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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156874
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20231018BHJP
   B28D 1/08 20060101ALI20231018BHJP
   B28D 1/14 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
E04G23/08 J
B28D1/08
B28D1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066504
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】502263905
【氏名又は名称】ダイヤモンド機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(71)【出願人】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 立
(72)【発明者】
【氏名】向井 啓通
(72)【発明者】
【氏名】垣中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上條 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平田 豪
(72)【発明者】
【氏名】神田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】綿川 文治
(72)【発明者】
【氏名】大下 貴史
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬英
【テーマコード(参考)】
2E176
3C069
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176AA17
2E176DD22
2E176DD26
3C069AA01
3C069AA04
3C069BA06
3C069BA09
3C069BB03
3C069BB04
3C069CA10
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】遠隔操作により、切断対象物を効率的に分割しながら解体する解体方法を提供する。
【解決手段】内部コンクリートを、遠隔操作により分割しながら解体する解体方法において、ワイヤソーによる切断によって、内部コンクリートから分割されるブロックの底面と側面とを形成する。そして、内部コンクリートの上方に配置した穿孔装置により、垂直方向に延在する複数の縦孔を形成し、これら複数の縦孔を繋げてブロックの背面を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作により、解体対象物をブロックに分割しながら解体する解体方法であって、
ワイヤソーを用いて前記解体対象物を切断することにより、前記ブロックの底面と側面とを形成し、
前記解体対象物の上方に配置した穿孔装置により、垂直方向に延在する複数の縦孔を形成し、前記複数の縦孔を繋げて前記ブロックの背面を形成することにより、
前記解体対象物から前記ブロックを切り出すことを特徴とする解体方法。
【請求項2】
前記ブロックの底面は、前記側面及び前記背面よりも先に切断されることを特徴とする請求項1に記載の解体方法。
【請求項3】
前記解体対象物は、円筒形状を有しており、
前記ワイヤソーは、前記解体対象物を切断する際に、前記円筒形状の内側に配置された状態で、前記解体対象物に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔操作により、解体対象物をブロックに分割しながら解体する解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頑丈なコンクリート構造物を解体するためにワイヤソーが用いられている(例えば、特許文献1,2参照。)。特許文献1,2に記載のワイヤソー切断装置は、本体部と、本体部に間隔をおいて取り付けられた一対のスタンド部とを有している。本体部は、ワイヤを巻回し各プーリーを内蔵するケース部材を備える。各スタンド部は、集塵装置に接続されている中空のオフセットスタンドと、この先端に取り付けられワイヤを巻回する先端プーリーとを有している。そして、ワイヤソー切断装置のスタンド部を、鉄筋コンクリートブロックに形成した2つの孔に挿入して、ワイヤを高速回転しながら押し付けることにより鉄筋コンクリートブロックを切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-155220号公報
