(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156854
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】電線調整装置、及び電線接続方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066469
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小板橋 一博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智明
(72)【発明者】
【氏名】秋山 譲
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 勝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓
(72)【発明者】
【氏名】一場 藤男
(72)【発明者】
【氏名】染宮 康佑
(72)【発明者】
【氏名】新本 龍厳
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352CA05
5G352CK08
(57)【要約】
【課題】 本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、実機器が配置されていない地上にて裸電線を調整することができる電線調整装置と、これを用いて調整された裸電線で接続する方法を提供することである。
【解決手段】 本願発明の電線調整装置は、第1機器と第2機器を接続する裸電線の長さと形状を調整するための装置であって、第1端子構造体と第2端子構造体、連結体を備えたものである。このうち第1端子構造体は、第1機器の端子部を再現する手段であり、第2端子構造体は、第2機器の端子部を再現する手段である。また連結体は、第1端子構造体と第2端子構造体を連結し、略水平(水平を含む)に配置されるものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1機器と第2機器を接続する裸電線の長さと形状を調整するための装置であって、
前記第1機器の端子部を再現する第1端子構造体と、
前記第2機器の端子部を再現する第2端子構造体と、
前記第1端子構造体と前記第2端子構造体を連結し、水平又は略水平に配置される連結体と、を備え、
前記第1端子構造体は、水平又は略水平に配置される第1ベース材と、鉛直又は略鉛直に配置されて該第1ベース材に取り付けられる第1支柱と、該第1支柱に取り付けられる第1端子と、を含んで構成され、
前記第2端子構造体は、水平又は略水平に配置される第2ベース材と、鉛直又は略鉛直に配置されて該第2ベース材に取り付けられる第2支柱と、該第2支柱に取り付けられる第2端子と、を含んで構成され、
前記第1端子は、取り付け高さの変更が可能であり、
前記第2ベース材は、前記連結体に沿ってスライド可能であり、
前記第1機器の端子位置となるように取り付け高さを調整したうえで前記第1端子を前記第1支柱に固定するとともに、該第1機器の端子と前記第2機器の端子との離隔となるようにスライドさせた前記第2ベース材を前記連結体に固定することによって、該第1端子と前記第2端子の配置を利用して前記裸電線の長さと形状の調整が可能である、
ことを特徴とする電線調整装置。
【請求項2】
前記第1ベース材には3つの前記第1支柱に取り付けられるとともに、それぞれの該第1支柱に前記第1端子が取り付けられ、
前記第2ベース材には3つの前記第2支柱に取り付けられるとともに、それぞれの該第2支柱に前記第2端子が取り付けられ、
対応する3対の前記第1端子と前記第2端子の配置を利用して、3本の前記裸電線の長さと形状の調整が可能である、
ことを特徴とする請求項1記載の電線調整装置。
【請求項3】
前記第1支柱に、該第1支柱の軸方向の長さを示す第1支柱スケールが設けられ、
前記連結体に、該連結体の軸方向の長さを示す連結体スケールが設けられた、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電線調整装置。
【請求項4】
前記第2ベース材には、前記第2機器の種類に応じた複数種類のベース小孔が設けられ、
前記第2支柱には、第2支柱小孔が設けられ、
対象となる種類の前記第2機器に係る前記ベース小孔と、前記第2支柱小孔と、の位置を合わせたうえで前記第2支柱を取り付けると、該第2機器の種類に応じた端子位置となるように前記第2端子が配置される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電線調整装置。
【請求項5】
前記第1支柱には、2連以上の支柱小孔列が設けられ、
前記第1端子には、第1端子小孔が設けられ、
前記支柱小孔列は、上下に並ぶ複数の第1支柱小孔によって形成され、
前記支柱小孔列を構成する前記第1支柱小孔の配置高さは、それぞれ該支柱小孔列によって異なり、
いずれかの前記支柱小孔列の前記第1支柱小孔と、前記第1端子小孔と、の位置を合わせたうえで前記第1端子を取り付け可能である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電線調整装置。
【請求項6】
前記第1ベース材のうち2以上の箇所に、該第1ベース材の高さを調整し得る第1ベース調整手段が設けられ、
前記第2ベース材のうち2以上の箇所に、該第2ベース材の高さを調整し得る第2ベース調整手段が設けられ、
前記第1ベース調整手段と前記第2ベース調整手段を調整することによって、前記第1ベース材と前記第2ベース材と前記連結体を水平又は略水平に配置可能である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電線調整装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2記載の電線調整装置を用いて、前記第1機器と前記第2機器を前記裸電線で接続する方法であって、
