(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156870
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】光触媒塗布液、光触媒コーティング膜及び光触媒被覆部材
(51)【国際特許分類】
B01J 35/02 20060101AFI20231018BHJP
B32B 5/16 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B32B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066499
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】芝 直樹
(72)【発明者】
【氏名】堤之 朋也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 喜紀
【テーマコード(参考)】
4F100
4G169
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AK01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA12A
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4G169HC01
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4G169HD02
4G169HD18
4G169HD22
4G169HE01
4G169HE07
4G169HE12
(57)【要約】
【課題】本発明は、光を照射することにより発光する光触媒コーティング膜を形成することができる光触媒塗布液を提供する。
【解決手段】本発明の光触媒塗布液は、分散媒と、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含むことを特徴とする。また、本発明は、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含む光触媒コーティング膜も提供する。また、本発明は、基材と、光触媒コーティング膜とを備える光触媒被覆部材も提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒と、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含むことを特徴とする光触媒塗布液。
【請求項2】
前記無機蛍光顔料は、紫外線励起型無機蛍光顔料である請求項1に記載の光触媒塗布液。
【請求項3】
前記可視光応答型光触媒粒子は、酸化タングステン粒子を含む請求項1に記載の光触媒塗布液。
【請求項4】
前記分散媒は、水、エタノール又はエタノール水溶液である請求項1に記載の光触媒塗布液。
【請求項5】
前記可視光応答型光触媒粒子の体積平均粒子径D50は、5nm以上500nm以下である請求項1に記載の光触媒塗布液。
【請求項6】
前記無機蛍光顔料の体積平均粒子径D50は、前記可視光応答型光触媒粒子の体積平均粒子径D50の3倍より大きい請求項1に記載の光触媒塗布液。
【請求項7】
分散剤、抗菌剤およびバインダーのうち少なくとも1つを含む請求項1~6のいずれか1つに記載の光触媒塗布液。
【請求項8】
可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含む光触媒コーティング膜。
【請求項9】
基材と、光触媒コーティング膜とを備え、
前記光触媒コーティング膜は、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含む光触媒被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒塗布液、光触媒コーティング膜及び光触媒被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の社会情勢から、抗菌剤・消臭剤をオフィスや部屋の壁、家具、窓などに塗布し抗菌機能又は消臭機能を有するコーティング膜を形成するニーズが高まっている。その中でも、光があると半永久的に効果を発し続けることができる光触媒を含む抗菌剤・消臭剤を塗布することは、大きなニーズがある。抗菌剤や消臭剤を塗布する際は、目的とする対象物に均一にムラなく塗布することが重要である。
一方で、塗布後は塗布したことが分からないようにする(コーティング膜を透明にする)必要があることからこれらの塗布液は無色・透明あるいは薄い乳白色であることが多い。従って、塗布後のコーティング膜の状態を把握することが非常に難しく、勘と経験に頼る部分が多い。
