(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156845
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20231018BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20231018BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066451
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 耕平
(72)【発明者】
【氏名】森 貴志
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅弘
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DL08
5B146EC10
(57)【要約】
【課題】CADシステムによる建物の設計を支援する設計を支援する設計支援装置、設計支援方法及び設計支援プログラムを提供する。
【解決手段】設計支援装置1は、建物内の水平面に開設された開口を、特定開口として特定し(ステップS2)、建物内に配設された水平斜材が配設された領域を斜材配設領域として検出し(ステップS5)、特定開口に関する水平範囲を示す第1領域及び斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域の平面視の干渉状況に基づいて、設計の適否を判定する(ステップS8,9)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の設計を支援する設計支援装置であって、
建物内の水平面に開設された開口を、特定開口として特定する手段と、
建物内に配設された水平斜材が配設された領域を斜材配設領域として検出する手段と、
前記特定開口に関する水平範囲を示す第1領域及び前記斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域の平面視の干渉状況に基づいて、設計の適否を判定する判定手段と
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
前記水平面は、天井面であり、
前記特定開口は、点検口である
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の設計支援装置であって、
前記特定開口は、多角形状をなし、
前記特定開口に内接する内接円を、導出内接円として導出する手段を備え、
前記判定手段が判定に用いる第1領域は、前記導出内接円である
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の設計支援装置であって、
前記特定開口は、長方形状をなし、
前記特定開口の対角にある二の頂点の中点を中心とし、前記特定開口に内接する内接円を、導出内接円として導出する手段を備え、
前記判定手段が判定に用いる第1領域は、前記導出内接円である
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の設計支援装置であって、
前記斜材配設領域の対角線を、導出対角線として導出する手段と、
前記導出対角線から、水平方向に所定長の距離内の範囲を、導出幅として導出する手段と
を備え、
前記判定手段が用いる第2領域は、前記導出幅にて区分された領域である
ことを特徴とする設計支援装置。
【請求項6】
建物の設計を支援する設計支援装置を用いた設計支援方法であって、
建物内の水平面に開設された開口を、特定開口として特定するステップと、
建物内に配設された水平斜材が配設された領域を斜材配設領域として検出するステップと、
前記特定開口に関する水平範囲を示す第1領域及び前記斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域の平面視の干渉状況に基づいて、設計の適否を判定するステップと
を実行することを特徴とする設計支援方法。
【請求項7】
コンピュータに、建物の設計を支援させる設計支援プログラムであって、
コンピュータに、
建物内の水平面に開設された開口を、特定開口として特定するステップと、
建物内に配設された水平斜材が配設された領域を斜材配設領域として検出するステップと、
前記特定開口に関する水平範囲を示す第1領域及び前記斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域の平面視の干渉状況に基づいて、設計の適否を判定するステップと
を実行させることを特徴とする設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の設計を支援する設計支援装置、そのような設計支援装置を用いた設計支援方法、及びそのような設計支援装置を実現するための設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の設計をコンピュータで支援するCAD(Computer Aided Design )システムが普及している。例えば、本願出願人は、建築物の構造に基づいて、設計を支援する設計支援装置等を特許文献1に開示している。特許文献1は、孔を形成する部材の設置可能範囲及び設置可否を併せて表示することにより、孔の位置の適性を容易に認識することが可能な形態等の様々な形態の実施例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも開示されているように、孔等の開口と、建物に配設された部材との関係の確認は重要であり、様々な状況での設計支援が望まれている。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、建物内の水平面に開設された開口と、建物内に配設された水平斜材との関係に基づいて、設計の適否を判定する設計支援装置の提供を主たる目的とする。