【特許文献2】特開2017-144666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力発電所の内部コンクリートのような放射線を遮蔽するために設置された鉄筋コンクリート壁は、中性子反応の程度により、放射能レベルに応じた分類が行なわれる。具体的には、放射能レベルの比較的高い廃棄物(余裕深度処分対象廃棄物L1)、放射能レベルの比較的低い廃棄物(ピット処分対象廃棄物L2)、放射能レベルの極めて低い廃棄物(トレンチ処分対象廃棄物L3)、放射性物質として取り扱う必要ない物(クリアランス)や放射廃棄物でない破棄物(NR)に分類される。L1/L2/L3放射性廃棄物は、収納容器や処分方法が異なるため、原子力発電所の廃止措置では、内部コンクリートのような放射化された鉄筋コンクリートをL1/L2/L3ごとに分けて区分解体する必要がある。また、このような鉄筋コンクリート壁は、高い放射線環境下にあるため、遠隔操作により切断する必要がある。しかしながら、従来の工法では、遠隔操作により切断を行う場合、区分の境界等、任意の範囲で、円滑に解体することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための解体方法は、遠隔操作により、解体対象物をブロックに分割しながら解体する解体方法であって、ワイヤソーを用いて前記解体対象物を切断することにより、前記ブロックの底面と側面とを形成し、前記解体対象物の上方に配置した穿孔装置により、垂直方向に延在する複数の縦孔を形成し、前記複数の縦孔を繋げて前記ブロックの背面を形成することにより、前記解体対象物から前記ブロックを切り出す。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、遠隔操作により、切断対象物を効率的に分割しながら解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における解体方法の処理手順を説明する流れ図である。
図2】実施形態における解体対象物の構成を説明する断面斜視図である。
図3】実施形態における水平方向の穿孔処理を説明する説明図であり、(a)は要部の平面断面図、(b)は要部の正面断面図である。
図4】実施形態における穿孔を行なう穿孔装置の正面図である。
図5】実施形態において穿孔装置で形成されたコア孔とコアの位置関係を説明する説明図である。
図6】実施形態におけるコアの端部切断のための穿孔処理を説明する説明図であり、(a)は要部の平面断面図、(b)は要部の正面断面図である。
図7】実施形態において穿孔装置で形成されたコア孔とコアの位置関係を説明する説明図であり、図5の状態から更にコア先端部を鉛直に切断した状態を示す。
図8】実施形態におけるコアの回収処理を説明する説明図であり、(a)は要部の平面断面図、(b)は要部の正面断面図である。
図9】実施形態におけるコア回収装置の構成を説明する正面図である。
図10】実施形態におけるコア回収具をコア孔に挿入してコア回収具の載置部にコアを載置した状態のコア回収装置の正面図である。
図11】実施形態における底面の切断処理を説明する説明図であり、(a)は要部の平面断面図、(b)は要部の正面断面図である。
図12】実施形態における側面の切断処理を説明する説明図であり、(a)は要部の平面断面図、(b)は要部の正面断面図である。
図13】実施形態における背面切断のための穿孔処理を説明する説明図であり、(a)は要部の平面断面図、(b)は要部の正面断面図である。
図14】実施形態における垂直方向に延在するコアの回収処理を説明する説明図であり、(a)は要部の平面断面図、(b)は要部の正面断面図である。
図15】実施形態において垂直方向に延在するコアの回収処理に用いられるコア把持装置の構成を説明する説明図であり、(a)は全体図、(b)は要部の拡大断面図である。
図16】実施形態におけるコア把持装置の先端が隙間に挿入された状態を説明する正面断面図である。
図17】実施形態におけるコア把持装置の先端でブロックを把持した状態を説明する正面断面図である。
図18】実施形態におけるブロックの回収処理を説明する説明図であり、(a)は要部の平面断面図、(b)は要部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図18を用いて、解体方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の解体方法は、遠隔操作により、原子炉の内部コンクリート(解体対象物)を分割して解体する。この内部コンクリートは、高耐震性を有するために高密度で太径(例えば直径30mm等)の鉄筋を用いた鉄筋コンクリートで構成されている。
