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特開2023-156862樽容器の異常検査装置、及び、樽容器の異常検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156862
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】樽容器の異常検査装置、及び、樽容器の異常検査方法
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/00 20060101AFI20231018BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20231018BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B67C3/00 K
G01M99/00 Z
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066489
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 光
(72)【発明者】
【氏名】古市 泰典
(72)【発明者】
【氏名】古内 一平
【テーマコード(参考)】
2F065
2G024
3E079
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA52
2F065AA65
2F065BB06
2F065DD03
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH05
2F065JJ03
2F065MM03
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065RR08
2F065UU06
2G024AD38
2G024BA27
2G024CA04
2G024CA27
2G024FA02
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
3E079AB04
3E079GG02
3E079GG10
(57)【要約】
【課題】樽容器の異常を精度よく検出することができる樽容器の異常検査装置、及び、樽容器の異常検査方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る樽容器の異常検査装置Dは、液体が充填される樽本体部11と、前記樽本体部11の天面11Tに設けられた口部12を封止するキャップ13と、を備える樽容器の異常検査装置であって、前記キャップ13の天面13Tにおける複数箇所の高さ情報と、前記樽本体部11の天面11Tにおける1箇所以上の高さ情報と、を前記樽容器10の上方から検出する検出手段1と、前記検出手段1が検出した高さ情報に基づき、樽容器10の異常の有無を判定する判定手段2と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填される樽本体部と、前記樽本体部の天面に設けられた口部を封止するキャップと、を備える樽容器の異常検査装置であって、
前記キャップの天面における複数箇所の高さ情報と、前記樽本体部の天面における1箇所以上の高さ情報と、を前記樽容器の上方から検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した高さ情報に基づき、樽容器の異常の有無を判定する判定手段と、
を備える樽容器の異常検査装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記キャップの天面における3箇所以上の高さ情報と、前記樽本体部の天面における2箇所以上の高さ情報と、を検出する請求項1に記載の樽容器の異常検査装置。
【請求項3】
所定の搬送経路に沿って樽容器を搬送する搬送手段を備え、
前記検出手段は、前記搬送手段によって搬送されている樽容器を検出対象とし、
前記検出手段の上流側において、前記搬送手段によって搬送されている樽容器の位置を調整する位置調整手段をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の樽容器の異常検査装置。
【請求項4】
液体が充填される樽本体部と、前記樽本体部の天面に設けられた口部を封止するキャップと、を備える樽容器の異常検査方法であって、
