(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156821
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】流動接触分解触媒用添加物、その製造方法、該添加物を含む混合添加物および該混合添加物を含む流動接触分解触媒組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 29/40 20060101AFI20231018BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20231018BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231018BHJP
C10G 11/05 20060101ALI20231018BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B01J29/40 M
B01J37/00 F
B01J37/08
C10G11/05
C10G11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066413
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆喜
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博紀
(72)【発明者】
【氏名】藤野 李紗
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
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4H129NA20
4H129NA22
4H129NA26
4H129NA37
(57)【要約】
【課題】原料炭化水素油の処理プロセスの初期から終期までの間、高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得ることのできる流動接触分解触媒用添加物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む流動接触分解触媒用添加物であって、前記流動接触分解触媒用添加物中に前記ペンタシル型ゼオライトを25~60質量%含み、前記流動接触分解触媒用添加物に含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.30~0.53のモル比であり、前記ペンタシル型ゼオライトに含まれるアルミナに対する二酸化ケイ素の含有割合であるSiO2/Al2O3が25~40のモル比であり、耐摩耗性指数(CAI)が20以下である、流動接触分解触媒用添加物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む流動接触分解触媒用添加物であって、
前記流動接触分解触媒用添加物中に前記ペンタシル型ゼオライトを25~60質量%含み、
前記流動接触分解触媒用添加物に含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.30~0.53のモル比であり、
前記ペンタシル型ゼオライトに含まれるアルミナに対する二酸化ケイ素の含有割合であるSiO2/Al2O3が25~40のモル比であり、
耐摩耗性指数(CAI)が20以下である、流動接触分解触媒用添加物。
【請求項2】
ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む流動接触分解触媒用添加物の製造方法であって、
工程a;ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む混合スラリーを得る工程と、
工程b;前記混合スラリーを噴霧乾燥し、乾燥添加物を得る工程と、
工程c;前記乾燥添加物を、加熱処理し、流動接触分解触媒用添加物を得る工程と、を含む流動接触分解触媒用添加物の製造方法。
【請求項3】
添加物Aと添加物Bとからなる流動接触分解触媒用混合添加物であって、
前記添加物Aは、請求項1に記載の流動接触分解触媒用添加物であり、
前記添加物Bは、ZSM-5型ゼオライトと前記無機酸化物マトリックス成分からなり、
前記添加物B中に前記ZSM-5型ゼオライトを25~60質量%含み、
前記添加物Bに含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.20~0.30のモル比であり、
前記流動接触分解触媒用混合添加物中に前記添加物Aを25~75質量%含む、流動接触分解触媒用混合添加物。
【請求項4】
