第1の光導波路11C11及び第2のDCPS42B1内の第2の光導波路11C21の折り返し回数が異なる。更に、第1の光導波路11C11の導波路長が第2の光導波路11C21の導波路長に比較して長くなるように第1の光導波路11C11及び第2の光導波路11C21を構成した。その結果、第1のDCPS42A1で4πの位相シフト量を確保しながら、第2のDCPS42B1で出力光の微調整を実現できる。
しかしながら、実施例2の第1のDCPS42A1内の第1の光導波路11C11と第2のDCPS42B1内の第2の光導波路11C21との導波路長が異なることで光損失が異なる。従って、第1のDCPS42A1と第2のDCPS42B1との間でアンバランスとなる。そこで、このような事態に対処する光変調器5の実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。尚、実施例1の光変調器5と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。