前記キャップの天面における複数箇所の高さ情報と、前記樽本体部の天面における1箇所以上の高さ情報と、を前記樽容器の上方から検出手段によって検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した高さ情報に基づき、樽容器の異常の有無を判定する判定工程と、
を含む樽容器の異常検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樽容器の異常検査装置、及び、樽容器の異常検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料等の液体が充填された樽容器の異常を検査すべく、様々な検査装置や検査方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、空樽の口金に取り付けたフィッティングを締め付ける増締具と、口金から空樽内をコンプレッサにより加圧する加圧具と、加圧具により空樽内を加圧した状態で口金に装着して口金のガス漏れを検知する漏れ検知具と、上下動する可動フレームとを備え、可動フレームに増締具と加圧具と漏れ検知具とが水平方向に間隔を開けて設けてあり、並べて配置した3つの空樽の上方から可動フレームが下がり、3つの空樽の口金に、増締具と加圧具と漏れ検知具とを同時に装着して、フィッティングの増締と加圧と漏れ検査を行うことを特徴とする空樽検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-64422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る技術は、樽容器について、加圧検査や漏れ検査を一貫して機械的に行うことができる構成となっている。
一方、本発明者らは、充填ラインにおける樽容器の状態について詳細に検討を行った結果、検出すべき様々な異常の発生を確認した。
【0006】
具体的には、充填ラインの最終工程において、液体が充填された樽容器の口部をキャップで封止するが、このキャップが斜めに取り付けられてしまうといった異常(斜めキャップ)の発生を本発明者らは確認した。また、樽容器の口部にキャップが2重に取り付けられるといった異常(2重キャップ)の発生も確認した。
さらに、一般的に、樽容器はリユースされるが、使用状況や保管状況によって、内部の液体が凍結することにより樽本体部が膨張するといった異常(樽本体部の形状変化)を引き起こしてしまうこともある。
【0007】
樽容器に関する前記した様々な異常は頻繁に発生するものではないが、本発明者らは、このような異常を精度よく検査することによって、可能な限り、正常な状態の樽容器を介してビールなどの各種飲料(液体)を消費者に届けたいと考えた。
【0008】
そこで、本発明は、樽容器の異常を精度よく検査することができる樽容器の異常検査装置、及び、樽容器の異常検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
[1]液体が充填される樽本体部と、前記樽本体部の天面に設けられた口部を封止するキャップと、を備える樽容器の異常検査装置であって、前記キャップの天面における複数箇所の高さ情報と、前記樽本体部の天面における1箇所以上の高さ情報と、を前記樽容器の上方から検出する検出手段と、前記検出手段が検出した高さ情報に基づき、樽容器の異常の有無を判定する判定手段と、を備える樽容器の異常検査装置。
[2]前記検出手段は、前記キャップの天面における3箇所以上の高さ情報と、前記樽本体部の天面における2箇所以上の高さ情報と、を検出する前記1に記載の樽容器の異常検査装置。
[3]所定の搬送経路に沿って樽容器を搬送する搬送手段を備え、前記検出手段は、前記搬送手段によって搬送されている樽容器を検出対象とし、前記検出手段の上流側において、前記搬送手段によって搬送されている樽容器の位置を調整する位置調整手段をさらに備える前記1又は前記2に記載の樽容器の異常検査装置。
[4]液体が充填される樽本体部と、前記樽本体部の天面に設けられた口部を封止するキャップと、を備える樽容器の異常検査方法であって、前記キャップの天面における複数箇所の高さ情報と、前記樽本体部の天面における1箇所以上の高さ情報と、を前記樽容器の上方から検出手段によって検出する検出工程と、前記検出工程で検出した高さ情報に基づき、樽容器の異常の有無を判定する判定工程と、を含む樽容器の異常検査方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る樽容器の異常検査装置によれば、樽容器の様々な異常(斜めキャップ、2重キャップ、樽本体部の形状変化など)を精度よく検出することができる。その結果、本発明に係る樽容器の異常検査装置によれば、異常の状態を呈する樽容器の市場への流通を防止することができる。
