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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156810
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】空気供給システム及び空気供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/04 20060101AFI20231018BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20231018BHJP
   F02B 29/02 20060101ALI20231018BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20231018BHJP
   F02B 33/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F02B37/04 C
F02B37/12 303Z
F02B29/02 E
F02M35/024 521A
F02B33/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066393
(22)【出願日】2022-04-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小松 明
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005EA20
3G005FA54
3G005GB15
3G005GE01
3G005HA12
3G005JA23
3G005JA36
(57)【要約】
【課題】電動過給機を搭載するスペースの確保を容易化する。
【解決手段】車両に搭載されたエンジンに空気を供給する空気供給システムであって、車両の外部から取り込まれた空気から異物を除去する空気清浄手段21と、空気清浄手段21の筐体と一体化され、異物が除去された清浄後空気を電動ファン222の回転によりエンジンに送り出す送風手段22と、を備える。空気供給システムは、電動ファン222が回転していない間に、送風手段22を通過していない清浄後空気をエンジンに輸送する第1経路と、電動ファンが回転している間に、送風手段を通過した清浄後空気をエンジンに輸送する第2経路と、をさらに備えてもよい。
【選択図】図3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンに空気を供給する空気供給システムであって、
前記車両の外部から取り込まれた空気から異物を除去する空気清浄手段と、
前記空気清浄手段の筐体と一体化され、前記異物が除去された清浄後空気を電動ファンの回転により前記エンジンに送り出す送風手段と、
を備える、
空気供給システム。
【請求項2】
前記電動ファンが回転していない間に、前記送風手段を通過していない前記清浄後空気を前記エンジンに輸送する第1経路と、
前記電動ファンが回転している間に、前記送風手段を通過した前記清浄後空気を前記エンジンに輸送する第2経路と、
をさらに備える、
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記第2経路から輸送された前記清浄後空気が前記第1経路に流入することを抑制するためのバルブをさらに備える、
請求項2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記電動ファンを通過した空気を圧縮して前記エンジンに供給する過給手段をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【請求項5】
前記エンジンに供給される空気の圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力が圧力目標値以下である場合に、前記送風手段の前記電動ファンを回転させる制御部と、
をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の空気供給システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記圧力と前記圧力目標値との差分に基づいて、前記送風手段に供給する電力量を決定する、
請求項5に記載の空気供給システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記送風手段に電力を供給する電池の残量に基づいて前記圧力目標値を決定する、
請求項5に記載の空気供給システム。
【請求項8】
前記エンジンに供給される空気の酸素濃度を測定する酸素センサと、
前記酸素濃度が濃度目標値以下である場合に、前記送風手段の前記電動ファンを回転させる制御部と、
をさらに備える、
