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  • 特開-液体処理装置及び液体処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156780
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】液体処理装置及び液体処理方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/30 20060101AFI20231018BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20231018BHJP
【FI】
H05H1/30
C02F1/50 550D
C02F1/50 510A
C02F1/50 520A
C02F1/50 531Q
C02F1/50 531R
C02F1/50 531J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066343
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】521146861
【氏名又は名称】日本未来科学研究所合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 英孝
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA13
2G084AA19
2G084AA25
2G084CC02
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD13
(57)【要約】
【課題】大気圧低温プラズマにより、安全に、かつ安定的に液体を処理することができる液体処理装置等を提供すること。
【解決手段】液体処理装置1は、処理対象の気体を流通させる筒状空間を隔てて、誘電体層を介して対向するように設けられ、前記筒状空間を画成する本体部12内に封止されている第1電極14a及び第2電極14bと、前記筒状空間にプラズマを生成させるために、第1電極14aと第2電極14bとの間に、時間的に変化する電圧信号を印加する電源装置30と、前記筒状空間の前記気体の出口から所定距離離れた位置において前記筒状空間に接続されているアスピレータ20と、を備え、前記気体と混合される液体がアスピレータ20を貫流するように流通し、当該流通する液体がもたらす減圧によって、前記筒状空間内で前記プラズマによって処理された前記気体が前記液体に吸引され混合される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の気体を流通させる筒状空間を隔てて、誘電体層を介して対向するように設けられ、前記筒状空間を画成する絶縁性円筒部材内に封止されている第1電極及び第2電極と、
前記筒状空間にプラズマを生成させるために、前記第1電極と前記第2電極との間に、時間的に変化する電圧信号を印加する電源部と、
前記筒状空間の前記気体の出口から所定距離離れた位置において前記筒状空間に接続されている気体吸引手段と、を備え、
前記気体と混合される液体が前記気体吸引手段を貫流するように流通し、当該流通する液体がもたらす減圧によって、前記筒状空間内で前記プラズマによって処理された前記気体が前記液体に吸引され混合される、
液体処理装置。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極とが、前記筒状空間の中心軸の周りにおいて、互いに旋回し合いつつ二重らせんを形成している、
請求項1に記載の液体処理装置。
【請求項3】
前記筒状空間の前記気体の入口の上流側に、前記気体吸引手段において負圧が維持されるように前記気体の流量を制御する流量制御手段を備えている、
請求項1又は2に記載の液体処理装置。
【請求項4】
処理対象の気体を流通させる筒状空間を隔てて、誘電体層を介して対向するように設けられ、前記筒状空間を画成する絶縁性円筒部材内に封止されている第1電極及び第2電極の間に、時間的に変化する電圧信号を印加して前記筒状空間内にプラズマを発生させ、
前記筒状空間の前記気体の出口から所定距離離れた位置において前記筒状空間に気体吸引手段を接続し、
前記気体と混合される液体を、前記気体吸引手段を貫流するように流通させ、当該流通する液体がもたらす減圧によって、前記筒状空間内で前記プラズマによって処理された前記気体を前記液体に吸引させて両者を混合させる、