流動接触分解触媒と、請求項1に記載の流動接触分解触媒用添加物及び請求項3に記載の流動接触分解触媒用混合添加物のいずれか一方と、を含む流動接触分解触媒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解触媒用添加物、その製造方法、該添加物を含む混合添加物および該混合添加物を含む流動接触分解触媒組成物に関する。さらに詳しくは、原料炭化水素油の流動接触分解(以下「FCC」ともいう。)において、ガソリンのオクタン価を高め、低級オレフィンの生産量を増加させるために流動接触分解触媒(以下「FCC触媒」ともいう。)と共に使用される添加物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製油所の流動接触分解装置(以下「FCC装置」ともいう。)は、原料炭化水素油を接触分解してガソリン留分を製造することを主目的とする。原料炭化水素油を接触分解して得られるガソリン留分は、高オクタン価であることが望まれている。また、製油所によっては、FCC装置を用い、原料炭化水素油を接触分解してガソリン留分を生成することと同時に石油化学原料であるエチレン、プロピレン、ブテン等の低級オレフィンの生産量を高めることを要求される場合がある。
【0003】
この要求に応えるべく、FCCに使用される触媒に、ZSM-5型ゼオライトなどのペンタシル型ゼオライトを含有する組成物(以下「アディティブ触媒」ともいう。)をFCC触媒用添加剤として添加することにより、FCCを行う方法が種々提案がされている。
【0004】
このような添加剤として、たとえば特許文献1には、ペンタシル型ゼオライトおよび無機酸化物マトリックスからなる組成物であって、細孔直径が100nm程度のマクロ細孔を多く有するものが開示されている。特許文献2には、ペンタシル型ゼオライト、多孔性無機酸化物および五酸化リンからなる粒子である組成物であって、粒子の中心部分よりも表面部分の五酸化リンの含有量が多いものが開示されている。特許文献3には、プロピレン等の生産量を高めることのできる添加剤として、ZSM-5型ゼオライト等のゼオライト、リン酸塩、粘土、およびシリカを含むバインダーを含むFCC触媒用添加物が開示されている。さらに、特許文献4には、所定の特性を有する変性ZSM-5型ゼオライトと、充填材と、バインダーとを含有するFCC触媒用添加物が開示されている。
【0005】
また、特許文献5には、ゼオライトを多く含み、かつリンおよびアルミナを含む、耐摩耗性に優れた触媒が開示され、この触媒は、FCC法において触媒に添加して使用することができることが開示されている。さらに、特許文献6には、リン酸イオン含有水溶液によりゼオライトを処理することにより、ゼオライトの耐水熱性を向上させることが開示されている。さらに、特許文献7には、ゼオライト、カオリン、リン化合物、高密度の非反応性成分および任意に反応性アルミナを含むFCC触媒が開示され、この触媒は大孔径分子ふるい成分を使用する分解工程に対する添加剤としても適していることが開示されている。さらに、特許文献8には、P-NMRによる測定結果に基づいた特異なピークを有するFCC触媒用添加物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-270851号公報
【特許文献2】特開2007-244964号公報
【特許文献3】特表2014-527459号公報
【特許文献4】国際公開第2017/82345号
【特許文献5】特表2002-537976号公報
【特許文献6】特開平04-200744号公報
【特許文献7】特表2007-534485号公報
【特許文献8】国際公開第2019/131381号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】技術報告誌「触媒化成技報」Vol.13、No.1、P65、1966年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のFCC触媒用添加物には、流動接触分解される原料炭化水素油が重金属を多く含む場合もあり、エチレン、プロピレン等の低級オレフィンを高い収率で得るという観点から、さらなる改善の余地があった。従来のFCC触媒用添加物には、流動接触分解のプロセス初期において、FCC触媒が有する触媒活性の発現が遅延するという問題点があった。さらに、流動接触分解のプロセスにおいて長時間経過すると、来のFCC触媒用添加物は、使用により劣化してしまうという欠点を有する。その結果、従来のFCC触媒用添加物を用いて原料炭化水素油の接触分解を行っても低級オレフィンの収率低下が起こり易くなってしまう。
【0009】
このような観点から、流動接触分解による原料炭化水素油の処理プロセスにおいて、初期から終期までの長期間に渡って、原料炭化水素油を接触分解してガソリン留分を生成すると同時に、石油化学原料であるエチレン、プロピレン、ブテン等の低級オレフィンの生産量を高め、高い収率で低級オレフィンを継続して製造することは、産業プロセス上有用である。
【0010】
このような問題点に鑑み、本発明は、流動接触分解触媒と共に使用される流動接触分解触媒用添加物であって、原料炭化水素油の処理プロセスの初期から終期までの間、高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得ることのできる流動接触分解触媒用添加物およびその製造方法を提供することを目的としている。さらに、本発明は、上記流動接触分解触媒用添加物を含む混合添加物および上記混合添加物を含む流動接触分解触媒組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような技術的背景のもと、発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ペンタシル型ゼオライトと二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分とを含む所定の流動接触分解触媒用添加物が原料炭化水素油の処理プロセスの初期から終期までの間、高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得ることができることを知見し、本発明を開発するに至った。