地上において、前記第1機器の端子位置となるように取り付け高さを調整したうえで、前記第1端子を前記第1支柱に固定する第1端子設置工程と、
地上において、前記第1機器の端子と前記第2機器の端子との離隔となるように前記第2ベース材をスライドさせたうえで、該第2ベース材を前記連結体に固定する第2ベース材固定工程と、
地上において、前記第1端子と前記第2端子の配置を利用して、前記裸電線の長さと形状を調整する電線調整工程と、
地上において、前記裸電線の両端に端子を取り付ける端子設置工程と、
前記裸電線調整工程によって調整され、さらに前記端子設置工程によって前記端子が取り付けられた前記裸電線を、前記第1機器と前記第2機器まで引き上げたうえで、該第1機器と該第2機器を該裸電線で接続する電線接続工程と、を備えた、
ことを特徴とする電線接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、機器間を接続する電線の加工技術に関するものであり、より具体的には、実機器の端子配置を模擬的に再現することができ、これにより地上における裸電線の調整作業を可能にする電線調整装置と、これを用いて機器間を裸電線で接続する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所では数千~数万ボルトの電気が生成されるが、電気抵抗によるロスを避けるため数十万ボルト程度の超高圧にしたうえで送電している。そして、超高圧変電所や一次変電所、二次変電所、配電用変電所などの各変電所で徐々に電圧を下げたうえで工場などに供給し、さらに柱上変圧器などで電圧を下げて家庭に供給している。これら変電所には、実際に電気の電圧を下げる「変圧器」のほか、故障時に自動的に電気を切断する「遮断器」や、送電装置の点検時に電気を切断する「断路器」、落雷時に雷電気を地面に逃がす「避雷器」といった安全装置が設けられている。
【0003】
このように変電所は、需要者に電力を安定供給するうえで極めて重要な施設の一つであり、各地で数多くの変電所が利用されている。そのため、比較的新しい変電所もあれば、相当な期間を経過した変電所もある。さらに長期にわたって利用された変電所のなかには、経年により設備が老朽化した変電所や、電力需要の増加に伴って設備の拡大が求められる変電所などもある。そして、設備が老朽化した変電所では設備の取替が必要とされ、需要が増加した変電所では回線の増設などが必要とされる。このような設備の取替工事や回線の増設工事は、一時的に設備の稼働を停止する必要があるうえ、多様でしかも煩雑な作業が強いられることから、特許文献1をはじめこれまでにも種々の改良技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の設備の取替工事は、古い機器(例えば、遮断器など)を撤去した後に新しい機器を据付け、次いで機器間を裸電線で接続するといった手順で行われていた。また、裸電線に対しては、機器と機器を円滑に接続できるように成形され、すなわち適切な長さに調整するとともに、適切な立体的形状(つまり、三次元の形状)とするよう調整していた。当然ながら、変電所における固有の機器配置、あるいは機器製造者の違いなどによって裸電線の長さや形状は異なるため、この裸電線の調整作業は現地で行う必要があり、すなわち機器の設置位置で実施していた。そして、一般的に変電所の機器は地上よりもある程度高い位置に設置されることから、裸電線の調整はいわゆる高所作業となっていた。
【0006】
他方、裸電線は鋼線のより線構造とされるため、仮に端子圧縮後に曲げ加工を行うとそのよりが開く結果、劣化や断線の原因となるおそれがある。したがって、端子圧縮後の裸電線にストレスが掛からないようにする必要があり、換言すれば裸電線の曲げ加工を行った後に端子圧縮する必要がある。ところが、端子圧縮は重量物を取り扱うため高所作業とすることは望ましくない。つまり、まずは機器の周辺で裸電線の曲げ加工を高所作業で行った後、加工後の裸電線を地上まで引き降ろしたうえで端子圧縮を行い、再び裸電線を機器周辺まで引き上げたうえで機器間を接続するという高所作業を行わなければならない。このように従来の取替工事は、繰り返し高所作業が行われ、しかも裸電線の昇降作業を伴うことから、墜落や落下に伴う労働災害が生じやすい環境にあった。
【0007】
また、従来の取替工事では一旦設備を停止したうえで所定の作業が行われていた。通常、変電所では、障害発生時に当該区間での電気途絶が生じないように、電気系統を多重化するいわゆるリダンダンシーが図られているが、取替工事の最中はこのリダンダンシーが確保されない供給信頼度の低下が発生することとなる。そして従来の取替工事において長時間を要するのが裸電線の張替え作業であり、すなわち裸電線の張替え作業が供給信頼度の低下時間を引き延ばしていたわけである。
【0008】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、実機器が配置されていない地上にて裸電線を調整することができる電線調整装置と、これを用いて調整された裸電線で接続する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、実機器の端子配置を地上で模擬的に再現する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0010】
