(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156843
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】処理工具
(51)【国際特許分類】
B23D 79/00 20060101AFI20231018BHJP
B23C 3/12 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B23D79/00 A
B23C3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066447
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】石谷 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武藤 充
【テーマコード(参考)】
3C022
3C050
【Fターム(参考)】
3C022DD17
3C050FB09
(57)【要約】
【課題】
簡易な構造で、工具を脱着可能で、シャンクに対して工具を軸方向にスライド可
能な処理工具を提供する。
【解決手段】
処理工具10は、ボディ11と、ボディ11に回転可能に支持された主軸16であって、先端方向に開口を有し、主軸16に沿って延びるシリンダー穴16mと、径方向に主軸16を貫通する回り止め体保持穴17と、を有する主軸16と、シリンダー穴16m内に着脱可能に挿入される工具35であって、外周に回り止め溝37を有する工具35と、シリンダー穴16mの内部に進退可能に配置され、工具35を先端方向に付勢するプッシャ25と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、
前記ボディに回転可能に支持された主軸であって、
先端方向に開口を有し、前記主軸に沿って延びるシリンダー穴と、
径方向に前記主軸を貫通する回り止め体保持穴と、
を有する主軸と、
前記シリンダー穴内に着脱可能に挿入される工具であって、外周に回り止め溝を有する工具と、
前記シリンダー穴の内部に進退可能に配置され、前記工具を先端方向に付勢するプッシャと、
を有する処理工具。
【請求項2】
前記プッシャを先端方向に付勢する第1弾性体を更に有する、
請求項1に記載の処理工具。
【請求項3】
前記主軸は、スライド溝を有し、
前記プッシャは、
径方向に進退し、前記スライド溝内に突出するプランジャと、
前記プッシャの先端部に配置されたレバーを有し、前記プランジャを径方向外側に押し出す第2弾性体と、
を有し、
前記レバーが操作されたときに、前記プランジャが前記プッシャの内部に収納されて、前記プッシャ及び前記第1弾性体を前記シリンダー穴の先端方向に取り外しできる、
請求項1又は2に記載の処理工具。
【請求項4】
前記主軸の先端部に配置され、前記主軸に沿って加工位置と着脱位置との間を往復するカバーであって、
前記加工位置において、前記回り止め保持穴を覆う押さえ面と、
前記カバーの内側に配置され、径方向外側に凹む逃し部と、
を有するカバーと、
前記カバーが前記加工位置に位置するときに、前記回り止め体保持穴に支持され、前記回り止め溝と前記押さえ面との間で移動する回り止め体であって、前記カバーが前記着脱位置に位置し、前記工具が前記シリンダー穴から引き抜かれるときに、前記逃し部に収容される回り止め体と、
を更に有する、請求項1~3のいずれかに記載の処理工具。
【請求項5】
前記ボディは、
前記ボディ内に加圧空気を送り込む空気導入口と、
前記ボディの先端部に配置され、前記加圧空気を排出する排気口と、
を有し、
前記カバーは、前記カバーの基端部に配置され、先端方向に向かうにつれて径が大きくなる排気ガイドを有する、
請求項4に記載の処理工具。
【請求項6】
前記カバーが前記着脱位置に位置するときに、前記排気ガイドは、前記排気口に密着する、
請求項4又は5に記載の処理工具。
【請求項7】
前記カバーが前記着脱位置に位置するときに、前記空気導入口から入れられた加圧空気が前記シリンダー穴から排出される、
請求項4~6のいずれかに記載の処理工具。
【請求項8】
前記回り止め溝は、前記主軸と平行に延びる、
請求項1~7のいずれかに記載の処理工具。
【請求項9】
前記工具が前記シリンダー穴から抜き取られたときに、前記プッシャが先端方向に押し出されて、前記回り止め体保持穴を塞ぐよう構成された、