【0009】
図1は、本実施形態の解体方法の流れ図であり、図2は、解体する内部コンクリート10の筒体部の断面構成を示している。
図2に示すように、内部コンクリート10は、中央に空間S1が設けられた全体として円筒形状の部分を有する。内部コンクリート10は、内側から、放射能レベルに応じて第1層11、第2層12、第3層13及び第4層14に区分される。これらは、半径方向に円周状に分布している。第1層11は、放射能レベルの比較的高い廃棄物(余裕深度処分対象廃棄物L1)であり、第2層12は、放射能レベルの比較的低い廃棄物(ピット処分対象廃棄物L2)である。第3層13は、放射能レベルの極めて低い廃棄物(トレンチ処分対象廃棄物L3)であり、第4層14は、放射性物質として取り扱う必要ない物(クリアランス)や放射廃棄物でない破棄物(NR)である。本実施形態では、内部コンクリート10における第1層11~第2層12を含む領域を、遠隔操作により分割しながら解体する。この場合、内部コンクリート10の上方であって、内側の空間S1側から、ブロック15,16に分割しながら解体する。
【0010】
(解体方法)
図1に示すように、本実施形態の解体方法においては、まず、水平方向への穿孔処理を実行する(ステップS11)。
【0011】
具体的には、図3(a)に示すように、内部コンクリート10の内側に開口するコア孔h11,h12,h13を形成する。この場合、図4に示す穿孔装置20を用いて、コア孔h11,h12,h13を形成する。この穿孔装置20の詳細の説明は、後述する。
【0012】
コア孔h11,h12,h13は、後述するワイヤソー切断装置の1対のスタンド部が挿入される水平距離L5で離間している。
図3(b)に示すように、コア孔h12(h11,h13)は、水平方向に延在し、端部が第3層13まで到達している。この場合、コア孔h12(h11,h13)は、内部コンクリート10の上面から鉛直距離V5の位置に設けられる。
【0013】
図5に示すように、この穿孔処理において形成されたコア孔h12(h11,h13)は、コアB12(B11,B13)の周囲に形成された円筒表面形状の空間S3である。この場合、コア孔h12(h11,h13)の内部のコアB12(B11,B13)の先端は、内部コンクリート10と接続されている。
【0014】
次に、コアの端部切断のための穿孔処理を実行する(ステップS12)。
具体的には、図6(a)及び図6(b)に示すように、第3層13において、内部コンクリート10の上面から、下方に穿孔を行なう。これにより、上方が開口した孔h21,h22,h23が、コア孔h11,h12,h13の先端に形成される。この穿孔には、遠隔長尺穿孔装置(図示しない)を用いることができる。この装置は、例えば、穿孔装置20のコアビット40の代わりに、数mの長尺のコアビットを取り付けた穿孔装置である。この装置は、内部コンクリート10から空間をおいて離れた孔h22(h21、h23)の上方に、例えば、原子炉キャビティ上に設置する。
【0015】
図7に示すように、孔h22(h21,h23)が形成されると、コアB12(B11,B13)の先端は、内部コンクリート10との接続が切れる。これにより、コアB12(B11,B13)は、内部コンクリート10からフリーとなるため、コアB12(B11,B13)は、コア孔h12(h11,h13)の下部に落下して、コア孔h12(h11,h13)の下面に当接した状態となる。結果として、コア孔h12(h11,h13)の上面と側面には、コアB12(B11,B13)との間に空間が生じる。
【0016】
次に、水平方向に延在するコアの回収処理を実行する(ステップS13)。
具体的には、図6(a)及び図6(b)に示されていたコアB11~B13を、収容されているコア孔h11~h13から取り除く。
従って、図8(a)及び図8(b)に示すように、コア孔h11~h13は、円筒形状の空間となる。
この場合、図9及び図10に示すコア回収装置60を用いることができる。このコアの回収処理の詳細については、後述する。
【0017】
次に、ワイヤソーを用いた底面の切断処理を実行する(ステップS14)。
具体的には、特開2016-155220号公報に記載のワイヤソー切断装置や特開2017-144666号公報に記載のワイヤソー切断装置等を用いる。
このようなワイヤソー切断装置を、空間S1に配置する。そして、空間S1に対してコア孔h11,h12と対向する位置にある内部コンクリート10に、配置したワイヤソー切断装置を固定する。