【0011】
本発明に係る樽容器の異常検査方法によれば、樽容器の様々な異常(斜めキャップ、2重キャップ、樽本体部の形状変化など)を精度よく検出することができる。その結果、本発明に係る樽容器の異常検査方法によれば、異常の状態を呈する樽容器の市場への流通を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る樽容器の異常検査装置の模式図である。
図2A】樽容器の天面の模式図であって、高さ情報を検出するスポットを説明する図である。
図2B】樽容器の天面の模式図であって、高さ情報を検出するスポットの変形例を説明する図である。
図2C】樽容器の天面の模式図であって、高さ情報を検出するスポットの変形例を説明する図である。
図3A】樽容器の断面の模式図であって、異常のない状態を説明する図である。
図3B】樽容器の断面の模式図であって、斜めキャップの異常がある状態を説明する図である。
図3C】樽容器の断面の模式図であって、2重キャップの異常がある状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る樽容器の異常検査装置、及び、樽容器の異常検査方法を実施するための実施形態について、図を参照して説明する。
最初に、図1を参照(適宜、図3を参照)して、本実施形態に係る樽容器の異常検査装置、及び、樽容器の異常検査方法の検査の対象となる樽容器について説明する。
【0014】
[樽容器]
樽容器10とは、ビールなどの飲料(液体)を内部に収容する樽状の容器である。そして、樽容器10は、液体が充填される円筒状の樽本体部11と、樽本体部11の天面11Tの中央に設けられた口部12(口金とも呼ばれる)を封止するキャップ13と、を備える。また、図3Aに示すように、樽容器10の外側の壁面が、キャップの天面13Tよりも上方向に高く延びている。
そして、樽本体部の天面11Tは、図3A~3Cに示すように、中央が上側に突出するような曲面(口部12の基端部から外側に向かうに従って下側に傾斜するような曲面)を呈する。
なお、キャップ13は、商品名などが印字された薄いフィルム(図示せず)で覆われていてもよい。
【0015】
樽容器10の容量は特に限定されず、例えば、5L、10L、20L、30Lなどが挙げられる。また、樽容器10の材質も特に限定されないが、耐食性の強いステンレスなどが挙げられる。
なお、樽容器10に充填される液体は、例えば、ビール、発泡酒、スパークリングワイン、清涼飲料水などであり、ビールを充填する場合は、樽容器10はビール樽となる。
【0016】
(想定される樽容器の異常:斜めキャップ)
想定される樽容器10の異常の一つである「斜めキャップ」とは、充填ラインの最終工程において、キャップシール機などを用いて、液体が充填された樽容器10の口部12をキャップ13で封止する際に、キャップ13が斜めに取り付けられてしまうことで発生する異常である。
そして、「斜めキャップ」とは、図3Bに示すように、樽容器10の断面視において、キャップの天面13Tが水平面に対して傾斜している。
【0017】
(想定される樽容器の異常:2重キャップ)
従来、樽容器10に関する何らかの異常が充填ラインで検出されると、異常の内容が確認された後にキャップ13を外してキャップシール機の上流側に樽容器10が再投入されるが、この際、キャップ13を外し忘れて再投入されてしまう場合がある。想定される樽容器10の異常の一つである「2重キャップ」とは、このような場合や、キャップシール機の動作不良や、充填ラインの制御不良などによって、樽容器10の口部12に対して2重でキャップが装着されてしまうことで発生する異常である。
そして、「2重キャップ」とは、図3Cに示すように、樽容器10の断面視において、キャップの天面13Tが、通常の状態のもの(図3A)と比較し、キャップ1つ分だけ高くなっている。
【0018】
(想定される樽容器の異常:樽本体部の形状変化)