有機染料を含む光触媒塗布液を塗布することにより塗布済み領域と未塗布領域とを判別する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この有機染料は光触媒活性により分解するため、コーティング膜は次第に消色する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機染料を含む光触媒塗布液を塗布する方法では、窓からの光や室内灯の光の影となる箇所では有機染料が分解されずコーティング膜が有色であり続ける場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光を照射することにより発光する光触媒コーティング膜を形成することができる光触媒塗布液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、分散媒と、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含むことを特徴とする光触媒塗布液を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光触媒塗布液を塗布することにより形成したコーティング膜に紫外光を照射すると、無機蛍光顔料が発光する。このため、塗布済み領域と未塗布領域とを判別することができる。
コーティング膜のうち厚い部分では蛍光顔料が多いため発光が強くなる。また、コーティング膜のうち薄い部分では蛍光顔料が少ないため発光が弱くなる。このため、コーティング膜の発光に強弱のムラがないことを確認することにより、光触媒塗布液を薄く均一にムラなく塗布出来ていることについて容易に判別することができる。
また、紫外光を当てない状態では、蛍光顔料は発光しないため、コーティング膜はほぼ透明になる。このため、コーティング膜は一時的でも着色してしまうことがなく、当然光があたらない場所へ光触媒塗布液を塗布しても問題はない。このように、本発明の光触媒塗布液は、あらゆる箇所へ均一に塗布することが可能な塗布液である。
形成して長時間が経過した後のコーティング膜に光を照射した場合であってもコーティング膜は発光する。この発光により、コーティング膜の経時変化を確認することができ、塗り直しの要否を判定することが可能である。
また、無機蛍光顔料を用いることにより、蛍光顔料により光触媒活性が低下し脱臭能などが低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の光触媒塗布液を用いて光触媒コーティング膜を形成する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光触媒塗布液は、分散媒と、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含むことを特徴とする。
【0009】
前記無機蛍光顔料は、紫外線励起型無機蛍光顔料であることが好ましい。このことにより、可視光を受光して光触媒コーティング膜が発光することを抑制することができ、無機蛍光顔料の発光が基材の色に影響を与えることを抑制することができる。
前記可視光応答型光触媒粒子は、酸化タングステン粒子を含むことが好ましい。
前記分散媒は、水、エタノール又はエタノール水溶液であることが好ましい。
前記可視光応答型光触媒粒子の体積平均粒子径D50は、5nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0010】
前記無機蛍光顔料の体積平均粒子径D50は、可視光応答型光触媒粒子の体積平均粒子径D50の3倍より大きいことが好ましい。このような構成にすると、光触媒コーティング膜において光触媒粒子が無機蛍光顔料の粒子表面を覆うため、光触媒コーティング膜の表面に光触媒粒子が存在する。このため、光触媒粒子に到達する光の量を増やすことができ、光触媒コーティング膜の光触媒効果を向上させることができる。
分散剤、抗菌剤およびバインダーのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0011】
本発明は、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含む光触媒コーティング膜も提供する。
本発明は、基材と、光触媒コーティング膜とを備える光触媒被覆部材も提供し、前記光触媒コーティング膜は、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含む。
【0012】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0013】
図1は、本実施形態の光触媒塗布液を用いて光触媒コーティング膜を形成する方法の説明図である。
本実施形態の光触媒塗布液2は、分散媒と、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含むことを特徴とする。また、光触媒塗布液2は、分散剤、抗菌剤およびバインダーのうち少なくとも1つを含んでもよい。