本願発明の電線調整装置は、第1機器と第2機器を接続する裸電線の長さと形状を調整するための装置であって、第1端子構造体と第2端子構造体、連結体を備えたものである。このうち第1端子構造体は、第1機器の端子部を再現する手段であり、第2端子構造体は、第2機器の端子部を再現する手段である。また連結体は、第1端子構造体と第2端子構造体を連結し、略水平(水平を含む)に配置されるものである。第1端子構造体は、略水平(水平を含む)に配置される第1ベース材と、略鉛直(鉛直を含む)に配置されて第1ベース材に取り付けられる第1支柱、第1支柱に取り付けられる第1端子を含んで構成される。第2端子構造体は、略水平(水平を含む)に配置される第2ベース材と、略鉛直(鉛直を含む)に配置されて第2ベース材に取り付けられる第2支柱、第2支柱に取り付けられる第2端子を含んで構成される。第1端子は、取り付け高さの変更が可能であり、第2ベース材は、連結体に沿ってスライド可能である。そして、第1機器の端子位置となるように取り付け高さを調整したうえで第1端子を第1支柱に固定するとともに、第1機器の端子と第2機器の端子との離隔となるようにスライドさせた第2ベース材を連結体に固定することによって、第1端子と第2端子の配置を利用して裸電線の長さと形状の調整が可能となる。
【0011】
本願発明の電線調整装置は、対応する3対の第1端子と第2端子の配置を利用して、3本の裸電線の長さと形状を調整することができるものとすることもできる。この場合、第1ベース材には3つの第1支柱に取り付けられるとともに、それぞれの第1支柱には第1端子が取り付けられる。同様に、第2ベース材には3つの第2支柱に取り付けられるとともに、それぞれの第2支柱には第2端子が取り付けられる。
【0012】
本願発明の電線調整装置は、第1支柱に第1支柱の軸方向の長さを示す第1支柱スケールが設けられ、連結体に連結体の軸方向の長さを示す連結体スケールが設けられたものとすることもできる。この場合、後述するように、実際に寸法が付されたテープ(定規)を利用して第1支柱スケールや連結体スケールとすることもできるし、第1支柱や連結体に設けられた小孔(第1支柱小孔や連結軸部材小孔)の周辺に数値を記すことで第1支柱スケールや連結体スケールとすることもできるし、あるいは一定の間隔で小孔(第1支柱小孔112H)を設けることによってその小孔そのものを第1支柱スケールや連結体スケールとすることもできる。
【0013】
本願発明の電線調整装置は、第2ベース材にベース小孔が設けられ、第2支柱に第2支柱小孔が設けられたものとすることもできる。なお第2ベース材には、第2機器の種類に応じた複数種類のベース小孔が設けられる。この場合、対象となる種類の第2機器に係るベース小孔と、第2支柱小孔との位置を合わせたうえで第2支柱を取り付けると、第2機器の種類に応じた端子位置となるようにその第2支柱に係る第2端子が配置される。
【0014】
本願発明の電線調整装置は、第1支柱に2連以上の支柱小孔列が設けられ、第1端子に第1端子小孔が設けられたものとすることもできる。なお支柱小孔列は、上下に並ぶ複数の第1支柱小孔によって形成され、支柱小孔列を構成する第1支柱小孔の配置高さはそれぞれ支柱小孔列によって異なる。この場合、いずれかの支柱小孔列の第1支柱小孔と、第1端子小孔との位置を合わせたうえで第1端子を取り付けることができる。
【0015】
本願発明の電線調整装置は、第1ベース調整手段と第2ベース調整手段をさらに備えたものとすることもできる。第1ベース材のうち2以上の箇所に設けられる第1ベース調整手段は、第1ベース材の高さを調整し得るものであり、第2ベース材のうち2以上の箇所に設けられる第2ベース調整手段は、第2ベース材の高さを調整し得るものである。この場合、第1ベース調整手段と第2ベース調整手段を調整することによって、第1ベース材と第2ベース材と連結体を略水平(水平を含む)に配置することができる。
【0016】
本願発明の電線接続方法は、本願発明の電線調整装置を用いて第1機器と第2機器を裸電線で接続する方法であって、第1端子設置工程と第2ベース材固定工程、電線調整工程、端子設置工程、電線接続工程を備えた方法である。このうち第1端子設置工程では、地上において第1機器の端子位置となるように取り付け高さを調整したうえで第1端子を第1支柱に固定し、第2ベース材固定工程では、地上において第1機器の端子と第2機器の端子との離隔となるように第2ベース材をスライドさせたうえで第2ベース材を連結体に固定する。また電線調整工程では、地上において第1端子と第2端子の配置を利用して裸電線の長さと形状を調整し、端子設置工程では、地上において裸電線の両端に端子を取り付ける。そして電線接続工程では、裸電線調整工程によって調整され、さらに端子設置工程によって端子が取り付けられた裸電線を、第1機器と第2機器まで引き上げたうえで第1機器と第2機器をその裸電線で接続する。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の電線調整装置、及び電線接続方法には、次のような効果がある。
(1)実機器の端子部の配置を地上で模擬的に再現することによって、裸電線の長さや三次元形状の調整作業を地上で実施することができる。その結果、裸電線の昇降回数を軽減することができ、墜落災害リスクを低減することができる。
(2)実機器の端子部の配置を模擬的に再現するため、従来技術と同等の品質で裸電線を調整することができる。
(3)地上にて裸電線の調整作業を実施することから、その調整作業のための設備停止を行う必要がなく、すなわち設備の停止時間が短縮できて供給信頼度を向上することができる。
(4)変電所における固有の機器配置、あるいは機器製造者の違いに対しても、柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は遮断器の両脇に断路器が配置された側面図、(b)は遮断器の両脇に断路器が配置された平面図。
【
図2】本願発明の電線調整装置を模式的に示す全体斜視図。
【
図3】本願発明の電線調整装置を模式的に示す側面図。
【
図4】本願発明の電線調整装置を模式的に示す平面図。
【
図5】電線調整装置を構成する第1端子構造体を模式的に示す正面図。
【
図6】第1機器の端子部を模した第1端子を模式的に示す部分斜視図。
【
図7】2連の支柱小孔列が設けられた第1支柱小孔を模式的に示す部分斜視図。
【
図8】電線調整装置を構成する第2端子構造体を模式的に示す正面図。
【
図9】(a)は後方から見た第2端子を模式的に示す部分斜視図、(b)は前方から見た第2端子を模式的に示す部分斜視図。
【
図10】本願発明の電線接続方法の主な工程を示すフロー図。
【
