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特開2023-156805プリント回路板の製造方法、プリント回路板及びプリント回路板用構造体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156805
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】プリント回路板の製造方法、プリント回路板及びプリント回路板用構造体
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
H05K3/34 504Z
H05K3/34 507C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066386
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】三門 幸信
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA07
5E319AB06
5E319AC01
5E319BB05
5E319CC36
5E319CD04
5E319CD13
5E319CD29
5E319GG05
5E319GG09
(57)【要約】
【課題】プリント配線基板にチップコンデンサ等の表面実装部品が半田付けにより複数実装されても、隣接する表面実装部品が半田により電気的に繋がることを回避し、プリント回路板のショートを防止するプリント回路板を提供する。
【解決手段】外部電極の側面が絶縁膜により被覆された複数の表面実装部品を準備することと、前記複数の表面実装部品をプリント配線基板に予め定められた位置関係に固定することと、前記プリント配線基板に固定された前記複数の表面実装部品を半田付けにより実装すること、前記外部電極の側面から前記絶縁膜を剥離することと、を含み、隣接する前記複数の表面実装部品が電気的に繋がることを回避するプリント回路板の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電極の側面が絶縁膜により被覆された複数の表面実装部品を準備することと、
前記複数の表面実装部品をプリント配線基板に予め定められた位置関係に固定することと、
前記プリント配線基板に固定された前記複数の表面実装部品を半田付けすることより実装することと、
前記外部電極の側面から前記絶縁膜を剥離することと、を含み、隣接する前記複数の表面実装部品が電気的に繋がることを回避するプリント回路板の製造方法。
【請求項2】
請求項1のプリント回路板の製造方法であって、
さらに前記複数の表面実装部品を前記プリント配線基板に予め定められた位置関係に固定することは、
保持部材に前記予め定められた位置関係に対応するように前記複数の表面実装部品を並べて固定し、
前記保持部材を前記プリント配線基板の実装面に供給し、前記外部電極が前記プリント配線基板に形成されたパットと向かい合うように前記複数の表面実装部品を位置決めして固定することを含む。
【請求項3】
請求項1のプリント回路板の製造方法であって、
さらに前記絶縁膜が前記外部電極の左側側面と右側側面とに形成されており、
前記複数の表面実装部品が並列して隣接した位置関係に固定されていることを含む。
【請求項4】
請求項3のプリント回路板の製造方法であって、
さらに前記複数の表面実装部品が30~60μmの間隔で固定されていることを含む。
【請求項5】
請求項1に記載のプリント配線基板の製造方法によって製造されたプリント回路板。
【請求項6】
請求項1に記載のプリント配線基板の製造方法に用いられるプリント回路板用構造体であって、
プリント配線基板と、
外部電極の側面に絶縁膜が形成された複数の表面実装部品と、を備え、
前記複数の表面実装部品が前記プリント配線基板に予め定められた位置関係に固定され、前記プリント配線基板に固定された前記複数の表面実装部品が半田付けにより実装されているプリント回路板用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路板の製造方法、プリント回路板及びプリント回路板用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の表面実装部品を配線板の適性位置に精度よく半田付けすることができるプリント回路板を開示する。特許文献1によれば、特許文献1に開示されたプリント回路板1は、複数の表面実装部品(チップコンデンサ)2、配線板3および保持部材4を備えており、複数のチップコンデンサが並列にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-179317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプリント回路板の製造方法は、積層セラミックチップコンデンサ等の表面実装部品を配線板に複数配置して、半田付けによって、当該表面実装部品をプリント配線基板に固定する。ここで、プリント配線基板に実装される表面実装部品が備えている外部電極を構成するすべての面は、露出している。このため、上記プリント回路板の製造方法により、プリント配線基板に複数の表面実装部品を半田付けにより実装した場合には、隣接する表面実装部品の外部電極を構成するすべての面に半田付けによる半田が濡れ拡がる。その結果、プリント配線基板に実装される一の表面実装部品の外部電極は、当該プリント配線基板に実装される他の表面実装部品の外部電極と半田付けによる半田を通じて電気的に繋がってしまう。最終的に一の表面実装部品の外部電極と、他の表面実装部品の外部電極との間でショートが発生する。
