(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156840
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】超音波診断装置、解析装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
A61B8/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066441
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本庄 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】今村 智久
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD14
4C601DD15
4C601DD19
4C601DD23
4C601EE09
4C601FF08
(57)【要約】
【課題】周期的に運動する臓器に対してもSWEを適用可能とすること。
【解決手段】超音波診断装置は、第1算出部と、第2算出部とを備える。前記第1算出部は、周期的に運動する臓器の経時的な変位に関する第1超音波情報に基づいて、当該臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する。前記第2算出部は、前記関数と、前記臓器が加圧された後の前記臓器の経時的な変位に関する第2超音波情報とに基づいて、前記加圧により前記臓器を伝播する横波を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に運動する臓器の経時的な変位に関する第1超音波情報に基づいて、当該臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する第1算出部と、
前記関数と、前記臓器が加圧された後の前記臓器の経時的な変位に関する第2超音波情報とに基づいて、前記加圧により前記臓器を伝播する横波を算出する第2算出部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記第2算出部は、前記関数に基づいて、前記第2超音波情報から前記クラッタ成分を除去することで前記横波を算出する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記関数により表現される前記臓器からの前記クラッタ成分と、前記第2超音波情報が示す前記臓器の経時的な変位と、を同期させる同期部を更に備え、
前記第2算出部は、前記同期部により同期された前記関数と、前記第2超音波情報とに基づいて、前記横波を算出する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記同期部は、前記臓器の心電波形に基づいて、前記関数により表現される前記臓器からの前記クラッタ成分と、前記第2超音波情報が示す前記臓器の経時的な変位と、を同期させる、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記同期部は、前記関数により表現される前記臓器からの前記クラッタ成分と、前記第2超音波情報が示す前記臓器の経時的な変位との類似度を算出する相互関数に基づいて、前記関数により表現される前記臓器の経時的な変位と、前記第2超音波情報が示す前記臓器の経時的な変位と、を同期させる、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記関数により表現される前記臓器からの前記クラッタ成分と、前記第2超音波情報が示す前記臓器の経時的な変位とが類似している度合いを示す類似度が閾値未満の場合に通知する通知部を更に備える、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記第1算出部は、前記臓器の経時的な変位が少なくとも1周期以上含まれている前記第1超音波情報に基づいて、当該臓器からの前記クラッタ成分に関する前記関数を算出する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記関数に基づいて、前記第2超音波情報に含まれる、前記臓器が加圧されている期間の変位の誤差を補正する補正部を更に備える、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
パルス状の超音波を照射し、反射波を受信する超音波プローブを更に備え、
前記超音波プローブは、前記第1超音波情報を取得するためにパルス状の超音波を繰り返し照射した後に、前記臓器を加圧するパルス状の超音波の繰り返しの照射と、前記第2超音波情報を取得するためのパルス状の超音波の繰り返しの照射と、を交互に実行する、
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
周期的に運動する臓器の経時的な変位に関する第1超音波情報に基づいて、当該臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する第1算出部と、
前記関数と、前記臓器が加圧された後の前記臓器の経時的な変位に関する第2超音波情報とに基づいて、前記加圧により前記臓器を伝播する横波を算出する第2算出部と、