液体処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体処理装置及び液体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物質の表面処理、液体の処理等に、プラズマが広く利用されている。特に大気圧低温プラズマは、特別な減圧環境なども必要なく、簡便に生成することができるため、種々のガスをプラズマ化して種々の物質を処理するために利用されている。例えば特許文献1には、大気圧下で様々なガスを安定して低温プラズマ化することを目的としたマルチガスプラズマジェット装置が提案されている。特許文献1の装置は、対象ガス導入口とプラズマ噴出口とを有する絶縁管と、絶縁管外周に沿設又は絶縁管内に封設され、その長軸が導入口から噴出孔への方向に配されている帯状電極を有する電極部、電極部に所定電圧を印加して絶縁管内に大気圧下でグロー放電を生起させる電源供給部とを備えている。特許文献1に記載されているプラズマジェット装置は、絶縁管内のグロー放電によって生起された低温プラズマによるマルチガスプラズマを絶縁管の噴出口から噴出させ、物質表面の処理等を行うことができると考えられる。しかし、このプラズマジェット装置を水等の液体の処理に適用することには問題がある。液体を処理するためにはプラズマジェットの噴出口を液体内に差し入れる必要があるが、特許文献1の装置では、絶縁管の噴出口を液体内に差し入れた場合、電極部と液体の液面とが近接するため、絶縁管による電極部の絶縁が破れて液体に電極部から漏電するおそれがある。このような状態では、特許文献1のプラズマ時ジェット装置により安定して低温プラズマを発生させつつ液体を処理することができないという問題があった。
【0003】
この点、特許文献2には、減圧チャンバと、前記減圧チャンバの内部に配置され、被処理水を貯留する箱型の水槽と、前記減圧チャンバの内部に配置される一対の電極と、前記一対の電極に交流電圧を印加する電源と、を有し、前記一対の電極は、前記水槽に貯留された被処理水の水面上方に位置するように設けられた平板状の電極と、前記平板状の電極の下面側に設けられ、前記水槽に貯留された被処理水の水面と空間を介して対向する誘電体と、前記水槽に貯留された被処理水中に位置するように設けられた接地極と、を有し、前記減圧チャンバには、前記減圧チャンバの内部が極低真空となるように気相雰囲気を減圧する減圧ポンプが接続されているプラズマ殺菌水生成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-225421号公報
【特許文献2】特開2019-188311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の装置は、減圧チャンバ内に設置した水槽に、接地極が水中に位置するように一対の電極を設け、減圧チャンバ内を極低真空状態として電極間にプラズマを発生させてプラズマ殺菌水を生成する構成である。特許文献2の装置は、特許文献1とは異なり、水をプラズマで処理する用途に特化された構成を有している。しかしながら、特許文献2では水処理を極低真空の環境下で行わなければならず、手軽にプラズマ処理水を生成することができるような簡易な構成の装置ではない。
【0006】
本発明は、上記の及び他の課題を解決するためになされたもので、大気圧低温プラズマにより簡易な構成で、安全に、かつ安定的に液体を処理することができる液体処理装置及び液体処理方法を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の及び他の目的を達成するための、本発明の一態様は、処理対象の気体を流通させる筒状空間を隔てて、誘電体層を介して対向するように設けられ、前記筒状空間を画成する絶縁性円筒部材内に封止されている第1電極及び第2電極と、前記筒状空間にプラズマを生成させるために、前記第1電極と前記第2電極との間に、時間的に変化する電圧信号を印加する電源部と、前記筒状空間の前記気体の出口から所定距離離れた位置において前記筒状空間に接続されている気体吸引手段と、を備え、前記気体と混合される液体が前記気体吸引手段を貫流するように流通し、当該流通する液体がもたらす減圧によって、前記筒状空間内で前記プラズマによって処理された前記気体が前記液体に吸引され混合される液体処理装置である。
【0008】
本発明の他の態様は、処理対象の気体を流通させる筒状空間を隔てて、誘電体層を介して対向するように設けられ、前記筒状空間を画成する絶縁性円筒部材内に封止されている第1電極及び第2電極の間に、時間的に変化する電圧信号を印加して前記筒状空間内にプラズマを発生させ、前記筒状空間の前記気体の出口から所定距離離れた位置において前記筒状空間に気体吸引手段を接続し、前記気体と混合される液体を、前記気体吸引手段を貫流するように流通させ、当該流通する液体がもたらす減圧によって、前記筒状空間内で前記プラズマによって処理された前記気体を前記液体に吸引させて両者を混合させる液体処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大気圧低温プラズマにより簡易な構成で、安全に、かつ安定的に液体を処理することができる液体処理装置及び液体処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る液体処理装置の構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る液体処理装置に使用されるプラズマ生成装置の模式側面図である。