請求項1又は2に記載の空気供給システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記送風手段に電力を供給する電池の残量に基づいて前記濃度目標値を決定する、
請求項8に記載の空気供給システム。
【請求項10】
車両に搭載されたエンジンに空気を供給する空気供給装置であって、
前記車両の外部から取り込まれた空気から異物を除去する空気清浄手段と、
前記空気清浄手段の筐体と一体化され、前記異物が除去された清浄後空気を電動ファンの回転により前記エンジンに送り出す送風手段と、
を備える、
空気供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載エンジンに空気を供給する空気供給システム及び空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載エンジンに供給される空気に過給機を用いて過給圧をかけることが行われている。例えば、特許文献1には、電動過給機を用いて主には発進時や加速時の応答性を改善することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-108479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電動過給機は、電動モータを用いて電動ファンを駆動するため、電動ファンの消費電力が大きいという問題があった。このため、電動ファンを備える電動過給機を利用することも考えられるが、電動ファンが回転するスペースを確保することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、電動過給機を搭載するスペースの確保を容易化することができる空気供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の空気供給システムは、車両に搭載されたエンジンに空気を供給する空気供給システムであって、前記車両の外部から取り込まれた空気から異物を除去する空気清浄手段と、前記空気清浄手段の筐体と一体化され、前記異物が除去された清浄後空気を電動ファンの回転により前記エンジンに送り出す送風手段と、を備える。前記空気供給システムは、前記電動ファンが回転していない間に、前記送風手段を通過していない前記清浄後空気を前記エンジンに輸送する第1経路と、前記電動ファンが回転している間に、前記送風手段を通過した前記清浄後空気を前記エンジンに輸送する第2経路と、をさらに備えてもよい。
【0007】
前記空気供給システムは、前記第2経路から輸送された前記清浄後空気が前記第1経路に流入することを抑制するためのバルブをさらに備えてもよい。前記空気供給システムは、前記電動ファンを通過した空気を圧縮して前記エンジンに供給する過給手段をさらに備えてもよい。
【0008】
前記空気供給システムは、前記エンジンに供給される空気の圧力を測定する圧力センサと、前記圧力が圧力目標値以下である場合に、前記送風手段の前記電動ファンを回転させる制御部と、をさらに備えてもよい。
【0009】
前記制御部は、前記圧力と前記圧力目標値との差分に基づいて、前記送風手段に供給する電力量を決定してもよい。前記制御部は、前記送風手段に電力を供給する電池の残量に基づいて前記圧力目標値を決定してもよい。前記空気供給システムは、前記エンジンに供給される空気の酸素濃度を測定する酸素センサと、前記酸素濃度が濃度目標値以下である場合に、前記送風手段の前記電動ファンを回転させる制御部と、をさらに備えてもよい。前記制御部は、前記送風手段に電力を供給する電池の残量に基づいて前記濃度目標値を決定してもよい。
【0010】
本発明の第2の態様の空気供給装置は、車両に搭載されたエンジンに空気を供給する空気供給装置であって、前記車両の外部から取り込まれた空気から異物を除去する空気清浄手段と、前記空気清浄手段の筐体と一体化され、前記異物が除去された清浄後空気を電動ファンの回転により前記エンジンに送り出す送風手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動過給機を搭載するスペースの確保を容易化するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の空気供給装置の概要を示す図である。
図2】空気供給装置の構造を示す模式図である。
図3】空気供給装置の構造を示す模式図である。
図4】送風装置のモータに供給する電力と、エンジン1に供給される清浄後空気の圧力との関係を示す。
図5】空気供給システムによるエンジン1への空気の供給の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[空気供給システム100の構成]