を備える解析装置。
【請求項11】
コンピュータを、
周期的に運動する臓器の経時的な変位に関する第1超音波情報に基づいて、当該臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する第1算出部と、
前記関数と、前記臓器が加圧された後の前記臓器の経時的な変位に関する第2超音波情報とに基づいて、前記加圧により前記臓器を伝播する横波を算出する第2算出部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置、解析装置、及びプログラムに関する。
【0002】
従来、超音波を使用して被検体の臓器の硬さ分布を計測するSWE(Shear Wave Elastography)と呼ばれる技術がある。超音波診断装置は、SWEにおいて、超音波により臓器を加圧することで臓器に横波を発生させる。そして、超音波診断装置は、臓器を伝播する横波による変位を計測することで、臓器の各点の硬さを推定する。
【0003】
しかしながら、心臓などの周期的に運動する臓器は、臓器自体の運動により変位するため、加圧による横波の変位を計測することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、周期的に運動する臓器に対してもSWEを適用可能とすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波診断装置は、第1算出部と、第2算出部とを備える。前記第1算出部は、周期的に運動する臓器の経時的な変位に関する第1超音波情報に基づいて、当該臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する。前記第2算出部は、前記関数と、前記臓器が加圧された後の前記臓器の経時的な変位に関する第2超音波情報とに基づいて、前記加圧により前記臓器を伝播する横波を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、超音波診断装置による計測結果の一例を示すグラフである。
【
図3】
図3は、超音波診断装置による超音波を照射する順番の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1変位情報に基づいた関数の算出方法の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、関数により表現される臓器の経時的な変位とトラッキングパルスの反射波データが示す変位との同期の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、第2変位情報と関数とに基づいた横波の算出方法の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る超音波診断装置が実行する計測処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に関する超音波診断装置、解析装置、及びプログラムについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置100の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、超音波診断装置100は、超音波プローブ101、入力インタフェース102、ディスプレイ103、及び装置本体104を有する。超音波プローブ101、入力インタフェース102、及びディスプレイ103は、装置本体104と通信可能に接続される。
【0010】
超音波プローブ101は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、装置本体104が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。例えば、SWEにおいて、超音波プローブ101は、パルス状の超音波を照射し、反射波を受信する。なお、超音波プローブ101は、装置本体104と着脱自在に接続される。
【0011】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0012】
なお、超音波プローブ101の形態は特に問わず、如何なる形態の超音波プローブが用いられてもよい。例えば、超音波プローブ101は、被検体Pを2次元で走査する1Dアレイプローブであってもよい。また、超音波プローブ101は、被検体Pを3次元で走査するメカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブであってもよい。
【0013】
入力インタフェース102は、操作者から各種の指示及び情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース102は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して装置本体104の処理回路170に出力する。例えば、入力インタフェース102は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、入力インタフェース102は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース102の例に含まれる。
【0014】