【0012】
前記課題を解決し、上記の目的を実現するため開発した本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む流動接触分解触媒用添加物であって、前記流動接触分解触媒用添加物中に前記ペンタシル型ゼオライトを25~60質量%含み、前記流動接触分解触媒用添加物に含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.30~0.53のモル比であり、前記ペンタシル型ゼオライトに含まれるアルミナに対する二酸化ケイ素の含有割合であるSiO2/Al2O3が25~40のモル比であり、耐摩耗性指数(CAI)が20以下である、流動接触分解触媒用添加物。
[2]ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む流動接触分解触媒用添加物の製造方法であって、
工程a;ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む混合スラリーを得る工程と、
工程b;前記混合スラリーを噴霧乾燥し、乾燥添加物を得る工程と、
工程c;前記乾燥添加物を、加熱処理し、流動接触分解触媒用添加物を得る工程と、を含む流動接触分解触媒用添加物の製造方法。
[3]添加物Aと添加物Bとからなる流動接触分解触媒用混合添加物であって、
前記添加物Aは、請求項1に記載の流動接触分解触媒用添加物であり、
前記添加物Bは、ZSM-5型ゼオライトと無機酸化物マトリックス成分からなり、
前記添加物Bに前記ZSM-5型ゼオライトを25~60質量%含み、
前記添加物Bに含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.20~0.30のモル比であり、
前記流動接触分解触媒用混合添加物中に前記添加物Aを25~75質量%含む、流動接触分解触媒用混合添加物。
[4]流動接触分解触媒と、請求項1に記載の流動接触分解触媒用添加物及び請求項3に記載の流動接触分解触媒用混合添加物のいずれか一方と、を含む流動接触分解触媒組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る流動接触分解触媒用添加物によれば、原料炭化水素油の処理プロセスの初期から終期までの間、高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得ることができる。
さらに、本発明に係る流動接触分解触媒用添加物によれば、原料炭化水素油がバナジウム、ニッケル等の重金属を多く含む場合であっても高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得ることができる。また、本発明係る流動接触分解触媒用添加物の製造方法によれば、原料炭化水素油がバナジウム、ニッケル等の重金属を多く含む場合であっても高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得ることのできる流動接触分解触媒用添加物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[流動接触分解触媒用添加物]
本発明に係る流動接触分解触媒用添加物(FCC触媒用添加物)は、ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む流動接触分解触媒用添加物であって、前記流動接触分解触媒用添加物中に前記ペンタシル型ゼオライトを25~60質量%含み、前記流動接触分解触媒用添加物に含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.30~0.53のモル比であり、前記ペンタシル型ゼオライトに含まれるアルミナに対する二酸化ケイ素の含有割合であるSiO2/Al2O3が25~40のモル比であり、耐摩耗性指数(CAI)が20以下であることを特徴とする。以下、本発明に係るFCC触媒用添加物について詳細に説明する。
【0015】
本発明に係るFCC触媒用添加物は、ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む。ペンタシル型ゼオライトは、無機酸化物マトリックス成分中に分散している。ペンタシル型ゼオライトの例としては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48が挙げられる。これらのペンタシル型ゼオライト中でも、ZSM-5は、酸強度の高い固体酸を有し、高い形状選択性を示すため、ガソリンのオクタン価および低級オレフィンの収率を高める効果が大きいので、特に好ましい。
【0016】