更に、図11(a)に示すように、ワイヤソー切断装置の1対のスタンド部(図示せず)をコア孔h11,h12に挿入する。各スタンド部の先端には、先端プーリー65が取り付けられている。この場合、スタンド部は、コア孔h11,h12を円筒壁の内側(空間S1側)からコアB22(B21,B23)に向かって移動する。
【0018】
そして、図11(a)及び図11(b)に示すように、先端プーリー65に巻回されたワイヤW1を高速で移動させながら内部の空間S1から外側に押し切りする。これにより、コア孔h11,h12の間の水平面HP1で、内部コンクリート10が上下に切断される。そして、切断後は、1対のスタンド部をコア孔h11,h12から抜く。
【0019】
同様にして、コア孔h12,h13に、ワイヤソー切断装置の1対のスタンド部を挿入する。そして、スタンド部の先端プーリー65に巻回されたワイヤW1を高速で移動させながら内部の空間S1から外側に押し切りすることにより、コア孔h12,h13の間の水平面HP2で、内部コンクリート10が上下に切断される。
【0020】
次に、ワイヤソーを用いた側面の切断処理を実行する(ステップS15)。この場合においても、底面の切断処理(ステップS14)に用いたワイヤソー切断装置を用いる。ただし、ワイヤソー切断装置のアタッチメントを、底面切断用(円筒型)から側面切断用(直線型)に取り換えて用いる。
具体的には、ワイヤソー切断装置を、空間S1に配置し、コア孔h12と対向する位置にある内部コンクリート10に固定する。
【0021】
そして、図12(b)に示すように、ワイヤソー切断装置の1対のスタンド部(図示せず)の一方をコア孔h12に挿入する。先端プーリー65が先端に取り付けられたスタンド部は、コア孔h12をコアB22に向かって移動する。更に、他方のスタンド部を、内部コンクリート10の上面に配置する。
【0022】
この状態で、底面の切断処理(ステップS14)と同様に、先端プーリー65に巻回されたワイヤW1を高速で移動させながら内部の空間S1から外側に押し切りする。これにより、コア孔h12と内部コンクリート10の上面とを結ぶ垂直面VP2で、内部コンクリート10が垂直方向において2つに切断される。
【0023】
その後、同様にして、コア孔h11(h13)に、ワイヤソー切断装置の1対のスタンド部の一方を挿入し、他方を内部コンクリート10の上面に配置する。そして、スタンド部の先端プーリー65に巻回されたワイヤW1を高速で移動させながら内部の空間S1から外側に押し切りする。
これにより、図12(a)に示すように、コア孔h11(h13)の間の垂直面VP1(VP3)で、内部コンクリート10が垂直方向において2つに切断される。
【0024】
次に、背面切断のための穿孔処理を実行する(ステップS16)。
具体的には、コアの端部切断のための穿孔処理(ステップS12)と同様に、遠隔長尺穿孔装置(図示しない)を用いる。この装置も、内部コンクリート10から空間をおいて離れた縦孔h31の上方に、例えば、原子炉キャビティ上に、設置される。そして、遠隔長尺穿孔装置のコアビット(ケーシング)を、内部コンクリート10の上面に配置し、上面から下方に縦孔h31を形成する。
【0025】
ここでは、図13(a)及び図13(b)に示すように、複数の縦孔h31を、第2層12及び第3層13の境界線上に、端部が重複するように形成する。本実施形態では、コア孔h11~h12,h12~h13が連続するように、複数の縦孔h31を形成する。
【0026】
次に、垂直方向に延在するコアの回収処理を実行する(ステップS17)。
具体的には、図15に示すコア把持装置70を用いて、複数の縦孔h31の形成により縦孔h31内に収容されたコアB31を回収する。コア把持装置70の詳細については、図15図17を用いて後述する。
【0027】
以上により、図14(a)及び図14(b)に示すように、上記ステップS11~S17によってブロック15,16が、内部コンクリート10から切り出される。
ここで、ブロック15は、コア孔h11,h12及び水平面HP1で底面が構成され、コア孔h11,h12及び垂直面VP1,VP2で側面が構成され、縦孔h31が連なることにより背面が構成される。
【0028】
更に、ブロック16は、コア孔h12,h13及び水平面HP2で底面が構成され、コア孔h12,h13及び垂直面VP2,VP3で側面が構成され、縦孔h31が連なることにより背面が構成される。
【0029】
そして、ブロックの回収処理を実行する(ステップS18)。
例えば、図18に示すように、内部コンクリート10から分離された各ブロック15,16を、吊り治具で吊り上げて回収する。