ディスプレイ103は、各種の情報及び画像を表示する。具体的には、ディスプレイ103は、処理回路170から送られる情報及び画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。なお、超音波診断装置100が備える出力装置としては、ディスプレイ103に限らず、例えば、スピーカーを備えていても良い。例えば、スピーカーは、装置本体104の処理状況を操作者に通知するために、ビープ音等の所定の音声を出力する。
【0015】
装置本体104は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。例えば、装置本体104は、超音波プローブ101が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像を生成する。また、装置本体104は、超音波プローブ101が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像を生成する。
【0016】
装置本体104は、
図1に示すように、送受信回路110、バッファメモリ120、信号処理回路130、画像生成回路140、記憶回路150、NW(network)インタフェース160、及び処理回路170を有する。送受信回路110、バッファメモリ120、信号処理回路130、画像生成回路140、記憶回路150、NWインタフェース160、及び処理回路170は、互いに通信可能に接続される。
【0017】
装置本体104は、超音波走査される被検体Pの心臓の拍動に伴う心筋細胞の電位を記録する心電計が接続されてもよい。心電計は、被検体Pの心臓の拍動を示す心電波形を生成する。
【0018】
送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0019】
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog to Digital)変換器、直交検波回路等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。そして、送受信回路110は、生成した反射波データをバッファメモリ120に記憶させる。
【0020】
プリアンプは、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン調整(ゲイン補正)を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換することでゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。直交検波回路は、A/D変換された反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。
【0021】
直交検波回路は、I信号およびQ信号を、反射波データとして出力する。以下、I信号及びQ信号を総称する場合、IQ信号という。また、IQ信号はA/D変換されたデジタルデータであるため、IQデータともいう。
【0022】
バッファメモリ120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子によって実現される。バッファメモリ120は、送受信回路110から出力された反射波データを記憶する。
【0023】
信号処理回路130は、バッファメモリ120から取得した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。また、信号処理回路130は、バッファメモリ120から取得した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の周期的に運動する臓器の組織、造影剤である。
【0024】
また、信号処理回路130は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、信号処理回路130は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、信号処理回路130は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0025】
画像生成回路140は、信号処理回路130が生成したデータから超音波画像を生成する。例えば、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元のBモード画像を生成する。
【0026】
また、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成したドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
【0027】
また、例えば、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成した1走査線上のBモードデータの時系列データから、Mモード画像を生成することも可能である。また、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成したドプラデータから、血流や組織の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形を生成することも可能である。
【0028】