【0005】
プリント配線基板に実装される一の表面実装部品と、他の表面実装部品とが並列に実装され、しかもこれらの表面実装部品によって形成される間の距離が数ミクロン程度のきわめて短い場合には、それぞれの表面実装部品が有している外部電極によって形成される距離も必然的に短くなる。このため、プリント配線基板に実装される一の表面実装部品と、他の表面実装部品とが並列に実装され、一の表面実装部品が有している外部電極と、他の表面実装部品が有している外部電極との距離がきわめて短いプリント回路基板は、これらの外部電極間においてショートを発生する欠陥製品となる。
【0006】
本発明は、このような技術的事情に鑑みなされたものであって、プリント配線基板に積層セラミックチップコンデンサ等の表面実装部品が半田付けにより複数実装されても、隣接する表面実装部品が半田により電気的に繋がることを回避し、プリント回路板のショートを防止することができるプリント回路板の製造方法、およびプリント回路板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリント回路板の製造方法は、外部電極の側面が絶縁膜により被覆された複数の表面実装部品を準備することと、前記表面実装部品をプリント配線基板に予め定められた位置関係に固定することと、前記プリント配線基板に固定された前記表面実装部品を半田付けすることより実装すること、前記外部電極の側面から前記絶縁膜を剥離することと、を含み、隣接する前記表面実装部品が電気的に繋がることを回避する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれは、プリント配線基板にチップコンデンサ等の表面実装部品が半田付けにより複数実装されても、隣接する表面実装部品が半田により電気的に繋がることを回避することにより、プリント回路板のショートを防止することができるプリント回路板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いられる表面実装部品を説明するための概略図である。
図2A】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2B】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2C】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2D】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2E】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
図2F】本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における一工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリント回路板の製造方法を実施するために用いらえる表面実装部品を説明するための概略図である。図1に示すように、表面実装部品2は、プリント配線基板3の実装面31に半田付けによって実装され、プリント回路板1を構成する。表面実装部品2は、誘電体シートに内部電極パターンをスクリーン印刷したシートを圧着することにより積層した内部電極4と当該内部電極4の両端に外部電極5とを備える。
【0011】
外部電極5は、内部電極4の両端に銅等の金属を塗布して焼き付けることによって形成される。外部電極5の表面には、ニッケル及びスズの2層めっきが施されている。表面実装部品2としては、積層セラミックチップコンデンサ(CC)、SOP等のICパッケージを例示することができる。表面実装部品2は、その大きさ、その高さが同一であっても、異なるものであってもよい。なお、表面実装部品2の製造方法としては、グリーンシート工法、印刷工法を例示することができる。
【0012】
外部電極5の側面が絶縁膜6により被覆された複数の表面実装部品を準備する。外部電極5の側面は当該外部電極正面、外部電極右側側面51、外部電極左側側面52であってもよい。ここでは、外部電極5の外部電極右側側面51及び外部電極左側側面52が絶縁膜6によって被覆されている表面実装部品2を準備する。プリント回路板1は、複数の表面実装部品2が隣接して固定され、外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とが対向して極めて狭い間隙(CC間ギャップ;G)を形成しても、絶縁膜6の存在により、外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とが半田によって繋がらない。なお、外部電極5は、半田層7によってプリント配線基板3の実装面にリフロー半田付けされている。