本実施形態の光触媒コーティング膜6は、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含む。
本実施形態の光触媒被覆部材10は、基材4と、光触媒コーティング膜6とを備え、光触媒コーティング膜6は、可視光応答型光触媒粒子と、無機蛍光顔料とを含む。
【0014】
光触媒塗布液2は、分散媒に可視光応答型光触媒粒子及び無機蛍光顔料が分散した分散液である。また、光触媒塗布液2は、基材4の表面に塗布法により塗布される分散液である。
光触媒塗布液2は、例えば、次のようにして調製することができる。
(1)光触媒微粒子を水に微分散をさせる(必要であれば、合わせて分散剤を加える)。
(2)光触媒分散液を所望の濃度になるように水またはエタノールまたはその両方で希釈し、無機蛍光顔料(必要であれば、合わせて分散剤(界面活性剤)・抗菌剤・無機バインダーを加える)を混合する。
(1)の光触媒微粒子を水に分散させる方法としては、一般的には湿式の分散機を用いて実施することができ、その分散機としては、例えば、超音波分散機、コロイドミル及びビーズミルなどが挙げられる。(2)の混合には、一般的な液体混合機を用いることができ、撹拌羽根等が付属しているものであれば、塗布液の組成をより均一にすることができる。
【0015】
光触媒塗布液2の塗布法は、特に限定されないが、例えば、スプレーコーティング、刷毛塗り、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、スピンコート法、ロールコート等である。この塗布法により形成された塗布膜5を乾燥させることにより光触媒コーティング膜6を形成することができる。また、光触媒コーリング膜6を有する光触媒被覆部材10も形成することができる。
光触媒塗布液2の塗布には、電動のスプレーガンを使用することが好ましく、HVLPガンなどを使用することがさらに好ましい。このことにより、光触媒塗布液2を基材4に細かく、薄く、均一にムラなく塗布することができる。
【0016】
基材4は、例えば、例えば、壁紙、カーテン、建物の内壁、建物の外壁、部屋の天井、建物の床面、家具、窓、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、フィルター、布帛、紙、皮革などである。
【0017】
分散媒は、水、エタノール又はエタノール水溶液であってもよい。また、分散媒は、水性分散媒であってもよい。水性分散媒は、主成分として水を含む。また、水性分散媒は、水とアルコールとの混合液であってもよい。
可視光応答型光触媒粒子は、可視光を受光することにより光触媒活性を示す粒子であり、酸化タングステン粒子(WO3粒子)を含むことができる。酸化タングステン粒子は、光触媒活性を有すれば、化学量論的組成からずれた組成を有する酸化タングステン粒子であってもよい。また、酸化タングステン粒子は、光触媒活性を失わない範囲で、不純物原子や添加原子を含んでもよい。また、可視光応答型光触媒粒子はその表面に助触媒を有してもよい。助触媒は、例えば、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、Irのような白金族金属を含む。
【0018】
前記可視光応答型光触媒粒子(一次粒子)の体積平均粒子径D50は、5nm以上500nm以下であることが好ましく、さらに5nm以上200nm以下であることが好ましい。粒子径測定は、BET比表面積計やレーザ回折式粒度分布計や動的光散乱式粒度分布計等によって測定することができる。
光触媒塗布液2は、光触媒塗布液2に対して0.1wt%以上5.0wt%以下の光触媒粒子を含むことができる。
【0019】
無機蛍光顔料は、蛍光又はりん光を発する無機化合物粒子である。
無機蛍光顔料は、紫外線励起型無機蛍光顔料であることが好ましい。紫外線励起型無機蛍光顔料は、紫外線を受光して蛍光又はりん光を発する蛍光顔料である。このような無機蛍光顔料を用いることにより、紫外線を照射したときに無機蛍光顔料を含む塗布膜5又は光触媒コーティング膜6が発光し、可視光の受光により光触媒コーティング膜6が発光することを抑制することができる。
また、紫外線励起型無機蛍光顔料は主に紫外線を吸収するため、無機蛍光顔料が可視光を吸収することを抑制することができる。このため、光触媒粒子が吸収する可視光の量が少なくなることを抑制することができ、光触媒コーティング膜6の光触媒活性が低下することを抑制することができる。
【0020】
紫外線励起型無機蛍光顔料の発光色は、可視光とすることができ、紫色であってもよく、青色であってもよく、緑色であってもよく、黄色であってもよく、赤色であってもよい。このような無機蛍光顔料を用いることにより、紫外線を照射したときに無機蛍光顔料を含む塗布膜5又は光触媒コーティング膜6が可視光を発しこの光を人の目で見ることができ、作業者などが塗布膜5又は光触媒コーティング膜6が形成されている箇所や塗布膜5の厚さ又は光触媒コーティング膜6の厚さなどを知ることができる。また、紫外線を照射していないときには光触媒コーティング膜6は発光しないため、光触媒コーティング膜6が基材4の色に影響を与えることを抑制することができる。