ここで、画像生成回路140は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、画像生成回路140は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像を生成する。また、画像生成回路140は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路140は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0029】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前のデータであり、画像生成回路140が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の画像データである。以下、スキャンコンバート処理前のデータ(Bモードデータ及びドプラデータ)を、「RAWデータ」ともいう。
【0030】
画像生成回路140は、RAWデータである2次元のBモードデータや2次元のドプラデータから、2次元の超音波画像である、2次元のBモード画像や2次元のドプラ画像を生成する。また、画像生成回路140は、例えば2次元のBモード画像上にカラードプラ画像を重畳させた重畳画像も生成することができる。
【0031】
記憶回路150は、各種のデータを記憶する。例えば、記憶回路150は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。例えば、記憶回路150は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク(Hard Disk Drive:HDD)、光ディスク等によって実現される。
【0032】
また、記憶回路150が記憶するデータは、NWインタフェース160を経由して、外部装置へ転送することができる。なお、外部装置は、例えば、画像診断を行う医師が使用するPC(Personal Computer)やタブレット端末、画像を保管する画像保管装置、プリンター等である。
【0033】
NWインタフェース160は、装置本体104と外部装置との間で行われる通信を制御する。具体的には、NWインタフェース160は、外部装置から各種の情報を受信し、受信した情報を処理回路170に出力する。例えば、NWインタフェース160は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0034】
処理回路170は、超音波診断装置100の処理全体を制御する。具体的には、処理回路170は、入力インタフェース102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路150から読み込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、信号処理回路130、及び画像生成回路140の処理を制御する。また、処理回路170は、超音波画像の表示を制御する。
【0035】
また、処理回路170は、照射制御機能171、計測結果取得機能172、運動推定機能173、関数適用機能174、通知機能175、誤差補正機能176、クラッタ除去機能177、及び表示制御機能178を実行する。ここで、例えば、処理回路170の構成要素である照射制御機能171、計測結果取得機能172、運動推定機能173、関数適用機能174、通知機能175、誤差補正機能176、クラッタ除去機能177、及び表示制御機能178の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路150に記憶されている。処理回路170は、プロセッサである。例えば、処理回路170は、プログラムを記憶回路150から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路170は、
図1の処理回路170内に示された各機能を有することとなる。なお、
図1においては単一のプロセッサにて、照射制御機能171、計測結果取得機能172、運動推定機能173、関数適用機能174、通知機能175、誤差補正機能176、クラッタ除去機能177、及び表示制御機能178にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路170を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、
図1においては単一の記憶回路150が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路170は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0036】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路150に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路150にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0037】
超音波診断装置100は、被検体Pの臓器の硬さ分布を計測するSWE(Shear Wave Elastography)を実行する。超音波診断装置100は、心臓などの周期的に運動する臓器に対して、SWEを実行する。また、臓器は、心臓に限らず、周期的な運動を行う臓器であればよい。例えば、臓器は、拍動する循環器であってもよいし、拍動する血管であってもよいし、これら以外の臓器であってもよい。