【0013】
絶縁膜6は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の電気絶縁性及び加工性に優れた材料から構成される。絶縁膜6の厚さは、1.0~20μmであることが好ましい。絶縁膜6の厚さが1.0μm以上であれば、半田付けによる半田により外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とが繋がることがないため好ましい。絶縁膜6の厚さが20μm以下であれば、外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とが対向して形成される間隙(CC間ギャップ;G)を小さくすることができるため好ましい。絶縁膜6は、外部電極右側側面51及び外部電極左側側面52に絶縁膜6の材料となる樹脂を塗布した後、乾燥することによって形成してもよい。外部電極右側側面51及び外部電極左側側面52に絶縁膜6の材料から構成される樹脂テープを接着して形成してもよい。
【0014】
このように、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、外部電極5の外部電極右側側面51及び外部電極左側側面52を絶縁膜6によって被覆した表面実装部品2を用いる。さらに、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、半田層7によるリフロー半田付けによる半田によって、プリント配線基板3に実装された複数の表面実装部品2の外部電極5をプリント配線基板3の実装面31に実装する。すなわち、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、外部電極5の側面が絶縁膜6により被覆された複数の表面実装部品2を用いることによって、外部電極5の電極側面が繋がることを回避し、隣接する表面実装部品2の間でショートを防止することができる。そして、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、表面実装部品2が備えている外部電極5の外部電極の側面から絶縁膜6を剥離して除去することにより、プリント回路板1を製造することができる。
【0015】
さらに、本発明に係るプリント回路板の製造方法は、以下の方法を採用することにより、プリント配線基板3に表面実装部品2を予め定められた位置関係を保つように実装することができる。
【0016】
図2A図2Fは、それぞれ、本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態における各工程を説明するための図である。なお、図2A図2Fに示す例において、各部材の寸法については、本発明の特徴をより良く理解できるようにするために、実施の寸法とは異なる寸法で記載している。以下、図2A図2Fを参照して、本発明のプリント回路板の製造方法の一実施形態を説明する。
【0017】
まず、図2Aに示すように、複数の表面実装部品2を保持部材8の表面に配置し、外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とが対向するように隣接して固定する。保持部材8に予め定められた位置関係に対応するように複数の表面実装部品2を並べて固定する。複数の表面実装部品2を保持部材8の実装面に配置することは、保持部材8の当該実装面上の予め定められた位置に部品搭載機を用いて、複数の表面実装部品2をそれぞれ搭載して行う。
【0018】
内部電極4の上端及び下端に形成されている外部電極5の外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とで形成される間隙G(CC間ギャップ)を10~80μm、好ましくは、40~60μmとなるように複数の表面実装部品2を保持部材8に配置する。外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とで形成される間隙G(CC間ギャップ)が10μm以上であれば、半田付けによる半田により外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とが繋がることがないため好ましい。外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とで形成される間隙G(CC間ギャップ)が80μm以下であれば、外部電極右側側面51と外部電極左側側面52とが対向して形成される間隙(CC間ギャップ;G)を小さくすることができ、プリント配線基板3の実装面31に多くの表面実装部品2を搭載することができるため好ましい。
【0019】
次に、図2Bに示すように、ベース材81上に接着層82を備えている保持部材8を用いて、複数の表面実装部品2を保持部材8に接着して固定する。ここで、外部電極右側側面51及び外部電極左側側面52の表面に形成された絶縁膜6により、隣接する外部電極右側側面51及び外部電極左側側面52が直接接触することがなく、50μm程度の間隔Gを形成することができる。
【0020】