【0021】
例えば、基材4上に光触媒コーティング膜6を形成する作業者は、光触媒塗布液2を基材4に塗布した後、塗布膜5にブラックライトを照射することができる。この照射により、塗布膜5に含まれる紫外線励起型無機蛍光顔料が発光し、作業者はこの発光を見ることができる。基材4の表面において発光しない箇所がある場合、その箇所は塗り残しである可能性がある。また、基材4の表面において発光が他の箇所よりも弱い箇所がある場合、その箇所は塗布量が足りない可能性がある。また、基材4の表面において発光が他の箇所よりも強い箇所がある場合、その箇所は塗布量が多すぎる可能性がある。このように作業者は光触媒塗布液2が基材4の表面に薄く均一にムラなく塗布出来ているか否かについて容易に判別することができる。
【0022】
光触媒コーティング膜6は、経年劣化により品質が低下する場合がある。光触媒コーティング膜6の品質が低下すると、光触媒塗布液2を塗り直す必要が生じる。光触媒コーティング膜6の品質が低下しているか否かについて作業者は紫外線照射に伴う光触媒コーティング膜6からの発光を見ることにより判別することができる。例えば、ブラックライトを照射した基材4の表面において発光しない箇所がある場合、その箇所は、光触媒コーティング膜6の脱離や剥がれが生じている可能性がある。このような箇所が多数存在する場合には、光触媒コーティング膜6の品質が低下していると判断することができ、光触媒塗布液2の塗り直し時期の判断材料とすることができる。
【0023】
光触媒コーティング膜6によりコーティングされた基材4の表面にブラックライトを当てない状態では、光触媒コーティング膜6は発光しない。このため、この基材4の表面の外観は、光触媒コーティング膜6を形成する前と同じような状態となる。このため、一時的でも光触媒コーティング膜6が着色してしまうことがなく、当然光があたらない場所に光触媒コーティング膜6を形成しても問題は生じない。このように、本実施形態の光触媒塗布液2は、あらゆる箇所へ均一に塗布することが可能な塗布液である。
【0024】
無機蛍光顔料は、白色の粒子、薄い乳白色の粒子又は淡彩色の粒子であることが好ましい。このような無機蛍光顔料を用いることにより、光触媒コーティング膜6が色彩を有することを抑制することができ、光触媒コーティング膜6が基材4の色に影響を与えることを抑制することができる。
【0025】
無機蛍光顔料としては、例えば、酸化亜鉛系蛍光体、GaN系蛍光体(380nm)、InGaN系蛍光体(450nm)、ZnS:Ag(435nm)、CaWO4(430nm)、(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、BaMgAl10O17:Eu、BaMg2Al16O27:Eu、ZnS:AgCl、MgWO4、CaO:Zn、(Zn,Cd)S:Ag、ZnS:Cl、(Sr,Mg)3Si2O7:Eu,Dy,Mn、Sr2P2O7:Eu、SrS:Ce、Y2SiO5:Ce、YVO4:Dy、YVO4:Tm、Sr10(PO4)6Cl2:Eu、セリウムドープリン酸カルシウム(Ca4(PO4)2O:Ce)、YPO4:Nd(190nm)、LaPO4:Pr(225nm)、YPO4:Pr(233nm)、YPO4:B(241nm)、(Ca,Mg)SO4:Pb(245nm)、LuBO3:Pr(257nm)、YBO3:Pr(261nm)、Y2SiO5:Pr(270nm)、SrSiO3:Pb(275nm)、LaMgAl11O19:Gd(311nm)、LaPO4:Ce(320nm)、YPO4:Ce(335,355nm)、LaMgAl11O19:Ce(340nm)などが挙げられる。
【0026】
無機蛍光顔料(一次粒子)の体積平均粒子径D50は、可視光応答型光触媒粒子の体積平均粒子径D50の3倍より大きいことが好ましく、可視光応答型光触媒粒子の体積平均粒子径D50の6倍より大きいことがより好ましく、可視光応答型光触媒粒子の体積平均粒子径D50の10倍より大きいことがさらに好ましい。このような構成にすると、光触媒コーティング膜6において光触媒粒子が無機蛍光顔料の粒子表面を覆うため、光触媒コーティング膜6の表面に光触媒粒子が存在する。このため、光触媒粒子に到達する光の量を増やすことができ、光触媒コーティング膜6の光触媒効果を向上させることができる。
無機蛍光顔料(一次粒子)の体積平均粒子径D50は、例えば、0.5μm以上50μm以下であり、好ましくは0.5μm以上10μm以下である。
光触媒塗布液2は、光触媒塗布液2に対して0.01wt%以上1.0wt%以下の無機蛍光顔料を含むことができる。
【0027】