【0038】
超音波診断装置100は、SWEにおいて、計測対象の臓器に対してパルス状の超音波を照射することにより加圧する。また、超音波診断装置100は、加圧により発生した、臓器を伝播する横波を計測する。ここで、柔らかい部分と、硬い部分とでは、加圧された時の臓器の各点の移動量、つまり変位は異なる。そこで、超音波診断装置100は、横波を計測することで臓器の各部の硬さを推定する。そして、超音波診断装置100は、硬さの推定結果を画像化して表示する。これにより、医療従事者は、病変を発見することができる。
【0039】
しかしながら、心臓などの周期的に運動する臓器は、臓器自体が変位する。すなわち、周期的に運動する臓器から取得した変位には、臓器自体の変位と、加圧による横波の変位とが含まれている。そこで、超音波診断装置100は、計測対象の臓器から取得した変位のうち、臓器自体の変位などのクラッタ成分を除去する。これにより、超音波診断装置100は、加圧した臓器を伝播する横波による変位を取得する。
【0040】
ここで、
図2は、超音波診断装置100による計測結果の一例を示すグラフである。
図2に示すグラフは、縦軸が被検体Pの臓器の移動量である変位を示す、横軸が超音波の照射回数を示す。すなわち、
図2に示すグラフは、被検体Pの臓器に照射した超音波に対するドプラデータをプロットしたものである。
【0041】
超音波診断装置100は、SWEにおいて、リファレンス期間、プッシュ期間、及びトラッキング期間にパルス状の超音波を照射する。リファレンス期間は、計測対象の臓器の周期的な運動を計測する期間である。超音波診断装置100は、リファレンスパルスをリファレンス期間に照射し、リファレンスパルスの反射波を受信する。これにより、超音波診断装置100は、臓器の周期的な運動による変位を取得する。リファレンスパルスは、リファレンス期間に照射するパルス状の超音波である。
【0042】
プッシュ期間は、計測対象の臓器を加圧する期間である。超音波診断装置100は、プッシュ期間にプッシュパルスを照射することで臓器を加圧する。プッシュパルスは、プッシュ期間に照射するパルス状の超音波であって、計測対象の臓器を押す超音波である。なお、超音波診断装置100は、プッシュ期間は反射波を取得しない。
【0043】
トラッキング期間は、臓器を加圧したことにより臓器を伝番する横波の変位を計測する期間である。超音波診断装置100は、トラッキング期間にトラッキングパルスを照射し、リファレンスパルスの反射波を受信する。これにより、超音波診断装置100は、臓器を伝播する横波の変位を取得する。
【0044】
図2に示すプッシュパルスを照射するプッシュ期間において、超音波診断装置100は、反射波を受信しない。そのため、リファレンス期間と、トラッキング期間との間において、連続性が失われ、誤差が発生する。さらに、
図2に示すように、計測対象の臓器は、臓器自体が変位する。よって、ドプラデータには、臓器を伝播する横波の計測の障害となる成分が含まれている。
【0045】
そこで、超音波診断装置100は、リファレンス期間において、周期的に運動する臓器が少なくとも1周期以上は運動する期間はリファレンスパルスを繰り返し照射する。超音波診断装置100は、リファレンス期間に繰り返し照射したリファレンスパルスの反射波データからドプラデータを生成する。そして、超音波診断装置100は、ドプラデータにより、周期的に運動する臓器の経時的な変位が記録された第1変位情報を生成する。また、超音波診断装置100は、第1変位情報に基づいて、周期的に運動する臓器の経時的な変位を表現した関数を算出する。そして、超音波診断装置100は、関数に基づいて、プッシュパルスにより連続性が失われた部分を補完し、臓器自体の変位を除去することで、臓器を伝播する横波の変位を抽出する。
【0046】
具体的には、超音波診断装置100は、以下機能により実現する。
【0047】
照射制御機能171は、超音波プローブ101を制御して、リファレンス期間、プッシュ期間、及びトラッキング期間に、パルス状の超音波を照射するする。更に詳しくは、照射制御機能171は、超音波プローブ101にリファレンス期間にパルス状の超音波であるリファレンスパルスを所定期間が経過する毎に繰り返し照射させる。照射制御機能171は、リファレンス期間に、周期的に運動する臓器に対して少なくとも1周期以上の期間はリファレンスパルスを繰り返し照射させる。すなわち、照射制御機能171は、心臓等の臓器が1拍動以上の期間はリファレンスパルスを照射する。また、照射制御機能171は、リファレンスパルスを照射する間の拍動回数が増えるに従い、ロバスト性を向上させることができる。
【0048】
また、照射制御機能171は、超音波プローブ101にプッシュ期間にパルス状の超音波であるプッシュパルスを所定期間が経過する毎に繰り返し照射させる。
【0049】
また、照射制御機能171は、超音波プローブ101にトラッキング期間にパルス状の超音波であるトラッキングパルスを所定期間が経過する毎に繰り返し照射させる。また、臓器への加圧と、加圧による横波の計測とを繰り返し実行する場合に、照射制御機能171は、例えば、リファレンス期間、プッシュ期間、トラッキング期間との順番で繰り返す。そして、照射制御機能171は、各期間においてパルス状の超音波を繰り返し照射する。