一般的に、樽容器10はリユースされるが、使用状況や保管状況によって、樽容器10の樽本体部11が形状変化を起こす場合がある。具体的には、液体が内部に残った状態の樽容器10を低温環境下に放置しておくと、内部の液体が膨張し、樽本体部11が膨張して形状が変化してしまうことがある。また、使用時や保管時に外部からの衝撃によって樽本体部11が変形してしまうこともある。想定される樽容器10の異常の一つである「樽本体部の形状変化」とは、このような形状の異常である。
なお、「樽本体部の形状変化」は、様々な形状変化が考えられるが、例えば、樽本体部11が膨張して形状が変化する場合は、通常の状態のもの(図3A)と比較し、キャップの天面13Tや樽本体部の天面11Tが全体的に上方向に高くなる傾向がある。
【0019】
次に、本実施形態に係る樽容器の異常検査装置について、図1を参照(適宜、図2、3を参照)して説明する。
[樽容器の異常検査装置]
本実施形態に係る樽容器の異常検査装置D(適宜「異常検査装置D」という)は、樽容器10の様々な異常(斜めキャップ、2重キャップ、樽本体部の形状変化など)の有無を検査する装置である。
そして、異常検査装置Dは、検出手段1と、判定手段2と、を備え、さらに、搬送手段3、位置調整手段(図示せず)、判定結果出力手段(図示せず)等を備えてもよい。
【0020】
(検出手段)
検出手段1は、樽容器10の各部分の高さ情報を検出する手段である。具体的には、検出手段1は、搬送されている樽容器10に対して、搬送方向とは垂直となるライン状のレーザを照射し反射する光を受光して高さ情報を非接触で計測する機器である。そして、検出手段1は、図2Aに示すように、ライン状のレーザ照射部分Lでのキャップの天面13TにおけるスポットS1、S2、S3の3点の高さ情報と、樽本体部の天面11TにおけるスポットS4、S5の2点の高さ情報と、を取得する。
なお、検出手段1は、高さ情報を適切に検出できる機器であれば、詳細な機器の構成については特に限定されない。
【0021】
検出手段1は、樽容器10が搬送される搬送手段3の上方に設置されるとともに、図2Aに示すとおり、ライン状のレーザ照射部分Lが樽容器10に照射できるように、樽容器10の上方に設置される。
なお、樽容器10(特に、ビール樽)は、樽本体部11の外側の壁面が上方向に突出する構成であることから、検出手段1は、樽容器10の横方向から高さ情報を検出する機器ではなく、上方向(上方)から高さ情報を検出する機器である必要がある。
【0022】
検出手段1による高さ情報を検出するタイミングは、樽容器10の中心が検出手段1の真下を通過するタイミング(図2Aに示すような、ライン状のレーザ照射部分Lが樽容器10の中心に位置するタイミング)であって、樽容器10の搬送速度や樽容器10同士の設置間隔(前後間隔)等を考慮し、制御手段(図示せず)によって検出のタイミングが制御されていればよい。
【0023】
(判定手段)
判定手段2は、検出手段1の結果(高さ情報)に基づき、樽容器10の様々な異常(斜めキャップ、2重キャップ、樽本体部の形状変化など)の有無を判定する手段である。
具体的には、判定手段2は、検出手段1の高さ情報を読み出す。そして、判定手段2は、当該情報に基づいて、又は、当該情報と記憶手段(図示せず)から読み出した予め設定された基準とに基づいて、樽容器10の異常の有無を判定する。
なお、判定手段2による判定方法については後に詳述する。
【0024】
(搬送手段)
搬送手段3は、所定の搬送経路に沿って樽容器10を搬送する手段である。
具体的には、搬送手段3は、図1に示すように、所定の速度で対象を移送するコンベアであり、搬送の速度等は、制御手段(図示せず)によって制御されていればよい。
なお、搬送手段3の構成は、ベルトコンベア、ローラーコンベア、チェーンコンベアなどが挙げられるが、搬送経路に沿って樽容器10を搬送することができれば、特に限定されない。
【0025】
(位置調整手段)
位置調整手段(図示せず)は、検出手段1の上流側において、搬送手段3によって搬送されている樽容器10の位置を調整する手段である。
そして、位置調整手段は、検出手段1による高さ情報の検出が適切に実施できるように、搬送手段3の幅方向における樽容器10の位置(左右方向の位置)を調整する機構であり、例えば、樽容器10が搬送手段3の幅方向の中央に位置するように左右方向から幅寄せする機構である。
【0026】
(判定結果出力手段)