請求項1~8のいずれかに記載の処理工具。
【請求項10】
前記主軸は、
前記回り止め体保持穴において、前記回り止め体を保持する回り止め体保持面と、
前記回り止め体保持面に配置され、前記第1回り止め体の抜けを防止する回り止め体抜け止め部と、を有する、
請求項1~9のいずれかに記載の処理工具。
【請求項11】
前記回り止め体抜け止め部は、前記回り止め体に沿った保持球面を有する、
請求項10に記載の処理工具。
【請求項12】
前記ボディに配置され、前記主軸を回転させるモータを更に有する、
請求項1~11のいずれかに記載の処理工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刃具のワークに対する押圧力を調整できるバリ取り工具が提案されている(例えば、特許第6025580号)。従来のバリ取り工具は、ステムと、刃具案内手段と、ばね部材と、初期長調整手段とを有する。ステムは、シャンクに対して軸方向に移動自在に内挿される。刃具案内手段は、ステムに対して刃具保持手段を軸方向に移動自在に案内し、回転方向に一体として回転する。ばね部材は、刃具保持手段を、ステムに対してワークに押圧する方向に付勢する。初期長調整手段は、ばね部材の初期長を調整してばね部材による押圧力を調整する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、簡易な構造で、スライダーを脱着でき、ボディに対して工具を軸方向にスライドできる処理工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの観点は、 ボディと、
前記ボディに回転可能に支持された主軸であって、
先端方向に開口を有し、前記主軸に沿って延びるシリンダー穴と、
径方向に前記主軸を貫通する回り止め体保持穴と、
を有する主軸と、
前記シリンダー穴内に着脱可能に挿入される工具であって、外周に回り止め溝を有する工具と、
前記シリンダー穴の内部に進退可能に配置され、前記工具を先端方向に付勢するプッシャと、
を有する処理工具である。
【0005】
処理工具は、例えば、バリ取り工具、穴あけ工具、ねじ切り工具、ブラシである。バリ取り工具は、加工機に取り付けられ、ワークに付着したバリを除去する。加工機は、例えば、旋盤、ターニングセンタ、ロボットである。
説明の都合上、刃具やブラシが取り付けられる側を先端側、その反対側を基端側と呼ぶ。
【0006】
工具は、工具を保持するスライダーと、刃具と、を有して良い。第1回り止め溝は、スライダーに配置される。工具は、刃具を省き、刃具に変えて、スライダーに刃具を装着できる刃具装着穴を有しても良い。
【0007】
例えば、モータは、電気モータ、エアモータである。モータがエアモータのとき、空気導入口は、エアモータに接続されて良い。処理工具は、排気口を有して良い。エアモータと排気口は、組み合わせて配置されて良い。空気導入口から導入された加圧空気が、エアモータを回転させる。エアモータからの排気が、カバーとボディとの隙間から排気されて良い。さらに、エアモータからの排気が、シリンダー穴の排出口から排気されても良い。また、処理工具がエアモータと排気口とを有するときは、エアモータからの排気の大部分が排気口から排出されて良い。
【0008】
モータが電気モータのとき、空気導入口から冷却用の加圧空気が供給される。加圧空気は、モータや主軸受を冷却して、排出される。
【0009】
好ましくは、回り止め体保持面は、回り止め体の中心を通り、主軸の中心軸と直交する線に対し傾斜する。
好ましくは、回り止め体保持面は、円筒面である。好ましくは、回り止め体保持穴の中心軸は、主軸の中心軸を通らない。つまり、回り止め体保持穴の中心軸は、主軸の中心軸とねじれ位置にある。
好ましくは、回り止め体保持面は、回り止め体の中心を通り、主軸の中心軸と直交する線に対し、処理工具の周方向に傾斜する。
好ましくは、回り止め体がカバーの押さえ面と回り止め溝とに接している状態において、回り止め体の中心が回り止め体保持穴に位置する。
例えば、回り止め体は、ボールである。回り止め体は、ピンでも良い。
回り止め溝は、主軸の中心軸と平行に延びる。回り止め溝は、バリ取り工具の回転方向と逆方向の向きに、基端側に進む螺旋形状でも良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明の処理工具によれば、簡易な構造で、スライダーを脱着でき、ボディに対して工具を軸方向にスライドできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の処理工具の加工時における縦断面図