【0050】
照射制御機能171は、リファレンス期間の経過後に、プッシュ期間及びトラッキング期間を繰り返してもよい。
図3は、超音波診断装置100による超音波を照射する順番の一例を示す図である。
図3に示すように、照射制御機能171は、リファレンス期間にリファレンスパルスを繰り返し照射させる。その後、照射制御機能171は、プッシュ期間におけるプッシュパルスの繰り返しの照射と、トラッキング期間におけるトラッキングパルスの繰り返しの照射とを交互に実行させてもよい。すなわち、超音波プローブ101は、第1変位情報を取得するためにパルス状の超音波であるリファレンスパルスを繰り返し照射した後に、臓器を加圧するパルス状の超音波であるプッシュパルスの繰り返しの照射と、第2変位情報を取得するためのパルス状の超音波であるトラッキングパルスの繰り返しの照射と、を交互に実行する。この場合、照射制御機能171は、リファレンス期間の経過後は、プッシュ期間及びトラッキング期間の繰り返しであるため、実行時間を減らすことができる。
【0051】
計測結果取得機能172は、計測結果を収集する。照射制御機能171により照射された各パルス状の超音波の反射波データは、バッファメモリ120に記憶される。そして、信号処理回路130は、バッファメモリ120に記憶された反射波データからドプラデータを生成する。計測結果取得機能172は、リファレンス期間に繰り返し照射されたリファレンスパルスのそれぞれのドプラデータを、周期的に運動する臓器の経時的な変位が記録された第1変位情報として収集する。
【0052】
また、計測結果取得機能172は、トラッキング期間に繰り返し照射されたトラッキングパルスのそれぞれのドプラデータを、臓器が加圧された後の臓器の経時的な変位が記録された第2変位情報として収集する。
【0053】
運動推定機能173は、周期的に運動する臓器の運動を推定する。すなわち、運動推定機能173は、周期的に運動する臓器の経時的な変位に関する第1変位情報に基づいて、臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する。クラッタ成分とは、臓器による不要な成分であって、例えば臓器自体の運動による経時的な変位である。運動推定機能173は、第1算出部の一例である。第1変位情報は、第1超音波情報の一例である。
【0054】
ここで、
図4は、第1変位情報に基づいた関数の算出方法の一例を示す図である。
図4に示すように、運動推定機能173は、臓器の経時的な変位が少なくとも1周期以上含まれている第1変位情報に基づいて、臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する。言い換えると、運動推定機能173は、臓器の経時的な変位を表現した関数を算出する。例えば、運動推定機能173は、ガウス過程によるカーネル関数を求めることで、臓器の経時的な変位を表現した関数を算出する。なお、運動推定機能173は、これに限らず、関数のパラメータを推論する多項式フィッテングにより算出してもよいし、最小二乗法などにより算出してもよい。
【0055】
関数適用機能174は、運動推定機能173により算出された関数により表現される臓器からのクラッタ成分と、第2変位情報が示す臓器の経時的な変位とを同期させる。関数適用機能174は、同期部の一例である。言い換えると、関数適用機能174は、運動推定機能173により算出された関数のうち、比較対象となる範囲を切り出す。
【0056】
図5は、関数により表現される臓器の経時的な変位とトラッキングパルスの反射波データが示す変位との同期の一例を示す説明図である。ここで、超音波診断装置100は、関数により表現される臓器の経時的な変位と、トラッキングパルスの反射波データが示す変位を比較する。周期的に運動する臓器において、超音波診断装置100は、1/4周期の時点の変位と、2/4周期の時点の変位とを比較しても有意な結果を得ることはできない。そこで、
図5に示すように、関数適用機能174は、比較対象となる変位を合わせるために、関数が示す臓器の経時的な変位と、各トラッキングパルスの反射波データが示す変位とを同期させる。
【0057】
例えば、関数適用機能174は、臓器の心電波形に基づいて、関数により表現される臓器からのクラッタ成分と、第2変位情報が示す臓器の経時的な変位とを同期させる。具体的には、関数適用機能174は、計測対象の臓器が心臓である場合に心電波形に基づいて、トラッキングパルスの反射波データを受信した期間を特定する。すなわち、関数適用機能174は、トラッキングパルスの反射波データを受信した期間が、心電波形の何れの期間に対応するのかを特定する。そして、関数適用機能174は、関数により表現される臓器の経時的な変位のうち、特定した期間に対応する期間を切り出す。これにより、関数適用機能174は、関数により表現される臓器からのクラッタ成分と、各トラッキングパルスの反射波データが示す変位とを同期させる。
【0058】
または、関数適用機能174は、関数により表現される臓器からのクラッタ成分と、第2変位情報が示す臓器の経時的な変位との類似度を算出する相互関数に基づいて、関数により表現される臓器の経時的な変位と、第2変位情報が示す臓器の経時的な変位と、を同期させる。相互関数は、関数により表現される臓器の経時的な変位を示す波形と、第2変位情報が示す臓器の経時的な変位を示す波形との類似度を、波形の区間を変えながら算出する。そして、関数適用機能174は、関数により表現される臓器の経時的な変位の波形のうち、各トラッキングパルスの反射波データが示す変位の波形と最も類似度が高くなる区間を抽出する。これにより、関数適用機能174は、関数により表現される臓器からのクラッタ成分と、各トラッキングパルスの反射波データが示す変位とを同期させる。