【0006】
また、本発明は、本発明に係る設計支援装置を用いた設計支援方法の提供を他の目的とする。
【0007】
また、本発明は、本発明に係る設計支援装置を実現するための設計支援プログラムの提供を更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本願開示の設計支援装置は、建物の設計を支援する設計支援装置であって、建物内の水平面に開設された開口を、特定開口として特定する手段と、建物内に配設された水平斜材が配設された領域を斜材配設領域として検出する手段と、前記特定開口に関する水平範囲を示す第1領域及び前記斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域の平面視の干渉状況に基づいて、設計の適否を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記設計支援装置において、前記水平面は、天井面であり、前記特定開口は、点検口であることを特徴とする。
【0010】
また、前記設計支援装置において、前記特定開口は、多角形状をなし、前記特定開口に内接する内接円を、導出内接円として導出する手段を備え、前記判定手段が判定に用いる第1領域は、前記導出内接円であることを特徴とする。
【0011】
また、前記設計支援装置において、前記特定開口は、長方形状をなし、前記特定開口の対角にある二の頂点の中点を中心とし、前記特定開口に内接する内接円を、導出内接円として導出する手段を備え、前記判定手段が判定に用いる第1領域は、前記導出内接円であることを特徴とする。
【0012】
また、前記設計支援装置において、前記導出対角線から、水平方向に所定長の距離内の範囲を、導出幅として導出する手段とを備え、前記判定手段が用いる第2領域は、前記導出幅にて区分された領域であることを特徴とする。
【0013】
更に、本願開示の設計支援方法は、建物の設計を支援する設計支援装置を用いた設計支援方法であって、建物内の水平面に開設された開口を、特定開口として特定するステップと、建物内に配設された水平斜材が配設された領域を斜材配設領域として検出するステップと、前記特定開口に関する水平範囲を示す第1領域及び前記斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域の平面視の干渉状況に基づいて、設計の適否を判定するステップとを実行することを特徴とする。
【0014】
更に、本願開示の設計支援プログラムは、コンピュータに、建物の設計を支援させる設計支援プログラムであって、コンピュータに、建物内の水平面に開設された開口を、特定開口として特定するステップと、建物内に配設された水平斜材が配設された領域を斜材配設領域として検出するステップと、前記特定開口に関する水平範囲を示す第1領域及び前記斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域の平面視の干渉状況に基づいて、設計の適否を判定するステップとを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、建物内の水平面に開設された開口と、建物内に配設された水平斜材との関係に基づいて、設計の適否を判定する。これにより、屋内側の設計に係る禁則事項を判定し、建物の設計を支援することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願開示の設計支援システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】本願開示の設計支援システムにて用いられる各種装置の構成例を概念的に示すブロック図である。
【
図3】本願開示の設計支援システムにて用いられる部材情報データベースの記憶内容の一例を概念的に示す説明図である。
【
図4】本願開示の設計支援システムにて用いられるチェック結果データベースの記憶内容の一例を概念的に示す説明図である。
【
図5】本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置の部材干渉チェック処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
【
図7】本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
【
図8】本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
【
図9】本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
【
図10】本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
【