本発明に係るFCC触媒用添加物は、流動接触分解触媒用添加物中にペンタシル型ゼオライトを25~60質量%含む。ペンタシル型ゼオライトの含有量は、プロピレン等の低級オレフィンの収率を高める観点から、流動接触分解触媒用添加物中に25質量%以上、好ましくは30質量%以上であることが好ましい。一方、ペンタシル型ゼオライトの含有量は、原料炭化水素油の過分解によって目的とする低級オレフィンの生成量を低下させない観点や、たとえば、FCC触媒用添加物の成形性または耐摩耗性等、実際に使用できる範囲の物性を維持する観点から、流動接触分解触媒用添加物中に60質量%以下、好ましくは50質量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係るFCC触媒用添加物は、ペンタシル型ゼオライトに含まれるアルミナに対する二酸化ケイ素の含有割合であるSiO2/Al2O3が25~40のモル比である。本発明に係るFCC触媒用添加物を構成するペンタシル型ゼオライトに含まれるケイ素とアルミニウムとの割合は、SiO2とAl2O3との質量比(SiO2の質量/Al2O3の質量)に換算すると、好ましくは25~40である。SiO2とAl2O3との質量比が25以上であると、ペンタシル型ゼオライト上の酸密度が高過ぎないため、原料炭化水素油の過分解を防ぎ、目的とするプロピレン等の低級オレフィンの収率を高めることができるため好ましい。一方、SiO2とAl2O3との質量比が40以下であると、ペンタシル型ゼオライト上の酸密度が適度となり、FCC触媒用添加物による原料炭化水素油の分解活性が優れるため好ましい。
【0018】
ペンタシル型ゼオライトの一次粒子径は、好ましくは0.3~5μmである。このペンタシル型ゼオライトの一次粒子径は、後述する実施例で採用した方法で測定されるメジアン径(D50)である。ペンタシル型ゼオライトの一次粒子径は、好ましくは0.3~5μmであることが好ましい。ペンタシル型ゼオライトの一次粒子径が0.3μm以上であれば、FCC触媒用添加物の耐水熱性が低下して低級オレフィンの収率が低下することを防ぐことができるため好ましい。さらに、ペンタシル型ゼオライトの一次粒子径が0.3μm以上であれば、FCC触媒用添加物内において、ペンタシル型ゼオライト粒子間の空隙が増加し、FCC触媒用添加物の嵩密度(ABD)が低下することにより、FCC触媒用添加物のアトリッションの悪化を防ぐことができるため好ましい。
【0019】
また、ペンタシル型ゼオライトの一次粒子径は、FCC触媒用添加物の粒子内でのゼオライトの固体酸または細孔による反応場の分散性の低下による触媒活性の低下を防ぐ観点からは、好ましくは5μm以下である。
【0020】
本発明に係るFCC触媒用添加物は、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分を含む。二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分は、FCC触媒用添加物中の各成分を結合するバインダーを含んでおり、このバインダーはリンを含む酸化物からなり、好ましくはリンおよびアルミニウムを含む酸化物からなる。無機酸化物マトリックスに含まれる二種のリン化合物であるリン酸アルミ由来のリン種は、主にバインダーとして機能し、リン酸由来のリン種はゼオライトのアルミを修飾する機能を発揮する。
【0021】
リン成分としては、オルトリン酸(以下、単に「リン酸」ともいう)、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、トリメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などが好ましい。
【0022】
FCC触媒用添加物中のリンの量は、五酸化二リン(P2O5)の量に換算すると、5質量%以上、好ましくは7質量%以上である。リンの量は、後述する実施例で採用した条件下でのICP発光分光分析法により測定することができる。リンの量がこの範囲にあると、FCC触媒用添加物は、バインダーがペンタシル型ゼオライトとアルミナ成分とカオリン等の増量材とを結合する力が大きいため耐摩耗性に優れ、さらに、ペンタシル型ゼオライトの水熱安定性が保たれることから、原料炭化水素油の接触分解においてプロピレン等の低級オレフィンの収率を高めることができるため好ましい。
【0023】
また、リンの量は、前記基準で、20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。リンの量がこの範囲にあると、FCC触媒用添加物の細孔容積が小さ過ぎず、細孔内で反応物が拡散され、原料炭化水素油の接触分解においてプロピレン等の低級オレフィンの収率を高めることができるため好ましい。
【0024】
FCC触媒用添加物に含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.30~0.53のモル比であることが好ましく、より好ましくは0.33~0.50のモル比である。P2O5/Al2O3が0.30のモル比以上であれば、添加剤の耐水熱性が向上するため好ましく、0.53以下であれば、耐摩耗性に優れるため好ましい。
【0025】
FCC触媒用添加物に含まれる任意のバインダーの量は、好ましくは5~25質量%、より好ましくは10~15質量%である。
【0026】