【0030】
具体的には、2つ(1対)のフォークを備えた吊り治具を用いる。この吊り治具のフォークは、コア孔h11,h12の間隔に対応する間隔で設けられている。そして、この吊り治具のフォークを、コア孔h11,h12(h12,h13)に差し込んだ状態で、吊り治具を吊り上げて、ブロック15(16)を搬送する。
以上により、図18(a)及び図18(b)に示すように、内部コンクリート10から、ブロック15,16が取り除かれる。
そして、内部コンクリート10の他の部分についてステップS11~S18の処理を繰り返して実行することにより、内部コンクリート10を解体する。
【0031】
(水平方向への穿孔処理の詳細説明)
次に、上述した水平方向への穿孔処理(ステップS11)の詳細について説明する。
ここでは、図4に示す穿孔装置20を用いる。
この穿孔装置20は、略直方体形状の支持枠21を有している。具体的には、支持枠21は、四角枠を構成するフレーム22,24と、これらの角をそれぞれ連結するフレーム23とを備えている。フレーム22は、穿孔側(コンクリートブロック側)に設けられている。フレーム24は、各フレーム22のそれぞれと平行に配置されている。フレーム23は、フレーム22,24の間で、これらと直交する方向に延在して配置されている。
【0032】
フレーム22には、中心に貫通孔が形成された基板25が取り付けられている。貫通孔は、後述するコアビット40が遊嵌可能な大きさの円形状を有する。
更に、穿孔装置20は、コアビット40、回転機構部35及び直動機構部37を備えている。回転機構部35は、コアビット40を回転させる。直動機構部37は、コアビット40を前後(図4の左右方向)に直進させる。
【0033】
回転機構部35は、円筒形状の接続部35a、この接続部35aが連結した回転軸、ギア(図示せず)及びモータ35mを備えている。モータ35mは、正逆回転モータであり、その回転力を、接続部35aを介してコアビット40に伝達し、コアビット40を回転させる。
【0034】
直動機構部37は、ガイド軸37a及び可動部37bを備えている。ガイド軸37aは、支持枠21内でフレーム23と平行に延在しており、その端部がフレーム22,24に取り付けられている。可動部37bは、ガイド軸37aに摺動可能に取り付けられ、内蔵するモータの回転力を変換した直進力を用いてガイド軸37a上を直進移動する。この可動部37bには、回転機構部35が取り付けられている。
【0035】
コアビット40は、略円筒形状を有しており、本体部41、本体部41の先端に設けられたビット部42及びカップリング部43を備えている。本体部41は、例えば、1m程度の円筒形状を有している。
【0036】
ビット部42の先端(フレーム22側の端部)には、複数の円弧形状のチップ(刃)が、間隔をおいて固着されている。本実施形態のチップは、内周側が外周側よりも突出した形状をしている。ビット部42は、交換可能のために、本体部41に螺合により固定されている。カップリング部43は、回転機構部35の接続部35aと螺合によって連結する。
【0037】
以上のように構成された穿孔装置20を用いて、水平方向への穿孔処理(ステップS11)を行なう場合、まず、穿孔装置20を内部コンクリート10の空間S1に配置し、穿孔装置20を固定する。
【0038】
そして、操作者の指示に応じて制御部が、穿孔装置20の回転機構部35のモータ35m及び直動機構部37の可動部37bのモータを駆動させる。これにより、コアビット40を回転させながら、内部コンクリート10の当接面から内部へと水平方向(図4の左側)に直進(前進)移動させることにより、円環形状に切削(穿孔)を行なう。そして、第3層13までコア孔h12を形成した場合には、穿孔装置20のコアビット40を回転させながら、可動部37bのモータを駆動させることによりコアビット40を後退させる。
以上により、図5に示すように、コア孔h12が形成される。
【0039】
(水平方向に延在するコアの回収処理の詳細)
次に、水平方向に延在するコアの回収処理(ステップS13)の詳細について説明する。
【0040】
ここでは、図9及び図10に示すコア回収装置60を用いる。
このコア回収装置60は、穿孔装置20において、コアビット40の代わりに、コア回収具50を取り付けて構成される。このコア回収具50は、有底円筒形状の本体部51、接続部53及び載置部55を備える。
【0041】
本体部51は、コアビット40と同じ大きさの円筒体を有する。本体部51の底部には、一方向の中心軸上に、段付きの接続部53が接続されている。接続部53が回転機構部35の接続部35aと螺合することにより、コア回収具50がコア回収装置60の回転機構部35に固定される。