図11】本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の表示部13に表示される画像の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術範囲を限定する性格のものではない。
【0018】
<適用例>
本願開示の設計支援システムは、建物の設計を支援するCAD(Computer Aided Design )システム等のシステムに適用される。本願開示の設計支援システムは、建物を構成する部材の配置等の設計内容が所定の禁則事項に該当するか否かの判定に適用可能なシステムであり、特に、建物内の水平面に開設された開口の位置と水平斜材の配置との関係についての禁則事項を判定する。建物内の水平面に開設された開口の具体例としては、天井面に開設された点検口、床面に開設された収納口等の面及び開口を例示することができる。水平斜材の具体例としては、水平ブレースを例示することができる。禁則事項の具体例としては、天井面の点検口に、水平ブレースが重畳する等の不適切な状況を例示することができる。以下では、図面を参照しながら、図面に記載された設計支援装置1を用いた設計支援システムを例示して説明する。
【0019】
<システム構成>
図1は、本願開示の設計支援システムの構成例を示す説明図である。本願開示の設計支援システムは、住宅等の建物に関する伏図等の図面を作成及び表示するCADシステム等のシステムを実行可能な設計支援装置1を備えるシステムである。設計支援装置1は、CAD設計システムを搭載したデスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ等のコンピュータを用いて構成されている。設計支援装置1は、インターネット、WAN(Wide Area Network )、LAN(Local Area Network)、専用通信網等の通信網NWに接続されている。設計支援装置1は、図面作成用のCADシステムとして、建物の設計担当者に使用される。
【0020】
通信網NWには、CADシステムの基幹システムを構成する基幹装置2が接続されている。基幹装置2は、サーバコンピュータとして用いられる汎用コンピュータ等のコンピュータを用いて構成されている。基幹装置2は、CAD情報データベースDB1、部材情報データベースDB2、チェック結果データベースDB3等の各種データベースを記憶又は通信可能に接続している。
【0021】
CAD情報データベースDB1は、各建物の構造を示すCADデータが記憶されているデータベースである。部材情報データベースDB2は、建物に用いられる部材に関する情報が記憶されているデータベースである。チェック結果データベースDB3は、建物の構造に関するチェックの結果が記憶されるデータベースである。
【0022】
設計支援装置1等の各種装置は、通信網NWを介して基幹装置2にアクセスし、各種データベースに記憶されている情報を読み取り、また情報の書き込みを行うことができる。
【0023】
<装置のハードウェア構成>
次に、設計支援システムにて用いられる各種装置の構成例について説明する。
図2は、本願開示の設計支援システムにて用いられる各種装置の構成例を概念的に示すブロック図である。設計支援装置1は、制御部10、記憶部11、入力部12、表示部13、通信部14等の各種構成を備えている。
【0024】
制御部10は、情報処理回路、計時回路、レジスタ回路等の各種回路を備え、装置全体を制御する処理を実行するCPU(Central Processing Unit )等のプロセッサである。
【0025】
記憶部11は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive )、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks )、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び各種RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いて構成される記憶用ユニットである。記憶部11には、基本プログラム(OS:Operating System)、基本プログラム上で動作する応用プログラム(アプリケーションプログラム)等のプログラムが記憶されている。応用プログラムとしては、CADシステムを実現するためのCADプログラム110、本願開示の設計支援装置1を実現するための設計支援プログラム111等の各種プログラムが記憶されている。設計支援プログラム111は、例えば、CADプログラム110上でツールとして実行されるチェック用プログラムである。
【0026】
また、記憶部11の記憶領域の一部は、CAD情報データベース112、部材情報データベース113、チェック結果データベース114等の各種データベースとして用いられる。CAD情報データベース112、部材情報データベース113、チェック結果データベース114等の各種データベースの記憶内容は、通信網NWに接続されている同名のデータベースと実質的に同様又はその一部を抽出したローカル用のデータベースである。
【0027】
CAD情報データベース112は、建物を特定する建物IDに対応付けて、建物の二次元又は三次元の設計図面に関するCADデータ等の各種情報を記憶するデータベースである。CADデータは、点、線分、領域等の幾何学的な対象を示すベクタ形式等の形式で示された部材データを含む。
【0028】