図1は、本実施形態の空気供給装置2の概要を示す図である。図1は、本実施形態の空気供給装置2を含む空気供給システム100の構成を示す。図1に示すように、空気供給システム100は、エンジン1、空気供給装置2,コンプレッサ3(過給手段に相当)、タービン4、吸気冷却器5、吸気マニフォールド6、EGR(Exhaust Gas Recirculation、排気ガス再循環)クーラ7、EGRバルブ8、MAFセンサ9、圧力センサ10、燃料噴射ノズル11、回転数センサ12、記憶部13及び制御部14を備える。
【0014】
エンジン1は、車両に搭載されている。エンジン1は、例えば、ディーゼルエンジンである。空気供給装置2は、エンジン1に空気を供給する装置である。空気供給装置2の詳細は後述する。
【0015】
コンプレッサ3は、電動ファン222を通過した空気を加圧してエンジンに供給する。コンプレッサ3及びタービン4は、ターボチャージャを構成する。このターボチャージャでは、タービン4は、エンジン1からの排気ガスにより回転し、コンプレッサ3は、タービン4と一体的に回転することにより清浄後空気を圧縮し、圧縮された清浄後空気をエンジン1に供給する。吸気冷却器5は、コンプレッサ3により圧縮されて高温になった清浄後空気を冷却する。
【0016】
吸気マニフォールド6は、吸気冷却器5により冷却された清浄後空気をエンジン1のシリンダに案内する。EGRクーラ7及びEGRバルブ8は、排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度を低下させることを目的として、エンジン1からの排気ガスの一部をエンジン1に戻して排気ガスを再循環させるための装置である。EGRバルブ8は、エンジン1に戻す排気ガスの量を調整するためのバルブである。EGRバルブ8は、制御部14から指示されたEGRバルブ開度で開くことにより、排気ガスをエンジン1に戻す量を調整する。
【0017】
MAF(Mass flow sensor、空気流量)センサ9は、エンジン1に供給される空気の流量を測定する。MAFセンサ9は、例えば、複数のセンサから構成される。MAFセンサ9は、エンジン1に供給される空気の酸素濃度を測定する酸素センサとしても機能する。圧力センサ10は、エンジン1に供給される清浄後空気の圧力を測定する。燃料噴射ノズル11は、圧力を高めた燃料をエンジン1のシリンダに噴射する。燃料噴射ノズル11は、例えば、アクセルペダル開度センサが検出したアクセル開度に対応する量の燃料を噴射する。回転数センサ12は、エンジン1の回転数を測定する。
【0018】
記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。本明細書の例では、記憶部13はECU(Electronic Control Unit)に含まれている。記憶部13は、制御部14を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。記憶部13は、例えば、エンジントルクと、燃料噴射ノズル11からの燃料噴射量と、エンジン回転数と、EGRバルブ開度とを関連付けたデータテーブルを記憶している。
【0019】
制御部14は、例えば、ECUに含まれているプロセッサである。制御部14は、プログラムを実行することによって空気供給システム100の各部を電子制御する。制御部14は、MAFセンサ9が測定した酸素濃度を取得する。制御部14は、圧力センサ10が測定した清浄後空気の圧力を取得する。制御部14は、アクセルペダル開度センサ(不図示)が検出したアクセル開度を取得する。制御部14は、回転数センサ12が測定したエンジン1の回転数を取得する。
【0020】
制御部14は、取得したアクセル開度と、車両が走行している路面の登坂比率と、車両に搭載された荷物の積載重量とに基づいて、燃料噴射ノズル11が噴射する燃料噴射量を算出する。制御部14は、アクセル開度と、登坂比率と、積載重量とに加えて、回転数センサ12が測定したエンジン1の回転数に基づいて、燃料噴射量を算出してもよい。また、制御部14は、回転数センサ12が測定したエンジン1の回転数に基づいて、エンジントルクを算出する。
【0021】
制御部14は、EGRバルブ8を開くEGRバルブ開度を特定する。より詳しくは、制御部14は、記憶部13に記憶されているデータテーブルを参照して算出した燃料噴射量と、取得したエンジン回転数と、算出したエンジントルクと、に関連付けて記憶されているEGRバルブ開度を特定する。制御部14は、特定したEGRバルブ開度でEGRバルブ8を開くことにより、排気ガスをエンジン1に戻す排気再循環を実行する。
【0022】
ところで、エンジン1にはコンプレッサ3により圧縮された清浄後空気が供給されるが、排気ガスの一部をエンジン1に戻すことに起因して、エンジン1に供給される清浄後空気の圧力及び酸素濃度が不十分になることがある。このため、制御部14は、清浄後空気の圧力又は酸素濃度が目標値に達していない場合に、空気供給装置2に含まれる送風装置を駆動させて清浄後空気を圧縮することにより、エンジン1に供給される清浄後空気の圧力及び酸素濃度が不十分になることを抑制する。以下、空気供給装置2について詳細に説明する。
【0023】