【0042】
本体部51の接続部53の反対側(先端側)には、載置部55が接続されている。この載置部55は、円弧の断面が連続する形状で構成される。載置部55の断面は、本体部51の円筒と同じ大きさで、例えば約150度の円弧で構成されている。載置部55の先端側には、例えば、一方向に斜めに切り欠いた先端部55aが形成されている。
【0043】
以上のように構成されたコア回収装置60を用いて、水平方向に延在するコアの回収処理(ステップS13)を行なう場合、まず、コア回収装置60を、穿孔装置20と同様に、内部コンクリート10の空間S1に配置して固定する。この場合、コア孔h12の中心軸と、コア回収具50の本体部51の中心軸とが一致するように、コア回収装置60を配置する。更に、コア回収具50の載置部55が上方に位置するように回転機構部35のモータ35mを回転しておく。
【0044】
そして、制御部が、直動機構部37の可動部37bのモータを駆動させる。これにより、コア回収具50の載置部55は、上方に位置したまま、コア孔h12に挿入される。
この場合、図7に示すコア孔h12の空間S4においてコアB12の上方の部分に、コア回収具50の載置部55は、挿入される。
【0045】
そして、コア回収具50の載置部55のほぼ全体がコア孔h12に入った場合には、制御部は、可動部37bのモータを停止し、コア回収具50の前進を停止する。
次に、制御部が、コア回収装置60の回転機構部35のモータ35mを半回転させる。これによって、コア回収具50の載置部55は、上方から、コア孔h12の内周面に沿って半回転(180度回転)する。この回転に従って、載置部55が、コアB12の下に入り込むように動くので、コア孔h12内で、コアB12は、徐々に浮き上がりながら載置部55の上に載る。
【0046】
そして、図10に示すように、載置部55が半回転し終えると、載置部55が下方に位置し、この載置部55の上にコアB12が載置された状態になる。
次に、制御部は、直動機構部37の可動部37bのモータを駆動させる。これにより、コア回収具50を後方に直動移動させる。そして、載置部55の先端がコア孔h12から抜けると、可動部37bのモータを停止する。この場合、コア回収具50の載置部55に載置されたコアB12も、コア孔h12から引き抜かれる。その後、後退したコア回収具50の載置部55の傍に、吊治具等に続くコア回収用の斜路等を配置する。そして、このコアB12を載置したコア回収具50を回転させることにより、コアB12を、斜路等に落下させる。そして、斜路等の先に設置された吊治具等に収容する。更に、吊治具等に収容されたコアB12を、吊り上げて搬送することにより容器等に回収する。
そして、コア孔h11,h13に収容されているコアB11,B13も、上述したコア孔h12内のコアB12の回収方法と同様にして回収する。
水平コアの回収は、先端部55aの形状を変更することにより、先端部55aをコア孔h12の側面から挿入することも可能である。
【0047】
(垂直方向に延在するコアの回収処理の詳細)
次に、垂直方向に延在するコアの回収処理(ステップS17)の詳細について説明する。
【0048】
ここでは、図15図17に示すコア把持装置70を用いる。
図15(a)は、コア把持装置70の全体図であり、図15(b)は、コア把持装置70の先端部(図中の下端部)の拡大断面図である。
【0049】
図15(a)に示すように、コア把持装置70は、ケーシング75、外周リング80及びカムリング90を備えている。外周リング80は、ケーシング75の先端に螺合されて一体化されている。外周リング80の内部には、カムリング90が縮径及び拡径可能に収容されている。ケーシング75及び外周リング80は、コアB31を収容可能な直径を有し、縦孔h31内において、内部コンクリート10とコアB31との隙間S5に挿入可能な肉厚を有する。
【0050】
ケーシング75は、基端側(先端の反対側)が閉塞した略円筒形状を有する。ケーシング75は、掛止部75aと、筒形状の本体部75tとを備える。ケーシング75は、コアビット40からビット部分を取り外した部分を流用することができる。掛止部75aは、例えば、ケーシング75を昇降するための装置に取り付ける部分である。
【0051】
図15(b)に示すように、外周リング80の下部に位置する収容部85は、カムリング90を収容し、隙間S5に挿入可能な肉厚を有する。収容部85の上部の外周面は、ケーシング75が螺合した場合に本体部75tの外周面とほぼ面一となっている。収容部85の内周面86は、下方に向かうにつれて徐々に縮径する傾斜した円筒形状を有する。
【0052】
カムリング90は、下方に従って傾斜した円筒形状の本体部92を有している。この本体部92は、外周リング80の内周面86の傾斜に対応する傾斜を有する。