分散剤は、分散媒中において光触媒粒子、無機蛍光顔料などを分散させる物質である。分散剤は、界面活性剤であってもよい。また、分散剤は、親水性を有することができる。このことにより、分散剤が水性分散媒に溶解することができ、水性分散媒中において光触媒粒子及び無機蛍光顔料を安定的に分散させることができる。また、光触媒塗布液2に分散剤を添加することで、凍結保存した光触媒塗布液2を解凍した後において光触媒塗布液2中に凝集物が発生することを抑制することができる。
また、分散剤は不揮発性液体であってもよい。このことにより、光触媒塗布液2をスプレー噴霧した際に分散剤が蒸発しないため、基材4上の光触媒コーティング膜6に光触媒粒子の凝集体が形成されることを抑制することができ、光触媒コーティング膜6の白化を抑制することができる。さらに、光触媒コーティング膜6において、光触媒粒子と無機蛍光顔料とを均等に分布させることができ、作業者などが無機蛍光顔料からの発光に基づき塗布膜5の厚さ又は光触媒コーティング膜6の厚さを知ることができる。
【0028】
分散剤は、アミノ基含有化合物、ポリアルキレン基含有化合物又は脂肪族ポリエーテル誘導体であることが好ましい。また、分散剤は脂肪族ポリエーテル誘導体であるエチレン、プロピレンオキサイドが好ましく、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール等である。
【0029】
抗菌剤は、抗菌作用を有する物質である。光触媒塗布液2が抗菌剤を含むことにより、光触媒コーティング膜6も抗菌剤を含むことができ、光触媒コーティング膜6が抗菌作用を有することができる。
光触媒コーティング膜6は光触媒活性による抗菌作用を有するが、光触媒活性は無光状態では生じない。光触媒コーティング膜6が抗菌剤を有することにより、無光状態であっても光触媒コーティング膜6が抗菌作用を有することができる。
光触媒塗布液2に含まれる抗菌剤は、無機物質であることが好ましい。
抗菌剤は、例えば、銀化合物、銀イオン放出特性を有する物質(例えば銀イオン担持ゼオライト)、亜鉛化合物、亜鉛イオン放出特性を有する物質、銅化合物、銅イオン放出特性を有する物質などである。
【0030】
バインダーは、光触媒コーティング膜6に含まれる光触媒粒子や無機蛍光顔料などを接着するための物質である。また、バインダーは、基材4と光触媒コーティング膜6とを接着することもできる。
光触媒塗布液2に含まれるバインダーは、例えば、アルキルシリケート、ハロゲン化ケイ素、およびこれらの部分加水分解物等の加水分解性ケイ素化合物を分解して得られる生成物、有機ポリシロキサン化合物とその重縮合物、シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ素化合物、リン酸亜鉛等のリン酸塩、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、重リン酸塩、セメント、石膏、石灰、ほうろう用フリット等である。
【0031】
光触媒塗布液の調製
実施例1~7、比較例1、2の光触媒塗布液を調製した。具体的な調製方法を以下に示す。また、実施例1~7、比較例1、2の光触媒塗布液の組成割合などを表1にまとめて示している。表1では、光触媒粒子の体積平均径D50をD50(1)と示し、無機蛍光顔料の体積平均径D50をD50(2)と示している。また、表1には、D50(1)に対するD50(2)の比(D50(2)/D50(1))も示している。
【0032】
【0033】
〔実施例1〕
体積平均径D50=200nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で水に分散させたスラリー100gと体積平均径D50=3μmのグリーン発光無機蛍光顔料(堺化学工業株式会社製Lumate G(登録商標))1gと水899gとを混合し、光触媒塗布液を1000g調製した。
【0034】
〔実施例2〕
体積平均径D50=450nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で水に分散させたスラリー100gと体積平均径D50=3μmのグリーン発光無機蛍光顔料(堺化学工業株式会社製Lumate G)1gと水899gとを混合し、光触媒塗布液を1000g調製した。
【0035】
〔実施例3〕
体積平均径D50=200nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で水に分散させたスラリー100gと体積平均径D50=3μmのグリーン発光無機蛍光顔料(堺化学工業株式会社製Lumate G)1gと水799gとエタノール100gとを混合し、光触媒塗布液を1000g調製した。
【0036】
〔実施例4〕
体積平均径D50=200nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で水に分散させたスラリー100gと体積平均径D50=5μmのブルー発光無機蛍光顔料(堺化学工業株式会社製Lumate B)1gと分散剤(日油株式会社製エスリームAD-3172M(登録商標))16gと水883gを混合させ、塗布液を1000g作成した。