また、無機酸化物マトリックス成分は、FCC触媒用添加物に通常配合される無機酸化物からなる増量材を含んでいてもよい。増量材としては、たとえばカオリン、ベントナイト、およびハロイサイトなどの粘土鉱物が挙げられ、カオリンが特に好ましい。また、増量材は、これらの粘土鉱物の熱処理物であってもよい。FCC触媒用添加物に含まれる増量材の量は、FCC触媒用添加物の量から前記ペンタシル型ゼオライト、前記バインダーおよび前記アルミナ成分の合計量を差し引いた量である。
【0027】
本発明に係るFCC触媒用添加物の、BJH法により測定される細孔径2~50nmの範囲の細孔容積は、好ましくは0.03ml/g以上であり、その上限値は、たとえば0.08ml/gであってもよい。前記細孔容積が前記範囲内にあると、FCCにおいて原料炭化水素油がバナジウム、ニッケル等の重金属を多く含む場合であっても高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得ることができる。
【0028】
本発明に係るFCC触媒用添加物は、通常、微小球状粒子形状を有している。FCC触媒用添加物は、FCC装置で使用されるガソリン生成を目的としたフォージャサイト型ゼオライトを含有するFCC触媒と混合して使用することもできるため、前記FCC触媒用添加物の粒子の大きさは、好ましくは通常のFCC触媒と同程度か、または、それより大きい。後述する実施例で採用した条件下でレーザー回折・散乱法により測定されるFCC触媒用添加物を構成する微小球状粒子の平均粒子径は、好ましくは40~140μm、より好ましくは60~120μmである。
【0029】
[流動接触分解触媒用添加物の製造方法]
本発明に係る流動接触分解触媒用添加物の製造方法は、ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む流動接触分解触媒用添加物の製造方法であって、
工程a;ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む混合スラリーを得る工程と、
工程b;前記混合スラリーを噴霧乾燥し、乾燥添加物を得る工程と、
工程c;前記乾燥添加物を、加熱処理し、流動接触分解触媒用添加物を得る工程と、を含むことを特徴としている。
以下、本発明に係る流動接触分解触媒用添加物の製造方法(FCC触媒用添加物の製造方法)が含む各工程について説明する。
【0030】
(工程a;混合スラリーを得る工程)
本発明に係るFCC触媒用添加物の製造方法は、工程a;ペンタシル型ゼオライトと、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分と、を含む混合スラリーを得る工程を含む。工程aにおいて、混合スラリーに含まれるペンタシル型ゼオライトの具体的態様、および好ましい態様は前述のとおりである。
【0031】
本発明に係るFCC触媒用添加物の製造方法では、まず、ペンタシル型ゼオライト、二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分を混合してスラリーを調製する。無機酸化物マトリックス成分には、リンを含む酸化物又はリン及びアルミニウムを含む酸化物からなるバインダー原料、増量材、および分散媒、ならびに必要に応じて任意のバインダー原料を含んでいてもよい。なお、任意のバインダーとしては、シリカ、シリカ-マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ-ジルコニアおよび珪酸カルシウムなどの無機酸化物が挙げられる。
【0032】
混合スラリーの調製には、従来公知の方法を適用することができる。混合スラリーに含まれる固形分の濃度は、後述する工程bにおいて実施される混合スラリーの噴霧乾燥の操作の観点から、好ましくは25~60質量%程度である。
【0033】
すなわち、混合スラリーに含まれるペンタシル型ゼオライトの量は、プロピレン等の低級オレフィンの収率が高いFCC触媒用添加物を得る観点から25質量%以上、好ましくは30質量%以上であることが好ましい。一方、混合スラリーに含まれるペンタシル型ゼオライトの量は、原料炭化水素油の過分解によって目的とする低級オレフィン生成量を低下させることなくFCC触媒用添加物を得る観点から60質量%以下、好ましくは50質量%以下であることが好ましい。なお、混合スラリーに含まれるペンタシル型ゼオライトの量は、混合スラリーを構成する分散媒以外の固形分の質量に対するペンタシル型ゼオライトの質量%濃度として規定される。
【0034】
二種のリン化合物を含む無機酸化物マトリックス成分は、FCC触媒用添加物中の各成分を結合するためのバインダー原料を含んでいる。このバインダー原料は、リンを含む酸化物又はリンおよびアルミニウムを含む酸化物からなる。リンを含む酸化物としては、加熱(たとえば500~750℃)により、リン酸イオン(PO4
3-)を発生させる化合物が好ましい。リン及びアルミニウムを含む酸化物としては、リン酸二水素アルミニウム(Al(H2PO4)3)、リン酸水素アルミニウム(Al2(HPO4)3)、リン酸アルミニウム(AlPO4)等の化合物が挙げられる。これらの化合物の中でも、FCC触媒用添加物中の各成分の硬化結合性、またはゼオライトと反応性が高いという観点から、リン酸二水素アルミニウム(Al(H2PO4)3)が好ましい。
【0035】