図3図3は、図2のプラズマ生成装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき、その実施形態に即して図面を用いて説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。
【0012】
<液体処理装置>
まず、本発明の一実施形態に係る液体処理装置の全体構成について説明する。図1に、本実施形態に係る液体処理装置1の全体構成を模式的に示している。図1に示すように、液体処理装置1は、大気圧低温プラズマを生成するためのプラズマ生成装置10、気体吸引手段としてのアスピレータ20、プラズマ生成装置10に電力を供給するための電源装置30、及びプラズマ生成装置10に供給される気体の流量を調整するための流量調整装置50を備えている。
【0013】
図1において、プラズマ生成装置10内に、その上部開口に接続された管路40aを通じて、プラズマ処理の対象となる気体が供給される。管路40aの途中には、流量調整装置50が設けられ、管路40aからプラズマ生成装置10へ供給される気体の流量を調整している。流量調整装置50は、管路40aを通過する気体の流量を調整するための弁装置を有し、弁装置の開度は、後述する圧力センサ60からの検出値に基づいて調整される。
【0014】
プラズマ生成装置10において大気圧低温プラズマによって処理された気体は、プラズマ生成装置10の下方開口に接続されている管路40bを通って、管路40bの他端に接続されているアスピレータ20の吸気口内に吸引される。管路40bには、管路40b内の圧力を計測するための圧力センサ60が設けられている。圧力センサ60は、管路40b内の圧力の計測値を管路40aに設けられた流量調整装置50に送信している。流量調整装置50は、圧力センサ60から受信した管路40b内の圧力計測値に基づいて、管路40b内が、大気圧よりも低い所定の負圧状態となるように、弁装置の開度を調整する。
【0015】
<プラズマ生成装置>
プラズマ生成装置10は、中空円筒状の部材によって形成される筒状空間において大気圧低温プラズマを生成させ、その筒状空間内を通過させる気体を分解して種々の活性種を生成する機能を供する。処理対象としての気体は、空気のほか、プラズマ処理によって生成される活性種の種類に応じて適宜選択することができる。図2に、プラズマ生成装置10の模式的な側面図を、図3に、プラズマ生成装置10の模式的な横断面図を示している。
【0016】
プラズマ生成装置10は、中空円筒状の本体部12と、本体部12に封止されているそれぞれ帯状の導電性材料で形成された第1電極14a及び第2電極14bと、第1電極14a及び第2電極14bそれぞれの一端部に設けられた電極端子16a,16bとを備えている。
【0017】
絶縁性円筒部材としての本体部12は、誘電体材料を中空円筒状に形成してなる部材であり、その内部に大気圧低温プラズマが生成される空間である筒状空間を画成している。本実施形態では、本体部12は、ガラスチューブ12aの外周に樹脂材料で形成された外層12bを設けることによって形成されている。第1電極14a及び第2電極14bは、それぞれ薄い帯状の導電性材料によって形成されている。第1電極14a及び第2電極14bは、例えば銅箔テープによって好適に形成されるが、これに限定されるものではない。図1図3に例示されるように、第1電極14a、第2電極14bは、それぞれが本体部12の中心軸の周りに旋回するようならせん形状とされているとともに、らせん形の第1電極14a、第2電極14bがさらに互いに前記中心軸周りに二重らせんを形成するように配置されている。図3に示すように、第1電極14a、第2電極14bは、ガラスチューブ12aの外周面に卷回された状態で、外層12bを形成する樹脂材料によってモールドされ、封止されている。図2に例示するように、本実施形態では、各電極14a,14bを形成する、幅がWの帯状導電体が、巻きピッチPでN回、らせん状に巻回されている。図3を参照すると、各電極14a,14bは、厚さがTであり、本体部12を構成する外層12b内に封止されている。このため、第1電極14a、第2電極14bは、筒状空間を挟んで、本体部12のガラスチューブ12aを介して対向配置されることになる。第1電極14a、第2電極14bの間に後述する電源装置30によって高電圧を印加すると、第1電極14a、第2電極14b間で誘電体バリア放電が発生し、本体部12に囲まれた筒状空間内に大気圧低温プラズマが生成される。プラズマ生成装置10の筒状空間内では、生成された大気圧低温プラズマが空気、水蒸気に作用して、公知のように、例えば一重項酸素()、オゾン(O)、ヒドロキシラジカル(OH)、スーパーオキシドアニオンラジカル(O )、ヒドロペルオキシラジカル(HO)、過酸化水素(H)のような種々のラジカルを含む活性種が生成される。これらの活性種を含む気体は、プラズマ生成装置10の下流側に接続されている管路40bを通ってアスピレータ20へ供給される。図1に示すように、プラズマ生成装置10の電極端子16bとアスピレータ20の吸気口24との間には、管路40bによって、距離Sの間隔が確保されている。この間隔によって、プラズマ生成装置10の電極から処理対象液体への漏電といった不測の事態を防止することができ、液体処理装置1の安全性が担保されている。距離Sは、プラズマ生成装置10の電極端子16a、16bに印加される高電圧の仕様等に基づいて決定すればよい。