[空気供給装置2の構造]
図2及び図3は、空気供給装置2の構造を示す断面図である。図2及び図3は、円筒形状の空気清浄装置21及び送風装置22を、送風装置22が有するファン(後述する電動ファン222)の回転軸を通る面で切断した図である。図2に示すように、空気供給装置2は、空気清浄装置21(空気清浄手段に相当)と、送風装置22(送風手段に相当)とが一体化された構造を有する。具体的には、送風装置22は、空気清浄装置21の筐体211と一体化されている。
【0024】
空気清浄装置21は、車両の外部から取り込まれた空気から異物を除去するための装置である。空気清浄装置21は、筐体211、空気清浄エレメント212、空気清浄装置入口213、空気清浄装置出口214及びバルブ215を備える。空気清浄装置21は、図2の下側に示すように、車両の外部から空気清浄装置入口213を介して空気を取り込む。
【0025】
筐体211は、図2中の左右方向に延びる中心軸を有する円筒形状を有する。筐体211の内側面に沿って空気清浄エレメント212が配置されている。空気清浄エレメント212は、空気清浄装置入口213から取り込まれた空気から異物を除去するためのフィルタである。バルブ215は、空気清浄装置出口214に配置されている。バルブ215は、例えば、バタフライバルブである。図2のバルブにはバルブ215が閉じるようにバルブ215を付勢するスプリング(不図示)が取り付けられている。図2の例では、エンジン1の負圧によりスプリングの付勢方向に逆らってバルブ215が開いている。
【0026】
送風装置22は、異物が除去された空気をコンプレッサ3に向けて送るための風を発生する装置である。送風装置22は、空気清浄エレメント212により異物が除去された空気(以下、清浄後空気ともいう)を電動ファン222の回転により、コンプレッサ3に送り出す。送風装置22は、モータ221、電動ファン222及び送風装置出口223を備える。
【0027】
図2は、送風装置22の電動ファン222が回転していない状態を示す。図3は、送風装置22の電動ファン222が回転している状態を示す。図2における破線が示すように、空気供給装置2は、空気清浄装置出口214を介して、送風装置22を通過していない空気をエンジン1に輸送するための第1経路である経路Aを有する。図2に示すように、清浄後空気は、電動ファン222が回転していない間、経路Aを通って輸送される。経路Aは、図2の複数の太矢印で示すように、筐体211内から空気清浄装置出口214を通ってコンプレッサ3へ延びる経路である。電動ファン222が回転していない状態では、空気清浄装置21からコンプレッサ3へ流れる空気の圧力により、バルブ215は開いた状態になっている。
【0028】
図3に示すように、筐体211内の清浄後空気は、電動ファン222が回転している間、図3中の筐体211の内部の太矢印に示すように送風装置22に取り込まれる。図3における破線が示すように、空気供給装置2は、電動ファン222が回転している間に、送風装置22を通過した清浄後空気を、送風装置出口223からエンジン1に輸送するための第2経路である経路Bを有する。
【0029】
図3の例では、バルブ215は、バルブ215が閉じるようにバルブ215を付勢するスプリングにより閉じた状態になる。このようにバルブ215が構成されていることで、経路Bから輸送された清浄後空気が経路Aへ逆方向に流入して筐体211内に戻ることを抑制できる。
【0030】
以上のとおり、空気供給装置2が送風装置22を有することで、空気供給装置2は、電動ファン222により圧縮した空気をコンプレッサ3に供給することができる。送風装置22は、空気清浄装置21と一体化されているので、空気清浄装置21と送風装置22とを個別に車両内に搭載する場合に比べて、2つの装置を車両内に搭載するためのスペースの確保を容易化することができる。
【0031】
[制御部14による送風装置22の制御]
続いて、図1に示す制御部14の動作を詳細に説明する。制御部14は、圧力センサ10が測定したエンジン1に供給される清浄後空気の圧力が圧力目標値以下である場合に、送風装置22の電動ファン222を回転させる。圧力目標値は、例えば、車両に要求される燃焼効率を満たすように設定されており、記憶部13に記憶されている。
【0032】
制御部14は、送風装置22に電力を供給する電池の残量に基づいて、圧力目標値を定めてもよい。例えば、制御部14は、車両に搭載された電池の残量が所定値以上である場合には、比較的高い第1圧力目標値を設定する。制御部14は、第1圧力目標値を圧力目標値に設定することにより、清浄後空気の圧力を比較的高い状態に維持してエンジン1の燃料効率を向上させることができる。所定値は、電池の電力により送風装置22を動作させた場合に車両の走行に用いられる電力が不足しない値である。一方、制御部14は、車両に搭載された電池の残量が所定値未満である場合には、第1圧力目標値よりも低い第2圧力目標値を設定する。この第2圧力目標値を圧力目標値に設定することにより、制御部14は、車両の走行に用いられる電池の電力が不足することを抑制することができる。