図15(a)に示すように、カムリング90は、一部が切り欠いた開口部90aが形成された円筒形状であって、円弧形状の断面を有している。
【0053】
図15(b)に示すように、カムリング90の内周面には、離間した複数の凸部95が形成されている。このカムリング90は、外周リング80の内周面86の内径に応じて縮径及び拡径する可撓性を備える。そして、カムリング90は、外周リング80内で拡径した際にはコアB31の外径より大きく、縮径した際には、外周リング80から脱落せず、コアB31の外径よりも小さくなる。
【0054】
以上のように構成されたコア把持装置70を用いて、垂直方向に延在するコアの回収処理(ステップS17)を行なう場合、まず、コア把持装置70を、ウインチ等の昇降装置W2で吊り下げて、縦孔h31の上方に配置する。
【0055】
この場合、図15(b)に示すように、ケーシング75の先端(下端)に取り付けられた外周リング80に挿入されているカムリング90は、その重さで、外周リング80の収容部85の下端部に位置して、縮径された状態になる。そして、この状態で、ケーシング75を、縦孔h31へと降下させる。
【0056】
カムリング90は、ケーシング75が降下すると、縦孔h31に当接する。ここから更に、ケーシング75を降下させると、カムリング90は、先端が縦孔h31に当接した状態で、外周リング80の上方に移動する。この場合、外周リング80の内周面86の傾斜に沿って、カムリング90は拡径する。
【0057】
そして、図16に示すように、カムリング90の内径が拡がると、カムリング90は、縦孔h31内において、コアB31との隙間S5に入り込む。この状態で、ケーシング75を降下させた場合、外周リング80及これに挿入されたカムリング90は、隙間S5を降下する。
【0058】
図17に示すように、ケーシング75が縦孔h31の所定の深さまで挿入された後、ケーシング75を持ち上げる。この場合、カムリング90と外周リング80との摩擦力に対して、カムリング90とコアB31との摩擦力が大きいため、外周リング80だけが上昇する。この場合、カムリング90は、外周リング80の内周面86の傾斜に応じて縮径し、コアB31を把持する。この状態でケーシング75を上昇させて、コアB31を、内部コンクリート10の縦孔h31から取り出す。
【0059】
(作用)
ワイヤソー切断装置のワイヤW1を水平方向及び鉛直方向に延在して、ワイヤW1を高速移動させて切断するので、切り出すブロック15,16の底面及び側面が高速で形成される。そして、穿孔装置20を用いて形成した縦孔h31を繋げることにより、ブロック15,16の背面が形成される。
【0060】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の解体方法では、ワイヤソーを用いた底面の切断処理及びワイヤソーを用いた側面の切断処理(ステップS14,S15)を実行し、内部コンクリート10から分割されるブロック15,16の底面と側面とを形成する。そして、内部コンクリート10の上方に配置した遠隔長尺穿孔装置を用いて、垂直方向に延在する複数の縦孔h31を形成し、この縦孔h31を繋げてブロック15,16の背面を形成する。これにより、遠隔操作により、頑丈な内部コンクリート10を、放射能レベルが異なる第2層12と第3層13との境界において、効率的に切断して、ブロック15,16を切り出すことができる。
【0061】
(2)本実施形態では、内部コンクリート10は、円筒形状を有している。底面や側面の切断処理(ステップS14,S15)において、切断に用いるワイヤソー切断装置を、内部コンクリート10の内部の空間S1に配置する。そして、ワイヤソー切断装置を、空間S1において切断する部分の反対側の内部コンクリート10に固定して支持させる。これにより、高耐震性を有するための太径高密度鉄筋を含む内部コンクリート10を切断する際にワイヤソー切断装置のワイヤW1が受ける反力を受け止めることができるので、円滑に切断することができる。
【0062】
(3)本実施形態では、ワイヤソーを用いた底面の切断処理(ステップS14)は、ワイヤソーを用いた側面の切断処理(ステップS15)及び背面切断のための穿孔処理(ステップS16)よりも先に実行する。底面を最後に切断すると、内部コンクリート10から切り取られるブロック15,16の重みが底面切断中のワイヤW1に加わることがある。この場合には、ブロック15,16の荷重をワイヤW1が受けることによりワイヤW1の速度低下や噛み込みが生じることがあるため、底面を円滑に切断することが難しくなる。そこで、ブロック15,16の側面や背面が内部コンクリート10と接続している状態で、ブロック15,16の底面を切断することにより、底面を安定して切断することができる。