図3は、本願開示の設計支援システムにて用いられる部材情報データベース113の記憶内容の一例を概念的に示す説明図である。部材情報データベース113は、建物IDに対応付けて、CADデータにて示される建物に用いられる各種部材に関する情報を記憶するデータベースである。部材に関する情報としては、部材を特定する部材IDに対応付けて、部材の種類を示す種類情報、部材の配置位置を示す配置情報等の各種情報が記憶されている。種類情報は、天井、床、梁、水平ブレース、点検口等の種類を示す情報である。配置情報は、部材の配置位置及び配置方向を示す情報であり、配置位置を示す階層及び座標並びに配置方向を示す情報が記憶されている。
【0029】
図4は、本願開示の設計支援システムにて用いられるチェック結果データベース114の記憶内容の一例を概念的に示す説明図である。チェック結果データベース114は、結果IDに対応付けて、ルールチェックコード、エラーレベル、タイトル、メッセージ、階層、配置位置等の項目毎にチェック結果に関するデータを記憶するデータベースである。ルールチェックコードは、チェックに適用するルールを実行するためのチェック用プログラム等のプログラムを特定する情報である。エラーレベルとは、チェック結果がエラーとなった場合に出力されるエラーの程度を示す情報である。タイトルとは、チェックの内容を示す情報である。メッセージとは、チェック結果として出力したメッセージを示す情報である。階層とは、エラーが生じた部材等の対象が配置されている階層を示す情報である。配置位置とは、エラーが生じた部材等の対象の配置位置を示す情報であり、座標の属性、座標の点数、座標の値等の情報にて示される。座標の属性とは、点、線分、折れ線、多角形等の座標にて定義される幾何学形状を示す情報である。座標の点数は、幾何学形状の特定に用いられる座標の数を示す情報である。
【0030】
図2のブロック図に戻り、入力部12は、キーボード、マウス、タッチパネル、デジタイザ等のデバイスである。表示部13は、液晶ディスプレイ等のデバイスである。なお、入力部12及び表示部13を、例えば、薄板状をなす液晶ディスプレイ及びタッチパネルを積層した液晶タッチパネルとして備えるようにしてもよい。
【0031】
通信部14は、LANアダプタ、アンテナ及び制御回路等のデバイスであり、有線通信又は無線通信にて通信網NWに接続し、各種データベースを含む各種装置と通信する。
【0032】
以上例示した様々な構成を備えるコンピュータは、制御部10の制御により、記憶部11に記憶されているCADプログラム110、設計支援プログラム111等の各種プログラムを読み取り、読み取ったプログラムに含まれる各種手順を実行することにより、設計支援装置1として動作する。
【0033】
なお、各種データベースへのアクセスについては、制御部10及び通信部14をアクセス手段として、通信網NWを介して接続されている基幹装置2が備える各種データベースにアクセスしてもよく、制御部10をアクセス手段として、記憶部11に記憶されているローカルの各種データベースにアクセスしてもよい。以降では、記憶部11に記憶されているローカルの各種データベースにアクセスする形態を例示して説明する。
【0034】
<装置のソフトウェア処理>
次に、設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の処理について説明する。
図5は、本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の部材干渉チェック処理の一例を示すフローチャートである。部材干渉チェック処理は、建物の水平面に開設された開口と、建物内に配設された水平斜材との干渉状況に基づく設計の適否をチェックする処理である。
図5に例示するフローチャートを用いてチェックする部材干渉チェック処理は、水平面に開設された開口として、天井面に開設された点検口を例示し、水平ブレースとの干渉をチェックする処理である。
【0035】
設計支援装置1が備える制御部10は、CADプログラム110、設計支援プログラム111等の各種プログラムを実行することにより、部材干渉チェック処理を実行する。設計支援装置1が備える制御部10は、CAD処理を実行する(ステップS1)。ステップS1のCAD処理とは、CADシステムによる設計支援処理を示している。CAD処理では、CAD情報データベース112にアクセスし、建物IDに対応付けて記憶されているCADデータ、予め記憶されている基本プランとなるCADデータ等のCADデータを抽出し、適宜、内容の追加及び変更を行うことにより行われる。CAD処理中、設計担当者の操作による手動処理、又は設計終了等のイベント発生を契機とする自動処理により、設計支援装置1は、以降の部材干渉チェック処理を実行する。
【0036】
制御部10は、部材情報データベース113にアクセスして種類情報等の記憶内容を参照し、CAD処理中のCADデータに含まれる部材データから、種類情報が天井点検口である部材データにて示される水平面に開設された開口を、特定開口として特定する(ステップS2)。ステップS2は、CADデータを点、線分、領域等の幾何学的な対象に分解し、部材情報データベース113を参照して、部材単位に区分し、種類情報が天井点検口として記憶されている部材(ステップS1の例では、開口の領域)を、部材干渉チェックの対象として特定する処理である。なお、部屋、浴室等の区画、更には、梁、鴨居等の水平材で区切られた区画は、領域を示す部材として区分される。特定開口として特定する開口は、略長方形状等の多角形状に形成されている。
【0037】