【0033】
制御部14は、MAFセンサ9が測定した酸素濃度が濃度目標値以下である場合に、送風装置22の電動ファン222を回転させてもよい。濃度目標値は、車両に要求される燃焼効率を満たすように設定されており、記憶部13に記憶されている。
【0034】
制御部14は、送風装置22に電力を供給する電池の残量に基づいて、濃度目標値を定めてもよい。例えば、制御部14は、車両に搭載された電池の残量が所定値以上である場合には、比較的高い第1濃度目標値を濃度目標値に設定する。一方、制御部14は、車両に搭載された電池の残量が所定値未満である場合には、第1濃度目標値よりも低い第2濃度目標値を設定する。所定値は、電池の電力により送風装置22を動作させた場合に車両の走行に用いられる電力が不足しない値である。当該所定値は、圧力目標値を制御部14が定めるために用いる所定値と同じであってもよく、異なっていてもよい。制御部14は、電池の残量が十分な量である場合に第1濃度目標値を濃度目標値に設定することにより、清浄後空気の酸素濃度を比較的高い状態に維持してエンジン1の燃料効率を向上させることができる。
【0035】
制御部14は、圧力センサ10が測定したエンジン1に供給される清浄後空気の圧力が圧力目標値以上であり、且つ、エンジン1に供給される清浄後空気の酸素濃度が濃度目標値以上である場合に、送風装置22の電動ファン222を回転させない。制御部14がこのように動作することで、電池の残量が低下することを抑制できる。
【0036】
図4は、送風装置22のモータ221に供給する電力と、エンジン1に供給される清浄後空気の圧力との関係を示す。図4の縦軸は、エンジン1に供給される清浄後空気の圧力を示し、図4の横軸は、エンジン1の始動開始時からの時間を示す。
【0037】
図4のグラフに示すように、制御部14は、送風装置22のモータ221が停止している状態(図4中の供給電力0ワット)に比べて、送風装置22のモータ221に電力を供給している状態においてエンジン1に供給される清浄後空気の圧力を高くすることができる。制御部14は、送風装置22のモータ221に供給する電力量を大きくするほど、エンジン1に供給される清浄後空気の圧力をより高くすることができる。
【0038】
制御部14は、圧力センサ10が測定した清浄後空気の圧力と圧力目標値との差分を特定する。制御部14は、特定した差分に基づいて、送風装置22のモータ221に供給する電力量を決定してもよい。例えば、制御部14は、特定した差分が大きいほど、送風装置22のモータ221に供給する電力量を大きくする。このようにして、制御部14は、エンジン1に供給される清浄後空気の圧力が低下することを抑制することができる。
【0039】
[空気供給システム100によるエンジン1への空気の供給の処理手順]
図5は、空気供給システム100によるエンジン1への空気の供給の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、エンジン1の始動時に開始される。まず、制御部14は、回転数センサ12が測定したエンジン1の回転数と、アクセルペダル開度センサが測定したアクセル開度とを取得する(S101)。
【0040】
制御部14は、エンジン1の回転数と、アクセルペダル開度センサが測定したアクセル開度とに基づいて、排気ガス中の窒素酸化物を低減し、かつ、燃料効率を最大化する燃料噴射ノズル11の燃料噴射量を記憶部13より読み込む(S102)。制御部14は、エンジン1の回転数に基づいて、エンジントルクを算出する。制御部14は、記憶部13に記憶されているデータテーブルを参照して、エンジン1の回転数と、算出したエンジントルクと、読み込んだ燃料噴射量とに関連付けて記憶されているEGRバルブ開度を記憶部13より読み込む(S103)。制御部14は、エンジン1の回転数と、エンジントルクと、燃料噴射ノズル11の燃料噴射量と、エンジントルクと、EGRバルブ開度との関係を示す計算式を用いて、EGRバルブ開度を算出してもよい。
【0041】
制御部14は、読み込んだEGRバルブ開度でEGRバルブ8を開くことにより(S104)、排気ガスの一部をエンジン1に戻す量を調整する。制御部14は、圧力センサ10が測定した清浄後空気の圧力と、MAFセンサ9が測定した酸素濃度とを取得する(S105)。制御部14は、圧力センサ10が測定した清浄後空気の圧力が圧力目標値以上であるか否かを判定する(S106)。制御部14は、圧力センサ10が測定した清浄後空気の圧力が圧力目標値以上である場合に(S106のYES)、MAFセンサ9が測定した酸素濃度が濃度目標値以上であるか否かを判定する(S107)。制御部14は、MAFセンサ9が測定した酸素濃度が濃度目標値以上である場合に(S107のYES)、S101の処理に戻る。
【0042】