図11】(a)は遮断器端子部の断面視が直角形状であって断路器端子部が遮断器端子部よりも高い位置にあるケースにおける裸電線の中間経路を模式的に示すモデル図、(b)は遮断器端子部の断面視が直角形状であって断路器端子部と遮断器端子部が略同じ高さにあるケースにおける裸電線の中間経路を模式的に示すモデル図、(c)は遮断器端子部の断面視が平坦形状であって断路器端子部が遮断器端子部よりも高い位置にあるケースにおける裸電線の中間経路を模式的に示すモデル図、(d)は遮断器端子部の断面視が屈折形状であって断路器端子部が遮断器端子部よりも高い位置にあるケースにおける裸電線の中間経路を模式的に示すモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の電線調整装置、及び電線接続方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0020】
本願発明は、一方の機器(以下、便宜上ここでは「第1機器」という。)の端子部と、他方の機器(以下、便宜上ここでは「第2機器」という。)の端子部を裸電線で接続する際に、その裸電線の長さや立体的形状(つまり、三次元の形状)を調整するために特に好適に用いられる。ここで、第1機器としては断路器やアルミパイプ母線などを例示することができ、第2機器としては遮断器などを例示することができる。
図1は、裸電線で接続する前の断路器LSと遮断器CBを示しており、(a)は遮断器CBの両脇に断路器LSが配置された側面図、(b)は遮断器CBの両脇に断路器LSが配置された平面図(上方から見た図)である。したがってこの図の場合、左側の断路器LS(第1機器)の端子部TLSと遮断器CB(第2機器)の左側の端子部TCBが裸電線で接続され、さらに右側の断路器LSの端子部TLSと遮断器CBの右側の端子部TCBが裸電線で接続される。
【0021】
1.電線調整装置
本願発明の電線調整装置について図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明の電線接続方法は、本願発明の電線調整装置を用いて調整された裸電線で機器間を接続する方法であり、したがってまずは本願発明の電線調整装置について説明し、その後に本願発明の電線接続方法について詳しく説明することとする。
【0022】
図2は、本願発明の電線調整装置100を模式的に示す全体斜視図である。この図に示すように本願発明の電線調整装置100は、第1端子構造体110と第2端子構造体120、連結体130を含んで構成されるものであり、
図1に示すような実際の機器の配置、すなわち断路器LS(第1機器)の端子部TLSと遮断器CB(第2機器)の端子部TCBの配置を、模擬的に再現することができるものである。また、この電線調整装置100は地上に配置することができる。したがって、第1機器と第2機器を接続するための裸電線EWの長さと三次元形状をあらかじめ調整することができ、しかも第1機器や第2機器が配置される高所ではなく地上においてその作業を実施することができるわけである。
【0023】
図2に示すように、第1端子構造体110は第1ベース材111と第1支柱112、第1端子113を含んで構成され、第2端子構造体120は第2ベース材121と第2支柱122、第2端子123を含んで構成され、連結体130は連結軸部材131を含んで構成される。第1端子113は第1機器の端子部に相当するもので、第2端子123は第2機器の端子部に相当するものであり、また第1端子113や第2端子123の位置は調整可能とされる。これにより、位置調整された第1端子113と第2端子123の配置が、第1機器の端子部と第2機器の端子部の配置を模擬的に再現することとなり、これを利用して裸電線EWの長さと三次元形状を調整することができる。なおこの図では、3本の(つまり、3相の)裸電線EWを同時に調整可能とすべく、3対の第1端子113と第2端子123を備えているが、これに限らず1対や2対、4対以上の第1端子113と第2端子123を備えたものとすることもできる。
【0024】
図3は、本願発明の電線調整装置100を模式的に示す側面図である。この図に示すように電線調整装置100を使用する際、連結体130が略水平(水平を含む)に配置されたうえで、その連結体130に第1端子構造体110と第2端子構造体120が取り付けられる。換言すれば、連結体130は第1端子構造体110と第2端子構造体120を連結する部材である。また、第1端子113は上下に位置を変更することができ、第2端子123は前後(図では左右)に位置を変更することができる。
【0025】
図4は、本願発明の電線調整装置100を模式的に示す平面図(上方から見た図)である。この図に示すように、第1ベース材111と第2ベース材121は略平行(平行を含む)に配置され、連結軸部材131は第1ベース材111や第2ベース材121と略垂直(垂直を含む)に配置される。例えば
図4では、連結軸部材131が左連結軸部材131Lと右連結軸部材131Rによって構成されており、左連結軸部材131Lが第1ベース材111や第2ベース材121と略垂直に配置され、同様に右連結軸部材131Rも第1ベース材111や第2ベース材121と略垂直に配置されている。
【0026】
以下、本願発明の電線調整装置100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0027】
(第1端子構造体)
図5は、電線調整装置100を構成する第1端子構造体110を模式的に示す正面図である。この第1端子構造体110は、第1機器の端子部(例えば、断路器LSの端子部TLS)を再現するものであり、既述したとおり第1ベース材111と第1支柱112、第1端子113を含んで構成され、さらに第1梁材114や第1支柱スケールを含んで構成することもできる。
【0028】
第1ベース材111と第1支柱112は、断面寸法に比して軸方向の寸法が卓越した柱状(棒状や筒状)の部材であり、例えば角鋼管などを利用することができる。また第1端子113は、