制御部10は、略長方形状をなす特定開口の対角にある二の頂点の座標を取得し(ステップS3)、取得した二の頂点の座標の中点を中心とし、特定開口に内接する内接円を導出内接円として導出する(ステップS4)。
【0038】
図6は、本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
図6は、ステップS2~S4の処理を概念的に示している。
図6に例示するように、設計支援装置1は、ステップS2にて略長方形状の特定開口Oを特定し、ステップS3にて特定開口Oの対角にある左上の頂点の座標P1 (X1 ,Y1 )及び右下の頂点の座標P2 (X2 ,Y2 )を取得する。更に、設計支援装置1は、二の頂点の座標P1 (X1 ,Y1 )及びP2 (X2 ,Y2 )を結ぶ線分となる対角線Lの中点の座標P0 {(X1 +X2 )/2,(Y1 +Y2 )/2}を中心とする導出内接円A1をステップS4にて導出する。導出内接円A1は、特定開口Oの対向する二の長辺に接する円であり、後述する処理において、特定開口Oに関する水平範囲を示す第1領域A1として扱われる。
【0039】
図7は、本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
図7は、
図6に例示した形態と異なる他の形態の例であり、特定開口Oが略正方形状の場合の例を示している。特定開口Oが略正方形状の場合、導出内接円A1は、特定開口Oの四辺に接する円となる。
図6及び
図7に例示するように、略長方形状をなす特定開口Oは、略正方形状も含む概念である。また、略長方形状は、実質的に長方形と見做せる形状を示しており、厳密な意味では長方形ではない角丸長方形等の形状をも含む概念である。更に、特定開口Oは、長方形以外の四角形、四角形以外の多角形にも拡張することが可能である。例えば、長方形の角を切り落とした形状の多角形、長方形の角を内側に切り欠いた形状の多角形等の多角形を例示することができる。なお、角丸長方形等の長方形を変形した形状の特定開口に対しては、本来の長方形を想定し、想定した長方形の対角にある二の頂点を結ぶ対角線の中点を中心とする導出内接円を導出する。
【0040】
図5のフローチャートに戻り、制御部10は、部材情報データベース113にアクセスして種類情報等の記憶内容を参照し、水平ブレースが配設された略長方形状の領域を斜材配設領域として検出する(ステップS5)。ステップS5は、例えば、CAD処理中のCADデータに含まれる部材データから、種類情報が領域であり、かつ水平ブレースの配置位置と重なる部材データにて示される領域を、斜材配設領域として検出する処理として実行される。また、ステップS5は、例えば、CADデータに含まれる部材データが水平ブレースである部材を検出し、検出された水平ブレースが配置されている水平範囲を、斜材配設領域として検出する処理として実行するようにしてもよい。
【0041】
制御部10は、略長方形状の斜材配設領域の対角線を、導出対角線として導出し(ステップS6)、導出対角線から、水平方向に所定長の距離内の範囲を、導出幅として導出する(ステップS7)。
【0042】
図8は、本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
図8は、ステップS5~S7の処理を概念的に示している。
図8に例示するように、設計支援装置1は、ステップS5にて略長方形状の斜材配設領域Sを検出し、ステップS6にて導出対角線Dを導出し、導出幅wを導出している。導出対角線Dは、斜材配設領域Sに配設される水平ブレースを想定した線分であるが、実際の水平ブレースは、線分とは異なり一定の幅を有しているため、干渉する可能性がある水平領域として導出幅wを導出する。導出幅wは、予め設定されている値であり、実際の水平ブレースの幅より余裕を見越した幅が設定されている。導出対角線Dから水平方向の導出幅wを考慮した水平範囲は、後述する処理において、斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域A2として扱われる。
【0043】
図5のフローチャートに戻り、制御部10は、特定開口に関する水平範囲を示す第1領域及び斜材配設領域に関する水平範囲を示す第2領域の平面視の干渉状況を判定する(ステップS8)。ステップS8における第1領域は、ステップS4にて導出された導出内接円であり、第2領域は、ステップS7にて導出された導出幅で区分された領域である。
【0044】
制御部10は、ステップS8の判定結果に基づいて設計の適否(部材配置の可否)を判定する(ステップS9)。ステップS8において、第1領域及び第2領域が干渉すると判定された場合、設計支援装置1は、ステップS9の処理にて、設計は不適切であり、部材の配置は不可であると判定する。ステップS8において、第1領域及び第2領域が干渉しないと判定された場合、設計支援装置1は、ステップS9の処理にて、設計は適切であり、部材の配置は可能であると判定する。
【0045】
図9は、本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
図9は、ステップS8~S9の処理を概念的に示している。
図9は、第1領域A1と、第2領域A2とが干渉している状態を例示している。第1領域A1及び第2領域A2が干渉しているため、設計支援装置1は、ステップS9において、設計は不適切であり、部材の配置は不可であると判定する。
【0046】
図10は、本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の部材干渉チェック処理の一例を概念的に示す説明図である。