【0059】
ここで、プッシュパルスを照射している間、超音波診断装置100は、プッシュパルスの反射波を受信しない。そこで、関数適用機能174は、プッシュパルスを照射している期間の変位を推定するために、運動推定機能173により算出された関数のうち、プッシュパルスを照射している期間に対応する範囲を切り出す。例えば、関数適用機能174は、関数により表現される臓器からのクラッタ成分とトラッキングパルスの反射波データが示す変位とを同期させる場合に、プッシュパルスを照射している期間から同期させる。これにより、関数適用機能174は、プッシュパルスを照射している期間に対応する範囲を切り出す。または、関数適用機能174は、心電波形に基づいて、プッシュパルスを照射している期間を特定することで、プッシュパルスを照射している期間に対応する範囲を切り出す。
【0060】
通知機能175は、関数により表現される臓器からのクラッタ成分と、第2変位情報が示す臓器の経時的な変位とが類似している度合いを示す類似度が閾値未満の場合に通知する。通知機能175は、通知部の一例である。ここで、類似度が低い場合、関数は、臓器の周期的な運動を表現できていない可能性がある。そのため、関数は、本来であれば、除去すべきクラッタ成分を除去していなかったり、残すべき成分を除去してしまったりする可能性が高い。そこで、通知機能175は、類似度が低いこと、つまり臓器を加圧したことにより発生する横波の計測結果の信頼性が低くことを通知する。なお、通知機能175は、如何なる方法により通知してもよい。例えば、通知機能175は、ディスプレイ103に表示することで通知してもよいし、LED(Light Emitting Diode)等を点灯させることで通知してもよいし、音声により通知してもよいし、他の装置に情報を送信することにより通知してもよい。
【0061】
誤差補正機能176は、関数に基づいて、第2変位情報に含まれる、臓器が加圧されている期間の変位の誤差を補正する。誤差補正機能176は、補正部の一例である。言い換えると、誤差補正機能176は、プッシュパルスによる非連続性を補正する。ここで、プッシュパルスを照射している間、超音波診断装置100は、プッシュパルスの反射波を受信しない。プッシュパルスの照射が終了し、トラッキング期間が開始した直後は、超音波診断装置100は、プッシュパルスの反射波を受信する。そこで、誤差補正機能176は、関数適用機能174により切り出された、プッシュパルスを照射している間に対応する関数に基づいて、プッシュパルスを送信した期間の臓器の変位を算出する。そして、誤差補正機能176は、算出結果に合わせて第2変位情報を補正する。
【0062】
クラッタ除去機能177は、臓器からのクラッタ成分に関する関数と、臓器が加圧された後の臓器の経時的な変位に関する第2変位情報とに基づいて、加圧により臓器を伝播する横波を算出する。クラッタ除去機能177は、第2算出部の一例である。第2変位情報は、第2超音波情報の一例である。すなわち、クラッタ除去機能177は、関数適用機能174により同期した関数と、第2変位情報とに基づいて、加圧により臓器を伝播する横波を算出する。
図6は、第2変位情報と関数とに基づいた横波の算出方法の一例を示す説明図である。
図6に示す横波において、実線が、加圧により臓器を伝播する横波を示し、点線が、臓器自体の変位を示す。
図6に示すように、クラッタ除去機能177は、関数適用機能174により同期した関数に基づいて、第2変位情報からクラッタ成分を除去することで横波を算出する。これにより、クラッタ除去機能177は、プッシュパルスにより臓器を加圧したことで発生した横波を算出する。
【0063】
表示制御機能178は、クラッタ除去機能177により算出された、臓器を伝播する横波をディスプレイ103に表示する。また、表示制御機能178は、横波だけでなく、横波から推定される臓器の硬さを表示してもよい。例えば、表示制御機能178は、臓器を伝播する横波に基づいて、臓器の各点の硬さを推定する。そして、表示制御機能178は、各点を含む臓器のBモード画像に、硬さに応じた色を重畳した画像を表示する。なお、表示制御機能178は、ディスプレイ103に限らず、NWインタフェース160を介して接続された表示装置に表示してもよいし、他の装置に表示してもよい。
【0064】
次に、超音波診断装置100が実行する計測処理について説明する。計測処理は、加圧により発生した臓器を伝播する横波を計測する処理である。
【0065】
図7は、本実施形態に係る超音波診断装置100が実行する計測処理の一例を示す図である。
【0066】
計測結果取得機能172は、周期的に運動する臓器の1周期以上運動が記録された第1変位情報、及び繰り返し照射されたトラッキングパルスの反射波データが示す変位が記録された第2変位情報を取得する(ステップS1)。なお、計測結果取得機能172は、被検体Pに超音波を照射しなら計測処理を実行する場合は、第1変位情報及び第2変位情報を他のタイミングで取得してもよい。
【0067】