判定結果出力手段(図示せず)は、判定手段2から入力された判定結果を外部に出力する手段である。この判定結果出力手段は、例えば、樽容器10に異常ありとの判定結果が判定手段2から入力された場合に音や光を発する警報装置、異常のある樽容器10を搬送手段3上から除外するような装置、全ての結果を表示できるモニター等に結果を出力する。
【0027】
なお、判定手段2、制御手段、判定結果出力手段は、CPU(Central Processing Unit)によるプログラムの実行処理や、専用回路等によって実現される。
また、記憶手段は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の一般的な記憶装置で構成することができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る樽容器の異常検査方法について、図1を参照(適宜、図2、3を参照)して説明する。なお、前記した本実施形態に係る樽容器の異常検査装置の動作も併せて説明する。
[樽容器の異常検査方法(樽容器の異常検査装置の動作)]
本実施形態に係る樽容器の異常検査方法(適宜「異常検査方法」という)は、検出工程と、判定工程と、を含む。
以下、本実施形態に係る異常検査方法の各工程について説明する。
【0029】
(検出工程)
検出工程は、検出手段1によって、樽容器10の各スポット(図2AのスポットS1~S5)の高さ情報を検出する工程である。
なお、前記のとおり、高さ情報を検出するタイミングは、樽容器10の搬送速度や樽容器10同士の設置間隔(前後間隔)等を考慮し、制御手段(図示せず)によって検出のタイミングが制御されていればよい。
【0030】
(判定工程)
判定工程は、検出工程の結果に基づき、樽容器10の異常の有無を判定する工程である。
詳細には、判定工程では、まず、検出手段1によって取得された高さ情報(図2AのスポットS1~S5の高さ)が判定手段2によって読み出される。そして、判定手段2が検出手段1から得た高さ情報(及び、記憶手段から読み出した予め設定された基準)に基づいて、異常(斜めキャップ、2重キャップ、樽本体部の形状変化など)の有無を判定する。
【0031】
(判定工程:具体的な判定方法)
判定工程における具体的な判定方法について説明する。
判定工程では、検出手段1から読み出した「スポットS1~S5の測定高さ」と、記憶手段から読み出した「スポットS1~S3の基準高さ」と、記憶手段から読み出した「2つのスポットの基準段差」に基づき、以下の(1)~(6)を算出する。
(1)「スポットS1の測定高さ(mm)」-「スポットS1の基準高さ(mm)」
(2)「スポットS2の測定高さ(mm)」-「スポットS2の基準高さ(mm)」
(3)「スポットS3の測定高さ(mm)」-「スポットS3の基準高さ(mm)」
(4)「スポットS2の測定高さ(mm)」-「スポットS3の測定高さ(mm)」
(5)「スポットS2の測定高さ(mm)」-「スポットS4の測定高さ(mm)」-「スポットS2とS4との基準段差(mm)」
(6)「スポットS3の測定高さ(mm)」-「スポットS4の測定高さ(mm)」-「スポットS3とS4との基準段差(mm)」
なお、「測定高さ」とは、検出手段1が測定した樽容器10の底面からの高さである。また、「基準高さ」とは、樽容器10に異常の無い基準状態における樽容器10の底面からの高さであり、基準設定値として記憶手段に予め設定されている。また、「基準段差」とは、樽容器10に異常の無い基準状態における2つのスポットの高低差(上下方向の距離)であり、基準設定値として記憶手段に予め設定されている。
【0032】
そして、(1)~(6)で算出した数値が、記憶手段に記憶されている予め設定された閾値の範囲内となるか否かを判定し、全て閾値の範囲内となる場合は、「異常なし」と判定し、一つでも閾値の範囲から外れる場合は、「異常あり」と判定する。
具体的には、「(1)の算出値が閾値(-5.5~5.5mm)の範囲内であるか」、「(2)の算出値が閾値(-5.5~5.5mm)の範囲内であるか」、「(3)の算出値が閾値(-5.5~5.5mm)の範囲内であるか」、「(4)の算出値が閾値(-5.0~5.0mm)の範囲内であるか」、「(5)の算出値が閾値(-7.0~7.0mm)の範囲内であるか」、「(6)の算出値が閾値(-7.0~7.0mm)の範囲内であるか」を判定し、全て閾値の範囲内となる場合は「異常なし」と判定し、一つでも閾値の範囲から外れる場合は「異常あり」と判定する。
【0033】
(判定工程:異常のない場合の判定)