これらの化合物は、1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。リンを含むバインダー原料は、好ましくは主成分(70質量%以上を占める成分)としてリン酸二水素アルミニウムを含むことが好ましい。
【0036】
リンを含むバインダー原料として、その水溶液を使用してもよい。水溶液として、市販品であれば、リン酸二水素アルミニウム(Al(H2PO4)3)水溶液(銘柄:50L、100L、アシドホス120M、多木化学(株)製)、などが挙げられる。
【0037】
リンを含むバインダー原料は、リンの量が五酸化二リン(P2O5)に換算して5~20質量%、好ましくは6~15質量%となる量(ただし、前記スラリーの分散媒以外の成分の合計量を100質量%とする。)で用いられる。リンの量が5質量%以上であると、耐摩耗性に優れ、原料炭化水素油の接触分解においてプロピレン等の低級オレフィンを高収率で得ることのできるFCC触媒用添加物を製造することができるため好ましい。一方、リンの量が15質量%以下であると、初期活性の著しい低下を抑制し、耐摩耗性に優れるため好ましい。
【0038】
リン成分としては、オルトリン酸(以下、単に「リン酸」ともいう)、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、トリメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などが好ましい。
【0039】
(工程b;乾燥添加物を得る工程)
次に、本発明に係るFCC触媒用添加物の製造方法は、工程b;前記混合スラリーを噴霧乾燥し、乾燥添加物を得る工程を含む。工程bは、工程aで得られた混合スラリーを噴霧乾燥する工程である。かかる混合スラリーの噴霧乾燥により、乾燥添加物を得ることができる。また、工程bにおいて、乾燥添加物を粉砕して、乾燥添加物の粉末を得るようにしてもよい。なお、混合スラリーの噴霧乾燥は、噴霧乾燥機を用いて、公知の方法によって行うことができる。
【0040】
工程bにおいて、混合スラリーを噴霧乾燥する条件は、たとえば以下のとおりである。
・スプレー入口温度:200~450℃
・噴霧乾燥機出口温度:110~350℃
【0041】
その後、混合スラリーの噴霧乾燥により得られた乾燥添加物の粉末を常温(たとえば0~40℃)にまで放冷する。乾燥添加物の粉末を放冷した後、当該粉末を分級して、平均粒子径をたとえば40~140μm、好ましくは60~120μmに調整する。
【0042】
(工程c;流動接触分解触媒用添加物を得る工程)
次いで、本発明に係るFCC触媒用添加物の製造方法は、工程c;前記乾燥添加物を、加熱処理し、流動接触分解触媒用添加物を得る工程を含む。工程cは、工程bで得られた乾燥添加物を500~750℃、好ましくは550~700℃の温度で、好ましくは0.2~5.0時間、より好ましくは0.5~2.0時間加熱処理を行う工程である。工程cにおいて、乾燥添加物を加熱処理することにより、FCC触媒用添加物を得ることができる。
【0043】
乾燥添加物を粉砕した場合には、当該乾燥添加物の粉末を150℃/時間以上、好ましくは180℃/時間以上の昇温速度で加熱する。昇温速度が150℃/時間よりも小さいと、アルミナ成分とリンを含むバインダー原料との反応が過度に進行してしまい、FCC触媒用添加物の重金属被毒によりプロピレン等の低級オレフィンの収率が低下してしまう場合があるため好ましくない。昇温速度の上限は、昇温装置にもよるが、たとえば800℃/時間であってもよい。
【0044】
加熱熱処理は、リンを含むバインダー原料をより拡散させ、ゼオライト酸点の修飾を促進させ、さらにはポリリン酸によるゼオライト細孔の閉塞を抑制する観点から、好ましくは水蒸気雰囲気下で行われる。
【0045】
[流動接触分解触媒組成物]
本発明に係る流動接触分解触媒組成物は、流動接触分解触媒(FCC触媒)と、上記流動接触分解触媒用添加物(FCC触媒用添加物)及び後述する流動接触分解触媒用混合添加物のいずれか一方を含んで混合した触媒組成物である。すなわち、本発明に係る流動接触分解触媒組成物は、FCC触媒用添加物の用途として、上記FCC触媒用添加物(以下、「アディティブ触媒」ともいう。)をFCC装置での原料炭化水素油の流動接触分解において使用されるフォージャサイト型ゼオライトを含有するFCC触媒と混合した触媒組成物)として提案されるものである。
【0046】
フォージャサイト型ゼオライトを含有するFCC触媒としては、FCC装置で使用される通常のFCC触媒が使用可能である。この様なFCC触媒としては、市販のFCC触媒、例えば、DCT、ACZ、CVZ(いずれも日揮触媒化成(株)製の製品の商標または登録商標)などが例示される。
【0047】
FCC触媒用添加物の量は、FCC触媒用添加物およびFCC触媒の合計量を100質量%とすると、FCCにおいて原料炭化水素油が重金属を多く含む場合であっても高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得る観点からは、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であることが好ましい。一方、FCC触媒用添加物の量は、原料炭化水素油の分解活性の観点からは、一般的には30質量%以下で使用されるが、ライトオレフィン類を増産させる新規プロセスなどでは60質量%まで添加してもよい。