図6に示すように第1機器の端子部を模した形状や寸法として形成される部材であり、例えば形鋼や平鋼を加工することによって形成することができる。なおこの図では、実際に第1端子113に裸電線EWの端子(この図では、締め付け端子)が取り付けられている。
【0029】
図5に示す第1端子構造体110は、略水平(水平を含む)に配置された第1ベース材111に、略垂直(垂直を含む)に配置された3つの第1支柱112が取り付けられ、さらに第1支柱112の上端には第1梁材114が取り付けられており、それぞれの第1支柱112には第1端子113が取り付けられている。なお、第1支柱112と第1端子113は、同時に調整しようとする裸電線EWの数だけ設けられ、1本のみの裸電線EWを調整する場合は1組の第1支柱112と第1端子113を設け、3本の(つまり、3相の)裸電線EWを同時調整する場合は
図5に示すように3組の第1支柱112と第1端子113を設ける。また第1支柱112は、第1ベース材111の軸方向(
図5では左右方向)に移動しないように固定することもできるし、第1ベース材111の軸方向にスライド可能となるように取り付けることもできる。
【0030】
第1端子113の取り付け高さは変更自在とされ、すなわち所望の高さで第1端子113を第1支柱112に取り付けることができる。第1端子113の取り付け高さを変更自在とするには、第1端子113をスライドさせる手法や、磁石やクランプを利用して着脱自在とする手法など、従来用いられている種々の技術を採用することができる。例えば、第1支柱112に複数の小孔(以下、「第1支柱小孔112H」)を設けるとともに、第1端子113にも小孔(以下、「第1端子小孔」という。)を設けることで、第1端子113の取り付け高さを変更自在とすることができる。複数の第1支柱小孔112Hは上下に並ぶように設けられていることから、そのうち選択された第1支柱小孔112Hと、第1端子小孔の位置を合わせたうえで、ピンやボルトを第1支柱小孔112Hと第1端子小孔に挿通することによって、所望の高さに第1端子113を取り付けるわけである。
【0031】
上下に隣接する第1支柱小孔112Hの間隔(つまり、設置間隔)が短いほど、第1端子113の設置高さを自由に調整することができる。しかしながら、第1支柱小孔112Hの内径や、第1支柱小孔112Hの部材強度によっては、それほど短い間隔(ピッチ)で第1支柱小孔112Hを設けることができないこともある。この場合、
図7に示すように第1支柱小孔112Hに2連以上の支柱小孔列112Gを設けるとよい。ここで支柱小孔列112Gとは、上下に配置された複数の第1支柱小孔112Hの集合であり、
図7の例では2連の支柱小孔列112Gが設けられている。ただし、支柱小孔列112Gを構成する第1支柱小孔112Hの配置高さは、それぞれ支柱小孔列112Gによって異なる位置とする。例えば
図7のケースでは、左側の支柱小孔列112G、右側の支柱小孔列112Gともに第1支柱小孔112Hが2cm間隔で設けられているが、左側の支柱小孔列112Gの第1支柱小孔112Hは地面から奇数cm(1cm、3cm、5cm、・・・)となるように配置され、右側の支柱小孔列112Gの第1支柱小孔112Hは地面から偶数cm(2cm、4cm、6cm、・・・)となるように配置されている。これにより、それぞれ第1支柱小孔112Hは2cmピッチで設けられているものの、第1端子113の設置高さは1cmピッチで調整することができる。なお、第1支柱小孔112Hに2連以上の支柱小孔列112Gを設ける場合、第1端子113には支柱小孔列112Gと同数の第1端子小孔を設けるとよい。
【0032】
ところで、第1端子113を所望の高さに取り付けるにあたっては、例えば巻尺や標尺(スタッフ)などを利用して地上からの高さを測定しながら、あるいは支柱小孔列112Gのうち第1支柱小孔112Hの下からの順番を数えながら取り付けることとなり、すなわち高さ調整のための測定作業が必要となる。この測定作業を省くためには、第1支柱112に第1支柱スケールを設置するとよい。この第1支柱スケールは、地上(あるいは、第1支柱112の下端)から第1支柱小孔112Hまでの高さを示すものであり、実際に寸法が付されたテープ(定規)を第1支柱112に設置(貼付)することで形成することもできるし、第1支柱小孔112Hの周辺に数値(地上からの高さ)を記すことで形成することもできるし、一定の間隔で第1支柱小孔112Hを設けることによって第1支柱小孔112Hそのものを第1支柱スケールとして利用することもできる。第1支柱スケールが設置されることで、巻尺や標尺などを用いた測定作業を行うことなく第1端子113を所望の高さに取り付けることができるわけである。
【0033】
(第2端子構造体)
図8は、電線調整装置100を構成する第2端子構造体120を模式的に示す正面図である。この第2端子構造体120は、第2機器の端子部(例えば、遮断器CBの端子部TCB)を再現するものであり、既述したとおり第2ベース材121と第2支柱122、第2端子123を含んで構成され、さらに貫入把持具124を含んで構成することもできる。
【0034】
第2ベース材121と第2支柱122は、断面寸法に比して軸方向の寸法が卓越した柱状(棒状や筒状)の部材であり、例えば角鋼管などを利用することができる。また第2端子123は、
図9に示すように第2機器の端子部を模した形状や寸法として形成される部材であり、例えば形鋼や平鋼を加工することによって形成することができる。
図9は、第2機器の端子部を模した第2端子123を模式的に示す図であり、(a)は後方(第1端子構造体110の反対側)から見た部分斜視図、(b)は前方(第1端子構造体110側)から見た部分斜視図である。なおこの図では、実際に第2端子123に裸電線EWの端子(この図では、圧縮端子)が取り付けられている。
【0035】
図8に示す第2端子構造体120は、略水平(水平を含む)に配置された第2ベース材121に、略垂直(垂直を含む)に配置された3つの第2支柱122が取り付けられ、それぞれの第2支柱122には第2端子123が取り付けられている。なお、第2支柱122と第2端子123は、同時に調整しようとする裸電線EWの数だけ設けられ、1本のみの裸電線EWを調整する場合は1組の第2支柱122と第2端子123を設け、3本の(つまり、3相の)裸電線EWを同時調整する場合は
