(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156883
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ICタグ付き書籍
(51)【国際特許分類】
B42D 1/00 20060101AFI20231018BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20231018BHJP
G06K 19/02 20060101ALI20231018BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B42D1/00 A
B42D25/305 100
G06K19/02 050
G06K19/077 224
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066515
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 経之介
(72)【発明者】
【氏名】須藤 洋志
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005MA10
2C005MB10
2C005NA06
2C005NB01
2C005PA21
(57)【要約】
【課題】簡便に製造でき、ICチップに過剰な圧力が作用することを抑制できるICタグ付き書籍を提供する。
【解決手段】ICチップを有するICタグ20が見返しに取り付けられたICタグ付き書籍において、ICタグ20は、見返しの周縁から所定距離以上離れた位置に取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップを有するICタグが見返しに取り付けられたICタグ付き書籍であって、
前記ICタグは、前記見返しの周縁から所定距離以上離れた位置に取り付けられている、
ICタグ付き書籍。
【請求項2】
前記ICタグは前記見返しのいずれの周縁からも15mm以上離れた位置に取り付けられている、
請求項1に記載のICタグ付き書籍。
【請求項3】
表紙クロスと、表ボール紙と、裏ボール紙とを有するハードカバーをさらに備え、
前記ICタグが、前記表紙クロスの折り返し部と干渉しない位置に取り付けられている、
請求項1に記載のICタグ付き書籍。
【請求項4】
前記ICタグは、前記ICチップを覆う紙層を有し、
前記紙層は、印刷層と、前記印刷層を被覆するオーバーコート層を有する、
請求項1に記載のICタグ付き書籍。
【請求項5】
前記ICタグは、
一方の面に設けられた粘着層により前記見返しに接合されており、
平面視において前記粘着層を囲む非接着部が前記一方の面上に設けられている、
請求項1に記載のICタグ付き書籍。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグが取り付けられた書籍に関する。この書籍の製造方法についても言及する。
【背景技術】
【0002】
ICインレットを用いたICタグを書籍にとり付けて、生産履歴管理から小売店での販売管理を含む物流管理全般を行うことが実現しつつある。これにより、よりきめ細かい管理が可能になり、書籍を購入する消費者の利便性を高めることが期待されている。
【0003】
特許文献1には、中綴じ製本で作製される電子タグ付き書籍が開示されている。この書籍においては、本文のうち折丁の綴じ目になる扉ののどの一部を除去して凹みを形成し、この内部にチップを配置させることにより、電子タグの性能低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、その構造によりチップに作用する圧力の一部を軽減することができるが、電子タグと直接関係のない本文の一部を加工する必要があるため、書籍全体としては製造過程が煩雑となる。これは、中綴じ製本に限られず、無線綴じ等で製造されるハードカバー上製本であっても同様である。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、簡便に製造でき、ICチップに過剰な圧力が作用することを抑制できるICタグ付き書籍を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ICチップを有するICタグが見返しに取り付けられたICタグ付き書籍である。
このICタグ付き書籍において、ICタグは、見返しの周縁から所定距離以上離れた位置に取り付けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便に製造でき、ICチップに過剰な圧力が作用することを抑制できるICタグ付き書籍を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るICタグ付き書籍の本体を示す図である。
【
図2】同ICタグ付き書籍の表側見返しを示す図である。
【
図3】同ICタグ付き書籍に取り付けられるハードカバーの製造時における一過程を示す図である。
【
図5】同ICタグ付き書籍の製造時における一過程を示す図である。
【
図6】同ICタグ付き書籍の製造手順の他の例における一過程を示す模式図である。
【
図7】同ICタグ付き書籍の製造手順の他の例における一過程を示す模式図である。
【
図8】本発明に係るICタグの変形例を示す模式断面図である。
【
図9】本発明に係るICタグの変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第一実施形態について、
図1から
図7を参照して説明する。
図1に、本実施形態に係るICタグ付き書籍(以下、単に「書籍」と称する。)の本体10を示す。本体10は、後述するハードカバーが取り付けられる前の状態であり、文字や画像等が印刷された複数のページを含む本文11と、本文11を挟むように配置された表側見返し12および裏側見返し(不図示)とを備えている。本実施形態に係る本体10においては、表側見返し12にICタグ20が貼り付けられている。
【0011】
本体10の基本構造は公知であり、本文11を構成する最初と最後の折丁に二つ折りにした表側見返し12および裏側見返しを糊付けし、その後複数の折丁を重ねて綴じ加工を行うことで作製できる。綴じ加工としては、アジロ綴じ、糸綴り、無線綴じ等の、公知の各種方法を使用できる。
本体10の背部には、補強のために地券紙や寒冷紗等が取り付けられてもよい。
【0012】
図2に、本実施形態に係る表側見返し12を示す。