図3Aは、異常のない樽容器10の断面であるが、図3Aに示す樽容器10を判定手段2が判定した場合、(1)~(6)の算出値は、閾値の範囲内となるため、判定手段2は「異常なし」と判定する。
【0034】
(判定工程:斜めキャップの場合の判定)
図3Bは、「斜めキャップ」の異常を呈する樽容器10の断面であるが、図3Aに示す異常のない樽容器10よりも、スポットS3は大幅に高くなり、スポットS1は少し高くなり、スポットS2も僅かに高くなる。よって、図3Bに示す樽容器10を判定手段2が判定した場合、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の算出値が大きくなる結果、これらの算出値の幾つか(少なくとも(3)、(4)、(6))が閾値の範囲から外れるため、判定手段2は「異常あり」と判定する。
【0035】
(判定工程:2重キャップの場合の判定)
図3Cは、「2重キャップ」の異常を呈する樽容器10の断面であるが、図3Aに示す異常のない樽容器10よりも、スポットS1、S2、S3が高くなる。よって、図3Cに示す樽容器10を判定手段2が判定した場合、(1)、(2)、(3)、(5)、(6)の算出値が大きくなる結果、これらの算出値が閾値の範囲から外れるため、判定手段2は「異常あり」と判定する。
【0036】
(判定工程:樽本体部の形状変化の場合の判定)
図に示さないが、例えば、樽本体部11が膨張して形状が変化する場合は、図3Aに示す異常のない樽容器10よりも全てのスポットS1~5が高くなる。よって、このような樽容器10を判定手段2が判定した場合、(1)、(2)、(3)の算出値が大きくなる結果、これらの算出値が閾値の範囲から外れるため、判定手段2は「異常あり」と判定する。
【0037】
(判定工程以降の工程)
判定工程において得られた判定結果が樽容器10に「異常あり」との結果の場合、判定結果出力手段から外部の装置に所定の指示が送信され、例えば、異常のある樽容器をライン上から除外する装置が作動したり、異常のある樽容器を検出した旨を音や光を発することで知らせる警報装置が作動したりすることとなる。
なお、判定工程において、いずれの判定結果が得られようと、全ての結果をモニターに表示するという構成としてもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係る異常検査装置、及び、異常検査方法の効果について、図1~3を参照して説明する。
[本実施形態に係る異常検査装置、及び、異常検査方法の効果]
本実施形態に係る異常検査装置D、及び、異常検査方法によれば、キャップの天面13Tにおける複数箇所の高さ情報に基づいて樽容器の異常の有無を判定することから、図3Bに示すような「斜めキャップ」の異常を検出することができる。また、キャップの天面13Tだけでなく、樽本体部の天面11Tにおける1箇所以上の高さ情報にも基づいて樽容器の異常の有無を判定することから、キャップの天面13Tと樽本体部の天面11Tとの段差を明確に確認することができるため、図3Cに示すような「2重キャップ」の異常も検出することができる。さらには、キャップの天面13Tと樽本体部の天面11Tにおける複数箇所の高さ情報に基づいて樽容器の異常の有無を判定することから、「樽本体部の形状変化」の異常も検出することができる。
つまり、本実施形態に係る異常検査装置D、及び、異常検査方法によれば、様々な異常(斜めキャップ、2重キャップ、樽本体部の形状変化など)を精度よく検出することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係る異常検査装置、及び、異常検査方法の変形例について、図1~3を参照して説明する。
[本実施形態に係る異常検査装置、及び、異常検査方法の変形例]
検出手段1によって、図2AのようなスポットS1~5における高さ情報を検出する場合を説明したが、様々なスポットにおける高さ情報を検出する構成としてもよい。
具体的には、キャップの天面13Tにおけるスポットは複数箇所(2つ以上)であれば、「斜めキャップ」の異常を検出することが可能であるため、図2AのスポットS1を省略してもよい。また、樽本体部の天面11Tにおけるスポットは1つ以上あれば、「2重キャップ」の異常を検出することが可能であるため、図2AのスポットS4とスポットS5の一方を省略してもよい。
しかしながら、検出する精度を確保する観点から、キャップの天面13Tにおけるスポットは3つ(又は3つ以上)が好ましく、樽本体部の天面11Tにおけるスポットは2つ(又は2つ以上)が好ましい。