図8に示すように3組の第2支柱122と第2端子123を設ける。
【0036】
第2端子123は、容易に取り外せないように第2支柱122に固定することもできるし、着脱自在に第2支柱122に取り付けることもできる。一方、第2支柱122は、自在に着脱できるように第2ベース材121に取り付けるとよい。第2支柱122の取り付けを着脱自在とするには、磁石やクランプを利用する手法など従来用いられている種々の技術を採用することができる。例えば、第2ベース材121に小孔(以下、「ベース小孔121H」)を設けるとともに、第2支柱122にも小孔(以下、「第2支柱小孔」という。)を設けることで、第2支柱122の取り付けを着脱自在とすることができる。ベース小孔121Hと第2支柱小孔の位置を合わせたうえで、ピンやボルトをベース小孔121Hと第2支柱小孔に挿通することによって、第2ベース材121に対して着脱自在となるように第2支柱122を取り付けることができる。
【0037】
ところで、機器製造者(いわゆるメーカー)の違いなど第2機器の種類によって、第2機器の端子部(例えば、遮断器CBの端子部TCB)の配置、特に第2機器の3相端子部の相対的な位置(遮断器ブッシングの開き)はそれぞれ相違する。そこで第2ベース材121には、
図8に示すように複数のベース小孔121Hを設けるとよい。より詳しくは、中央の第2支柱122に対応するベース小孔121Hは1種類のみ設けるが、左側と右側の第2支柱122に対応するベース小孔121Hはあらかじめ想定される第2機器の種類の数だけ設ける。もちろん、左右のベース小孔121Hは、第2機器の種類ごとに設けられ、第2支柱122を取り付けたときに当該種類の第2機器の端子部配置(特に、端子部の相対的な位置)が再現されるように配置される。つまり、特定メーカーの第2機器を対象とする場合、中央の第2支柱122は選択することなくベース小孔121Hを利用して取り付けるが、左右の第2支柱122はそのメーカーの第2機器に対応するベース小孔121Hを選択して取り付ける。これにより、当該メーカーの第2機器の端子部配置が再現されるわけである。また、第2機器の種類ごとにそれぞれ対応するベース小孔121Hを設ける場合、第2支柱122や第2端子123も、第2機器の種類ごとにそれぞれ異なる形状や寸法のものとして用意するとよい。この場合、第2機器の種類に対応する第2支柱122や第2端子123を選択したうえで、第2ベース材121に取り付ける。
【0038】
(連結体)
連結体130は、既述したとおり第1端子構造体110と第2端子構造体120を連結する部材であり、連結軸部材131を含んで構成され、さらに支持台132を含んで構成することもできる。例えば
図1に示す連結体130は、連結軸部材131が左連結軸部材131Lと右連結軸部材131Rによって構成されており、それぞれ左連結軸部材131Lと右連結軸部材131Rの軸方向の中央付近には支持台132が配置されている。このように支持台132は、連結軸部材131(左連結軸部材131Lの右連結軸部材131R)の撓みを支える部材であり、連結軸部材131が比較的長いときは1又は2以上の支持台132を配置し、比較的短いときは省略することもできる。なお連結軸部材131(左連結軸部材131Lの右連結軸部材131R)は、断面寸法に比して軸方向の寸法が卓越した柱状(棒状や筒状)の部材であり、例えば角鋼管などを利用することができる。
【0039】
ところで、模擬的に再現しようとする断路器LS(第1機器)の端子部TLSと遮断器CB(第2機器)の端子部TCBとの間隔が相当に長い(広い)ケースでは、1本の連結軸部材131(左連結軸部材131Lの右連結軸部材131R)では対応できないこともある。そこで連結軸部材131を、通常使用されるいわば本体部材と、延長したいときにのみ使用されるいわば延長部材(1又は2以上)からなる構成とすることもできる。この本体部材と延長部材(あるいは延長部材どうし)は、着脱自在に連結する構造とすることが望ましい。例えば、延長部材の先端の口径を本体部材の口径より小さい寸法とし、延長部材の先端を本体部材内に挿入することによって連結する構造とすることができる。あるいは、本体部材内に1又は2以上の延長部材を収容するいわゆる「テレスコピック構造」とすることもできる。この場合、本体部材から延長部材を出し入れすることができ、すなわち必要な延長部材を引き出したうえでストッパ等によって固定することによって、所望の長さとしたうえで連結軸部材131を利用することができる。
【0040】
連結体130には、第1端子構造体110と第2端子構造体120が取り付けられる。より詳しくは
図3に示すように、連結軸部材131の一端側(図では左側)に第1ベース材111が取り付けられ、連結軸部材131の他端側(図では右側)に第2ベース材121が取り付けられることによって、第1端子構造体110と第2端子構造体120は連結体130に取り付けられる。ただし、
図3にも示すように第2端子構造体120は、連結体130(特に、連結軸部材131)の軸方向に沿って、つまり第1端子構造体110に対して接近したり遠ざかったりするように(図では左右に)スライド可能な状態で、連結体130に取り付けられる。
【0041】
第2端子構造体120の取り付けをスライド可能とするには、タイヤを利用する手法や、車輪とレールを利用する手法など、従来用いられている種々の技術を採用することができる。例えば、
図9(b)に示すように第2ベース材121に設けられる貫入把持具124を利用して、第2端子構造体120をスライド可能とすることができる。この貫入把持具124は、第2ベース材121に固定され、連結軸部材131を収容することができる貫通孔が設けられている。つまり、貫入把持具124内に連結軸部材131を挿通した状態で第2ベース材121を移動することによって、第2端子構造体120が前後に(