ICタグ20の基本構成は公知であり、一方の面にアンテナ22が設けられた基材21と、アンテナと電気的に接続されたICチップ25とを有する。
基材21としては、紙やプラスチック等からなるシートを使用できる。アンテナ22は、金属層のエッチングや金属素線の配置等により形成できる。ICチップ25には、取り付けられる冊子の基本情報や、個々の冊子を特定するための個別情報等を含む各種情報が、管理態様や管理目的等に応じて適宜選択して記憶される。
ICタグ20の表側見返し12への取り付け態様には特に制限はないが、基材21の一方の面に粘着層を設けてラベルとし、表側見返し12に貼り付ける方法が簡便である。
【0013】
図3および
図4に、本実施形態に係るハードカバーの構造及び作成手順を示す。ハードカバー50は、
図2に示すように、書籍の外面を構成する表紙クロス51と、表紙及び裏表紙に剛性を付与する表裏のボール紙52、53と、背部を接合するための補強紙54とを備えている。
図3に示すように、表紙クロス51の内面に表ボール紙52、補強紙54、および裏ボール紙53を順に並べて貼り合わせ、
図4に示すように、表紙クロス51の周縁部を折り返して表ボール紙52、補強紙54、および裏ボール紙53の一部を覆うように貼り合わせると、ハードカバー50が完成する。
【0014】
完成したハードカバー50の補強紙54に、
図5に示すように本体10の背部を合わせ、表側見返し12と表ボール紙52、および裏側見返しと裏ボール紙53とを接合すると、本体10とハードカバー50とが一体となり、本実施形態に係る書籍が完成する。
【0015】
本実施形態に係るICタグ付き書籍においては、ICタグ20が表側見返し12の中央部に取り付けられている。このため、表側見返し12がハードカバー50と接合される際に、ICタグ20と表紙クロス51の折り返しとが重なり干渉することが防止される。さらに、接合後においては、表紙クロス51が折り返された部分がスペーサーとして機能することにより、ICタグ付き書籍が積み重ねられた等の場合でも、ICチップ25に過大な圧力が作用することが好適に抑制される。
【0016】
また、ICタグ20が、表側見返し12において、周縁部から離れた位置に取り付けられているため、本体の背部に地券紙や寒冷紗等が取り付けられている場合でも、これらと干渉せず、これらの部材によりICチップ25に過大な圧力が作用することも防止できる。
このように、本実施形態に係るICタグ付き書籍においては、本文に特別な加工を施すことなく、ICチップ25に過大な圧力が作用することを好適に抑制できる。その結果、製造過程や流通過程で多数積み重ねられても、良好な非接触通信が可能となり、書籍に関する各種管理を良好に行うことができる。
【0017】
上述した効果を充分に奏する観点からは、見返しの周縁から一定距離離間した位置にICタグ20が位置することが好ましい。具体的には、書籍の上下方向における周縁(
図2に示す12aおよび12b)からは、それぞれ15mm以上、書籍の背側(見返しの折り目側)に位置する周縁(
図2に示す12c)からは20mm以上、背と反対側の小口側に位置する周縁(
図2に示す12d)からは15mm以上離れた位置にICタグ20を取り付けることにより、上述した各部位との干渉を確実に避けることができる。
【0018】
本実施形態に係る書籍において、ICタグ20は、必ずしも表側見返しに取り付けられなくてもよく、裏側見返しに取り付けられてもよい。
また、ICタグ20は、必ずしもハードカバーと接合される面に取り付けられなくてもよく、見返しのいずれの面に取り付けられてもよい。
【0019】
本実施形態に係る書籍は、予めICタグが取り付けられた見返しを用いて製本されたものには限られない。したがって、完成した上製本の見返しにICタグを取り付けることにより本実施形態に係る書籍が作製されてもよい。
例えば、カバーや腰帯を掛ける自動製本カバー機に上製本をセットすると、
図6に示すように、カバー等を掛ける過程において表紙および裏表紙が開かれるため、自動製本カバー機にラベラーを組み合わせて、表紙および裏表紙が開かれて露出した見返しの所定位置にラベル化したICタグ20を貼り付けることにより、本実施形態に係るICタグ付き書籍を効率よく作製できる。
【0020】
他の方法として、対象となる上製本の部数が少ない等の場合は、
図7に示すように、作業者Wが書籍の表紙または裏表紙を開いてラベラー100に順次セットし、ラベラー100によって見返しの所定の場所にICタグを取り付けてもよい。
【0021】
本発明の各実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0022】
・本発明に係る見返しにおいては、ICタグを覆うように紙層が取り付けられてもよい。これにより、ICタグを取り付けた部位においても各種の印字や印刷が可能となり、冊子に適応させやすくなる。形成した印刷層を、樹脂等からなるオーバーコート層で被覆すると、冊子の他のページが接触した際の裏写り等を防止できる。
他の方法として、ICタグの基材21を紙で形成し、
図8に示すように、アンテナ22およびICチップ25が配置された面に粘着層30を設けることにより、紙層を設けずにICタグを取り付けた部位に印刷が可能な構成とできる。この構成では、ICタグの厚さを増加させることなく印刷等を可能にできるといる利点もある。
【0023】
・ICタグに粘着層を設ける場合、
図9に示すように、粘着層30を設ける基材21の面の平面視周縁部に非接着部40を設けてもよい。このようにすると、貼り付け時の押圧により粘着層30の平面視面積が増大して非接着部40上に広がっても、粘着層30は非接着部40に貼り付かないため、圧力が解除されると、平面視面積が元の大きさに戻る。その結果、ICタグの平面視において粘着層30が基材21からはみ出すことを抑制し、はみ出した粘着層が他のページへの貼り付く等の不具合の発生を好適に防止できる。
非接着部40は、易剥離剤の塗布乾燥や、公知の糊殺し処理等により形成できる。
粘着層を設ける範囲を基材の平面視寸法より一回り小さくする等により、想定される最大圧力がかかった場合でもICタグの平面視において粘着層30が基材21からはみ出さないように設定することで、この効果を更に高めることができる。
【0024】
・ICタグのアンテナの形状は、上記実施形態で示したものに限られず、必要とする通信特性等に応じて適宜設定できる。
【符号の説明】
【0025】
12 表側見返し
20 ICタグ
25 ICチップ
30 粘着層
40 非接着部
50 ハードカバー
51 表紙クロス
52 表ボール紙
53 裏ボール紙