図10は、ステップS8~S9の処理を概念的に示している。
図9は、第1領域A1と、第2領域A2とが干渉していない状態を例示している。第1領域A1及び第2領域A2が干渉していないため、設計支援装置1は、ステップS9において、設計は適切であり、部材の配置は可能であると判定する。
【0047】
図5のフローチャートに戻り、ステップS9において、配置不可であると判定した場合(ステップS9:NO)、制御部10は、禁則処理を実行する(ステップS10)。ステップS10の禁則処理は、部材の配置が不可であり、チェック結果がエラーであることを示すコメントを表示部13に表示し、チェック結果に関するデータをチェック結果データベース114に記憶させる処理である。ステップS10の禁則処理にて、コメントを表示部13に表示することにより、設計担当者は、天井点検口及び水平ブレースの配置が干渉していることを認識することができる。ステップS10の禁則処理後、制御部10は、ステップS2へ戻り、他の特定開口を特定するステップS2以降の処理を繰り返す。特定開口として特定すべき他の開口がない場合、制御部10は、部材干渉チェック処理を終了する。
【0048】
図11は、本願開示の設計支援システムにて用いられる設計支援装置1の表示部13に表示される画像の一例を示す説明図である。
図11は、
図5のフローチャートに示すステップS10の禁則処理として出力されるコメント等の情報を含む画像を例示している。
図11に例示する画像には、略中央に、部材干渉チェック処理の対象となる建物の伏図、天井点検口及び天井点検口の内接円となる第1領域、並びに斜材配設領域の対角線及び対角線の幅となる第2領域を示す画像が表示されている。画像の上側には、階層を示すタブが表示されており、
図11で例示されている伏図が「2階(3層)」のものであることが示されている。画像の左側には、当該チェック処理の対象に関する内容(名称)、並びに階層、配置方向(方向)等の属性、配置位置(座標)等の様々な情報が表形式で表示されている。
図11に例示されている属性の表には、階層が3層であること、内容(名称)が天井点検口であること等の属性に関する情報が示されている。更に、その下方の座標には、各部材のXY座標が示されている。画像の下方には、チェック結果となる情報として、エラーコード、レベル、階層、タイトル、コメント等の各種情報が表示されている。例えば、エラーコード「XXC1010 」が付された階層「3層」のタイトル「天井点検口範囲のブレースチェック」について、「天井点検口とブレースが干渉しています」とのコメントを出力する情報が示されており、このコメントのレベルが「重要」であることが示されている。
図11にチェック結果として表示されている情報は、チェック結果データベース114に記憶される。
【0049】
ステップS9において、配置可能であると判定した場合(ステップS9:YES)、制御部10は、特定した開口に関するチェック処理を終了する(ステップS11)。ステップS11にてチェック処理を終了後、制御部10は、ステップS2へ戻り、他の特定開口を特定する配置物を対象配置物として特定するステップS2以降の処理を繰り返す。特定開口として特定すべき他の開口がない場合、制御部10は、部材干渉チェック処理を終了する。
【0050】
以上のようにして、部材干渉チェック処理が実行される。
【0051】
以上詳述した如く、本願開示の設計支援装置1等は、建物内の水平面に開設された特定開口に関する水平範囲と、建物内に配設された水平斜材が配設された領域を斜材配設領域に関する水平範囲との干渉状況に基づいて、設計の適否を判定する。これにより、例えば、特定開口である天井点検口と、水平ブレースとの干渉状況を判定し、設計の適否を判定することができる。従って、配置物の配置、設計変更等の設計及び検査の際に発生し得るヒューマンエラーを防止することが可能である。従って、本願開示の設計支援装置1等は、建物の設計を支援することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0052】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0053】
例えば、前記実施形態では、水平面の開口として、天井に開設された天井点検口を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、様々な水平面の開口を対象とする形態に展開することが可能である。例えば、本願開示の設計支援方法等は、水平面の開口として、床面に開設された収納口に対する水平斜材の干渉の可否を判定する等、様々な形態に展開することが可能である。
【0054】
更に、前記実施形態では、設計支援装置1を設計担当者が直接操作する形態を示したが、本発明はこれに限らず、設計支援装置1を通信網NW上のウェブサーバコンピュータとして設置し、設計担当者が操作する端末装置に対して設計支援装置1からウェブサービスを提供する形態等、様々な形態に展開することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 設計支援装置
10 制御部
11 記憶部
110 CADプログラム
111 設計支援プログラム
112 CAD情報データベース
113 部材情報データベース
114 チェック結果データベース
12 入力部
13 表示部
14 通信部
2 基幹装置
DB1 CAD情報データベース
DB2 部材情報データベース
DB3 チェック結果データベース
NW 通信網