【0018】
<電源装置>
電源装置30は、プラズマ発生装置10の第1電極14aと第2電極14bとの間に高電圧を印加する機能を有する。本実施形態では、電源装置30は、商用電源のAC100V、50/60Hzを入力として、その入力を前記電極間に印加すべき高電圧に変換するための電力変換装置を含んでいる。電力変換装置としては、例えばトランス、AC/DCコンバータ、あるいはAC/DCコンバータとDC/ACインバータとの組合せを含み、第1電極14aと第2電極14bとの間に直流又は交流の高電圧を印加できるようにしている。高電圧の生成には、任意の昇圧、スイッチング回路を用いることができる。一例としては、電源装置30は、第1電極14aと第2電極14bとの間に、適宜の高電圧を印加することができるように構成する。具体的には、電極間距離、電極の材質、平面寸法、厚さ等のパラメータによって出力電圧を調整すればよい。印加する電圧は直流又は交流のいずれでもよく、その周波数も適宜決定すればよい。また電圧波形も、正弦波等の適宜の波形としてよい。
【0019】
<アスピレータ>
アスピレータ20は、プラズマ生成装置10によって処理された気体を、本実施形態の液体処理装置1による処理対象の液体と混合させるための装置である。図1に示すように、アスピレータ20は、減圧作用を起こさせる動作流体でもある処理対象液体を流通させるための管状本体部22と、管状本体部22の側部に突設される吸気口24とを備える。管状本体部22の両端開口には管路40c、40dがそれぞれ接続されていて、処理対象液体は、管路40c側からアスピレータ20に流入し、管状本体部22内に設けられているベンチュリVを通って管路40d側へと流出する。吸気口24の開口には、管路40dが接続されていて、プラズマ生成装置10を出た気体がアスピレータ20内へ導入されるように構成されている。周知のように、アスピレータ20は、ベンチュリVを通過する流体の増速により動圧が増加するのを利用して、流れの周囲の空間を減圧させる作用をなす。図1のアスピレータ20では、ベンチュリVを処理対象液体が通過すると吸気口24に連通する空間が減圧され、それによって管路40bからプラズマ生成装置10によって処理された気体がアスピレータ20内の混合室26に吸引され、ベンチュリVを通って流れる処理対象液体と混合される。混合室26と管路40bとの間には逆止弁28が設けられており、処理対象液体が管路40b内へ流入するのを防止している。また、アスピレータ20の吸引作用でプラズマ生成装置10の本体部12内も減圧されるので、本体部12内の筒状空間において電極間にプラズマが発生しやすくなる効果を得ることもできる。
【0020】
<液体処理装置の作用>
以上、図1図3を参照して説明した構成を有する、本実施形態の液体処理装置1の作用について説明する。なお、説明の順序は便宜的なものであって、説明の順序通りに装置を動作させる必要があるわけではない。
1.電源装置30を動作させ、プラズマ生成装置10の第1電極14aと第2電極14bとの間に高電圧を印加し、両電極間で誘電体バリア放電を発生させる。この誘電体バリア放電により、本体部12の筒状空間において大気圧低温プラズマが生成される。
2.管路40cからアスピレータ20へ処理対象液体を流入させる。処理対象液体がアスピレータ20のベンチュリVを通過することによってアスピレータ20の混合室26内が減圧され、吸気口24に接続された管路40bを通じて混合室26内に気体が導入される。
3.混合室26内に導入される気体は、プラズマ生成装置10によって処理されて各種活性種を含んでいる。このプラズマ処理された気体は混合室26内で液体と混合される。この際、流量調整装置50により管路40bからアスピレータ20に供給される気体の流量を調整することにより、アスピレータ20を通過する液体に気体が気泡状態で混入されるバブリングを起こさせることができる。このようなバブリング状態で気体を混入させることで、プラズマ処理された気体に含まれる各種活性種を効率よく液体中に導入することができる。アスピレータ20から管路40dを通じて流出する液体には、前記気体に含まれていた各種活性種が混入された状態となる。この活性種を含む液体は、殺菌、各種ウイルスの除去、不活化を含む種々の用途に活用することができる。
【0021】
<実施例>
上記した本発明の一実施形態に係る液体処理装置1を、以下の仕様で製作して実験を行った。