【0040】
図2Bに示すように、搬送方向(前後方向)と垂直となる2本のライン状のレーザ照射部分L11、L12を樽容器10に照射する構成として、前方のレーザ照射部分L11上の4つのスポットS(キャップの天面13Tの2つのスポットと樽本体部の天面11Tの2つのスポット)と、後方のレーザ照射部分L12の4つのスポットS(キャップの天面13Tの2つのスポットと樽本体部の天面11Tの2つのスポット)における高さ情報を検出する構成としてもよい。
また、図2Cに示すように、搬送経路と垂直となる1本のライン状のレーザ照射部分S21上の5スポットS(キャップの天面13Tの3つのスポットと樽本体部の天面11Tの2つのスポット)と、搬送経路と並行となる1本のライン状のレーザ照射部分S22上の5スポットS(キャップの天面13Tの3つのスポットと樽本体部の天面11Tの2つのスポット、中央を除くと4スポット)における高さ情報を検出する構成としてもよい。
図2B、2Cの構成によると、搬送方向(前後方向)と並行となる方向においてキャップの天面13Tの2カ所以上をスポットとして設定することにより、前側のキャップ端部が上方に傾斜したり、後側のキャップ端部が上方に傾斜したりするような「斜めキャップ」を非常に精度よく検出することができる。
【0041】
つまり、搬送方向と垂直となる方向(左右方向)において、斜めになるキャップの異常の発生確率が高い場合は、当該左右方向においてキャップの天面13Tに2カ所以上のスポットを設けるのが好ましく、搬送方向(前後方向)において斜めになるキャップの異常の発生確率が高い場合は、当該前後方向においてキャップの天面13Tに2カ所以上のスポットを設けるのが好ましい。
ただ、後記の実施例に示すが、図2Aに示すスポットの構成であっても、搬送方向(前後方向)において斜めになるキャップの異常の発生も検出することは可能であることを確認している。
なお、検出手段1は、搬送されている樽容器10に対して、搬送方向とは垂直(図2AのLなど)や水平(図2CのL22など)となるライン状のレーザを照射する態様だけでなく、搬送方向とは斜めとなるライン状のレーザを照射する態様でもよい。
【0042】
判定手段2による判定方法として、(1)~(6)の算出値に基づいて判定する方法を説明したが、当然、この方法に限定されず、より簡易な方法であってもよい。
例えば、検出手段1による高さ情報を検出するスポットが、図2AのスポットS2、S3、S4の3点とする場合について説明する。
検出手段1で得られたキャップの天面13Tにおける複数箇所の高さ情報(スポットS2、S3の高さ情報)と樽本体部の天面11Tにおける1箇所以上の高さ情報(スポットS4の高さ情報)に基づき、それぞれ、所定範囲内に該当するか否か(スポットS2の高さが所定範囲内か否か、スポットS3の高さが所定範囲内か否か、スポットS4の高さが所定範囲内か否か)を判定する。また、キャップの天面13Tにおける複数箇所の高さの差が所定範囲内に該当するか否か(スポットS2の高さ-スポットS3の高さが所定範囲内か否か)を判定する。また、キャップの天面13Tにおける複数箇所の高さと樽本体部の天面における1箇所以上の高さとの差がそれぞれ所定範囲内に該当するか否か(スポットS2の高さ-スポットS4の高さが所定範囲内か否か、スポットS3の高さ-スポットS4の高さが所定範囲内か否か)を判定する。そして、全て所定範囲内に該当するとの結果が得られた場合に「異常なし」と判定し、それ以外は「異常あり」と判定するという構成であってもよい。
【0043】
判定手段2による判定方法として、(1)~(6)の算出値に基づいて判定する方法を説明したが、(6)として、(6)「スポットS3の測定高さ(mm)」-「スポットS5の測定高さ(mm)」-「スポットS3とS5との基準段差(mm)」を適用してもよい。
また、判定手段2による判定方法において、「測定高さ」とは、検出手段1が測定した樽容器10の底面からの高さ、「基準高さ」とは、樽容器10に異常の無い基準状態における樽容器10の底面からの高さ、として説明したが、「測定高さ」は、検出手段1から測定箇所までの高さ(距離)とし、「基準高さ」は、樽容器10に異常の無い基準状態における検出手段1から測定箇所までの高さ(距離)としてもよい。
【0044】
記憶手段に記憶されている閾値については、適宜設定すればよく、例えば、形状変化が発生し難い樽容器を検査対象とする場合は、閾値の範囲(所定範囲)を狭く設定し、形状変化が発生し易い樽容器を検査対象とする場合は、閾値の範囲(所定範囲)を広く設定すればよい。