【0048】
また、FCC触媒用添加物としては、本発明のFCC触媒用添加物のみ用いてもよいが、他のFCC触媒用添加物を混合したFCC触媒用混合添加物を用いてもよい。
【0049】
本発明に係る流動接触分解触媒用混合添加物は、添加物Aと添加物Bとからなる流動接触分解触媒用混合添加物である。本発明に係る流動接触分解触媒用混合添加物に含まれる添加物Aは、上記流動接触分解触媒用添加物である。添加物Bは、ZSM-5型ゼオライトと上記無機酸化物マトリックス成分からなる。
添加物Bは、当該添加物B中にZSM-5型ゼオライトを25~60質量%含んでいる。添加物Bに含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.20~0.30のモル比である。さらに、流動接触分解触媒用混合添加物中に添加物Aを25~75質量%含む。
【0050】
本発明に係る流動接触分解触媒用混合添加物に含まれる添加物Aは、初期の触媒活性は高くないものの、スチーミング後に高い触媒活性を維持することができる。
これに対して、添加物Bは、初期の触媒活性が高いものの、スチーミング後に触媒活性が低下する。このため、いずれか一方の添加物をFCC装置内で使用した場合には、原料炭化水素油の処理プロセスの初期から終期において、触媒活性の変化が生じやすく、安定した触媒活性を持続することができない。その結果、原料炭化水素油の処理プロセスの初期から終期において、安定した触媒活性を持続させるために添加物の添加量等を適時調整する必要が生じる。このような観点から、本発明に係る流動接触分解触媒用混合添加物は、添加物Aと添加物Bとを所定の割合にて混合することにより、初期から一定期間、安定した触媒活性を持続することができると同時に、添加剤の添加量、添加時期等の条件を調整する頻度を低くすることができる。
【0051】
本発明に係る流動接触分解触媒用混合添加物は、異なる種類の流動接触分解触媒用混合添加物を含む混合添加物である。本発明に係る流動接触分解触媒用混合添加物は、一方の流動接触分解触媒用添加物である添加物Bがペンタシル型ゼオライトとして、ZSM-5型ゼオライトを採用し、さらに添加物Bに含まれるアルミナに対するリンの含有割合が、リン成分をP2O5換算でP2O5/Al2O3が0.20~0.30のモル比であることを技術的特徴としている。
【0052】
本発明に係るFCC触媒用添加物、又は流動接触分解触媒用混合添加物が使用される原料炭化水素油の流動接触分解プロセスでは、FCC触媒用添加物として本発明に係るFCC触媒用添加物等が使用される点を除いて、通常のFCC装置における炭化水素油の流動接触分解条件を採用することができる。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
[FCC触媒用添加物の測定方法ないし評価方法]
実施例等におけるFCC触媒用添加物の測定方法およびFCC触媒用添加物の評価試験方法は、以下の通りである。
【0055】
(各元素の含有量の測定方法)
FCC触媒用添加物に含まれる各元素の質量分析は、Naは原子吸光光度計、Na以外は誘導結合プラズマ分光分析装置をそれぞれ用いて行った。具体的には、ゼオライト(ZSM-5)または触媒に硫酸とフッ化水素酸を加えて加熱し、乾固させ、乾固物を濃塩酸に溶解し、水で濃度10~100質量ppmに希釈した測定用溶液を調製した。次に、調製した測定用溶液を株式会社 日立ハイテクサイエンス社製の原子吸光光度計(Z-2310)、(株)島津製作所製 誘導結合プラズマ分光分析装置(ICPS-8100)をそれぞれ用いて分析した。
【0056】
(FCC触媒用添加物および触媒の平均粒子径)
試料の粒度分布の測定を、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-300)にて行った。具体的には、光線透過率が70~95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度:2.8L/分、超音波照射:3分間、反復回数:30回の条件で測定した。メジアン径(D50)を平均粒子径として採用した。
【0057】
(FCC触媒用添加物の比表面積、細孔容積)
比表面積(SA)、細孔径が50nm以下の細孔の細孔容積の測定は、マイクロトラック・ベル株式会社製のBELSORP-mini Ver2.5.6にて行った。具体的には、触媒を500℃で1時間前処理した試料を用い、吸着ガスには窒素を用いて測定した。FCC触媒用添加物の比表面積(SA)はBET法、FCC触媒用添加物の細孔径が2nm以下のマイクロポアの容積はMP法、細孔径が2~50nmのメソポアの容積はBJH法にて算出した。
【0058】
(耐摩耗性指数;CAI)
耐摩耗性指数(CCIC Attrition Index、CAI)は、触媒化成技報Vol.13、No.1、P65、1966(非特許文献1)に記載された方法により測定される値である。FCC触媒用添加物の耐摩耗性指数(CAI)を上記非特許文献に記載された方法により測定した。なお、耐摩耗性指数(CAI)が高い程、触媒が使用時に粉化しやすいことを意味する。
【0059】
(嵩密度;ABD)
嵩密度(ABD)は、調製した触媒サンプルを600℃にて2時間、大気中で焼成処理し、冷却後振動を与えずにメスシリンダー入れ、体積と質量から算出した。