【
図3A】先端側から見た実施形態のプッシャの斜視図
【
図3B】基端側から見た実施形態のプッシャの斜視図
【
図4B】実施形態のプッシャの取外し状態における縦断面図
【
図5】実施形態1の処理工具の工具着脱時における縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図3に示すように、本実施形態の処理工具10は、ボディ11と、主軸受15と、主軸16と、第1コイルばね(弾性体)38と、カバー23と、工具35と、ボール(回り止め体)19と、プッシャ25と、を有する。処理工具10は、モータ13と、第2コイルばね30と、入口ポート(空気導入口)39と、を有して良い。
図1は、
図2のI-I組合せ線による断面図である。便宜上、
図1の下方向を先端、上方向を基端と呼ぶ。
【0013】
ボディ11は、中心軸9と、排気口11aと、を有する中空の直円筒状である。ボディ11は、モータ13や主軸16のケーシングである。また、ボディ11は、処理工具10のシャンクである。例えば、ロボット2は、ボディ11を把持して移動させ、刃具35fをワーク4に接触させながらワーク4のバリ取り等を行う。入口ポート39は、ボディ11の基端部に配置される。入口ポート39は、加圧空気源7と接続する。
排気口11aは、ボディ11の先端に配置される。好ましくは、排気口11aは、先端に進むにつれて径が拡大する。例えば、排気口11aの内面は、直円錐面を有する。
【0014】
モータ13は、例えば、電気モータである。モータ13は、軸受13cと、ステータ13bと、ロータ13aと、出力軸13dと、を有する。例えば、モータ13は、ボディ11の基端部に埋めこまれる。軸受13cは、ボディ11に配置され、ロータ13aを支持する。ロータ13aは、出力軸13dと結合され、出力軸13dと一体に回転する。出力軸13dは、例えば、セレーション軸である。ステータ13bは、ボディ11に埋めこまれる。モータ13の内部は、入口ポート39と接続される。
【0015】
主軸16は、主軸受15を介して、ボディ11の内部に支持される。主軸16は、直円筒状であり、中心軸9を中心に配置される。主軸16は、シリンダー穴16mと、複数(本実施形態では2つ)のボール保持穴(回り止め体保持穴)17と、を有する。主軸16は、セレーション穴16aと、連通孔16bと、第1ばね保持室16kと、ばねガイド16dと、細径部16nと、第2ばね保持室16hと、スライド溝28と、ストッパ31と、を有して良い。
【0016】
シリンダー穴16mは、主軸16の先端に開口して、中心軸9を中心に配置される。シリンダー穴16mは、直円筒の有底穴である。シリンダー穴16mの円筒面は、滑らかに形成される。第1ばね保持室16kは、直円筒の有底穴であり、シリンダー穴16mの基端側に配置されて良い。
セレーション穴16aは、主軸16の基端部に、中心軸9を中心に配置される。セレーション穴16aは、出力軸13dと締結する。連通孔16bは、例えば、中心軸9に沿って延びて、セレーション穴16aとシリンダー穴16mとを連通する。連通孔16bは、シリンダー穴16mや第1ばね保持室16kに連通しても良い。
【0017】
細径部16nは、主軸16の先端部に配置される。細径部16nは、中央部よりも小さい外径を有する。細径部16nの外面の半径は、中心軸9からボール19の最外面までの距離に実質的に等しい。
ばねガイド16dは、薄肉円筒であり、細径部16nの径方向外側に配置される。第2ばね保持室16hは、ばねガイド16dと細径部16nとの間に形成される。第2ばね保持室16hは、先端方向に開口する。
【0018】
スライド溝28は、主軸16と平行に延びる。スライド溝28は、中心軸9に対して回転対称に配置される。
【0019】
ボール保持穴17は、主軸16の先端部に配置される。ボール保持穴17は、軸方向において、ストッパ31よりも基端側に配置される。好ましくは、ボール保持穴17は、軸方向において、ばねガイド16dよりも先端側に配置される。ボール保持穴17は、主軸16の外面からシリンダー穴16mに貫通する。
【0020】