なお、記憶手段に記憶されている閾値を適宜設定することによって、各種異常を生じた樽容器10を測定した場合に、得られる結果が前記した結果とは異なる場合がある。例えば、樽本体部11が膨張して形状が変化している場合、(1)、(2)、(3)の算出値が閾値の範囲から外れるという結果について説明したが、設定する閾値によっては、(1)、(2)、(3)、(5)、(6)の算出値が閾値の範囲から外れる場合もある。よって、想定する各種異常を適切に判断できるように(異常を生じた樽容器10を測定した場合に、閾値の範囲から、少なくとも1つ以上の算出値が外れるように)、適宜、閾値を設定すればよい。
【0045】
判定手段では、「異常あり」、「異常なし」の判定を行う構成について説明したが、例えば、(3)、(4)、(6)の算出値や(2)、(5)、(6)の算出値が閾値の範囲を外れる場合を「斜めキャップの異常あり」と判定し、(1)、(2)、(3)、(5)、(6)の算出値が閾値の範囲を外れる場合を「2重キャップの異常あり」と判定し、その他の異常の場合を「樽本体部の形状変化の異常のあり」と判定するように、異常の種類も判定する構成としてもよい。
【0046】
本実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【実施例0047】
次に、本発明について具体的な装置を用いた結果を示して、説明する。
【0048】
(装置の構成)
実施例で使用した装置は、図1に示す構成であって、検出手段1としては、高さ情報を取得できる一般的な反射型のレーザ変位センサを使用した。
なお、高さ情報の検出箇所は、図2Aに示すとおり、スポットS1~5であった。
【0049】
(樽容器の準備)
市場に流通している容量が10Lの樽容器を準備した。
そして、キャップの後端部(方向については、図1、2参照)が前端部よりも10mm高くなるように傾斜する「斜めキャップ1(前後方向に傾斜)」の異常を呈する状態のものと、キャップの左端部が右端部よりも10mm高くなるように傾斜する「斜めキャップ2(左右方向に傾斜)」の異常を呈する状態のものを準備した。
また、キャップを2重に装着させた「2重キャップ」の異常を呈する状態のものを準備した。
また、内部の液体が膨張し、樽本体部が膨張して形状が変化した「樽本体部の形状変化(膨張)」の異常を呈する状態のものを準備した。
【0050】
(異常検査試験)
図1に示す構成である前記した異常検査装置を用いて、各種異常の有無の検査を実施し、検査の結果を表1に示した。
なお、表1中の(1)~(6)は、本明細書(変形例ではない)において説明したとおりである。
【0051】
【表1】
【0052】
(結果の検討)
「斜めキャップ1(前後方向に傾斜)」は、(5)、(6)の算出値が閾値の範囲を外れたため、「異常あり」と判定された。
また、「斜めキャップ2(左右方向に傾斜)」は、(1)、(2)、(4)、(5)の算出値が閾値の範囲を外れたため、「異常あり」と判定された。
また、「2重キャップ」は、(1)、(2)、(3)、(5)、(6)の算出値が閾値の範囲を外れたため、「異常あり」と判定された。
また、「樽本体部の形状変化(膨張)」は、(1)、(3)の算出値が閾値の範囲を外れたため、「異常あり」と判定された。
以上のとおり、本発明に係る異常検査装置によれば、「斜めキャップ」の異常、「2重キャップ」の異常、「樽本体部の形状変化」の異常を適切に判定できることが確認できた。
なお、前記した異常検査試験の結果は、10Lの樽容器を対象とした結果であるが、20Lの樽容器を対象とした場合も同様の結果が得られた。
【0053】
(誤排斥率の確認)
本発明に係る異常検査装置について、誤排斥率を確認した。
容量が10Lの樽容器1000本、容量が20Lの樽容器1000本に対して、前記の異常検査試験で用いたものと同じ装置を使用し、異常検査を行った。
その結果、誤排斥数は、10Lの樽容器でも20Lの樽容器でも0本となり、誤排斥率は0.00%となった。
【符号の説明】
【0054】
1 検出手段
2 判定手段
3 搬送手段
10 樽容器
11 樽本体部
11T 樽本体部の天面
12 口部(口金)
13 キャップ
13T キャップの天面
S スポット
L レーザ照射部分
D 樽容器の異常検査装置(異常検査装置)
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C