制御部14は、S106の判定において圧力センサ10が測定した清浄後空気の圧力が圧力目標値未満であると判定した場合に(S106のNO)、電動ファン222の回転を開始させ(S108)、S105の処理に戻る。制御部14は、S107の判定においてMAFセンサ9が測定した酸素濃度が濃度目標値未満であると判定した場合に(S107のNO)、S108の処理に移る。
【0043】
[本実施形態の空気供給システム100による効果]
本実施形態によれば、送風装置22は、電動ファン222により圧縮した空気をエンジン1に供給することができる。送風装置22は、空気清浄装置21と一体化されているので、空気清浄装置21と送風装置22とを個別に車両内に搭載する場合に比べて、2つの装置を車両内に搭載するためのスペースの確保を容易化することができる。制御部14は、電動ファン222を利用してエンジン1に供給される空気を圧縮するので、排気ガスの一部をエンジン1に戻す処理に起因してエンジン1の燃焼効率が低下することを抑制することができる。
【0044】
なお、以上の説明においては、空気供給システム100がコンプレッサ3及びタービン4を有しており、空気供給装置2から出た空気が、コンプレッサ3を介してエンジン1に供給される場合を例示したが、空気供給システム100がコンプレッサ3及びタービン4を有していなくてもよい。この場合、空気供給装置2から出た空気が直接エンジン1に供給される。
【0045】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0046】
1 エンジン
2 空気供給装置
3 コンプレッサ
4 タービン
5 吸気冷却器
6 吸気マニフォールド
7 クーラ
8 バルブ
9 MAFセンサ
10 圧力センサ
11 燃料噴射ノズル
12 回転数センサ
13 記憶部
14 制御部
15 バルブ
21 空気清浄装置
22 送風装置
100 空気供給システム
211 筐体
212 空気清浄エレメント
213 空気清浄装置入口
214 空気清浄装置出口
215 バルブ
221 モータ
222 電動ファン
223 送風装置出口
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンに空気を供給する空気供給システムであって、
前記車両の外部から取り込まれた空気から異物を除去する空気清浄手段と、
前記空気清浄手段の筐体と一体化され、前記異物が除去された清浄後空気を電動ファンの回転により前記エンジンに送り出す送風手段と、
前記電動ファンが回転していない間に、前記送風手段を通過していない前記清浄後空気を前記エンジンに輸送する第1経路と、
前記電動ファンが回転している間に、前記送風手段を通過した前記清浄後空気を前記エンジンに輸送する第2経路と、
前記第2経路から輸送された前記清浄後空気が前記第1経路に流入することを抑制するためのバルブと、
を備える、
空気供給システム。
【請求項2】
前記電動ファンを通過した空気を圧縮して前記エンジンに供給する過給手段をさらに備える、
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記エンジンに供給される空気の圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力が圧力目標値以下である場合に、前記送風手段の前記電動ファンを回転させる制御部と、
をさらに備える、
請求項1又は2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記圧力と前記圧力目標値との差分に基づいて、前記送風手段に供給する電力量を決定する、
請求項に記載の空気供給システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記送風手段に電力を供給する電池の残量に基づいて前記圧力目標値を決定する、
請求項に記載の空気供給システム。
【請求項6】
前記エンジンに供給される空気の酸素濃度を測定する酸素センサと、
前記酸素濃度が濃度目標値以下である場合に、前記送風手段の前記電動ファンを回転させる制御部と、
をさらに備える、
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記送風手段に電力を供給する電池の残量に基づいて前記濃度目標値を決定する、
請求項に記載の空気供給システム。
【請求項8】
車両に搭載されたエンジンに空気を供給する空気供給装置であって、
前記車両の外部から取り込まれた空気から異物を除去する空気清浄手段と、
前記空気清浄手段の筐体と一体化され、前記異物が除去された清浄後空気を電動ファンの回転により前記エンジンに送り出す送風手段と、
前記電動ファンが回転していない間に、前記送風手段を通過していない前記清浄後空気を前記エンジンに輸送する第1経路と、
前記電動ファンが回転している間に、前記送風手段を通過した前記清浄後空気を前記エンジンに輸送する第2経路と、
前記第2経路から輸送された前記清浄後空気が前記第1経路に流入することを抑制するためのバルブと、
を備える、
空気供給装置。