図2に示すように、ボール保持穴17は、ボール保持面(回り止め体保持面)17aと、ボール抜け止め部(回り止め体抜け止め部)17bと、中心軸17cと、保持球面17dと、を有する。ボール保持穴17は、直円筒穴であり、径方向から周方向に傾斜する。ボール保持穴17は、主軸16の横断面上に延びる。ボール保持穴17の中心軸17cは、中心軸9とねじれの位置にある。つまり、中心軸17cは、中心軸9と交差しない。
ボール保持面17aは、ボール保持穴17の円筒面である。ボール保持穴17の径方向の長さ17eは、ボール19の直径と実質的に等しい。ボール抜け止め部17bは、ボール保持穴17の径方向内側に配置され、保持球面17dを有する。保持球面17dは、シリンダー穴16mの円筒面と交差する。保持球面17dの径方向の長さは、ボール保持穴17の径方向の長さ17eと実質的に等しい。複数のボール保持穴17は、中心軸9に対して回転対称に配置される。
【0021】
ボール19は、ボール保持穴17の内部に保持される。カバー23が加工位置1にあるときに、中心軸9からみて、ボール19の最外面は、押さえ面24に接する。そして、ボール19は、保持球面17dに当接する。このとき、シリンダー穴16mの径方向内側に、ボール19の一部が突出する。好ましくは、ボール19の半径の10~40%程度が、シリンダー穴16mの内面から突出する。
なお、ボール19の代わりに、ボール保持穴17の中心軸17cの方向に延びるピンでも良い。ピンである第1回り止め体19の先端面は、球面ではなく平面でも良い。
【0022】
図1に示すように、カバー23は、中空円筒状である。カバー23は、排気ガイド23aと、第3ばね保持室23bと、突き当て部23cと、押さえ面24と、逃し部22と、を有する。排気ガイド23aは、カバー23の基端部に配置される。排気ガイド23aは、基端方向に向かって径が小さくなる。排気ガイド23aは、例えば、直円錐面を有する。カバー23が着脱位置3にあるときに、排気ガイド23aは、排気口11aと密着しても良い(
図5参照)。第3ばね保持室23bは、中空直円筒状であり、カバー23の基端部に開口して配置される。第3ばね保持室23bの内円筒面は、ばねガイド16dの外円筒面に摺動する。突き当て部23cは、カバー23の先端部に配置される。カバー23が加工位置1にあるときに、突き当て部23cは、ストッパ31に当接する。
押さえ面24は、カバー23の内面の一部である。例えば、押さえ面24は、細径部16nに摺動する。
【0023】
例えば、逃し部22は、台形の断面を有する円周溝である。言い換えると、逃し部22の基端側に向かうにつれて、逃し部22の内径が小さくなる。逃し部22は、押さえ面24の先端部に配置される。逃し部22は、カバー23の先端面に開口しても良い。
【0024】
第2コイルばね30は、第2ばね保持室16hと、第3ばね保持室23bとの間に収納される。第2コイルばね30は、ばねガイド16dや細径部16nに案内される。第2コイルばね30は、主軸16に対して、カバー23を先端方向へ付勢する。
【0025】
なお、ばねガイド16dと、第3ばね保持室23bと、第2コイルばね30と、は省いても良い。このとき、例えば、ばねガイド16dに変えて雄ねじを、第3ばね保持室23bに変えて雄ねじとねじ対偶にある雌ねじを配置できる。そして、カバー23は、回転させることで加工位置1と着脱位置3とを移動する。
【0026】
工具35は、スライダー35aと、レバー収納室35cと、工具保持穴35bと、ボール溝(回り止め溝)37と、刃具35fと、を有する。工具35は、直円筒状である。スライダー35aの外円筒面35gは、シリンダー穴16mに摺動する。工具35は、テーパ穴35dと、コレット35eと、を有しても良い。
ボール溝37は、外円筒面35g上に配置され、主軸16に沿って延びる。ボール溝37の横断面は、半円状である。ボール溝37の両端部37a(
図5参照)は、例えば半球状である。複数のボール溝37は、中心軸9に対して回転対称に配置される。
【0027】
工具保持穴35bには、刃具35fが装着される。
テーパ穴35dは、円錐台状の穴であり、中心軸9に沿って延びる。例えば、テーパ穴35dは、基端部に雌ねじを有する。コレット35eは、円錐台状であり、テーパ穴35dに嵌め合う。コレット35eは、例えば、摺割りや雄ねじを有し、テーパ穴35dに締め付けられる。これにより、コレット35eの内径を小さくし、刃具35fを締結する。
なお、ボール溝37は、先端方向に向かって、主軸16の回転方向にねじれた螺旋状でも良い。例えば、螺旋のリード角は、60度~80度である。