【0022】
(1)プラズマ生成装置10
第1電極14a、第2電極14bを、厚さ(T)0.1mm、幅(W)2mmの銅箔テープを、壁厚さ(t)0.8mm、外径(d)4mmのガラスチューブ12aの外周に巻き付け、樹脂材料で形成された厚さ約2.5mm、外径(D)約9mmの外層12bによりモールドして構成した。第1電極14a、第2電極14bは、それぞれ10mmピッチで6回巻きとした。電極間に介在する誘電体層の厚さはガラスチューブ12aの厚さの2倍である約1.6mmであった。なお、ガラスチューブ12aの長さは約120mm、うち約90mmにわたって外層12bを設けた。
【0023】
(2)アスピレータ20
アスピレータ20は、市販の汎用品を用いた。処理対象液体としては、水道水を供給した。
【0024】
(3)電源装置30
AC100V、50Hzの商用交流電源を入力として、周波数50Hz、電圧15kVrmsの正弦波の出力を得た。
【0025】
以上の構成要素を組み合わせて、流量調整装置としては簡易的に手動の流量調整バルブを用いてアスピレータ20による減圧、バブリングが作用するようにしたところ、プラズマ処理された空気がアスピレータ20において水道水と良好に混合されて流出することが確認された。
【0026】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0027】
本発明の一実施形態による液体処理装置1は、処理対象の気体を流通させる筒状空間を隔てて、誘電体層を介して対向するように設けられ、前記筒状空間を画成する絶縁性円筒部材内に封止されている第1電極14a及び第2電極14bと、前記筒状空間にプラズマを生成させるために、第1電極14aと第2電極14bとの間に、時間的に変化する電圧信号を印加する電源装置30と、前記筒状空間の前記気体の出口から所定距離離れた位置において前記筒状空間に接続されているアスピレータ20と、を備え、前記気体と混合される液体がアスピレータ20を貫流するように流通し、当該流通する液体がもたらす減圧によって、前記筒状空間内で前記プラズマによって処理された前記気体が前記液体に吸引され混合される。
【0028】
このようにすれば、第1電極14a及び第2電極14bの間の誘電体バリア放電により筒状空間内に大気圧低温プラズマが生成され、筒状空間内の気体から各種の活性種を生成することができるとともに、その活性種を処理対象としての液体に対して簡易な構成で、安全に、かつ効率的に混合させることができる。
【0029】
液体処理装置1において、第1電極14aと第2電極14bとが、前記筒状空間の中心軸の周りにおいて、互いに旋回し合いつつ二重らせんを形成しているとしてもよい。
【0030】
このようにすれば、第1電極14aと第2電極14bとの間に継続的に誘電体バリア放電を生じさせ、筒状空間内において安定した大気圧低温プラズマを生成することができる。
【0031】
液体処理装置1は、前記筒状空間の前記気体の入口の上流側に、アスピレータ20において負圧が維持されるように前記気体の流量を制御する流量調整装置50を備えているとしてもよい。
【0032】
このようにすれば、プラズマ生成装置10において処理された気体が、アスピレータ20において円滑に、かつ継続して液体と混合される。
【0033】
本発明の他の実施形態による液体処理方法は、処理対象の気体を流通させる筒状空間を隔てて、誘電体層を介して対向するように設けられた第1電極14a及び第2電極14bの間に、時間的に変化する電圧信号を印加して前記筒状空間内にプラズマを発生させ、前記筒状空間の前記気体の出口から所定距離離れた位置において前記筒状空間にアスピレータ20を接続し、前記気体と混合される液体を、アスピレータ20を貫流するように流通させ、当該流通する液体がもたらす減圧によって、前記筒状空間内で前記プラズマによって処理された前記気体を前記液体に吸引させて両者を混合させる。
【0034】
このようにすれば、第1電極14a及び第2電極14bの間の誘電体バリア放電により筒状空間内に大気圧低温プラズマが生成され、筒状空間内の気体から各種の活性種を生成することができるとともに、その活性種を処理対象としての液体に、安全に、かつ効率的に混合させることができる。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、上記実施形態と変形例の各構成を組み合わせることも可能である。更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0036】
例えば、第1電極14a、第2電極14bは、直線状等、螺旋形以外の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 液体処理装置
10 プラズマ生成装置
12 本体部
14a 第1電極
14b 第2電極
20 アスピレータ
30 電源装置
50 流量調整装置
60 圧力センサ
V ベンチュリ
図1
図2
図3