【0037】
〔実施例5〕
体積平均径D50=200nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で分散させたスラリー100gと体積平均径D50=3μmのグリーン発光無機蛍光顔料(堺化学工業株式会社製Lumate G)1gと抗菌剤(株式会社シナネンゼオミック製HD10N)1gと水898gを混合させ、塗布液を1000g作成した。
【0038】
〔実施例6〕
体積平均径D50=1500nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で水に分散させたスラリー100gと体積平均径D50=3μmのグリーン発光無機蛍光顔料(堺化学工業株式会社製Lumate G)1gと水899gとを混合し、光触媒塗布液を1000g調製した。
【0039】
〔実施例7〕
体積平均径D50=450nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で水に分散させたスラリー100gと体積平均径D50=1μmのグリーン発光無機蛍光顔料(堺化学工業株式会社Lumate G)1gと水899gとを混合し、光触媒塗布液を1000g調製した。
【0040】
〔比較例1〕
体積平均径D50=200nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で水に分散させたスラリー100gと水900gとを混合し、光触媒塗布液を1000g調製した。
【0041】
〔比較例2〕
体積平均径D50=200nmの光触媒微粒子(酸化タングステン微粒子)を20wt%の割合で水に分散させたスラリー100gと有機蛍光顔料(信越化学株式会社製KR-220LP)1gと水899gとを混合し、光触媒塗布液を1000g調製した。
【0042】
光触媒コーティング膜の状態の評価
HVLPスプレーガン(アネスト岩田株式会社製)を用いて光触媒塗布液(実施例1、2、3、4、5、6又は7あるいは比較例1又は2)を平滑な壁紙に噴霧し、塗布膜を十分に乾燥し光触媒コーティング膜を形成した。その後、ブラックライト(アズワン株式会社製、LUV-16)を用いて光触媒コーティング膜にUV光を照射し、蛍光顔料が発する光を目視することにより光触媒コーティング膜の状態の評価を行った。実施例1~7及び比較例1、2の光触媒コーティング膜の評価結果を表2に示す。
表2では、厚さが薄く均一である光触媒コーティング膜の評価を「◎」で示し、厚さに若干のムラはある光触媒コーティング膜の評価を「○」で示し、蛍光を発光しない光触媒コーティング膜の評価を「×」で示した。
【0043】
【0044】
実施例4の光触媒コーティング膜の評価は「◎」であり実施例1~3、5~7、比較例2の光触媒コーティング膜の評価は「〇」であったが、比較例1の光触媒コーティング膜の評価は「×」であった。これは、比較例1の光触媒塗布液が蛍光顔料を含んでいないためと考えられる。
【0045】
光触媒性能の評価
スポイドを使用してセルロース生地(125mm×125mm)に光触媒塗布液(実施例1、2、3、4、5、6又は7あるいは比較例1又は2)2gをまんべんなく滴下した。上記セルロース生地を40℃の送風乾燥機で乾燥させ光触媒コーティング膜を形成した。この光触媒コーティング膜に青色LED光を4500luxで48時間プレ照射することにより試験用サンプルを形成した。次に1Lの透明のガスバッグ内に上記試験用サンプルを投入し、100ppmのアセトアルデヒドガスを投入した。上記ガスバッグ内の試験用サンプルに青色LED光を4500luxで5時間照射した後、ガスバッグ内のアセトアルデヒドガス濃度を検知管を用いて測定した。(ガス残存率)=(5時間照射後のガス濃度)/(初期ガス濃度100ppm)より、ガスの残存率を計算し評価した。実施例1~7及び比較例1、2の試験用サンプルの光触媒性能の評価結果を表2に示す。表2では、ガス残存率が5%未満であった試験用サンプルの評価を「◎」で示し、ガス残存率が5%以上20%未満であった試験用サンプルの評価を「○」で示し、ガス残存率が20%以上50%未満であった試験用サンプルの評価を「△」で示し、ガス残存率が50%以上であった試験用サンプルの評価を「×」で示した。また、表2には総合評価も示している。
【0046】
実施例1、3及び比較例1の光触媒性能の評価は「◎」であり実施例2、4、5の光触媒性能の評価が「〇」であったが、比較例2の光触媒性能の評価は「×」であった。
また、実施例6、7は、D50(2)/D50(1)が2以下であるため光触媒性能の評価が「△」になったと考えられる。また、比較例2は、有機蛍光顔料のため光触媒活性が低下し光触媒性能の評価が悪くなったと考えられる。
【符号の説明】
【0047】
2: 光触媒塗布液 3:ハンドスプレー 4:基材 5:塗布膜 6:光触媒コーティング膜 10:光触媒被覆部材