【0063】
(4)本実施形態では、水平方向の穿孔処理(ステップS11)において形成するコア孔h11,h12,h13は、水平方向に、水平距離L5で離間して形成されている。更に、各コア孔h11,h12,h13は、内部コンクリート10の上面から鉛直距離V5の位置に設けられる。水平切断用のワイヤソー切断装置と側面切断用のワイヤソー切断装置とは、アタッチメントを交換することにより、ワイヤソー切断装置のスタンド部を、コア孔h11,h12,h13に挿入して、ブロック15,16の底面と側面を切断することができる。
【0064】
(5)本実施形態では、コア孔h11,h12に、吊り治具のフォークを差し込んだ状態で、吊り治具で吊り上げて、ブロック15,16を搬送する。これにより、コア孔h11,h12を利用して、内部コンクリート10から分割したブロック15,16を安定して搬送することができる。
【0065】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、ワイヤソーを用いた底面の切断処理(ステップS14)、ワイヤソーを用いた側面の切断処理(ステップS15)及び背面切断のための穿孔処理(ステップS16)を、この順番で行なった。これら底面、側面及び背面の切断の順番は、これに限られない。例えば、側面、底面及び背面の切断の順番でもよい。
更に、水平方向への穿孔処理(ステップS11)及びコアの端部切断のための穿孔処理(ステップS12)の順番も、逆でもよい。
【0066】
・上記実施形態では、ワイヤソーを用いた底面の切断処理(ステップS14)、ワイヤソーを用いた側面の切断処理(ステップS15)において、特開2016-155220号公報や特開2017-144666号公報に記載のワイヤソー切断装置を用いた。また、水平方向への穿孔処理(ステップS11)において、穿孔装置20等を用いた。水平方向に延在するコアの回収処理(ステップS13)において、コア回収装置60を用い、垂直方向に延在するコアの回収処理(ステップS17)において、コア把持装置70を用いた。これらワイヤソー切断装置、穿孔装置、コア回収装置、コア把持装置は、上述した構成の装置に限られず、他の構成を有した装置を用いてもよい。
【0067】
・上記実施形態では、原子炉の内部コンクリート10を、第2層12と第3層13との境界において、遠隔操作により解体した。分割されたブロックは、第1層11及第2層12を含むブロック15,16に限られない。例えば、内部コンクリート10を第1層11~第4層14のそれぞれの区分の境界において、解体してもよい。更に、解体対象物は、区分解体等、任意の位置で分解する物であれば、原子炉の内部コンクリート10に限られない。
【0068】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記ワイヤソーは、先端にワイヤが巻回される1対のスタンド部を備え、前記ブロックの底面を切断する前に、前記1対のスタンド部を挿入する水平方向に延在する複数の孔を、前記スタンド部の間隔で形成することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の解体方法。
(b)前記孔は、前記ブロックの上面に前記スタンド部の一方を配置した際に、前記アーム部材の他方が挿入可能な位置に配置されていることを特徴とする前記(a)に記載の解体方法。
【符号の説明】
【0069】
B11,B12,B13,B21,B22,B23,B31…コア、h11,h12,h13…コア孔、h21,h22,h23…孔、h31…縦孔、HP1,HP2…水平面、L5…水平距離、S1,S3,S4…空間、S5…隙間、VP1,VP2,VP3…垂直面、V5…鉛直距離、W1…ワイヤ、W2…昇降装置、10…内部コンクリート、11…第1層、12…第2層、13…第3層、14…第4層、15,16…ブロック、20…穿孔装置、21…支持枠、22,23,24…フレーム、25…基板、35…回転機構部、35a,53…接続部、35m…モータ、37…直動機構部、37a…ガイド軸、37b…可動部、40…コアビット、41,51,75t…本体部、42…ビット部、43…カップリング部、50…コア回収具、55…載置部、55a…先端部、60…コア回収装置、65…先端プーリー、70…コア把持装置、75…ケーシング、75a…掛止部、80…外周リング、85…収容部、86…内周面、90…カムリング、90a…開口部、92…本体部、95…凸部。
図1
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