次に、図2Cに示すように、複数の表面実装部品2の上面をプリント配線基板3の実装面31と対向するように配置する。すなわち、複数の表面実装部品2をプリント配線基板3の実装面31と保持部材8の接着層82との間に挟んで配置する。
【0021】
次に、図2Dに示すように、プリント配線基板3の実装面31には、複数の表面実装部品2の位置決めをするためのパッド9が設けられている。パッド9は、表面実装部品2が備える内部電極4の両端に形成された外部電極5に対応するように、プリント配線基板3の実装面31の予め定められた位置関係に従って配置されている。パッド9の表面には、それぞれ半田層7が設けられている。半田層7は、半田ペーストをパッド9の表面に印刷することによって形成される。なお、パッド9の表面に半田層7を印刷することは、公知のスクリーン・マスクを用いて行ってもよい。
【0022】
このように、プリント配線基板3の実装面31には、表面実装部品2の位置決めをした後に、当該表面実装部品2をプリント配線基板3の実装面31に実装するための半田層7が設けられている。複数の表面実装部品2を固定した保持部材8をプリント配線基板3に対向して、矢印方向に移動する。複数の表面実装部品2を固定した保持部材8を矢印方向に移動することにより、複数の表面実装部品2を固定した保持部材8とプリント配線基板3とを重ね合わせることができる。
【0023】
次に、図2Eに示すように、複数の表面実装部品2の上面をプリント配線基板3の実装面31と対向するように配置して重ね合わせた後、加熱処理をする。加熱処理により、表面実装部品2をプリント配線基板3の実装面31に実装するための半田層7を溶融させることにより、複数の表面実装部品2の外部電極5をプリント配線基板3の実装面31に実装する。
【0024】
その結果、プリント配線基板3と、外部電極5の側面に絶縁膜6が形成された複数の表面実装部品2とを備え、複数の表面実装部品2がプリント配線基板3に予め定められた位置関係に固定され、プリント配線基板3に固定された複数の表面実装部品2が半田付けよって実装されたプリント回路板用構造体10が提供される。具体的には、プリント回路板用構造体10をリフロー炉に収容して加熱を行う。この加熱により、半田層7が溶融し、溶融半田がパッド9と表面実装部品2の外部電極5との間に充填される。
【0025】
その後、プリント回路板用構造体10をリフロー炉から取り出して冷却し、溶融半田を硬化させる。これにより、表面実装部品2の外部電極5がパッド9に電気的かつ機械的に接続される。
【0026】
最後に、プリント回路板用構造体10から保持部材8を剥離する。表面実装部品2は、半田層7への半田付けによって、プリント配線基板3に強固に実装されている。すなわち、表面実装部品2とプリント配線基板3との実装強度は、表面実装部品2と保持部材8との固定強度よりも大きく設定されている。このため、プリント回路板用構造体10から保持部材8のみを容易に剥離することができる。プリント回路板用構造体10から保持部材8のみを剥離すると同時に、表面実装部品2の外部電極5の外部電極右側側面51及び外部電極左側側面52を被覆している絶縁膜6もプリント回路板用構造体10から剥離することができる。
【0027】
図2Fに示すように、表面実装部品2の外部電極5の外部電極右側側面51及び外部電極左側側面52を被覆している絶縁膜6をプリント回路板用構造体10から剥離することにより、隣接する表面実装部品2の外部電極5間に形成される間隙Gが50μm以下のプリント回路板1が提供される。なお、プリント回路板1の性能に影響を与えない場合には、プリント回路板用構造体10から絶縁膜6の一部又は全部を剥離しなくてもよい。
このように、プリント回路板1は、隣接する表面実装部品2の外部電極5間の間隔が50μm以下であっても、外部電極が半田により電気的に繋がることを回避することができ、プリント回路板のショートを防止することができる。
【0028】
上述した本発明のプリント回路板の製造方法によれば、プリント配線基板に積層セラミックチップコンデンサ等の表面実装部品が半田付けにより複数実装されても、隣接する表面実装部品が半田により電気的に繋がることを回避することができ、プリント回路板のショートを防止することができるプリント回路板を提供することができる。
【0029】
以上、図示の実施形態に基づき説明したが、本発明に係るプリント回路板の製造方法、及びプリント回路板は、上述の実施形態に限られず、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で適宜変更することができる。本発明に係るプリント回路板の製造方法、及びプリント回路板は、積層セラミックチップコンデンサのみならず、例えば、SOP等のICパッケージ等の部品を実装したプリント回路板にも適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 プリント回路板
2 表面実装部品(積層セラミックコンデンサ)
3 プリント配線基板
31 プリント配線基板実装面
4 内部電極
5 外部電極
51 外部電極右側側面
52 外部電極左側側面
6 絶縁膜
7 半田層
8 保持部材
81 ベース材
82 接着層
9 パッド
10 プリント回路板用構造体
G 表面実装部品間ギャップ(間隙)
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F