図3では左右に)スライドすることができるわけである。
【0042】
第2端子構造体120が所定位置までスライドした後は、その第2端子構造体120が安定するように連結体130(特に、連結軸部材131)に固定することが望ましい。例えば
図9に示すように、連結軸部材131の上面に複数の小孔(以下、「連結軸部材小孔131H」)を設けるとともに、貫入把持具124にも小孔(以下、「貫入把持具小孔」という。)を設けることで、第2端子構造体120を連結軸部材131に固定することができる。複数の連結軸部材小孔131Hは連結軸部材131の軸上に並ぶように設けられていることから、そのうち選択された連結軸部材小孔131Hと、貫入把持具小孔の位置を合わせたうえで、ピンやボルトを連結軸部材小孔131Hと貫入把持具小孔に挿通することによって、所望の位置で第2端子構造体120を固定するわけである。あるいは、連結軸部材131の上面に小孔131Hを設けることなく、単に貫入把持具小孔に挿入されたピンやボルトを締め込むことによって第2端子構造体120を連結軸部材131に固定する構造とすることもできる。
【0043】
第2端子構造体120を連結体130の軸方向に沿ってスライドする目的は、実際の第1機器の端子部(例えば、断路器LSの端子部TLS)と第2機器の端子部(例えば、遮断器CBの端子部TCB)の距離(離隔)を再現するように、第1端子113と第2端子123を配置するためである。そして、第1端子113と第2端子123が目的の離隔となるように第2端子構造体120をスライドするにあたっては、例えば巻尺や標尺などを利用して第1端子113からの距離を測定しながら、あるいは連結軸部材131に設けられた連結軸部材小孔131Hの順番を数えながらスライドすることとなり、すなわち位置調整のための測定作業が必要となる。この測定作業を省くためには、連結体130(特に、連結軸部材131)に連結体スケールを設置するとよい。この連結体スケールは、起点(第1ベース材111や第1支柱112、あるいは第2ベース材121や第2支柱122)から連結軸部材小孔131Hまでの距離を示すものであり、連結軸部材小孔131Hの周辺に数値(起点からの距離)を記すことで形成することもできるし、一定の間隔で連結軸部材小孔131Hを設けることによって連結軸部材小孔131Hそのものを連結体スケールとして利用することもできる。また連結軸部材131に小孔131Hが設けられない場合は、実際に寸法が付されたテープ(定規)を連結軸部材131に設置(貼付)することで連結体スケールを形成することもできる。連結体スケールが設置されることで、巻尺や標尺などを用いた測定作業を行うことなく第2端子構造体120を目的の位置までスライドすることができるわけである。
【0044】
一方、第1端子構造体110は、第2端子構造体120と同様、連結体130の軸方向に沿ってスライド可能となるように連結体130に取り付けることもできるし、スライド移動することなく連結体130に固定することもできる。
【0045】
(第1ベース調整手段と第2ベース調整手段)
第1ベース調整手段141は、第1ベース材111の高さを調整することができるものであり、第2ベース調整手段142は、第2ベース材121の高さを調整することができるものである。なお、第1ベース調整手段141は第1ベース材111のうち2以上の箇所に設けられ、同様に、第2ベース調整手段142は第2ベース材121のうち2以上の箇所に設けられる。例えば
図4では、第1ベース材111の両端(図では上下端)に1つずつ第1ベース調整手段141が設けられ、第2ベース材121の両端(図では上下端)にも1つずつ第2ベース調整手段142が設けられている。
【0046】
第1ベース調整手段141や第2ベース調整手段142によって第1ベース材111や第2ベース材121の高さを調整するには、ジャッキを利用する手法など従来用いられている種々の技術を採用することができる。例えば、
図9に示すように、第1ベース調整手段141や第2ベース調整手段142をベースプレートとボルトからなる構造とし、ボルトを正方向に締め付けると第1ベース材111や第2ベース材121が上昇し、ボルトを逆方向に締め付けると第1ベース材111や第2ベース材121が下降する構成とすることができる。
【0047】
第1ベース調整手段141を用いた高さ調整を行うことによって、第1ベース材111を略水平(水平を含む)に配置することができ、同様に第2ベース調整手段142を用いた高さ調整を行うことによって、第2ベース材121を略水平(水平を含む)に配置することができ、また第1ベース材111と第2ベース材121が略同じ(同一を含む)高さとなるように調整することによって連結軸部材131(左連結軸部材131Lの右連結軸部材131R)も略水平(水平を含む)に配置することができる。その結果、支柱小孔列112Gと第2支柱122を、略鉛直(鉛直を含む)に配置することができる。
【0048】
2.電線接続方法
続いて本願発明の電線接続方法について図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明の電線接続方法は、ここまで説明した電線調整装置100を用いて調整された裸電線EWで機器間を接続する方法であり、したがって電線調整装置100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の電線接続方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.電線調整装置」で説明したものと同様である。
【0049】
図10は、本願発明の電線接続方法の主な工程を示すフロー図である。第1機器の端子部(例えば、断路器LSの端子部TLS)と第2機器の端子部(例えば、遮断器CBの端子部TCB)の距離(離隔)を裸電線EWで接続するにあたっては、まず第1機器の端子部と第2機器の端子部の配置(以下、便宜上ここでは「実端子配置」という。)を把握しておく。その実端子配置を把握するには、現地で実測することもできるし、諸条件を設定したうえで計算によって把握することもできる。