運動推定機能173は、周期的に運動する臓器の経時的な変位に関する第1変位情報に基づいて、臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する(ステップS2)。
【0068】
関数適用機能174は、関数により表現される臓器からのクラッタ成分と、第2変位情報が有するトラッキングパルスの反射波データが示す変位とを同期させる(ステップS3)。
【0069】
通知機能175は、関数適用機能174により同期された関数により表現された変位の波形と、トラッキングパルスの反射波データが示す変位の波形との類似度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0070】
類似度が閾値未満の場合に(ステップS4;No)、通知機能175は、関数により表現された変位の波形と、トラッキングパルスの反射波データが示す変位の波形との類似度が低いことを通知する(ステップS5)。
【0071】
類似度が閾値以上の場合に(ステップS4;Yes)、通知機能175は、通知しない。また、類似度を判定するタイミングや、通知するタイミングは、ステップS5に限らず、任意に変更してもよい。例えば、通知機能175は、関数を算出後であって同期させる前に、関数により表現された変位の波形と、トラッキングパルスの反射波データが示す変位の波形との類似度を算出し、算出した類似度に応じて通知してもよい。または、通知機能175は、複数のタイミングでそれぞれ類似度を算出し、算出した類似度に応じて通知してもよい。
【0072】
クラッタ除去機能177は、周期的に運動する臓器からのクラッタ成分に関する関数と、臓器が加圧された後の臓器の経時的な変位が記録された第2変位情報とに基づいて、加圧により前記臓器を伝播する横波を算出する(ステップS6)。
【0073】
表示制御機能178は、算出された横波に基づいて推定した臓器の各点の硬さを表示する(ステップS7)。
【0074】
以上により、超音波診断装置100は、計測処理を終了する。
【0075】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、心臓などの周期的に運動する臓器にリファレンスパルスを照射し、臓器を加圧するプッシュパルスを照射し、加圧後に臓器にトラッキングパルスを照射する。超音波診断装置100は、リファレンスパルスの反射波により生成したドプラデータに基づいて、周期的に運動する臓器の経時的な変位に関する第1変位情報を生成する。また、超音波診断装置100は、トラッキングパルスの反射波により生成したドプラデータに基づいて、臓器が加圧された後の臓器の経時的な変位に関する第2変位情報を生成する。また、超音波診断装置100は、第1変位情報に基づいて、当該臓器からのクラッタ成分に関する関数を算出する。さらに、超音波診断装置100は、算出した関数と、第2変位情報とに基づいて、加圧により臓器を伝播する横波を算出する。言い換えると、超音波診断装置100は、関数により臓器自体の変位を除去することにより、加圧により臓器を伝播する横波を算出する。よって、超音波診断装置100は、周期的に運動する臓器に対してもSWEを適用することができる。
【0076】
(変形例1)
本実施形態では、超音波診断装置100は、記憶回路150に記憶されているプログラムを実行することにより、照射制御機能171、計測結果取得機能172、運動推定機能173、関数適用機能174、通知機能175、誤差補正機能176、クラッタ除去機能177、及び表示制御機能178を実現すると説明した。しかしながら、超音波診断装置100は、照射制御機能171、計測結果取得機能172、運動推定機能173、関数適用機能174、通知機能175、誤差補正機能176、クラッタ除去機能177、及び表示制御機能178の全部又は一部を半導体回路などのハードウェアにより実現してもよい。
【0077】
(変形例2)
本実施形態では、計測結果取得機能172、運動推定機能173、関数適用機能174、通知機能175、誤差補正機能176、クラッタ除去機能177、及び表示制御機能178は、超音波診断装置100が有していると説明した。しかしながら、これら機能は、サーバやワークステーション等のコンピュータ機器である解析装置が備えていてもよい。また、例えば、超音波診断装置100は、NWインタフェース160などのインタフェースを介して、バッファメモリ120に記憶された反射波データを解析装置に送信する。すなわち、超音波診断装置100は、第1変位情報及び第2変位情報を解析装置に送信する。そして、解析装置は、第1変位情報及び第2変位情報に対して各種処理を実行する。
【0078】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、周期的に運動する臓器に対してもSWEを適用可能とすることができる。
【0079】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
100 超音波診断装置
101 超音波プローブ
102 入力インタフェース
103 ディスプレイ
104 装置本体
110 送受信回路
120 バッファメモリ
130 信号処理回路
140 画像生成回路
150 記憶回路
160 NW(network)インタフェース
170 処理回路
171 照射制御機能
172 計測結果取得機能
173 運動推定機能
174 関数適用機能
175 通知機能
176 誤差補正機能
177 クラッタ除去機能
178 表示制御機能
P 被検体