【0060】
[実施例1]
添加物調製1
イオン交換水4000gにZSM-5ゼオライト粉末(SiO2/Al2O3比=37.6、固形分濃度:97質量%)990gおよびカオリン(Al2O3濃度:36.5質量%)1287gを懸濁し、良く撹拌した後、第一リン酸アルミニウム水溶液(P2O5濃度:33.0質量%、Al2O3濃度:8.5質量%)723gおよびリン酸水溶液(P2O5濃度:61.6質量%)117gを加え、良く撹拌することで調合スラリーを得た。得られた調合スラリーを入口温度240℃、出口温度135℃となるように噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が80μmの噴霧乾燥粉体を得た。得られた噴霧乾燥粉体をマッフル炉にて600℃で1時間焼成することで、FCC触媒用添加物である添加物1を得た。
【0061】
[実施例2]
添加物調製2
イオン交換水4000gにZSM-5ゼオライト粉末(SiO2/Al2O3比=37.6、固形分濃度:97%)990gおよびカオリン(Al2O3濃度:36.5質量%)1243gを懸濁し、良く撹拌した後、第一リン酸アルミニウム水溶液(P2O5濃度:33.0質量%、Al2O3濃度:8.5質量%)723gおよびリン酸水溶液(P2O5濃度:61.6質量%)175gを加え、良く撹拌することで調合スラリーを得た以外は実施例1と同様に実施して添加物2を得た。
【0062】
[実施例3]
添加物調製3
イオン交換水4000gにZSM-5ゼオライト粉末(SiO2/Al2O3比=37.6、固形分濃度:97質量%)990gおよびカオリン(Al2O3濃度:36.5質量%)1200gを懸濁し、良く撹拌した後、第一リン酸アルミニウム水溶液(P2O5濃度:33.0質量%、Al2O3濃度:8.5質量%)723gおよびリン酸水溶液(P2O5濃度:61.6質量%)234gを加え、良く撹拌することで調合スラリーを得た以外は実施例1と同様に実施して添加物3を得た。
【0063】
[比較例1]
添加物調製R1
イオン交換水4000gにZSM-5ゼオライト粉末(SiO2/Al2O3比=37.6、固形分濃度:97質量%)990gおよびカオリン(Al2O3濃度:36.5質量%)1373gを懸濁し、良く撹拌した後、第一リン酸アルミニウム水溶液(P2O5濃度:33.0質量%、Al2O3濃度:8.5質量%)723gを加え、良く撹拌することで調合スラリーを得た以外は実施例1と同様に実施し添加物R1を得た。
【0064】
[比較例2]
添加物調製R2
イオン交換水4000gにZSM-5ゼオライト粉末(SiO2/Al2O3比=37.6、固形分濃度:97質量%)990gおよびカオリン(Al2O3濃度:36.5質量%)1157gを懸濁し、良く撹拌した後、第一リン酸アルミニウム水溶液(P2O5濃度:33.0質量%、Al2O3濃度:8.5質量%)723gおよびリン酸水溶液(P2O5濃度:61.6質量%)292gを加え、良く撹拌することで調合スラリーを得た以外は実施例1と同様に実施し添加物R2を得た。
【0065】
実施例1~3においてそれぞれ調製したFCC触媒用添加物1~3、比較例1~2においてそれぞれ調製したFCC触媒用添加物R1およびR2の化学組成および物理性状を表1に示す。
【0066】
【0067】
(触媒性能)
実施例1~3でそれぞれ製造されたFCC触媒用添加物1~3、FCC触媒用添加物R1及びR2をACE-MAT(Advanced Cracking Evaluation - Micro Activity Test)を用い、同一原料油、同一反応条件下で触媒の評価試験を行った。触媒の評価試験を行う前に、各FCC触媒用添加物、あるいは各FCC触媒用添加物を組み合わせた添加物組成物を2時間大気雰囲気下、600℃で焼成した後、810℃で13時間及び60時間、100%スチーム雰囲気下で前処理をした。
【0068】
FCC平衡触媒(日揮触媒化成株式会社製、CVZ触媒)に前処理したFCC触媒用添加物を、混合触媒中のFCC触媒用添加物あるいは添加物組成物の量が2.4重量%の一定量となるようにブレントして混合触媒を調製し、ACE-MAT活性試験装置で混合触媒の評価(プロピレンの収量(質量%)の測定)をした。なお、実施例4においては、添加剤2と添加剤R1とをブレンドしたものを添加物組成物として使用し、比較例3においては、添加剤R1と添加剤R2とをブレンドしたものを添加物組成物として使用した。
【0069】
反応条件は、以下のとおりであった。
・反応温度:510℃
・原料油:脱硫減圧軽油(DSVGO)100質量%の油
・WHSV:8h-1
・触媒/油比:5質量%/1質量%
FCC触媒用添加物を含む混合触媒の評価結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
[FCC触媒用添加物の活性評価結果]
表2に示されるように、触媒の活性評価結果によれば、実施例1~4にて調製したFCC触媒用添加物を含むFCC触媒組成物は、比較例1~3にて調製したFCC触媒組成物と比較して高いプロピレン収率(収量)に優れることが明らかとなった。
以上説明したように、本発明に係る流動接触分解触媒用添加物は、原料炭化水素油の処理プロセスの初期から終期までの間、高い収率でプロピレン等の低級オレフィンを得ることができ好適であり、産業上有用である。