【0050】
実端子配置(第1機器の端子部と第2機器の端子部の配置)を把握すると、工場や作業ヤードなど第1機器や第2機器の設置場所とは異なるスペースに本願発明の電線調整装置100を設置する。このとき、第1ベース調整手段141と第2ベース調整手段142を用いた高さ調整を行うことによって、第1ベース材111と第2ベース材121、連結軸部材131を略水平(水平を含む)に配置し、支柱小孔列112Gと第2支柱122を略鉛直(鉛直を含む)に配置する。なおこの段階では、まだ第2支柱122を取り付ける必要はない。
【0051】
電線調整装置100を設置すると、事前に把握した実端子配置に基づいて目的の高さとなるように、第1端子113を第1支柱112に取り付ける(
図10のStep201)。このとき、第1支柱スケールを確認しながら第1支柱小孔112Hを選択し、その第1支柱小孔112Hと第1端子小孔の位置を合わせピンやボルトを用いて第1端子113を取り付けるとよい。
【0052】
第1端子113を第1支柱112に取り付けると、第2端子123が設置された第2支柱122を第2ベース材121に取り付ける。このとき、事前に把握した第2機器の種類(メーカーなど)に基づいて、その種類に対応する第2支柱122と第2端子123を選択してその第2端子123を第2支柱122に設置するとともに、その種類に対応する左右のベース小孔121Hを選択したうえで、そのベース小孔121Hと第2支柱小孔の位置を合わせピンやボルトを用いて第2支柱122を取り付けるとよい。そして、事前に把握した実端子配置に基づいて目的の位置となるように、第2端子構造体120を連結体130の軸方向に沿ってスライドしたうえで、第2端子構造体120を連結体130に固定する(
図10のStep202)。このとき、連結体スケールを確認しながら連結軸部材小孔131Hを選択し、その連結軸部材小孔131Hと貫入把持具小孔の位置を合わせピンやボルトを用いて第2ベース材121を固定するとよい。
【0053】
第1端子113を実端子配置に基づく高さに設置し、第2端子構造体120を実端子配置に基づく位置までスライドすると、第1端子113と第2端子123との高低差が目的の値となり、第1端子113と第2端子123との離隔が目的の値となる。そしてここまでの処理が完了すると、第1端子113と第2端子123の配置に合わせて裸電線EWの長さと三次元の形状を調整する(
図10のStep203)。なお、第1端子113と第2端子123は、裸電線EWのいわば始点と終点を示すものであり、中間の経路(ルート)を示すものではない。この中間経路については、第1端子113と第2端子123との配置に応じてあらかじめ定めておくとよい。
図11は、第1端子113と第2端子123との配置に応じて定められた裸電線EWの中間経路の例を模式的に示すモデル図であり、(a)は遮断器の端子部TCBの断面視が直角形状であって断路器の端子部TLSが遮断器の端子部TCBよりも高い位置にあるケース、(b)は遮断器の端子部TCBの断面視が直角形状であって断路器の端子部TLSと遮断器の端子部TCBが略同じ高さにあるケース、(c)は遮断器の端子部TCBの断面視が平坦形状であって断路器の端子部TLSが遮断器の端子部TCBよりも高い位置にあるケース、(d)は遮断器の端子部TCBの断面視が屈折形状(45℃で屈折)であって断路器の端子部TLSが遮断器の端子部TCBよりも高い位置にあるケースにおける裸電線EWの中間経路を、それぞれ示している。このようにあらかじめ定められた裸電線EWの中間経路と、第1端子113と第2端子123の配置に基づいて、裸電線EWの長さと三次元の形状を調整するとよい。
【0054】
裸電線EWの長さと三次元の形状を調整すると、裸電線EWの両端に例えば端子(圧縮端子や締め付け端子など)を取り付ける(
図10のStep204)。なお、ここまでの一連の処理は、工場や作業ヤードなど第1機器や第2機器の設置場所とは異なるスペースで行うことができる。
【0055】
裸電線EWの両端に端子を取り付けると、第1機器や第2機器の設置された高所に裸電線EWを吊上げる(
図10のStep205)。もちろんこのときの裸電線EWは、長さと三次元の形状が調整され、両端に端子が取り付けられたものである。そして、この裸電線EWを用いて、第1機器の端子部と第2機器の端子部を接続する(
図10のStep206)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明の電線調整装置、及び電線接続方法は、配電用変電所などの変電所のほか、機器間を裸電線で接続する種々のケースで利用することができる。本願発明によれば、裸電線による機器間の接続を効率的かつ安全に実施することができ、ひいては変電所という極めて重要な社会インフラストラクチャーの安定稼働に寄与することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0057】
100 本願発明の電線調整装置
110 (電線調整装置の)第1端子構造体
111 (第1端子構造体の)第1ベース材
112 (第1端子構造体の)第1支柱
112G (第1支柱の)支柱小孔列
112H (第1支柱の)第1支柱小孔
113 (第1端子構造体の)第1端子
114 (第1端子構造体の)第1梁材
120 (電線調整装置の)第2端子構造体
121 (第2端子構造体の)第2ベース材
121H (第2ベース材の)ベース小孔
122 (第2端子構造体の)第2支柱
123 (第2端子構造体の)第2端子
124 (第2端子構造体の)貫入把持具
130 (電線調整装置の)連結体
131 (連結体の)連結軸部材
131L (連結軸部材の)左連結軸部材
131R (連結軸部材の)右連結軸部材
131H (連結軸部材の)連結軸部材小孔
132 (連結体の)支持台
141 (電線調整装置の)第1ベース調整手段
142 (電線調整装置の)第2ベース調整手段
CB 遮断器
EW 裸電線
LS 断路器
TCB (遮断器の)端子部
TLS (断路器の)端子部