【0028】
図3A、
図3B及び
図4Aに示すように、プッシャ25は、プッシャボディ26と、プランジャ29と、ねじりコイルばね27と、を有する。
図4Aは、プランジャ29の中心と、中心軸9とを通る平面によるプッシャ25の断面図である。プッシャボディ26は、ヘッド26aと、ステム26bと、案内棒26dと、ばね室26cと、プランジャ穴26eと、を有する。
【0029】
ヘッド26aは、円筒状である。ヘッド26aの外径は、シリンダー穴16mの内径に実質的に等しい。ヘッド26aは、シリンダー穴16mに摺動する。ステム26bは、円筒状であり、ヘッド26aの基端方向に中心軸9に沿って延びる。ステム26bの外径は、第1コイルばね38の内径と実質的に等しい。ばね室26cは、断面が矩形状のくり抜き部であり、プッシャボディ26とステム26bとを中心軸9の方向に貫通する。案内棒26dは、ステム26bの先端部に配置され、ばね室26cを貫く。プランジャ穴26eは、ヘッド26aに配置され、径方向に延びる。プランジャ穴26eは、円筒穴であり、ヘッド26aの外周からばね室26cに貫通する。例えば、円周上均等に、2つのプランジャ穴26eが配置される。
【0030】
プランジャ29は、円筒状である。プランジャ29は、ばね装着穴29bを有する。プランジャ29は、プランジャ穴26e内に配置され、径方向に往復する。ばね装着穴29bは、プランジャ29の径方向内側である一端部に配置され、プランジャ29を貫通する。プランジャ29の他端部は、例えば球面である。
【0031】
ねじりコイルばね27は、コイル部27aと、端末部27bと、を有する。案内棒26dがコイル部27aを貫通することにより、ねじりコイルばね27は支持される。端末部27bは、ばね室26c内を平行に延びて、ばね装着穴29bを貫通する。端末部27bの先端部が折れ曲がり、レバー27cとなる。レバー27cは、ヘッド26aの先端面よりも突出して、中心軸9から見て径方向外側へ折れ曲がる。ねじりコイルばね27は、プランジャ29を径方向外側に押し出す。
【0032】
図4Bに示すように、作業者がレバー27cを互いに寄せると、端末部27bが内側に傾き、プランジャ29は、径方向内側に縮む。プランジャ29が完全にヘッド26aの内側に収納されると、プッシャ25は、シリンダー穴16mから抜き取り可能になる。
なお、ねじりコイルばね27は、圧縮コイルばね等の弾性ばねや、その他の弾性体に変更できる。
【0033】
図1に示すように、プランジャ29は、ヘッド26aの外周円筒面よりも突出して、スライド溝28内に挿入される。プッシャ25は、プランジャ29がスライド溝28に案内されて、シリンダー穴16m内を往復する。スライド溝28は、プッシャ25のストロークを決める。
【0034】
第1コイルばね38は、圧縮コイルばねである。第1コイルばね38に替えて、立体板ばねなどの弾性ばねを利用してもよい。第1コイルばね38は、工具35を先端方向に付勢する。第1コイルばね38は、第1ばね保持室16kやステム26bによって案内される。プッシャ25は、第1コイルばね38の弾性力によって、工具35を先端方向に押し出す。
【0035】
モータ13が回転すると、出力軸13dの回転は、セレーション穴16aを介して、主軸16に伝達される。そして、ボール保持穴17に保持されたボール19とボール溝37を介して、主軸16の回転が工具35へ伝達される。そして、主軸16と、工具35と、刃具35fが一体に回転する。
【0036】
ロボット2が処理工具10を移動させて、刃具35fをワーク4に押しつける。刃具35fがワーク4に接触すると、刃具35fはワーク4からスラスト力を受ける。すると、ボール19はボール溝37の内部を相対的に移動して、工具35が基端部へ移動する。工具35は、ワーク4から受けたスラスト力と、第1コイルばね38の復元力がバランスした位置に到達する。ワーク4には、加工誤差や製造誤差があり、バリ等の除去物の位置や高さが異なる。処理工具10は、ワーク4の除去物の位置が異なる場合であっても、工具35が伸縮することによって、刃具35fとワーク4の除去物との位置関係を自動調整する。これにより、ワーク4を実質的に同一に仕上げることができる。また、ワーク4の除去物の大きさやワーク4の表面の高さの変動を含む場合であっても、刃具35fの軌跡をワーク4の除去物の大きさやワーク4の表面の高さに追従させることができる。
【0037】
図5及び
図6を参照して、工具35の脱着状態における処理工具10を説明する。
図5は、
図6のV-V線組み合わせ断面図である。
作業者やロボット2は、カバー23を基端方向に向けて移動する。排気ガイド23aが排気口11aに当接して、カバー23は、着脱位置3に到達する。
【0038】
工具35は、プッシャ25を介して、第1コイルばね38によって先端方向に付勢される。ボール溝37の端部37aは、球面状であり、端部37aが中心軸9から傾斜する。そのため、工具35が押し出されるときに、ボール19は、端部37aから径方向外側へ向かう第1コイルばね38の弾性力の分力を受ける。カバー23が着脱位置3にあるときに、逃し部22は、ボール保持穴17の延長上にある。そこで、
図6に示すように、ボール19は、ボール保持穴17に沿って、径方向外側に移動し、逃し部22内に収納される。このとき、ボール19は、シリンダー穴16mの円筒面の外側に移動し、ボール溝37から抜ける。プッシャ25は、引き続き工具35を先端方向に付勢し、工具35が主軸16から飛び出す。
【0039】
ボール保持穴17は、ボール抜け止め部17bを有する。そのため、工具35が主軸16から取り外されても、ボール19は、シリンダー穴16mの内部に脱落しない。
【0040】
プッシャ25は、工具35と共に、先端方向へ移動する。プランジャ29がスライド溝28の端に引っかかって、プッシャ25が止まる。このとき、プッシャ25がボール保持穴17を塞ぐ。すると、ボール19が逃し部22に保持される。そして、カバー23は着脱位置3に保持される。
【0041】
作業者やロボット2は、工具35をシリンダー穴16mに挿入する。ボール溝37とボール19の回転方向の位相が一致したときに、ボール19がボール溝37に向けて径方向内側に移動する。ボール19が逃し部22から外れるため、カバー23が第2コイルばね30の弾性力によって加工位置1へと戻る。
【0042】
本実施形態の処理工具10によれば、工具35を主軸16から容易に取り外せる。そのため、処理工具10と離れて、工具35に対して刃具35fを装着でき、また、刃具35fの長さを測定できる。刃具35fの交換を外段取りに出来るため、刃具35fを迅速に交換し、刃具35fの交換に伴う生産ラインの停止時間を短縮できる。
【0043】
加圧空気源7から送られた加圧空気は、モータ13や主軸受15を冷却し、排気口11aから排出される。排気ガイド23aが中心軸9から傾斜しているため、排出された加圧空気は、排気ガイド23aに沿って広がるように流れる。作業者が工具35を着脱するときは、作業者は、主軸16の先端方向正面、又は、主軸16の先端部の側方に立つことが多い。加圧空気が排気ガイド23aによって中心軸9から斜め方向に排出されるため、加圧空気が作業者に衝突しにくい。処理工具10の周囲環境には、油ミストや粉じんが舞っている場合がある。このような場合であっても、排出された加圧空気によって作業者に向かって油ミストや粉じんが飛びにくいため、安全な作業環境の確保が促進される。
【0044】
カバー23が着脱位置3に位置するときに、排気ガイド23aが排気口11aと密着しても良い。これにより、作業者やロボット2が工具35を抜き取るときに、加圧空気は、シリンダー穴16mの内部に溜まる。加圧空気の圧力が工具35を押し出すように作用するため、加圧空気によって工具35の取り外しが促進される。工具35は、加工環境にあるため、スライダー35aの外周面や、シリンダー穴16mに油膜や異物が入る場合がある。この場合において、加圧空気が工具35の取り外しを促進するため、工具35の取り外し失敗が抑制される。
【0045】
工具35がワークに対して押し付けられる力(押し付け力)は、第1コイルばね38のばね係数と、押し付け量によって定まる。作業者は、ワークの仕上がりやワークの変更などに応じて、押し付け力を調整する。プッシャ25は、プランジャ29とねじりコイルばね27を有する。そのため、作業者は、工具35を取り外した後に、レバー27cをつまむことで、プッシャ25を容易に取り出せる。そして、作業者は、第1コイルばね38を容易に交換できる。
【符号の説明】
【0046】
10 処理工具
11 ボディ
16 主軸
17 ボール保持穴(回り止め体保持穴)
19 ボール(回り止め体)
22 逃し部
23 カバー
24 押さえ面
25 プッシャ
35 工具
37 ボール溝(回り止め溝)